JP2000157298A - 染色体異常の解析方法および装置 - Google Patents

染色体異常の解析方法および装置

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JP2000157298A JP10332938A JP33293898A JP2000157298A JP 2000157298 A JP2000157298 A JP 2000157298A JP 10332938 A JP10332938 A JP 10332938A JP 33293898 A JP33293898 A JP 33293898A JP 2000157298 A JP2000157298 A JP 2000157298A
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cells
micronucleus
chromosomes
micronuclei
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Takatomo Sato
卓朋 佐藤
Noriko Kato
則子 加藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】間期細胞から染色体異常を起こした染色体を決
定できる解析方法を提供すること。 【解決手段】生物から採取、培養等して得た細胞のう
ち、細胞周期が間期の細胞をスライドガラス上に固定化
し、この標本を、複数の識別すべき染色体の夫々を特異
的に認識できるペインティング用標識(色素)によっ
て、間期細胞中の各種染色体を染め分ける。次に、顕微
鏡にて画像化した画像情報に基づいて、小核を検出し、
この小核の色調に基づいて小核の由来となる染色体を決
定し、複数の小核について順次分類するとともに、小核
とともに検出した主核と対応付けて、標本内の小核の分
布に関する統計処理を行う。このようにして、小核の由
来となる染色体の種類毎に小核の出現頻度を導き出し、
変異の誘発性が高い染色体が特定される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、染色体異常を解析
する技術に関し、特に、核型が異常であるような染色体
の種類を核型以外の手法で決定する技術に関する。従っ
て、本発明は、変異原性試験、遺伝子診断等に有効に利
用できる。
【0002】
【従来の技術】遺伝的要因または変異原性物質等によ
り、染色体を有するあらゆる生物に種々の染色体異常が
発生し得ることが知られている。染色体異常の多くは、
核型(karyotype)の分析に依存している。核
型を分析するためには、有核生物の細胞の細胞周期にお
いて分裂中期(metaphase)の細胞を必要とす
る。分裂中期の細胞を標本作成する際には、細胞内の染
色体群の全てが個々に重なりが無く分離されるように、
且つ、個々の染色体が充分に伸展するように、慎重な調
整を必要とする。例えば、24種類の異なる染色体群か
ら成るヒト染色体について、上述したような完全な標本
を多数得ることは困難である。また、核型分析は、細胞
内で個々に分かれた染色体の全てを検証し、健常人の核
型と異なる核型を染色体異常として、異常の種類を分類
するという作業が要求される。
【0003】一方、分裂中期の染色体に欠失、切断等の
形態的な異常が起こる場合には、間期(interph
ase)の細胞の一部が分離して微小な細胞を生じるこ
とが知られており、このような微少な細胞を小核(mi
cronuclus)と呼んでいる。これに対して、小
核を生じた親の細胞を主核(main nucleu
s)と呼んで区別する。小核の研究は、主に抹消血由来
のリンパ球を用いられ、正常なリンパ球では出現頻度が
低いが、有害な薬剤等の刺激により劇的に小核の出現頻
度が増加する(Heddle,J.A.ら、Muta
t.Res.44、63−69、1977)。従って、
小核の出現とその出現頻度は、何らかの遺伝的要素、有
害物質、ウイルス等の影響により、遺伝子に傷を負って
しまうような染色体異常が起ったことを示す指標となり
得る。小核試験は、遺伝学的な変異原性の有無や程度を
試験する変異原性試験に寄与している。小核の研究は、
さらに、形状、大きさ、DNA量といった小核そのもの
の細胞学的解析を中心に発展している。小核が形成に関
する試験と並行して、分裂中期の細胞の全ての染色体に
関する核型分析を行った場合には、染色体の種類および
染色体異常の種類を小核の出現と関連付けることができ
る(Guttenbach,M.ら、Exp.Cell
Res.211、127−132、1994、E.Fa
uthら、Mutagenesis13、235−24
1、1998)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の核型分析は、変
異を起こした染色体の異常の種類を決定する前に、分裂
中期の細胞中の全ての染色体について異常の有無を検出
する必要が有る。従って、本発明の目的は、分裂中期に
生じる染色体群のうち、異常な染色体を核型分析以外の
方法で簡単に検出することにより、核型分析を簡略化
し、効率良く染色体異常を分析できるような染色体異常
の解析方法を提供することにある。
【0005】また、従来の間期細胞による遺伝学的な解
析方法は、染色体異常の有無を判定することはできる
が、染色体異常を起こした染色体の種類を決定できな
い。従って、本発明の他の目的は、間期細胞から染色体
異常を起こした染色体を決定できる解析方法を提供する
