JP2001098336A - 水素吸蔵合金 - Google Patents

水素吸蔵合金

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JP2001098336A JP27404999A JP27404999A JP2001098336A JP 2001098336 A JP2001098336 A JP 2001098336A JP 27404999 A JP27404999 A JP 27404999A JP 27404999 A JP27404999 A JP 27404999A JP 2001098336 A JP2001098336 A JP 2001098336A
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Akira Fukuno
亮 福野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水素ガスの吸蔵・放出の繰返使用による微粉
化を防ぐことで耐久性に優れ、簡単な製造工程でコスト
を削減することができる水素吸蔵合金を提供する。 【解決手段】 メカニカルアロイング法でTi、V、C
rの金属粉から製造される粉体組成物を、熱処理して得
られる粉体であって、Ti−V1−a−b−Cr
(ここで、aが0.2以上で0.5以下、bが0.
1以上で0.55以下、a+bが0.4以上で0.9以
下の範囲にある。)の組成と、0.5μm以上40μm
以下の体積平均粒径とを有し、かつ 単相で体心立方晶
構造の水素吸蔵合金である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水素吸蔵量が高
く、水素ガスの吸蔵・放出による繰返使用によっても微
粉化されにくく、耐久性に優れていて、さらに製造コス
トの低い水素吸蔵合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在のエネルギーシステムは、石油、石
炭等のいわゆる化石燃料とこれらの化石燃料かウラン等
の電子力発電に使用する核燃料により構成されている。
しかし、化石燃料は有限であり、その枯渇が懸念されて
いる。その代替エネルギーとして、貯蔵しにくい電気エ
ネルギーや熱の余剰分として貯蔵・輸送可能で、さらに
石油等のように燃料に変換可能な材料として水素ガスを
利用するシステムが開発されている。水素ガスは燃焼す
ると水になり、化石燃料のように炭酸ガス、硫黄酸化物
を形成することがなく、また核燃料のように核分裂物質
による環境汚染を心配する必要のないクリーンなエネル
ギー源である。しかし、水素ガスは最も軽い燃料であ
り、質量当たりのエネルギー密度は非常に大きいが、常
温、常圧の通常の環境では気体であり、体積当たりの貯
蔵できるエネルギーは非常に小さなものになってしま
う。このため、水素ガスを液化して体積を常圧での水素
ガスの体積と比べて約1/800にして貯蔵することも
考えられるが、水素ガスの液化のためには−253℃と
いう極低温で液化することが必要である。この水素ガス
の液化に多量のエネルギーが必要であり、さらに輸送用
には、液化水素ガスの蒸発を防ぐために断熱性があり、
高圧に耐える特殊な容器が必要である。そこで、水素ガ
スを可逆的に吸蔵・放出できる水素吸蔵合金の開発が行
われている。水素ガスの体積は耐圧性の特殊な容器に貯
蔵しても約1/150、液化しても約1/800である
が、この水素吸蔵合金は、水素ガスの体積を約1/10
00にして吸蔵することが可能になる。このように、水
素吸蔵合金を利用することにより、代替エネルギーの水
素ガスを軽量で安全にかつ大量に輸送できるようにな
る。
【0003】さらに、水素吸蔵合金は、水素ガスの吸蔵
・放出時に熱の放出・吸収を伴う可逆反応であり、熱エ
ネルギーを化学エネルギーに変換する機能を有してい
る。この機能を有することにより、熱エネルギーの貯蔵
・輸送システムや化学ヒートポンプとして冷却システム
に利用することができる。また、水素吸蔵合金は、熱エ
ネルギーを機械エネルギーに変換する機能も有してお
り、熱駆動型の静的水素コンプレッサーやアクチュエー
タとしても利用することができる。さらに、吸蔵・放出
時の化学反応により直接電気エネルギーに変換する機能
を有するために、燃料電池や二次電池にも利用すること
ができる。このように水素吸蔵合金は幅広い機能を有し
ているが、いずれも比較的多量の水素吸蔵合金を必要と
するので、水素吸蔵合金を繰返使用しても機能低下が少
なく、耐久性に優れていること、また幅広い実用化に向
けて水素吸蔵合金の価格が比較的安価であることが重要
である。
【0004】水素吸蔵合金として、従来、例えば、特開
平11−106859号公報では、一定の組成範囲にあ
るTi−Cr−V−A系合金(ここで、Aは、 IIIb族
等の金属)で、加熱急冷してbcc相に単相化させる水
素吸蔵合金が提案されている。また、特開平11−14
4728号公報では、V−Ti−Cr系の一定の組成を
有し、結晶構造が体心立方構造の水素吸蔵合金粒子から
なる電極が提案されている。特開平11−80865号
