JP2001070986A - スケール防止剤および高温高圧水系用水処理剤 - Google Patents

スケール防止剤および高温高圧水系用水処理剤

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JP2001070986A
JP2001070986A JP25615499A JP25615499A JP2001070986A JP 2001070986 A JP2001070986 A JP 2001070986A JP 25615499 A JP25615499 A JP 25615499A JP 25615499 A JP25615499 A JP 25615499A JP 2001070986 A JP2001070986 A JP 2001070986A
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Takashi Yoshiyasu
貴史 吉安
Toshihito Kakiuchi
利仁 垣内
Michihide Ouchi
通秀 大内
Takeshi Otani
武之 大谷
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Katayama Chemical Inc
Fujisawa Pharmaceutical Co Ltd
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Katayama Chemical Inc
Fujisawa Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 人体や環境面に対する安全性が高く、高温高
圧下でスケール防止効果を発揮し得るスケール防止剤;
更には、ヒドラジン等の脱酸素剤やリン酸系防食剤を使
用することなく、特に軟水ボイラにおけるスケール防止
と腐食抑制を兼ね備えた高温高圧水系用水処理剤を提供
する。 【解決手段】 下式(1) 【化1】 (式中、nは0〜5の整数、mは1または2の整数を夫
々意味する。)で示されるポリエンポリカルボン酸また
はそのカルボキシ基における誘導体若しくはそれらの塩
類を含有するスケール防止剤;及び、(イ)上式(1)
で示されるポリエンポリカルボン酸またはそのカルボキ
シ基における誘導体若しくはそれらの塩類、及び(ロ)
水中で脂肪族オキシカルボン酸イオンを放出し得る化合
物を含有する高温高圧水系用水処理剤である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、スケール防止剤
及び高温高圧水系用水処理剤に関する。この発明のスケ
ール防止剤は、高温水系、非高温水系を問わず種々のス
ケール、ことにカルシウム系やマグネシウム系のスケー
ル発生を防止または抑制することができる点で有用であ
る。また、この発明のスケール防止剤及び高温高圧水系
用水処理剤は、特に高温高圧下に実施される水系用途、
とりわけボイラ水系用のスケール防止剤及び水処理剤と
して極めて有用であり、高温高圧下、軟水や純水等が使
用されるボイラ水系において、スケールの発生を防止・
抑制することができるスケール防止剤;及び、スケール
の発生を防止・抑制することができるのみならず、軟水
や純水等と接触する鉄系金属の腐食、特に孔食の発生を
防止することができる高温高圧水系用水処理剤として好
適に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】各種工業用水系中で見られるスケールの
生成は、高温水系、非高温水系を問わず深刻な問題を招
いている。例えば、水系が直接加熱されたり、熱交換器
等を介して間接的に加熱されると、水系中に溶存してい
るカルシウム、マグネシウムの様な金属イオンが不溶性
の化合物に変化し易く、水系と接触している伝熱面等に
スケールとして析出する。この様な傾向は、ボイラー、
海水淡水化装置系、地熱熱水の利用装置系等の高温水系
の場合に特に顕著に見られ、熱効率の低下、水路の閉塞
等の障害を引起こすことが知られている。
【0003】一方、一般冷却水系において、近年、需要
量の多い冷却水は、使用量を削減し、極力節約すること
が望まれている。従って、ビルや工場等では冷却水を循
環させて使用し、排水量を極力抑える高濃縮運転を行う
水系が増加している。
【0004】この様な水系では非高温水といえども上記
スケールが生成し難く、なかでもケイ酸塩がカルシウム
イオンやマグネシウムイオン等と結合したシリカ化合物
によるスケールは熱伝導度が小さく、少量付着しただけ
でも冷却効率が著しく低下するといった大きな問題を招
いている。
【0005】また、製紙工場のパルプ含有工程水、焼却
炉排水、排煙脱硫の循環水系等においても、使用水中の
硬度成分、ことにカルシウムと、炭酸イオンや硫酸イオ
ンとの反応によって生じる炭酸カルシウムや硫酸カルシ
ウムを主とするスケールが発生し、これによる水系の閉
