JP2001108379A - 冷鉄源の溶解方法及び溶解設備 - Google Patents

冷鉄源の溶解方法及び溶解設備

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JP2001108379A
JP2001108379A JP28935099A JP28935099A JP2001108379A JP 2001108379 A JP2001108379 A JP 2001108379A JP 28935099 A JP28935099 A JP 28935099A JP 28935099 A JP28935099 A JP 28935099A JP 2001108379 A JP2001108379 A JP 2001108379A
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chamber
melting
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cold iron
melting chamber
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Ryuji Yamaguchi
隆二 山口
Hideaki Mizukami
秀昭 水上
Takeshi Nakayama
剛 中山
Toshimichi Maki
敏道 牧
Keiji Wakahara
啓司 若原
Hirotsugu Kubo
博嗣 久保
Yasuhiro Sato
靖浩 佐藤
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶解室に直結したシャフト型の予熱室を用い
て冷鉄源を連続的に予熱し溶解する際に、溶解室内の溶
湯量が少ない時期でも供給電力等の投入熱量を低下させ
ることなく、溶湯温度を過度に上昇させずに溶解する。 【解決手段】 アーク発生用電極8,9を備えた溶解室
3と、溶解室の上方に直結したシャフト型の予熱室4
と、溶解室への冷鉄源投入装置14とを具備したアーク
溶解設備1での冷鉄源26の溶解方法において、冷鉄源
を冷鉄源投入装置にて溶解室内に直接装入すると共に、
冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保
つように冷鉄源を連続的又は断続的に予熱室へ装入しな
がら、溶解室内の冷鉄源をアーク29にて溶解し、溶解
室に所定量の溶湯27が溜まった時点で冷鉄源投入装置
からの冷鉄源の装入を停止し、その後、溶解室内の溶湯
を昇温して冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在す
る状態で溶湯を出湯する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄スクラップや直
接還元鉄等の冷鉄源をアーク熱により効率良く溶解する
溶解方法及び溶解設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】製鋼用アーク炉では、アーク発生用電極
から発生するアーク熱により鉄スクラップや直接還元鉄
等の冷鉄源を加熱・溶解し、精錬して溶鋼を製造する
が、多くの電力を消費するため、溶解中にアーク炉溶解
室から発生する高温の排ガスを利用して冷鉄源を予熱
し、予熱した冷鉄源を溶解することで電力使用量を削減
する方法が多数提案されている。
【0003】例えば、特公平6−46145号公報(以
下「先行技術1」と記す)には、溶解室に直結したシャ
フト型の予熱室を設け、溶解室内と予熱室内とに1ヒー
ト分の冷鉄源を溶解毎に装入して、この冷鉄源を排ガス
で予熱しつつ溶解する設備が開示されている。先行技術
1では、予熱室が溶解室に直結されているので冷鉄源の
保持・搬送用設備が必要でなく、そのため、これら設備
の設備トラブルを懸念することなく排ガス温度を上昇さ
せ、冷鉄源の予熱温度を上げることができるので、電力
削減効果に優れるが、1ヒート分の溶鋼量を溶解する毎
に予熱室内の全ての冷鉄源を溶解して出湯するため、次
ヒートの最初に溶解される冷鉄源の予熱ができず、排ガ
スの有効利用という点では十分とはいえない。
【0004】この問題を解決すべく、特開平10−29
2990号公報(以下「先行技術2」と記す)及び特開
平11−241889号公報(以下「先行技術3」と記
す)が本発明者等により提案されている。先行技術2で
は、溶解室の上部に直結するシャフト型の予熱室を備え
たアーク溶解設備を用い、冷鉄源が予熱室と溶解室とに
連続して存在する状態を保つように冷鉄源を連続的又は
断続的に予熱室へ供給しながら、溶解室内の冷鉄源をア
ークにて溶解し、溶解室に所定量の溶鋼が溜まった時点
で、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態
で溶鋼を出湯する溶解方法としているので、予熱室内及
び溶解室内には常に冷鉄源が存在して、次ヒートの最初
に溶解される冷鉄源も予熱され、電力使用量の大幅な削
減が達成される。
【0005】又、先行技術3では、溶解室と、溶解室の
上部に直結するシャフト型の予熱室と、冷鉄源が溶解室
と予熱室に連続して存在する状態を保つように予熱室へ
冷鉄源を連続的又は断続的に供給する冷鉄源供給手段
と、溶解室に突設され、出湯口を有する出湯部と、前記
溶解室を前記出湯部側へ傾動させる傾動手段とを有する
アーク溶解設備であって、前記予熱室内の冷鉄源は、溶
解中に前記溶解室の予熱室が設けられている一方側から
他方側へ向けて供給され、前記出湯部は、その冷鉄源の
供給方向とは異なる方向に設けられ、かつ前記溶解室の
予熱室が設けられた部分と出湯部が設けられた部分との
間に、前記溶解室を傾動した際に冷鉄源が前記出湯部へ
流出することを妨げることが可能なように離間部を有す
るアーク溶解設備を用いて溶解するので、予熱室内及び
溶解室内には常に冷鉄源が存在し、次ヒートの最初に溶
解される冷鉄源も予熱されて電力使用量の大幅な削減が
達成されると共に、出湯部側に傾動させて溶解するの
