JP2001138700A - 立体模様を有するエンボス化粧シートおよびその製造方法 - Google Patents

立体模様を有するエンボス化粧シートおよびその製造方法

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JP2001138700A JP32105299A JP32105299A JP2001138700A JP 2001138700 A JP2001138700 A JP 2001138700A JP 32105299 A JP32105299 A JP 32105299A JP 32105299 A JP32105299 A JP 32105299A JP 2001138700 A JP2001138700 A JP 2001138700A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 任意の立体模様をヘアライン条溝によって表
現する。 【解決手段】 XYZ三次元座標系におけるXY平面上
に記録面Sxy、YZ平面上に投影面Syz、Z軸上に
基準軸Rを定義し、任意形状の三次元構造体Mを定義す
る。三次元構造体Mの表面上に多数の標本点Q(x,
y,z)を定義し、各標本点Qの位置における法線ベク
トルNを求める。法線ベクトルNを投影面Syzに投影
して得られる投影ベクトルNと基準軸Rとの交差角ξ
を求め、θ=ξ/2なる方位角θを定義する。標本点Q
を記録面Sxy上に投影して得られる投影点P(x,
y,0)上に、方位角θに応じた方向を向いた方位ベク
トルを定義することにより、記録面Sxy上にベクトル
場を形成する。このベクトル場に沿った方向に伸びる多
数のヘアライン条溝を凹凸パターンとして形成すれば、
その異方性反射により、疑似的に三次元構造体Mの立体
模様を表現できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、立体模様を有する
エンボス化粧シートおよびその製造方法に関し、特に、
建材・家具の表面や車両の内装などを構成するエンボス
化粧シートに、ヘアライン条溝を形成することにより立
体模様を表現する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】壁紙や床材などの建材の表面装飾、家具
の表面装飾、車両の内装装飾などに、エンボス化粧シー
トが広く利用されている。特に、多数のヘアライン条溝
が形成されたエンボス化粧シートでは、照明光の反射方
向に異方性が生じるため、ある方向から観察すると強い
反射光が得られ、別の方向から観察すると反射光は見ら
れないという現象が生じる。このような異方性反射を利
用して、木目柄パターンの照り模様を表現しようとする
試みが提案されている。たとえば、特開平10−287
033号公報には、木材繊維の配向性を考慮することに
より、多数のヘアライン条溝が形成されたエンボス化粧
シートを作成し、木目柄パターンの照り模様を表現する
方法が開示されている。また、特願平10−18771
8号明細書や特願平10−220237号明細書には、
このヘアライン条溝により照り模様を表現する方法の更
なる改良案が開示されている。これらの方法では、実用
上は、いずれもコンピュータを用いてヘアラインパター
ンに対応する画像データを演算により求め、この画像デ
ータに基づいて、たとえば露光やエッチングなどのプロ
セスを行い、物理的なエンボス版上に凹凸パターンを形
成し、このエンボス版を用いて、エンボス化粧シートを
大量生産するのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、ヘア
ライン条溝の異方性反射を利用すれば、木目柄パターン
の照り模様などが表現できることは既に実証されてい
る。しかしながら、建材や家具などの装飾模様は必ずし
も木目柄に限られるものではなく、種々のモチーフが装
飾模様として利用されている。特に、立体模様からなる
装飾は、高級感を醸し出すことができ、あらゆる物品の
表面装飾として好まれている。ところが、任意の立体模
様をヘアライン条溝によってエンボス化粧シート上に表
現する手法は、現在まで確立されていないため、任意の
立体模様を表現することができなかった。
【0004】そこで本発明は、任意の立体模様をヘアラ
イン条溝によって表現したエンボス化粧シートおよびそ
の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】(1) 本発明の第1の態
様は、異方性反射を生じる凹凸構造により立体模様を表
現したエンボス化粧シートを製造する方法において、所
定の記録面と、所定の基準軸と、この基準軸を含む所定
の投影面と、立体模様の原画像となる三次元構造体と、
を定義する段階と、定義した三次元構造体の表面上に多
数の標本点Qを定義し、これら各標本点Qのそれぞれに
ついて法線ベクトルNを求め、この法線ベクトルNを投
影面に投影して得られる投影ベクトルNと基準軸との
交差角ξを求める段階と、各標本点Qを記録面に投影し
て得られる投影点Pを定義し、各投影点Pについて、対
応する標本点Qについて求められた交差角ξに応じた方
位角θを定義する段階と、記録面上において、多数の投
影点Pについてそれぞれ所定の参照方向Uに対して方位
角θをなす方向を向いた方位ベクトルVを求め、記録面
上に求められた多数の方位ベクトルVに沿った多数のヘ
アラインHを定義する段階と、この多数のヘアラインH
を物理的な凹凸構造としてエンボス化粧シート上に形成
する段階と、を行うようにしたものである。
【0006】(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1
の態様に係る立体模様を有するエンボス化粧シートの製
造方法において、記録面に対して直交する基準軸を定義
し、この基準軸に平行な方向から見たときに隠面が生じ
ない構造をもった三次元構造体を定義し、交差角ξが、
−90°≦ξ≦+90°の範囲となるように設定するよ
うにしたものである。
【0007】(3) 本発明の第3の態様は、上述の第2
の態様に係る立体模様を有するエンボス化粧シートの製
造方法において、方位角θを、θ=k・ξ(ただし、k
は1未満の定数)なる式に基づいて定義し、方位角θが
交差角ξに対して線形関係を維持するように設定するよ
うにしたものである。
【0008】(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1
〜3の態様に係る立体模様を有するエンボス化粧シート
の製造方法において、XYZ三次元座標系において、変
数X,Y,Zの関係式として定義できる幾何学立体を、
三次元構造体として定義するようにしたものである。
【0009】(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1
〜3の態様に係る立体模様を有するエンボス化粧シート
の製造方法において、立体模様の原画像となる三次元構
造体を直接定義する代わりに、当該三次元構造体の表面
上の任意の標本点Qにおける法線ベクトルNを数式で定
義することにより、当該三次元構造体を間接的に定義す
るようにしたものである。
【0010】(6) 本発明の第6の態様は、上述の第1
〜5の態様に係る立体模様を有するエンボス化粧シート
の製造方法において、記録面上に投影点Pを定義し、こ
の投影点Pから逆に各標本点Qを求めるようにしたもの
である。
【0011】(7) 本発明の第7の態様は、上述の第6
の態様に係る立体模様を有するエンボス化粧シートの製
造方法において、記録面上にヘアラインHの起点となる
べき第1番目の投影点P1を定義し、第i番目の投影点
Piについて求められた方位ベクトルViの方向に、こ
の投影点Piから所定距離Liだけ隔たった位置に、第
(i+1)番目の投影点P(i+1)を定義する処理
を、i=1〜Iまで合計I回繰り返し行い、第1番目の
投影点P1から第(I+1)番目の投影点P(I+1)
に至るまでの合計(I+1)個の投影点を順に連結する
曲線に基づいて1本のヘアラインHを定義するようにし
たものである。
【0012】(8) 本発明の第8の態様は、上述の第7
の態様に係る立体模様を有するエンボス化粧シートの製
造方法において、記録面上に規則的に配置された複数の
格子点を定義し、これら格子点の位置を乱数に基づいて
ランダムに移動させ、移動後の各点の位置にそれぞれ起
点となるべき第1番目の投影点P1を定義するようにし
たものである。
【0013】(9) 本発明の第9の態様は、上述の第7
または第8の態様に係る立体模様を有するエンボス化粧
シートの製造方法において、第i番目の投影点Piと第
(i+1)番目の投影点P(i+1)との距離Liおよ
び繰り返し数Iを、乱数に基づいて決定するようにし、
個々のヘアラインHの長さがランダムに決定されるよう
にしたものである。
【0014】(10) 本発明の第10の態様は、異方性反
射を生じる凹凸構造により立体模様を表現したエンボス
化粧シートを製造する方法において、立体模様の原画像
となる三次元構造体の表面に配置された多数の標本点Q
と、これら各標本点Qの所定の記録面上への投影像に相
当する多数の投影点Pとを定義し、各標本点Qのそれぞ
れについて法線ベクトルNを求め、各標本点Qについて
の法線ベクトルNの特定の方向に関する方向成分に対し
て相関をもった方位ベクトルVを、記録面上の、当該標
本点Qに対応する投影点Pの位置に定義し、記録面上に
定義された多数の方位ベクトルVによって記録面上にベ
クトル場を形成し、このベクトル場に沿った向きに配置
された多数のヘアラインHを定義し、これらヘアライン
Hに相当する条溝によって凹凸構造を形成するようにし