塞、熱交換率の低下、金属部材の腐食等の障害が問題と
なっている。
【0006】特に近年、蒸気要求量の増大に伴い、ボイ
ラ機器に対する負担も益々増加し、ボイラのスケール発
生や腐食の促進に拍車をかけている。かかるスケールの
発生や腐食を防止すべく、除硬処理、即ち、イオン交換
樹脂や逆浸透膜等を用いて純水または軟水として処理し
た後、これらをボイラ水として利用する方法が行われて
いる。
【0007】ところが、この方法では、使用する水(純
水または軟水)の価格が高いため、当該水を最大限利用
し得る様、ブロー率を下げ、水の濃縮度を高く保ちなが
ら効率の良い蒸気収量を得るための努力が払われてい
る。この様な状況下、特に軟水ボイラにおいては、腐食
やスケール発生の面で、下記の様な重要な問題が生じて
いる。
【0008】例えば、イオン交換樹脂等で軟水を連続的
に供給するシステムにおいては、イオン交換樹脂等のイ
オン交換能が低下して硬度成分がリークしてくる恐れが
あり、高濃縮操業により硬度成分の濃度は一気に上昇
し、スケールが析出するという問題がある。更に操業に
伴い、軟水中に含まれるアニオン濃度が増大するが、当
該アニオンと、高温に因る鉄との反応性が増大して急激
な腐食傾向を発揮する様になる。この様な腐食傾向は、
アニオンのみならず、軟水中に含まれる溶存酸素や炭酸
イオン等においても同様に見られ、これらは、アニオン
とは異なった挙動で、鉄に対する腐食を促進させる。
【0009】そこで、この様な軟水ボイラにおける腐食
やスケールの発生を防止すべく、種々の提案がなされて
いる。
【0010】このうち、軟水ボイラの伝熱面に付着する
スケールを防止する方法としては、水中に、ポリアクリ
ル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸等のポリカル
ボン酸系ポリマー;ホスホン酸やホスホノカルボン酸等
の有機リン化合物を添加する方法が提案されている(特
公昭53-20475、特公昭58-53034号及び特開昭55-1897号
公報)。しかしながら、高温高圧下でスケール防止効果
を発揮させる上記スケール防止剤は、効果の点で不充分
であること;スケール防止剤として合成高分子重合体を
使用しているため、人体や環境面に対する安全面に欠け
るという不具合を抱えていた。
【0011】一方、軟水ボイラにおける鉄系金属の腐
食、特に孔食を防止する方法としては、軟水を脱気器に
通すと共に、亜硫酸塩、ヒドラジン等の脱酸素剤を添加
して脱酸素処理し、更にこの脱酸素処理水にリン酸塩系
防食剤を添加した後、必要に応じてアルカリ剤を添加し
てpHを10〜12に調整する方法が採用されている
(脱酸素−アルカリ処理法:JIS B 8223)。しかしなが
ら、脱酸素剤として使用されるヒドラジンは、毒物およ
び劇物取締法において劇物に指定されており、取扱いが
困難であること;また、リン酸系スケール防止剤または
防食剤の使用は、排水の富栄養化をもたらし、環境上好
ましくない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】この発明は上記事情に
鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、人体や
環境面に対する安全性が高く、高温高圧下のみならず非
高温高圧下においてもスケール防止効果を発揮し得るス
ケール防止剤を提供することにある。また、この発明の
第2の目的は、スケール防止と腐食抑制を兼ね備えた高
温高圧水系用(特にボイラ水系用)水処理剤を提供する
ことにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決し得たこ
の発明のスケール防止剤は、下式(1)
【0014】
【化3】
【0015】(式中、nは0〜5の整数、mは1または
2の整数を夫々意味する。)で示されるポリエンポリカ
ルボン酸またはそのカルボキシ基における誘導体若しく
はそれらの塩類を含有するところに要旨を有するもので
ある。
【0016】この発明のスケール防止剤において、上式
(1)中、m=2,n=0であるポリエンポリカルボン
酸またはそのカルボキシ基における誘導体若しくはそれ
らの塩類;m=2,n=1であるポリエンポリカルボン
酸またはそのカルボキシ基における誘導体若しくはそれ
らの塩類;m=2,n=2であるポリエンポリカルボン
酸またはそのカルボキシ基における誘導体若しくはそれ
らの塩類は、好ましい態様である。
【0017】また、上記課題を解決し得たこの発明の高
温高圧水系用水処理剤は、(イ)下式(1)
【0018】
【化4】
【0019】(式中、nは0〜5の整数、mは1または
2の整数を夫々意味する。)で示されるポリエンポリカ
ルボン酸またはそのカルボキシ基における誘導体若しく
はそれらの塩類、及び(ロ)水中で脂肪族オキシカルボ
ン酸イオンを放出し得る化合物を含有するところに要旨
を有するものである。
【0020】この発明の高温高圧水系用水処理剤におい
