JP2001073133A - 真空薄膜形成装置および真空薄膜形成方法 - Google Patents

真空薄膜形成装置および真空薄膜形成方法

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JP2001073133A JP24839699A JP24839699A JP2001073133A JP 2001073133 A JP2001073133 A JP 2001073133A JP 24839699 A JP24839699 A JP 24839699A JP 24839699 A JP24839699 A JP 24839699A JP 2001073133 A JP2001073133 A JP 2001073133A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長尺有機基材に高速かつ安価に薄膜を形成で
きる真空薄膜形成装置および真空薄膜形成方法を提供す
る。 【解決手段】 繰り出しロール15、案内ロール16〜
21および巻き取りロール22が収納されている収納室
11にマグネトロンスパッタ電極25を設ける。コンダ
クタンスバルブ13およびガス導入系24によりマグネ
トロンスパッタ電極25の周囲に所定の窒素ガス雰囲気
を形成する。成膜室12で、コンダクタンスバルブ14
およびガス導入系29により所定のアルゴンガス雰囲気
を形成する。収納室11でマグネトロンスパッタ電極2
5により長尺有機基材9のプラズマ処理を行う。プラズ
マ処理された長尺有機基材9に成膜室12で薄膜の形成
を行う。マグネトロンスパッタ電極31〜33の薄膜形
成速度に見合う速度でマグネトロンスパッタ電極25に
よるプラズマ処理を行って薄膜を高速に形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、真空中で長尺基材
に薄膜を形成する真空薄膜形成装置および真空薄膜形成
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】真空中で長尺有機基材に薄膜を形成する
真空薄膜形成方法としては、長尺有機基材を連続的に成
膜室に繰り出し、真空蒸着により薄膜を形成し、その後
長尺有機基材を再び巻き取るという方法が一般的であ
る。ここで用いられる長尺有機基材には、金属箔に有機
重合体を形成したフィルムや高分子フィルム等がある。
【0003】図2は、このような真空薄膜形成方法で用
いられる従来の真空薄膜形成装置の一構成例を示す概略
図である。
【0004】図2に示す従来の真空薄膜形成装置50に
おいて、真空チャンバ51内に冷却ロール69が設けら
れている。真空チャンバ51の内部は、冷却ロール69
を中心に隔壁56により収納室57および成膜室58に
分割されている。隔壁56は真空チャンバ51の内部の
隔壁から冷却ロール69の近傍まで延びている。隔壁5
6と冷却ロール69との間には間隙が設けられており、
後述する長尺有機基材55は、隔壁56と冷却ロール6
9との間に設けられた間隙を通過する。収納室57と成
膜室58とは、この隙間を除いて隔壁56および冷却ロ
ール69で互いに遮蔽されている。
【0005】収納室57内には、繰り出しロール59、
繰り出し側の案内ロール60,61,62、巻き取り側
の案内ロール63,64および巻き取りロール65が設
けられている。
【0006】繰り出しロール59には長尺有機基材55
が巻き付けられたロールが装填されている。この長尺有
機基材55は、繰り出し側の案内ロール60〜62によ
り冷却ロール69の外周面に案内され、さらに巻き取り
側の案内ロール63,64により案内され、巻き取りロ
ール65に巻き取られる。
【0007】案内ロール60,61の間には、長尺有機
基材55に対向するように、プラズマ用電極66が配置
されている。プラズマ用電極66にはマッチング回路6
7を介して高周波電源68が接続されている。
【0008】成膜室58内には、冷却ロール69に対向
するように3つのマグネトロンスパッタ電極70,7
1,72が配置されている。マグネトロンスパッタ電極
70,71,72には、それぞれ直流電源73,74,
75が接続されている。これらのマグネトロンスパッタ
電極70〜72には、それぞれ所定の材料からなるター
ゲットが配置される。
【0009】真空チャンバ51の内部は排気ポンプ(図
示せず)により真空状態に保たれる。
【0010】真空チャンバ51内で長尺有機基材55を
繰り出しロール59、巻き取りロール65および冷却ロ
ール69によって一定速度で走行させる。繰り出しロー
ル59から繰り出された長尺有機基材55は、案内ロー
ル60〜62によって案内されて成膜室58へ供給され
る。一方、マッチング回路67を介して高周波電源68
からプラズマ用電極66に高周波電圧が印加される。そ
れにより、グロー放電が発生し、案内ロール60と案内
ロール61との間に張り渡された長尺有機基材55に対
して、プラズマ処理が行われる。
【0011】プラズマ処理が行われた長尺有機基材55
は、案内ロール62に案内されて冷却ロール69に到達
する。冷却ロール69に達した長尺有機基材55は、ま
ず、マグネトロンスパッタ電極70に対向する。直流電
源73から供給される直流電力に応じてマグネトロンス
パッタ電極70に配置されたターゲットがイオンにより
スパッタされてターゲットの材料が長尺有機基材55に
蒸着される。長尺有機基材55は冷却ロール69の回転
につれてマグネトロンスパッタ電極71およびマグネト
ロンスパッタ電極72に対向する位置に順次移動する。
直流電源74,75からマグネトロンスパッタ電極7
1,72に供給される直流電力に応じて各マグネトロン
スパッタ電極71,72の上に配置されたターゲットが
イオンによりスパッタされてターゲットの材料が長尺有
機基材55に蒸着される。
【0012】このようにして、成膜室58でマグネトロ
ンスパッタ電極71,72,73により薄膜が形成され
た長尺有機基材55は、冷却ロール69から案内ロール
63,64に案内されて巻き取りロール65に巻き取ら
