JP2001148333A - 物性モデルのパラメータ抽出方法及び記録媒体、並びに非線形素子の製造方法 - Google Patents

物性モデルのパラメータ抽出方法及び記録媒体、並びに非線形素子の製造方法

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JP2001148333A
JP2001148333A JP32936599A JP32936599A JP2001148333A JP 2001148333 A JP2001148333 A JP 2001148333A JP 32936599 A JP32936599 A JP 32936599A JP 32936599 A JP32936599 A JP 32936599A JP 2001148333 A JP2001148333 A JP 2001148333A
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元昭 谷沢
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 物性モデルのパラメータの抽出を効率良く抽
出できる技術を提供する。 【解決手段】 物性モデルのパラメータの抽出を誤差関
数Sの最小値を求めることに帰着させる。そしてまず、
誤差関数Sが増大するようなパラメータの更新が行われ
る確率を正に保ちつつパラメータの更新を行う、数え上
げ的手法がステップ121において実行される。次に数
え上げ的手法の収束条件として、連続するt個の状態間
で誤差関数Sが減少したかがステップ122bで判断さ
れる。ステップ122bにおいてYESと判断された場
合には、ステップ123へと進み、誤差関数Sが減少す
るようなパラメータの更新が行われる、ニュートン法系
解法が実行される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、少なくとも一つ
の外部要因からなる外部要因群の複数vi(i=1,
2,…,m)の各々に対応して、それぞれ少なくとも一
つの特性量からなる特性量群giが得られる物性に関
し、各々の特性量gs(sはiの採る任意の一つの値を
示す)に対応する計算値の各々を、対応する前記外部要
因vs及び複数のパラメータからなるパラメータ群Pの
関数f(vs,P)として与える物性モデルにおいて、
パラメータ群Pを抽出する技術に関する。
【0002】例えばLSI(large scale integrated c
ircuit)の設計において使用される回路シミュレーショ
ンのための、モデルパラメータを抽出する技術に関す
る。
【0003】
【従来の技術】LSIの製造においては、その回路を設
計する設計工程と、設計工程によって得られた情報を元
に回路を半導体装置として実現する半導体プロセス工程
とに大別される。そして、設計工程においては、半導体
装置として実現されるLSI回路(以下「LSI装置」
と称す)の発揮すべき機能を予め予測するために、回路
シミュレーションが行われる。
【0004】回路シミュレーションにおいては回路方程
式の定式化と、デバイスモデリングという2つの重要な
観点がある。そしてデバイスモデリングにおいて、例え
ばトランジスタのような非線形デバイスの電気特性は、
デバイスをモデル化して得られる解析式によってシミュ
レーションされる。この解析式は物理的な、あるいは半
ば経験的に決定されるパラメータを含んでいる。
【0005】回路シミュレーションを精度良く実行する
ためには、これらのデバイスモデリングにおけるパラメ
ータを適切に決定する必要がある。そしてこの決定のた
めの指標として通常は、LSI装置の実測特性と解析モ
デルに基づいた計算値との誤差が選ばれる。あるいはL
SI装置の実測特性に代えて、トランジスタ等のデバイ
ス内部で生じる現象をシミュレーションするデバイスシ
ミュレーションの結果を用いることもある。
【0006】そしてこの誤差の値が最少となるパラメー
タの組み合わせを求めるため、従来から例えばニュート
ン法が採用されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしニュートン法で
は、誤差の値が減少する方向にのみパラメータの検索を
行うので、解析対象となる物性モデルの全体としての誤
差の最小値(以下「真の解」という)を求めることな
く、局所的な最小値(以下「局所的な解」という)を真
の解であるとしてパラメータを決定してしまう可能性が
ある。
【0008】一方、乱数発生を利用して局所的な解から
