JP2001107684A - シールド掘進機のカッター交換方法及びシールド掘進機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】カッターを簡単に交換可能にし、シールド掘進
機のカッター交換の為の構造を簡単化し、工期を短縮し
費用を抑えることができるシールド掘進機のカッター交
換方法及びシールド掘進機を提供する。 【解決手段】カッタースポークを縮径後カッターヘッド
２をシールド掘進機１の胴部材３内に後退させ且つチャ
ンバー１８内の泥水３６を流動性のある充填剤３７に置
換する工程と、カッターヘッド２の前側に固化剤を注入
して固化させ切羽の土水圧を封止する工程と、チャンバ
ー１８内の充填剤３７を排出してチャンバー１８の大部
分に空気を導入し、カッターを交換する工程とを備え
た。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】 本発明は、シールド掘進機
のカッター交換方法及びシールド掘進機に関し、特にシ
ールド掘進機内の前端部内にカッター交換の為の好適な
作業空間を確保し、この作業空間からカッターヘッドの
カッターを交換可能にした技術に関する。

【０００２】

【従来の技術】 従来のシールド掘進機では、カッター
ヘッドに付設されたティースカッターやローラカッター
は、地盤中の土砂や礫などにより磨耗や破損を生じるた
め、これらカッターを交換せずに掘削可能な距離は１〜
２ｋｍが限界である。１台のシールド掘進機でそれ以上
の距離を掘進する場合、例えば、掘進経路の途中に中間
立坑を設け、ティースカッターやローラカッターを、中
間立坑の中で交換するか、シールド掘進機の前面の地盤
を改良し安定化させた状態で交換する。

【０００３】近年、中間立坑などを設けることなく、テ
ィースカッターやローラカッターを交換することができ
るシールド掘進機のカッター交換方法が実用に供されて
いる。例えば、特許第２５５７１６９号、実用新案登録
第２５３１１５２号、特開平９−７２１９３号公報参
照。

【０００４】特許第２５５７１６９号のシールド掘進機
においては、カッタースポーク内にティースカッターを
引き抜く引抜き用ジャッキを取付け、ティースカッター
のカッタースポークからの固定を解除した後、引抜き用
ジャッキによりティースカッターをカッタースポーク内
に退入させ、ティースカッターの退入により生じるカッ
タースポークの孔をバルブで止水する。次に、引抜き用
ジャッキをカッタースポークとティースカッターから取
外し、新しいティースカッターを逆の手順で取付ける。

【０００５】実用新案登録第２５３１１５２号のシール
ド掘進機においては、カッタースポークをその長さ方向
に沿うスポーク軸心回りに回転自在に構成し、通常の掘
削時には、ティースカッターを前方に向けてカッタース
ポークをカッターヘッドに固定した状態でカッターヘッ
ドを回転させる。ティースカッターの交換時には、カッ
タースポークの固定を解除し、その後カッタースポーク
をスポーク軸心回りに１８０度回転させ、チャンバー内
からティースカッターを交換する。

【０００６】特開平９−７２１９３号のシールド掘進機
においては、球体内にカッターヘッドの多数のカッター
ビット（ビット群）を収納し、カッターヘッドは、円を
扇型に適当角度ずつに分割した複数の扇型カッターを設
け、これら扇型カッターは径方向に同期して開閉駆動す
る。カッターの交換時には、各扇型カッターを閉じ球体
を反転させてチャンバー内からカッターを交換する。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】 カッター交換の為に
中間立坑を設ける方法は、中間立坑の掘削作業が必要に
なるが、都市部では中間立坑の用地確保が困難であり、
河川域や海域などでは中間立坑自体の設置が困難であ
る。しかも地盤の凍結や薬液注入などの大規模な補助工
法が必要となるため、大規模な補助工法の為の工期、費
用が別途必要になり、作業に危険が伴う。

