JP2001149099A - 染色体異常解析のための有核細胞の標本作製方法 - Google Patents

染色体異常解析のための有核細胞の標本作製方法

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JP2001149099A JP33628499A JP33628499A JP2001149099A JP 2001149099 A JP2001149099 A JP 2001149099A JP 33628499 A JP33628499 A JP 33628499A JP 33628499 A JP33628499 A JP 33628499A JP 2001149099 A JP2001149099 A JP 2001149099A
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Midori Hatanaka
みどり 畑中
Takatomo Sato
卓朋 佐藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 染色体異常を解析するための標本を作製する
ための方法を提供する。 【解決手段】 染色体異常を解析するための細胞標本の
作製方法であって、(1)所望の有核細胞を準備する工
程と、(2)前記有核細胞を低張処理する工程と、
(3)前記低張処理を施した細胞を半固定する工程と、
(4)前記半固定された細胞を更に(3)の半固定で使
用した固定液よりも高濃度の固定液によって半固定する
工程と、(5)(4)で得られた細胞を固定する工程
と、(6)(5)で得られた細胞の懸濁液を支持体上に
個々の細胞を分散状態で配置させる工程とを具備する作
製方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、染色体異常を解析
するための標本を作製するための方法に関し、特に、有
核細胞におけるDNA損傷に起因する小核を計数するの
に適した有核細胞の標本を作製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】染色体異常を惹起するような遺伝的要因
または環境変異原等の何らかの理由により、あらゆる細
胞の種々の染色体異常が発生することは周知の事実であ
る。従来から、染色体異常解析の多くは、主に核型(kar
yotype)の分析に依存している。しかしながら、核型の
解析用の標本作製は慎重な調製が必要な煩雑なものであ
る。
【0003】一方で、近年、染色体異常の解析を小核の
発現を指標に使用とする提案がなされている。小核と
は、分裂中期細胞の染色体において、切断等の構造異常
や不分離等による数の異常が生じた場合に、その後の間
期(interphase)における細胞核が分離し、微少な核が
形成されるが、このような微小な核を小核(micronucle
us)と呼ぶ。これに対して、小核を生じた親の核は主核
(main nucleus)と呼ばれている。
【0004】これまで、小核解析のために特化した標本
作製法の出願には、オムロンライフサイエンス研究所
(特開平5−346380)があるが、これは赤血球
(無核細胞)を対象としたものである。また、染色体標
本作製法に関する出願がニコン社によって特開平8−1
84539としてなされている。
【0005】しかしながら、従来の標本作製法では、標
本作製の全ての工程において、凝集した細胞塊を解離す
るために必ずピペッティング操作を行なう必要性があ
る。細胞凝集の主原因は、生細胞を高濃度の固定液で固
定することにより生じる細胞の凝集および接着であると
考えられている。従って、従来では、該凝集を抑制する
ために、固定液を10%加え、アップ・シリーズにより
半固定の操作を行なう方法が用いられてきた。しかしな
がら、この方法を使用したとしても、ピペッティング操
作は必須であり、更には、再現性よく、細胞の凝集を回
避することは困難である。従って、簡便且つ高い再現性
を有する方法の開発が望まれている。また、従来から小