で、冷鉄源と溶湯との接触面積を減じることができ、溶
湯の過熱度が確保されて操業が安定する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、先行技
術2及び先行技術3でも以下の問題点がある。即ち、溶
解の初期、若しくは所定量の溶湯を出湯後に次の溶解を
開始する時には溶解室内の溶湯量が少なく、従って、溶
湯と冷鉄源との接触面積が少なく、冷鉄源の溶解が遅
れ、その分溶湯の温度が高くなり過ぎてしまい、耐火物
の損傷等の問題が生じる。溶湯温度を過度に上昇させな
いために、溶解室内に或る程度の溶湯が確保されるまで
供給電力等の投入熱量を低下すれば良いが、それでは生
産性が低下する。
【0007】本発明は上記事情に鑑みなされたもので、
その目的とするところは、シャフト型の予熱室を用いて
冷鉄源を連続的に予熱し溶解する際に、溶解室内の溶湯
量が少ない時期でも供給電力等の投入熱量を低下させる
ことなく、溶湯温度を過度に上昇させずに溶解すること
ができる冷鉄源の溶解方法及び溶解設備を提供すること
である。
【0008】
【課題を解決するための手段】第1の発明による冷鉄源
の溶解方法は、アーク発生用電極を備えた溶解室と、溶
解室の上方に直結し、溶解室で発生する排ガスが導入さ
れるシャフト型の予熱室と、溶解室への冷鉄源投入装置
とを具備したアーク溶解設備での冷鉄源の溶解方法にお
いて、冷鉄源を前記冷鉄源投入装置にて溶解室内に直接
装入すると共に、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して
存在する状態を保つように冷鉄源を連続的又は断続的に
予熱室へ装入しながら、溶解室内の冷鉄源をアークにて
溶解し、溶解室に所定量の溶湯が溜まった時点で前記冷
鉄源投入装置からの冷鉄源の装入を停止し、その後、溶
解室内の溶湯を昇温して、冷鉄源が予熱室と溶解室とに
連続して存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とす
るものである。
【0009】第2の発明による冷鉄源の溶解方法は、ア
ーク発生用電極を備えた溶解室と、溶解室の上方に直結
し、溶解室で発生する排ガスが導入されるシャフト型の
予熱室とを具備したアーク溶解設備での冷鉄源の溶解方
法において、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在
する状態を保つように冷鉄源を連続的又は断続的に予熱
室へ装入しながら、酸素ガス又は不活性ガスを溶解室の
底部から溶湯中に吹き込みつつ溶解室内の冷鉄源をアー
クにて溶解し、溶解室に所定量の溶湯が溜まった時点で
冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶
湯を出湯することを特徴とするものである。
【0010】第3の発明による冷鉄源の溶解方法は、ア
ーク発生用電極を備えた溶解室と、その一方側の上部に
直結するシャフト型の予熱室と、溶解室に突設され、出
湯口を有する出湯部とを具備し、予熱室内の冷鉄源は溶
解中に溶解室の予熱室が設けられている一方側から他方
側へ向けて供給され、出湯部はその冷鉄源の供給方向と
は異なる方向に設けられ、溶解室で発生する排ガスを予
熱室に導入して予熱室内の冷鉄源を予熱しつつ溶解する
アーク溶解設備での冷鉄源の溶解方法であって、溶解室
を予熱室側が低くなるように傾動させた状態で、冷鉄源
が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態を保つよう
に冷鉄源を連続的又は断続的に予熱室へ供給しながら溶
解室内の冷鉄源を溶解し、溶解室内に所定量の溶湯が溜
まった時点で溶解室を出湯部側が低くなるように傾動さ
せ、その後、溶解室内の溶湯を昇温して、冷鉄源が予熱
室と溶解室とに連続して存在する状態で溶湯を出湯する
ことを特徴とするものである。
【0011】第4の発明による冷鉄源の溶解設備は、冷
鉄源を溶解するための溶解室と、その一方側の上部に直
結し、冷鉄源を予熱するためのシャフト型の予熱室と、
溶解室内で冷鉄源を溶解するためのアーク発生用電極
と、冷鉄源が溶解室と予熱室に連続して存在する状態を
保つように予熱室へ冷鉄源を連続的又は断続的に供給す
る冷鉄源供給手段と、溶解室に突設され、出湯口を有す
る出湯部と、溶解室の予熱室側が低くなるように溶解室
を傾動させる傾動手段と、溶解室の出湯部側が低くなる
ように溶解室を傾動させる傾動手段とを有し、冷鉄源が
予熱室と溶解室とに連続して存在する状態で溶湯を出湯
する冷鉄源の溶解設備であって、前記予熱室内の冷鉄源
は溶解中に溶解室の予熱室が設けられている一方側から
他方側へ向けて供給され、前記出湯部はその冷鉄源の供
給方向とは異なる方向に設けられていることを特徴とす
るものである。
【0012】第1の発明においては、溶解室内に冷鉄源
を直接装入して、溶解室内の溶湯と冷鉄源との接触面積
を増加させるので、溶湯の過度の過熱を抑制することが
できる。そして、この状態で溶解を進行させて溶解室内
に溶湯が十分生成されると、溶湯と予熱室を介して供給
される冷鉄源との接触面積が増えるので、冷鉄源を直接
溶解室内に装入しなくても溶湯の過度の過熱が防止され
る。
【0013】第2の発明においては、溶解室底部から酸
素ガス又は不活性ガスを吹き込みながら冷鉄源を溶解す
る。そのため、溶湯は酸素又は不活性ガスにより攪拌さ
れ、冷鉄源と溶湯間の熱伝達が促進され、溶湯の過度の
過熱を抑えて溶解することができる。
【0014】第3の発明及び第4の発明においては、溶
解室を予熱室側に傾動させたまま溶解することができる
ので、生成する溶湯と予熱室直下の溶解室内に堆積する
冷鉄源との接触面積が増大して、溶湯の過度の過熱を抑
制することができる。
【0015】尚、本発明における所定量の溶湯量とは、
例えば1ヒート分の溶湯量や、出湯後に溶解室内に溶湯
を残留させる場合には、1ヒート分の溶湯量と溶解室内
の残留溶湯量とを合わせた量であり、操業状況により適
宜決定される溶湯量である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明