の脱出が可能な大域的な検索アルゴリズムも存在する
が、真の解へ到達するのに必要な計算負荷は膨大となっ
てしまう。
【0009】この発明は上記の事情に鑑みてなされたも
ので、真の解を得るためのパラメータの検索、即ちパラ
メータの抽出を効率良く抽出できる技術を提供すること
を目的としている。
【0010】またコンピュータにパラメータを効率良く
抽出させるプログラムを記憶する媒体を提供することも
目的とする。
【0011】更にはかかるパラメータ抽出技術を採用し
た物性シミュレーションを含む非線形素子の製造方法を
提供することも目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明のうち請求項1
にかかるものは、(a)少なくとも一つの外部要因から
なる外部要因群の複数vi(i=1,2,…,m)の各
々に対応して、それぞれ少なくとも一つの特性量からな
る特性量群giが得られる物性に関し、各々の前記特性
量gs(sはiの採る任意の一つの値を示す)に対応す
る計算値の各々を、対応する前記外部要因群vs及び複
数のパラメータからなるパラメータ群Pの関数f
(vs,P)として与える物性モデルを適用するステッ
プと、(b)各々の前記特性量gsとこれに対応する前
記関数f(vs,P)との差に重み関数w sを乗じた値の
平方を、前記外部要因群の複数に亘って総和した誤差関
数Sに対し、その最小値を与える前記パラメータ群Pを
抽出するステップとを備える、物性モデルのパラメータ
抽出方法であって、前記ステップ(b)は(b−1)前
記誤差関数Sの値が増加する確率Qを正に保ちつつ、前
記パラメータ群Pを更新しつつ、前記誤差関数Sの値を
繰り返し求め、誤差関数Sの値が所定回数で減少すると
停止するステップを有する。
【0013】この発明のうち請求項2にかかるものは、
請求項1記載の物性モデルのパラメータ抽出方法であっ
て、前記ステップ(b)は(b−2)前記ステップ(b
−1)で最後に更新された前記パラメータ群Pを初期値
として、前記誤差関数Sが単調減少する方向にのみ前記
パラメータ群Pを更新するステップを更に有する。
【0014】この発明のうち請求項3にかかるものは、
請求項1又は2記載の物性モデルのパラメータ抽出方法
であって、前記確率Qは、前記パラメータ群Pが更新さ
れる度に単調に変動する所定量に基づいて求められ、前
記所定量は前記パラメータ群Pが更新される度に前記確
率Qを減少する傾向に寄与し、前記ステップ(b−1)
は、前記所定量が所定の値に到ることによっても停止す
る。
【0015】この発明のうち請求項4にかかるものは、
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の物性モデルのパ
ラメータ抽出方法を単独で、若しくは予めコンピュータ
に備えられたプログラムと相俟って、前記コンピュータ
に実行させるプログラムが記録された、コンピュータ読
み取り可能な記録媒体である。
【0016】この発明のうち請求項5にかかるものは、
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の物性モデルのパ
ラメータ抽出方法を用いたデバイスモデリングを採用す
る特性シミュレーションと、前記特性シミュレーション
に基づく物理的プロセスとを実行して非線形素子を作製
する、非線形素子の製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】A.基本的な考え方:実施の形態
の詳細な説明を行う前に、本発明の基本的な考え方につ
いて説明する。LSIの設計工程の一部である回路シミ
ュレーションに含まれるデバイスモデリングを例に採っ
て説明されたように、従来から物性モデルを設定する手
法が存在する。この物性モデルは、少なくとも一つの外
部要因からなる外部要因群v i(iは外部要因群の変動
を示し、ここではi=1,2,3,…,mとする)と、
これらに対して得られる少なくとも一つの特性量からな
る特性量群giとが非線形の関係にある非線形素子の物
性を求めるに際して、設定される。そしてこの物性モデ
ルは、複数のパラメータからなるパラメータ群P及び外
部要因群viの関数f(vi,P)として設定される。そ
して実測される特性量群gs(sはiの採る任意の一つ
の値を示す)と、計算される関数f(vs,p)の値の
差に重み関数wsを乗じた値の平方を、外部要因群の変
動iに亘って総和して、誤差関数Sが求められる。そし
てこの誤差関数Sの値が最少となるパラメータの組み合
わせを求めることでパラメータの抽出を行う。
