JP2001076333A - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JP2001076333A
JP2001076333A JP25247699A JP25247699A JP2001076333A JP 2001076333 A JP2001076333 A JP 2001076333A JP 25247699 A JP25247699 A JP 25247699A JP 25247699 A JP25247699 A JP 25247699A JP 2001076333 A JP2001076333 A JP 2001076333A
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magnetic
metal powder
ferromagnetic metal
magnetic recording
recording medium
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Hiroaki Araki
宏明 荒木
Mikio Ono
幹夫 大野
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長期間の保存や高温高湿保存後にドライブで
走行させたときのテープによるヘッド汚れが少なく、ド
ロップアウトやエラーレートが良好な磁気記録媒体の提
供。 【解決手段】 非磁性支持体上に、Feを主体とする強磁
性金属粉末が結合剤とともに塗設されてなる磁性層の少
なくとも1層以上が直接的に又は間接的に形成された磁
気記録媒体。前記強磁性金属粉末は少なくともAl、Co及
びYを含み、Al/Fe=5〜15at.%、Co/Fe=1〜25at.%、Y/Fe=
0.5〜5at.%であり、Si及びNdを含まないか、含んでも各
々0.1at.%以下/Feである。前記磁性層が脂肪酸及び脂肪
酸エステルを含有する。上記脂肪酸エステルは、0.03(1
/hr)以下の酸加水分解速度を有する脂肪酸アルキルエス
テル化合物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気記録媒体、特に
高い信頼性及び保存性を要求される放送用及びコンピュ
ーター用の塗布型磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気記録媒体は、録音用テープ、ビデオ
テープ、コンピューターテープ、ディスク等として広く
用いられている。磁気記録媒体は年々高密度化され記録
波長が短くなっており、記録方式もアナログ方式からデ
ジタル方式まで検討されている。特に、鉄を主体とした
強磁性金属粉末を、結合剤と共に非磁性支持体上に塗布
した磁気記録媒体は、その優れたコストパフォーマンス
で、現在放送用ビデオ用及びデータ記録用の媒体の主流
になっている。これら放送用ビデオ用及びデータ記録用
の磁気記録媒体には高い電磁変換特性が要求されると同
時に、扱われる画像やデータが商品になる。そのため、
一般コンシューマー用途に比べ様々な環境条件での過酷
な使用に耐え、かつ長期間経時してもテープが変質せ
ず、記録データが問題なく再生できる保存特性が要求さ
れている。
【0003】従来、強磁性金属粉末及びこれを使用した
磁気記録媒体は、金属なるが故の対酸化安定性の向上の
必要があった。徐酸化の方法の工夫(特開昭57-89401、
特開昭52-54998等)及び添加元素の工夫(特開平9-63039
等)などにより、磁性体そのものの対酸化安定性は実用
上支障ないレベルになってきた。更に、磁気テープでは
走行特性の確保が重要である。特に長期間の保存や高温
高湿下で保存したテープを走行させると、多量のヘッド
付着物が発生しドロップアウトやエラーレートが悪化し
たり、甚だしい場合はヘッド目詰まりが発生し、ヘッド
クリーニングが必要になる場合が生じる。特にテープと
ヘッド間の相対速度が大きく単位時間当たりに大面積の
テープを使用する放送用ビデオ用及びデータ記録用磁気
記録システムに於いては、長期保存後に問題が発生しや
すい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、保存性に優
れた磁気記録媒体を提供することを目的とする。特にテ
ープとヘッド間の相対速度が大きく単位時間当たりに大
面積のテープを使用するシステム用のテープに於いて、
長期間の保存や高温高湿保存後にドライブで走行させた
ときのテープによるヘッド汚れが少なく、ドロップアウ
トやエラーレートが良好な磁気記録媒体を提供すること
を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、下記本
発明の磁気記録媒体により達成される。即ち本発明は、
非磁性支持体上に、Feを主体とする強磁性金属粉末が結
合剤とともに塗設されてなる磁性層の少なくとも1層以
上が直接的に又は間接的に形成された磁気記録媒体にお
いて、前記強磁性金属粉末が少なくともAl、Co及びYを
含み、Al/Fe=5〜15at.%、Co/Fe=1〜25at.%、Y/Fe=0.5〜
5at.%であり、Si及びNdを含まないか、含んでも各々0.1
at.%以下/Feであり、前記磁性層が脂肪酸及び脂肪酸エ
ステルを含有しており、上記脂肪酸エステルが、0.03(1
/hr)以下の酸加水分解速度を有する脂肪酸アルキルエス
テル化合物であることを特徴とする磁気記録媒体に関す
る。このように、本発明の磁気記録媒体では、特定の組
成を有する強磁性金属粉末と特定の物性を有する脂肪酸
エステルを使用することによって、一定期間保存した後
にドライブで走行させたときに生じるテープによるヘッ
ド汚れを少なくできるという利点がある。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の好ましい態様を以下に説
明する。本発明で用いる強磁性金属粉末は、Feを主体と
し、少なくともAl、Co及びYを含み、Al/Fe=5〜15at.%、
Co/Fe=1〜25at.%、Y/Fe=0.5〜5at.%である。さらに、本
発明で用いる強磁性金属粉末は、Si及びNdを含まない
か、含んでも各々0.1at.%以下/Feである。
【0007】上記組成を有する強磁性金属粉末は、結合
剤の吸着を良好に維持できるように表面特性が制御され
たものである。即ち、上記組成とすることにより、結合
剤を強磁性金属粉末に強固に吸着させることができ、磁
性塗膜の力学強度を強靱にできる。その結果、ヘッドが
高速で摺動したときの磁性層自身の脱落等を防止でき
る。また強磁性金属粉末に対する結合剤の吸着量も多く
でき、塗膜中で強磁性金属粉末に吸着していない結合剤
を減少させることができる。この磁性粉末に吸着してい
ない結合剤は乾燥過程で磁性層の表面に出やすいため、
これを少なくするとヘッドと摺動したとき生じるヘッド
目詰まり等の故障を少なくできる。
【0008】強磁性金属粉末に含まれる上記元素のなか
で、Alは強磁性金属粉末の比較的表面近傍に存在してい