【０００８】特許第２５５７１６９号、実用新案登録第
２５３１１５２号のシールド掘進機では、ティースカッ
ターを交換できるもののローラカッターを交換できず、
構造も複雑となるので製作費が高くなり実用性に欠け
る。しかも、カッター交換の際、カッターヘッドの前側
の切羽に固化剤を注入しても、注入の為のスペースが不
十分で所望の注入量に足りず、土水圧を効果的に封止で
きない。それ故、面板と面板との間の導入用開口や、カ
ッターヘッドと胴部材との間からチャンバー内やカッタ
ースポーク内に水が流入しやすく、作業に支障をきた
す。特開平９−７２１９３号のシールド掘進機では、テ
ィースカッターもローラカッターも交換可能であるが、
カッターヘッドの開閉構造と球体構造が複雑であり、製
作費が非常に高くなる。しかも、球体を内部の機器と干
渉することなく反転させるために、シールド掘進機内の
前端部のスペースを十分に広く確保しておかなければな
らず、シールド掘進機の機長が長くなる。

【０００９】本発明の目的は、カッターを簡単に交換可
能にすること、シールド掘進機のカッター交換の為の構
造を簡単化すること、工期を短縮し費用を抑えること、
等である。

【００１０】

【課題を解決するための手段】 請求項１のシールド掘
進機のカッター交換方法は、シールド掘進機でトンネル
を掘進する掘進途中においてカッターヘッドのカッター
を交換する方法において、シールド掘進機を停止させ、
カッターヘッドのカッタースポークを縮径後カッターヘ
ッドをシールド掘進機の胴部材内に後退させ、前記カッ
ターヘッドの前側の切羽に固化剤を注入して固化させ切
羽の土水圧を封止する工程と、前記チャンバー内に空間
を作り、カッターヘッドのカッターを交換する工程と、
を備えたことを特徴とするものである。

【００１１】トンネルを掘進する掘進途中においてカッ
ターを交換する際には、シールド掘進機を停止させ、カ
ッタースポークを縮径後のカッターヘッドを胴部材内に
後退させる。カッターヘッドを胴部材内に後退させてい
るので、カッターヘッドの前側に形成したスペースに土
水圧に対して必要十分な量の固化剤を注入することがで
き、上部土圧は胴部材で支えられるため、カッターヘッ
ドと胴部材との間の隙間等から水や土砂が流入すること
がなく、切羽の土水圧を効果的に封止できる。その後、
チャンバー内に空間を作り、作業者はこのチャンバー内
からカッターを能率的に交換することができる。

【００１２】請求項２のシールド掘進機のカッター交換
方法は、請求項１の発明において、前記カッターヘッド
の前面の切羽に固化剤を注入する前に、カッターヘッド
の背面側のチャンバー内の泥水を流動性のある充填材に
置換し、カッター交換前のチャンバー内空間は充填材の
排出によって作ることを特徴とするものである。

【００１３】チャンバー内の泥水を流動性のある充填剤
に置換した場合、カッタースポークを縮径後のカッター
ヘッドをスムースに胴部材内に後退させることができ
る。切羽の土水圧を封止後、チャンバー内の充填剤を排
出等によりチャンバー内に空間を作り、作業者はこのチ
ャンバー内からカッターを能率的に交換することができ
る。その他請求項１と同様の作用を奏する。

【００１４】請求項３のシールド掘進機のカッター交換
方法は、請求項１の発明において、流動性のある充填材
にかわり、空気あるいは液体で膨張させた風船等で充填
し、チャンバー内空間作りは、これを破って行うことを
特徴とするものである。風船を膨張させて切羽の土水圧
を封止し、その後、チャンバー内に空間を作り、作業者
はこのチャンバー内からカッターを能率的に交換するこ
とができる。その他請求項１と同様の作用を奏する。

【００１５】請求項４のシールド掘進機のカッター交換
方法は、請求項１〜３の何れかの発明において、固化剤
を注入する工程の前に、カッターヘッドの前面の導入用
開口の大部分を複数の遮蔽板により塞ぐことを特徴とす
るものである。それ故、固化剤の注入の際、導入用開口
からチャンバー内に固化剤が侵入するのを極力防止する
ことができる。

【００１６】請求項５のシールド掘進機のカッター交換
方法は、請求項１〜４の何れかの発明において、カッタ
ー交換工程において、カッターヘッドを胴部材内部に更
に後退させてカッターヘッドの前側付近にも空隙部を形
成してからカッターを交換することを特徴とするもので
ある。固化剤が時間経過とともに固化し、この状態でカ
ッターヘッドを更に後退させると、カッターヘッドの前
側付近にも空隙部が形成され、チャンバー内の密閉性は
高まるので、カッター交換作業を一層能率的に行える。