ことである。さらに、本発明の別の目的は、間期細胞の
うち、小核を用いて簡単且つ効率良く、染色体異常を起
こした染色体を決定する解析方法を提供することであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段および作用】発明者らは、
従来、形態学的なアプローチに偏っていた小核につい
て、種々の観点から鋭意検討を重ねた。その結果、分裂
中期の細胞にて開発されてきたマルチカラーFISHの
技術を間期の細胞に適用したところ、細胞内に混在する
染色体群が完全に染め分けされたという第1の発見と、
出現した小核が染色体成分の種類に依存した色調を示し
たという第2の発見と、小核に現れた色調と同一の色調
に染まる中期染色体が異常な核型を有していたという第
3の発見が得られた。
【0007】従って、本発明は、生物の染色体に発生し
た染色体異常を解析する方法において、生物材料由来で
あって細胞周期が間期に相当する細胞に対して、細胞を
構成する染色体群を個別に識別可能で且つ染色体のほぼ
全長を標識可能な複数種類の標識試薬を接触させること
により、複数の染色体のほぼ全長を標識する工程、小核
を形成している間期細胞を検出する工程、検出した小核
の標識試薬の種類に関する情報を決定する工程、および
決定した標識試薬の種類に基づいて異常を生じた染色体
を同定する工程を有することを特徴とする染色体異常の
解析方法である。
【0008】ここで、標識工程が、標識試薬を接触させ
る前に細胞を支持体表面に固定する工程を含んでいる方
が、標識工程を円滑に進行できるとともに、測定工程で
の画像化が顕微鏡で容易に行える点で好ましい。また、
細胞が、予め、変異原性が疑われる物質と接触させる刺
激工程を経たものである場合には、各種汚染物質や食品
添加物等の染色体に対する変異原性試験に応用できる点
で好ましい。
【0009】また、本発明は、生物の染色体に発生した
染色体異常を解析する装置において、細胞を構成する染
色体群を個別に識別可能な複数種類の標識手段を用いて
染色体のほぼ全長を標識した細胞を含有する被検試料を
固定した支持体を保持する支持体保持部と、支持体保持
部上の支持体を顕微鏡的に画像化する画像化手段と、画
像化手段により得た画像を、上記複数の標識手段に関す
る情報を含むような画像情報として取込む画像情報取込
み手段と、取込んだ画像情報に基づいて画像判定を行う
画像判定部とを備え、画像判定部が、被検試料中の細胞
群のうち小核を形成した間期細胞を検出する第1のソフ
トウエアと第1のソフトウエアで検出した間期細胞中の
標識の種類に応じて小核の由来となる染色体の種類を決
定する第2のソフトウエアとを含んでいることを特徴と
する染色体異常の解析装置である。
【0010】ここで、画像化手段は、支持体上の複数の
細胞を走査する走査手段を有する方が、測定視野内での
主核の占有面積に左右されることなく、小核のみの検出
を効率良く実行できる点で好ましい。
【0011】また、本発明は、生物の染色体に発生した
染色体異常を解析する装置において、細胞を構成する染
色体群を個別に識別可能な複数種類の標識手段を用いて
染色体のほぼ全長を標識した細胞を含有する被検試料を
フローセルの導入部へと導入するための導入手段と、フ
ローセルを流れる被検試料からの粒径情報および標識情
報を得るための測定手段と、測定手段により得た情報を
粒径および標識の種類別に分別する情報分別部と、分別
した情報に基づいて統計的な判定を行う統計的判定部と
を備え、統計的判定部が、被検試料中の細胞群のうち小
核を形成した間期細胞を検出する第1のソフトウエアと
第1のソフトウエアで検出した間期細胞中の標識の分布
に基づいて小核の由来となる染色体の種類を標識の種類
に応じて決定する第2のソフトウエアとを含んでいるこ
とを特徴とする染色体異常の解析装置である。
【0012】ここで、導入手段が、被検試料のフローセ
ル中での流速を制御する流量制御手段を含む場合には、
主核または小核の標識が複数種類混在している場合で
も、測定領域で低速または一次停止させて詳細な測定結
果を得られる点で好ましい。また、導入手段が、複数の
被検試料を順次導入部へ移送するための分注手段を有し
ている場合には、多数の試料を適宜のタイミングで連続
的に測定できる点で好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明に利用できる細胞は、通常
の小核試験に用いられるリンパ球以外にも、体内組織、
抹消血等から得た任意の有核細胞を利用することができ
る。また、解析対象は、既に何らかの原因で染色体異常
が起こっているかも知れない被検生物由来の細胞でも、
特定の変異原性物質による刺激による染色体への異常を
調べるための培養細胞でもよい。
【0014】本発明によれば、小核を形成した間期細胞
を測定することにより、小核の由来である染色体を決定
できる。従って、従来の小核試験における試験結果に対
して、小核の起源を示す新規な情報が追加されることに
なる。この小核に関連する新規な情報は、さらに、同一
の試験において複数の異なる起源を有する小核が生じる
場合に、小核の起源となる染色体の種類毎の分類情報を
提供できる点で特に有用である。これら新規な結果情報
を得るためには、小核を形成した間期細胞のうち、主核
および小核を単独または両方測定するように、適宜、組
合せることができる。小核の起源となる染色体の種類を
決定した後に、決定した染色体についてのみ核型分析の
ための詳細な手順を踏むようにすれば、標本作成が容易
になって、分析者または分析装置の工程が顕著に簡略化
できる。例えば、細胞中の全染色体のうち、小核を形成