れる。
【0013】この真空薄膜形成装置においては、プラズ
マ用電極66で発生されたグロー放電雰囲気中を長尺有
機基材55が通過することにより長尺有機基材55の表
面がプラズマ処理されるので、成膜室58で蒸着される
薄膜と長尺有機基材55との密着性が改善される。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】従来の真空薄膜形成装
置では、長尺有機基材55が比較的密着性の改善しやす
い有機材料で構成されている場合には、収納室57内の
プラズマ処理系53のプラズマ用電極66によるプラズ
マ処理と成膜室58内のマグネトロンスパッタ電極70
〜72による薄膜の形成とを同時に行うことができる。
【0015】しかし、例えば金属薄膜をポリイミド重合
体の表面に形成する場合のように、強固な密着が得られ
にくい有機材料で長尺有機基材55が構成されていると
きには、マグネトロンスパッタ電極70〜72による薄
膜の形成速度に比べてプラズマ用電極66によるプラズ
マ処理時間を長くする必要がある。そのため、マグネト
ロンスパッタ電極70〜72による薄膜形成時間とプラ
ズマ用電極66によるプラズマ処理時間との整合をとり
にくくなる。したがって、プラズマ処理と金属薄膜の形
成とが別々に行われている。
【0016】そこで、例えばプラズマ用電極66により
プラズマを広範囲に発生させ長尺有機基材55がプラズ
マ中を走行する距離を長くすることにより、収納室57
内での長尺有機基材55の移動速度を遅くすることなく
長尺有機基材55のプラズマ処理時間を長くすることが
考えられる。しかし、その場合、真空薄膜形成装置50
が大型化し高価なものになる。
【0017】逆に、蒸着速度を低くすることによりマグ
ネトロンスパッタ電極70〜72による金属薄膜形成時
間を長くすることも考えられる。しかし、この場合、生
産性が低下して生産コストが増加する。
【0018】また、一般的な薄膜形成装置で長尺有機基
材の一度の巻き取りにおいて多層膜を形成する場合に
は、複数の薄膜を形成するために、成膜室に、真空蒸着
においては複数の蒸発源を用意する必要があり、スパッ
タ蒸着においては複数のターゲットを用意する必要があ
る。真空蒸着では、抵抗加熱または電子ビーム加熱等を
行う複数の蒸発源を用いると装置が大型化して非常に高
価なものになる。一方、スパッタ蒸着の場合は、例えば
図2に示したようにスパッタ電極70,72およびター
ゲットを斜めに設置できるので、真空蒸着ほど装置を大
型化しなくても多層膜の形成が可能になる。
【0019】しかしながら、従来の真空薄膜形成装置5
0において、例えば金属酸化物層および金属層を含む多
層膜を形成する場合に、長尺有機基材55の一回の巻き
取りにおいて両者をスパッタ蒸着すると以下のような不
具合が発生する。例えばアルゴンガスの中で金属ターゲ
ットおよび金属酸化物ターゲットを用いて同時に成膜を
行う場合に、金属酸化物ターゲットについては高周波ス
パッタを行う必要がある。この場合の金属酸化物の蒸着
速度は非常に遅いので生産性が悪くなる。
【0020】一方、金属ターゲットを用いて反応性スパ
ッタで金属酸化物層を蒸着すると、金属酸化物の蒸着速
度を向上することはできる。しかし、金属の蒸着はアル
ゴン雰囲気で行い、金属酸化物の蒸着時には雰囲気ガス
に酸素ガスを添加する必要があるので、金属および金属
酸化物を同時に成膜することはできなくなる。
【0021】本発明の目的は、長尺基材に高速かつ安価
に薄膜を形成できる真空薄膜形成装置および真空薄膜形
成方法を提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段および発明の効果】第1の
発明に係る真空薄膜形成装置は、長尺基材に薄膜を形成
する真空薄膜形成装置であって、第1室および第2室に
分割された真空チャンバと、第1室に設けられ、長尺基
材を連続的に繰り出し巻き取ることにより長尺基材を第
1室から第2室を経由して再び第1室に搬送する搬送手
段と、第1室内で搬送手段により搬送される長尺基材に
対向するように設けられた第1のスパッタ電極と、第2
室内に設けられ、長尺基材に薄膜を形成する薄膜形成手
段とを備えたものである。
【0023】本発明に係る真空薄膜形成装置において
は、搬送手段により第1室から第2室を経由して再び第
1室に連続的に搬送される長尺基材に対し、長尺基材に
対向する第1のスパッタ電極により、例えばプラズマ処
理またはスパッタ蒸着などの処理を第1室で行い、プラ
ズマ処理またはスパッタ蒸着などの処理がなされた長尺
基材に第2室で薄膜が形成されるので、第1室で行うプ
ラズマ処理またはスパッタ蒸着などの処理を第2室で通
常行う薄膜形成に要する成膜時間と同等の時間で終わら
せることができ、真空薄膜形成装置における成膜時間を
短縮することができる。また、薄膜が形成される第2室
ではなく、搬送手段が設けられた第1室に第1のスパッ
タ電極が配置されているので、装置を大型化する必要が
なく真空薄膜形成装置を安価に提供することができる。
【0024】また、薄膜形成手段は、第2室で搬送手段
により搬送される長尺基材に対向するように配置された
少なくとも1つの第2のスパッタ電極を含むことが好ま
しい。この場合、例えば第2のスパッタ電極を斜めに配
置することができ、第2室での第2のスパッタ電極のレ
イアウトの自由度が大きく真空薄膜形成装置の小型化が
容易になる。
【0025】また、第1のスパッタ電極は、搬送手段の
繰り出し側に配置してもよい。この場合、第2室で薄膜
が形成される前に長尺基材に対し第1のスパッタ電極に
より例えばプラズマ処理などの前処理を行うことが可能
になる。
【0026】また、第1室内の搬送手段の巻取り側に搬
送手段により搬送される長尺基材に対向するように配置
された第3のスパッタ電極をさらに備えてもよい。この
場合、第1室内で搬送手段の繰り出し側と巻取り側の両
方でそれぞれ第1および第3のスパッタ電極を用いて処
理をすることができ、搬送手段が長尺基材を搬送してい
るときに複数の処理を同時に行うことが可能になり成膜