【0018】例えば非線形素子としてMISトランジス
タを挙げれば、例えばゲート長が1μm程度よりも大き
い場合には、物性モデルとしてFrohman-Bentchkowskyモ
デルが例挙できる。外部要因としては動作温度τ、ソー
ス電極に対するゲート電極の電位(ゲート電圧Vgs)及
びドレイン電極の電位(ドレイン電圧Vds)を、特性量
としてはソース電極とドレイン電極との間に流れる電流
(ドレイン電流Ids)が、それぞれ例挙できる。そして
パラメータとしては、例えばしきい値電圧Vth及び後述
する係数βを挙げることができる。このように、外部要
因群を構成する外部要因の個数と、特性量群を構成する
特性量の個数と、パラメータ群を構成するパラメータの
個数とは、一般には一致しない。
【0019】誤差関数Sの値を最小にするパラメータ群
Pを求めるため、パラメータ群Pの値を更新しつつ、誤
差関数Sの値を繰り返し求める。この際、第1の求解ス
テップにおいては誤差関数Sの値が増加する確率Qを正
に保ちつつ、パラメータ群Pの値を更新する。かかる条
件付きの更新のために、上述のように乱数の発生が利用
される。このように、誤差関数Sの値の最小値を指向し
たパラメータ群Pの値の更新において、誤差関数Sの値
の増加する確率Qを正に保つことにより、誤差関数が局
所的な解に陥ることを回避できる。
【0020】しかし、このような大域的な検索アルゴリ
ズムである第1の求解ステップのみでは、真の解へ到達
するのに必要な計算負荷は膨大となってしまう。そのた
め、第1の求解ステップの実行後に、誤差関数Sが単調
減少する方向にのみパラメータ群Pを更新する第2の求
解ステップを採用する。
【0021】第1の求解ステップのみでは局所解に陥る
可能性は少ないが計算時間が多く、第2の求解ステップ
のみでは計算時間が短いが局所解に陥る可能性がある。
従って、第1の求解ステップから第2の求解ステップへ
と切り替える条件を適切に設定することは、パラメータ
抽出において精度向上と計算時間の短縮について重要な
点である。
【0022】第1の切り替え条件としては、第1の求解
ステップにおいてパラメータ群Pの値を更新するに従っ
て、誤差関数Sの値が所定回数で減少することが挙げら
れる。誤差関数Sの値が増加する確率Qを正に保ってい
るのにも拘わらず誤差関数Sの値が減少する傾向にある
ということは、パラメータ群Pの更新が真の解の近傍で
行われていると判断できるからである。従って、第1の
切り替え条件を用いて第1の求解ステップを終了すると
いう技術もパラメータ抽出について効果的である。
【0023】第2の切り替え条件としては、誤差関数S
の値が増加する確率Qが低くなったことを挙げることが
できる。誤差関数Sの値が減少する方向でパラメータが
探索される確率が大きくなるので、第2の求解ステップ
を用いる方が計算量を抑制できるからである。例えば確
率Qがパラメータ群Pが更新される度に単調に変動する
所定量を因子として有しており、この所定量はパラメー
タ群Pが更新される度に確率Qを減少する傾向に寄与す
べく設定する。そして所定量が所定の値に到ることによ
って第1の求解ステップを停止させる。
【0024】本発明は、上述のようにパラメータを有す
る関数で設定される物性モデルが採用される技術であれ
ば、半導体分野に限定されずに、他の分野、例えば電
気、機械、化学の分野においても適用できる。以下では
半導体の製造方法の分野を例に取って説明する。
【0025】なお、非線形回路を区分線形回路に変換
し、区分間隔を逐次的に小さくして広域収束性を有する
アルゴリズムと、ニュートン法とを切り替えて用いるシ
ミュレーションが、例えば特開平7−295959号公
報に示されている。
【0026】B.半導体の製造方法への適用: b1)半導体の製造方法の概観.図1は本発明が適用可
能なLSI装置の製造工程の概略を例示するフローチャ
ートである。製造工程は設計工程群90と、物理的プロ
セスである半導体プロセス工程905とに大別される。
設計工程群90は機能設計工程901、論理設計工程9
02、回路設計工程903、レイアウト設計工程904
に大別される。半導体プロセス工程905は設計工程群
90から得られた情報に基づいて半導体プロセスを遂行
し、LSI装置300が得られる。
【0027】回路設計工程903は回路シミュレータ
1、パラメータ抽出装置3を採用して実行される。その
他にも例えばタイミングシミュレータ201をも採用す
る場合がある。回路シミュレータ1は回路シミュレーシ
ョンを行う主体であり、そこで用いるパラメータを供給