公報では、V−Ti−Cr系の一定の組成を有し、主相
の平均結晶粒径が40μm以下で、急冷凝固法で製造す
る水素吸蔵合金とその製造方法が提案されている。
【0005】一方、特開平5−179372号公報で
は、化学式La1−xMmNi5−yCoにて表される
原料にメカニカルアロイング法(以下、「MA法」と記
す。)を施して粉末を形成するメカニカルアロイング工
程と、この粉末を、実質的に200℃〜1000℃で、
真空又は不活性ガス雰囲気中で熱処理する熱処理工程と
を有する水素吸蔵合金の製造方法が提案されている。ま
た、特開平5−9618号公報では、水素吸蔵合金の成
分金属もしくはその成分金属を含有する合金の粉末混合
物を材料として、MA法にて非晶質状態の合金粉末を製
作し、次いで、融解することなく加熱して結晶化させる
電池用水素吸蔵合金の製造方法が提案されている。さら
に、特開平4−67566号公報では、少なくとも2種
類以上の金属粉末をメカニカルアロイングによって合金
化した粉末からなる燃料電池用電極の製造方法が提案さ
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記に
提案又は開示されている水素吸蔵合金又は水素吸蔵合金
の製造方法等では、以下に示すような問題点を有してい
る。特開平11−106859号公報に提案されている
水素吸蔵合金では、鋳造法により製造され、製造される
鋳造体を粉砕する工程が必要となり、工程が複雑化し、
また製造コストが高くなるという問題点がある。また、
体心立方晶の相に単相化して2相界面で生ずる格子歪み
による水素ガスの吸蔵・放出の圧力差をなくすことがで
きるが、水素ガスの吸蔵・放出時における水素吸蔵合金
全体の膨張・収縮による格子歪みを除去することはでき
ないという問題点がある。特開平11−144728号
公報に提案されている水素吸蔵合金電極では、主体とな
る合金相は急冷凝固法で製造されるものであり、かつ、
添加される希土類元素は製造時の不純な酸素を酸化物と
して除去して第2相を形成するためのものである。この
ために、水素吸蔵量が低下するとともに、微粉化を助長
するという問題点がある。さらに、結晶粒径を小さくす
るのは、表面エネルギーを大きくして粒子の微粉化を防
止するためのものであるが、根本的に微粉化を防止する
ものではない。さらに、特開平11−80865号公報
の水素吸蔵合金では、希土類元素を必須添加元素として
おり、上記と同様に、急冷凝固法で製造する際の不純な
酸素を酸化物として除去して第2相を形成するためのも
のであり、これにより上記同様に微粉化を助長するとい
う問題点がある。さらに、特開平5−179372号公
報で提案されている水素吸蔵合金と特開平5−9618
号公報で提案されている電池用水素吸蔵合金は、La−
Ni系合金であり、水素吸蔵量が多く、プラトー圧が低
く扱いやすい。また、水素の吸蔵・放出速度が速い等の
利点を有している。しかし、La、MmとNi、Coの
コストの高い金属材料を使用しているために、大量の使
用に問題がある。また、近年さらに水素吸蔵量の多い水
素吸蔵合金が要求されており、La−Ni系合金は実用
化されてはいるが、水素吸蔵量が少ないためさらに大き
な水素吸蔵量を有する水素吸蔵合金が求められている。
特開平4−67566号公報で提案されている燃料電池
用電極の製造方法では、製造される水素吸蔵合金電極が
Ni系合金の粉末であるために、平坦なプラトー圧が得
られず、また水素吸蔵量を多くすることができないとい
う問題点がある。
【0007】本発明は、上記のような問題点に鑑みてな
されるものであり、その目的は、水素ガスの吸蔵・放出
の繰返使用による微粉化を防ぎ、耐久性に優れる水素吸
蔵合金を提供することである。また、高速急冷法のよう
に高温にすることによる金属材料の酸化を防止して第2
相の生成を防止することができ、また、鋳造法のように
別途粉砕のための工程を付加することによる製造工程の
複雑化を防ぎ、製造コストを下げることができる水素吸
蔵合金を提供することにある。さらには、水素吸蔵量を
多くすることにより、貯蔵用材料、エネルギー変換材
料、水素精製用材料、電池材料として幅広く利用できる
水素吸蔵合金を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記のような問題点を解
決し、その目的を達成するために、請求項1に記載の発
明は、 Ti、V、Crの金属粉をメカニカルアロイン
グ法で粉体組成物を製造し、つぎに熱処理する粉体であ
って、 粉体が、 Ti−V1−a−b−Cr
(ここで、aが0.2以上で0.5以下、bが0.1以
上で0.55以下、a+bが0.4以上で0.9以下の
範囲にある。)の組成で、 体積平均粒径が0.5μm
以上で40μm以下で、 かつ 体心立方晶構造の単相
である水素吸蔵合金である。請求項2に記載の発明は、
結晶粒界を有しない単一の結晶粒で構成されている請
求項1に記載の水素吸蔵合金である。請求項3に記載の
発明は、 複数の結晶粒から構成され、結晶粒界が粉体
表面に表れず、粉体内部にのみ存在する請求項1に記載