の実施の形態を説明する。先ず、第1の実施の形態につ
いて、図1及び図2に基づき説明する。図1は本発明を
実施するために用いられるアーク溶解設備の縦断面概略
図であり、図2はその平面図である。
【0017】図1及び図2において、内部を耐火物で構
築され、底部に炉底電極8を備えた溶解室3の上部に
は、シャフト型の予熱室4と水冷構造の炉壁6とが配置
され、この予熱室4で覆われない炉壁6の上部開口部は
開閉自在な水冷構造の炉蓋7で覆われている。この炉蓋
7を貫通して、溶解室3内へ上下移動可能な黒鉛製の上
部電極9が設けられている。溶解室3は、溶解室3の4
角に接続する4個の昇降シリンダー13から構成された
傾動装置10により傾動され、又、アーク発生用電極で
ある炉底電極8と上部電極9とは直流電源(図示せず)
に連結し、炉底電極8と上部電極9との間でアーク29
を発生させる。
【0018】予熱室4の上方には、走行台車34に吊り
下げられた底開き型の供給用バケット25が設けられ、
この供給用バケット25から、予熱室4の上部に設けた
開閉自在な供給口30を介して冷鉄源26が予熱室4内
に装入される。そして、予熱室4の上端に設けられたダ
クト31は集塵機(図示せず)に連結し、溶解室3で発
生する高温の排ガスは、予熱室4及びダクト31を順に
通って吸引され、予熱室4内の冷鉄源26は予熱され
る。そして、予熱された冷鉄源26は、溶解室3内で溶
解される冷鉄源26の量に見合って、溶解室3内に自由
落下し、溶解室3へ装入される。尚、予熱室4の冷鉄源
26が充填している部分にダクト31を設置することも
できる。
【0019】炉蓋7を貫通して、溶解室3内を上下移動
可能な酸素吹き込みランス18と炭材吹き込みランス1
9とが設けられ、酸素吹き込みランス18からは酸素ガ
スが溶解室3内に吹き込まれ、そして、炭材吹き込みラ
ンス19からは空気や窒素ガス等を搬送用ガスとしてコ
ークス、チャー、石炭、木炭、黒鉛等の等の炭材が溶解
室3内に吹き込まれる。又、溶解室3の予熱室4を設置
した部位の反対側には、その底部に、扉32で出口側を
押さえ付けられて内部に詰め砂又はマッド剤が充填され
た出湯口23と、その側壁に、扉33で出口側を押さえ
付けられて内部に詰め砂又はマッド剤が充填された出滓
口24とが設けられている。そして、この出湯口23の
鉛直上方に対応する部位の炉蓋7には、バーナー20が
取り付けられている。バーナー20は、重油、灯油、微
粉炭、プロパンガス、天然ガス等の化石燃料を、空気又
は酸素ガス若しくは酸素富化空気により溶解室3内で燃
焼させる。
【0020】溶解室3の上方には、ホッパー15と、ホ
ッパー15の下部に設けた切り出し装置16と、その上
端が切り出し装置16に連結し、その下端が炉蓋7を貫
通する投入シュート17とで構成される冷鉄源投入装置
14が設置されている。そしてホッパー15には、鉄ス
クラップ、直接還元鉄、冷銑等の冷鉄源26が収納され
ており、冷鉄源26は、切り出し装置16にて装入量を
制御され、投入シュート17を介して溶解室3に直接装
入される。
【0021】溶解室3の底部には、酸素ガス又は不活性
ガスを溶解室3内に吹き込むためのガス供給手段として
羽口21が設置されている。酸素ガスを吹き込む場合に
は、羽口21を二重管構造として外管にプロパン等の冷
却ガスを流す構造とし、Ar等の不活性ガスを吹き込む
場合には、羽口21を単管としても又直径が1mm程度
の多数の細管を集合させたものとしても、或いは羽口2
1に代えて多孔質のポーラス煉瓦としてもどれでも良
い。このようにして直流式アーク溶解設備1が構成され
ている。
【0022】この直流式アーク溶解設備1における操業
は、先ず、供給用バケット25から予熱室4内に冷鉄源
26を装入する。予熱室4内に装入された冷鉄源26
は、溶解室3内にも装入され、やがて予熱室4内を充填
する。尚、溶解室3内へ冷鉄源26を均一に装入するた
め、炉蓋7を開けて予熱室4と反対側の溶解室3内に冷
鉄源26を予め装入しておくこともできる。
【0023】次いで、羽口21から酸素ガス又は不活性
ガスを吹き込みながら、炉底電極8と上部電極9との間
に直流電流を給電しつつ上部電極9を昇降させ、炉底電
極8と上部電極9との間、又は、装入された冷鉄源26
と上部電極9との間でアーク29を発生させる。そし
て、発生するアーク熱により冷鉄源26を溶解して溶湯
27を生成させる。溶湯27の生成と共に、生石灰、蛍
石等のフラックスを炉壁6に設けた供給口(図示せず)
より溶解室3内に装入して溶融スラグ28を溶湯27上
に形成させ、溶湯27の酸化を防止すると共に溶湯27
の保温を図る。溶融スラグ28の量が多すぎる場合に
は、操業中でも出滓口24から、排滓することができ
る。
【0024】溶湯27の生成する頃から、酸素吹き込み
ランス18及び炭材吹き込みランス19から、酸素ガス
及び炭材を溶解室3内の溶湯27又は溶融スラグ28中
に吹き込むことが好ましい。溶湯27中に溶解した炭材
又は溶融スラグ28中に懸濁した炭材は、酸素と反応し
て燃焼熱を発生し、補助熱源として作用して電力使用量
を節約する。同時に、反応生成物のCOガスが溶融スラ
グ28をフォーミングさせ、アーク29が溶融スラグ2
8に包まれた、所謂スラグフォーミング操業となるの
で、アーク29の着熱効率が上昇する。又、大量に発生
する高温のCOガスと、このCOガスが燃焼して生成す
るCO2 ガスとが、予熱室4内の冷鉄源26を効率良
く予熱する。この炭材の吹き込み量は、酸素ガス吹き込
み量に対応して決める。即ち、吹き込まれる酸素ガスの
化学当量に等しい程度の炭材を吹き込むこととする。吹
き込まれる炭材が酸素ガス吹き込み量に比べて少ない
と、溶湯27が過剰に酸化するので好ましくない。又、
羽口21から吹き込まれる酸素ガスは溶湯27と反応し
てFeOとなるが、このFeOは吹き込まれた炭材によ
り還元される。この場合、酸素吹き込みランス18と羽
口21とから吹き込まれる酸素ガスの合計量は、溶解さ
れる溶湯27の1トン当り25Nm3 以上、望ましく
は40Nm3 以上であることが好ましい。これにより
一層効率良く冷鉄源26を溶解することができる。又、