するパラメータ抽出装置3には製造されたLSI装置3
00についての実測値や、デバイスシミュレータ202
からのシミュレーション結果が入力される。パラメータ
抽出装置3で決定されたパラメータが格納されるパラメ
ータデータベース2も、回路設計工程903において採
用されていても良い。図1においては回路設計工程90
3において回路シミュレータ1、パラメータデータベー
ス2、パラメータ抽出装置3、タイミングシミュレータ
201が採用される態様を、回路設計工程903を示す
ブロックで囲んで示している。
【0028】なお、図1は模式的に示されており、設計
工程群90の有する各工程901〜904が独立して存
在する必要はなく、パラメータ抽出装置3はハードウェ
アとして個別に実現される必要もない。例えば設計工程
群90の全体が、所定のプログラムに基づいて動作する
単体の計算機で実現されても良い。もちろんパラメータ
抽出装置3の処理を実行させるための専用ソフトウェア
を用いても良いし、従来から存在する、設計工程群90
の全体を動作させるためのソフトウェアに対するパッチ
プログラムによって、パラメータ抽出装置3の処理を実
行させても良い。これらのプログラムはコンピュータ読
み取り可能な記録媒体に記録させることができる。
【0029】図2は本発明にかかるパラメータ抽出装置
3の動作を示すフローチャートである。まず、パラメー
タアナライザ、LCRメータ等の測定器を用いて測定さ
れた実測値が初期値決定部11に入力される。これらの
測定器は自動制御によって動作することが望ましい。あ
るいはデバイスシミュレータ202から得られたデバイ
スシミュレーション結果が入力されても良い。
【0030】デバイスモデリングにおけるパラメータを
決定するため、通常は繰り返し計算が行われる。この繰
り返し計算を効率良く行うため、初期値決定部11にお
いてパラメータの初期値を決定する。この初期値を適切
に選定することが、最終的に得られるパラメータの精度
に大きく関与する。そのため、初期値決定部11ではデ
バイスの動作領域や形状を限定した簡単なモデルを採用
し、陽的に、従って繰り返し計算を必要とすることなく
パラメータのうちの幾つかの初期値を決定する。
【0031】例えばMISトランジスタの動作におい
て、ドレイン電圧Vdsが小さい線形領域でのドレイン電
流Idsは、ほぼβ(Vgs−Vth−Vds/2)Vdsで得ら
れる。ここで係数βは単位面積あたりのゲート絶縁膜容
量Coxと、キャリアの移動度μと、チャネル幅Wの積
を、チャネル長Lで除した値である(β=CoxμW/
L)。このようなモデルに基けば、ドレイン電流Ids
ゲート電圧Vgsに対する依存性を実測値から求め、外挿
及び傾きを計算してそれぞれしきい値電圧Vth及び係数
βが求められる。
【0032】このように定まった幾つかのパラメータの
初期値が、実測値あるいはデバイスシミュレータ結果と
共にパラメータ最適化部12へと与えられ、パラメータ
が決定される。パラメータ最適化部12の動作の詳細に
ついては後述する。
【0033】パラメータ最適化部12から得られたパラ
メータを用いて計算されたデバイス特性は、実測値から
得られたデバイス特性、例えばドレイン電流Idsのドレ
イン電圧Vdsに対する依存性と表示装置13上で重ね合
わせて表示され、決定されたパラメータの精度を視覚的
に確認する。図2においてはドレイン電流Idsのドレイ
ン電圧Vdsに対する依存性が種々のゲート電圧V1
2,V3に対してプロットされた場合が例示されてい
る。
【0034】そしてパラメータの精度が満足すべきもの
であることが確認されれば、再利用可能とすべく、パラ
メータデータベース2へとパラメータが格納される。
【0035】なお、図2は模式的に示されており、各部
11〜13が独立して存在する必要はない。例えばパラ
メータ抽出装置3の全体が、所定のプログラムに基づい
て動作する単体の計算機で実現されても良い。もちろん
パラメータ最適化部12の処理を実行させるための専用
ソフトウェアを用いても良いし、従来から存在する、設
計工程群90の全体を動作させるためのソフトウェアに
対するパッチプログラムによってパラメータ最適化部1
2の処理を実行させても良い。これらのプログラムはコ
ンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録させることが
できる。
【0036】b2)パラメータ抽出の概観.図3はパラ
メータ最適化部12の処理を分解して示すフローチャー
トである。まずステップ121において数え上げ的手法