時間を短縮することができる。
【0027】また、第3のスパッタ電極は、マグネトロ
ンスパッタ電極であることが好ましい。この場合、第3
のスパッタ電極を用いて例えばプラズマ処理またはスパ
ッタ蒸着などを行う場合、それらの処理の速度を向上す
ることができる。
【0028】また、第2のスパッタ電極は、マグネトロ
ンスパッタ電極であることが好ましい。この場合、第2
のスパッタ電極を用いて薄膜を形成するのに要する成膜
時間を短縮することができる。
【0029】また、第1の排気を行う第1の排気手段
と、第2室内の排気を行う第2の排気手段と、第1のス
パッタ電極の周囲に気体を導入する第1の気体導入手段
と、第2室内に気体を導入する第2の気体導入手段とを
さらに備えることが好ましい。この場合、異なる雰囲気
で行わなければならない処理、例えば窒素ガス中で行う
プラズマ処理とアルゴンガス中で行う薄膜形成を第1室
と第2室とで別々に行うことができ、真空薄膜形成装置
の用途が広がり真空薄膜形成装置の汎用性が向上する。
また、搬送手段が搬送しているときに雰囲気の破壊をせ
ずに異なる雰囲気中で行わなければならない処理を同時
に行うことができ成膜時間を短縮することができる。
【0030】また、第1室内の排気を行う第1の排気手
段と、第2室内の排気を行う第2の排気手段と、第1の
スパッタ電極の周囲に気体を導入する第1の気体導入手
段と、第2室内に気体を導入する第2の気体導入手段
と、第3のスパッタ電極の周囲に気体を導入する第3の
気体導入手段とをさらに備えることが好ましい。この場
合、第1のスパッタ電極を用いて行う処理と第2室内の
薄膜形成と第3のスパッタ電極を用いて行う処理を互い
に独立して形成される雰囲気中で行うことができ、異な
る雰囲気中で行わなければならない処理を搬送手段が長
尺基材を搬送しているときに同時に行うことができ成膜
時間を短縮することができる。
【0031】また、第1のスパッタ電極はマグネトロン
スパッタ電極であることが好ましい。この場合、第1の
スパッタ電極によりプラズマ処理を行う場合には、プラ
ズマ処理の速度を向上させ、第1のスパッタ電極により
薄膜の形成を行う場合には薄膜の形成速度を向上させる
ことができる。
【0032】また、搬送手段は長尺基材を双方向に搬送
可能であることが好ましい。この場合、真空チャンバ内
の雰囲気を破壊することなく長尺基材を第1室と第2室
とで往復させることができ、一旦長尺基材に第2室で薄
膜を形成した後、長尺基材を巻き取って再び第2室で薄
膜を形成しなければならない場合または第2室を往復す
ることによって薄膜を形成しなければならない場合など
において長尺基材を装填しなおす手間が省け成膜時間を
短縮することができる。
【0033】第2の発明に係る真空薄膜形成方法は、第
1室および第2室に分割された真空チャンバ内で長尺基
材を第1室から第2室を経由して再び第1室に搬送する
間に、長尺基材に薄膜を形成する真空薄膜形成方法であ
って、第1室内で搬送されている長尺基材にスパッタ電
極によるプラズマ処理を行う第1の工程と、プラズマ処
理が行われて第2室内で搬送されている長尺基材に薄膜
を形成する第2の工程とを備えたものである。
【0034】本発明に係る真空薄膜形成方法において
は、スパッタ電極により第1室内で行うプラズマ処理を
第2室内で行う薄膜の形成に見合う速度で行うことがで
きる。それにより、高速に薄膜を形成することができ
る。また、スパッタ電極により第1室で長尺基材をプラ
ズマ処理した直後に第2室で薄膜の形成を行うことがで
きる。それにより、プラズマ処理された長尺基材の表面
の汚染が少なく密着信頼性の高い薄膜形成が可能にな
る。
【0035】第3の発明に係る真空薄膜形成方法は、第
1室および第2室に分割された真空チャンバ内で長尺基
材を第1室から第2室を経由して再び第1室に搬送する
間に、長尺基材に薄膜を形成する真空薄膜形成方法であ
って、第1室に設けられた第1のスパッタ電極の周囲お
よび第2室に互いに異なる雰囲気を形成する第1の工程
と、第1室内で搬送されている長尺基材に第1のスパッ
タ電極により第1の薄膜を形成する第2の工程と、第2
室内で搬送されている長尺基材の第1の薄膜上に第2の
薄膜を形成する第3の工程とを備えるものである。
【0036】本発明に係る真空薄膜形成方法において
は、搬送されている長尺基材に対し、第1のスパッタ電
極によりある雰囲気中で第1の薄膜が形成され、続いて
第2室にて第1のスパッタ電極の雰囲気とは異なる雰囲
気中で第2の薄膜が形成される。この場合、異なる雰囲
気中で形成しなければならない第1および第2の薄膜
を、搬送されている長尺基材に同時に成膜することがで
き、短い成膜時間で効率よく形成することができる。
【0037】第4の発明に係る真空薄膜形成方法は、第
1室および第2室に分割された真空チャンバ内で長尺基
材を第1室から第2室を経由して再び第1室に搬送する
間に、長尺基材に薄膜を形成する真空薄膜形成方法であ
って、第1室内に配置されたスパッタ電極の周囲および
第2室に互いに異なる雰囲気を形成する第1の工程と、
第2室内で搬送されている長尺基材に第1の薄膜を形成
する第2の工程と、第2室を経由して再び第1室内で搬
送されている長尺基材の第1の薄膜上にスパッタ電極に
より第2の薄膜を形成する第3の工程とを備えたもので
ある。
【0038】本発明に係る真空薄膜形成方法において
は、搬送されている長尺基材に対し、ある雰囲気が形成
されている第2室で第1の薄膜が形成され、続いて第1
のスパッタ電極により第2室の雰囲気とは異なる雰囲気
中で第2の薄膜が形成される。この場合、異なる雰囲気
中で形成しなければならない第1および第2の薄膜を含
む多層膜を短い成膜時間で効率良く形成することができ
る。
【0039】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態にお
ける真空薄膜形成装置について説明する。図1は、一実
施の形態における真空薄膜形成装置の一構成例を示す概
略図である。
【0040】図1に示す真空薄膜形成装置1において、