した染色体に特異的な核酸プローブだけを中期細胞中の
染色体と接触させることにより、限定的な核型分析を簡
単に実行できる。
【0015】間期細胞における主核を測定する場合に
は、主核中の全ての染色体成分または測定すべき特定の
複数の染色体成分についてDNA量に比例するような標
識を施した後に、染色体の種類毎に設定した標識基準値
に対する減量を定性的ないし定量的に測定し、減量した
染色体成分を選択的に検出することにより、小核の起源
となる染色体の種類を決定できる。或いは、間期細胞の
中から形態的(主に寸法による)に小核を検出し、この
検出の前後または同時に、染色体の種類毎に識別可能な
標識でもって小核を標識することにより、小核から得た
標識情報に基づいて、小核の起源となる染色体の種類を
決定できる。主核および小核の両方を同様に、標識付け
すれば、複数の主核が測定視野内で隣接または重複して
いる場合や主核と小核が互いに測定視野内で有意に離れ
た距離に位置する場合でも、成分量の比較によって、正
確に主核と小核の照合ができる。
【0016】染色体異常のみを知るのであれば、主核ま
でも標本作成する必要が無い。すなわち、間期細胞の小
核のみを検出し、その小核の標識の色調から異常となる
染色体を特定することができる。必要ならば、小核のみ
を遠心分離で集めて標本作成することもできる。これ
は、小核の出願頻度を調べる小核試験よりも、むしろ核
型分析の簡略版、もしくは核型分析の一次検索技術とい
える。標本上において、間期の細胞以外に中期の細胞も
測定視野にて測定される場合には、引き続き、画像化さ
れた情報に基づいて核型分析をマルチカラーで実行でき
る。このように、二次検索としての核型分析は、小核と
同じ色調の中期染色体を検出して、限定的に分析するだ
けでよいから、従来の核型分析に掛かっていた工数や時
間を大幅に減らすことができる。
【0017】間期の主核細胞における完全な染め分け
は、吸光波長が重ならない24種の蛍光、発光、その他
色素の適宜な組合せにより達成されるであろう。完全な
染め分けができれば、主核内での各種染色体の挙動が明
らかになるばかりでなく、標本上で複数の主核と小核と
が存在し、照合が困難な場合でも、標識からの出力強度
(DNA量)をアドレス情報として、小核毎に出身とな
る主核を特定することも可能となる。さらに、主核と小
核とが重なって隠れている場合でも、小核を検出可能と
なる。また、フローサイトメータにおいて、主核と小核
とが分離された状態でランダムに測定された場合にも、
そのアドレス管理が可能なので、出願頻度の大量処理を
迅速に行えるから、小核試験の信頼性を顕著に向上させ
ることができる。
【0018】いずれにしても、小核が染色体のどの部分
から発生するかが未知である場合には、測定すべき一部
または全ての染色体について、染色体の全長を標識付け
するのが好ましい。染色体の全長を標識する具体的な技
術としては、いわゆる染色体ペインティング法が適して
いる(CarterNP、Cytometry18、2
−10、1994参照)。標識に用いるペインティング
用色素は、光学的または肉眼で識別可能な異なる色調を
呈するあらゆる細胞用のペインティング用色素が使用で
きる。ペインティング用色素は、例えば、発光性色素、
蛍光性色素、非発光・非蛍光性色素等が挙げられる。特
に、発光性色素と蛍光性色素は、長時間、発光または蛍
光を発するような色素を選ぶのが好ましい。一般に、染
色体の標識に適用可能なペインティング用色素として
は、FITC(490nm;520nm)、Cy3(5
54nm;568nm)、Cy3.5(581nm;5
88nm)、Cy5(652nm;672nm)、Cy
5.5(682nm;703nm)、Cy7(755n
m;778nm)、DAPI(350nm;456n
m)が挙げられる(Michael R.ら、Natu
re Genetics12、368−375、199
6参照)。また、これ以外にも、ローダミン、ルミノー
ル等の種々公知の標識用色素を利用可能である。小核を
顕微鏡の視野内で拡大するとき、種々の発光性色素また
は蛍光性色素で標識した染色体は、コントラストが高い
鮮明な画像として観察または画像測定を容易にする。
【0019】ユーロピウム等の賦活剤で活性化された残
光性ないし蓄光性を有する色素を用いた場合には、測定
用の励起光に依存することなく、顕微鏡下での肉眼での
解析または写真撮影を行えるので、電気的装置を不要に
できる点で好ましい。蛍光色素については、染色体の染
め分けに際して、色素標識された核酸プローブと結合相
手の染色体との相補的な結合の間に、その相補的結合部
分にインターカレートすることによって遊離時とは蛍光
特性が変化するようなインターカレータを用いてもよ
い。インターカレートに伴い蛍光特性が変化する蛍光色
素としては、アクリジンオレンジ、チアゾールオレン
ジ、オキサゾールイエロー等が挙げられる。
【0020】好ましくは、個々の異なる染色体に特異的
に結合するような核酸プローブを用いて、特異的な染め
分けを行うとよい。本発明においては、分裂中期におい
て異なる種類の染色体を別々の色調で染め分けるペイン
ト技術を、間期の細胞に対して実施すると、間期細胞を
染色体の種類毎に染め分けることが可能で有るという、
発見を有効に利用しようとするものである。従って、従
来、分裂中期の細胞に対して、異なる染色体を染め分け
る技術であれば、いずれも採用可能と考えられる。分裂
中期の細胞についての染め分け技術としては、J.,I
nazawaら、Jpn.J.CancerRes.8
3、1248−1252、1992、Ried,T.
ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
89、1388−1392、1992、Dauwers
eJGら、Hum.Mol.Genet.1、593−
598、1992 等のように、3〜12色といった比
較的少ない種類の染め分けを行うものや、Ledbet
terDH、Hum.Mol.Genet.1、297
−299、1992、SchrockE.ら、Scie
nce273、494−497、1996のように、人
間の中期細胞の染色体全24種類について、異なる色調
により画像測定可能とするものや、Michael
R.ら、Nature Genetics 12、368
−375、1996のように理論的には63色の染め分
けが可能であることを示唆する報告が有る。
【0021】Michael R.らの報告では、FI
TC(490nm;520nm)、Cy3(554n
m;568nm)、Cy3.5(581nm;588n
m)、Cy5(652nm;672nm)、Cy5.5
(682nm;703nm)、Cy7(755nm;7
78nm)、DAPI(350nm;456nm)とい
った7種類のペインティング用色素を用いて、分裂中期
のヒト染色体の全てを染め分けている。なるべく多くの
種類の染色体を染め分ける場合、肉眼で識別するより
も、画像測定装置により色調を分類する方が好ましい。
ASI社が提供する解析システムは、Schrock
E.らの報告において、5種類の蛍光性色素を24種類
の組合せを用いることにより、24種類の分裂中期のヒ
ト染色体を染め分けるとともに、染め分けた24種類の
染色体を顕微鏡下で画像測定して、染色体の種類を決定
できるようになっている。
【0022】ASI社の解析システムは、核型分析法ま
たは比較ゲノムハイブリダイゼーション法(Compa
rative Genomic Hybridizati
on;CGH)のために開発されたものであり、分裂中
期の細胞に対して細胞膜を破壊した後に、蛍光色素で標
識された染色体特異プローブを染色体群に直接的に接触
させる方法である(Y.,Ariyamaら、J.Hu
m.Genet.43、187−190、1998参
照)。本発明では、後述する実施例のように、上記解析
システムの技術を、小核が出現し得る間期の細胞に対し
て応用することにより、本発明の作用効果を容易に実現
できることを確認済みである。しかし、このシステムに
限らず、色素、核酸プローブ、解析用ソフトウエア等を
適宜変更することにより、より小核の解析に有利な構成
に改良するのが更に好ましい。
【0023】本発明において、間期細胞に対して染色体
の種類毎に染め分ける場合に、分裂中期の細胞では殆ど
不要な配慮として、特に、染色体の転座のように複数の
染色体が混ざった場合に出現する小核であっても、精度
良く染め分け技術が望まれる。そこで、標識用の色素を
選択する際には、小核が異なる染色体由来の断片を含む
場合にも、識別できるように最大吸光波長が重ならない
ような色素の数、種類及び組合せ方法を設定するのが好
ましい。
【0024】本発明によれば、細胞を構成する複数の異
なる染色体に関する小核を染色体の種類別に応じて分類
できるので、小核の出現有無、出現頻度等を染色体毎に
決定するような判定システムを提供できる。ここにおい
て、適宜スキャニングして得た顕微鏡画像に基づいて、
小核の有無及び個数を検出するようなソフトウエアと検
出した小核の色調から染色体の種類を決定するようなソ
フトウエアとを連動するようにシステムを構成すること
により、判定システムの自動化が達成できる。
【0025】本発明で使用可能な顕微鏡は、標識用色素
の種類に応じた画像化と撮像装置(CCD等)による画
像取込みが可能な構成を有していれば、適宜使用者の目
的に応じて所望の光学系を選んでもよい。また、蛍光顕
微鏡のように、標識用色素の種類に応じた励起光を照射
する必要が有る場合には、マルチカラーの測定に対応す
るために、光源として白色光を発するようなハロゲンラ
ンプや各種レーザ発振器を用いるとよい。また、白色光
による測定を行う場合には、複数種の蛍光色素を同時に
励起できる点で好ましい。標識色素の蛍光や吸光度でペ
インティング状態を画像化する場合には、色素の種類に
応じた励起光を分光器等の波長選択手段を介して選択的
に照射したり、好ましくは、色素の最大吸光波長に応じ
たレーザ光(例えば、アルゴン(Ar)イオンレーザ
ー、クリプトンアルゴン(Kr−Ar)イオンレーザ
ー、ヘリウムネオン(He−Ne)レーザー、ヘリウム
カドニウム(He−Cd)レーザー等)を選択的に発振
可能なレーザ発振器を介して照射することにより、高精
度な画像測定が可能となる。また、試料を通過した光ま
たは試料から発せられる蛍光、発光は、適宜の各種波長
依存性フィルターにより選択的に測定することもでき
る。このように、色素の色調毎に光照射および/または
受光する構成を採用すれば、色素の種類毎の解析が容易
になる。
【0026】なお、本発明では、色調別の色素量(蛍光
強度、吸光強度)に応じた分布画像による解析を行うよ
うにすれば、主核内で異なる種類の染色体が重なって見
えたり、小核に異なる種類の染色体が混在した場合であ
っても、染色体の種類に対応する色素の組合せを精度良
く分離し得るので、間期細胞による解析の信頼性を向上
させることができる。また、複数のスライドガラスを用
いて画像測定する場合には、顕微鏡におけるスライドガ
ラスの搬入や交換作業を適宜自動化するのが好ましい。
【0027】図6は、本発明の方法の概略をフローチャ
ートにしたものである。図6に示す通り、本発明では、
まず、生物から採取したり培養等を行って得た細胞のう
ち、間期の状態の細胞を用いて、スライドガラス等の支
持体上に固定化した標本を作成する。ここで、使用する
支持体は、測定の都合上、平坦なものが好ましく、材質
はガラス、プラスチック、金属板等種々のものを利用で
きる。透過式の測定装置の場合には、支持体は、ガラス
等の透光性部材であるのが好ましい。
【0028】次に、作成した標本に対して、複数の識別
すべき染色体のそれぞれを特異的に認識できるペインテ
ィング用標識(色素)によって、間期細胞中の各種染色
体を染め分ける。染め分けの手法については、上述した