ると考えられる。それゆえAlは強磁性金属粉末と結合剤
との吸着特性に影響を与えやすく、また強磁性金属粉末
の硬度をも制御している。Al/Feが多くなると強磁性金
属粉末と結合剤との結合力は大きくなるが、15原子%を
超えると強磁性金属粉末自身が硬くなりすぎヘッド磨耗
量が増えて好ましくない。また、Al/Feが5原子%未満で
は強磁性金属粉末と結合剤との結合力が小さくなり、ヘ
ッド目詰まりを起こしやすくなる。Al/Feは、好ましく
は7〜13at.%の範囲である。尚、強磁性金属粉末にAl
とともに或いはAlに代えてSiが含まれると、高温高湿保
存後の走行でのヘッド汚れが著しく悪化する。SiO2また
はSiO2とAl2O3の混合酸化物は固体酸触媒として知られ
ていることから、強磁性金属粉末にSiが含まれると、強
磁性金属粉末とともに磁気記録媒体に使用する有機素材
の加水分解を促進することに起因している推定される。
そこで、本発明で使用する強磁性金属粉末では、Siを含
まないか、含んでも0.1at.%以下/Feとする。好ましくは
Siを含まない強磁性金属粉末を用いる。
【0009】強磁性金属粉末に含まれる上記元素のなか
では、Alに次いではYが重要である。Yを含むIIIa族元素
(ランタノイドを含む)を含有する強磁性金属粉末を用い
た磁気記録媒体は既に知られている(例えば、特開平6-3
6265号公報、同6-215360号公報、同8-279143号公報、8-
306031号公報参照)。本発明者らは、これらIIIa族元素
を含有する強磁性金属粉末を用いる効果について検討し
た。その結果、Yを含有する強磁性金属粉末を用いる磁
気記録媒体が高温高湿保存後のヘッド汚れが少ないとい
う観点で最も好ましかった。但し、Y/Feが0.5at.%未満
では、所望の効果がなく、5at.%を超えると還元時の焼
結防止効果が強過ぎ、所望の磁気特性の強磁性金属粉末
を得にくいという問題があった。Y/Feは、好ましくは1
〜4at.%の範囲である。但し、強磁性金属粉末にYとと
もに或いはYに代えてNdが含まれると、高温高湿保存後
の走行でのヘッド汚れが著しく悪化することが判明し
た。これはYとNdの外殻電子の違いによる化学作用の違
いが原因しているものと推定しているが、詳細な原因は
不明である。そこで、本発明で使用する強磁性金属粉末
では、Ndを含まないか、含んでも0.1at.%以下/Feとす
る。好ましくはNdを含まない強磁性金属粉末を用いる。
【0010】本発明で用いる強磁性金属粉末は、Coを含
有しCo/Fe=1〜25at.%である。Coを含有することで表面
の酸化物の性質がコバルトフェライトに変化するものと
考えている。但し、Coが25at.%を越えると磁気特性が低
下し、その結果、電磁変換特性も低下するので好ましく
ない。また、Coが1at.%未満では、Coを含有させる効果
が十分に得られない。Co量は、好ましくは1〜5at.%の範
囲である。
【0011】本発明の磁気記録媒体に用いる強磁性金属
粉末は、平均長軸長が0.05〜0.25μmの範囲であるのこ
とが好ましく、0.1〜0.2μmの範囲であるのがより好ま
しい。平均長軸長が0.25μm以下であれば、磁性体同士
のからまりは比較的少なく、良好な分散が得られ、表面
粗さも小さく優れた電磁変換特性が得られる。また軸長
効果(レングスロス)により記録波長が約0.7μm以下の
領域で電磁変換特性が得にくくなる現象も起きにくい。
逆に平均長軸長が0.05μm未満では磁性粒子が微細に過
ぎて、耐久性が劣化する場合がある。
【0012】本発明に使用する強磁性金属粉末は比表面
積が40〜60m2/gの範囲であることが好ましい。比表面
積が60m2/g以下であれは金属粉末中の空孔も多くな
く、塗料化の際の粘度が大きくなり塗料化が困難となる
ことはない。比表面積が40m2/g以上であれば、粒子が
大きくなり過ぎず、0.25μm以下の平均長軸長を有する
粒子も容易に得られる。
【0013】強磁性金属粉末の形状には針状、紡錘状、
球状、サイコロ状、板状等があるが、針状もしくは紡錘
状が好ましく、紡錘状がより好ましい。ここで紡錘状と
は、粒子の長軸(長さr1)を含む平面での断面形状におい
て、長軸に直交する方向の長さが、長軸の中央部で最大
値(r2)を持ち、そこから端部へ向かって漸減して端部
で閉じる形状である。軸比(r1/r2)は5〜10の範囲である
ことが好ましい。
【0014】紡錘状の強磁性金属粉末がより好ましいの
は、粒度分布が良好で枝分かれが少なく均一な粉末であ
るためである。これにより分散性及び配向性が改善され
る。また、紡錘状粒子は空孔が少ないため、塗料化が容
易である。
【0015】鉄(Fe)を主体とする強磁性金属粉末の製造
方法は種々の方法が知られている。工業的に用いられて
いるのは、湿式反応にて生成した酸化鉄もしくは含水酸
化鉄を、還元性ガス中で加熱還元して製造する方法であ
る。本発明の鉄(Fe)を主体とする強磁性金属粉末は、工
業的に用いられている方法を用いて製造することができ
る。強磁性金属粉末は、表面に酸化被膜を形成するため
に徐酸化処理が施されたものであることが好ましい。徐
酸化処理には、例えば、有機溶剤に浸漬したのち乾燥さ
せる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り
込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有
機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して
表面に酸化皮膜を形成する方法がある。但し、気相反応
で行う方が均一な酸化被膜ができ、高温高湿保存下での
磁気特性の変化が少なく好ましい。
【0016】本発明に使用される強磁性金属粉末の結晶
子サイズは通常12〜22nm程度であり、好ましくは13〜18
nmであることが適当である。飽和磁化(σS)は、通常100
〜180emu/g程度であり、好ましくは120〜160emu/gであ
ることが適当である。pHは用いる結合剤との組み合わせ
により最適化するのが好ましい。その範囲は4〜12であ
るが、好ましくは7〜11であることが適当である。本発
明の強磁性金属粉末には0.1〜2.0重量%の水分が含有さ
れていることが好ましい。水または水蒸気を含んだ気体
と強磁性金属粉末を接触させることで、水分を含んだ強
磁性金属粉末が得られる。
【0017】本発明において使用する強磁性金属粉末は
不純物の含有量がなるべく少ないことが好ましい。特
に、水可溶性のNaの含有量は0〜10ppm/1gの範囲であ
り、水可溶性Caの含有量は0〜10ppm/1gであることが好
ましい。これらは保存中に磁気テープに使用している有
機素材と結合して金属石けん等を作りやすく、これがテ
ープ表面に析出して走行性に悪影響を与えるからであ
る。尚、強磁性金属粉末の水可溶性Na及びCaの含有量
は、強磁性金属粉末5gを蒸留水100mlを加えて室温で1
時間攪拌抽出し、上澄みを濾過した濾液を使用して、Na
は原子吸光法によって、CaはICPによって測定して得ら
れた値である。