て、上式(1)中、m=2,n=0であるポリエンポリ
カルボン酸またはそのカルボキシ基における誘導体若し
くはそれらの塩類;m=2,n=1であるポリエンポリ
カルボン酸またはそのカルボキシ基における誘導体若し
くはそれらの塩類;m=2,n=2であるポリエンポリ
カルボン酸またはそのカルボキシ基における誘導体若し
くはそれらの塩類は好ましい態様である。
【0021】また、上記(ロ)の水中で脂肪族オキシカ
ルボン酸イオンを放出し得る化合物としては、クエン
酸、グルコン酸、リンゴ酸、若しくはマンノン酸、また
はこれらのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩;及び
グルコノ−δ−ラクトンよりなる群から選択される少な
くとも一種の化合物が挙げられる。
【0022】この発明の高温高圧水系用水処理剤におい
て、更に、(ハ)水中でジルコニウムイオン、スズイオ
ン、マンガンイオンまたはニッケルイオンを放出し得る
重金属化合物を含有するものも好ましい態様である。
【0023】上記(ハ)の重金属化合物としては、ジル
コニウム、スズ、マンガン、またはニッケルの塩化物、
硝酸塩、または硫酸塩が挙げられる。
【0024】この発明の高温高圧水系用水処理剤におい
て、更に、 (ニ)一般式:H2N(CH2CH2NH)nH (式中、nは2〜5の整数)で表されるポリアミンまた
はその酸付加塩、及び/又は(ホ)炭素数2〜8個のモ
ノアミン、及び/又は(ヘ)モリブデン酸、タングステ
ン酸、若しくは亜硝酸、またはこれらのアルカリ金属
塩、またはこれらのアンモニウム塩を含有するものも好
ましい態様である。
【0025】ここで、上記(ニ)の成分としては、ジエ
チレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエ
チレンペンタミン、若しくはペンタエチレンヘキサミ
ン、またはこれらの鉱酸塩が挙げられ、上記(ホ)の成
分としては、シクロヘキシルアミン、モルホリン、また
は2−アミノ−2−メチルプロパノールが挙げられる。
【0026】
【発明の実施の形態】この発明の発明者らは上記課題を
解決すべく鋭意検討した結果、天然物を微生物醗酵する
ことにより得られる物質を用いれば、ボイラ水系等に生
成するスケールの発生を効率的に防止・抑制し得るこ
と;更に上記物質に、脂肪族オキシカルボン酸類、更に
は所定の重金属化合物を併用すれば、ボイラ水系等に発
生するスケールの発生を効率的に防止・抑制し得るのみ
ならず、ボイラ水系中の鉄系金属表面に強固且つ緻密な
防食性のFe34系黒色被膜が生成されること;当該被
膜の生成により、従来の如く脱酸素剤を全く用いること
なしに防食処理することができ、硬度リークしたボイラ
水系等においても優れた防食効果を発揮し得ることを見
出し、この発明を完成した。
【0027】ここで、「高温高圧水系用水処理剤」と
は、スケール防止作用に加え、防食作用も発揮し得るも
のを意味し、この発明で特定する所定の成分を添加する
ことにより、強固な防食被膜(後記する)が生成される
結果、極めて優れた防食作用を発揮するものである。
尚、この発明では、「スケール防止剤」としては上記
(イ)のみを必須成分として含有し、「高温高圧水系用
水処理剤」では、上記(イ)に加え、(ロ)〜(ヘ)の
成分を適宜添加した構成を採用しているが、この構成か
ら直ちに、「(イ)の成分はスケール防止作用として有
用であり、一方、(ロ)〜(ヘ)の各成分は防食作用と
して有用であり、従って、この発明は、これら成分の相
加作用を狙ったものである」として位置付けられるべき
では決してなく、この発明は、(イ)〜(ヘ)の成分が
相乗的に作用して始めて所望の効果を奏するものである
ことを、後記する実施例からも確認している。
【0028】まず、第1発明のスケール防止剤について
説明する。
【0029】前述した通り、この発明のスケール防止剤
は、上式(1)で示されるポリエンポリカルボン酸また
はそのカルボキシ基における誘導体若しくはそれらの塩
類(以下の記載では便宜上、これらを「式(1)の化合
物」と呼ぶ場合がある)を含有するものである。上式
(1)の化合物のうちnが1〜5の整数でmは1または
2の化合物、若しくはnが0でmは1の化合物は、本発
明者らによって初めて見出された新規な化合物であり、
その製造方法は後記する通りである。尚、nが0で且つ
mが2の化合物は公知であり、例えば、Aldridge, DC e
t al., J.C.S. Perkin I, 1980, 2134 (isol, struct,
nmr)には下式
【0030】
【化5】
【0031】で示されるトリカルボン酸の酸無水物が開
示されており、該化合物はカビの一種であるPaecilomyc
es variotii から得られる旨記載されている。また、他
の文献[Jabbar, A et al., Pharmazie, 1995, 50, 706
(isol, props)]には、同様の化合物をPenicillium sp.