(combinatorial optimization method)を用いてパラメ
ータ検索が実行される。ここでいう数え上げ的手法は、
A節で説明された第1の求解ステップである。そして解
法切り替えステップ122を介してステップ123に進
み、ニュートン法系解法を用いたパラメータ検索が実行
される。ここでいうニュートン法系解法は、A節で説明
された第2の求解ステップである。
【0037】ステップ122は、ステップ121で探索
されたパラメータがステップ123を実行する際の初期
値として適当でないと判断されればステップ121へと
処理を戻し、適当であると判断されればステップ123
へと処理を進める。ステップ122は上述の第1及び第
2の切り替え条件のそれぞれに対応するステップ122
b,122aを有している。
【0038】非線形素子、例えばMISトランジスタの
誤差関数Sは式(1)で示される。
【0039】
【数1】
【0040】外部要因群v1,v2,v3,…,vmは、そ
れぞれがu(≧1)個の外部要因を有している。A節で
示されたように、例えばu=3とし、外部要因として動
作温度τ、ゲート電圧Vgs、ドレイン電圧Vdsを採用で
きる。特性量giは、外部要因群viが与えられた場合に
非線形素子が呈する物理量である。A節で示されたよう
に、例えばドレイン電流Idsを採用でき、この場合には
特性量値群を構成する特性量の個数は1であって、誤差
関数Sはスカラ量となる。なお、特性量は実測値として
ではなく、デバイスシミュレーションの結果を用いても
良い。その場合、一般にデバイスシミュレーションでデ
バイスを近似した関数をgとし、特性量群はgi=g
(vi)と表現することもできる。
【0041】パラメータ群Pはn(≧2)個のパラメー
タp1,p2,p3,…,pnで構成される。A節で示され
たように、例えばn=2とし、パラメータとしてしきい
値電圧Vth及び係数βを採用することができる。但し、
ステップ121では、既に初期値決定部11において陽
的に求められたパラメータも初期値として採用される。
b1)節で示された例では、しきい値電圧Vthと係数β
のいずれもが初期値として陽的に求められている。
【0042】重み関数wiは異なる外部要因群viのそれ
ぞれに対応して設定される。特別な場合として、重み関
数wiは外部要因群viのいずれに対しても恒常的に1に
設定され、誤差関数Sが絶対誤差として規定される。ま
たwi=1/giに設定されれば、誤差関数Sが相対誤差
として規定される。
【0043】誤差関数Sを最小化、あるいは所定誤差内
で零とするパラメータ群Pを求めることが、パラメータ
抽出という処理である。そしてパラメータ群Pを所定の
規則で更新しつつ誤差関数Sの値を小さくしてゆくこと
により、パラメータ抽出が進められる。
【0044】図3においてステップ121,122,1
23として記載された工程を一体として処理させるため
のプログラムによって、コンピュータに対して実行させ
ることもできる。あるいはハードウエアを用いてステッ
プ121,122,123として記載された工程を一体
として実行してもよい。また、各ステップ121,12
2,123を独立して実行させるプログラムによって、
コンピュータに対して実行させることもできる。
【0045】あるいはステップ121,122,123
として記載された工程をそれぞれ別個に実行するハード
ウエアを用いてパラメータ最適化部12を構成しても良
い。この場合には、ステップ121,122,123に
それぞれ相当する機能を果たすハードウエアとして数え
上げ的手法実行部、処理切り替え判断部、ニュートン法
系解法部を用いて、パラメータ最適化部12を構成する
ことになる。そして図3のフローチャートは、それぞれ
のステップに開示された機能を果たすブロックの結合関
係を示すブロック図として読み替えることになる。
【0046】b3)数え上げ的手法.数え上げ的手法の
例として、Simulated Annealingと呼ばれる手法や、Sim
ulated Diffusionと呼ばれる手法(以下それぞれ「SA
法」、「SD法」と仮称する)が公知である。例えばS
A法を半導体素子に適用した例としては“Modeling of
Microwave Semiconductor Devices Using Simulated An
nealing Optimization”(Man-Kuan Vai, et al., IEEE
Trans. Electron Devices, Vol.ED-36, No4,pp761-76
2, Apr. 1989、以下「文献1」とする)があり、SD法