たものである。
【0015】(11) 本発明の第11の態様は、上述の第
1〜10の態様に係る立体模様を有するエンボス化粧シ
ートの製造方法において、1本のヘアラインHの線幅
を、両端部において漸減させるようにしたものである。
【0016】(12) 本発明の第12の態様は、上述の第
1〜11の態様に係る立体模様を有するエンボス化粧シ
ートの製造方法におけるヘアラインHを定義する段階ま
でを演算処理によって実行し、ヘアラインHの内部領域
と外部領域とからなる二値画像を示す画像データを作成
する機能を有するエンボス化粧シート用画像データの作
成装置を構成するようにしたものである。
【0017】(13) 本発明の第13の態様は、上述の第
1〜11の態様に係る立体模様を有するエンボス化粧シ
ートの製造方法におけるヘアラインHを定義する段階ま
での演算処理をコンピュータに実行させるためのプログ
ラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録す
るようにしたものである。
【0018】(14) 本発明の第14の態様は、上述の第
1〜11の態様に係る立体模様を有するエンボス化粧シ
ートの製造方法におけるヘアラインHを定義する段階ま
でを実行することにより得られるヘアラインを、物理的
な凹凸構造としてエンボス化粧シートもしくはエンボス
版上に形成するようにしたものである。
【0019】(15) 本発明の第15の態様は、異方性反
射を生じる凹凸構造により立体模様が記録されているエ
ンボス化粧シートまたはエンボス版において、記録面上
には、多数のヘアライン条溝からなる凹凸構造が形成さ
れており、各ヘアライン条溝は、記録面上に定義された
所定のベクトル場に沿った向きに配置されており、立体
模様の原画像となる三次元構造体の表面上の標本点Qに
ついての法線ベクトルNの特定の方向に関する方向成分
と、標本点Qの記録面上への投影点Pにおけるベクトル
場の示す方向との間に所定の相関関係が形成されている
ようにしたものである。
【0020】(16) 本発明の第16の態様は、上述の第
15の態様に係るエンボス化粧シートまたはエンボス版
において、立体模様の原画像となる三次元構造体の表面
上の標本点Qについての法線ベクトルNについて、所定
の基準軸を含む投影面上への投影ベクトルNを定義し
た場合に、基準軸と投影ベクトルNとのなす交差角ξ
と、標本点Qの記録面上への投影点Pにおけるベクトル
場の示す方向との間に所定の相関関係が形成されている
ようにしたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】§1.本発明に係るエンボス化粧
シート作成の基本原理 ここでは、本発明に係る立体模様を有するエンボス化粧
シートを作成するための基本的な手順を、図1の流れ図
を参照しながら説明する。本発明の基本概念は、多数の
ヘアラインパターンをエンボス加工によって化粧シート
上に凹凸構造として構成し、この凹凸構造の異方性反射
の性質を利用して、立体模様の表現を行う点にある。図
示する流れ図において、ステップS1〜S5までの段階
は、多数のヘアラインからなる二次元平面パターンを定
義する段階であり、本実施形態の場合、コンピュータを
用いた演算処理によって、このヘアラインパターンに対
応する二値画像データを生成している。最後のステップ
S6は、このヘアラインパターンを示す二値画像データ
に基づいて、物理的な凹凸構造を形成する段階である。
【0022】まず、ステップS1において、所定の記録
面と、所定の基準軸と、この基準軸を含む所定の投影面
と、立体模様の原画像となる三次元構造体と、を定義す
る。ここで、記録面は、ヘアラインからなる二次元平面
パターンを形成するための二次元平面であり、後述する
演算により、この記録面上にヘアラインパターンが得ら
れることになる。基準軸は、後述する交差角ξを求める
ための基準となる軸であり、投影面はこの基準軸を含む
面として定義される。基準軸および投影面は、記録面に
対してどのような位置関係に定義してもかまわないが、
本発明に係るエンボス化粧シートでは、この投影面に沿
って視線を移動させたときに立体感が得られることにな
るので、エンボス化粧シートの一般的な観察態様を考慮
した場合、記録面に対して直交するような投影面を定義
し、この投影面上に含まれる1本の直線として基準軸を
定義するのが最も効率的である。一方、三次元構造体
は、立体模様の原画像としての役割を果たす構造体であ
り、その表面形状が立体模様として表現されることにな
る。したがって、表現したい立体模様に応じて、任意の
三次元構造体を定義することができる。
【0023】前述したように、図1のステップS1〜S
5の手順は、コンピュータを用いた演算処理によって実
行される。したがって、ステップS1で定義される記録
面、基準軸、投影面は、いずれも三次元座標系内の面も
しくは軸を示す式として定義されることになり、三次元
構造体はこの三次元座標系内に配置された立体データと
して定義されることになる。ここに示す実施形態では、
図2に示すようなXYZ三次元直交座標系におけるXY
平面を記録面Sxyとし、Z軸を基準軸Rとし、YZ平
面を投影面Syzとした例を示すこととし、このXYZ
三次元座標系上に、任意の立体形状をもった三次元構造
体Mが定義されているものとして、以下の説明を行うこ
とにする。任意形状をもった三次元構造体Mは、たとえ
ば、多数のポリゴンからなる構造体として定義すること
ができ、コンピュータ上では、これら各ポリゴンを示す
データ(たとえば、各ポリゴンの頂点座標を示すデー
タ)として取り扱うことができる。もっとも、単純な幾
何学立体を三次元構造体Mとして定義するのであれば、
単純な式によって立体形状を表現することも可能であ
る。このような単純な幾何学立体を用いた具体例につい
ては、§5で述べることにする。
【0024】続いて、ステップS2において、三次元構
造体Mの表面上に多数の標本点Qを定義する。この標本
点Qは、三次元構造体Mの表面を代表するためのサンプ
ル点として機能するので、できるだけ表面全体に分布す
るように定義するのが好ましい。図2に示す例では、三
次元構造体Mの表面上に定義された1つの標本点Q
(x,y,z)だけが示されている。このように、標本
点Qは、XYZ三次元座標系上における座標値(x,
y,z)をもった点として定義することができる。
【0025】次のステップS3では、各標本点Qについ
て法線ベクトルNを求め、これを投影面に投影して得ら
れる投影ベクトルNと基準軸との交差角ξが求められ
る。図2に示す例では、標本点Q(x,y,z)につい
ての法線ベクトルNが示されている。この法線ベクトル
Nは、標本点Q付近の微小面(三次元構造体Mの表面の
一部を構成する面)に対して垂直外側に向かうベクトル
として定義できる。この法線ベクトルNは、その各座標
軸方向成分(nx,ny,nz)によって表現すること
ができる。上述したように、この例では、YZ平面を投
影面Syzとしているため、この法線ベクトルNをYZ
平面に投影した投影像が、投影ベクトルNとして得ら
れることになる。図示のとおり、投影ベクトルNは、
標本点Q(x,y,z)を投影面Syz(YZ平面)に
投影して得られる投影点Q(0,y,z)を起点と
し、投影面Syzに含まれるベクトルであり、いわば、
法線ベクトルNのY軸方向成分およびZ軸方向成分の情
報のみをもったベクトルということができる。
【0026】図2の例では、Z軸を基準軸Rとしている
ため、この投影ベクトルNとZ軸とのなす角が交差角
ξとして得られることになる。なお、交差角ξは符号を
もった角度として定義するようする。たとえば、図2に
示すように、二次元YZ座標系において、投影ベクトル
が第1象限に位置する場合には交差角ξは正の値を
とり、第2象限に位置する場合には交差角ξは負の値を
とるように定義する。こうして求められた交差角ξは、
法線ベクトルNのY軸方向成分とZ軸方向成分との符号
を考慮した割合を示す情報をもった量ということがで
き、標本点Q付近の微小面の傾斜に関する情報が含まれ
ていることになる。なお、後述するように、実用上は、
投影ベクトルNが第3象限や第4象限に位置すること
がないように、三次元構造体Mの形状定義を行うのが好
ましく、この場合、交差角ξは、−90°(投影ベクト
ルNがY軸負方向を向いたベクトルとなる場合)から
+90°(投影ベクトルNがY軸正方向を向いたベク
トルとなる場合)の範囲内の値となる。
【0027】続くステップS4では、各標本点Qを記録
面に投影することにより投影点Pを定義し、この投影点
Pについて、対応する標本点Qについて求められた交差
角ξに応じた方位角θを定義する。たとえば、図2に示
す例では、XY平面を記録面Sxyとしているため、X
Y平面上に標本点Q(x,y,z)の投影点P(x,
y,0)が定義され、この投影点Pについて所定の方位
角θが定義される。図2には1つの投影点Pしか示され
ていないが、もちろん、記録面Sxy上には、多数の標
本点Qのそれぞれについて投影点Pが定義されることに
なり、各投影点Pには、対応する標本点Qについて求め
られた交差角ξに応じた方位角θがそれぞれ定義される
ことになる。ここで、方位角θは、投影ベクトルN
ついて求められた交差角ξに関連した角度として定義で
きれば、どのような定義を行ってもかまわないが、三次
元構造体Mの立体形状をできるだけ正確に表現する上で
は、方位角θが交差角ξに対して線形関係を維持するよ
うに設定するのが好ましい。具体的には、θ=k・ξ
(ただし、kは1未満の定数)なる式に基づいて方位角
θを定義すれば、方位角θの絶対値が交差角ξの絶対値
より大きくなることはないので、取り扱い上便利であ