染色体ペインティング技術を参照にすればよい。
【0029】次に、染め分けを行った細胞標本を顕微鏡
下に置いて、顕微画像を得る。次に、画像化情報から、
小核を検出するための解析ソフトウエアを用いて小核を
検出する。
【0030】次に、検出された小核を標識の種類によっ
て応じて分類することにより、由来となる染色体の種類
が決定する。通常、標本上で、複数の小核が検出される
ので、決定した染色体の種類毎に、検出した各小核を分
別する。分別した小核の情報は、好ましくは、対応する
主核毎にその出現個数と頻度も演算出力する。所定の視
野内での測定結果は、染色体の種類別に分類された小核
情報として、統計的に整理される。最後に、統計処理の
結果、小核の出現頻度が高い小核に対応する1種類以上
の染色体の種類が決定し、変異の誘発性が高い染色体が
特定される。
【0031】一方、間期の細胞のうち、小核が出現して
いて且つ小核よりも充分サイズの大きな細胞を主核とし
て検出する。次に、上述した小核の分布に関する統計処
理において、対応する主核毎に小核の出現個数と出現頻
度も演算出力する。こうすることで、小核を形成した主
核の個数と対応付けた、より信頼性の高い回答として、
変異の誘発性の高い染色体を特定することができる。
【0032】図7は、本発明の解析方法の別な実施形態
を示す図である。即ち、図6と同様にして、間期の細胞
を用いた標本作成と、染色体の種類毎の染め分けと、顕
微鏡による画像化とを行った後に、小核の出現の有無に
拘わらずサイズの大きい細胞を選択する。次に、選択し
た細胞の近傍に小核様の小粒径の細胞が存在していると
判断できた場合に、主核と判定することで、主核を検出
する。次に、検出した主核について、主核内の染め分け
の分布を解析する。次に、染め分けされた染色体毎の分
布量を、色素濃度等を指標として算出し、所定の基準値
と比較することにより、基準値より減少した染色体の種
類を特定する。これにより、小核が発生したことが確定
できることは勿論のこと、主核から分離された小核の成
分が、どの染色体由来かといった小核の種類までもが分
かる。さらに、主核間の統計処理を行うことにより、図
6の方法で小核を用いて解析したのと同様に、主核を用
いることで変異の誘発性が高い染色体を特定することが
できる。なお、この主核による解析方法において、小核
の存在を全く無視して、間期の細胞を順次またはランダ
ムに測定して、その細胞内の染め分け分布を解析するこ
とによっても、小核の有無や種類を判定できる。
【0033】図8は、上述した本発明の方法を実施する
解析装置の実施形態の構成の概要を示す図である。即
ち、この装置は、標識処理された試料スライド1を、2
次元上で走査するために、走査手段2と連結した試料台
3が移動可能に配置されている。ここで、試料スライド
1は、適宜の標本作成手法により間期細胞が固定化さ
れ、且つ適宜の染色体ペインティング手法により細胞内
の染色体群の全種類が標識試薬である蛍光色素で夫々異
なる色調に染め分けされたものとする。試料台3の上方
には、試料スライド1上の細胞を顕微鏡的に画像化する
画像化手段としての蛍光顕微鏡4が配置している。蛍光
顕微鏡4は、好ましくは、複数の倍率の異なる対物レン
ズを交換可能に備えており、対物レンズによりフォーカ
シングされた試料スライド1上の間期細胞に対して、染
め分けに用いた蛍光色素毎に異なる励起光を同時または
別々のタイミングで照射する構成を有している。
【0034】蛍光顕微鏡4の上方には、肉眼で観察する
ための接眼レンズ等を有する観察手段5及び自動解析の
ために顕微鏡画像を取込むための画像取込み手段として
のCCD6が配置している。ここで、蛍光顕微鏡4は、
染色体のペインティングに用いた標識試薬の種類の全て
を忠実に画像化可能な構成を有するものとする。即ち、
標識試薬が多数の蛍光色素を含んでいる場合には、蛍光
色素の吸光特性に応じたフィルターや光源等を具備する
ものとする。また、蛍光顕微鏡4は、倒立型、落射型、
共焦点型、反射型等のいずれの構成であってもよい。ま
た、CCD6は、他の撮像可能な画像取込み手段(光倍
増管、フォトマル、デジタルポイントスキャナー等)で
もよい。なお、画像取込み手段は、上記撮像装置とVT
R、DVD等の画像記録再生装置とが連結された構成で
ある方が、任意のタイミングで画像解析したり、後日、
映像を再生してオペレータないし他の解析装置によって
再確認したり、適宜画像処理等の補正を行って再判定し
たりできるという点で好ましい。
【0035】CCD6により取込まれた画像情報は、画
像判定部7に送られて、上述した解析方法のフローチャ
ートに従った解析が実行される。ここで、画像判定部7
は、少なくとも、標本からの画像情報から小核を検出す
るための第1のソフトウエア8と、標本からの画像情報
を標識試薬の種類に応じて分類する第2のソフトウエア
9を有する。第1のソフトウエア8、検出した小核の画
像情報を第2のソフトウエア9に送るが、指令に応じ
て、主核の画像情報も送ることができる。制御部として
のCPU10は、これら第1および第2のソフトウエア
の機動を制御して、所望の解析結果を得るようにすると
ともに、各ソフトウエア8、9により解析された結果を
統計処理して総合評価を行うものである。入力手段(キ
ーボード、タッチパネル、マウス等)11は、CPU1
0に対して、解析したい情報の種類を追加したり変更す
るものである。
【0036】この入力手段11は、小核に関する解析結
果を主核と対応づけたり、画像判定部7に対して小核の
みならず、主核の解析も行うような指示もCPU10を
通じて可能となっている。CPU10により統計処理さ
れた統計データは、CRT、プリンタ等の表示手段12
により表示される。なお、CPU10は、適宜、通信回
線を通じて、遠隔地に有る検査センター、病院、大学、
装置メーカー等に対して、各種データの送信および/ま
たは受信を行える構成である方が、より高度な解析ソフ
トウエアや熟練検査者等による解析や情報交流を迅速に
実行できる点で、臨床上、学術上、好ましい。
【0037】このような構成を有する解析装置によれ
ば、試料スライド1上の多数の間期細胞について、自動
的に染色体異常を解析できる。また、観察手段5を通じ
て、顕微鏡観察しながら、解析したり、他の顕微鏡操作