冷鉄源26を酸化させないために、予熱室4からの排ガ
ス中の酸素ガス濃度を5%以下とすることが好ましい。
【0025】この間、溶湯27の生成に伴い、羽口21
から吹き込まれる酸素ガス又は不活性ガスにより溶湯2
7が攪拌され、冷鉄源26と溶湯27との間の熱伝達が
促進され、溶湯27の過熱を抑えて、溶解を促進させる
ことができる。尚、羽口21からの酸素ガス又は不活性
ガスの吹き込みは、1ヒート分以上の所定量の溶湯27
が溶解室3内に溜まるまで継続することができるが、1
ヒート分以上の所定量の溶湯27が溜まる以前までとし
ても良い。即ち、或る程度の溶湯27が生成して冷鉄源
26と溶湯27との接触面積が十分大きくなる時点でガ
ス吹き込みを停止しても、又は吹き込み量を少なくして
も良い。
【0026】又、溶湯27の生成に伴って溶解室3内に
空間が形成されるので、冷鉄源投入装置14を介して冷
鉄源26を溶解室3内に連続的又は断続的に追加装入す
る。これにより、溶解初期の冷鉄源26と溶湯27との
接触面積を大きくすることができ、溶湯27の過熱を抑
えて溶解を促進させることができる。冷鉄源26の追加
装入は、1ヒート分以上の所定量の溶湯27が溜まるま
で継続することができるが、1ヒート分以上の所定量の
溶湯27が溶解室3に溜まる以前までとしても良い。即
ち、或る程度の溶湯27が生成して冷鉄源26と溶湯2
7との接触面積が十分大きくなる時点で装入を停止して
も良い。尚、冷鉄源26を別に設けた予熱装置、例えば
バケット型の予熱槽内で予熱し、この予熱した冷鉄源2
6を冷鉄源投入装置14を介して溶解室3に装入しても
良い。
【0027】溶湯27の生成に伴い、予熱室4内の冷鉄
源26は溶解室3内で溶解された量に見合って溶解室3
内に自由落下して減少するので、この減少分を補うため
に供給用バケット25から予熱室4へ冷鉄源26を装入
する。この冷鉄源26の予熱室4内への装入は、冷鉄源
26が予熱室4と溶解室3とに連続して存在する状態を
保つように、連続的又は断続的に行う。この際の冷鉄源
26の装入は、操業実績に基づいて予め設定されたレシ
ピに基づいて行っても良いし、予熱室4内の冷鉄源26
の量を検出可能なセンサーを設け、このセンサーからの
信号に基づいて供給用バケット25による冷鉄源26の
投入を制御するようにしても良い。又、予熱室4の上部
の鉛直方向及び周方向位置に複数個の測温素子(図示せ
ず)を設置し、測温素子による予熱室4内の測定値に基
づいて冷鉄源26の予熱室4への投入を制御しても良
い。その際に、予熱室4と溶解室3とに連続して存在す
る冷鉄源26の量を、1ヒート分の冷鉄源26の50w
t%以上とすることが好ましい。
【0028】このようにして冷鉄源26を溶解して溶解
室3内に少なくとも1ヒート分の溶湯27を溜めると共
に、溶湯27の炭素濃度を測定し、必要により酸素吹き
込みランス18からの酸素ガス吹き込み量と、炭材吹き
込みランス19からの炭材吹き込み量とを調整して溶湯
27の炭素濃度を調整する。次いで、傾動装置10によ
り予熱室4側を上昇し、逆に出湯口23側を下降して溶
解室3を傾動して出湯口23から取鍋等の溶湯保持容器
(図示せず)に溶湯27を出湯する。この場合、溶湯2
7中に冷鉄源26が埋没して共存しているので、溶湯温
度は凝固温度近傍になり、例えば溶鋼の場合には溶鋼温
度は1550℃程度になり、大きな溶湯過熱度を得るこ
とができない。そのため、出湯口23の閉塞等の溶湯温
度の低下に伴うトラブルを防止するため、出湯時にバー
ナー20で溶湯27を加熱することが好ましい。又、出
湯温度を上昇させるために、溶解室3を出湯口23側に
傾動させて冷鉄源26と溶湯27との接触面積を減少さ
せ、溶湯27を昇温してから出湯しても良い。
【0029】そして出湯後、必要により溶湯27を取鍋
精錬炉等にて昇温して精錬した後、連続鋳造機等で鋳造
する。溶湯27を出湯し、更に溶融スラグ28を排滓し
た後、溶解室3を傾動装置10にて水平に戻し、出湯口
23及び出滓口24内に詰め砂又はマッド材を充填し、
次いで、羽口21からの酸素ガス又は不活性ガスの吹き
込みを再開若しくは流量を増加すると共に、冷鉄源投入
装置14からの冷鉄源26の溶解室3への装入を再開し
て操業を継続する。
【0030】このようにして溶解することで、次回のヒ
ートは予熱された冷鉄源26で溶解を開始することがで
き、又、溶解室3内の溶湯27が少ない時期の溶湯27
の過熱を抑えることができる。尚、出湯時に、数トン〜
数十トンの溶湯27を溶解室3内に残留させて、次回ヒ
ートの溶解を再開しても良い。こうすることで初期の溶
解が促進され、溶解効率が向上する。
【0031】尚、上記説明では、冷鉄源投入装置14か
らの冷鉄源26の直接装入と、羽口21からのガス吹き
込みを併用した場合について説明したが、どちらか一方
のみを実施しても良い。但し、その場合、溶湯27の過
熱を抑制する効果は、併用した場合に較べて若干劣るこ
とを考慮しなければならない。
【0032】次いで、第2の実施の形態について、図3
から図8に基づき説明する。図3は、本発明の実施の形
態に係るアーク溶解設備を示す斜視図、図4はその平面
図、図5は、図3のX−X’矢視による断面図で溶解室
が水平の状態を示し、図6は、図3のX−X’矢視によ
る断面図で溶解室を予熱室側に傾動させた状態を示し、
図7は、図3のY−Y’矢視による断面図で溶解室が水
平の状態を示し、図8は、図3のY−Y’矢視による断
面図で溶解室を出湯部側に傾動させた状態を示す図であ
る。
【0033】この直流式アーク溶解設備2は、冷鉄源2
6をアーク溶解するための溶解室3と、その一方側3a
の上部に直結し、上方に向かって延在する予熱室4と、
溶解室3に設けられた出湯部5とを備えている。図5に
示すように、予熱室4の上端には、集塵機(図示せず)
に連結するダクト31が設けられている。この溶解室3
及び予熱室4には鉄スクラップや直接還元鉄等の冷鉄源
26が装入される。
【0034】予熱室4の上方には供給用バケット25が
設けられており、この供給用バケット25から予熱室4
内に冷鉄源26が装入される。又、棚吊りを防止するた
め、予熱室4に炭素源、例えばコークスを装入しても良