の水素吸蔵合金である。請求項4に記載の発明は、 M
n、Fe、Co、Cu、Nb、Zn、Zr、Mo、A
g、Hf、Ta、W、Al、Si、C、N、P及びBで
構成される群の中から選択される1種又は2種以上の元
素を、0.005以上0.1以下の範囲で含有している
請求項1ないし3のいずれかに記載の水素吸蔵合金であ
る。請求項5に記載の発明は、 表面にNi含有表面層
が形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の
水素吸蔵合金である。請求項6に記載の発明は、 メカ
ニカルアロイング法により表面にNi含有表面層が形成
されている請求項5に記載の水素吸蔵合金である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の水素吸蔵合金につ
いて詳細に説明する。本発明の水素吸蔵合金は、Ti
−V1−a−b−Cr(ここで、aが0.2以
上で0.5以下、bが0.1以上で0.55以下、a+
bが0.4以上で0.9以下の範囲にある。)の組成を
有する3元系の合金である。この各元素の原子比によっ
て、150℃以下の低温及び大気圧近傍で高い水素吸蔵
量を得ることが可能な水素吸蔵合金を提供することがで
きる。それは、次のような理由によるものである。金属
元素が水素ガスを吸蔵するのは、水素ガスが水素原子と
なって、金属元素による結晶格子中に侵入又は固溶して
侵入型水素化物を形成するからである。このとき、金属
元素による結晶格子の結晶構造はほとんど変わらず、侵
入する水素原子は結晶格子中の特定の格子間位置を占有
する。このために、金属元素の結晶構造としては、充填
率の高い面心立方晶構造(fcc構造)や最密六方晶構
造(hcp構造)よりも、充填率が低く、結晶格子内に
水素原子が占有できる空間が多数ある体心立方晶構造
(bcc構造)がよい。さらに、金属元素としては、で
きるだけ多くの水素を吸蔵できて、かつ重量が小さい方
がよく、このために原子量の小さい遷移金属が好まし
い。V、Crは単独で、高温領域までbcc構造であ
り、また、Tiも高温で、bcc構造を有している。さ
らに、V、Cr、Tiは、周期表上第4周期に属し、遷
移金属として原子量が小さい方である。また、Ti−C
r系の2元系合金は、温度や組成により複雑な結晶構造
をとるが、VはCr、α−Tiに対して全率固溶体を形
成し、かつTi−Cr2元系にVを添加することにより
広い範囲でbcc構造の固溶体を安定的に形成させるこ
とができる。したがって、Ti−V−Cr3元系合金を
用いることにより、水素ガスの吸蔵・放出の反応性が高
く、かつ水素吸蔵量の大きいbcc構造を有する単相の
水素吸蔵合金を容易に得ることができる。
【0010】この3元系の中でTi量が増えると、bc
c構造の格子寸法が拡大し、水素吸蔵量が増加する。高
い水素吸蔵量を得るには、少なくとも0.2以上のTi
量が必要である。しかし、Ti量を多くすると水素吸蔵
量が増加するが、これにともなって、水素ガスを放出し
ない安定な水素化物が増加してプラトー圧が低下するた
めに室温・大気圧近傍条件下で利用することができるプ
ラトー領域が狭くなる。水素吸蔵量と実際の使用条件下
のプラトー領域を考慮すると、Ti量が0.5を越える
と実用的でなくなる。Ti量が多すぎると、水素ガスの
吸蔵・放出による繰返使用によって微粉化が促進され
る。したがって、水素吸蔵量とプラトー圧を考慮すると
Ti量は0.2以上、0.5以下とする。さらに、hc
p構造のTiの析出を抑制するため、Ti量は、0.4
5以下が好ましい。
【0011】この3元系の中でCr量が0.1未満で
は、室温・大気圧近傍の条件下ではプラトー圧が大気圧
より低くなり、室温で利用することができるプラトー領
域が狭くなる。しかし、Cr量が0.55を超えると、
第2相として析出するTiCr 相の量が増加し、水
素吸蔵量が低下するだけでなく、水素の吸蔵・放出に伴
う水素吸蔵合金の膨張・収縮による内部歪みや結晶粒界
でのずれによって、割れやすくなり微粉化が生じ、水素
ガスの吸蔵・放出の繰返使用に対する耐久性が低下す
る。したがって、水素吸蔵量と繰返使用に対する耐久性
を考慮するとCr量は0.1以上、0.55以下とす
る。さらに、結晶の格子寸法が小さくなって水素吸蔵量
が低下するのを防止するため、Cr量は、0.45以下
が好ましい。
【0012】この3元系の中で、V添加によって水素吸
蔵量の若干の増加が見られる。しかし、Vは、Ti、C
rと周期表で同じ周期であり、TiとCrの間の族に属
しており、物理的性質と化学的性質が大きく異ならない
ために、主に安定したbcc構造の固溶体を形成するこ
とに寄与する。特に、Cr量の比率が大きくなると、T
iCr相が析出して、水素ガスの吸蔵・放出の繰返
使用に対する耐久性を大きく低下させ、さらに、固溶体
の内部歪みを緩和する効果が無くなるために、微粉化し
やすくなる。したがって、V量は、Ti量とCr量の比
率によって添加する量が決定されるが、0.05以上、
0.5以下とする。さらに好ましくは、V量は、0.3
以下がよい。Vは、Ti−V−Cr3元系合金をbcc