核の観察には多大な時間と労力が必要であるために、効
率的に小核を行なえる方法が望まれる。
【0006】一方、染色体異常を検出するための小核観
察には、染色の問題も存在する。小核を観察するための
標本において、最も頻繁に使用される染色は、アクリジ
ン・オレンジ色素による蛍光染色である。この染色法
は、DNAおよびRNAに対する特異性が高く、今日の
変異原研究においてはその使用が非常に好まれる手段で
ある(A.Matsuokaら、Mutat.Res.272,223-236,199
3)。しかしながら、アクリジン・オレンジ染色法は、
微妙な染色むらが生じることが問題である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、染色
体異常を解析するための標本を作製するための方法を提
供することであり、特に、有核細胞におけるDNA損傷
に起因する小核の計数に適した有核細胞の標本を作製す
る方法を提供することである。
【0008】具体的には、本発明の目的は、有核細胞の
細胞凝集を効率よく回避し、細胞を固定液中で確実に分
散するための簡便な細胞固定方法を提供することであ
る。また、本発明の他の目的は、細胞浮遊液をスライド
グラス上で、より狭範囲に、高密度に、且つ高分散度を
保ち伸展する方法を提供することである。更に、本発明
の別の目的は、染色ムラが少ないアクリジン・オレンジ
染色法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記状況に鑑み、発明者
らは鋭意研究の結果、以下のような手段を開発した。即
ち、染色体異常を解析するための細胞標本の作製方法で
あって、(1)所望の有核細胞を準備する工程と、
(2)前記有核細胞を低張処理する工程と、(3)前記
低張処理を施した細胞を半固定する工程と、(4)前記
半固定された細胞を、更に、(3)の半固定で使用した
固定液よりも高濃度の固定液によって半固定する工程
と、(5)(4)で得られた細胞を固定する工程と、
(6)(5)で得られた細胞の懸濁液を支持体上に個々
の細胞を分散状態で配置させる工程とを具備する作製方
法である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、染色体異常を解析する
ための細胞標本の作製方法であって、(1)所望の有核
細胞を準備する工程と、(2)前記有核細胞を低張処理
する工程と、(3)前記低張処理を施した細胞を半固定
する工程と、(4)前記半固定された細胞を、更に、
(3)の半固定で使用した固定液よりも高濃度の固定液
によって半固定する工程と、(5)(4)で得られた細
胞を固定する工程と、(6)(5)で得られた細胞の懸
濁液を支持体上に個々の細胞を分散状態で配置させる工
程とを具備する作製方法である。
【0011】ここで使用される「染色体異常」の語は、
被験対象細胞において小核の形成が誘導されるような染
色体の異常をいう。以下、本発明の方法を詳細に説明す
る。
【0012】1.有核細胞の準備 本発明の細胞標本の作製方法において、先ず最初に行な
う工程は、有核細胞を準備する工程である。この工程
は、所望する有核細胞を対象の生物から得ること、所望
に応じて培養すること、また、培養した細胞を回収する
こと等の更に詳細な工程からなる。このような有核細胞
の準備に必要な工程は、対象となる細胞に依存して従来
の方法から選択される。
【0013】本発明の方法で用いられる細胞は、有核細
胞であればよく、また、血球または何れかの組織から得
た浮遊細胞でもよく、また、癌化または非癌化細胞の何
れであってもよい。また、培養細胞であっても、非培養
細胞であってもよい。特に、リンパ球が好ましい例であ
るが、これに限られるものではない。また、通常の小核
試験に用いられる細胞、既に何らかの原因により染色体
異常が誘導されていると疑われる被験生物由来の細胞、
および特定の環境変異原の刺激により生じる染色体異常
の有無を調べるための培養細胞等も好ましい。
【0014】血球等の血液由来の細胞を使用する場合、