【００１７】請求項６のシールド掘進機のカッター交換
方法は、請求項１〜５の何れかの発明において、カッタ
ー交換工程の後、チャンバー内に泥水を注入し、カッタ
ーヘッドを回転させ且つカッターヘッドを胴部材に対し
て相対的に前進させながら、前記固化剤で固化した固化
層を掘削し、その後カッターヘッドのカッタースポーク
を拡径させることを特徴とするものである。カッターヘ
ッドを胴部材に対して相対的に前進させながら固化層を
掘削するので、固化層を除去する為の他の除去手段等を
講じる必要がなく、シールド掘進機の構造も複雑化せ
ず、トンネル掘進の為の準備作業を並行的に進めること
ができる。カッタースポークを拡径させることで、トン
ネル掘進を再開することができる。

【００１８】請求項７のシールド掘進機は、カッターヘ
ッドと、胴部材を含む掘進機本体と、カッターヘッドを
回転駆動する為の回転駆動手段とを備え、シールド掘進
の途中においてカッターヘッドのカッターを交換可能な
シールド掘進機において、前記カッターヘッドの複数の
カッタースポークを胴部材内へ導入可能に縮径させるス
ポーク縮径機構と、前記カッターヘッドを掘進機本体に
対して前後方向にスライド可能に支持するスライド機構
と、前記カッターヘッドをスライド駆動する移動駆動手
段と、前記カッターヘッドの前側に固化作用のある固化
剤を注入する為の固化剤注入手段と、必要に応じ前記固
化剤注入前にカッターヘッドの前面の導入用開口を複数
の遮蔽板で遮蔽して固化剤のチャンバー内への導入を防
止する遮蔽手段とを備えたことを特徴とするものであ
る。

【００１９】シールド掘進時においては、カッターヘッ
ドの導入用開口を開放し、カッターヘッドを掘進機本体
に対して前側に保持するとともに複数のカッタースポー
クを拡径させた状態で、回転駆動手段によりカッターヘ
ッドを回転駆動しトンネルを掘進していく。

【００２０】カッター交換時においては、シールド掘進
機を停止させ、スポーク縮径機構により複数のカッター
スポークを縮径させ、その後、移動駆動手段によりカッ
ターヘッドを掘進機本体に対して胴部材内に退入させ必
要に応じカッターヘッドの背面側のチャンバー内の泥水
を流動性のある充填剤等に置換する。次に、必要に応じ
遮蔽手段によりカッターヘッドの導入用開口を複数の遮
蔽板で遮蔽しておき、固化剤注入手段によりカッターヘ
ッドの前側に固化作用のある固化剤を注入して固化させ
切羽の土水圧を封止する。

【００２１】その後、必要に応じチャンバー内の充填剤
等を排泥設備の排泥管から排出してチャンバー内に空間
を作り、その後、カッターヘッドのカッターを交換す
る。特に、従来の開閉構造と球体構造を有するシールド
掘進機に比べてその構造を格段に簡単化でき、製作費を
低減することができる。その他、請求項１〜３の何れか
と同様の作用、効果を奏する。

【００２２】請求項８のシールド掘進機は、請求項７の
発明において、前記遮蔽手段は、複数の遮蔽板と、これ
ら遮蔽板を進退駆動可能な複数の油圧ジャッキとを有す
ることを特徴とするものである。各油圧ジャッキにより
夫々の遮蔽板を進出させてカッターヘッドの前面の導入
用開口の大部分を塞ぎ、充填剤のチャンバー内への導入
を防止することができる。

【００２３】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照して説明する。最初に、シールド掘進機の
構造について説明する。尚、掘進方向に向かって前後左
右を前後左右として説明する。

【００２４】図１〜図４に示すように、シールド掘進機
１は、カッターヘッド２と、胴部材３を含む掘進機本体
４と、カッターヘッド２を回転駆動する為の回転駆動機
構５と、スポーク縮径機構６と、カッターヘッド２を掘
進機本体４に対して前後方向にスライド可能に支持する
スライド機構７と、カッターヘッド２をスライド駆動す
る移動駆動機構８と、固化剤注入機構９と、遮蔽機構１
０（図５、図６参照）と、掘進推力を発生させる複数の
シールドジャッキ（図示略）と、排泥設備１１と、エレ
クタ装置（図示略）等を有する。