より単離できる旨記載されている。しかしながら、これ
らの文献には、上記化合物がスケール防止剤を有するこ
とまでは全く記載されていない。
【0032】以下の記載では便宜上、上式(1)中、m
=1,n=0であるポリエンポリカルボン酸をR0化合
物;m=2,n=0であるポリエンポリカルボン酸をS
0化合物;m=2,n=1であるポリエンポリカルボン
酸をS1化合物;m=2,n=2であるポリエンポリカ
ルボン酸をS2化合物と略記する。更に、上記のR0化
合物、S0化合物、S1化合物、及びS2化合物におい
て、隣接炭素原子に結合している2個のカルボキシ基が
全て結合して酸無水物基を形成したものを夫々、R0無
水物、S0無水物、S1無水物、及びS2無水物と略記
する。これらの構造式を以下に示す。
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】
【化12】
【0040】
【化13】
【0041】この明細書において、「低級」とは炭素原
子数1〜6個を意味する。
【0042】また、式(1)の化合物には、上式(1)
で示されるポリエンポリカルボン酸の他、そのカルボキ
シ基における誘導体若しくはそれらの塩類が含まれる。
【0043】上記「そのカルボキシ基における誘導体」
としては、上式(1)中のカルボキシ基の一部若しくは
全部が、塩類、無水物、エステル、アミド等である化合
物が挙げられる。また、この誘導体の中には上式(1)
中のカルボキシ基の一部若しくは全部がこれらの組合わ
せである化合物も包含されている。具体的には、上式
(1)中のカルボキシ基の一部がエステルで残りのカル
ボキシ基が無水物であるものが挙げられる。また、上記
「それらの塩類」とは前記誘導体の塩類を意味し、具体
的には、上式(1)中のカルボキシ基の一部が前記誘導
体となり、残りのカルボキシ基が塩類であるものが挙げ
られる。
【0044】ここで、上記「塩類」としては、常用の無
毒性の塩類であれば良く、その種類は特に限定されない
が、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリ
ウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム
塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、有機塩基塩
(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピ
リジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、
N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩等)、アミノ
酸との塩(例えばアルギニン塩、アスパラギン酸塩、グ
ルタミン酸塩等)等が挙げられる。
【0045】また上記「無水物」としては、隣接炭素原
子に結合している2個のカルボキシ基が結合して酸無水
物基を形成したものが挙げられる。この無水物の例を下
記に示す。
【0046】
【化14】
【0047】更に上記「エステル」としてはエステル化
されたカルボキシ基が挙げられ、好適な例としてメチル
エステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプ
ロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステ
ル、第三級ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシ
ルエステル等の低級アルキルエステル等を含むアルキル
エステルが挙げられる。
【0048】また、上記「アミド」としてはアミド化さ
れたカルボキシ基が挙げられ、マレインイミド型に縮合
していても良い。この様な例としては、例えばモノメチ
ルアミド、モノエチルアミド等の低級アルキルアミド;
モノフェニルアミド、モノベンジルアミド、フェネチル
アミド等の様なアリールアミド等が挙げられる。
【0049】上述した「塩類」、「無水物」、「エステ
ル」及び「アミド」は常法により製造することができ
る。
【0050】例えば、上記「無水物」は上式(1)で示
されるポリエンポリカルボン酸を脱水反応に付す等の方
法によって製造することができる。
【0051】また、上記「エステル」は、上式(1)で
示されるポリエンポリカルボン酸をアルコールと反応さ
せたり、該ポリエンポリカルボン酸の酸無水物をエステ
ル化する等の方法によって製造することができる。
【0052】また、上記「アミド」は、上式(1)で示
されるポリエンポリカルボン酸のアンモニウム塩を脱水
反応に付すか、該ポリエンポリカルボン酸のニトリル体
をけん化反応に付すか、該ポリエンポリカルボン酸の酸
無水物やエステル等を用いてアミド化する等の方法によ
って製造することができる。
【0053】上述した式(1)の化合物のうち、S1化
合物及びS2化合物は変異原性試験で陰性を示し、マウ
ス急性毒性試験(経口投与:2.0g/kg)で異常所
見が見られない極めて低毒性で安全な化合物であること
を確認している。
【0054】上記式(1)の化合物は、タラロマイセス
(Talaromyces)属に属する微生物を培地に
培養し、得られた倍溶液を用いることによって製造する
ことができる。以下、この製造方法について説明する。
【0055】まず、上記微生物を培養する方法について
説明する。この微生物の特徴については後述するが、該