真空チャンバ2内に冷却ロール30が設けられている。
真空チャンバ2の内部は、冷却ロール30を中心に隔壁
10により収納室11および成膜室12に分割されてい
る。隔壁10は、真空チャンバ2の内部の側壁から冷却
ロール30の近傍まで伸び、冷却ロール30の外周面に
対向するように下方に湾曲している。それにより、冷却
ロール30と隔壁10との間に、後述する長尺有機基材
9が通過する通路41が形成される。収納室11と成膜
室12とは、この通路41を除いて隔壁10および冷却
ロール30で互いに遮蔽されている。
【0041】収納室11内には、繰り出しロール15、
繰り出し側の案内ロール16,17,18、巻き取り側
の案内ロール19,20,21および巻き取りロール2
2が設けられている。
【0042】案内ロール16,17間において真空チャ
ンバ2内の一方の側壁に第1の処理室23が設けられて
いる。第1の処理室23内にはマグネトロンスパッタ電
極25が配置されている。この第1の処理室23の上面
および下面には、長尺有機基材9が通過するスリット2
3a,23bが形成されている。
【0043】一方、案内ロール20,21間において真
空チャンバ2内の他方の側壁に第2の処理室37が設け
られている。第2の処理室37内にはマグネトロンスパ
ッタ電極39が配置されている。この第2の処理室37
の上面および下面には長尺有機基材9が通過するスリッ
ト35a,35bが形成されている。
【0044】繰り出しロール15には、長尺有機基材9
が巻き付けられたロールが装填されている。この長尺有
機基材9は、まず案内ロール16により案内され、第1
の処理室23のスリット23a,23bを通って案内ロ
ール17,18により冷却ロール30の外周面に案内さ
れ、さらに案内ロール19,20により案内され、第2
の処理室37のスリット35b,35aを通って案内ロ
ール21により案内され、巻き取りロール22に巻き取
られる。
【0045】収納室11は、コンダクタンスバルブ13
を介して排気ポンプ(図示せず)に接続されている。こ
のコンダクタンスバルブ13により収納室11内の排気
量が調整される。また、第1の処理室23にはガス導入
系24が接続されている。第1の処理室23内のマグネ
トロンスパッタ電極25には、マッチング回路26を介
して高周波電源27が接続されるか、または直流電源2
8が接続される。一方、第2の処理室37にはガス導入
系38が接続されている。第2の処理室37内のマグネ
トロンスパッタ電極39には、直流電源40が接続され
る。
【0046】成膜室12内には、冷却ロール30に対向
するように3つのマグネトロンスパッタ電極31,3
2,33が配置されている。マグネトロンスパッタ電極
31,32,33には、それぞれ直流電源34,35,
36が接続されている。
【0047】成膜室12は、コンダクタンスバルブ14
を介して排気ポンプ(図示せず)に接続されている。こ
のコンダクタンスバルブ14により成膜室12内の排気
量が調整される。また、成膜室12にはガス導入系29
が接続されている。
【0048】本実施の形態では、繰り出しロール15、
案内ロール16〜21、巻き取りロール22および冷却
ロール30が搬送手段を構成し、マグネトロンスパッタ
電極31〜33が薄膜形成手段を構成する。また、コン
ダクタンスバルブ13および排気ポンプ(図示せず)が
第1の排気手段を構成し、コンダクタンスバルブ14お
よび排気ポンプ(図示せず)が第2の排気手段を構成す
る。また、ガス導入系24が第1の気体導入手段に相当
し、ガス導入系29が第2の気体導入手段に相当し、ガ
ス導入系38が第3の気体導入手段に相当する。
【0049】次に、図1に示した真空薄膜形成装置1を
用いた真空薄膜の形成方法の第1の例について説明す
る。
【0050】真空薄膜形成方法の第1の例では、真空チ
ャンバ2内で長尺有機基材9を繰り出しロール15、冷
却ロール30および巻き取りロール22によって所定の
速度で走行させる。その走行中に、収納室11内で、外
部の処理室23内のマグネトロンスパッタ電極25によ
ってプラズマ処理が行われる。また、プラズマ処理され
た長尺有機基材9に成膜室12内でマグネトロンスパッ
タ電極31〜33により薄膜が形成される。このように
プラズマ処理をマグネトロンスパッタ電極25で行うこ
とにより薄膜形成を高速化できる。
【0051】上述の動作をさらに詳しく説明する。ま
ず、真空チャンバ2に内部の長尺有機基材9が装填され
る。マグネトロンスパッタ電極25には、マッチング回
路26および高周波電源27が接続される。本例では、
第1の処理室23内のマグネトロンスパッタ電極25上
にスパッタされにくいターゲットが配置される。また、
マグネトロンスパッタ電極31〜33上にはそれぞれタ
ーゲットが取り付けられる。本例では、第2の処理室3
7内のマグネトロンスパッタ電極39は使用しないもの
とする。
【0052】その後、真空チャンバ2が密閉され、真空
チャンバ2の収納室11および成膜室12がそれぞれ排
気ポンプ(図示せず)によって排気され、所定の真空度
に設定される。ガス導入系24から第1の処理室23に
第1のガスが導入される。ガス導入系24から導入する
第1のガスの流量が調整されるとともにコンダクタンス
バルブ13によって排気量が調整されて第1の処理室2
3内の第1のガスの圧力が設定される。ガス導入系29
から第2のガスが成膜室12に導入され、ガス導入系2
9から導入する第2のガスの流量が調整されるとともに
コンダクタンスバルブ14によって排気量が調整され、
成膜室12内の第2のガスの圧力が設定される。通常、
第1のガスは例えば窒素ガスであり、第2のガスは例え
ばアルゴンガスである。このとき、第1の処理室23お
よび成膜室12に比べて収納室11の圧力が低くなって
いるので、第1の処理室23の雰囲気と成膜室12の雰
囲気とが互いに分離されている。
【0053】真空チャンバ2内の雰囲気が設定された
後、長尺有機基材9は、一定速度で走行するように繰り
出しロール15、冷却ロール30および巻き取りロール
22によって駆動される。