る。ここでは、k=1/2に設定し、θ=ξ/2なる式
により方位角θを定義した例について述べることにす
る。
【0028】次のステップS5では、記録面上に定義さ
れた多数の投影点Pのそれぞれについて、方位ベクトル
Vが求められる。この方位ベクトルVは、所定の参照方
向Uに対して方位角θをなす方向を向いた記録面上のベ
クトルとして定義されるものである。図3は、記録面S
xyとなるXY平面の平面図であり、図2に示す投影点
P(x,y,0)について求められた方位ベクトルVが
示されている。上述したように、ここに述べる例では、
方位角θは、θ=ξ/2なる式により定義される。そこ
で、参照方向UとしてX軸正方向をとったとすれば、図
3に示すような方向ベクトルVが、投影点P(x,y,
0)について定義されることになる。参照方向Uは、最
終的に形成されるヘアラインの向きを決めるパラメータ
として機能するだけであり、記録面Sxy上の方向であ
れば、どのような方向に定義しても実質的な差はない。
【0029】結局、図2に示す1つの標本点Q(x,
y,z)について、記録面Sxy上に投影点P(x,
y,0)が定義され、図3に示すように、この投影点P
(x,y,0)について所定の方位ベクトルVが定義さ
れることになる。上述したように、標本点Qは、三次元
構造体Mの表面上のサンプル点として多数定義されてい
るため、これらについての投影点Pも記録面Sxy上に
多数定義されることになり、これら多数の投影点Pのそ
れぞれについて、方位ベクトルVが定義されることにな
る。そこで、ステップS5では、これら多数の方向ベク
トルVに沿った多数のヘアラインHが定義される。たと
えば、図4に示すように、記録面Sxy上に5つの投影
点P1〜P5が定義され、各投影点にそれぞれ方位ベク
トルV1〜V5が定義されていたとすると、これら各方
位ベクトルV1〜V5に沿った1本のヘアラインHを定
義することができる。図示のように、ヘアラインHは、
幅Wをもった細長い閉領域から構成されており、この例
では、1本のヘアラインの幅Wは約30μm程度、長さ
は3〜7mm程度である。記録面Sxy上には多数の投
影点Pが定義されており、これら多数の投影点を用いて
それぞれヘアラインを構成すれば、図5に示すように、
記録面Sxy上に多数のヘアラインHを定義することが
できる。
【0030】別言すれば、このステップS5の処理は、
記録面Sxy上に方位ベクトルVによるベクトル場を形
成し、このベクトル場に沿った方向に伸びる多数のヘア
ラインを定義する処理ということができる。すなわち、
記録面Sxy上に定義された多数の投影点Pには、それ
ぞれ所定の方向を向いた方位ベクトルVが対応づけられ
ることになるので、これら多数の方位ベクトルVによっ
て、記録面Sxy上にはベクトル場が形成されていると
考えることができ、ステップS5において定義される多
数のヘアラインは、このベクトル場に沿った方向に伸び
る細長いラインということができる。
【0031】こうして多数のヘアラインが定義できれ
ば、ヘアラインの内部領域(図5にハッチングを施した
領域)と外部領域とからなる二値画像を示す画像データ
を作成することができる。結局、図1の流れ図における
ステップS1〜S5の処理は、このような多数のヘアラ
インからなる二値画像を示す画像データを作成する処理
ということができ、この処理はコンピュータを用いた演
算により実行できる。最後に、ステップS6において、
多数のヘアラインを物理的な凹凸構造としてエンボス化
粧シート上に形成する処理が行われる。たとえば、図5
においてハッチングが施された内部領域を凹部、それ以
外の外部領域を凸部、とするような凹凸構造をもったエ
ンボス化粧シートを作成すれば、個々のヘアラインは細
長い溝として形成されることになる。逆に、図5におい
てハッチングが施された内部領域を凸部、それ以外の外
部領域を凹部、とするような凹凸構造をもったエンボス
化粧シートを作成すれば、個々のヘアラインは細長い山
脈状に隆起した構造体として形成されることになる。
【0032】§2.観察時に立体視が生じる理由 さて、上述のような方法で作成されたエンボス化粧シー
トを観察すると、原画像となった三次元構造体Mの立体
形状を視覚的に認識することができる。もちろん、エン
ボス化粧シート上に形成されている実際の構造は、多数
のヘアラインからなる凹凸構造にすぎず、原画像となっ
た三次元構造体Mの立体形状がそのまま再現されている
わけではない。しかしながら、エンボス化粧シートを観
察すると、その表面にあたかも三次元構造体Mの立体形
状が存在するかのような視覚的な効果が生じることにな
る。このような効果が生じる理由についての詳細な理論
的解析は、まだ行われていないが、本願発明者は、その
大まかな原理を次のように説明できるものと考えてい
る。
【0033】いま、図6の斜視図に示すように、厚みD
1をもったエンボスシートEの表面に、深さD2の細長
い溝G(以下、ヘアライン条溝Gと呼ぶ)が多数形成さ
れている場合を考える。多数のヘアライン条溝Gは幅W
1、間隔W2をもって互いに平行になるように形成され
ているものとする。このようなエンボスシートEは、そ
の表面から得られる反射光の強度が観察方向により異な
ることが知られている。このエンボスシートEを、ヘア
ライン条溝Gに平行な面で切断した断面を図7(a) に示
し、ヘアライン条溝Gに垂直な面で切断した断面を図7
(b) に示す。図7(a) に示すように、ヘアライン条溝G
に対して平行な方向から入射した光は、ヘアライン条溝
Gの底面で反射して、そのままヘアライン条溝Gに沿っ
た方向へ鏡面反射して射出する。これに対して、図7
(b) に示すように、ヘアライン条溝Gに対して垂直な方
向から入射した光は、ヘアライン条溝Gの壁面および底
面で何回も反射して、最終的にバラバラな方向へ拡散反
射光として射出する。このため、ヘアライン条溝Gに平
行な方向から観察すると、強い鏡面反射光が得られる
が、ヘアライン条溝Gに垂直な方向から観察すると、鏡
面反射光は弱くなる。
【0034】このように、ヘアライン条溝Gは異方性反
射を生じる性質があるため、その観察方向によって見え
方が異なることになる。逆に言えば、同じ方向から観察
した場合、形成されているヘアライン条溝Gの向きによ
って見え方が異なることになる。本発明に係る方法によ
って作成されたエンボス化粧シート上には、多数のヘア
ライン条溝Gが形成されている。しかも個々のヘアライ
ン条溝Gの向きは、記録面Sxy上に定義されたベクト
ル場に沿った向きとなっており、このベクトル場は、原
画像となる三次元構造体Mを構成する微小表面の特定の
方向に関する向き(微小表面に立てた法線ベクトルNの
投影面Syzに沿った方向に関する向き)を反映したも
のとなっている。このため、エンボス化粧シート上の任
意の点(記録面上の任意の投影点Pに対応)における反
射光強度は、原画像となる三次元構造体Mの対応点(標
本点Qに対応)における反射光強度に対して相関をもっ
た量になる。本発明に係るエンボス化粧シートによっ
て、原画像となる三次元構造体Mの立体形状を視覚的に
認識できる理由は、このように、エンボス化粧シート上
で実際に生じている反射現象と、仮想の三次元構造体に
ついて理論的に生じる反射現象との間に相関があるため
と考えられる。
【0035】要するに、本発明の基本概念は、立体模様
の原画像となる三次元構造体の表面に配置された多数の
標本点Qと、これら各標本点Qの所定の記録面上への投
影像に相当する多数の投影点Pとを定義し、各標本点Q
のそれぞれについて法線ベクトルNを求め、各標本点Q
についての法線ベクトルNの特定の方向に関する方向成
分に対して相関をもった方位ベクトルVを、記録面Sx
y上の、当該標本点Qに対応する投影点Pの位置に定義
し、この記録面Sxy上に定義された多数の方位ベクト
ルVによって記録面Sxy上にベクトル場を形成し、こ
のベクトル場に沿った向きに配置された多数のヘアライ
ンHを定義し、これらヘアラインHに相当するヘアライ
ン条溝Gによって凹凸構造を形成することにある。この
ような凹凸構造が形成されたエンボス化粧シートでは、
ヘアライン条溝Gによってベクトル場が表現されてお
り、このベクトル場が、三次元構造体M上の個々の標本
点Qについての法線ベクトルの特定の方向成分に相関関
係をもった場となっているため、三次元構造体Mに応じ
た立体模様が観察されるのである。
【0036】§3.パラメータの設定バリエーション もちろん、本発明に係る方法による立体形状の表現手法
は、いわゆるホログラムを用いた立体像の再生手法とは
異なるため、観察時において、原画像として用いた三次
元構造体が正しい立体像として再生されるわけではな
い。しかしながら、エンボス化粧シートの主たる用途
は、建材や家具などの表面装飾であるため、正確な立体
像再生を行う必要はなく、何らかの立体的な模様が観察
できれば十分である。したがって、本発明を実施する上
で定義すべき種々のパラメータは、かなり自由度をもっ
ていることになる。
【0037】たとえば、前述の実施形態では、XY平面
上に記録面Sxyを定義し、YZ平面上に投影面Syz
を定義し、Z軸上に基準軸Rを定義しているが、記録
面、投影面、基準軸といったパラメータの定義は、必ず
しもこのような定義にする必要はない。同一の三次元構
造体Mを用いたとしても、記録面、投影面、基準軸の定
義を変えることにより、最終的に得られるヘアラインパ
ターンはそれぞれ異なったものとなり、エンボス化粧シ
ート上に観察される立体模様もそれぞれ異なったものと
なるが、いずれにしても何らかの立体模様が得られるこ
とに変わりはない。ただ、以下に述べるように、投影面
をどのように定義するかによって、立体視効果が顕著に