(マニピュレータによる標本のマーキング等)を実施で
きる。また、画像判定部7が、顕微鏡画像に基づいて、
第1のソフトウエア8の作動により小核を検出し、この
検出した小核の色調を第2のソフトウエア9の作動によ
り識別して小核の由来となる染色体の種類を決定するよ
うにしたので、小核試験においては染色体異常に関する
新たな情報が追加され、また、核型分析にとっては異常
を示す染色体を抽出する一次検索的な情報を提供でき
る。特に、CPU10が、第1のソフトウエア8および
第2のソフトウエア9を通った情報に基づいて、主核毎
の小核の出現頻度を算定するとともに、小核の由来とな
る染色体の種類毎に算定結果を分類するので、単に変異
の頻度が明らかになるばかりでなく、変異の誘発性が高
い染色体を決定することができる。さらに、CPU10
が、第1のソフトウエア8および第2のソフトウエア9
の機動を制御して、主核に関する染め分け情報を解析し
て、細胞内の全ての染色体に関する分布やDNA量等を
検出可能であるから、主核と小核との照合は勿論のこ
と、主核内で生じる染色体の挙動分析や染色体異常の研
究・診断等への応用が期待できる。
【0038】図9は、本発明の解析装置の他の実施形態
の構成の概要を示す図である。即ち、この装置は、解析
すべき複数の異なる被検者または組織から得た細胞を収
容するとともに適宜の分注手段(図示せず)により分注
可能な構成を有する試料供給部21と、ペインティング
用の各種色素を収容するとともに適宜の分注手段(図示
せず)により分注可能な構成を有する試薬供給部22
と、所望の試料および各種色素試薬とによるハイブリダ
イゼーション反応を実行して染色体ペインティングを実
行する反応部23と、反応部23で試料中の全ての種類
の染色体が染め分けられた混合液をフローサイトメータ
24の導入部25の注入口で注入するための注入手段2
6と、フローサイトメータ24のフローセル27を流れ
る液体中の粒子を測定し得るように設けられた測光部2
8と、フローサイトメータ24の溶液の流動速度を制御
するための流量制御部29と、測定後の混合液を回収す
るための回収部30とを備えている。
【0039】ここで、試料供給部21は、好ましくは、
多数の試料を分析するために、複数の試験管またはカッ
プ等の試料容器(図示せず)をラック等に保持して、所
定の分注位置に対して逐次新たなラックと交換し得るよ
うな搬送機構と有するのが好ましい。なお、試料容器に
収容される細胞は、TritonXのような細胞膜(植
物の場合は細胞壁)溶解液により、予め細胞膜を破壊さ
せたものとする。また、試薬供給部22は、染め分け技
術に必要な各種標識試薬が収容されている。反応部23
は、標識する色素の種類と染色体の種類に応じた分注量
および組合せの数でもって、所要数のハイブリダイゼー
ション用容器(図示せず)に分配された上で、所定の変
性処理を経てハイブリダイゼーションが実行される。ま
た、反応23は、混合用の容器および混合手段(分注器
等)も具備していて、混合手段によりハイブリダイゼー
ションさせた同一試料に関する全ての反応試料を混合用
容器内で混合するようになっている。
【0040】測光部28は、レーザ照射部と色素に応じ
た散乱光、透過光、蛍光等を受光する受光部とが対向し
ており、フローセル27から流れる液体中の細胞の全て
について粒径情報を得るとともに、細胞に標識された色
素の色調および色濃度(吸光度または蛍光強度)に関す
る標識情報を得るようになっている。なお、測光部28
は、図8の装置で示したものと同様の画像判定部7、制
御部10、入力手段11、表示手段12と接続し、測光
部28で測定した測定情報の全てを画像判定部7へ送信
するようになっている。
【0041】流量制御部29は、測定する細胞の種類、
寸法、数量等に応じて、適宜の流速で測定することを可
能にするものである。回収部30は、測定後の混合液を
回収するのであるが、必要に応じて、細胞分離用のフロ
ーサイトメータで使用されるようなソーティング機構も
採用して、主核と小核に分離して回収するようにしても
よい。
【0042】図9の解析装置によれば、測光部28が、
粒径情報をも画像判定部7に送るので、第1のソフトウ
エア8は、標識が検出できた個々の標識関連データを遊
離の標識試薬、小核および主核にそれぞれ振り分けるこ
とができる。従って、第1のソフトウエア8における小
核の検出は容易となり、しかもペインティング工程に係
るハイブリダイゼーション後の洗浄(Bound/Fr
ee分離)が不要である。このことは、本実施形態が反
応から解析までの一連の遺伝学的検査を全自動にすると
ともに、反応成分を漏れなく測定できるので微量化にも
寄与する。しかも、フローサイトメータ24の採用によ
り、小核のみによる染色体の異常の解析が、高速かつ大
量処理可能となる。
【0043】なお、測光部28により、主核を測定する
際には、上述したソーティング機構により、回収部30
から主核のみを収集して標本作成し、これを、もう一
度、フローサイトメータ24の導入部25から導入する
とともに、流量制御部29により、主核をフローセル2
7内で低速ないし一時停止させた状態で、測光部28に
よる詳細な測定を行うようにすればよい。この場合、測
光部28は、フローセル27内の主核細胞を複数ののと
なる角度から測定できるように複数組み設けるか、流路
の周囲を回動可能にすることにより、主核内の多様な染
色体の分布を精度良く解析することができ、小核毎の元
となる主核の特定を可能にして小核の出現頻度を算定で
きるとともに、主核内での染色体の分布解析も可能とな
る点で好ましい。
【0044】本発明は、上述した種々の実施の形態に基
づき、遺伝病診断、親子鑑定、犯罪調査、遺伝子治療、
放射線曝露検査、有害物質汚染調査、環境変異原性試
験、分子生物学的研究、医薬品開発等に応用可能であ
る。上述した実施の形態についても、本発明の要旨を逸
脱しない範囲において、変更可能な発明を包含する。例
えば、上述した実施の形態では、人間の染色体異常を例
にして細胞の染色方法を説明したが、核型分析可能な生
物であれば、人間以外の生物、例えば、種々実験用ない
し食用の哺乳類、魚類、鳥類、昆虫、植物、菌類等に適
用しても構わない。また、図8で示した顕微鏡と組合せ