い。この場合に、供給用バケット25からの冷鉄源26
の装入は、操業中に、冷鉄源26が溶解室3と予熱室4
に連続して存在する状態を保つように予熱室4へ冷鉄源
26を連続的又は断続的に供給する。
【0035】溶解室3の上部には開閉可能な炉蓋7が設
けられており、その炉蓋7を貫通して溶解室3の上方か
らその中に垂直に上部電極9が挿入されている。又、溶
解室3の底部には、上部電極9と対向する位置に炉底電
極8が設けられている。そしてこれらの電極によって形
成されるアーク29により、冷鉄源26が溶解され、溶
湯27となる。溶湯27の上には溶融スラグ28が形成
されており、アーク29はこの溶融スラグ28内に形成
されることとなる。上部電極9は電極傾動装置22によ
り傾動可能となっている。又、溶解室3には酸素吹き込
みランス18、炭材吹き込みランス19がその先端を溶
湯湯面に向けて挿入されており、前述したように、酸素
吹き込みランス18からは酸素ガスが供給され、炭材吹
き込みランス19からは炭材が吹き込まれる。
【0036】予熱室4内の冷鉄源26は、溶解室3の予
熱室側3aからその反対側3bに向かう方向へ供給され
るが、出湯部5は、この冷鉄源26の供給方向に対して
直交する方向に向くように溶解室3に突設されている。
そして、溶解室3は、図6に示すように傾動装置11に
より予熱室側3aが低くなるように予熱室側3aに傾動
可能となっており、又、図8に示すように傾動装置12
により出湯部5側が低くなるように出湯部5側に傾動可
能となっている。尚、傾動装置を1つにまとめて1つの
傾動装置で予熱室側3a及び出湯部5側に傾動させても
良い。
【0037】溶解室3の予熱室4が設けられた部分と出
湯部5が設けられた部分とは距離aだけ離間しており、
溶解室3が出湯部5側に傾動された際に、その部分の壁
部により冷鉄源26が出湯部5に流出することが阻止さ
れる。この場合に、図5に示すように、距離aが予熱室
4から溶解室3に亘って安息角で拡がる冷鉄源26の距
離よりも長いことが好ましい。このようにすることによ
り、溶解室3を出湯部5側に傾動した際の冷鉄源26の
出湯部5への流出を完全に阻止することができる。
【0038】出湯部5の先端近傍の底部には出湯口23
が形成されており、この出湯口23を開閉するための扉
32が設けられている。更に、出湯部5の先端部側面に
は、その出口側を扉33で塞がれた出滓口24が設けら
れている。これらの構造は図1に示すものと同一であ
る。その他、図1に示す第1の実施の形態のアーク溶解
設備1と同一の部分は同一符号により示し、その説明は
省略する。
【0039】このように構成される直流式アーク溶解設
備2において冷鉄源26を溶解するに際しては、先ず、
溶解室3と予熱室4に冷鉄源26を装入し、冷鉄源26
が溶解室3と予熱室4に連続して存在する状態とする。
【0040】そして、溶解室3を予熱室側3aに傾動さ
せた状態でアーク29を形成して冷鉄源26を溶解す
る。この際に、酸素吹き込みランス18から酸素ガスを
供給し、冷鉄源26の溶解を補助する。溶解室3が予熱
室側3aに傾斜しているので、生成する溶湯27と予熱
室4の直下の溶解室3内に堆積する冷鉄源26との接触
面積が増加し、溶湯27の過熱が抑えられる。そして、
溶解室3内に溶湯27が溜まってきたら、炭材吹き込み
ランス19から溶融スラグ28中に炭材を吹き込んでス
ラグフォーミング操業に移行し、上部電極9の先端を溶
融スラグ28中に埋没させ、アーク29が溶融スラグ2
8内に形成されるようにする。
【0041】この溶解により発生する排ガスは、予熱室
4及びダクト31を経由して排出され、この排ガスの熱
により予熱室4内の冷鉄源26が予熱される。溶解室3
内で冷鉄源26が溶解するに伴い、予熱室4の冷鉄源2
6が順次溶解室3に供給されるため、予熱室4内の冷鉄
源26の上端位置が低下してくる。この場合、冷鉄源2
6が溶解室3と予熱室4に連続して存在する状態を保つ
ように、供給用バケット25から予熱室4へ冷鉄源26
を連続的又は断続的に供給する。これにより、常に一定
量以上のスクラップが溶解室3及び予熱室4内に存在し
ている状態が保たれる。この際の冷鉄源26の装入は、
前述したように、操業実績に基づいて予め設定されたレ
シピに基づいて行っても良いし、予熱室4内の冷鉄源2
6の量を検出可能なセンサーを設け、このセンサーから
の信号に基づいて供給用バケット25による冷鉄源26
の投入を制御するようにしても良い。
【0042】冷鉄源26が溶解していくと、溶解室3内
では冷鉄源26と溶湯27とが共存する状態となってお
り、溶湯27の温度が低く、例えば溶鋼の場合1540
〜1550℃と溶鋼の凝固温度1530℃に対してわず
かな過熱度しかなく、このままでは出湯の際に出湯口2
3の閉塞等の不都合が生じる。このため、本発明では所
定量の溶湯27が溶解室3内に溜まったら、一旦溶解室
3を傾動装置11により水平に戻し、その後、図8に示
すように傾動装置12により溶解室3を出湯部5側に傾
動させてアーク加熱を続ける。この場合、出湯部5は溶
解室3への冷鉄源26の供給方向に対して直交する方向
に向くように溶解室3に突設されており、しかも溶解室
3の予熱室4が設けられた部分と出湯部5が設けられた
部分とは距離aだけ離間しており、その部分の壁部によ
り冷鉄源26が出湯部5に流出することが阻止されるた
め、出湯部5へ流れ込んだ溶湯27と冷鉄源26との接
触面積を小さくすることができる。従って、溶湯27の
過熱度を高くすることができ、出湯される溶湯27の温
度が低いという問題を回避することができる。この離間
距離aを予熱室4から溶解室3に亘って安息角で拡がる
冷鉄源26の距離よりも長くすることにより、冷鉄源2
6の出湯部5への流入をほぼ完全に阻止することがで
き、より一層溶湯温度を高くすることができる。
【0043】又、溶解室3を出湯部5側に傾動させると
上部電極9が図8の波線の位置になり、アーク29が有
効に供給されなくなるが、電極傾動装置22により上部
電極9を傾動させることにより、図8の実線位置とな
り、アーク29を溶湯27に対して有効に供給すること
ができる。
【0044】そして、一定時間アーク加熱して溶湯27