を半導体素子に適用した例としては“Fast Simulated D
iffusion: An Optimization Algorithmfor Multiminimu
m Problems and Its Application to MOSFET Model Par
ameterExtraction”(T. Sakurai, et al., IEEE Tran
s. computer-Aided Design, Vol.CAD-11, No2, pp228-2
33, Feb. 1992、以下「文献2」とする)がある。
【0047】SA法、SD法では所定の更新量が与えら
れたパラメータを用いて誤差関数Sを求め、誤差関数S
が増大する場合には確率Qで上記更新量が与えられたパ
ラメータを、更新されたパラメータとして採用する。例
えば文献1では、更新の基礎量V0と乱数R(0≦R≦
1)とを用いて、パラメータの更新に供せられる更新量
としてΔV=RV0を採用している。そしてΔVだけ増
加したパラメータが所定の範囲を越えない限り、更新さ
れたパラメータとして次の計算に採用される。また文献
2では、誤差関数Sの勾配に比例した更新量がパラメー
タに加算され、この加算されたパラメータによって得ら
れた誤差関数Sの値が大きくなれば、確率Qを以てその
パラメータを更新されたパラメータとして採用する。具
体的には誤差関数Sの値を増大させたパラメータが得ら
れた場合には乱数Rを発生させ、これが確率Q以下であ
ることを条件としてそのパラメータを更新されたパラメ
ータとして採用する。逆に、得られた誤差関数Sの値が
小さくなればそのパラメータを更新されたパラメータと
して採用する。
【0048】SA法、SD法のいずれにもいわゆるメト
ロポリス法が採用される。メトロポリス法は例えば“Si
mulated Annealing Algorithms: An Overview”(Rob A.
Rutenbar, IEEE Circuits and Devices Magazine, Ja
n., 1989, pp19-25、以下「文献3」とする)に紹介され
ている。これをSA法、SD法に則していえば、誤差関
数Sが増加量δS(>0)だけ増加する確率Qを、ex
p(−δS/T)として求め、0<Q≦1が成立する。
【0049】ここで除数Tはパラメータを更新して繰り
返し計算を行う度に減少して更新される所定量である。
例えば文献1では擬温度(pseudo-temperature)と呼ば
れ、その初期値は500以上に設定され、繰り返し計算
の度に90%の値へと更新される。
【0050】SA法、SD法において収束判定条件とし
ては、例えばパラメータの大きさが所定範囲内にあるか
否かや、乱数の発生回数が予め定められた上限に達した
か否かが採用される。あるいは擬温度Tが十分冷却され
たか否かが採用される。
【0051】本発明においても第2の切り替え条件とし
て、擬温度Tが十分冷却されたか否かを採用する。所定
量Tは、その減少が確率Qの減少に寄与するので、これ
を確率Qの因子として導入することにより、第2の切り
替え条件を実現することができるのである。ステップ1
22aはこれに対応した判断であり、例えば擬温度T
が、その初期値の1×10-3よりも小さくなれば、擬温
度Tが十分冷却されたと判断されてステップ123へ進
み、そうでなければステップ122bへと進んで第1の
切り替え条件の判定が行われる。
【0052】しかし本発明では数え上げ的手法の収束条
件として、A節で示したように誤差関数Sが所定回数減
少するか否を以て主として判定する。より望ましくは、
誤差関数Sが所定回数連続して減少すれば、誤差関数S
はパラメータの更新を伴った繰り返し計算に対して単調
に減少すると判断して数え上げ的手法を終了する。即
ち、k回目の繰り返し計算で得られた誤差関数Sの大き
さをSkとして式(2)を以て収束判定条件とする。
【0053】
【数2】
【0054】連続して誤差関数Sの値が減少する回数t
は、例えば6に設定される。この収束判定条件はステッ
プ122bに相当し、連続するt個の状態の間、即ちパ
ラメータ群Pを更新して行われたt回の計算の間で、誤
差関数Sが減少すればステップ123へと進み、そうで
なければステップ122へと戻る。つまり、第1の切り
替え条件で収束されたと判断されればステップ123へ
と進む。
【0055】上述のように第2の切り替え条件の判断に
相当するステップ122aを採用しても良いが、省略し
ても良い。
【0056】なおSD法では、メトロポリス法に加え
て、更にブラウン運動の揺らぎの項(Brownian)もパラ