【0018】本発明に使用される強磁性金属粉末にはあ
とで述べる分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤な
どで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。具
体的には、特公昭44-14090号、特公昭45-18372号、特公
昭47-22062号、特公昭47-22513号、特公昭46-28466号、
特公昭46-38755号、特公昭47-4286号、特公昭47-12422
号、特公昭47-17284号、特公昭47-18509号、特公昭47-1
8573号、特公昭39-10307号、特公昭48-39639号、米国特
許3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005
号、同3389014号などに記載されている。
【0019】本発明の磁気記録媒体で用いる脂肪酸エス
テルは、酸加水分解速度が0.03(1/hr)以下である脂肪酸
アルキルエステル化合物である。ここで、酸加水分解速
度は0.1N-HCl/水/アセトン中40℃での加水分解速度
で、擬1次反応速度 lnC0/C=ktを仮定したときの
kである(C;初期濃度、C0;時間t経過後濃度)。加
水分解速度が大きい脂肪酸エステルは、高温高湿保存に
より脂肪酸とアルコールに分解しやすく、加水分解した
脂肪酸は磁気テープの表面に析出する。また、脂肪酸エ
ステルは、加水分解の過程で、磁性体やその不純物イオ
ンと反応して脂肪酸金属塩を発生させ、これによって目
詰まり及びヘッド汚れを発生させる、と推測されてい
る。磁性層には脂肪酸も含まれるが、脂肪酸からは、こ
れら目詰まりやヘッド汚れの原因となる脂肪酸金属塩は
生じにくく、脂肪酸エステルの加水分解の過程で脂肪酸
金属塩になりやすい中間体が生じているものと考えられ
ている。保存後も実用上支障なく使用できるようにする
には、酸化水分解速度は0.03(1/hr)以下とすれば良いこ
とがわかった。尚、酸化水分解速度の下限は0(1/hr)で
ある。
【0020】上記脂肪酸エステルは、磁気記録媒体の表
面近傍に適度に存在していることが好ましい。そのため
には、構造式 R1COOR2(但し、R1は直鎖の飽和又は不飽
和の炭化水素基であり、R2は分岐の飽和又は不飽和の炭
化水素基である)で示される脂肪酸エステルであること
が好ましい。R1で示される直鎖の飽和又は不飽和の炭化
水素基としては、例えば、炭素数13〜21の炭化水素基で
あって、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル
基、ノナデシル基、オレオイル基、リノール酸やエレイ
ジン酸などの残基等を挙げることができる。また、R2
示される分岐の飽和又は不飽和の炭化水素基としては、
例えば、炭素数3〜21の炭化水素基であって、1-メチル
ブチル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘキシルデシル基、
3-メチルブチル基等を挙げることができる。
【0021】さらにR1COOR2で示される脂肪酸エステル
としては、例えば、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ス
テアリン酸2-ヘキシルデシル、ステアリン酸3-メチルブ
チル、ステアリン酸1-メチルブチル、ミリスチン酸2-エ
チルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリス
チン酸3-メチルブチル、ミリスチン酸1-メチルブチル等
を挙げることができる。さらに上記脂肪酸エステルは融
点が15℃以上であることが好ましい。脂肪酸エステルの
融点が15℃を越えると、低温で使用もしくは保存された
際に脂肪酸エステルが磁気記録媒体の表面に析出し、走
行不良を起こす。尚、ここで融点はDSC(示差走査熱量
計;Diffrential Scanning Calorimeter)を用いて一定
速度で温度を下げていったとき、熱量バランスから測定
したものである。融点が15℃以上である脂肪酸エステル
としては、例えば、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ス
テアリン酸2-ヘキシルデシル、ステアリン酸3-メチルブ
チル、ステアリン酸1-メチルブチル、ミリスチン酸2-エ
チルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリス
チン酸3-メチルブチル、ミリスチン酸1-メチルブチル等
を挙げることができる。
【0022】本発明では磁性層中に上記の脂肪酸アルキ
ルエステルの他に、脂肪酸を含有する。脂肪酸としては
炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含ん
でも、また分岐していてもかまわない)が好ましい。具
体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ス
テアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノ−ル酸、リノ
レン酸、エライジン酸、などがある。
【0023】本発明に使用される結合剤としては従来公
知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれら
の混合物が使用される。熱可塑性樹脂としては、ガラス
転移温度が−20〜90℃、数平均分子量が1,000〜200,00
0、好ましくは10,000〜100,000、重合度が約50〜1,000
程度のものである。このような結合剤の例としては、塩
化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン
酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデ
ン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エ
ステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチ
ラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を構成単
位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹
脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂または
反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポ
リウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アル
キド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹
脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリ
エステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、
ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合
物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があ
げられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プ
ラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。ま
た、公知の電子線硬化型樹脂を使用することも可能であ
る。
【0024】これらの結合剤の例とその製造方法につい
ては特開昭62-256,219号に詳細に記載されている。以上
の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいも
のとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル樹脂、
塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール樹脂、塩化ビニ
ル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体の中から選ばれる
少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこ
れらにポリイソシアネートを組み合わせたものがあげら
れる。ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレ
タン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエ
ステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、
ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプ
ロラクトンポリウレタンポリオレフィンポリウレタンな
ど公知のものが使用できる。
【0025】ここに示したすべての結合剤について、よ
り優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、−
COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM')2、−O-P=O(O
M')2、(以上につきMは水素原子、またはアルカリ金属
原子を示す。M'は、水素原子、アルカリ金属原子または
低級炭化水素基を示す。)、−OH、−NR2、−N+R3 (Rは
炭素数1〜12の炭化水素基を示す。)、エポキシ基、−S
H、−CN、スルフォベタイン、カルボキシベタイン、ホ
スホベタイン等、好ましくは−COOM、−SO3M、−OSO
3M、−P=O(OM')2から選ばれる少なくとも1種を共重合
または付加反応で好ましくはポリウレタン樹脂及び塩化
ビニル系樹脂の少なくとも一方に導入したものを用いる
ことが好ましい。このような極性基の量は10-8〜10-1
ル/gであり、好ましくは10-6〜10-2モル/g、更に好まし
くは、3×10-5〜20×10-5モル/gである。
【0026】本発明に用いられるこれらの結合剤の具体
的な例としてはユニオンカーバイト社製 VAGH、V
YHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、V
YES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、P
KHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業
社製、MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TA
L、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、
MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製1000
W、DX80、DX81、DX82、DX83、100
FD、日本ゼオン社製のMR−104、MR−105、
MR110、MR100、400X−110A、日本ポ
リウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N
2304、大日本インキ社製パンデックスT−510
5、T−R3080、T−5201、バーノックD−4
00、D−210−80、クリスボン6109、720
9、東洋紡社製バイロンUR8200、UR8300、
UR8600、UR5500、UR4300、RV53
0、RV280、大日精化社製、ダイフェラミン402
0、5020、5100、5300、9020、902
2、7020、三菱化成社製、MX5004、三洋化成
社製サンプレンSP−150、TIM−3003、TI
M−3005、旭化成社製サランF310、F210な
どがあげられる。この中でMR104、MR110が好
ましい。
【0027】本発明に用いるポリイソシアネートとして
は、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニル
メタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネ
ート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,
5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネー
ト、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタン
トリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これ
らのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、ま
た、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソ
シアネート等を使用することができる。これらのイソシ
アネート類の市販されている商品名としては、日本ポリ
ウレタン社製、コロネートL、コロネートHL、コロネ
ート2030、コロネート2031、ミリオネートM
R、ミリオネートMTL、武田薬品社製、タケネートD
−102、タケネートD−110N、タケネートD−2
00、タケネートD−202、住友バイエル社製、デス
モジュールL、デスモジュールIL、デスモジュール
N、デスモジュールHL、等がありこれらを単独または
二つもしくはそれ以上の組合せで用いることができる。
【0028】本発明の磁性層に用いられる結合剤は強磁
性金属粉末に対し、10〜30重量%の範囲、好ましくは15