【００２５】最初に、カッターヘッド２について説明す
る。図１、図２に示すように、カッターヘッド２は、そ
の回転軸心付近部に設けられたセンターフレーム１２
と、センターフレーム１２から放射状に延びる例えば８
本のカッタースポーク１３と、これらカッタースポーク
１３の外周付近部に固着されたリングフレーム１４と、
各カッタースポーク１３間に配設されリングフレーム１
４に固着された８枚の面板１５と、４つのゲージカッタ
ー１６と、各カッタースポーク１３と各面板１５とに回
動可能に支持された多数のローラカッター１７とを有す
る。

【００２６】スポーク縮径機構６について説明すると、
図１〜図４に示すように、８本のカッタースポーク１３
のうち十文字状の４本のカッタースポーク１３の先端部
には４つのゲージカッター１６が取付けられ、これら４
本のカッタースポーク１３には、スポーク縮径機構６が
装備されている。このスポーク縮径機構６により、４つ
のゲージカッター１６を胴部材３と略同径の進出位置
と、胴部材３よりも縮径させてカッターヘッド２を胴部
材３内に後退可能な退入位置とに切換え可能である。

【００２７】次に、掘進機本体４について説明する。図
１、図３に示すように、カッターヘッド２の背部には、
チャンバー１８が形成され、そのチャンバー１８の後端
が、胴部材３の内面に接合されたバルクヘッド１９と、
このバルクヘッド１９に前後移動可能に支持された可動
隔壁２０とで仕切られている。

【００２８】可動隔壁２０は、円筒体２０ａと、円筒体
２０ａの前端に接合された中央壁部２０ｂと、円筒体２
０ａの後端に接合された開口壁部２０ｃと、この開口壁
部２０ｃの外周側の前面に接合され且つバルクヘッド１
９に摺動可能に支持される断面コ字形の環状フレーム２
０ｄとを有し、環状フレーム２０ｄと円筒体２０ａとの
間には環状凹部が形成されている。カッターヘッド２に
は、連結部材２１を介して環状のカッタードラム２２が
連結され、カッタードラム２２は環状凹部に複数の軸受
と土砂シールを介して回動自在に支持されている。

【００２９】次に、回転駆動機構５について説明する。
回転駆動機構５はリングギヤと複数の油圧モータ５ａと
を備え、各油圧モータ５ａのモータ軸にはピニオンギヤ
が固着され、このピニオンギヤがリングギヤ２３に噛合
している。複数の油圧モータ５ａによりリングギヤ２３
を介してカッタードラム２２が回転することでカッター
ヘッド２が回転する。

【００３０】次に、移動駆動機構８について説明する。
図１、図３に示すように、移動駆動機構８は、胴部材３
の後端部に接合された例えば支持フレームに連結された
複数のスライドジャッキからなり、これらスライドジャ
ッキのロッドは開口壁部２０ｃの後面に周方向等間隔お
きに連結されている。この移動駆動機構８とスライド機
構７とにより、カッターヘッド２と連結部材２１と可動
隔壁２０と回転駆動機構５が前後方向に一体的に移動駆
動する。なお、スライド機構７のスライド面はカッター
ドラム２２の内外面とした構造とすることも可能であ
る。その時、円筒体２０ａ、中央壁部２０ｂはシールド
掘進機１の胴部材３に連結され固定される構造となる。
この構造ではチャンバー内充填剤の量が減り、作業の迅
速化が図られる。

【００３１】次に、カッターヘッド２の前側に固化作用
のある固化剤２４（例えばモルタル等）を注入する為の
固化剤注入機構９について説明する。図３に示すよう
に、固化剤注入機構９は、固化剤供給源（固化剤２４の
貯留タンク、ポンプ、ポンプ駆動モータ、各種バルブ類
等からなる）とこの固化剤供給源からカッターヘッド２
の前側に固化剤２４を注入する為の固化剤注入管２５と
を備え、この固化剤注入管２５は、バルクヘッド１９あ
るいは中央壁部２０ｂ等に取外し可能に挿通支持されて
いる。