た解析装置の実施形態において、共焦点型の顕微鏡を採
用するとともに、焦点の縦移動による断層画像を得るよ
うな構成を採用することにより、主核に関するS/N比
の高い良好な色素分布の3次元解析が可能となると期待
できる。
【0045】以下に、本発明の実施例を説明するが、本
発明はこれら実施例に限定されることなく、発明の主旨
に基づいて、本発明の出願時の技術水準に応じて自明な
範囲における種々の変更が可能である。
【0046】
【実施例】実施例1 間期細胞による染色体異常の解析 (1)変異原性物質による細胞の刺激 対数増殖期のヒト男性胎児肺線維芽細胞TIG−7(ヒ
ューマンサイエンス振興(財)製)を10%牛胎児血清
(ライフテック社製)を含むMEM培地に置いた。対数
増殖期となった上記細胞に対して、最終濃度0.1μg
/mlのマイトマイシンC(協和醗酵(株)製)を添加
して、37℃、5%二酸化炭素の雰囲気下で24時間イ
ンキュベートした。
【0047】(2)標本作成 空気乾燥法により、刺激後の細胞をスライドガラス上に
固定した。
【0048】(3)染色体のペインティング処理 スライドガラス上に固定された細胞に対して、市販のヒ
ト染色体用のペインティング用キットであるSkyPa
intHybridizationAndDetect
ionKit(以下、Sky試薬と略す)を用いて染色
処理を行った。すなわち、Sky試薬の取扱い説明書の
記載に従って、染色体の変性、核酸ハイブリダイゼーシ
ョン反応、ブロッキング処理、洗浄等を行った後、カバ
ーガラスで封入して、ペインティング処理を終えた。な
お、上記Sky試薬による染色体の染め分け内容は、表
1に示す通りである。表中の番号は、染色体番号であ
り、「X」はX染色体を、「Y」はY染色体をそれぞれ
示す。表中、蛍光色素(label)の種類は、「A」
がSpectrumOrange、「B」がTexas
Red、「C」がCy5、「D」がSpectrumG
reen、「E」がCy5.5をそれぞれ示す。なお、
これらペインティング用蛍光色素は、ハイブリダイゼー
ション反応用のd−UTPと結合させた標識プローブと
して調製されたものを用いた。
【0049】(4)顕微鏡画像による画像測定と画像判
定 ペインティング処理後のスライドガラスを、蛍光顕微鏡
BX50(オリンパス光学工業(株)製)およびSky
試薬用の撮像装置であるSkyViewSystem
(ASI社)により画像化した。画像化して得た蛍光カ
ラー像は、Sky試薬用の解析ソフトウエアであるSp
etraCube SD200(ASI社製)により判
定した。図1(A)は、上記Sky試薬によって得られ
た間期の細胞のうち、小核を形成しているものをカラー
の蛍光顕微鏡像として撮影したものである。図1(B)
は、図1(A)とは別個の小核を形成した間期細胞を同
様に撮影したものである。図2(A)は、図1(A)の
顕微鏡画像を白黒反転させたものである。図2(B)
は、図1(B)の顕微鏡画像を白黒反転させたものであ
る。図3(A)は、図1(A)の顕微鏡画像を、色調別
の領域に分かれるように境界付近を手書きで区切った分
布図である。図3(B)は、図1(B)を図3(A)と
同様に領域に分けた分布図である。なお、上記ASI社
の解析用ソフトウエアは、肉眼で識別できるような複数
の擬似色でもって色分けするような変換モードを有して
いるが、主核の中において、異なる染色体同士が同一ま
たは類似色で表現されたままの入り交じった分布とな
り、判別困難なパターンとなったので、間期細胞用の変
換モードへの改良を要すると結論できた。
【0050】図1(A)および図1(B)から分かるよ
うに、間期細胞において、染色体の種類毎に染め分けが
できた。特に、主核と小核における染め分けの分布を解
析した結果から、図1(A)で検出された小核は、第1
ヒト染色体に相当し、図1(B)で検出された小核は、
第9ヒト染色体に相当するという判定結果が得られた。
一方、図2(A)および図2(B)のように、色調毎の
画像化をしない場合には、通常の間期細胞と同じ像を示
しており、小核を確認することはできるが、その由来と
なる染色体の種類は全く解析できない。
【0051】図3(A)および図3(B)から分かるよ
うに、間期細胞(図では主核)において、肉眼でも識別
できる程度に、染色体毎の分布の様子が確認できること
が分かった。ただし、この解析システムは、本来、染色
体同士が重ならないような分裂中期の細胞に適用するも
のであるため、同じ色でもって別々の染色体の領域を画
像化する場合が有った。従って、本発明のように、間期
の細胞、特に主核に対して、同様に色変換する場合に
は、肉眼でも識別容易な24色の異なる色調の画像表示
または画像印刷を行うように改良するのが好ましいと結
論できた。
【0052】実施例2 核型分析による染色体異常の確認と詳細検討 上述した(1)刺激工程後の同一細胞について、分裂中
期の細胞を用いて、同様に、(2)標本作成、(2)染
色体のペインティング処理、(3)の核型分析および
(4)顕微鏡画像による測定と判定を実施した。図4
(A)は、実施例1で小核を形成したと判定されたヒト
第1染色体について、カラーの蛍光顕微鏡として撮影し
たものである。図4(B)は、実施例1で小核を形成し
たと判定されたヒト第9染色体について、カラーの蛍光
顕微鏡として撮影したものである。図5(A)は、図4
(A)の顕微鏡画像を白黒反転させたものである。図5
(B)は、図4(B)の顕微鏡画像を白黒反転させたも
のである。
【0053】図4(A)および図5(A)から明らかな
ように、実施例1の図1(A)および図2(A)で検出
された小核の由来であるヒト第1染色体は、染色体切断
が起こっていることが確認できた。また、図4(B)お
よび図5(B)から明らかなように、実施例1の図1
(B)および図2(B)で検出された小核の由来である
ヒト第9染色体でも、染色体切断が起こっていることが
確認できた。このことから、本発明の方法は、小核から
染色体異常を起こした染色体の種類を決定する簡単且つ
有効な解析システムを提供するものであることが証明で
きた。
【0054】
【発明の効果】本発明の解析方法によれば、入手容易な
間期の細胞を用いて、染色体異常を起こした染色体の種
類を決定することができる。また、間期の細胞で決定し