の過熱度を適切な範囲(約30〜80℃程度)にし、必
要により溶湯27の成分を調整した後、溶解室3を出湯
部5側に更に傾動させつつ、溶解室3及び予熱室4内に
冷鉄源26が連続して存在する状態を保ったまま、出湯
口23を塞いでいた扉32を開き、出湯口23から1ヒ
ート分の溶湯27を溶湯保持容器(図示せず)へ出湯す
る。
【0045】出湯後、必要により溶湯27を取鍋精錬炉
等にて昇温して精錬した後、連続鋳造機等で鋳造する。
溶湯27を出湯し、更に溶融スラグ28を排滓した後、
溶解室3を傾動装置12にて水平に戻し、更に傾動装置
11にて予熱室側3aに傾動させ、出湯口23及び出滓
口24内に詰め砂又はマッド材を充填した後、次ヒート
の溶解を開始する。
【0046】このようにして溶解することで、次回のヒ
ートは予熱された冷鉄源26で溶解を開始することがで
き、又、出湯時の溶湯過熱度を適正値に制御することが
でき、更に、溶解室3内の溶湯27が少ない時期の溶湯
27の過熱を抑えることができる。尚、出湯時に、数ト
ン〜数十トンの溶湯27を溶解室3内に残留させて、次
回ヒートの溶解を再開しても良い。こうすることで初期
の溶解が促進され、溶解効率が向上する。
【0047】尚、上記説明では直流式アーク溶解設備の
場合について説明したが、交流式アーク溶解設備でも全
く支障なく本発明を適用でき、又、冷鉄源投入装置、傾
動装置、及び炉底電極等の構造の違いは、本発明の支障
とならないことは云うまでもない。
【0048】
【実施例】[実施例1]図1に示す直流式アーク溶解設
備において、鉄スクラップ(シュレッダー屑)と冷銑
(型銑)の混合物を冷鉄源投入装置から溶解室内に直接
装入した実施例1を以下に説明する。この場合、溶解室
底部に設けた羽口からのガス吹き込みは実施していな
い。アーク溶解設備は、溶解室が炉径7.2m、高さ4
m、予熱室が幅3m、長さ5m、高さ7mで、炉容量が
180トンである。
【0049】先ず、溶解室に80トンの常温の鉄スクラ
ップを装入し、次いで、予熱室に70トンの常温の鉄ス
クラップを装入して直径30インチの黒鉛製上部電極を
用い、最大750V、130KAの電源容量により溶解
を開始した。そして、溶鋼の生成と共に、生石灰と蛍石
とを添加して溶融スラグを形成し、次いで、酸素吹き込
みランスから酸素ガスを4000Nm3 /hrとし、
又、炭材吹き込みランスからコークスを50kg/mi
nとして溶融スラグ中に吹き込んだ。酸素ガスとコーク
スの吹き込みにより、溶融スラグはフォーミングして上
部電極の先端は溶融スラグ中に埋没した。この時の電圧
を520〜550Vに設定した。
【0050】この後、鉄スクラップ(シュレッダー屑)
と冷銑(型銑)の混合物を冷鉄源投入装置から溶解室内
に連続装入して溶解を継続した。又、予熱室内の鉄スク
ラップが溶解につれて下降したら、供給用バケットにて
鉄スクラップを予熱室に装入し、予熱室内の鉄スクラッ
プ高さを一定の高さに保持しながら溶解を続けた。そし
て、溶解室内に約180トンの溶鋼が生成した時点で鉄
スクラップと冷銑の混合物の溶解室への装入を停止し、
溶解・昇温してから約60トンの溶鋼を溶解室に残し、
1ヒート分の120トンの溶鋼を取鍋に出湯した。出湯
時、重油バーナーにより溶鋼を加熱した。出湯時の溶鋼
の炭素濃度は0.1wt%で、溶鋼温度は1560℃で
あった。
【0051】出湯後、出湯口に詰め砂を充填した後、鉄
スクラップと冷銑の混合物の溶解室への直接装入及び酸
素ガスとコークスの吹き込みを再開し、再び溶鋼量が約
180トンになったら120トン出湯することを繰り返
し実施した。出湯後の溶鋼は取鍋精錬炉にて精錬して1
620℃に昇温した後、連続鋳造機により鋳造した。取
鍋精錬炉での電力使用量は、平均して50kWh/tで
あった。
【0052】その結果、冷鉄源投入装置からの鉄スクラ
ップと冷銑の混合物の配合比率が15%の条件で、出湯
から出湯までの時間は平均して45分となり、酸素ガス
吹き込み量33Nm3 /t、コークス吹き込み量26
kg/tで、電力原単位210kWh/tで溶解するこ
とができた。アーク溶解設備と取鍋精錬炉とでの電力の
総使用量は260kWh/tであった。
【0053】一方、冷鉄源供給装置から溶解室内に直接
冷鉄源を装入せず、その他の条件を実施例1と同一とし
た比較例1では、アーク溶解設備と取鍋精錬炉とでの電
力の総使用量は225kWh/tであり、実施例1より
も約35kWh/t少なかったが、溶解室の耐火物の損
耗が約3倍程度あった。又、同じアーク溶解設備を用い
て1ヒート分の溶鋼量を溶解する毎に予熱室内の全ての
冷鉄源を溶解した比較例2では、アーク溶解設備と取鍋
精錬炉とでの電力の総使用量は335kWh/tであ
り、実施例1よりも約75kWh/t悪かった。表1に
実施例1、比較例1、及び比較例2での操業条件及び操
業結果を示す。
【0054】
【表1】
【0055】[実施例2]図1に示す直流式アーク溶解
設備において、溶解室底部に設けた4つの羽口から窒素
ガスを吹き込んだ実施例2を以下に説明する。この場
合、溶解室上方に設けた冷鉄源投入装置から溶解室への
冷鉄源の直接装入は実施していない。アーク溶解設備
は、溶解室が炉径7.2m、高さ4m、予熱室が幅3
m、長さ5m、高さ7m、炉容量が180トンである。
【0056】先ず、予熱室に150トンの常温の鉄スク
ラップを装入し、直径30インチの黒鉛製上部電極を用
い、最大750V、130KAの電源容量で溶解を開始
した。通電直後、生石灰と蛍石とを添加すると共に、酸
素吹き込みランスから6000Nm3 /hrで酸素を
吹き込んだ。溶解室内に溶鋼が溜まってきた時点で、炭
材吹き込みランスからコークスを80kg/minとし
てスラグ中に吹き込み、スラグフォーミング操業に移行
し、上部電極の先端をフォーミングしたスラグ中に埋没
させた。この時の電圧を550Vに設定した。そして、
予熱室内の鉄スクラップが溶解につれて下降したなら
ば、供給用バケットにて鉄スクラップを予熱室に装入
し、予熱室内の鉄スクラップ高さを一定の高さに保持し
ながら溶解を続けた。この間、羽口から1つの羽口当り
100l/min、羽口合計で400l/minで窒素