構造にするために必要であるが、高価なのでできるだけ
少量にすることが好ましい。
【0013】本発明の水素吸蔵合金は、体心立方晶構造
(bcc構造)の単相をを有するものである。単相と
は、Ti、Cr、Vによるものであっても、主相の固溶
体以外の第2相を含まないことをいう。第2相があると
異相界面ができるため、異相界面が割れの起点となって
しまう。これは、水素吸蔵合金の膨張・収縮時に主相と
第2相の膨張・収縮の大きさが異なるために、内部歪み
やずれが生じる。このために、水素ガスの吸蔵・放出に
よる繰返使用によって微粉化が促進されることになる。
したがって、第2相のない単相の水素吸蔵合金が好まし
い。 また、金属酸化物、その他の不純物介在物も少な
い方がよいが、全く含まないことをいうものではない。
不純物等を全く含まないように製造することは困難だか
らである。また、微粉化を促進しない程度の量で有れ
ば、希土類等の金属元素を添加して酸化を防止するため
に適宜添加することができる。水素吸蔵合金の結晶構造
は、bcc構造が好ましい。先に説明したように、fc
c構造等と比較して充填率が低いために内部に大きな空
間があり、原子半径の小さな水素原子は結晶内部に入り
やすく、水素吸蔵量を大きくすることができる構造だか
らである。
【0014】本発明の水素吸蔵合金は、体積平均粒径
(以下、「平均粒径」という。)が、0.5μm以上で
40μm以下の粉体である。水素ガスの吸蔵・放出反応
は水素吸蔵合金の表面で発生する。したがって、平均粒
径を小さくすることで、単位重量当たりの表面積を増加
させて反応がよく起こるようにして、水素ガスの吸蔵・
放出の反応速度を速くすることができる。しかも、平均
粒径が小さいので微粉化しづらくなる。しかし、平均粒
径を小さく製造するには非常に大きなエネルギーを必要
とするために製造コストが大きくなる。また、平均粒径
が小さい場合は、粒径分布が広くなるために、粉体粒子
製造後に分級工程を必要とする場合があり、製造工程が
複雑になり製造コストが高くなる原因となる。一方、平
均粒径が大きい場合は、単位重量当たりの表面積が低下
し、また、粉体内部の水素の拡散に時間を必要とするた
めに、水素ガスの吸蔵・放出の反応速度が低下する。ま
た、製造時に第2相の析出する割合が増加するために水
素の吸蔵・放出の繰返使用によって破壊されやすくな
り、微粉化が促進されるおそれがある。したがって、反
応速度と微粉化を考慮すると、平均粒径は0.5μm以
上で40μm以下であることがよい。
【0015】 本発明の水素吸蔵合金の応用例の一つに
二次電池が挙げられる。二次電池は、正極、セパレー
タ、電解液、負極により構成されており、本発明の水素
吸蔵合金は、負極の構成材料として用いられる。この負
極は、少なくとも水素吸蔵合金粉末と結着用樹脂によっ
て構成されている。これらを混練して粘稠なペースト状
にし、金属板等の上にスクレーパ又はワイヤバーで25
0μm以下の厚さのシートに成形し、このシートを、所
定の大きさに切り出して負極として用いる。このとき、
水素吸蔵合金粉末の平均粒径は、0.8μm以上で20
μm以下が好ましい。これは、0.8μm以上にするこ
とにより、シート形成時に水素吸蔵合金粉末表面に酸化
膜が生成されるのを防止する。また、20μm以下にす
ることにより、シート表面の平滑性を良好に保ち、水素
の可逆的な吸蔵・放出を容易にするためである。さら
に、15μm以下にすることが一層好ましい。これによ
り、シートを100μm以下にしても、シート表面の平
滑性を良好に維持することができる。
【0016】また、本発明の水素吸蔵合金は、結晶粒界
を有しない単一の結晶粒で構成されているものである。
金属は一つの部材全体が一つの結晶でできていることは
希であり、通常は微細な結晶が集合している。この微細
な結晶の間に結晶粒界が存在する。水素吸蔵合金では、
水素ガスの吸蔵・放出に際して、水素が結晶内部に入り
膨張・収縮を繰り返すために、内部歪みが集中する部分
となる結晶粒界を起点として破壊が生じ、又は結晶粒毎
に膨張・収縮方向が異なるためにずれが生じ、微粉化が
促進される。しかし、本発明の水素吸蔵合金は、水素ガ
スの吸蔵・放出に伴う膨張・収縮において、内部に結晶
粒界を有しない単一の結晶粒で構成されているために破
壊の起点がなく、破壊が生じにくくなっている、さら
に、結晶粒界に沿って生ずるずれがなく不整合な部分を
生成するこがなく微粉化を抑制することができる。この
ように結晶粒界を有しない単一の結晶粒で構成される粉
体にすることにより、水素ガスの吸蔵・放出の繰返使用
による粉体の微粉化を防止することができる。
【0017】ここでいう「結晶粒界」には、亜粒界は含
まれない。結晶粒界の傾角が小さければ、両側にある結
晶粒の原子配列に大きな変化がないために、内部歪みが
他方の結晶粒に伝わり、内部に集中せず、結晶粒界がな
い状態とみなせるからである。さらに、本発明の水素吸
蔵合金は、結晶内に欠陥が全くないものではない。空孔
やTi等の形成元素の配置の違いによる格子欠陥、転位
等の欠陥が含まれるものであってもよい。
【0018】本発明の水素吸蔵合金は、複数の結晶粒を