〜25重量%の範囲で用いられる。特に塩ビ系樹脂、ポリ
ウレタン、ポリイソシアネートの3種を併用するのが好
ましい。これら3種を併用する場合、塩ビ系樹脂は5〜20
重量%、好ましくは7〜15重量%、ポリウレタン樹脂は2〜
15重量%、好ましくは4〜10重量%、ポリイソシアネ−ト
は2〜20重量%、好ましくは3〜10重量%の範囲でこれらを
組み合わせ、3種の総量が10〜30重量%、好ましくは15〜
25重量%とする。これにより、塩ビ系樹脂に強磁性金属
粉末を充分に分散させ、ポリウレタンにより磁性層にし
なやかさを付与させ、ポリイソシアネートにより磁性層
を架橋させて強靱な磁性層にできる。本発明において、
ポリウレタンとして最も好ましいのは、ポリエーテルポ
リオールとポリエステルポリオールからなるジオール成
分とポリイソシアネート成分を主成分とするポリウレタ
ンである。
【0029】本発明の磁性層には、研磨作用のある非磁
性無機粉末を1種類以上添加するのが好ましい。その無
機粉末はモース硬度5以上で、平均粒径0.05〜0.4μmの
ものが好ましく、平均粒径0.1〜0.3μmのものがより好
ましい。2種以上の無機粉末を組み合わせて使用するこ
ともできる。無機粉末を少量の結合剤とともに予め分散
しておき、磁性体他を分散した液と混合後し塗布液とす
るか、もしくは混合後更に分散して塗布液とすることも
できる。
【0030】非磁性無機粉末のタップ密度は0.05〜2g/m
l、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。無機粉末の含水率
は0.05〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%である。無機
粉末の比表面積は1〜100m2/g、好ましくは5〜50m2/g
である。DBPを用いた吸油量は5〜100ml/100g、好ましく
は10〜80ml/100gである。比重は1〜12、好ましくは3〜6
である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれで
も良い。
【0031】これらの無機粉末の種類としてはAl2O3、C
r2O3、Fe2O3、ZrO2、TiO2などが挙げられる。またその
表面にAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb2O3、ZnOで
表面処理することもできる。特にAl2O3、SiO2、TiO2、Z
rO2を用いると分散性が良好である。これらは組み合わ
せて使用しても良いし、単独で用いることもできる。ま
た、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良い
し、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処
理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。
また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わ
ないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0032】本発明の磁性層に用いられる研磨剤の粉末
の具体的な例としては、昭和電工製ナノタイト、住友化
学製Hit100、Hit82、Hit80、Hit70、Hit60A、Hit50、AK
P20、AKP30、AKP50、ZA-G1、レイノルズ製ERC-DBM、HP-D
BM、HPF-DBM、HPFX-DBM、HPS-DBM、HPSX-DBM、不二見研
摩材製WA8000、WA10000、上村工業製UB20、UB40B、メカノック
スU4、昭和軽金属製UA2055、UA5155、UA5305、日本化学工
業製G-5、クロメックスM、クロメックスS1、クロメックスU2、クロメックスU1、クロ
メックスX10、クロメックスKX10、日本電工製ND803、ND802、ND801、
東ソー製F-1、F-2、UF-500、戸田工業社製DPN-250、DPN-25
0BX、DPN-245、DPN-270BXTF-100、TF-120、TF-140、DPN-
550BX、TF-180、昭和鉱業製A-3、B-3、セントラルカ゛ラス製ヘ゛ータSi
C、UF、イヒ゛テ゛ン製ヘ゛ータランタ゛ムスタンタ゛ート゛、ヘ゛ータランタ゛ムウルトラファイン、
帝国化工製JR401、MT500B、石原産業製TY-50、TTO-51B、T
TO-55A、TTO-55B、TTO-55C、TTO-55S、TTO-55D、SN-100、E2
70、E271、チタン工業製STT-4D、STT-30D、STT-30、STT-65C、テイ
カ製MT-100S、MT-100T、MT-150W、MT-500B、MT-600B、MT-100
F、MT-500HD、堺化学製FINEX-25、BF-1、BF-10、BF-20、S
T-M、 北開化学製HZn、HZr3M、同和鉱業製DEFIC-Y、DEFIC
-R、日本アエロシ゛ル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500
A、チタン工業製Y-LOP及びそれを焼成したものが挙げられ
る。
【0033】本発明の磁性層には、カーボンブラックを
添加することができる。本発明に使用されるカ−ボンブ
ラックはゴム用ファ−ネス、ゴム用サ−マル、カラ−用
ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができ
る。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/10
0g、粒子径は5〜300mμ、pHは2〜10、含水率は0.1〜10
%、タップ密度は0.1〜1.0g/ccが好ましい。本発明に用
いられるカ−ボンブラックの具体的な例としてはキャボ
ット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、7
00、VULCAN XC-72、旭カ−ボン社製#80、#60、#55、#5
0、#35、三菱化成工業社製#2400B、#2300、#5、#900、#95
0、#970、#1000、#30、#40、#10B、コロンビアカ−ボン社
製CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50、40、15などがあげら
れる。カ−ボンブラックを分散剤などで表面処理した
り、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグ
ラファイト化したものを使用してもかまわない。また、
カ−ボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ
結合剤で分散してもかまわない。これらのカ−ボンブラ
ックは単独、または組合せで使用することができる。カ
−ボンブラックを使用する場合は強磁性金属粉末に対す