【００３２】次に、カッターヘッド２のカッタースポー
ク１３と面板１５との間の導入用開口４０の大部分を遮
蔽して固化剤２４のチャンバー１８内への侵入を防止す
る為の遮蔽機構１０について説明する。図５〜図８に示
すように、遮蔽機構１０は、複数の筒状部材２６と、各
筒状部材２６に内嵌され且つ各筒状部材２６に対して夫
々前方に移動可能に装備された可動筒部２７と、各筒状
部材２６および各可動筒部２７内に夫々装備された複動
型の油圧ジャッキ２８と、カッターヘッド２の前面の複
数の導入用開口４０の大部分を遮蔽する為の複数の遮蔽
板２９とを有する。

【００３３】図５、図７に示すように、各筒状部材２６
の前端には夫々フランジ２６ａが固着され、バルクヘッ
ド１９や中央壁部２０ｂの複数の開口穴１９ａに夫々筒
状部材２６が後方向きに挿入された状態で、各遮蔽機構
１０はバルクヘッド１９や中央壁部２０ｂにフランジ２
６ａを介して連結されている。各筒状部材２６の後端に
は蓋部２６ｂが取付けられ、この蓋部２６ｂには、夫々
油圧ジャッキ２８のジャッキ本体が連結され、油圧ジャ
ッキ２８に夫々油路を介して接続された接続金具（図示
略）等が設けられている。

【００３４】図７、図８に示すように、各可動筒部２７
の前端の蓋部２７ａには夫々油圧ジャッキ２８のロッド
が連結され、各蓋部２７ａの前面と各遮蔽板２９とが夫
々面合わせされ接合されている。各筒状部材２６の前端
部２６ｃは厚肉状に構成され、各可動筒部２７を部分的
に摺動可能に支持している。各前端部２６ｃには、可動
筒部２７との摺動面にグリースを供給する為の複数のグ
リース供給路３０が形成されている。符号３１〜３４は
シールを示す。尚、各可動筒部２７の後端部にはスライ
ドキー３５が固着され、スライドキー３５は可動筒部２
７と一体に筒状部材２６のキー溝に沿って前後にスライ
ドする。

【００３５】次に、排泥設備１１について説明する。図
１、図３、図９〜図１１に示すように、排泥設備１１
は、チャンバー１８内に泥水３６または流動性のある充
填剤３７を送る送水管３８と、チャンバー１８内の掘削
された土砂または充填剤３７を外部に排出する排泥管３
９とを備え、これら送水管３８と排泥管３９は、バルク
ヘッド１９に挿通支持されている。尚、送水管３８と排
泥管３９には夫々バルブが介装されている。

【００３６】次に、以上のシールド掘進機１の作用につ
いて説明する。但し、以下の説明は、カッター交換方法
についての説明も含む。シールド掘進時においては、遮
蔽機構１０を作動させず、カッターヘッド２の導入用開
口４０を開放したまま、カッターヘッド２を掘進機本体
４に対して最大限前側に保持するとともに、４つのゲー
ジカッター１６を進出位置に切換えておく。この状態
で、カッターヘッド２を回転駆動機構５により回転駆動
してトンネルを掘進していく。

【００３７】ローラカッター１７やゲージカッター１６
の交換時には、図１〜図４に示すように、シールド掘進
機１を停止させ、スポーク縮径機構６により所定の４本
のカッタースポーク１３を縮径させ、その後、移動駆動
機構８によりカッターヘッド２を掘進機本体４に対して
胴部材３内に退入させ、必要に応じ、チャンバー１８内
の泥水２１を排泥管３９から排出するとともにチャンバ
ー１８内に流動性のある充填剤３７を導入する。チャン
バー１８内の泥水２１はそのままでもよい。

【００３８】次に、図５、図６に示すように、遮蔽機構
１０の各油圧ジャッキ２８により夫々の遮蔽板２９を進
出させてカッターヘッド２の導入用開口４０の大部分を
塞ぎ、その後固化剤２４のチャンバー１８内への導入を
極力防止する。次に、必要に応じ図３に示すように、固
化剤注入機構９により、固化剤２４を、充填剤供給源か
ら固化剤注入管２５を経由してカッターヘッド２の前側
に注入して固化させ切羽の土水圧を封止する。