【0054】マグネトロンスパッタ電極25には、高周
波電源27からマッチング回路29を介して所定の周波
数の高周波電力が供給される。それにより、第1の処理
室23内にグロー放電が発生し、繰り出しロール15か
ら繰り出されて案内ロール16,17間に達した長尺有
機基材9がグロー放電雰囲気中を走行することになる。
その結果、長尺有機基材9がプラズマ処理される。
【0055】その後、マグネトロンスパッタ電極25に
よってプラズマ処理された長尺有機基材9は、冷却ロー
ル30に沿って成膜室12内に送られる。成膜室12で
は、マグネトロンスパッタ電極31〜33に取り付けら
れたターゲットがイオンによりスパッタされ、ターゲッ
トの材料が長尺有機基材9に蒸着される。各ターゲット
による蒸着速度は、直流電源34〜36からマグネトロ
ンスパッタ電極31〜33にそれぞれ供給される直流電
力によって制御される。
【0056】長尺有機基材9は、成膜室12内のマグネ
トロンスパッタ電極31〜33により薄膜が形成された
後、第2の処理室37を通って巻き取りロール22によ
り巻き取られる。
【0057】上記のような真空薄膜形成方法において
は、収納室11のマグネトロンスパッタ電極25により
プラズマ処理された長尺有機基材9の表面が新たな汚染
を受けることなく成膜室12においてマグネトロンスパ
ッタ電極31〜33により薄膜が形成されるので、薄膜
と長尺有機基材9との密着信頼性を向上されることがで
きる。
【0058】なお、長尺有機基材9をプラズマ処理する
場合は、マグネトロンスパッタ電極25に平板状のもの
を用いることが好ましい。平板状のものを用いると長尺
有機基材の幅方向のプラズマの均一性が得られやすいか
らであり、なかでもプレーナマグネトロン型のカソード
電極を用いることにより、イオンやラジカルの密度を高
めることができ、プラズマ処理効率が向上する。
【0059】また、マグネトロンスパッタ電極25にス
パッタされにくいターゲットを取り付ける代わりに、マ
グネトロンスパッタ電極25自体をスパッタされにくい
材料で形成してもよい。
【0060】また、繰り出しロール15、冷却ロール3
0および巻き取りロール22は、長尺有機基材9を双方
向に駆動可能であってもよい。
【0061】次に、図1に示した真空薄膜形成装置1を
用いた真空薄膜形成方法の第2の例について説明する。
本例では、長尺有機基材9上に金属層および酸化金属層
を含む多層膜を形成する。
【0062】上記の真空薄膜形成方法の第1の例ではマ
グネトロンスパッタ電極25にマッチング回路26およ
び高周波電源27を接続してプラズマ処理を行ったが、
第2の例ではマグネトロンスパッタ電極25,39に直
流電源28,38を接続して薄膜の形成を行う。
【0063】真空薄膜形成方法の第2の例では、第1お
よび第2の処理室23,37内にガス導入系24,28
によりアルゴンガスを導入し、成膜室12内にはガス導
入系29によりアルゴンガスと酸素ガスとの混合ガスを
導入する。真空チャンバ2内で長尺有機基材9を繰り出
しロール15、冷却ロール30および巻き取りロール2
2によって所定の速度で走行させる。その走行中に、収
納室12内の第1および第2の処理室23,37内のマ
グネトロンスパッタ電極25,39により金属層を形成
するとともに成膜室12内のマグネトロンスパッタ電極
31〜33により反応性スパッタを行い、酸化金属層を
形成する。
【0064】上述の動作をさらに詳しく説明する。ま
ず、真空チャンバ2の内部に長尺有機基材9が装填され
る。マグネトロンスパッタ電極25には、直流電源28
が接続される。本例では、第1の処理室23内のマグネ
トロンスパッタ電極25上、マグネトロンスパッタ電極
31〜33上および第2の処理室37内のマグネトロン
スパッタ電極39上には、それぞれターゲットが取り付
けられる。
【0065】その後、真空チャンバ2が密閉され、真空
チャンバ2の収納室11および成膜室12がそれぞれ排
気ポンプ(図示せず)によって排気され、所定の真空度
に設定される。そして、ガス導入系24,38から第1
および第2の処理室23,37にそれぞれ第1および第
2のガスが導入される。ガス導入系24,38から導入
される第1および第2のガスの流量が調整されるととも
にコンダクタンスバルブ13によって排気量が調整され
て第1および第2の処理室23,37内の第1および第
2のガスの圧力が設定される。
【0066】また、ガス導入系29から第3のガスが成
膜室12に導入され、ガス導入系29から導入される第
3のガスの流量が調整されるとともにコンダクタンスバ
ルブ14によって排気量が調整され、成膜室12内の第
3のガスの圧力が設定される。通常、第1のガスは例え
ば酸素が添加されていないガスであり、第3のガスは例
えば酸素が添加されているガスである。このとき、第1
および第2の処理室23,37および成膜室12に比べ
て収納室11の圧力は低くなっているので、第1の処理
室23の雰囲気と第2の処理室37の雰囲気と成膜室1
2の雰囲気とが互いに分離されている。
【0067】真空チャンバ2内の雰囲気が設定された
後、長尺有機基材9は一定速度で走行するように繰り出
しロール15、冷却ロール30および巻き取りロール2
2によって駆動される。ただし、ここでは繰り出しロー
ル10、冷却ロール30および巻き取りロール22によ
り長尺有機基材9を双方向に走行させることができるも
のとする。
【0068】マグネトロンスパッタ電極25には、直流
電源28から直流電力が供給される。それにより、第1
の処理室23内でマグネトロンスパッタ電極25に取り
付けられたターゲットがイオンよりスパッタされ、ター
ゲットの材料が繰り出しロール15から繰り出されて案
内ロール16,17間に達した長尺有機基材9に蒸着さ
れる。それにより、長尺有機基材9上に第1の薄膜が形
成される。
【0069】マグネトロンスパッタ電極25により第1
の薄膜が形成された長尺有機基材9は、冷却ロール30
に沿って成膜室12内に送られる。成膜室12では、マ
グネトロンスパッタ電極31〜33に取り付けられたタ
ーゲットがイオンによりスパッタされ、ターゲットの材