微生物は真菌類[俗にカビ(糸状菌)と呼ばれるもの]
に属しているので、その培養に当たってはカビ用培地と
して一般に知られているものを使用でき、炭素源、窒素
源、無機塩類および微量栄養源よりなる培地等が挙げら
れる。このうち炭素源としてはグルコース、キシロー
ス、フラクトース、スクロース、マルトース、デンプ
ン、酸化デンプン、加水分解デンプン等が利用でき、窒
素源としてはコーンスチープリカーなどの天然物;硝酸
ナトリウムなどの無機窒素;ロイシン、リジンなどのア
ミノ酸等が利用できる。また、上記無機塩類としては炭
酸カルシウム、硫酸マグネシウムなどが利用でき、微量
元素としては硫酸鉄等が利用できる。
【0056】尚、使用される培地は液体、固体のいずれ
であっても良く、これらを振とう培養若しくは通気撹拌
培養すれば良い。培養時のpHは3〜8、温度は20〜
40℃の範囲内に調整すれば、有効活性成分を生産性良
く得ることができる。また、培養時間は概ね3〜5日程
度にすることが推奨され、バッチ製造のみならず連続発
酵によっても得られる。
【0057】この様にして得られた培養物を抽出し、単
離、精製することにより式(1)の化合物が得られる。
具体的には、まず上記方法により得られた培養物を、濾
過や遠心分離等によって培養液と菌体に分離し、式
(1)の化合物を含む培養濾液を得る。この培養濾液を
通常の方法により抽出し、単離、精製することにより式
(1)の化合物が得られる。これらの抽出方法、単離、
精製方法は特に限定されず、常用の方法を適宜選択する
ことができる。例えば式(1)の化合物を単離、精製す
るには、上記培養濾液に鉱酸や有機酸等の酸を加える等
の酸処理する方法、イオン交換樹脂、吸着樹脂等による
処理法、透析膜、限外濾過膜、ゲル濾過等の方法などを
採用することができる。
【0058】この様にして得られた化合物を常用の方法
で処理することにより、そのカルボキシ基における誘導
体若しくはそれらの塩類を得る。例えば式(1)の化合
物のエステルやアミド等の誘導体は、上記培養濾液を濃
縮乾固した粗物質に化学反応させてエステルやアミド等
の誘導体とした後、常用の脂溶性物質の精製法に従って
精製すれば得られる。また、これらの誘導体を加水分解
し、式(1)の化合物及びその塩類とすることも可能で
ある。これら一連の工程については、例えば後記する実
施例に記載の方法を参照することができる。
【0059】本発明のスケール防止剤は、従来の技術に
おいて、スケールによる障害が発生し得る水系、特に1
50〜250℃の高温高圧水を用いる各種工業用水系、
例えば地熱発電所の地熱熱水系、ボイラ水系、紙・パル
プ工業の木材蒸解工程において問題となっているスケー
ル、特にカルシウム系スケールの発生防止に有効であ
る。
【0060】この発明に用いる上記化合物の添加量は、
適用する対象の種類等によって適宜好適な範囲を選択し
得るが、通常、ボイラ水系を対象とする場合には、ボイ
ラ給水中に1〜200mg/リットル添加することによ
り有効なスケール防止効果が得られる。
【0061】また、地熱熱水系を対象とする場合には、
地熱熱水輸送管の一部から地熱熱水中の0.1〜200
mg/リットル圧入添加することにより有効なスケール
防止効果が得られる。
【0062】次に、式(1)の化合物を生産し得るタラ
ロマイセス属の微生物について説明する。尚、以下の記
載では、その代表例として本発明者らによって単離され
た糸状菌10092株の特徴を詳述するが、決してこれ
に限定する趣旨ではない。
【0063】上記糸状菌10092株は、鹿児島県指宿
市で採集した土壌から分離されたものである。この菌株
は、各種培地上に広く成育し、黄味白〜薄い黄の色調か
らなる集落を作る。また、培地上には多数のテレオモル
フ(子嚢果)と少量のアナモルフ(分生子構造)を形成
した。このうちテレオモルフは、未分化な菌糸で覆われ
た球形・橙色の子嚢果であり、内部に子嚢が散在してい
た。この子嚢胞子は無色、一細胞、広楕円形であり、赤
道面に隆起が観られた。一方、アナモルフは単独の分生
子形成細胞またはほうき状の分生子柄からなり、形成さ
れる分生子は一細胞、球形で鎖状に連鎖していた。以下
にその菌学的特徴を示す。
【0064】各種寒天培地上の培養性状の結果を表1〜
3に要約する。
【0065】尚、表1のデータは、接種後、25℃で7
日間培養した後に観察したものである。色調は、Methue
n Handbook of Colour(Komerup, A. and J. H. Wansch
er,3rd ed., 525p., Methuen, London, 1978)をもとに
記載した。
【0066】また、表2及び表3のデータは、接種後、
25℃で14日間培養した後に観察したものである。色
調は表1と同様にして観察し、決定した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】これらの表より以下の様に考察できる。
【0071】上記菌株は、酵母エキス添加ツァペック氏
液寒天培地で速やかに培養され、25℃、7日間の培養
後に直径4.7〜5.2cmの円形集落を作った。この
集落の表面は平坦で、フェルト状、放射状の溝を生じて
いた。また、集落の色調は白または黄味白〜薄い黄であ
り、集落裏面は黄味白または灰味黄であった。尚、テレ
オモルフ及びアナモルフは、共に観察されなかった。
【0072】また、麦芽抽出寒天培地で培養すると、上
記寒天培地に比べて一層速やかに集落が得られ、上記と
同一条件下で培養した場合には、集落の大きさは直径