る量の0.1〜30%でもちいることが好ましい。カ−ボンブ
ラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付
与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカ−
ボンブラックにより異なる。従って本発明に使用される
これらのカ−ボンブラックは所望によりその種類、量、
組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなど
の先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けるこ
とはもちろん可能である。本発明の磁性層で使用できる
カ−ボンブラックは例えば「カ−ボンブラック便覧」カ
−ボンブラック協会編を参考にすることができる。
【0034】更に必要に応じて、潤滑効果、帯電防止効
果、分散効果、可塑効果、などをもつ添加剤を使用して
も良い。例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステ
ングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコ−ン
オイル、極性基をもつシリコ−ン、脂肪酸変性シリコ−
ン、フッ素含有シリコ−ン、フッ素含有アルコ−ル、ポ
リオレフィン、ポリグリコ−ル、アルキル燐酸エステル
およびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよ
びそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエ−テル、フッ素
含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、
アルコ−ル類、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数
8〜22の脂肪族アミン、などが使用できる。
【0035】本発明で用いられる添加剤のすべてまたは
その一部は、磁性塗料製造のどの工程で添加してもかま
わない、例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場
合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加す
る場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場
合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的に
応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添
加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成
される場合がある。また、目的によってはカレンダーし
た後、またはスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗
布することもできる。
【0036】添加剤として分子量300以下の有機リン化
合物を用いると、本発明の強磁性金属粉末と結合剤との
結合力及び結合量を更に高めて、分散が良好になりヘッ
ド磨耗量が低減し、また強磁性金属粉末に吸着していな
い結合剤がより少なくなるので磁気記録媒体の耐久性を
飛躍的に高めることができる。これら有機化合物とし
て、例えば、特開平1-189025号記載の化合物、例えばフ
ェニルリン酸C6H5OPO(OH)2、リン酸n-ブチルn-C4H9OPO
(OH)2、亜リン酸ジブチル(C 4H9O)2P(OH)、フェニルホス
ホン酸C6H5PO(OH)2、等を挙げることができる。
【0037】本発明の磁気記録媒体の厚み構成は通常、
非磁性支持体が1〜100μm、好ましくは4〜12μ
m、磁性層が通常、0.1〜5μm、好ましくは1〜4
μm、バック層が通常、0.1〜2μm、好ましくは
0.4〜1μmであり、非磁性支持体と磁性層の間に密
着性向上のための接着層が0.01〜2μm、好ましく
は0.02〜0.5μmである。これらの接着層、バッ
クコ−ト層は公知のものが使用できる。
【0038】本発明に用いられる非磁性支持体は、ポリ
エチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、
ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポ
リアミド、ポリベンズオキシダゾールなどの公知のフィ
ルムが使用できる。特に、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリエチレンナフタレートもしくはアラミド樹脂を
用いた非磁性支持体が好ましい。これらの非磁性支持体
にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着
処理、熱処理、除塵処理、などをおこなっても良い。本
発明の目的を達成するには、非磁性支持体の表面粗さは
2〜30nm、好ましくは5〜25nm、さらに好ましくは10〜20
nmである。また、これらの非磁性支持体は単に中心線平
均表面粗さが小さいだけではなく、高さ1μm以上の粗
大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必
要に応じて非磁性支持体に添加されるフィラ−の大きさ
と量により自由にコントロ−ルされるものである。これ
らのフィラ−としては一例としてはAl、Ca、Si、
Tiなどの酸化物や炭酸塩で結晶性、非晶質を問わない
他、アクリル系、メラミン系などの有機微粉末があげら
れる。また、走行耐久性との両立を図るためには、バッ
ク層を塗布する面の粗さは磁性層を塗布する面の粗さよ
り粗い事が好ましい。
【0039】非磁性支持体の磁性層塗布面とバック層塗
布面とは、表面粗さが同一であっても違っていてもかま
わない。粗さを変える場合には、デュアル構成の支持体
を用いても良いし、コーテイング層を設ける事によって
変えても構わない。本発明に用いられる非磁性支持体の
F-5値は、テ−プ走行方向及び幅方向ともに好ましくは7
0〜300MPaであり、テ−プの長手方向のF-5値がテ−プ幅
方向のF-5値より高いのが一般的であるが、特に幅方向
の強度を高くする必要があるときはその限りでない。ま
た、非磁性支持体のテ−プ走行方向および幅方向の100
℃、30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに好ま
しくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%
以下、さらに好ましくは0.5%以下である。破断強度は両
方向とも50〜1,000MPa、弾性率は1,000〜20,000 MPa好
ましい。また、本発明での900nmでの光透過率は30%以下
が好ましく、更に好ましくは3%以下である。
【0040】本発明の目的を達成するためには、従来公