ガスを吹き込みつつ溶解した。
【0057】そして、溶解室内及び予熱室内に連続して
鉄スクラップが存在する状態で溶解を進行させ、溶解室
内に120トンの溶鋼が溜まった時点で窒素ガス吹き込
み量を半分にして窒素ガス吹き込みを継続し、その後、
溶解室内に180トンの溶鋼が生成した時点で、約60
トンの溶鋼を溶解室に残し1ヒート分の120トンの溶
鋼を取鍋に出湯した。出湯時、重油バーナーにより溶鋼
を加熱した。出湯時の溶鋼の炭素濃度は0.1wt%
で、溶鋼温度は1560℃であった。出湯後、再通電す
ると共に各羽口からの窒素ガス吹き込み量を100l/
minとし、更に酸素及びコークスの吹き込みを再開
し、再び溶鋼量が120トンになったら窒素ガス吹き込
み量を半分にし、その後、180トンになったら120
トン出湯することを繰り返し実施した。出湯後の溶鋼は
取鍋精錬炉にて精錬して1620℃に昇温した後、連続
鋳造機により鋳造した。取鍋精錬炉での電力使用量は、
平均して50kWh/tであった。
【0058】その結果、酸素ガス吹き込み量が33Nm
3 /t、コークス吹き込み量が26kg/t、窒素ガ
ス原単位100l/tの条件で、出湯から出湯までの平
均時間を40分とし、電力原単位を190kWh/tと
して溶解することができた。アーク溶解設備と取鍋精錬
炉とでの電力の総使用量は240kWh/tであった。
【0059】一方、羽口から窒素ガスを吹き込まず、そ
の他の条件を実施例2と同一とした比較例3では、アー
ク溶解設備と取鍋精錬炉とでの電力の総使用量は230
kWh/tであり、実施例2よりも約10kWh/t少
なかったが、溶解室の耐火物の損耗が約3倍程度あっ
た。又、同じアーク溶解設備を用いて1ヒート分の溶鋼
量を溶解する毎に予熱室内の全ての冷鉄源を溶解した比
較例4では、アーク溶解設備と取鍋精錬炉とでの電力の
総使用量は360kWh/tであり、実施例2よりも約
120kWh/t悪かった。表2に実施例2、比較例
3、及び比較例4での操業条件及び操業結果を示す。
【0060】
【表2】
【0061】[実施例3]図3から図8に示す直流式ア
ーク溶解設備における実施例3を以下に説明する。アー
ク溶解設備は、溶解室が長さ8.5m、幅3m、高さ4
m、予熱室が幅3m、長さ3m、高さ7mで、炉容量が
180トンである。
【0062】先ず、溶解室に80トンの常温の鉄スクラ
ップを装入し、次いで、予熱室に70トンの常温の鉄ス
クラップを装入し、溶解室を予熱室側に約10度傾動さ
せ、この状態で、直径28インチの黒鉛製上部電極を用
い、最大600V、100KAの電源容量により溶解を
開始した。そして、溶鋼の生成と共に、生石灰と蛍石と
を添加して溶融スラグを形成し、次いで、酸素吹き込み
ランスから酸素ガスを6000Nm3 /hrとし、
又、炭材吹き込みランスからコークスを80kg/mi
nとして溶融スラグ中に吹き込んだ。酸素ガスとコーク
スの吹き込みにより、溶融スラグはフォーミングして上
部電極の先端は溶融スラグ中に埋没した。この時の電圧
を400Vに設定した。この後、予熱室内の鉄スクラッ
プが溶解につれて下降したら、供給用バケットにて鉄ス
クラップを予熱室に装入し、予熱室内の鉄スクラップ高
さを一定の高さに保持しながら溶解を続けた。
【0063】このように、溶解室内及び予熱室内に連続
して鉄スクラップが存在する状態で溶解を進行させ、十
分に溶鋼が生成した段階で溶解室を一旦水平に戻し、次
いで、出湯部側に15度傾動させ、溶鋼と鉄スクラップ
との接触面積を低減させて溶鋼をスーパーヒートさせ、
溶解室内に約180トンの溶鋼が生成した段階で、溶解
室を出湯部側に更に傾動させながら、60トンを溶解室
内に残して、1ヒート分の120トンの溶鋼を出湯口か
ら取鍋に出湯した。出湯時の溶鋼の温度は1575℃
で、溶鋼中の炭素濃度は0.1wt%であった。
【0064】120トン出湯後、溶解室を水平に戻した
後に予熱室側に10度傾動させ、この状態で出湯口に詰
め砂を充填した後、酸素吹き込みとコークス吹き込みを
行いながらスラグフォーミング操業を行って溶解を継続
し、十分に溶鋼が生成したら溶解室を水平に戻した後、
再び出湯部側に傾動させて溶鋼をスーパーヒートさせ、
溶解室内の溶鋼量が180トンになったら120トン出
湯することを繰り返した。その結果、出湯から出湯まで
の時間は平均して約40分間となり、酸素ガス吹き込み
量33Nm3 /t、コークス吹き込み量26kg/t
の条件で電力原単位175kWh/tが得られた。出湯
した120トンの溶鋼は取鍋精錬炉により1620℃に
昇温し、連続鋳造機により175×175mmのビレッ
トを製造した。取鍋精錬炉の電力原単位は平均45kW
h/tであった。
【0065】一方、同じアーク溶解設備を用いて、予熱
室側へ溶解室を傾動させず、その他の条件は実施例3と
同一とした比較例5では、アーク溶解設備と取鍋精錬炉
とでの電力の総使用量は225kWh/tであり、実施
例3と同等の電力原単位であったが、溶解室の耐火物の
損耗が約3倍程度あった。又、同じアーク溶解設備を用
いて1ヒート分の溶鋼量を溶解する毎に予熱室内の全て
の冷鉄源を溶解した比較例6では、アーク溶解設備と取
鍋精錬炉とでの電力の総使用量は335kWh/tであ
り、実施例3よりも約115kWh/t悪かった。表3
に実施例3、比較例5、及び比較例6での操業条件及び
操業結果を示す。
【0066】
【表3】
【0067】
【発明の効果】本発明によれば、溶解室内の溶湯量が少
ない時期でも供給電力等の投入熱量を低下させることな
く、溶湯温度を過度に上昇させずに溶解することがで
き、その結果、耐火物の損耗を抑えて冷鉄源を溶解する
ことが可能となり、工業上有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するために用いられるアーク溶解
設備の縦断面概略図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るアーク溶解設備を示
す斜視図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図3のX−X’矢視による断面図で溶解室が水