有し、結晶粒界が粉体表面に表れず粉体内部にのみ存在
するものであってもよい。これは、いくつかの結晶粒で
構成される多結晶体であっても、単一の結晶粒が必ず粉
体表面を形成するもので、粉体表面に結晶粒界が表れて
いないものをいう。この場合、粉体表面に表れない粉体
内部に閉じこめられた結晶粒が存在していてもよい。先
に説明したように、結晶粒界が粉体表面にある場合、結
晶粒界の両側にある結晶粒の方位が異なり、結晶粒の膨
張・収縮の方向が異なるために結晶粒界を夾んでずれが
生ずる。このために、水素ガスの吸蔵・放出に伴う粉体
の膨張・収縮により、結晶粒界でずれに伴う割れが生
じ、粉体の微粉化が促進される。したがって、結晶粒界
が粉体表面に表れず粉体内部にのみ存在する水素吸蔵合
金では、粉体表面の割れによる微粉化を抑制することが
できる。
【0019】また、本発明の水素吸蔵合金は、メカニカ
ルアロイング法(MA法)により製造されるものであ
る。水素吸蔵合金の粉体を製造するには、この他に高速
急冷法、鋳造法がある。鋳造法は、溶解炉に原料金属を
投入して溶解し、鋳型に鋳込んで凝固させ、つぎにこの
凝固させたインゴットを粉砕して粉体を製造するもので
ある。高速急冷法には、代表的な例として、連続薄体を
作るロール急冷法と溶融状態の金属に高圧アルゴンガス
を噴射し直接粉体を得るガスアトマイズ法等がある。ガ
スアトマイズ法は、溶融する金属を高圧ガスで噴射して
細かくして急激に冷却することにより、粉体を直接的に
製造することができる。鋳造法は、徐冷して凝固させる
ためにマクロ偏析が生じやすい。急冷凝固法では、偏析
の少ない均質な組織が得られるが、格子歪みが残留しや
すい。また、金属を溶融しなければならず、製造コスト
が高くなってしまう。MA法は、機械的合金法とも呼ば
れ、高エネルギーの攪拌混合装置等で金属粉末に摩砕、
混合を繰り返すことにより圧接、相互拡散を行い、均一
な合金粒子を製造するものである。したがって、粉砕を
同時に行うために、粉砕工程を設けて金属粉末の粒径を
揃える必要がなく、原料粉の形態のままで合金化が可能
である。特に、機械的エネルギーを利用することによ
り、2種類以上の金属粉末を融点より低い温度で合金粉
末にすることができる。これにより、鋳造法や高速急冷
法による合金化と比較して、粉体内の組成が均質で、偏
析が少ない粉体が得られる。さらに、鋳造法のように粉
体を製造するために粉砕工程を設ける必要がなく、さら
に、高速急冷法のように原料金属を溶融する必要がない
ことによって、工程を簡略化できるために製造コストを
削減することができる。また、このMA法は、高速急冷
法と比較して、熱力学的に不安定な組成範囲であって
も、高融点の金属又は合金であっても、非晶質状態の粉
体を容易に製造することができる。
【0020】また、MA法では、出発の原料金属(一部
は合金であってもよい。)は粉体であり、MA法処理後
も粉体状であり、後処理工程を簡略化することができ
る。例えば、本発明の水素吸蔵合金は、結着用樹脂と混
合してシートにしてNi−H二次電池の負極として利用
することができるが、この場合水素吸蔵合金が粉体で得
られるために後工程で粉砕等の必要がなく非常に有利で
ある。さらに、本発明の水素吸蔵合金は、MA法により
非晶質の単相で、結晶粒界のない状態で得ることができ
る。このために、水素の吸蔵・放出による体積変化が粉
体内で均一であり、内部歪みやずれが生じないために、
水素ガスの吸蔵・放出の繰返使用を行っても割れによる
粉体の平均粒径の変化が少なく、粉体の微粉化を防止
し、耐久性に優れる水素吸蔵合金を得ることができる。
【0021】MA法としては、具体的には、水素ガスま
たはアルゴンガス等の不活性雰囲気中で、ボールミル、
振動ミル、アトライタ等によって機械的に高エネルギー
で混合し、金属組織の微粉化またはアモルファス化を達
成するものである。MA法処理条件は、用いる装置によ
って異なってくる。ボールミルを用いる場合は、ボール
ミル中の雰囲気はアルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性
雰囲気または水素ガス雰囲気であり、好ましくは、不活
性雰囲気がよい。これは、原料金属の酸化を防止するた
めである。ボールミルの回転数は、200rpm以上
で、500rpm以下がよい。200rpm以下では、
エネルギーが小さいために合金化が進まず、構成元素の
濃度が一様にならないし、また粉体組成物がアモルファ
ス化しない。また、500rpm以上では、エネルギー
が大きいために粉体組成物の粒径が小さくなり過ぎる。
この回転速度により、粉体組成物全体をアモルファス構
造にしたり、微細結晶粒の金属組織にしたりすることが
できる。この範囲で回転させることにより、構成元素の
偏析の少ないアモルファス化した粉体組成物を得ること
ができる。ボールミルの処理時間は、40時間以上で5
00時間以下が好ましい。40時間以下では、合金化が
進まず構成元素の濃度が一様にならないし、また粉体組
成物がアモルファス化しない。500時間以上では、ア
モルファス化、合金化、微細結晶粒化がこの前に終了し
ており、不必要な処理によって製造効率が低下し、また