採血した後に血球成分を分離してから培養しても、得ら
れた血液をそのまま培養し、培養後に所望の成分を分離
してもよい。続いて、低張処理に供する。
【0015】例えば、分離リンパ球を使用する場合、全
血を採取し、得られた全血を培養した後にリンパ球を分
離することが好ましい。この方法により、従来の標本作
製法で、全血からリンパ球を分離した後で培養を行なう
ことにより生じていた問題点、即ち、末梢血の量が極微
少量である場合に、リンパ球を事前に分離する操作が困
難であるという問題点が解決できる。また、培養時に被
験物質の処理を行なう場合には、前述した通り全血を培
養する際に被験物質を処理し、全血を培養して被験物質
を処理した後で、標本作製時にリンパ球のみを回収する
ことが好ましい。従来法では、分離した後にリンパ球を
培養し、培養分離リンパ球に対して処理を行なうが、こ
の際に問題となっている細胞のロスを本方法により低減
することが可能である。
【0016】2.低張処理 上述した所望する有核細胞を準備した後で、該有核細胞
について低張処理を行なう。低張処理は、何れかの従来
の低張処理方法により行なうことが可能である。各操作
に有利であるため、遠心管を用いて実施することが好ま
しい。低張処理により、用いる細胞を膨張することが可
能であり、これにより小核の観察がより容易になる。例
えば、低張処理は、低張液として0.075M塩化カリ
ウム溶液を使用し、約5分から約10分間行なえばよ
い。
【0017】3.半固定処理 本発明の標本作製方法は、上述した低張処理の後で半固
定を2度行なう。この半固定処理工程が、本方法の最大
の特徴である。ここで、「半固定」または「半固定処
理」により、細胞は、完全には固定されてはいないが、
未処理細胞よりは固定される状態となる。本発明の2度
の半固定により、以後の操作により生じる細胞凝縮を防
止することが可能であり、従って、低張処理により得た
細胞の大きさを維持することが可能である。
【0018】以下、半固定処理の詳細を説明する。前記
低張処理を行なった後、有核細胞は、遠心管内の低張液
に懸濁された状態、または低張液を添加した遠心管の底
部に沈んだ状態となる。本発明の半固定は、前記の状態
の有核細胞を軽く懸濁することにより浮遊液とした後
に、2回の半固定処理、即ち、この低張液に固定液を極
微量で添加して静置することにより行なう第1の半固定
と、第1の半固定よりも多量の固定液を添加して静置す
ることにより行なう第2の半固定により実施する。
【0019】本発明の方法で使用される固定液は、従来
の何れの固定液でもよいが、好ましくは酢酸およびアル
コールの混液であり、最も好ましくは、酢酸とメタノー
ルからなる固定液である。
【0020】本方法において、好ましい半固定処理は、
第1の半固定が、細胞を前記低張液に懸濁した後に、遠
心管内の前記低張処理で使用した低張処理液の体積の約
10分の1以下の体積を添加し、数分間静置することに
より実施する。また、第2の固定は、更に、第1の半固
定を実施した後の該低張処理液に、該低張処理液の体積
の約5分の4以上の体積の固定液を添加し、数分間静置
することにより実施する。
【0021】本発明の方法では、低張処理から固定に移
行する間の工程として、半固定処理を行なう。例えば、
低張液に対して約1/10量の固定液を添加する第1の
半固定と、第1の固定液と低張処理液との混液の体積、
または該混液中の低張処理液の体積と略同量の固定液を
添加する第2の半固定との2段階に分けて実施すること
により、細胞が段階的に固定され、細胞内の水分から固
定液への置換がスムーズに進行する。従って、標本作製
法の工程において、ピペッティング操作は不要となり、
遠心管等の容器の外側表面を指により弾く操作、即ち、
タッピング操作により懸濁することが可能となる。ま
た、ピペッティング操作が不要であるにも関わらず、よ
り簡便に細胞凝集が回避でき、且つ細胞の単離率を向上
することが可能となる。また、固定に関連する細胞の凝
縮も抑制することが可能である。
【0022】4.固定処理 上述した通りに半固定処理を行なった後で固定処理を行