得られる観察方向が左右されることになるので、実用上
は、記録面に対して垂直となるような面を投影面として
定義するのが好ましい。
【0038】ここでは、この投影面の意味について、も
う少し検討してみる。いま、図2に示すように、記録面
Sxy(XY平面)に直交するような投影面Syz(Y
Z平面)を定義した場合を考える。記録面Sxy上に得
られるヘアラインの向き(方位角θ)を決定する要素
は、投影ベクトルNと基準軸Rとのなす交差角ξであ
るが、この交差角ξには、各法線ベクトルNのうちのX
軸方向成分に関する情報は全く含まれていない。すなわ
ち、法線ベクトルNのX軸方向成分は、法線ベクトルN
を投影面Syzへ投影して、投影ベクトルNを得た時
点で失われてしまうことになる。したがって、投影面S
yzを用いて記録面Sxy上に得られたヘアラインパタ
ーンには、各法線ベクトルのX軸方向成分は一切含まれ
ていないことになる。本来、三次元構造体Mの立体形状
を正確に記録するためには、法線ベクトルNのX軸,Y
軸,Z軸方向成分のすべてを記録しておかねばならない
が、本発明では、このうちの1軸方向成分を無視した記
録が行われることになる。別言すれば、三次元のベクト
ル成分(三次元構造体Mの法線ベクトル成分)を、二次
元のベクトル成分(記録面上にヘアラインの流れとして
表現されたベクトル場)として表現してしまったため、
本発明に係るエンボス化粧シートでは、正確な三次元立
体を再生するための情報は既に失われているのである。
【0039】図2の例のように、YZ平面上に投影面S
yzを定義すると、法線ベクトルNのX軸方向成分の情
報が記録されなくなるので、記録面Sxy上に形成され
たヘアライン条溝を観察する際に、視点位置をX軸方向
に移動させたとしても、立体視効果は得られなくなるこ
とは直観的に理解できるであろう。結局、観察時の視点
位置から記録面へ向かう視線ベクトルなるものを定義し
た場合、この視線ベクトルが投影面Syzに含まれるよ
うな形態で、この視線ベクトルの向きを変化させると、
最も顕著な立体視効果が得られるものと考えられる。こ
のような理由から、投影面は、観察時において立体視効
果が最も顕著となる面としての意味をもつことになる。
したがって、垂直方向から観察されることが多い壁紙な
どの一般的な観察態様を考慮すると、記録面(この場
合、壁紙の表面)に対して垂直な投影面を設定しておけ
ば、一般的には、立体視効果の高いエンボス化粧シート
を作成することが可能になる。もちろん、天井材の表面
に用いる特殊なエンボス化粧シートであって、通常、斜
め45°の角度から観察されることが多いというような
場合には、記録面に対して45°の角度で交わるような
投影面を定義した方が、より顕著な立体視効果が期待で
きる場合もある。
【0040】また、本発明において原画像として用いる
三次元構造体Mは、最終的にエンボス化粧シート上に表
現される立体模様を左右する重要な素材というべきもの
であるが、本発明を実施するにあたって、基本的には、
どのような三次元立体を三次元構造体Mとして定義して
もかまわない。ただ、いわゆる隠面についてまで、記録
を行うことはできないので、実用上は、隠面の生じない
三次元構造体Mを用いるのが好ましい。具体的には、記
録面に対して直交する基準軸を定義し、この基準軸に平
行な方向から見たときに隠面が生じない構造をもった三
次元構造体を定義し、交差角ξが、−90°≦ξ≦+9
0°の範囲となるように設定するのが好ましい。
【0041】たとえば、図8に示す三次元構造体Maは
隠面の生じない三次元構造体の一例であり、図9に示す
三次元構造体Mbは隠面の生じる三次元構造体の一例で
ある。いずれも、XYZ三次元座標系におけるXY平面
上に記録面Sxyを定義し、YZ平面上に投影面Syz
を定義し、Z軸方向に基準軸Rを定義した例であり、投
影面Syzにおける断面が示されている。図8に示す三
次元構造体Maは、記録面Sxy上に載置した半球状の
立体であり、基準軸Rに平行な方向(図の上方)から見
たときには、隠面は一切生じていない。このように、隠
面が生じない立体の場合、その表面上の任意の標本点に
ついての交差角ξは、必ず−90°≦ξ≦+90°の範
囲となる。たとえば、図の右半分に位置する任意の標本
点Q1については、図示のとおり、投影面Syz上への
投影点Q1を起点とする投影ベクトルN1と基準軸
Rとの交差角ξ1が、0°≦ξ≦+90°の範囲内とな
り、図の左半分に位置する任意の標本点Q2について
は、図示のとおり、投影面Syz上への投影点Q2
起点とする投影ベクトルN2と基準軸Rとの交差角ξ
2が、−90°≦ξ≦0°の範囲内となる。このよう
に、隠面が生じない半球表面のような立体を三次元構造
体として定義した場合、記録面Sxy上には、この三次
元構造体のすべての表面をヘアラインとして記録するこ
とができる。
【0042】一方、図9に示す三次元構造体Mbは、記
録面Sxy上に載置した球状の立体であり、基準軸Rに
平行な方向(図の上方)から見たとき、下半分(いわゆ
る南半球部分)は隠面となってしまう。このように、隠
面が生じる立体の場合、その表面上の任意の標本点につ
いての交差角ξは、必ずしも−90°≦ξ≦+90°の
範囲内の角度にはならない。たとえば、図の右半分に位
置する任意の標本点Q1(隠面上の点ではない)につい
ては、図示のとおり、投影面Syz上への投影点Q1
を起点とする投影ベクトルN1と基準軸Rとの交差角
ξ1が、0°≦ξ≦+90°の範囲内となっているが、
図の左半分に位置する任意の標本点Q2(隠面上の点)
については、図示のとおり、投影面Syz上への投影点
Q2を起点とする投影ベクトルN2と基準軸Rとの
交差角ξ2が、−180°≦ξ≦−90°の範囲内とな
る。このように、隠面が生じる球表面のような立体を三
次元構造体として定義した場合、記録面Sxy上には、
この三次元構造体の一部分(北半球部分)しか記録でき
ない。したがって、実用上は、図8に示す例のように、
隠面の生じない三次元構造体を定義するのが好ましい。
【0043】続いて、方位角θというパラメータについ
て考えてみる。上述の実施形態では、投影ベクトルN
と基準軸Rとのなす交差角ξと、投影点Pにおける方位
ベクトルVの参照方向Uに対する方位角θとの間の相関
関係として、θ=ξ/2なる関係を定義していた。しか
し、方位角θなるパラメータの定義は、必ずしもこのよ
うな一義的な定義を行う必要はなく、交差角ξに対して
何らかの相関関係を有する角度として定義できればよ
い。ただ、三次元構造体Mの立体形状をできるだけ正確
に表現する上では、方位角θが交差角ξに対して線形関
係を維持するように設定するのが好ましく、具体的に
は、θ=k・ξ(ただし、kは1未満の定数)なる式に
基づいて方位角θを定義するのがよい。もちろん、θ=
0.9・ξとすることもできるし、θ=0.1・ξとす
ることもできるが、本願発明者が試みた限りでは、k=
1/2程度に設定してθ=ξ/2なる関係を用いるのが
実用的である。特に、前述したように、隠面の生じない
三次元構造体を用いた場合、交差角ξは、−90°≦ξ
≦+90°の範囲内の角度になる。このため、kがあま
り1に近いと、方位角θの分布が、−90°<θ<+9
0°の範囲となるため、作成されるヘアラインの指向性
が定まらなくなる。k=1/2程度に設定してθ=ξ/
2とすれば、方位角θの分布が、−45°<θ<+45
°の範囲となるため、参照方向Uへの指向性が得られる
ようになり、マクロ的に見れば、参照方向Uに沿った方
向に細長い多数のヘアラインを形成することができるよ
うになる。
【0044】§4.より実用的なヘアラインの作成方法 前述した§1では、図1の流れ図に基づいて本発明の基
本手順を説明した。この基本手順では、三次元構造体M
の表面に多数の標本点Qを定義し、各標本点Qについて
記録面上に投影点Pを求めている。このように、まず標
本点Qを定義し、続いて各標本点Qについて投影点Pを
求める、という手順は、本発明の基本思想に沿った手順
ではあるが、実用上は、必ずしもこのような手順を採る
必要はなく、実質的に同じ結果が得られる方法であれ
ば、別な手順を採ってもかまわない。実際、コンピュー
タを用いた演算を行うことを考えると、むしろ逆の手順
を採った方が実用的と言える。図1の流れ図におけるス
テップS1〜S5までの手順の最終目的は、記録面上に
得られたベクトル場に沿った多数のヘアラインパターン
を得ることである。したがって、記録面上のベクトル場
は、ヘアラインパターンの作成に必要な解像度で求まっ
ていれば足りることになり、それ以上の解像度でベクト
ル場を求める必要はない。このように、ヘアラインパタ
ーンの作成という観点から考えると、まず、記録面上に
必要な解像度で投影点Pを定義し、この投影点Pから逆
に各標本点Qを求めるようにした方が効率的である。以
下、このように、先に投影点Pを定義することにより、
記録面上にヘアラインパターンを作成する手法を採り入
れた具体的な手順を、図10および図11の流れ図に基
づいて説明する。
【0045】まず、ステップS11において、記録面、
基準軸、投影面、三次元構造体の定義を行う。これは図
1に示すステップS1と全く同様である。ここでは、前
述の実施形態と同様に、XY平面を記録面Sxyとし、
Z軸を基準軸Rとし、YZ平面を投影面Syzとし、任
意形状の三次元構造体Mを定義した場合について以下の
説明を行うことにする。
【0046】次に、ステップS12において、記録面S
xy上に規則的に配置された複数J個の格子点Tを定義
する。たとえば、図12には、記録面Sxy上に規則的
に配置された8個の格子点T(図では黒丸で示す)が示
されている。各格子点Tは、X軸方向のピッチがtx、
Y軸方向のピッチがtyとなるように規則的に配置され