粉体表面に酸化膜が形成されるためである。処理時間
は、全体がアモルファス化し、偏析のない粉体組成物を
得るため、80時間以上で、300時間以下とすること
がより一層好ましい。アトライタを用いる場合は、ボー
ルミルと同様にアトライタ中の雰囲気は不活性雰囲気ま
たは水素ガス雰囲気であり、好ましくは、不活性雰囲気
がよい。これは、原料金属の酸化を防止するためであ
る。アトライタのインペラの回転数は、100rpm以
上で、400rpm以下がよい。100rpm以下で
は、ボールミルと同様に合金化が進まず構成元素の濃度
が一様にならないし、粉体組成物がアモルファス化しな
い。また、400rpm以上では、エネルギーが大きい
ために粉体組成物の粒径が小さくなり過ぎるためであ
る。アトライタの処理時間は、20時間以上で250時
間以下が好ましい。20時間以下では、合金化が進まず
構成元素の濃度が一様にならないし、また粉体組成物が
アモルファス化しない。250時間以上では、処理が終
了しており、不必要な処理によって製造効率が低下し、
また粉体表面に酸化膜が形成されるためである。
【0022】本発明の水素吸蔵合金は、メカニカルアロ
イング法(MA法)により粉体組成物を製造し、つぎに
熱処理されるものである。この熱処理により、MA法で
製造された粉体組成物の金属組織を制御したり、粒径を
制御することが可能になる。特に、MA法で全体がアモ
ルファス化した粉体組成物では、熱処理により容易にb
cc構造を有する単相で、結晶粒界のない単一の結晶粒
によって構成されている粉体を得ることができる。ま
た、多数の微細な結晶粒を有する粉体組成物では、熱処
理後に多数の結晶粒を有していても、表面近傍では結晶
粒界のない単一の結晶粒で形成されていて、結晶粒界が
粉体表面に表れず粉体内部にのみ存在する粉体を製造す
ることができる。さらに、熱処理は金属組織を制御する
だけではなく、粉体組成物同士を溶融させ、又は構成元
素を拡散させることで粉体組成物を一体化して成長させ
る。この一体化して成長させる速度を調整することによ
り、平均粒径を制御することができる。したがって、熱
処理条件は、MA法で得られる粉体組成物と目的とする
粉体の金属組織や平均粒径により異なってくるが、処理
温度は、300℃以上1100℃以下が良く、処理時間
は2分以上で5時間以下がよい。この条件より高温・長
時間で処理すると、粒子相互の融着が激しくなり平均粒
径が大きくなるため、後で分級工程が必要になる。ま
た、この条件より低温・短時間で処理すると、粉体が非
晶質状態のままでbcc構造の固溶体を生成しない。ま
た、微細結晶粒のままで多くの結晶粒界が残り、また粉
体表面に結晶粒界が残留するために、水素ガスの貯蔵・
放出による水素吸蔵合金の膨張・収縮による微粉化が促
進される。
【0023】このように、MA法と熱処理を組み合わせ
ることで、粉体を実質的に結晶粒界のない単結晶状態に
調整したり、結晶粒界が存在している場合であっても、
その結晶粒界が粉体表面に表れず粉体内部にのみ存在す
る組織とすることができる。これにより、水素ガスの吸
蔵・放出に伴う膨張・収縮時の体積変化による内部歪み
や結晶粒界の両側におけるずれが生じないために、水素
ガスの吸蔵・放出の繰返使用を行っても割れによって生
ずる粉体の平均粒径の変化が少なく、水素吸蔵合金の微
粉化を防止し、耐久性に優れる水素吸蔵合金を得ること
ができる。
【0024】また、本発明の水素吸蔵合金は、Mn、F
e、Co、Cu、Nb、Zn、Zr、Mo、Ag、H
f、Ta、W、Al、Si、C、N、P及びBで構成さ
れる群の中から選択される1種又は2種以上の元素を、
0.005以上0.1以下の範囲で含有するものであっ
てもよい。これらは、Ti、Cr、Vのいずれかと置換
し、格子寸法を拡大して水素吸蔵量を増加させるのに効
果的な元素であり、好ましくは、第3、4、5周期に属
する金属元素がよい。これは、Ti等が第3周期に属し
ており、同一周期ないしその前後がよいからである。さ
らに、周期表上で近い族に属することが好ましい。この
ために、第4周期のMn、Fe、Co、Niと第5周期
でTi等と同一族にあるZr、Nb、Moが好ましく、
特に、Mn、Zr、NbとMoが好ましい。これらの金
属元素は単体でbcc構造となり、かつ、Ti、V、C
rと置換しやすいため、安定したbcc構造となりやす
い。
【0025】本発明の水素吸蔵合金は、水素吸蔵合金の
表面にNi含有表面層を形成してもよい。水素吸蔵合金
の水素ガスの吸蔵・放出の反応速度を速めるには、水素
吸蔵合金粉体表面にNiを付与して、電気的触媒機能を
有する表面層を形成するのが有効である。しかし、合金
表面に単にNi層を付与するだけでは、電気的触媒機能
を果たさず、逆に反応速度を低下させ、また母相となる
Ti−Cr−V系水素吸蔵合金より水素吸蔵量が低くな
ってしまう。また、内部への水素の拡散速度が低く、水
素の拡散に時間を必要とするために水素吸蔵量と水素ガ
スを吸蔵・放出する速度が低下する。そこで、水素吸蔵
合金の表面にNi含有合金層を形成して、電気的触媒機
能により反応速度を速めて水素吸蔵量を大きくすること