メータの更新量の一部として採用する。例えば文献2で
はパラメータの更新に供せられる更新量dxとして、式
(3)が示されている。
【0057】
【数3】
【0058】但し式(3)ではパラメータ群P、誤差関
数Sに相当するものとしてそれぞれパラメータx、関数
fが採用されている。右辺第1項はドリフト項であり、
同第2項がブラウン運動の揺らぎに相当する。但しdw
はガウスのランダムノイズ(Gaussian random noise)
である。
【0059】b4)ニュートン法系解法.誤差関数Sが
最小となる場合には、式(4)が満足されることにな
る。
【0060】
【数4】
【0061】これはパラメータ群Pを構成するパラメー
タp1,p2,…,pnを未知変数とするn次の非線形連
立方程式である。この連立方程式を解くために繰り返し
計算が行われてパラメータ群Pが更新され、更新された
パラメータ群Pに基づいて得られる誤差関数Sが単調に
減少する手法として、ニュートン法が最も一般的な数値
解法である。この解法においては、パラメータ群Pに対
する更新量ΔPは式(5)の表記を用いて、式(6)で
計算される。
【0062】
【数5】
【0063】
【数6】
【0064】但し、k=1,2,…,nであり、JT
Jの転置行列を示している。また鉤括弧内は関数f
(v,P)のヘシアンを表している。
【0065】更新量ΔPを求める計算効率を向上させる
ために種々の近似手法が用いられており、例えばGauss-
Newton法では関数fの2階微分以上の項を無視して、
【0066】
【数7】
【0067】を採用する。式(7)からは、QR分解を
用いて、逐次的にパラメータ群Pが求められる。
【0068】収束性を更に改善するために、ヘシアンの
近似として、誤差関数Sの大きさが小さくなる方向の成
分を強調するために対角項を付加するLevenberg-Marqua
rdt法が提案されている。この手法に関しては、例えば
“General Optimization andExtraction of IC Device
Model Parameters”(K. Dogains and D.L.Scharfetter,
IEEE Trans. Electron Devices, Vol.ED-30, No9, pp1
219-1228, Sep. 1983)に紹介されている。具体的には、
式(8)に基づいて更新量ΔPを計算する。
【0069】
【数8】
【0070】ここで、Iは単位行列であり、diag()
は、対角成分として()内の行列の対角成分を採用し、
その他の成分としては零を有する行列を示す。また係数
λは繰り返し計算の開始当初は大きく、例えば0.1程
度に設定され、解の近傍においては零となるように設定
される。
【0071】図4はニュートン法系解法において式
(7)を用いた場合を示すフローチャートである。ステ
ップ124において、第r回目にパラメータ群P(r)
対し、更新量[ATA]-1Cだけ増加させて、第(r+
1)回目に求められるパラメータ群P(r+1)を計算す
る。そしてステップ125においてパラメータ群P
(r+1)を用いて誤差関数Sを更新する。そしてステップ
126において、誤差関数Sが十分小さいか、即ち所定
の誤差範囲において零であるかが判断される。そして所
定の誤差範囲内で誤差関数Sが零であれば最適化は終了
し、そうでなければステップ127において回数rを1
増加させた後、ステップ124に戻る。
【0072】ステップ126において、更新されたパラ
メータ群P(r+1)が更新前のパラメータ群P(r)と所定の
範囲内に収まると判断されれば、それ以上計算を続けて
もパラメータ群Pの精度を上げることができないので、
最適化は終了する。所定の範囲内に収まらなければ、ス
テップ127を介してステップ124へと戻る。
【0073】C.変形:文献3ではメトロポリス法にお
いて確率をボルツマン分布の形で扱う場合を述べている
が、文献2に紹介されているようにローレンツ分布を採
用しても良い。また、ボルツマン分布を級数展開して、
その低次項から所定数の項以降を無視した関数を採用し
ても良い。
【0074】
【発明の効果】この発明のうち請求項1にかかる物性モ
デルのパラメータ抽出方法によれば、ステップ(b−
1)において誤差関数Sが増加する確率Qを正に保ちつ
つパラメータ群Pの更新を行うので、誤差関数が局所的
な解に陥ることを回避できる。しかも、誤差関数Sが増
加する確率Qを正に保ちつつも誤差関数Sの値が所定回
数減少した後に得られたパラメータ群Pは、真の解の近
傍に存在する。