なう。固定は、半固定に使用した固定液と同様なものを
用いることが好ましいが、半固定に使用した固定液に対
して、生物学的または化学的に相性がよいものを用いて
行なう。即ち、半固定液に使用した固定液と混合した場
合に、細胞の形態等に影響を及ぼさず、且つ化学反応を
生じない固定液を使用する。例えば、酢酸とメタノール
(混合比1:3)からなる固定液を用いて半固定、固定
を行ない、更に最終固定には、1%酢酸メタノール固定
液を使用することが好ましい。
【0023】固定は、細胞が含まれる溶媒を固定液と交
換することによって、細胞を高濃度の固定液に曝すこと
により行なう。溶媒を固定液と交換するためには、遠心
または濾過等の手段を用いることにより行なうことが可
能である。例えば、遠心分離により行なう場合は、細胞
懸濁液を遠心し、上清を除去した後に固定液を添加する
ことにより行なうことが可能である。
【0024】5.支持体への細胞の伸展 続いて、上記の方法により得られた固定した細胞を得ら
れた細胞の懸濁液を支持体上に、個々の細胞を分散した
状態で配置する。ここで使用する「支持体」の語は、顕
微鏡用に用いられる標本を固定するための平板状の支持
体であればよく、例えば、市販のスライドグラス等であ
る。具体的には、この工程は、該懸濁液を支持体に滴下
し、乾燥することにより行なうことが可能である。この
工程は従来の如何なる手段を用いて行なってもよい。し
かしながら、好ましい手段は、以下に説明する通りであ
る。
【0025】先ず、スライドグラスに細胞を伸展するた
めに、少なくとも1×10個/mL程度の細胞密度の
細胞浮遊液を調整する。この浮遊液を、極微量(2〜5
μL)でスライドグラスに滴下する。この滴下を同位置
に対して複数回、好ましくは2〜3回、繰り返して行
い、乾燥する。このようにしてスライドグラスに滴下
し、乾燥することによって、より狭い範囲に、細胞が良
好に分散された状態で伸展でき、且つ略一定の細胞数を
有したスライド標本を作製することが可能である。従っ
て、小核観察時間を短縮し試験効率を向上することがで
きる。
【0026】6.染色 上述の通り作製した標本は、染色体異常の観察、特に、
小核を観察するのに適した何れの染色も行なうことが可
能である。例えば、本発明の方法において、アクリジン
・オレンジは好ましい染色の1つである。染色法とし
て、アクリジン・オレンジを用いる場合、特に、上記の
通り作製した細胞標本を20〜30μg/mLのアクリ
ジン・オレンジで浸漬染色することが好ましい。該濃度
のアクリジン・オレンジを使用することにより、細胞中
の略全てのDNAおよびRNAが、アクリジン・オレン
ジ色素と十分に結合し、且つ過剰なアクリジン・オレン
ジ色素は洗浄によって十分に洗い落とすことが可能であ
る。また、得られた標本を蛍光顕微鏡により観察する
と、細胞全体が均一に染色されたことが視覚的に明白で
ある。従って、小核をより客観的に且つ正確に判定する
ことが可能である。
【0027】またこのとき、DNAおよびRNAに対す
るアクリジン・オレンジ色素の結合率が細胞間で均一で
あることが望ましい。本発明における2段階の半固定法
は、従来の標本作製法に比較し、細胞間の固定状態のば
らつきが低い。従って、本発明の標本作製方法により作
製された標本は、アクリジン・オレンジ染色に対して非
常に好ましい標本であり、本標本を使用することによ
り、従来のアクリジン・オレンジ染色では問題とされて
いる色むらを改善することが可能である。
【0028】以上の工程を具備する細胞標本作製法によ
り得られる標本は、肉眼による小核観察を容易にするの
みならず、特に、小核計数を自動的に実施しようとする
際に、再現性よく、且つ効率的な計測が行なえる。
【0029】[実施例] 1.リンパ球標本の作製 本発明の標本作製方法の好ましい例を以下に説明する。
以下は、図1に示す通り、ヒト末梢血から得た全血を培
養した後に、リンパ球を分離し、本発明の方法により細
胞標本を作製する例を示す。
【0030】以下、図1に従って説明する。先ず、ヒト