料が長尺有機基材9の第1の薄膜上に蒸着される。それ
により、長尺有機基材9の第1の薄膜上に第2の薄膜が
形成される。
【0070】その後、冷却ロール30から案内ロール1
9,20によって案内されて案内ロール20,21間に
達した長尺有機基材9は、第2の処理室37内でマグネ
トロンスパッタ電極39に取り付けられたターゲットが
イオンによりスパッタされ、ターゲットの材料が長尺有
機基材9の第2の薄膜上に蒸着される。それにより、長
尺有機基材9の第2の薄膜上に第3の薄膜が形成され
る。各ターゲットによる蒸着速度は、直流電源28,3
4〜36,40からマグネトロンスパッタ電極25,3
1〜33,39にそれぞれ供給される直流電力によって
制御される。
【0071】第2の処理室37で第3の薄膜が形成され
た長尺有機基材9は巻き取りロール22により巻き取ら
れる。
【0072】次に、長尺有機基材9は、一定速度で逆方
向に走行するように、繰り出しロール10を冷却ロール
30および巻き取りロール22によって駆動される。
【0073】長尺有機基材9は巻き取りロール22から
繰り出されて、案内ロール21,20間の第2の処理室
37に達する。第2の処理室37では、マグネトロンス
パッタ電極39に取り付けられたターゲットがイオンに
よりスパッタされ、ターゲットの材料が長尺有機基材9
の第3の薄膜上に蒸着される。それにより、長尺有機基
材9の第3の薄膜上に第4の薄膜が形成される。その
後、マグネトロンスパッタ電極39によって第4の薄膜
が形成された長尺有機基材9は、冷却ロール30に沿っ
て成膜室12内に送られる。成膜室12では、マグネト
ロンスパッタ電極31〜33に取り付けられたターゲッ
トがイオンによりスパッタされ、ターゲットの材料が長
尺有機基材9の第4の薄膜上に蒸着される。それによ
り、長尺有機基材9の第4の薄膜上に第5の薄膜が形成
される。
【0074】第5の薄膜が形成された後、長尺有機基材
は案内ロール18,17に案内され案内ロール17,1
6間の第1の処理室23に達する。第1の処理室23内
でマグネトロンスパッタ電極25に取り付けられたター
ゲットがイオンによりスパッタされ、ターゲットの材料
が長尺有機基材9の第5の薄膜上に蒸着される。それに
より、長尺有機基材9の第1の薄膜上に第6の薄膜が形
成される。なお、各ターゲットによる蒸着速度は直流電
源28,34〜36,40からマグネトロンスパッタ電
極25,31〜33,39にそれぞれ供給される直流電
力によって制御される。
【0075】このように真空薄膜形成方法の第2の例に
おいては、長尺有機基材9上に第1および第2の処理室
23,39と成膜室12とで金属層および酸化金属層を
同時に形成することができ薄膜形成時間を短縮すること
ができる。
【0076】なお、第2の例では、長尺有機基材9が繰
り出しロール15、冷却ロール30および巻き取りロー
ル22によって双方向に駆動される場合を示したが、一
方向にのみ駆動されてもよい。
【0077】また、第2の例では、第1の処理室23お
よび第2の処理室39の両方で薄膜が形成される場合を
示したが、いずれか一方で薄膜が形成されてもよい。
【0078】また、第2の例では、第1および第2の処
理室23,39で同じ雰囲気を形成したが、互いに異な
る雰囲気にして薄膜の形成を行ってもよい。
【0079】また、第2の例では、成膜室12でスパッ
タ蒸着を行い、第1および第2の処理室23,39で通
常のスパッタ蒸着を行ったが、第1および第2の処理室
23,39ならびに成膜室12の少なくとも1つで反応
性スパッタ蒸着を行ってもよい。
【0080】
【実施例】[実施例1]長尺有機基材9としてポリイミ
ドフィルムを用いてポリイミドフィルム上にCr(クロ
ム)層とCu(銅)層を有するフレキシブルプリント配
線基板用の基材を作製する場合を説明する。
【0081】マグネトロンスパッタ電極25のターゲッ
トにはスパッタエッチングされにくいタングステンを取
り付けた。また、マグネトロンスパッタ電極31上には
Crターゲットを取り付け、マグネトロンスパッタ電極
32,33上にはそれぞれCuターゲットを取り付け
た。
【0082】排気系ポンプ(図示せず)で真空チャンバ
2を1.0×10-3Paまで排気した後、ガス導入系2
4から窒素ガスを導入し、第1の処理室23の内部でマ
グネトロンスパッタ電極25近傍の窒素ガスの圧力を2
×10-1Paに調整した。一方、ガス導入系29からは
アルゴンガスを導入し、成膜室12でのアルゴンガスの
圧力を4×10-1Paに調整した。
【0083】窒素ガスの圧力とアルゴンガスの圧力の調
整はガス導入系24,29による各ガスの流量を調整す
るとともにコンダクタンスバルブ13,14により排気
量を調整することにより行い、成膜室12における窒素
ガスの分圧を測定したところ3×10-5Paであり、ク
ロムと銅の導電性に重大な影響を与えるレベルではなか
った。
【0084】マグネトロンスパッタ電極25には高周波
電源27から13.56MHzの高周波電力(電力密度
は1.6W/cm2 )を印加し、グロー放電により窒素
プラズマを発生させた。
【0085】ポリイミドフィルムを2m/分で走行さ
せ、第1の処理室23内で窒素プラズマによるプラズマ
処理を行った後、成膜室12内でマグネトロンスパッタ
電極31によりポリイミドフィルム1上に厚みが20n
mのCr層を成膜し、さらにマグネトロンスパッタ電極
32,33によりその上に厚みが70nmのCu層を成
膜した。
【0086】その後、ポリイミドフィルムを巻き取りロ
ール22で巻き取った。この場合、マグネトロンスパッ
タ電極31には直流電力(電力密度は4.5W/c
2 )を印加し、マグネトロンスパッタ電極32,33
にはそれぞれ直流電力(電力密度は6.2W/cm2
を印加した。
【0087】このように作製した試料のCu層上にさら
にCu(銅)を電気めっきし、ポリイミドフィルム上の
銅層の厚さを合計で10μmとした後、金属層(Cr
層)のポリイミドフィルムに対する密着力を90°ピー
ル剥離試験により測定した。この試料は、密着力が1.