ができる。さらに、Niは耐酸化性が高いため、水素吸
蔵合金表面にNi含有層を設けることにより、水素吸蔵
合金製造時の酸化を防止することができる。
【0026】本発明の水素吸蔵合金は、水素吸蔵合金表
面にNi含有表面層を形成する方法としてMA法を用い
てもよい。Ni含有合金層を形成する方法には、Ni粉
末と水素吸蔵合金を混合し表面に付着させた後に、熱処
理してNi含有表面層を形成する方法、Ni粉末と水素
吸蔵合金をMA法によりNi含有表面層を形成する方法
または電気的・化学的に水素吸蔵合金表面にNiをメッ
キした後に熱処理してNi含有表面層を形成する方法等
がある。好ましくは、MA法がよい。MA法では、水素
吸蔵合金の粉末組成物をMA法で製造した後に、そのま
まNi粉末を投入し、さらにMA法によりNi含有表面
層を形成するため、同一工程内で製造することができる
からである。さらに、その後熱処理することにより熱処
理工程を一度で済ませることができる。
【0027】
【実施例】本発明に係る水素吸蔵合金の実施例に関して
説明するMA法による合金化 Ti、Cr、Vの純度99.8%以上の金属を原料とし
て、目開き53μmのメッシュを通過できるまで機械的
に粉砕する。つぎに、外径4inchのステンレス製のポッ
トに3/16inchの径のステンレス製ボールを容積比で
ほぼ1/3になるように充填し、所望の組成が得られる
ように粉体を秤量する。ついで、ポット内に、処理量が
100gになるように金属原料を投入し、さらに、不活
性ガスとしてArガスを充填して密閉する。このポット
を、回転数400rpm で、100時間回転させて処理す
る。添加元素を加えるときも同様に、Ti等と一緒にポ
ットに加える。熱処理による調整 熱処理は、MA法による合金化後に、粉体に熱処理を施
して、結晶粒径の適正化と結晶構造の制御を行うもので
ある。熱処理は、不活性ガス雰囲気中の炉の中で、処理
温度800℃、処理時間1分間の条件で行う。Ni含有表面層の付与 平均粒径0.03μmのNi粉末を水素吸蔵合金粒子に
加え、その混合物をボールミルによりMA法で処理し、
その後熱処理することで、粉体粒子表面にNi含有表面
層を付与する。
【0028】以下の表1に実施した例を示す。
【表1】 ここで、比較例1の高速急冷法では、Ti、Cr、Vの
純度99.8%以上の金属原料を処理量100gになる
ように秤量して、これを高周波誘導炉で溶融し、アルゴ
ンガスを用いるガスアトマイズ法により製造する。ま
た、比較例2の鋳造法は、真空中で高周波誘導炉によっ
て、処理量100gを溶融し、金型に鋳込んでインゴッ
トを得、この表面をグラインダー等で削り落とした後、
ハンマーミルで粗砕し、ボールミルで微粉砕した。比較
例1と2は、実施例と同じ条件で熱処理した。
【0029】以下に上記水素吸蔵合金の評価方法につい
て説明する。結果は表2に示す。水素吸蔵量の測定 ジーベルツ装置を用い、水素ガス雰囲気における水素吸
蔵−放出量測定により、PCT(P:水素圧力、C:組
成、T:温度)特性を求めた。測定は40℃で行うが、
測定の1回目では、この測定温度では放出しきれない水
素吸蔵量を含むため、2回の測定を行い実際に水素放出
量として利用できる有効量を水素吸蔵量として評価す
る。結晶状態、内部に閉じこめられた結晶粒界の有無の評価 結晶状態の評価では、水素吸蔵合金が結晶粒界のない単
一の結晶粒で構成される粉体であるか、多数の結晶粒で
構成されていている粉体であるかについて評価する。S
EM(走査型電子顕微鏡)で粉体断面を観察し、粒界の
有無により評価する。SEM観察用試料は、硬化型エポ
キシ樹脂上に水素吸蔵合金の粉体を散布して固定し、研
磨した後にカーボン蒸着する。この試料を、SEMで観
察すると、結晶粒界が線状に観察され、この線状の有無
により判断することができる。さらに、結晶粒界が粉体
表面に表れているか否かは、SEMで粉体表面を観察し
て線状の結晶粒界の有無により判断することができる。
断面観察と表面観察の双方で結晶粒界が観察できなけれ
ば、単一の結晶粒で構成されていると判断できるし、断
面観察と表面観察の双方で多数の結晶粒界が観察できれ
ば、多数の結晶粒で構成されていて、かつ結晶粒界が粉
体表面に表れていると判断できる。粉体の平均粒径:平均粒径の変化の測定 ガス圧で粉体粒子を分散させた後、レーザ光を照射し、
粒子からの散乱強度を測定して、コンピュータで解析し
て平均粒径をもとめる。平均粒径の変化は、水素吸蔵合
金粉体を温度可変の容器内に入れ、水素ガスを一定圧力
にし、その後試料の水素ガスの吸蔵・放出速度に合わせ
て容器内の加熱・冷却を50回繰り返した時の平均粒径
を測定して実験前の平均粒径との差を評価する。
【0030】これらの結果を表2に示す。
【表2】 ここで、「単結晶」とは、粉体が結晶粒界のない単相
で、単一の結晶粒で構成されていることをい、「多結
晶」とは、多数の結晶粒で構成されていることをいう。
【0031】水素吸蔵量に関しては、実施例1〜7と比
較例1〜2を比べると、組成と結晶状態で大きな差がな
いことがわかる。水素吸蔵合金に吸蔵される水素原子
は、結晶格子の特定の位置を占めるので、結晶構造・格