ており、1つの格子点Tは、T(x,y)なる座標値に
よって定義される。各格子点Tは、1本のヘアラインの
起点となるべき点であり、これら各格子点Tからヘアラ
インが参照方向U(この例ではX軸方向)に伸びてゆく
ことになる。したがって、格子のピッチtxおよびty
は、隣接するヘアラインの間隔を左右するパラメータと
なる。この例では、ピッチtx=3000μm、ピッチ
ty=50μm程度に設定してある。
【0047】続くステップS13では、各格子点Tを乱
数に基づいてランダム移動させる処理を行う。上述のよ
うに、各格子点Tは1本のヘアラインの起点となるべき
点であるが、この起点が規則的に配置されていると、最
終的に規則的な配置をもったヘアラインが作成されるこ
とになり好ましくない。一般に、規則的な配置はエンボ
ス成形後に認識されやすく、表現したい立体感とは無関
係な印象を与える原因となる。したがって、本発明を実
施する上では、ヘアラインパターンはできるだけランダ
ムに配置されている方が好ましい。ここに示す例では、
図12に示すように規則的に配置された各格子点Tを、
X軸方向にランダムな変位量dxだけ変位させ、Y軸方
向にランダムな変位量dyだけ変位させることにより、
ランダム移動させている。図12に白丸で示す点P(x
+dx,y+dy)は、このようなランダム移動が行わ
れた後の格子点である。ここで、変位量dxの範囲を、
−tx/2≦dx≦+tx/2とし、変位量dyの範囲
を、−ty/2≦dy≦+ty/2とすれば、1つの格
子点T(x,y)の移動範囲は、図12に破線で示すよ
うな矩形領域F内に制限されることになる。
【0048】図13は、このようにして、8個の格子点
についてランダム移動を行った状態を示す図である。図
に黒丸で示された点P1(1)〜P1(8)が、移動後
の格子点を示している。実は、これらの各点P1(1)
〜P1(8)は、いずれもヘアラインHの起点となるべ
き第1番目の投影点に他ならない。以下の説明では、記
録面Sxy上に定義される投影点を、Pi(j)なる符
号で示すことにする。ここで、jは作成するヘアライン
のシリアル番号であり、iは1本のヘアラインを構成す
る各構成点のシリアル番号である。図13に示す8個の
点は、いずれもヘアラインの起点となるべき投影点であ
るから、いずれもi=1となっている。また、図示の例
では、合計8本のヘアラインを作成する単純なモデルを
示しているので、8個の投影点P1(1)〜P1(8)
のみが示されているが、実際にはより多数(合計J本)
のヘアラインが作成されることになり、J個の投影点P
1(1)〜P1(J)が定義されることになる。
【0049】このように、J本のヘアラインの起点とな
るべきJ個の投影点P1(1)〜P1(J)を定義する
際に、まず、ステップS12において、規則的に配置さ
れたJ個の格子点Tを定義し、続いて、ステップS13
において、これらをランダム移動させる、という手順を
採ることは、実用上、非常に意味のあることである。上
述したように、予期せぬ可視パターンを回避するために
は、各ヘアラインは、できるだけランダムに配置するの
が好ましい。しかしながら、完全にランダムに配置して
しまうと、ヘアラインの密度分布が一様にはならなくな
り、ヘアラインが密集した部分と、過疎な部分とが生じ
てしまい、やはり好ましくない結果となる。上述したよ
うに、一旦、規則的に配置した格子点をランダム移動さ
せる、という手法を採れば、記録面全体としては一様な
密度分布をもちながら、個別に見ればランダムに配置さ
れているという理想的なヘアライン分布を得ることがで
きる。
【0050】続いて、ステップS14において、ヘアラ
インのシリアル番号パラメータjを初期値1に設定し、
ステップS15において、ヘアラインの構成点のシリア
ル番号パラメータiを初期値1に設定し、以下の一連の
手順を実行する。
【0051】まず、ステップS16では、投影点Pi
(j)から逆に標本点Qi(j)を求め、投影点Pi
(j)についての方位ベクトルVi(j)を求める処理
が行われる。たとえば、j=1,i=1の場合、まず、
図13に示す投影点P1(1)についての標本点Q1
(1)が逆に求められる。投影点Pから標本点Qを求め
るには、単に、投影点Pにおいて記録面上に立てた垂線
と三次元構造体Mの表面との交点を求める演算を行えば
よい。得られた交点が標本点Qということになる。標本
点Qが求まったら、その位置における法線ベクトルNを
求めることができ、投影ベクトルNを求めることがで
きる。したがって、交差角ξを求めることができ、方位
角θを決定することができる。投影点Pから逆に標本点
Qを求めるのは、この方位角θを決定するために他なら
ない。方位角θが求まれば、記録面上において、所定の
参照方向Uに対して、方位角θだけ隔たった方向を向い
たベクトルとして、方位ベクトルVを求めることができ
る。
【0052】図14は、第j番目のヘアラインの形成過
程を示す平面図(記録面Sxyを示す図)である。上述
したステップS16の手順を実行することにより、第j
番目のヘアラインHjの起点となるべき第1番目の投影
点P1(j)について、方位ベクトルV1(j)が求ま
ることになる。ここで、方位ベクトルV1(j)は所定
の単位長さをもった単位ベクトルとする。続くステップ
S17では、乱数を用いて距離Li(j)を決定し、第
i番目の投影点Pi(j)から方位ベクトルVi(j)
の方向に、距離Li(j)だけ隔たった位置に、第(i
+1)番目の投影点Pi+1 (j)が定義される。図14
に示す例の場合、第1番目の投影点P1(j)から、方
位ベクトルV1(j)の方向に、ランダムな距離L1
(j)だけ隔たった位置に、第2番目の投影点P2
(j)が定義されることになる。
【0053】このステップS16およびS17の処理
は、ステップS18およびS19を経て、i=1〜Iま
で合計I回繰り返して行われる。ここで、Iは乱数によ
って決定される整数である。図14に示す例は、I=5
に設定した例である。すなわち、ステップS16および
S17の処理が5回繰り返し実行された結果、第1番目
の投影点P1(j)から第6番目の投影点P6(j)が
定義されている。
【0054】続いて、図11に示すステップS20で
は、こうして得られた第1番目の投影点P1(j)から
第(I+1)番目の投影点PI+1 (j)に至るまでの合
計(I+1)個の投影点を、ベジェ曲線あるいはスプラ
イン曲線などを用いて滑らかに連結することにより、第
j番目のヘアラインHjの骨格が形成される。たとえ
ば、図14に示す例の場合、6つの投影点P1(j)〜
P6(j)を、ベジェ曲線あるいはスプライン曲線など
を用いて滑らかに連結することにより、図15に太線で
示すようなヘアラインHjの骨格が形成されることにな
る。
【0055】更に、ステップS21において、このヘア
ラインHjの骨格に、幅を定義し、幅をもったヘアライ
ンを定義する。ここに示す実施形態では、図16に示す
ような幅関数を定義しておき、ヘアラインHjの骨格に
この幅関数を適用し、両端部において漸減するような幅
を定義している。図16のグラフは、ヘアラインの骨格
に沿った位置を横軸に、当該位置における幅を縦軸にと
ったグラフであり、横軸は0〜1の範囲に規格化されて
いる。このような幅関数を用いれば、ヘアライン骨格全
長のそれぞれ30%に相当する両端部分において線幅が
漸減し、残りの40%に相当する中央部分において一定
の幅Wをもつような幅をもったヘアラインを定義するこ
とができる。図15に示す輪郭線Cjは、ヘアラインH
jの骨格に、このような幅関数を適用して得られる幅を
もったヘアラインの輪郭線を示している。
【0056】図4あるいは図5に示す例では、いずれの
部分も同一幅WをもったヘアラインHを作成する例を示
したが、実際には、図15に示すように、両端部分にお
いて幅が漸減するようなヘアラインを定義するのが好ま
しい。その理由は、ヘアラインの幅Wが、§2で述べた
異方性反射に悪影響を与えることを抑制するためであ
る。たとえば、図17(a) に示すように、端部に至るま
で同一幅Wをもったヘアラインが形成されていた場合、
ヘアライン条溝の側部エッジE1に照明光M1が照射さ
れた場合の反射態様と、ヘアライン条溝の端部エッジE
2に照明光M2(照明光M1に直交する方向を向いてい
る)が照射された場合の反射態様とが近似するため、異
方性反射の効果が若干失われることになる。これに対
し、図17(b) に示すように、端部において幅Wが漸減
するようなヘアラインが形成されていた場合、ヘアライ
ン条溝の側部エッジE3に照明光M3が照射された場合
の反射態様と、ヘアライン条溝の端部に照明光M4(照
明光M3に直交する方向を向いている)が照射された場
合の反射態様とは異なるため、異方性反射の効果が損な
われることはない。
【0057】このようにして、第j番目のヘアラインH
jを形成する工程が、ステップS22およびS23を経
て、合計J回(Jは、ステップS12で発生させた格子
点の数)だけ繰り返し実行され、合計J本の幅をもった
ヘアラインが形成されることになる。なお、ステップS
17において利用される距離Li(j)は、たとえば、
Li(j)=α+β・Rnd(ただし、α,βは所定の
定数、Rndは0〜1の間の乱数)のような式で定義し
ておけば、α〜(α+β)の間のランダムな値にするこ
とができる。また、ステップS18において利用される
繰り返し回数Iも、たとえば、I=γ+δ・Rnd(た
だし、γ,δは所定の定数、Rndは0〜1の間の乱
数)のような式で定義しておけば、γ〜(γ+δ)の間
のランダムな値にすることができ、各ヘアラインごとに
その全長をランダムにすることができる。
【0058】こうして、記録面上のランダムな位置に、