7kg/cmであり、配線基板として使用するのに十分
な密着力を有していた。
【0088】[実施例2]長尺有機基材9としてPET
(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用い、PE
Tフィルム上にITO(インジウムと錫の酸化物)、A
g(銀)、ITO、Ag、ITO、Ag、ITOおよび
SiO2 (二酸化シリコン)の計8層からなる膜を有す
る光学フィルムを形成する場合について説明する。
【0089】マグネトロンスパッタ電極25,39上に
Agターゲットを取り付けた。また、マグネトロンスパ
ッタ電極31,32上には5%のSnを含有したInタ
ーゲットを取り付け、マグネトロンスパッタ電極33上
にはSiターゲットを取り付けた。
【0090】排気ポンプで真空チャンバ1を1.0×1
-3Paまで排気した後、ガス導入系24およびガス導
入系38からアルゴンガスを導入し、マグネトロンスパ
ッタ電極25およびマグネトロンスパッタ電極39の周
囲のアルゴンガスの圧力を4×10-1Paに調節した。
一方、ガス導入系29よりアルゴンガスと酸素ガスとの
混合ガスを導入し、成膜室12の混合ガスの圧力を4×
10-1Paに調節した。ただし、酸素ガス流量は、成膜
されるITOやSiO2 の蒸発量をモニタし、適正値に
なるよう流量が制御できるようになっている。
【0091】最初、繰り出しロール15からPETフィ
ルムを繰り出し、巻き取りロール22でPETフィルム
を巻き取りながら(正方向に巻き取りながら)1m/分
で走行させてマグネトロンスパッタ電極31,32によ
り反応性スパッタで60nmの厚みのITO層を成膜
し、続いてマグネトロンスパッタ電極39により10n
mの厚みのAg層を成膜した。この場合、マグネトロン
スパッタ電極31,32に2.5W/cm2 の直流電力
を印加し、マグネトロンスパッタ電極39に1W/cm
2 の直流電力を印加した。
【0092】次に、巻き取りロール22からPETフィ
ルムを繰り出し、繰り出しロール15でPETフィルム
を巻き取りながら(逆方向に巻き取りながら)1m/分
で走行させて、マグネトロンスパッタ電極31,32に
より反応性スパッタを行い、60nmの厚みのITO層
を成膜し、マグネトロンスパッタ電極25により10n
mの厚みのAg層を成膜した。この場合、マグネトロン
スパッタ電極31,32に2.5W/cm2 の電力を印
加し、マグネトロンスパッタ電極25に1W/cm2
直流電力を印加した。
【0093】同様にして、再度PETフィルムを正方向
に巻き取りながら、マグネトロンスパッタ電極31,3
2により反応性スパッタを行い、60nmの厚みのIT
O層を成膜し、マグネトロンスパッタ電極39により1
0nmの厚みのAg層を成膜した。この場合、マグネト
ロンスパッタ電極31,32に2.5W/cm2 の直流
電力を印加し、マグネトロンスパッタ電極39に1W/
cm2 の直流電力を印加した。その後、逆方向にPET
フィルムを巻き取りながらマグネトロンスパッタ電極3
1,32により反応性スパッタを行い、60nmの厚み
のITO層を成膜した。この場合、マグネトロンスパッ
タ電極31,32に2.5W/cm2 の直流電力を印加
した。
【0094】最後に、正方向にPETフィルムを巻き取
りながらマグネトロンスパッタ電極33により反応性ス
パッタを行い、90nmの厚みのSiO2 を成膜した。
この場合、マグネトロンスパッタ電極33に9W/cm
2 の直流電力を印加した。
【0095】以上のように、本発明の真空薄膜形成方法
の第2の例により成膜すると、上記のような異なる雰囲
気で成膜しなければならない層が交互に積層されてなる
8層の膜はPETフィルムを2.5往復させることによ
り成膜することができる。それに比べ、図2に示した真
空薄膜形成装置50を用いた真空薄膜形成方法では、異
なる雰囲気で成膜しなければならない層を交互に形成す
る場合、長尺有機基材を1方向に巻き取るごとに1層成
膜することができるようになるため、全部の層を成膜す
るのに長尺有機基材を4往復させる必要がある。このよ
うに、本発明の真空薄膜形成方法の第2の例によれば、
長尺有機基材9の1回の巻き取りの間に、金属と金属化
合物(例えば金属酸化物および金属窒化物)とを同時に
成膜することができるので、成膜処理時間を大幅に短縮
することができる。
【0096】また、長尺有機基材としては、ポリイミド
フィルムおよびPETフィルム以外にもポリエステルフ
ィルム、ポリアミドフィルム、ポリエーテルサルフォン
等の高分子フィルムおよびこれらの高分子フィルムの金
属箔の積層体や、金属箔上に有機重合体の被膜が部分的
に形成されたものなどが挙げられる。
【0097】なお、この実施例2では、2つのマグネト
ロンスパッタ電極31,32を用いてITO層を形成し
たが、マグネトロンスパッタ電極31,32のどちらか
一方を用いてITO層を形成してもよい。
【0098】なお、上記実施の形態では、成膜室12内
にマグネトロンスパッタ電極を用いる場合について説明
したが、マグネトロンスパッタ電極以外の交流または直
流スパッタ電極を用いてもよい。
【0099】また、装置の小型化という点から成膜室1
2内でスパッタ蒸着を行うことが好ましいが、スパッタ
蒸着の代わりに真空蒸着などの他の蒸着方法を用いても
よい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る真空薄膜形成装置の一構成例を示
す概略図である。
【図2】従来の真空薄膜形成装置の一構成例を示す概略
図である。
【符号の説明】