6.2〜7.0cmにまで達した。この集落は円形に広
がり、表面は平坦でフェルト状から粒状を示し、その色
調は白または黄味白〜薄い黄を呈している。また、この
集落裏面は黄〜灰味黄を呈し、黄色の可溶性色素を培地
中に拡散した。尚、上記培地上ではアナモルフが少量形
成された。更に、該麦芽抽出寒天培地上で2週間後まで
培養すると表2に示す通り、集落は8cm以上に広が
り、シャーレの壁面にまで達した。その集落表面は平坦
で、フェルト状から粒状を有し、少量のアナモルフの他
にテレオモルフを豊富に形成した。また、集落の色調は
黄味白〜薄い黄を呈し、その裏面は黄〜灰味黄で、黄色
の可溶性色素を培地中に拡散していた。
【0073】更に上記菌株の形態的特徴について、三浦
・工藤(Miura, K. and M. Kudo:Trans. Mycol. Soc. J
apan, 11:116-118, 1970)によるLCA寒天培地(三浦
培地)上での培養結果を基に決定した。その結果、上記
培地上にはテレオモルフ(子嚢果)とアナモルフ(分生
子構造)が豊富に観察された。
【0074】このうち子嚢果は、表在性で、独立してお
り、球形〜亜球形を有し、直径は最大350μmで、閉
鎖型である。この子嚢果の表面は織り交ざった菌糸網に
覆われており、黄味白〜橙色を示した。上記子嚢果の内
部には、子嚢が散在して形成されており、この子嚢は、
消失性、亜球形〜楕円形を有し、直径が7〜10μm
で、内部に8個の子嚢胞子を生じていた。この子嚢胞子
は無色〜薄い橙を呈し、やや粗面で、一細胞、広楕円形
〜レンズ形を有している。更に該子嚢胞子は一枚の赤道
面隆起を有しており、大きさは3〜4.5×2.5〜3
μmであった。
【0075】一方、分生子構造の形成様式はフィアロ型
で、分生子はフィアライドから連鎖して形成される。こ
のフィアライドは、気中または基底菌糸の分枝として生
じるか、或いはほうき状の分生子柄の先端に3〜5本が
形成される。これらは無色、滑面、ペン先形を有し、大
きさは単生のもので13〜18×1.5〜3.5μm
で、輪生体のもので8〜14×1.5〜3.5μmであ
る。また、分生子は無色、滑面、一細胞で、球形〜広楕
円形または卵形を有し、2〜4(〜5)×2〜3.5μ
mの大きさであった。尚、栄養菌糸は滑面、隔壁を有し
ており、無色で、分枝していた。菌糸細胞は円筒形であ
り、幅は1.5〜6.5μmであったが、厚膜胞子は形
成されなかった。
【0076】上記菌株の至適生育温度について、ポテト
デキストロース寒天培地(日水製薬)を用いて調べたと
ころ、7〜40℃の温度範囲で生育可能であり、最適生
育温度は29〜34℃であることが分かった。
【0077】以上の菌学的特徴を、フォン・アークスに
よる菌類分類基準(J.A. von Arx:The Genera of Fungi
-Sporulating in Pure Culture. 3rd ed., J. Cramer,
Vaduz, 1974)およびピットによるモノグラフ(Pitt,
J.I., The genus Penicilliumand its teleomorphic st
ates Eupenicillium and Talaromyces, Academic Pres
s, London, 1979)と比較すると、上記10092菌株
は不整子嚢菌類のタラロマイセス属(Talaromyces C.
R. Benj. 1955)に属すると考えられた。そこで、この
菌株をタラロマイセス属の一菌株として同定し、タラロ
マイセス・sp.No.10092(Talaromyces sp. N
o.10092)と命名した。尚、この菌株はブダペト条約に基
づく国際寄託機関である工業技術院生命工学工業技術研
究所に寄託番号FERM BP−6250(受託日平成10
年2月9日)として寄託されている。
【0078】次に、第2発明の水系処理剤について説明
する。
【0079】前述した通り、この発明の水系処理剤は、
(イ)上式(1)で示されるポリエンポリカルボン酸ま
たはそのカルボキシ基における誘導体若しくはそれらの
塩類、及び(ロ)水中で脂肪族オキシカルボン酸イオン
を放出し得る化合物を含有するものである。
【0080】このうち(イ)の化合物については、前述
した通りである。
【0081】また、上記(ロ)の具体例としては、クエ
ン酸、グルコン酸、リンゴ酸、若しくはマンノン酸;ま
たはこれらのアルカリ金属塩(クエン酸、グルコン酸、
リンゴ酸、マンノン酸のナトリウム塩;クエン酸、グル
コン酸、リンゴ酸、マンノン酸のカリウム塩等);これ
らのアンモニウム塩(クエン酸、グルコン酸、リンゴ
酸、マンノン酸のアンモニウム塩)の他、グルコノ−δ
−ラクトン等の分子内縮合体が挙げられる。これらは単
独で使用しても良いし、或いは二種以上を併用しても良
い。防食効果を考慮すれば、このなかでも特にクエン
酸、グルコン酸、リンゴ酸、またはこれらのアルカリ金
属塩、またはこれらのアンモニア塩の使用が推奨され、
最も好ましいのはグルコン酸ナトリウムである。
【0082】ここで、上記(イ)及び(ロ)の添加量
は、適用する対象の種類等によって適宜好適な範囲を選
択し得るが、通常、ボイラ水系を対象とする場合には、
ボイラ給水中に、(イ)を1〜200mg/リットル
(より好ましくは10〜100mg/リットル)、
(ロ)を10〜5000mg/リットル(より好ましく
は50〜1000mg/リットル)、夫々添加すること
が好ましい。この様に添加量を制御することにより、ボ
イラ水系に発生するスケールの発生を効率的に防止・抑