平の状態を示す図である。
【図6】図3のX−X’矢視による断面図で溶解室を予
熱室側に傾動させた状態を示す図である。
【図7】図3のY−Y’矢視による断面図で溶解室が水
平の状態を示す図である。
【図8】図3のY−Y’矢視による断面図で溶解室を出
湯部側に傾動させた状態を示す図である。
【符号の説明】
1 アーク溶解設備 2 アーク溶解設備 3 溶解室 4 予熱室 5 出湯部 6 炉壁 7 炉蓋 8 炉底電極 9 上部電極 10 傾動装置 13 昇降シリンダー 14 冷鉄源投入装置 18 酸素吹き込みランス 19 炭材吹き込みランス 20 バーナー 21 羽口 22 電極傾動装置 23 出湯口 24 出滓口 25 供給用バケット 26 冷鉄源 27 溶湯 28 溶融スラグ 29 アーク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中山 剛 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 牧 敏道 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 若原 啓司 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 久保 博嗣 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 佐藤 靖浩 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K014 CB01 CB02 CC01 CD12 CD18 4K045 AA01 AA04 BA02 RA01 RB02 RB16 RB17 RC04 RC06 4K063 AA04 BA02 CA01 GA02 GA09

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アーク発生用電極を備えた溶解室と、溶
    解室の上方に直結し、溶解室で発生する排ガスが導入さ
    れるシャフト型の予熱室と、溶解室への冷鉄源投入装置
    とを具備したアーク溶解設備での冷鉄源の溶解方法にお
    いて、冷鉄源を前記冷鉄源投入装置にて溶解室内に直接
    装入すると共に、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して
    存在する状態を保つように冷鉄源を連続的又は断続的に
    予熱室へ装入しながら、溶解室内の冷鉄源をアークにて
    溶解し、溶解室に所定量の溶湯が溜まった時点で前記冷
    鉄源投入装置からの冷鉄源の装入を停止し、その後、溶
    解室内の溶湯を昇温して、冷鉄源が予熱室と溶解室とに
    連続して存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とす
    る冷鉄源の溶解方法。
  2. 【請求項2】 アーク発生用電極を備えた溶解室と、溶
    解室の上方に直結し、溶解室で発生する排ガスが導入さ
    れるシャフト型の予熱室とを具備したアーク溶解設備で
    の冷鉄源の溶解方法において、冷鉄源が予熱室と溶解室
    とに連続して存在する状態を保つように冷鉄源を連続的
    又は断続的に予熱室へ装入しながら、酸素ガス又は不活
    性ガスを溶解室の底部から溶湯中に吹き込みつつ溶解室
    内の冷鉄源をアークにて溶解し、溶解室に所定量の溶湯
    が溜まった時点で冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して
    存在する状態で溶湯を出湯することを特徴とする冷鉄源
    の溶解方法。
  3. 【請求項3】 アーク発生用電極を備えた溶解室と、そ
    の一方側の上部に直結するシャフト型の予熱室と、溶解
    室に突設され、出湯口を有する出湯部とを具備し、予熱
    室内の冷鉄源は溶解中に溶解室の予熱室が設けられてい
    る一方側から他方側へ向けて供給され、出湯部はその冷
    鉄源の供給方向とは異なる方向に設けられ、溶解室で発
    生する排ガスを予熱室に導入して予熱室内の冷鉄源を予
    熱しつつ溶解するアーク溶解設備での冷鉄源の溶解方法
    であって、溶解室を予熱室側が低くなるように傾動させ
    た状態で、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在す
    る状態を保つように冷鉄源を連続的又は断続的に予熱室
    へ供給しながら溶解室内の冷鉄源を溶解し、溶解室内に
    所定量の溶湯が溜まった時点で溶解室を出湯部側が低く
    なるように傾動させ、その後、溶解室内の溶湯を昇温し
    て、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する状態
    で溶湯を出湯することを特徴とする冷鉄源の溶解方法。
  4. 【請求項4】 冷鉄源を溶解するための溶解室と、その
    一方側の上部に直結し、冷鉄源を予熱するためのシャフ
    ト型の予熱室と、溶解室内で冷鉄源を溶解するためのア
    ーク発生用電極と、冷鉄源が溶解室と予熱室に連続して
    存在する状態を保つように予熱室へ冷鉄源を連続的又は
    断続的に供給する冷鉄源供給手段と、溶解室に突設さ
    れ、出湯口を有する出湯部と、溶解室の予熱室側が低く
    なるように溶解室を傾動させる傾動手段と、溶解室の出
    湯部側が低くなるように溶解室を傾動させる傾動手段と
    を有し、冷鉄源が予熱室と溶解室とに連続して存在する
    状態で溶湯を出湯する冷鉄源の溶解設備であって、前記
    予熱室内の冷鉄源は溶解中に溶解室の予熱室が設けられ
    ている一方側から他方側へ向けて供給され、前記出湯部
    はその冷鉄源の供給方向とは異なる方向に設けられてい
    ることを特徴とする冷鉄源の溶解設備。
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