末梢血をヘパリンナトリウム入り試験管に採血した
(1)。得られた全血を、15%FBS含有RPMI1
640にPHA、抗生物質入り培養液で培養した
(2)。ここで、変異原性物質による処理を所望する場
合には、前記培養を2日行なった後に処理した(3)。
所望する時間の処理を行なった後、リンパ球分離液を用
いて、(3)の培養系からリンパ球を回収した(4)。
【0031】回収したリンパ球を生理食塩液または適切
な緩衝液で洗浄し、遠心してその上清を除去した
(5)。得られたペレットを若干残留した前記上清中で
タッピングする(即ち、細胞が含まれる容器の外側の側
面を指で弾く)ことにより懸濁し、そこに0.075M
塩化カリウム溶液を加えて室温で7分間の低張処理を行
なった(6)。
【0032】続いて、(6)の工程で得られた細胞を含
む低張液に、該低張液の体積の約10%に相当する量の
酢酸メタノール(混合比1:3)固定液を加えて5分間
静置した(7)。更に、(7)で得られた細胞浮遊液
に、該細胞浮遊液と略同量の酢酸メタノール(混合比
1:3)固定液を添加し、5分間静置した後で、遠心し
て上清を除く(8)。得られたペレットに酢酸メタノー
ル(混合比1:3)固定液を添加することと、遠心する
ことと、および上清を除去することからなる操作を3回
以上繰り返した(9)。
【0033】その後、得られた細胞を1%の酢酸メタノ
ール固定液で最終固定を行なった(10)。その後、得
られたリンパ球を、1%酢酸メタノール固定液中で約1
から2×10個/mLの細胞浮遊液に調製した(1
1)。これを0.5μLから10μL用のマイクロピペ
ットを用いて2〜5μLずつ浮遊液をスライドグラスの
同心円上に2〜3滴繰り返して滴下した(12)。2〜
3滴滴下するときは、1滴目が乾燥した後に、同一箇所
に重ねて滴下するようにしてから空気乾燥する方が、先
に滴下した細胞群との間で互いに均一な分布状態を乱さ
ずに貼着されるという点で好ましい。なお、貼着の方法
は必ずしも空気乾燥で行なう必要はなく、細胞を吸着し
得る材質が支持体表面に有する場合には乾燥工程を省略
することも可能である。このようにして均一且つ適当濃
度に配置した細胞群が貼着されたスライドグラスを図2
および図3(a)に示す。図2に示す通り、滴下乾燥され
たスポットは、4μLずつの滴下の場合に、直径約7m
mの円形となる。測定に使用する領域は、前記約7mm
の円に内接する一辺が5mmの正方形領域である。この
ようなスポットを一般的に使用されるスライドグラスに
図3(a)のように形成した。これにより、1枚のスラ
イドグラス上に、例えば10のスポットを配置すること
が可能である。しかし、スポットの数およびそれらの配
置はこれに限るものではない。また、スポットの大きさ
は7mmに限るものではないが、スポットの数との関係
から7mmが好ましい。ここで、続いて、各細胞が貼着
された細胞標本に対して、蛍光観察用のアクリジン・オ
レンジ染色を行なう(13)。アクリジン・オレンジ染
色液は、最も適した濃度を選択するために、13、2
0、30および40μg/mLを使用した。標本のスラ
イドグラスをアクリジン・オレンジ染色液に浸し、1分
間染色した(13)。その後、リン酸緩衝液pH6.8
にて30秒ずつ4回、または水道水の流水により洗浄し
た。
【0034】次に、得られたスライド標本をリン酸緩衝
液pH6.8で封入し、カバーグラスの周りを完全にシ
ールした。この状態で冷蔵庫に保存すれば、1週間程度
はアクリジン・オレンジ染色の劣化を防ぐことが可能で
ある。
【0035】2.評価 (1)細胞解離および伸展度の評価 上述の通り作製した細胞標本(図3(a))スポット1
と、従来の方法により作製した細胞標本(図3(b))ス
ポット2について比較をした。
【0036】ここで、使用した従来方法は以下の通りで
ある。末梢血の全血を培養し、分離したリンパ球を遠心
回収し、その後、0.075M塩化カリウム溶液を添加
し約7分間低張処理を行なった。次に、酢酸メタノール
(混液比1:3)の固定液を低張液の約10%(約0.