た染色体について、核型分析することにより、染色体異
常の解析が効率良く実行できる。また、小核試験におい
ては、小核の由来となる染色体の種類別に、その出現頻
度等を知ることができ、ひいては、変異を誘発され易い
染色体を知ることができる。
【0055】本発明の解析装置によれば、画像化手段に
よる画像情報に基づいて、第1および第2のソフトウエ
アが共同して、小核の由来となる染色体を効率良く決定
することができる。また、フローセルを用いて測定する
ことにより、ハイブリダイゼーション後のBound/
Freeの分離を行わないにも拘わらず、精度良く大量
に小核の解析を実行でき、処理能力が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の方法で得た間期細胞のカラー
蛍光染色画像を示す図。
【図2】図2は、図1のカラー蛍光画像を白黒反転させ
た顕微鏡画像を示す図。
【図3】図3は、図1の画像を、色調別の領域に分かれ
るように境界付近を手書きで区切った分布図を示す図。
【図4】図4は、中期細胞のカラー蛍光染色画像を示す
図。
【図5】図5は、図1のカラー蛍光画像を白黒反転させ
た顕微鏡画像を示す図。
【図6】図6は、本発明の染色体異常の解析方法を示す
フローチャート。
【図7】図7は、本発明の染色体異常の解析装置の一実
施形態の構成を示す概略図。
【図8】図8は、本発明の染色体異常の解析装置の他の
実施形態の構成を示す概略図。
【図9】図9は、本発明の染色体異常の解析装置の他の
実施形態の構成を示す概略図。
【符号の説明】
1 試料スライド 2 走査手段 3 試料台 4 蛍光顕微鏡 5 観察手段 6 CCD 7 画像判定部 8 第1のソフトウエア 9 第2のソフトウエア 10 制御部 11 入力手段 12 表示手段 21 試料供給部 22 試薬供給部 23 反応部 24 フローサイトメータ 25 導入部 26 注入手段 27 フローセル 28 測光部 29 流量制御部 30 回収部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2G045 AA35 AA39 BA14 CB01 DA13 FA16 FA19 FA37 FB07 JA01 4B029 AA07 BB11 CC03 FA15 4B063 QA11 QA17 QQ02 QQ12 QQ99 QR32 QR80 QS32 QX02 4B065 AA90X BA16 CA46

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】生物の染色体に発生した染色体異常を解析
    する方法において、生物材料由来であって細胞周期が間
    期に相当する細胞に対して、細胞を構成する染色体群を
    個別に識別可能で且つ染色体のほぼ全長を標識可能な複
    数種類の標識試薬を接触させることにより、複数の染色
    体のほぼ全長を標識する工程、小核を形成している間期
    細胞を検出する工程、検出した小核の標識試薬の種類に
    関する情報を決定する工程、および決定した標識試薬の
    種類に基づいて異常を生じた染色体を同定する工程を有
    することを特徴とする染色体異常の解析方法。
  2. 【請求項2】標識工程が、標識試薬を接触させる前に細
    胞を支持体表面に固定する工程を含んでいることを特徴
    とする請求項1に記載の解析方法。
  3. 【請求項3】細胞が、予め、変異原性が疑われる物質と
    接触させる刺激工程を経たものであることを特徴とする
    請求項1に記載の解析方法。
  4. 【請求項4】生物の染色体に発生した染色体異常を解析
    する装置において、細胞を構成する染色体群を個別に識
    別可能な複数種類の標識手段を用いて染色体のほぼ全長
    を標識した細胞を含有する被検試料を固定した支持体を
    保持する支持体保持部と、支持体保持部上の支持体を顕
    微鏡的に画像化する画像化手段と、画像化手段により得
    た画像を、上記複数の標識手段に関する情報を含むよう
    な画像情報として取込む画像情報取込み手段と、取込ん
    だ画像情報に基づいて画像判定を行う画像判定部とを備
    え、画像判定部が、被検試料中の細胞群のうち小核を形
    成した間期細胞を検出する第1のソフトウエアと第1の
    ソフトウエアで検出した間期細胞中の標識の種類に応じ
    て小核の由来となる染色体の種類を決定する第2のソフ
    トウエアとを含んでいることを特徴とする染色体異常の
    解析装置。
  5. 【請求項5】画像化手段が、支持体上の複数の細胞を走
    査する走査手段を有することを特徴とする請求項4に記
    載の解析装置。
  6. 【請求項6】生物の染色体に発生した染色体異常を解析
    する装置において、細胞を構成する染色体群を個別に識
    別可能な複数種類の標識手段を用いて染色体のほぼ全長
    を標識した細胞を含有する被検試料をフローセルの導入
    部へと導入するための導入手段と、フローセルを流れる
    被検試料からの粒径情報および標識情報を得るための測
    定手段と、測定手段により得た情報を粒径および標識の
    種類別に分別する情報分別部と、分別した情報に基づい
    て統計的な判定を行う統計的判定部とを備え、統計的判
    定部が、被検試料中の細胞群のうち小核を形成した間期
    細胞を検出する第1のソフトウエアと第1のソフトウエ
    アで検出した間期細胞中の標識の分布に基づいて小核の
    由来となる染色体の種類を標識の種類に応じて決定する
    第2のソフトウエアとを含んでいることを特徴とする染
    色体異常の解析装置。
  7. 【請求項7】導入手段が、被検試料のフローセル中での
    流速を制御する流量制御手段を含むことを特徴とする請
    求項6に記載の解析装置。
  8. 【請求項8】導入手段が、複数の被検試料を順次導入部
    へ移送するための分注手段を有していることを特徴とす
    る請求項7に記載の解析装置。
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