ランダムな長さをもった多数のヘアラインを定義するこ
とができる。しかもこれらのヘアラインの流れは、原画
像として定義した三次元構造体の微小面の向きに関連し
たものとなっている。なお、上述のような手順で合計J
本の幅をもったヘアラインを定義すると、ヘアライン同
士が記録面上で重なりあうケースもありうる。たとえ
ば、図18に示す例では、4本のヘアラインH1〜H4
のうち、ヘアラインH2とH3とが部分的に重なりを生
じている。このような重なりが生じるような場合、後か
ら発生させるヘアラインの向きを若干修正することによ
り、重なりを回避するようなことも可能であるが、本願
発明者が実際に作成したエンボス化粧シートを見る限り
は、このような重なりが生じていても、立体模様の観察
には何ら支障は生じていない。したがって、図18に示
すような重なりが生じていても、何ら問題は生じないと
考えられる。
【0059】図11のステップS24では、こうして作
成されたJ本の幅をもったヘアラインH1〜HJの内部
領域と外部領域とを区別する二値画像を示す画像データ
が作成される。たとえば、図18に示す例では、ハッチ
ングを施した部分が内部領域、それ以外の部分が外部領
域となる。そして、ステップS25では、この画像デー
タに基づいてエンボス版が作成される。このエンボス版
は、最終的な製品であるエンボス化粧シートを大量生産
するための版として用いられるものである。コンピュー
タから出力される二値画像データに基づいて、凹凸構造
をもったエンボス版を作成する手法としては、既に種々
の方法が知られているため、ここでは具体的な説明は省
略する。こうしてエンボス版が作成できれば、ステップ
S26において、このエンボス版を用いて、透明シート
の表面にエンボス加工が行われ、最後のステップS27
において、このエンボス加工済みの透明シートが印刷シ
ート上に貼り合わされ、最終製品であるエンボス化粧シ
ートが作成される。
【0060】図19は、エンボス版10と、透明シート
20と、印刷シート30との関係を示す断面図である。
エンボス版10上には、二値画像に基づく凹凸パターン
が形成されている。たとえば、ヘアラインの内部領域が
凸部11となり、外部領域が凹部12となる。このエン
ボス版10を用いて、透明シート20上にエンボス加工
を施すと、凹凸関係が逆転し、ヘアラインの内部領域が
凹部21となり、外部領域が凸部22となる。したがっ
て、この場合、透明シート20上には、ヘアライン条溝
が形成されることになる。もちろん、エンボス版10を
作成する際に凹凸の関係を逆にしておけば、透明シート
20上には、ヘアラインに相当する部分が隆起した構造
が得られる。印刷シート30は、表面に何らかの絵柄
(無地でもよい)が印刷されたシートであり、透明シー
ト20を印刷シート30上に貼り合わせることにより、
エンボス化粧シートが作成される。このエンボス化粧シ
ートでは、表面にヘアラインの凹凸構造が形成されてお
り、透明シート20を通して印刷シート30上の印刷面
を観察することができる。したがって、印刷シート30
に印刷された絵柄に、透明シート20の凹凸構造による
立体模様が重なって観察されることになる。もちろん、
印刷シート30の絵柄を無地にしておけば、立体模様の
みが観察されることになる。
【0061】このように、透明シート20と印刷シート
30との積層構造によりエンボス化粧シートを形成する
ようにすれば、印刷シート30上に形成された平面的な
印刷模様と、透明シート20の凹凸構造により観察され
る立体模様との組み合わせにより、種々の模様パターン
を表現することが可能になる。もっとも、本発明に係る
エンボス化粧シートは、必ずしもこのような積層構造を
採る必要はなく、印刷シート30は必須の構成要素では
ない。要するに、本発明では、何らかのシート上にヘア
ラインからなる凹凸構造が形成されていれば足り、必ず
しも透明シートを用いる必要はない。また、家具の表面
装飾などに適用する場合であれば、必ずしもシート状の
ものを家具の表面に貼り付ける必要はなく、たとえば、
家具の構成材料自体の表面に、ヘアラインからなる凹凸
構造を形成しても、本発明に係るエンボス化粧シートを
貼り付けたのと実質的に同等の効果が得られる。本明細
書では、説明の便宜上、最も一般的な利用形態であるエ
ンボス化粧シートについて、本発明を適用した例を述べ
ることにするが、本発明は、シート状の装飾物への適用
に限定されるものではなく、これと実質的に同等の効果
が得られる表面装飾への適用も可能である。
【0062】§5.いくつかの実施例の提示 ここでは、§4で述べた方法で作成したいくつかの実施
例を提示する。いずれも、図2に示すように、XY平面
上に記録面Sxyを定義し、YZ平面上に投影面Syz
を定義し、Z軸上に基準軸Rを定義して実際に作成した
エンボス化粧シートに、所定方向から光を照射し、所定
の視点から観察したときのパターンを示してある。実際
には、視点位置を移動させることにより、原画像となっ
た三次元構造体Mの立体視が生じることになる。
【0063】図20の上半分に示す半球パターンは、図
8に示すような半球を多数並べた三次元構造体を用いた
例である。この例では、大小2種類の半球が用いられて
いるが、小さな半球は、図8に示すような凸半球(記録
面Sxyの上に置かれた北半球の外側面に相当)のパタ
ーンであり、大きな半球は凹半球(記録面Sxyの下に
置かれた南半球の内側面に相当)のパターンである。こ
のような三次元構造体Mは、XYZ三次元座標系におい
て、変数X,Y,Zの関係式を用いた幾何学立体として
定義することが可能である。図20の下半分には、球の
中心を原点、半径をrとしたときの、凸半球および凹半
球を定義する式を示してある。いずれも、立体を定義す
る式は、各立体表面の任意の標本点Qの(x,y,z)
座標値を定義する式となっており、法線ベクトル成分
(nx,ny,nz)は、標本点Q(x,y,z)に立
てた法線ベクトルのX軸,Y軸,Z軸方向成分を定義す
る式となっている。たとえば、凸半球の場合、任意の標
本点Q(x,y,z)について、z=(r−x−y
1/2なる式が成り立ち、この標本点Q(x,y,
z)に立てた法線ベクトルは、(x,y,z)なるベク
トル成分を有していることになる。
【0064】図21の上半分に示す円錐パターンは、底
面が記録面Sxyに一致するように、記録面Sxy上に
密集して配置された多数の円錐を三次元構造体として用
いた例である。この例では、いずれも凸円錐(頂点のZ
座標が正の値をとる円錐:上向き円錐)が用いられてい
るが、凹円錐(頂点のZ座標が負の値をとる円錐:下向
き円錐)を用いることも可能である。図21の下半分に
は、底面の中心を原点、半径をr、高さをhとしたとき
の、凸円錐および凹円錐を定義する式および法線ベクト
ルを示す式を掲載してある。
【0065】図22の上半分に示す円柱パターンは、中
心軸が記録面Sxyに含まれ、X軸に平行となるよう
に、記録面Sxy上に密集して配置された多数の円柱を
三次元構造体として用いた例である。このパターンの上
半分では凸円柱(記録面Sxyの上方に位置する上半分
の円柱の外側面)が用いられており、このパターンの下
半分では凸円柱と凹円柱(記録面Sxyの下方に位置す
る下半分の円柱の内側面)とを交互に配置した構造体が
用いられている。図22の下半分には、円柱の中心軸を
X軸、半径をrとしたときの、凸円柱および凹円柱を定
義する式および法線ベクトルを示す式を掲載してある。
【0066】図23に示す部分円柱パターンは、図24
に示すような部分円柱を敷き詰めた三次元構造体を用い
た場合のパターンである。このように、幾何学図形の一
部分のみを利用してパターンを作成することも可能であ
る。図25に示す金網パターンは、図26に示すような
蛇行円柱を縦横に組み合わせた三次元構造体を用いた場
合のパターンである。図26に示す蛇行円柱は、通常の
円柱を示す式に、正弦波を示す式を組み合わせることに
より、数式定義が可能である。
【0067】これまで述べた例は、いずれも三次元構造
体を、幾何学図形を示す式を用いて定義していたが、本
発明で用いる三次元構造体は、任意の標本点Qにおける
法線ベクトルNを求めることができれば、どのような定
義を行ってもかまわない。したがって、多数の微小面の
集合によって三次元構造体を定義することも可能であ
る。最近は、コンピュータグラフィックス技術の発達に
より、任意の三次元形状をポリゴンとして表現すること
が容易に行えるようになってきており、このようなコン
ピュータグラフィックスによって作成されたポリゴンデ
ータを、三次元構造体として利用すれば、非常にバラエ
ティーに富んだ立体模様を作成することが可能になる。
【0068】また、本発明を実施する上では、三次元構
造体自体のデータは必ずしも必要ではない。もちろん、
本発明を構成する技術思想としては、何らかの三次元構
造体を定義し、この三次元構造体を構成する微小面の向
きを、ヘアラインによるベクトル場として表現すること
になるのであるが、実務上は、任意の標本点Qにおける
法線ベクトルNさえ定義できれば、本発明に係るエンボ
ス化粧シートを作成することが可能になる。すなわち、
立体模様の原画像となる三次元構造体を直接定義する代
わりに、当該三次元構造体の表面上の任意の標本点Qに
おける法線ベクトルNを数式などで定義すれば、当該三
次元構造体を間接的に定義することが可能になり、当該
三次元構造体に基づく立体模様をエンボス化粧シート上
に記録することが可能になる。
【0069】図27は、このような考え方に基づいて、
三次元構造体を構成する立体を定義する式を用いずに、
任意の標本点位置における法線ベクトルを定義する式の
みを用い、エンボス化粧シートを作成した例を示してい
る。図27の上半分には、法線ベクトルのみ定義するこ