9 長尺有機基材 10 隔壁 11 収納室 12 成膜室 13,14 コンダクタンスバルブ 15 繰り出しロール 16〜21 案内ロール 22 巻き取りロール 24,29,38 ガス導入系 25,31〜33,39 マグネトロンスパッタ電極 30 冷却ロール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河添 昭造 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電工株式会社内 Fターム(参考) 4K029 AA11 AA25 BA04 BA07 BA08 BA46 BA50 BB02 BC07 CA05 DA02 DA04 DC03 DC35 DC39 JA10 KA03

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 長尺基材に薄膜を形成する真空薄膜形成
    装置であって、 第1室および第2室に分割された真空チャンバと、 前記第1室に設けられ、前記長尺基材を連続的に繰り出
    し巻き取ることにより前記長尺基材を前記第1室から前
    記第2室を経由して再び前記第1室に搬送する搬送手段
    と、 前記第1室内で前記搬送手段により搬送される前記長尺
    基材に対向するように設けられた第1のスパッタ電極
    と、 前記第2室内に設けられ、前記長尺基材に薄膜を形成す
    る薄膜形成手段とを備えたことを特徴とする真空薄膜形
    成装置。
  2. 【請求項2】 前記薄膜形成手段は、前記第2室で前記
    搬送手段により搬送される前記長尺基材に対向するよう
    に配置された少なくとも1つの第2のスパッタ電極を含
    むことを特徴とする請求項1記載の真空薄膜形成装置。
  3. 【請求項3】 前記第1のスパッタ電極は、前記搬送手
    段の繰り出し側に配置されたことを特徴とする請求項1
    または2記載の真空薄膜形成装置。
  4. 【請求項4】 前記第1室内の前記搬送手段の巻き取り
    側に前記搬送手段により搬送される前記長尺基材に対向
    するように配置された第3のスパッタ電極をさらに備え
    たことを特徴とする請求項3記載の真空薄膜形成装置。
  5. 【請求項5】 前記第3のスパッタ電極は、マグネトロ
    ンスパッタ電極であることを特徴とする請求項4記載の
    真空薄膜形成装置。
  6. 【請求項6】 前記第2のスパッタ電極は、マグネトロ
    ンスパッタ電極であることを特徴とする請求項2〜5の
    いずれかに記載の真空薄膜形成装置。
  7. 【請求項7】 前記第1室内の排気を行う第1の排気手
    段と、 前記第2室内の排気を行う第2の排気手段と、 前記第1のスパッタ電極の周囲に気体を導入する第1の
    気体導入手段と、 前記第2室内に気体を導入する第2の気体導入手段とを
    さらに備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか
    に記載の真空薄膜形成装置。
  8. 【請求項8】 前記第1室内の排気を行う第1の排気手
    段と、 前記第2室内の排気を行う第2の排気手段と、 前記第1のスパッタ電極の周囲に気体を導入する第1の
    気体導入手段と、 前記第2室内に気体を導入する第2の気体導入手段と、 前記第3のスパッタ電極の周囲に気体を導入する第3の
    気体導入手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項
    4または5記載の真空薄膜形成装置。
  9. 【請求項9】 前記第1のスパッタ電極は、マグネトロ
    ンスパッタ電極であることを特徴とする請求項1〜8の
    いずれかに記載の真空薄膜形成装置。
  10. 【請求項10】 前記搬送手段は、前記長尺基材を双方
    向に搬送可能であることを特徴とする請求項1〜9のい
    ずれかに記載の真空薄膜形成装置。
  11. 【請求項11】 第1室および第2室に分割された真空
    チャンバ内で長尺基材を前記第1室から前記第2室を経
    由して再び前記第1室に搬送する間に、前記長尺基材に
    薄膜を形成する真空薄膜形成方法であって、 前記第1室内で搬送されている前記長尺基材にスパッタ
    電極によりプラズマ処理を行う第1の工程と、 前記プラズマ処理が行われて前記第2室内で搬送されて
    いる前記長尺基材に薄膜を形成する第2の工程とを備え
    たことを特徴とする真空薄膜形成方法。
  12. 【請求項12】 第1室および第2室に分割された真空
    チャンバ内で長尺基材を前記第1室から第2室を経由し
    て再び前記第1室に搬送する間に、前記長尺基材に薄膜
    を形成する真空薄膜形成方法であって、 前記第1室に設けられた第1のスパッタ電極の周囲およ
    び前記第2室に互いに異なる雰囲気を形成する第1の工
    程と、 前記第1室内で搬送されている前記長尺基材に前記第1
    のスパッタ電極により第1の薄膜を形成する第2の工程
    と、 前記第2室内で搬送されている前記長尺基材の前記第1
    の薄膜上に第2の薄膜を形成する第3の工程とを備えた
    ことを特徴とする真空薄膜形成方法。
  13. 【請求項13】 第1室および第2室に分割された真空
    チャンバ内で長尺基材を前記第1室から前記第2室を経
    由して再び前記第1室に搬送する間に、前記長尺基材に
    薄膜を形成する真空薄膜形成方法であって、 前記第1室内に配置されたスパッタ電極の周囲および前
    記第2室に互いに異なる雰囲気を形成する第1の工程
    と、 前記第2室内で搬送されている前記長尺基材に第1の薄
    膜を形成する第2の工程と、 前記第2室を経由して再び前記第1室内で搬送されてい
    る前記長尺基材の前記第1の薄膜上に前記スパッタ電極
    により第2の薄膜を形成する第3の工程とを備えたこと
    を特徴とする真空薄膜形成方法。
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