5mL)を添加することにより半固定処理を行なった。
その後、遠心してその上清を除去し、そこに酢酸メタノ
ール(混合比1:3)の固定液を約5mL添加し、再度
遠心して上清を除去し、約5mLの酢酸メタノール(混
合比1:3)固定液を添加する操作を3回繰り返した。
その後、得られた細胞に1%酢酸メタノール固定液を添
加し、最終固定を行ない、遠心して上清を除去した。そ
の後、得られたリンパ球に1%酢酸メタノール適量を添
加し、ピペッティングにより懸濁した。得られた細胞浮
遊液をスライドグラス上にパスツールピペットを用いて
伸展し、乾燥した。このスライドグラスの細胞伸展部に
直接に40μg/mLの濃度のアクリジン・オレンジ染
色液を滴下して直ちに封入し、対照標本(図3(b))と
した。
【0037】前記の両標本を、レーザー走査サイトメト
リー(Laser Scanning Cytometry)を用いて評価した。
その結果、本発明の方法で作製した標本では、5×5m
スポット中に約5000〜10000個の細胞が伸
展されていた(表1)。更に、蛍光顕微鏡下(400
倍)での観察した結果、細胞の解離率は約80%以上で
あった(図4(a))。これに対して、従来の方法により
作製した標本は、5×5mmスポット中に約1000
〜3000個の細胞が伸展されたのみであった(表
1)。また、従来の標本は、顕微鏡下での観察では、細
胞凝集が多く見られ、その解離率は約55%であった
(図4(b))。
【0038】
【表1】
【0039】肉眼による観察または自動観察を問わず、
小核計測を効率よく実施しようとする場合、スライド上
のできるだけ狭い範囲に個々の細胞が独立して単離した
状態で、且つ良好に分散した高密度の細胞を伸展するこ
とが必要である。本発明の方法、即ち、最終細胞濃度が
少なくとも1×10個/mL程度の細胞浮遊液をマイ
クロピペットで複数回スライド上の同位置に滴下し、5
×5mmスポットに伸展させる工程を具備する標本作
製方法は、この要求を十分に満たす標本を作製するため
に非常に適した方法ある。また、図3(a)に示す通り、
本発明の方法では、1プレートにおいて、複数箇所に細
胞のスポットを形成することが可能である。従って、複
数の検体を1プレートで行なうことが可能であり、測定
の効率化が図れる(図3(a))。
【0040】(2)アクリジン・オレンジ染色に関する
検討 適切なアクリジン・オレンジ染色を得るために、アクリ
ジン・オレンジ染色液の濃度と、その処理時間等を検討
した。その結果を表2に示す(表2)。
【0041】
【表2】
【0042】表2から明らかであるように、アクリジン
・オレンジ染色液の20および30μg/mL(リン酸
緩衝液pH6.8で希釈)の濃度を1分間処理すること
がより好ましい染色が得られることが分かった。洗浄
は、リン酸緩衝液pH6.8を使用し30秒ずつ4回洗
浄し、続いてリン酸緩衝液pH6.8で封入して標本を
得ることによって好ましい結果が得られた。
【0043】以上の結果から、本発明の方法により作製
した標本を、上述の通りに染色することにより、均一な
染色状態を得ることが可能になり、それにより小核が効
率よく正確に解析できることが明らかになった。
【0044】3.本発明による標本と従来法による標本
との比較 本発明により作製した標本と従来法により作製した標本
とを比較し、その結果を表3に示した。
【0045】
【表3】
【0046】表3中の「無処理」の群とは、培養時に薬
剤の処理を行なわず作製した標本をいう。また、「検体
処理」の群とは、培養時に薬剤としてサイトカラシンB
(CB:2核細胞誘発物質)を3μg/mLの濃度で28時
間処理した標本をいう。
【0047】「全血」群は、ヒト末梢血を培養した後、
リンパ球を分離せずにそのまま上述の各方法により作製
した標本をいう。また、「リンパ球」の群は、ヒト末梢
血を培養した後に、リンパ球を分離し、上述の各方法に
より作製した標本をいう。「本方法」とは、本発明の細
胞標本作製方法をいい、「従来法」とは、上述した従来
の方法をいう。
【0048】夫々に作製した従来の標本と本発明標本
を、「単離度」、「裸核化」、「核染色輝度」および
「細胞質輝度」の項目に関して比較し評価した。ここで
「単離度」は、個々に単離した細胞の出現度合をいい、
「裸核化」は、細胞質の破損による核のみの出現をい
い、「核染色輝度」は、核の蛍光色素による明るさをい
い、および「細胞質輝度」は細胞質の蛍光色素による明
るさをいう。結果は図4および表3に示す(図4、表
3)。
【0049】その結果、何れの項目についても、本発明
の方法により作製した標本の方が優れていることが明白
となった(表3、図7)。
【0050】なお、本発明は上述した例に限定されるこ
となく、種々の変更が可能である。例えば、スライドグ
ラス上に配置されるスポットの個数、サイズ、配置パタ