とにより得られたパターンが示されており、図27の下
半分には、定義された法線ベクトルの式が示されてい
る。この式を用いれば、任意の座標位置(x,y,z)
に存在する標本点Q(x,y,z)における法線ベクト
ルのX軸成分nx,Y軸成分ny,Z軸成分nzは、n
x=t・cosα、ny=(1−t)・cosβ、nz
=(1−nx−ny1/2なる式によって計算さ
れる。ただし、αは、α=f1(x)で示されるように
変数xの関数であり、βは、β=f2(y)で示される
ように変数yの関数である。また、tは、0<t<1の
範囲内の定数であり、cosαの成分とcosβの成分
との按分比を決めるパラメータとして機能する。
【0070】この例のように法線ベクトルの定義が行わ
れれば、当然、そのような法線ベクトルを有する三次元
構造体が一義的に定義できる。ただし、具体的な式によ
る定義の対象となっているのは法線ベクトルであって、
三次元構造体自体ではない。三次元構造体は、法線ベク
トルを定義する式によって間接的に定義されていること
になる。このように、本発明を実施するにあたって、実
務上は、三次元構造体自体を直接定義する必要はなく、
法線ベクトルさえ定義できれば十分である。
【0071】最後に、本発明を用いて、疑似的にカーボ
ンクロスの質感を表現した実施例を述べておく。カーボ
ンクロスは、光沢のある帯状の糸を、縦糸および横糸と
して用い、縦横に平織したファブリックであり、機械
的、無機的な独特の光沢を有する特徴をもっているた
め、自動車の内装材などに好んで用いられている。この
カーボンクロスを観察する際に視点位置を移動させてゆ
くと(あるいは、照明を移動させてゆくと)、明るく光
って見える部分と暗く翳って見える部分とが順次移動し
てゆき光沢が移動して見える。このため、独特の高級感
が醸し出されることになる。図28(a) ,(b) は、この
カーボンクロスの表面立体形状を示す平面図である。い
ずれも、実際のカーボンクロスを模擬的に示した平面図
であり、図の寸法値Dの実寸は、4mm程度である。図
示のとおり、このカーボンクロスは、全体的に市松模様
の形態をなしている。
【0072】しかしながら、このカーボンクロスはかな
り高価なファブリックであるため、コストを下げるため
に、疑似的なカーボンクロスもしばしば用いられてい
る。この疑似的なカーボンクロスを作成するには、本物
のカーボンクロスを写真撮影し、これを印刷により再現
する方法が採られるが、このような方法で作成された疑
似的なカーボンクロスには、当然ながら、観察時の光沢
の移動はみられない。
【0073】本発明に係るエンボス化粧シートを用いれ
ば、観察時に光沢移動が見られる疑似カーボンクロスを
作成することが可能になる。そのためには、実際のカー
ボンクロスの凹凸形状を模した三次元構造体を定義し、
この三次元構造体に基づいてエンボス化粧シートを作成
すればよい。もっとも、実際のカーボンクロスは、図2
8に示すように、全体的に市松模様を構成しているた
め、図の一辺Dの正方形の領域(以下、単位領域とい
う)についてのヘアラインパターンが得られれば、これ
を繰り返し配置することにより、任意の面積をもった疑
似カーボンクロスパターンを構成することができる。た
だし、各単位領域ごとのパターンは、図示のとおり、1
つおきに90°回転させたパターンとなるため、同一の
パターンを1つおきに90°回転させながら割り付ける
作業が必要になる。
【0074】1つの単位領域についてのヘアラインパタ
ーンは、図29に示すような「かまぼこ型」の三次元構
造体を定義すればよい。この図29では、図示の便宜
上、Y軸方向に関してのみ中央部が上に凸となる立体形
状が示されているが、実際には、X軸方向に関しても、
中央部がある程度、上に凸となる立体形状を用いるのが
好ましい。このような立体形状をもった三次元構造体
は、任意の投影点P(x,y)に対応する標本点Qにお
ける法線ベクトルNのX軸方向成分をnx、Y軸方向成
分をnyとすれば、 (1) x≧0,y≧0の範囲内においては、 nx=ax・xpx,ny=ay・ypy (2) x≧0,y<0の範囲内においては、 nx=ax・xpx,ny=−ay・ypy (3) x<0,y≧0の範囲内においては、 nx=−ax・xpx,ny=ay・ypy (4) x<0,y<0の範囲内においては、 nx=−ax・xpx,ny=−ay・ypy なる法線ベクトル成分によって間接的に定義することが
可能である。ここで、ax,ayは、それぞれX軸方向
およびY軸方向の膨らみの大きさを示すパラメータ、p
x,pyは、それぞれX軸方向およびY軸方向の膨らみ
カーブの形状を左右するパラメータであり、この三次元
構造体の底面は原点を中心点とする一辺Dなる正方形で
あり、寸法D=2となるように規格化されている。
【0075】
【発明の効果】以上のとおり本発明に係る立体模様を有
するエンボス化粧シートによれば、任意の立体模様をヘ
アライン条溝によって表現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るエンボス化粧シート作成の基本的
な手順を示す流れ図である。
【図2】図1の流れ図におけるステップS1において定
義される記録面Sxy、基準軸R、投影面Syz、三次
元構造体Mを、XYZ三次元直交座標系において定義し
た具体例を示す斜視図である。
【図3】記録面Sxy上に投影点Pおよび方位ベクトル
Vを定義した一例を示す平面図である。
【図4】記録面Sxy上に定義された複数の投影点Pお
よび方位ベクトルVに基づいてヘアラインHを形成した
状態を示す平面図である。
【図5】記録面Sxy上に多数のヘアラインHを形成し
た状態を示す平面図である。
【図6】本発明に係るエンボス化粧シートの表面に形成
されるヘアライン条溝Gの構成を示す斜視図である。
【図7】図6に示すヘアライン条溝Gの異方性反射の原
理を説明する断面図である。
【図8】上方から見た場合に隠面の生じない半球を三次
元構造体Maとして用いた例を示すXYZ三次元座標系
の側面図である。
【図9】上方から見た場合に隠面が生じる全球を三次元
構造体Mbとして用いた例を示すXYZ三次元座標系の
側面図である。
【図10】本発明に係るエンボス化粧シート作成のより
実用的な手順の前半部分を示す流れ図である。
【図11】本発明に係るエンボス化粧シート作成のより
実用的な手順の後半部分を示す流れ図である。
【図12】図10のステップS12の手順によって、記
録面Sxy上に定義された8個の格子点Tを示す平面図
である。
【図13】図10のステップS13の手順によって、8
個の格子点Tをランダム移動させ、第1の投影点P1を
作成した状態を示す平面図である。
【図14】図10のステップS18までの手順を完了す
ることによって、記録面Sxy上に定義された6個の投
影点P1(j)〜P6(j)を示す平面図である。
【図15】図14に示す6個の投影点P1(j)〜P6
(j)を滑らかに結ぶことにより形成された第j番目の
ヘアラインHjを示す平面図である。
【図16】図15に示すヘアラインHjに幅を定義する
ための幅関数の一例を示すグラフである。
【図17】図16に示す幅関数を用いて、両端部にゆく
ほど幅が漸減するヘアラインを形成させる理由を説明す
る平面図である。
【図18】部分的に重複したヘアラインパターンの一例
を示す平面図である。
【図19】本発明に係る方法で作成されるエンボス版1
0、透明シート20、印刷シート30の構造を示す断面
図である。
【図20】本発明に係る方法で作成されたエンボス化粧
シート上に表現された半球パターンを示す平面図および
この半球パターンの原画像となる三次元構造体を定義す
る式を示す図である。
【図21】本発明に係る方法で作成されたエンボス化粧
シート上に表現された円錐パターンを示す平面図および
この円錐パターンの原画像となる三次元構造体を定義す
る式を示す図である。
【図22】本発明に係る方法で作成されたエンボス化粧
シート上に表現された円柱パターンを示す平面図および
この円柱パターンの原画像となる三次元構造体を定義す
る式を示す図である。
【図23】本発明に係る方法で作成されたエンボス化粧
シート上に表現された部分円柱パターンを示す平面図で
ある。
【図24】図23に示す部分円柱パターンの原画像とな
る部分円柱の斜視図である。
【図25】本発明に係る方法で作成されたエンボス化粧
シート上に表現された金網パターンを示す平面図であ
る。
【図26】図25に示す金網パターンの原画像となる蛇
行円柱の斜視図である。
【図27】原画像となる三次元構造体を定義する代わり
に、法線ベクトルのみを定義して作成されたエンボス化
粧シート上に表現されたパターンを示す平面図および当
該法線ベクトルを定義する式を示す図である。
【図28】一般的なカーボンクロスの表面立体形状を示
す平面図である。
【図29】図28に示すカーボンクロスを疑似的に作成
するために利用される三次元構造体の斜視図である。
【符号の説明】
10…エンボス版 11…凸部 12…凹部 20…透明シート 21…凹部 22…凸部 30…印刷シート 31…印刷面 Cj…幅をもったヘアラインHjの輪郭線 D…カーボンクロスの1単位領域を構成する正方形の一
辺の長さ D1…エンボスシートEの厚み D2…ヘアライン条溝Gの深さ E…エンボスシート E1〜E3…ヘアライン条溝Gのエッジ部 F…矩形領域 G…ヘアライン条溝 H,Hj,H1〜H4…ヘアライン L,L1(j)〜L6(j)…隣接する投影点間の距離 M,Ma,Mb…三次元構造体 M1〜M4…照明光 N…法線ベクトル N,N1,N2…投影面上への投影ベクトル P,P(x,y,0),P1〜P5,P1(1)〜P1