知の製造技術、すなわち磁性塗料を製造し、これを非磁
性支持体上に塗布し、配向させ、さらに乾燥し、表面平
滑化処理を行って、所定の幅に裁断することによって得
られる。磁性塗料の調製には、強磁性粉末、結合剤、カ
−ボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、その他
を、通常は溶剤とともに混練分散して磁性塗料とする。
混練。分散の際に用いられる溶剤としては、通常磁性塗
料の調製に使用されているメチルエチルケトン、トルエ
ン、酢酸ブチル、シクロヘキサノンなどの溶剤を用いる
ことができる。混練分散の方法は、通常磁性塗料の調製
に利用されている方法であれば特に制限はなく、各成分
の添加順序も適宜設定できる。さらに成分の一部をあら
かじめ予備分散しておいてから添加したり、別に分散し
ておき最後に混合することもできる。
【0041】磁性塗料の調製には通常の混練機、例え
ば、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、サ
ンドグラインダー、アトライター、高速インペラー分散
機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー、
ニーダー、高速ミキサー、ホモジナイザー、及び超音波
分散機などが使用される。混練分散に関する技術の詳細
は、T.C.Patton "Paint Flow and Pigment Dispersion"
(John Wiley & Sons ,1964)や田中信一著「工業材料」2
5巻37(1977年)などに記載されている。また米国特許第2
581414号明細書及び同第2855515号明細書にも記載があ
る。本発明においても上記の引用文献に記載された方法
に準じて混練分散を行い、磁性塗料を調製することがで
きる。
【0042】このように調製された磁性塗料は、前述の
非磁性支持体上に塗布される。その際磁性層の乾燥後の
層厚が好ましくは0.05〜10μmの範囲内、より好ましく
は0.2〜5.0μmになるように塗布する。ここで多層構成
の場合は複数の磁性塗料を逐次あるいは同時に重層塗布
してもよい。また、磁性層と非磁性支持体の間に非磁性
粉末と結合剤を主体とする非磁性層が形成されていても
良い。上記磁性塗料を塗布する塗布機としては、エアー
ドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出
しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コ
ート、リバースロールコート、トランスファーロールコ
ート、グラビヤコード、キスコート、キャストコート、
スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これら
については例えば株式会社「総合技術センタ−」発行の
「最新コ−テイング技術」(昭和58年5月31日)を
参考にできる。
【0043】塗布された磁性塗料の塗布層は、磁性塗料
の塗布層中に含まれる強磁性粉末を磁場配向処理を施し
た後に乾燥される。磁場配向処理は、100mT以上のソレ
ノイドと200mT以上のコバルト磁石を同極対向で併用す
ることが好ましく、さらには乾燥後の配向性が最も高く
なるように配向前に予め適度の乾燥工程を設けることが
好ましい。非磁性支持体の磁性塗料が塗布されていない
面にバック層(バッキング層)が設けられていてもよ
い。通常バック層は、非磁性支持体の磁性塗料が塗布さ
れていない面に、研磨剤、帯電防止剤などの粒状成分と
結合剤とを有機溶剤に分散したバック層形成塗料を塗布
して設けられた層である。なお、非磁性支持体の磁性塗
料およびバック層形成塗料の塗布面に接着剤層が設けら
れいてもよい。なおバック層の塗設は磁性層の塗布乾燥
後に行われることが好ましいが、磁性層の塗布前でも、
次に述べる表面平滑化処理の後でもかまわない。
【0044】塗布層の形成及び乾燥後、表面平滑化処理
を施す。表面平滑化処理には、たとえばスーパーカレン
ダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うこ
とにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消
滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電
磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カ
レンダー処理ロールとして各種金属ロール、エポキシ、
ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性
のあるプラスチックロールを使用する。カレンダー処理
条件としては、カレンダーロールを温度を60〜150℃の
範囲、好ましくは70〜130℃の範囲、特に好ましくは80
〜110℃の範囲である。圧力は1000〜5000N/cmの範囲、
好ましくは2000〜4500N/cmの範囲、特に好ましくは2500
〜4000N/cmの範囲の条件で作動させることによって行わ
れる。カレンダー処理の後、サーモ処理することもでき
る。サーモ処理は40〜80℃で6〜120時間行うことができ
る。この後、スリッターなどの裁断機で所望の幅に裁断
する。さらに裁断後または裁断前、磁性層表面をサファ
イア刃等でブレード処理することもできる。
【0045】本発明の磁気記録媒体の磁気特性は磁場80
0kA/mでVSM(振動試料型磁力計)で測定した場合、テ−プ
走行方向の角形比は0.70以上であり、好ましくは0.75以
上であり、さらに好ましくは0.80以上である。テ−プ走
行方向に直角な二つの方向の角型比は走行方向の角型比
の80%以下となることが好ましい。磁性層のSFDは
0.7以下であることが好ましく、更に好ましくは0.6以下
である。媒体の抗磁力Hcはヘッド材質やイコライジング
特性等のシステムに応じて適切に設定されるべき値であ
るが、通常110kA/m以上、好ましくは125kA/m以上であ
る。飽和磁束密度Bmは大きいほど再生出力を大きくでき
るが、通常230mT以上、好ましくは270mT以上である。
【0046】磁性層の表面粗さRaは1nm〜10nmが好まし
いが、その値は目的により適宜設定されるべきである。
電磁変換特性を良好にする為にはRaは小さいほど好まし
いが、走行耐久性を良好にするためには逆に大きいほど
好ましい。AFMによる評価で求めたRMS表面粗さRRMSは2n
m〜15nmの範囲にあることが好ましい。
【0047】本発明の磁気記録媒体の磁性層面およびそ
の反対面のSUS420Jに対する摩擦係数は好ましくは0.1〜
0.5、さらに好ましくは0.2〜0.3である。表面固有抵抗
は好ましくは104〜1012オ−ム/sq、磁性層の0.5%伸びで
の弾性率は走行方向、幅方向とも好ましくは1,000〜20,
000MPa、磁気記録媒体の弾性率は走行方向、幅方向とも
好ましくは1,000〜15,000MPa、残留伸びは好ましくは0.