制することができるのみならず、ボイラ水系中の鉄系金
属表面に強固で緻密な防食性のFe34系黒色被膜が形
成され、鉄系金属の腐食が抑制されるのである。
【0083】上記態様は、特に、ボイラ水に純水を使用
した場合に有効であり、上記(イ)及び(ロ)の成分を
添加するだけで、スケール防止のみならず、水と接触す
る鉄系金属の腐食を効果的に防止することができる。
【0084】更に、この発明の水系処理剤には、上記
(イ)及び(ロ)の成分に加え、(ハ):水中でジルコ
ニウムイオン、スズイオン、マンガンイオンまたはニッ
ケルイオンを放出し得る重金属化合物を含有するものも
包含される。
【0085】上記(ハ)の重金属化合物としては、ジル
コニウム、スズ、マンガン、またはニッケルの塩化物、
硝酸塩、または硫酸塩が挙げられる。具体的には、塩化
ジルコニウム、塩化第一スズ、塩化第二スズ、塩化マン
ガン、塩化ニッケル、硫酸ジルコニウム、硫酸第一ス
ズ、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、硝酸ジルコニウム、
硝酸第二スズ、硝酸マンガン、硝酸ニッケル等が例示さ
れる。その他、ジルコニウム、スズ、マンガン、または
ニッケルのオキシ塩化物(例えば塩化ジルコニル、硝酸
ジルコニル等)も上記(ハ)の重金属化合物として例示
される。防食効果を考慮すると、特に塩化第一スズ、塩
化第二スズ、硫酸第一スズの使用が推奨される。
【0086】これら(イ)〜(ハ)の各成分は、同時に
または別々に添加しても良いが、好ましくは、上記三成
分を含む一液水溶液を調整して使用することが推奨され
る。
【0087】ここで、上記(イ)、(ロ)及び(ハ)の
添加量は、適用する対象の種類等によって適宜好適な範
囲を選択し得るが、通常、ボイラ水系を対象とする場合
には、ボイラ給水中に、(イ)を1〜200mg/リッ
トル(より好ましくは10mg/リットル以上、100
mg/リットル以下)、(ロ)を10〜5000mg/
リットル(より好ましくは50mg/リットル以上、1
000mg/リットル以下)、(ハ)を0.1〜50mg
/リットル(より好ましくは0.1mg/リットル以
上、20mg/リットル以下)、夫々添加することが好
ましい。この様に添加量を制御することにより、ボイラ
水系に発生するスケールの発生を効率的に防止・抑制す
ることができるのみならず、ボイラ水系中の鉄系金属表
面に強固で緻密な防食性のFe34系黒色被膜が形成さ
れ、鉄系金属の腐食が抑制されるのである。尚、このう
ち(ロ)成分の添加量は、金属イオン換算量で示してい
る。
【0088】上記(イ)〜(ハ)の三成分を含む態様
は、例えばボイラ水に純水及び軟水を使用した場合に有
効である。
【0089】更にこの発明では、上記(イ)〜(ハ)の
三成分に加え、 (ニ)一般式:H2N(CH2CH2NH)nH(式中、n
は2〜5の整数)で表されるポリアミンまたはその酸付
加塩、及び/又は(ホ)炭素数2〜8個のモノアミン、
及び/又は(ヘ)モリブデン酸、タングステン酸、若し
くは亜硝酸、またはこれらのアルカリ金属塩、またはこ
れらのアンモニウム塩を含有するものも発明の範囲内に
包含される。
【0090】このうち上記(ニ)の具体例としては、ジ
エチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラ
エチレンペンタミン、若しくはペンタエチレンヘキサミ
ン、またはこれらの鉱酸塩(塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩
等)が挙げられ、ジエチレントリアミンの塩酸塩、トリ
エチレンテトラミンの塩酸塩、テトラエチレンペンタミ
ンの塩酸塩、ペンタエチレンヘキサミンの塩酸塩、ジエ
チレントリアミンの硝酸塩、トリエチレンテトラミンの
硝酸塩、テトラエチレンペンタミンの硝酸塩、ペンタエ
チレンヘキサミンの硝酸塩、ジエチレントリアミンの硫
酸塩、トリエチレンテトラミンの硫酸塩、テトラエチレ
ンペンタミンの硫酸塩、ペンタエチレンヘキサミンの硫
酸塩等が例示される。これらの成分は、単独で使用して
も良いし、或いは、二種類以上併用しても良い。
【0091】また、上記(ホ)の化合物としては、要す
るに炭素数2〜8個のモノアミンであれば脂肪族、芳香
族の別を問わず、第一級アミン、第二級アミン、第三級
アミンの種々のアミンが包含される。炭素数が9個以上
のアミンでは塩基性が低下し、金属に対する作用が低く
なると共に発泡性も若干生じる様になる。一方、炭素数
が2個未満のモノアミンは沸点が低く、製剤上問題があ
る。具体的には、プロピルアミン、ブチルアミン、ペン
チルアミン、ヘプチルアミン、イソオクチルアミン、ジ
エチルアミン、トリエチルアミン、ジプロピルアミン、
イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン等の1級、
2級又は3級モノアミン類;シクロヘキシルアミン、モ
ルホリン、ピペリジン、ピペコリン等の環式モノアミン
類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロ
パノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−メト
キシプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロ
パノール等のアルカノールモノアミン類等が挙げられ
る。安全性等を考慮すれば、なかでもシクロヘキシルア
ミン、モルホリン、2−アミノ−2−メチルプロパノー