(8),P1(j)〜P6(j)…記録面上の投影点 Q,Q(x,y,z)…標本点 Q(0,y,z),Q1,Q2…投影面上の投影
点 R…基準軸 S1〜S27…流れ図の各ステップ Sxy…記録面(XY平面) Syz…投影面(YZ平面) T(x,y)…格子点 tx,ty…格子点の配置ピッチ U…参照方向 V,V1〜V5,V1(j)〜V5(j)…方位ベクト
ル W…ヘアラインの幅 W1…ヘアライン条溝Gの幅 W2…ヘアライン条溝Gの間隔 ξ,ξ1,ξ2…投影ベクトルと基準軸との交差角 θ,θ1,θ2…交差角に基づいて定まる方位角

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 異方性反射を生じる凹凸構造により立体
    模様を表現したエンボス化粧シートを製造する方法であ
    って、 所定の記録面と、所定の基準軸と、この基準軸を含む所
    定の投影面と、立体模様の原画像となる三次元構造体
    と、を定義する段階と、 前記三次元構造体の表面上に多数の標本点Qを定義し、
    これら各標本点Qのそれぞれについて法線ベクトルNを
    求め、この法線ベクトルNを前記投影面に投影して得ら
    れる投影ベクトルNと前記基準軸との交差角ξを求め
    る段階と、 前記各標本点Qを前記記録面に投影して得られる投影点
    Pを定義し、各投影点Pについて、対応する標本点Qに
    ついて求められた前記交差角ξに応じた方位角θを定義
    する段階と、 前記記録面上において、多数の投影点Pについてそれぞ
    れ所定の参照方向Uに対して方位角θをなす方向を向い
    た方位ベクトルVを求め、前記記録面上に求められた多
    数の方位ベクトルVに沿った多数のヘアラインHを定義
    する段階と、 前記多数のヘアラインHを物理的な凹凸構造としてエン
    ボス化粧シート上に形成する段階と、 を有することを特徴とする立体模様を有するエンボス化
    粧シートの製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の製造方法において、 記録面に対して直交する基準軸を定義し、この基準軸に
    平行な方向から見たときに隠面が生じない構造をもった
    三次元構造体を定義し、交差角ξが、−90°≦ξ≦+
    90°の範囲となるように設定することを特徴とする立
    体模様を有するエンボス化粧シートの製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の製造方法において、 方位角θを、θ=k・ξ(ただし、kは1未満の定数)
    なる式に基づいて定義し、方位角θが交差角ξに対して
    線形関係を維持するように設定することを特徴とする立
    体模様を有するエンボス化粧シートの製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方
    法において、 XYZ三次元座標系において、変数X,Y,Zの関係式
    として定義できる幾何学立体を、三次元構造体として定
    義することを特徴とする立体模様を有するエンボス化粧
    シートの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方
    法において、 立体模様の原画像となる三次元構造体を直接定義する代
    わりに、当該三次元構造体の表面上の任意の標本点Qに
    おける法線ベクトルNを数式で定義することにより、当
    該三次元構造体を間接的に定義するようにしたことを特
    徴とする立体模様を有するエンボス化粧シートの製造方
    法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方
    法において、 記録面上に投影点Pを定義し、この投影点Pから逆に各
    標本点Qを求めるようにすることを特徴とする立体模様
    を有するエンボス化粧シートの製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の製造方法において、 記録面上にヘアラインHの起点となるべき第1番目の投
    影点P1を定義し、 第i番目の投影点Piについて求められた方位ベクトル
    Viの方向に、この投影点Piから所定距離Liだけ隔
    たった位置に、第(i+1)番目の投影点P(i+1)
    を定義する処理を、i=1〜Iまで合計I回繰り返し行
    い、 第1番目の投影点P1から第(I+1)番目の投影点P
    (I+1)に至るまでの合計(I+1)個の投影点を順
    に連結する曲線に基づいて1本のヘアラインHを定義す
    ることを特徴とする立体模様を有するエンボス化粧シー
    トの製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載の製造方法において、 記録面上に規則的に配置された複数の格子点を定義し、
    これら格子点の位置を乱数に基づいてランダムに移動さ
    せ、移動後の各点の位置にそれぞれ起点となるべき第1
    番目の投影点P1を定義することを特徴とする立体模様
    を有するエンボス化粧シートの製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項7または8に記載の製造方法にお
    いて、 第i番目の投影点Piと第(i+1)番目の投影点P
    (i+1)との距離Liおよび繰り返し数Iを、乱数に
    基づいて決定するようにし、個々のヘアラインHの長さ
    がランダムに決定されるようにしたことを特徴とする立
    体模様を有するエンボス化粧シートの製造方法。
  10. 【請求項10】 異方性反射を生じる凹凸構造により立
    体模様を表現したエンボス化粧シートを製造する方法で
    あって、 立体模様の原画像となる三次元構造体の表面に配置され
    た多数の標本点Qと、これら各標本点Qの所定の記録面
    上への投影像に相当する多数の投影点Pとを定義し、前
    記各標本点Qのそれぞれについて法線ベクトルNを求
    め、各標本点Qについての法線ベクトルNの特定の方向
    に関する方向成分に対して相関をもった方位ベクトルV
    を、前記記録面上の、当該標本点Qに対応する投影点P
    の位置に定義し、前記記録面上に定義された多数の方位
    ベクトルVによって前記記録面上にベクトル場を形成
    し、このベクトル場に沿った向きに配置された多数のヘ
    アラインHを定義し、これらヘアラインHに相当する条
    溝によって凹凸構造を形成することを特徴とする立体模
    様を表現したエンボス化粧シートの製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載の製
    造方法において、 1本のヘアラインHの線幅を、両端部において漸減させ
    るようにしたことを特徴とする立体模様を有するエンボ
    ス化粧シートの製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項1〜11のいずれかに記載の製
    造方法におけるヘアラインHを定義する段階までを演算
    処理によって実行し、ヘアラインHの内部領域と外部領
    域とからなる二値画像を示す画像データを作成する機能
    を有するエンボス化粧シート用画像データの作成装置。
  13. 【請求項13】 請求項1〜11のいずれかに記載の製
    造方法におけるヘアラインHを定義する段階までの演算
    処理を、コンピュータに実行させるためのプログラムを
    記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  14. 【請求項14】 請求項1〜11のいずれかに記載の製
    造方法におけるヘアラインHを定義する段階までを実行
    することにより記録面上に得られた多数のヘアライン
    が、物理的な凹凸構造として形成されていることを特徴
    とするエンボス化粧シートもしくはエンボス版。
  15. 【請求項15】 異方性反射を生じる凹凸構造により立
    体模様が記録されているエンボス化粧シートまたはエン
    ボス版であって、 記録面上には、多数のヘアライン条溝からなる凹凸構造
    が形成されており、各ヘアライン条溝は、記録面上に定
    義された所定のベクトル場に沿った向きに配置されてお
    り、 立体模様の原画像となる三次元構造体の表面上の標本点
    Qについての法線ベクトルNの特定の方向に関する方向
    成分と、前記標本点Qの前記記録面上への投影点Pにお
    ける前記ベクトル場の示す方向との間に所定の相関関係
    が形成されていることを特徴とする立体模様が記録され
    ているエンボス化粧シートまたはエンボス版。
  16. 【請求項16】 請求項15に記載のエンボス化粧シー
    トまたはエンボス版において、 立体模様の原画像となる三次元構造体の表面上の標本点
    Qについての法線ベクトルNについて、所定の基準軸を
    含む投影面上への投影ベクトルNを定義した場合に、
    前記基準軸と前記投影ベクトルNとのなす交差角ξ
    と、前記標本点Qの記録面上への投影点Pにおけるベク
    トル場の示す方向との間に所定の相関関係が形成されて
    いることを特徴とする立体模様が記録されているエンボ
    ス化粧シートまたはエンボス版。
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