子寸法が決まれば、水素吸蔵量がほぼ決定されるものと
考えられる。また、結晶状態の単結晶・多結晶の差は結
晶粒界の有無であり、結晶粒界の占める体積は非常に小
さいので水素吸蔵量に影響を与えないことがわかる。し
かし、この中でNi含有表面層を有している実施例8
が、やや大きい値を示している。これは、水素ガスの吸
蔵・放出の反応速度が速く、有効な水素吸蔵量が多いた
めである。実施例1〜8と比較例1〜2では、水素ガス
の貯蔵・放出による繰返使用に対する平均粒径の変化に
大きな差がある。比較例1〜2のように、多結晶で粉体
内部に多数の結晶粒界が観察され、かつ結晶粒界が粉体
表面に表れている場合には、平均粒径の変化が大きくな
っている。これは、多数の粉体に割れが生じていること
を示している。実施例1と7のように、多結晶である
が、粉体表面に結晶粒界が表れず粉体内部にのみ存在す
る場合には、水素ガスの吸蔵・放出による平均粒径の差
が小さくなっている。これから、粉体内部に結晶粒界が
あって多数の結晶粒で構成されていても、粉体表面に結
晶粒界がないことによって、微粉化が起こりにくい。ま
た、実施例2〜6と8のように、単一の結晶粒で構成さ
れていて、粉体表面に結晶粒界が観察されていない場合
には、平均粒径の大小に係わらず、平均粒径の変化がな
い。これにより、水素ガスの吸蔵・放出の繰返使用を行
っても、粉体の割れの発生がなく、微粉化が生じていな
いことがわかる。
【0032】さらに、熱処理条件が同一であることか
ら、MA法と熱処理の組合せることで、鋳造法及び高速
急冷法と比較して、目的の結晶状態の制御、結晶粒界の
制御、平均粒径の制御が容易であることがわかる。粉体
までの製造コストは、実施例1〜8のMA法ではほぼ同
一であり、このときの製造コストを指数100とする
と、比較例1の高速急冷法では指数135であり、比較
例2の鋳造法は指数115である。これにより、MA法
で製造される水素吸蔵合金は、他の方法で製造される水
素吸蔵合金に比べて製造コストが削減され、繰り返し使
用によっても微粉化が生じにくく耐久性があることがわ
かる。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の水素吸蔵
合金では、Ti−V1−a−b−Cr(ここ
で、aは0.2以上で0.5以下、bは0.1以上で
0.55以下、a+bは0.4以上で0.9以下の範囲
にある。)の組成で体心立方晶構造を有する単相の粉体
で、体積平均粒径を0.5μm以上で40μm以下とす
ることにより、水素吸蔵量が高く、しかも、水素ガスの
吸蔵・放出による繰返使用による微粉化を防止して優れ
た耐久性を得ることができる。また、本発明の水素吸蔵
合金では、粉体の結晶状態又は結晶粒界の存在状態を制
御することにより、水素ガスの吸蔵・放出による繰返使
用による微粉化をさらに防止することができる。また、
MA法で製造することにより、製造工程を簡略化して製
造コストを削減することができる。さらに、第4元素の
添加又はNi含有表面層の付与によって、水素ガスの吸
蔵・放出の反応速度を速くすることができる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ti、V、Crの金属粉をメカニカルア
    ロイング法で粉体組成物を製造し、つぎに熱処理する粉
    体であって、粉体が、Ti−V1−a−b−Cr
    (ここで、aが0.2以上で0.5以下、bが0.
    1以上で0.55以下、a+bが0.4以上で0.9以
    下の範囲にある。)の組成で、体積平均粒径が0.5μ
    m以上40μm以下で、かつ 体心立方晶構造の単相で
    あることを特徴とする水素吸蔵合金。
  2. 【請求項2】 前記水素吸蔵合金は、結晶粒界を有しな
    い単一の結晶粒で構成されていることを特徴とする請求
    項1に記載の水素吸蔵合金。
  3. 【請求項3】 前記水素吸蔵合金は、複数の結晶粒から
    構成され、かつ 結晶粒界が粉体表面に表れず、粉体内
    部にのみ存在することを特徴とする請求項1に記載の水
    素吸蔵合金。
  4. 【請求項4】 前記水素吸蔵合金は、Mn、Fe、C
    o、Cu、Nb、Zn、Zr、Mo、Ag、Hf、T
    a、W、Al、Si、C、N、P及びBで構成される群
    の中から選択される1種又は2種以上の元素を、0.0
    05以上0.1以下の範囲で含有していることを特徴と
    する請求項1ないし3のいずれかに記載の水素吸蔵合
    金。
  5. 【請求項5】 前記水素吸蔵合金は、表面にNi含有表
    面層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし
    4のいずれかに記載の水素吸蔵合金。
  6. 【請求項6】 前記水素吸蔵合金は、メカニカルアロイ
    ング法により表面にNi含有表面層が形成されているこ
    とを特徴とする請求項5に記載の水素吸蔵合金。
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