【００３９】次に、図９に示すように、チャンバー１８
内の充填剤３７あるいは泥水３６を排泥管３９から排出
してチャンバー１８内に空間を作り、このチャンバー１
８内から作業者はローラカッター１７やゲージカッター
１６を交換する。

【００４０】その後、図５、図１０に示すように、遮蔽
板が設けられている場合は、遮蔽機構１０の複数の遮蔽
板２９を夫々の油圧ジャッキ２８により退入して導入用
開口４０を開放し、送水管３８からチャンバー１８内に
泥水３６を注入してカッターヘッド２を回転駆動機構５
により回転させ、このカッターヘッド２を胴部材３に対
して相対的に前進させながら、固化剤２４で固化した固
化層を掘削する。その後、図１１、図１２に示すよう
に、スポーク縮径機構６により所定の４本のカッタース
ポーク１３を拡径させることでシールド掘進を再開可能
である。

【００４１】以上説明したシールド掘進機１のカッター
交換方法によれば、必要に応じチャンバー１８内の泥水
３６を流動性のある充填剤３７あるいは風船等に置換す
ることで、所定の４本のカッタースポーク１３を縮径
後、カッターヘッド２をスムースに胴部材３内に後退さ
せることができる。特に固化剤注入前にカッターヘッド
２を胴部材３内に後退させているので、第２工程におい
て、カッターヘッド２の前側に形成したスペースに必要
十分な量の固化剤を注入することができ、カッターヘッ
ド２と胴部材３との間の隙間等から水や土砂が流入する
ことがなく、切羽の土水圧を効果的に封止できる。カッ
ター交換工程において、チャンバー１８内の充填剤３７
あるいは風船、泥水等を排出してチャンバー１８の大部
分に空間を作り、作業者はこのチャンバー１８内からロ
ーラカッター１７やゲージカッター１６を能率的に交換
することができる。このカッター交換方法では、中間立
坑を設ける必要がないので、その分工期が短縮しその費
用も低減できる。

【００４２】固化剤注入の前に、カッターヘッド２の前
面の導入用開口４０の大部分を複数の遮蔽板２９により
塞ぐ場合、固化剤注入工程において、導入用開口４０か
らチャンバー１８内に固化剤２４が侵入するのを極力防
止し、逆に導入用開口４０からカッターヘッド２の前側
に充填剤３７が流出するのも極力防止することができ
る。

【００４３】カッター交換工程の後、カッターヘッド２
を胴部材３に対して相対的に前進させながら固化層を掘
削するので、固化層を除去する為の他の除去手段等を講
じる必要がなく、シールド掘進機１の構造も複雑化せ
ず、トンネル掘進の為の準備作業を並行的に進めること
ができる。

【００４４】次に、本実施形態を部分的に変更した変更
形態について説明する。 １）カッター交換工程において、カッターヘッド２を移
動駆動機構８により胴部材３内に更に後退させてカッタ
ーヘッド２の前側付近にも空隙部を形成してからローラ
カッター１７やゲージカッター１６を交換する場合もあ
る。この場合、固化剤２４が時間経過とともに固化し、
この状態でカッターヘッド２を更に後退させることで、
カッターヘッド２の前側付近にも空隙部が形成され、カ
ッター交換作業を一層能率的に行える。

【００４５】２）ローラカッター１７やゲージカッター
１６以外のティースカッター等も略同様に交換可能であ
る。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実
施形態に種々の変更を付加した形態で実施することも可
能である。

【００４６】

【発明の効果】 請求項１の発明によれば、必要に応じ
チャンバー内の泥水を流動性のある充填剤に置換するこ
とで、カッタースポークを縮径後、カッターヘッドをス
ムースに胴部材内に後退させることができる。特にカッ
ターヘッドを胴部材内に後退させているので、固化剤注
入工程において、カッターヘッドの前側に形成したスペ
ースに土水圧に対して必要十分な量の固化剤を注入する
ことができ、カッターヘッドと胴部材との間の隙間等か
ら水や土砂が流入することがなく、切羽の土水圧を効果
的に封止できる。その後カッター交換工程において、泥
水等を排出してチャンバー内に空間を作ることができ、
作業者はこのチャンバー内から所望のカッターを能率的
に交換することができる。このカッター交換方法では、
中間立坑を設ける必要がないので、その分工期が短縮し
その費用も低減できる。