ーン等は、支持体の形状、寸法等に応じて適宜増減して
もよい。また、上述した全ての工程の一部または全部を
適宜の公知技術を採用して自動化してもよい。
【0051】また、同一の支持体上に配置する各スポッ
トの位置、細胞名、患者名、作製年月日、作製条件等
を、適宜の識別手段(例えば、バーコード、暗証番号、
ロット名)でもって支持体の特定箇所に印字、貼着、手
書き等するようにし、取り違い等を防止することが好ま
しい。また、細胞の種類や使用目的に応じて、染色方法
を変更したり、適宜の検出用の試薬(例えば、FISH
試薬、PCR試薬、酵素標識試薬等)と反応させるよう
にして反応部分のみを発色ないし発光させるようにして
もよい。
【0052】
【発明の効果】本発明の方法により、有核細胞の細胞凝
縮と凝集を効率よく回避し、細胞を固定液中で確実に分
散できる簡便な細胞固定方法を提供することが可能とな
った。更に、本方法では、細胞浮遊液を、スライドグラ
ス上でより狭範囲に、高密度に、且つ高分散度を保ちな
がら伸展することが可能である。また、本発明の方法で
作製した標本は、アクリジン・オレンジ染色で問題とさ
れていた染色ムラが減少された。従って、本発明の方法
により作製した標本は、小核を観察するために極めて有
利な標本である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の標本作製法を示すスキーム図。
【図2】本発明の標本における細胞浮遊液の滴下スポッ
トを示す図。
【図3】本発明の方法により作製した(a)スライドグラ
ス標本像と従来の方法により作製した(b)スライドグラ
ス標本像とを示す図。
【図4】従来法により作製したスライド標本像を示す
図。
【符号の説明】
1.細胞浮遊液の滴下複数個のスポット像 2.細胞浮遊液の滴下1個のスポット像
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 1/30 (C12Q 1/68 33/48 C12R 1:91) //(C12Q 1/68 (C12N 1/00 C12R 1:91) C12R 1:91) (C12N 1/00 ) C12R 1:91) C12N 5/00 E (C12N 5/06 G01N 1/28 J C12R 1:91) U C12R 1:91) Fターム(参考) 2G045 AA24 BA14 BB21 BB23 BB25 CA01 CB01 DA13 FA16 GB02 HA16 4B063 QA08 QQ03 QQ08 QQ42 QR32 QR72 QS03 QS14 4B065 AA90X BD13 BD50 CA46

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 染色体異常を解析するための細胞標本の
    作製方法であって、(1)所望の有核細胞を準備する工
    程と、(2)前記有核細胞を低張処理する工程と、
    (3)前記低張処理を施した細胞を半固定する工程と、
    (4)前記半固定された細胞を、更に、(3)の半固定
    で使用した固定液よりも高濃度の固定液によって半固定
    する工程と、(5)(4)で得られた細胞を固定する工
    程と、(6)(5)で得られた細胞の懸濁液を支持体上
    に個々の細胞を分散状態で配置させる工程とを具備する
    作製方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の細胞標本の作製方法で
    あって、請求項1の(3)の工程の半固定を行なうため
    に使用する固定液が、(2)の工程で使用した低張処理
    用溶液の体積の10分の1以下の体積で添加され、且つ
    (4)の工程の半固定を行なうため使用する固定液が、
    (2)の工程で使用した低張処理用溶液の体積と略同じ
    量になるように添加されることを特徴とする作製方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の細胞標本の作
    製方法であって、前記(6)の工程に使用する細胞懸濁
    液の濃度が少なくとも1×10個/mLであり、且つ
    前記滴下の操作を約1〜10μLずつ複数回、スライド
    グラス上の同位置に滴下することにより実施されること
    を特徴とする作製方法。
  4. 【請求項4】 請求項1から3の何れか1項に記載の細
    胞標本の作製方法であって、請求項1に記載の全工程を
    行なった後に、更に、20〜30μg/mLの濃度のア
    クリジン・オレンジにより染色する工程を行なう作製方
    法。
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