【0075】この発明のうち請求項2にかかる物性モデ
ルのパラメータ抽出方法によれば、ステップ(b−1)
で得られたパラメータ群Pは、真の解の近傍に存在する
と考えられるので、単調減少する方向にのみパラメータ
群Pを更新するステップ(b−2)における収束性を高
めることができる。
【0076】この発明のうち請求項3にかかる物性モデ
ルのパラメータ抽出方法によれば、所定量は、パラメー
タ群Pが更新する度に、誤差関数Sが増加する確率Qの
低下に寄与する。従ってステップ(b−1)において繰
り返し回数を無駄に多くすることが回避される。
【0077】この発明のうち請求項4にかかる記録媒体
によれば、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の物性
モデルのパラメータ抽出方法をコンピュータに実行させ
ることができる。
【0078】この発明のうち請求項5にかかる非線形素
子の製造方法によれば、精度良くかつ計算コストの低い
特性シミュレーションに基づいて物理的プロセスが実行
されるので、作製される非線形素子も設計仕様に近く、
またコストが低く実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかるLSI装置の製造工程の概略
を例示するフローチャートである。
【図2】 本発明にかかるパラメータ抽出装置の動作を
示すフローチャートである。
【図3】 本発明の実施の形態の処理を分解して示すフ
ローチャートである。
【図4】 ニュートン法系解法を示すフローチャートで
ある。
【符号の説明】
1 回路シミュレータ、903 回路設計工程。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)少なくとも一つの外部要因からな
    る外部要因群の複数vi(i=1,2,…,m)の各々
    に対応して、それぞれ少なくとも一つの特性量からなる
    特性量群giが得られる物性に関し、各々の前記特性量
    s(sはiの採る任意の一つの値を示す)に対応する
    計算値の各々を、対応する前記外部要因群vs及び複数
    のパラメータからなるパラメータ群Pの関数f(vs
    P)として与える物性モデルを適用するステップと、 (b)各々の前記特性量gsとこれに対応する前記関数
    f(vs,P)との差に重み関数wsを乗じた値の平方
    を、前記外部要因群の複数に亘って総和した誤差関数S
    に対し、その最小値を与える前記パラメータ群Pを抽出
    するステップとを備え、 前記ステップ(b)は(b−1)前記誤差関数Sの値が
    増加する確率Qを正に保ちつつ、前記パラメータ群Pを
    更新しつつ、前記誤差関数Sの値を繰り返し求め、誤差
    関数Sの値が所定回数で減少すると停止するステップを
    有する、物性モデルのパラメータ抽出方法。
  2. 【請求項2】 前記ステップ(b)は(b−2)前記ス
    テップ(b−1)で最後に更新された前記パラメータ群
    Pを初期値として、前記誤差関数Sが単調減少する方向
    にのみ前記パラメータ群Pを更新するステップを更に有
    する、請求項1記載の物性モデルのパラメータ抽出方
    法。
  3. 【請求項3】 前記確率Qは、前記パラメータ群Pが更
    新される度に単調に変動する所定量に基づいて求めら
    れ、 前記所定量は前記パラメータ群Pが更新される度に前記
    確率Qを減少する傾向に寄与し、 前記ステップ(b−1)は、前記所定量が所定の値に到
    ることによっても停止する、請求項1又は2記載の物性
    モデルのパラメータ抽出方法。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか一つに記載の
    物性モデルのパラメータ抽出方法を単独で、若しくは予
    めコンピュータに備えられたプログラムと相俟って、前
    記コンピュータに実行させるプログラムが記録された、
    コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至3のいずれか一つに記載の
    物性モデルのパラメータ抽出方法を用いたデバイスモデ
    リングを採用する特性シミュレーションと、前記特性シ
    ミュレーションに基づく物理的プロセスとを実行して非
    線形素子を作製する、非線形素子の製造方法。
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