【００４７】請求項２の発明によれば、必要に応じチャ
ンバー内の泥水を流動性のある充填剤に置換すること
で、カッタースポークを縮径後、カッターヘッドをスム
ースに胴部材内に後退させることができる。切羽の土水
圧を効果的に封止した後、カッター交換工程において、
チャンバー内の充填剤を排出してチャンバー内に空間を
作ることができ、作業者はこのチャンバー内から所望の
カッターを能率的に交換することができる。その他請求
項１と同様の効果を奏する。

【００４８】請求項３の発明によれば、カッター交換工
程において、チャンバー内の風船、泥水を排出してチャ
ンバー内に空間を作ることができ、作業者はこのチャン
バー内から所望のカッターを能率的に交換することがで
きる。その他請求項１と同様の効果を奏する。

【００４９】請求項４の発明によれば、固化剤注入工程
の前に、カッターヘッドの前面の導入用開口の大部分を
複数の遮蔽板により塞ぐため、固化剤注入工程におい
て、導入用開口からチャンバー内に固化剤が侵入するの
を極力防止し、チャンバー内の密閉性が高まる。逆に導
入用開口からカッターヘッドの前側に充填剤が流出する
のも極力防止することができる。その他請求項１〜３の
何れかと同様の効果を奏する。

【００５０】請求項５の発明によれば、カッター交換工
程において、カッターヘッドを胴部材内に更に後退させ
てカッターヘッドの前側付近にも空隙部を形成してから
カッターを交換するので、チャンバー内の密閉性は一層
高まり、カッター交換作業を一層能率的に行える。その
他請求項１〜４の何れかと同様の効果を奏する。

【００５１】請求項６の発明によれば、カッターヘッド
を胴部材に対して相対的に前進させながら固化層を掘削
するので、固化層を除去する為の他の除去手段等を講じ
る必要がなく、シールド掘進機の構造も複雑化せず、ト
ンネル掘進の為の準備作業を並行的に進めることができ
る。その他請求項１〜５の何れかと同様の効果を奏す
る。

【００５２】請求項７の発明によれば、スポーク縮径機
構により複数のカッタースポークを縮径させ、移動駆動
手段によりカッターヘッドを掘進機本体に対して胴部材
内に退入させ必要に応じチャンバー内の泥水を流動性の
ある充填剤あるいは風船等に置換し、必要に応じ遮蔽手
段によりカッターヘッドの導入用開口を複数の遮蔽板で
遮蔽しておき、固化剤注入手段によりカッターヘッドの
前側に固化剤を注入して固化させ切羽の土水圧を封止
し、チャンバー内の充填剤あるいは風船あるいは泥水を
排出してチャンバーに空間を作り、その後、カッターを
交換することができる。それ故、従来の開閉構造と球体
構造を有するシールド掘進機に比べてその構造を格段に
簡単化でき、製作費を低減することができる。その他基
本的に請求項１〜３の何れかと同様の効果を奏する。

【００５３】請求項８の発明によれば、油圧ジャッキに
より夫々の遮蔽板を進出させてカッターヘッドの前面の
導入用開口の大部分を塞ぎ、固化剤のチャンバー内への
導入を防止することができる。その他請求項７と同様の
効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態に係るシールド掘進機のカッ
ター交換前の準備段階の縦断面図である。