5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ま
しくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、もっとも好
ましくは0.1%以下で、0%が理想である。磁性層のガラス
転移温度(110HZで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率
の極大点)は50℃以上120℃以下が好ましい。
【0048】磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは
100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。
磁性層が有する空隙率は、好ましくは40容量%以下、さ
らに好ましくは30容量%以下である。空隙率は高出力を
果たすためには小さい方が好ましいが、目的によっては
ある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返
し用途が重視されるデータ記録用磁気記録媒体では空隙
率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
【0049】本発明の磁気記録媒体は磁性層を少なくと
も一層有するが、目的に応じてこれを複層構造のものと
してもよい。また、磁性層と非磁性支持体の間に少なく
とも非磁性粉末と結合剤からなる非磁性層を設けてもよ
い。そして、各層で各種の物理特性を変えることができ
るのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の
弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性
層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッド
への当りを良くするなどである。
【0050】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を説明するが本
発明はこれに限定されるものではない。なお例中の
「部」の表示は「重量部」を示す。 〔磁気テープの作成〕磁性層組成 強磁性金属粉末A-1(表1.参照)100部をオープンニーダーで10分間粉砕し、 次いで カーボンブラック(平均粒径80nm) 2部 塩化ビニル樹脂(日本ゼオン(株)製MR-110) 10部 ポリウレタン(東洋紡(株)製UR-8300) 6部(固形分) メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1 60部 を加えて60分間混練した。 この混練物にオープンニーダーを運転しながら、 メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1 200部 を6時間かけて添加した。 次いで、 α-Al2O3(平均粒径0.18μm) 15部 を加えてサンドグラインダーで120分間分散した。 さらに ポリイソシアネート 4部(固形分) (日本ポリウレタン製コロネート3041) ステアリン酸 1部 脂肪酸エステルB-1(表2.参照) 2部 ステアリン酸アミド 0.2部 トルエン 50部 を加えて20分間攪拌混合した。 その後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて
濾過し、磁性塗料を調製した。
【0051】得られた磁性塗料を乾燥後の厚さが2.5μ
mになるように、厚さ10.5μmのPET支持体の表面にエ
クストルージョン型塗布ヘッドを用いて塗布し、磁性塗
料が未乾燥の状態で300mTの磁石で磁場配向を行なった
後乾燥させ、更に下記のバック液を乾燥後の厚さが0.5
μmになるように塗布乾燥した。(バック液組成) カーボンブラック(粒径18nm) 100部 ニトロセルロース(旭化成社製HIG1/2) 60部 ポリウレタン(日本ポリウレタン社製N-2301) 60部 ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネートL) 20部 メチルエチルケトン 1000部 トルエン 1000部
【0052】その後、金属ロールと耐熱性プラスチック
ロールの組み合せによる5段のカレンダー処理を(速度20
0m/分、線圧3000N/cm、温度85℃)で行なった。得られた
ロールを65℃で24時間サーモ処理を行った。その後、速
度200m/分で1/2インチ幅にスリットした。さらに、スリ
ット済みの磁気テープを、研磨テープ(富士写真フィル
ム(株)製MS-20000)を用いて、送り出しテンション=40
g/1/2インチ幅でブレード処理を行って、実施例1の磁
気テープを得た。
【0053】同様に、強磁性金属粉末A-1〜A-6(表1.参
照)、脂肪酸エステルB-1〜B-5(表2.参照)を用いて実施
例2〜実施例5、比較例1〜比較例5の磁気テープを得
た。(表3.参照) 尚、表2に示した酸加水分解速度は40℃の0.1N-HClの
アセトン+水(20:1)溶液に試料の脂肪酸エステルを10mmo
l/l添加し、一定時間間隔にてサンプリングし、内部標
準法を用いてガスクロマトグラフィーにより試料溶液の
濃度を測定した。初期濃度をC0とし、時間t経過後の
試料濃度をCとすると、ln(C/C0)とtは直線関係を示
し、ln(C/C0)=tの定数kを酸加水分解速度とした。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】得られた磁気テープを、D-3システム用Mカ
セットハーフに94分長の長さを組み込み、下記の試験を
実施した。 走行性;試験テープに25℃50%環境下で松下電器産業
(株)製VTR AJ-D350にカラーバー信号を記録/再生し
た後、60℃90%RH環境に4週間保存した。保存後のテープ
を、上記VTRで再生させた。 走行性;試験テープを、-20℃環境下で松下電器産業
(株)製カムコーダ AJ-D300で記録操作を行った。そ
の後、試験テープを25℃50%環境下で松下電器産業
(株)製VTRAJ-D350で再生させた。これらの試験結果を
下表に示した。下表より本発明の磁気記録媒体は、評価
した諸特性が何れも優れているが、比較例では該諸特性
の何れかが劣るものであり、本発明実施例が比較例に比
べ優れていることが分かる。
【0058】
【表4】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J038 CA001 CA021 CB021 CC021 CD021 CD081 CE021 CE051 CE061 CF021 CG061 CG141 CG161 DA011 DA031 DA141 DA161 DB001 DG001 DL031 HA066 JA56 KA20 NA22 PB11 PC08 5D006 BA01 BA09 5E049 AA01 AA09 BA06

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体上に、Feを主体とする強磁
    性金属粉末が結合剤とともに塗設されてなる磁性層の少
    なくとも1層以上が直接的に又は間接的に形成された磁
    気記録媒体において、 前記強磁性金属粉末が少なくともAl、Co及びYを含み、A
    l/Fe=5〜15at.%、Co/Fe=1〜25at.%、Y/Fe=0.5〜5at.%で
    あり、Si及びNdを含まないか、含んでも各々0.1at.%以
    下/Feであり、 前記磁性層が脂肪酸及び脂肪酸エステルを含有してお
    り、 上記脂肪酸エステルが、0.03(1/hr)以下の酸加水分解速
    度を有する脂肪酸アルキルエステル化合物であることを
    特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記強磁性金属粉末は、水可溶性Na含有
    量が0〜10ppm/1gであり、水可溶性Ca含有量が0〜10ppm/
    1gである請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記脂肪酸アルキルエステルはR1COOR2
    (式中、R1は直鎖の飽和または不飽和の炭化水素基であ
    り、R2は分岐の飽和または不飽和の炭化水素基である)
    で表され、かつ、15℃以下の融点を有する請求項1また
    は2に記載の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 前記強磁性金属粉末は、Co含有量がCo/Fe
    =1〜5at.%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁
    気記録媒体。
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