【図２】図１のシールド掘進機のカッターヘッドの正面
図である。

【図３】カッターヘッドを胴部材内に後退させチャンバ
ー内を充填剤に置換させた状態を示す図１相当図であ
る。

【図４】図３のシールド掘進機のカッターヘッドの正面
図である。

【図５】シールド掘進機の遮蔽機構等を示す要部縦断面
図である。

【図６】遮蔽機構と導入用開口との位置関係を示す図５
のカッターヘッドの正面図である。

【図７】図５の遮蔽機構の拡大断面図である。

【図８】図７の遮蔽機構の要部拡大断面図である。

【図９】カッター交換状態を示す図１相当図である。

【図１０】シールド掘進前の準備段階を示す図１相当図
である。

【図１１】シールド掘進可能な状態を示す図１相当図で
ある。

【図１２】図１１のカッターヘッドの正面図である。

【符号の説明】

１ シールド掘進機 ２ カッターヘッド ３ 胴部材 ４ 掘進機本体 ５ 回転駆動機構 ６ スポーク縮径機構 ７ スライド機構 ８ 移動駆動機構 ９ 固化剤注入機構 １０ 遮蔽機構 １３ カッタースポーク １６ ゲージカッター １７ ローラカッター １８ チャンバー ２４ 固化剤 ２８ 油圧ジャッキ ２９ 遮蔽板 ３６ 泥水 ３７ 充填剤 ４０ 導入用開口

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シールド掘進機でトンネルを掘進する掘
   進途中においてカッターヘッドのカッターを交換する方
   法において、 シールド掘進機を停止させ、カッターヘッドのカッター
   スポークを縮径後カッターヘッドをシールド掘進機の胴
   部材内に後退させ、前記カッターヘッドの前側の切羽に
   固化剤を注入して固化させ切羽の土水圧を封止する工程
   と、 前記チャンバー内に空間を作り、カッターヘッドのカッ
   ターを交換する工程と、を備えたことを特徴とするシー
   ルド掘進機のカッター交換方法。
2. 【請求項２】 前記カッターヘッドの前面の切羽に固化
   剤を注入する前に、カッターヘッドの背面側のチャンバ
   ー内の泥水を流動性のある充填材に置換し、カッター交
   換前のチャンバー内空間は充填材の排出によって作るこ
   とを特徴とする請求項１に記載のシールド掘進機のカッ
   ター交換方法。
3. 【請求項３】 流動性のある充填材にかわり、空気ある
   いは液体で膨張させた風船等で充填し、チャンバー内空
   間作りは、これを破って行うことを特徴とする請求項１
   に記載のシールド掘進機のカッター交換方法。
4. 【請求項４】 固化剤の注入工程の前に、カッターヘッ
   ドの前面の導入用開口の大部分を複数の遮蔽板により塞
   ぐことを特徴とする請求項１〜３の何れかに記載のシー
   ルド掘進機のカッター交換方法。
5. 【請求項５】 カッター交換工程において、カッターヘ
   ッドを胴部材内部に更に後退させてカッターヘッドの前
   側付近にも空隙部を形成してからカッターを交換するこ
   とを特徴とする請求項１〜４の何れかに記載のシールド
   掘進機のカッター交換方法。
6. 【請求項６】 カッター交換工程の後、チャンバー内に
   泥水を注水し、カッターヘッドを回転させ且つカッター
   ヘッドを胴部材に対して相対的に前進させながら、前記
   固化剤で固化した固化層を掘削し、その後カッターヘッ
   ドのカッタースポークを拡径させることを特徴とする請
   求項１〜５の何れかに記載のシールド掘進機のカッター
   交換方法。
7. 【請求項７】 カッターヘッドと、胴部材を含む掘進機
   本体と、カッターヘッドを回転駆動する為の回転駆動手
   段とを備え、シールド掘進の途中においてカッターヘッ
   ドのカッターを交換可能なシールド掘進機において、 前記カッターヘッドの複数のカッタースポークを胴部材
   内へ導入可能に縮径させるスポーク縮径機構と、 前記カッターヘッドを掘進機本体に対して前後方向にス
   ライド可能に支持するスライド機構と、 前記カッターヘッドをスライド駆動する移動駆動手段
   と、 前記カッターヘッドの前側に固化作用のある固化剤を注
   入する為の固化剤注入手段と、 必要に応じ前記固化剤注入前にカッターヘッドの前面の
   導入用開口を複数の遮蔽板で遮蔽して充填剤のチャンバ
   ー内への導入を防止する遮蔽手段と、 を備えたことを特徴とするシールド掘進機。
8. 【請求項８】 前記遮蔽手段は、複数の遮蔽板と、これ
   ら遮蔽板を進退駆動可能な複数の油圧ジャッキとを有す
   ることを特徴とする請求項７に記載のシールド掘進機。