ルの使用が特に推奨される。
【0092】また、上記(ヘ)の成分は、酸化型の防食
性成分として共通する化合物であり、モリブデン酸、タ
ングステン酸、亜硝酸、またはこれらのアルカリ金属塩
(モリブデン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウ
ム、亜硝酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、タング
ステン酸カリウム、亜硝酸カリウム等)、これらのアン
モニウム塩(モリブデン酸アンモニウム、タングステン
酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム)を、単独で使用
しても良いし、二種以上併用しても良い。防食効果を考
慮すれば、なかでもモリブデン酸またはそのアルカリ金
属塩若しくはアンモニウム塩の使用が推奨される。
【0093】ここで、上記(ニ)、(ホ)及び(ヘ)の
添加量は、適用する対象の種類等によって適宜好適な範
囲を選択し得るが、通常、ボイラ水系を対象とする場合
には、ボイラ給水中に、(ニ)を20〜5000mg/リ
ットル(より好ましくは50mg/リットル以上、500
0mg/リットル以下)、(ホ)を0.1〜100mg/リ
ットル(より好ましくは0.1mg/リットル以上、5
0mg/リットル以下)、(ヘ)を1〜100mg/リ
ットル(より好ましくは2.5mg/リットル以上、1
00mg/リットル以下)、夫々添加することが好まし
い。この様に添加量を制御することにより、特に軟水ボ
イラ水系中の鉄系金属表面に強固で緻密な防食性被膜が
形成される。この被膜は、四三酸化鉄よりなるものであ
ることを確認しており、その形状は、非常に緻密で欠落
部分がなく、一様な膜厚を有するものである。更に、こ
の四三酸化鉄被膜は、母材(鉄材)の表層にまで達して
いることも確認している。上記態様によれば、この様な
緻密な四三酸化鉄被膜が母材表層にまで生成されている
ため、ボイラ水中に存在するアニオンのみならず溶存酵
素の影響を受けることなく腐食防止作用を発揮すること
ができ、従来の方法では不可欠であった脱酸素剤の添加
を不要となる等の利点を奏する点で非常に意義深いもの
である。尚、腐食防止に極めて有用な上記防食皮膜の形
成を考慮すれば、上記(ニ)〜(ヘ)成分のうち、特に
(ニ)及び/又は(ホ)の成分を含有する態様の使用が
推奨される。
【0094】これら(イ)〜(ヘ)の各成分は、同時に
又は別々に添加しても良いが、好ましくは、上記(イ)
〜(ヘ)の6成分、または(イ)〜(ハ)に(ニ)及び
/又は(ホ)を添加した4〜5成分を含む一液水溶液を
調整して使用することが推奨される。
【0095】尚、この発明の高温高圧水系用水処理剤
を、特に軟水ボイラ用高温高圧水系用水処理剤として使
用するためには、上記(イ)〜(ヘ)の配合比率を、前
記添加比率に対応させておくことが推奨され、通常、
(イ)〜(ヘ)成分の合計量を100重量部とした場
合、(イ)成分を1〜15重量部、(ロ)成分を5〜3
0重量部、(ハ)成分を0.1〜5重量部(金属イオン
換算値)、(ニ)成分を0〜30重量部、(ホ)成分を
0〜15重量部、(ヘ)成分を0〜10重量部の範囲と
なる様制御することが好ましい。
【0096】また、この発明の高温高圧水系用水処理剤
を一液水溶液として調製するに当たり、その混合順序は
特に限定されないが、好ましくは、上記(イ)、
(ロ)、(ニ)、(ホ)、(ヘ)の各成分を水に溶解さ
せた後、(イ)を添加し、撹拌して混合することが推奨
される。
【0097】尚、この発明の高温高圧水系用水処理剤
は、上記成分を必須成分として含有するものであり、そ
の他、この発明の作用を損なわない範囲で、高温高圧水
系用水処理剤に通常使用される種々の添加剤を更に添加
しても構わない。この発明に用いられる添加剤として
は、例えばpH調整剤、通常使用される他の防食成分
(リン酸、重合リン酸、ホスホン酸等)やスケール防止
成分が挙げられる。
【0098】このうち、pH調整剤としては水酸化ナト
リウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩;ア
ンモニア等が挙げられる。これらのpH調整剤は、軟水
ボイラ等の添加対象の至適pHに応じて任意に添加され
る。尚、系内に銅やアルミニウム系金属が存在する場合
には、アンモニアの添加は避けるべきである。
【0099】この発明のスケール防止剤及び高温高圧水
系用水処理剤は、特に純水及び軟水ボイラ水系用に好適
に使用される。ここで、「純水及び軟水ボイラ系」と
は、純水及び軟水ボイラの装置系であって、提供される
ボイラ水が存在する系、循環する系を意味する。また、
「ボイラ水」とは、純水及び軟水ボイラの供給水に使用
される水を意味し、基本的に純水及び軟水、並びにこれ
らの濃縮水が対象となるが、前述した如く、硬度リーク
したもの(例えば、硬度成分が全硬度として20〜40
0mg程度まで混入したもの)も包含される。この発明
は、とりわけ、硬度がリークした場合のスケール防止
剤、高温高圧水系用水処理剤として極めて有効である。
【0100】以下、実施例に基づいてこの発明を詳細に
述べる。ただし、下記実施例はこの発明を制限するもの
ではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施
することは全てこの発明の技術範囲に包含される。
【0101】
【実施例】1.この発明に用いる式(1)の化合物の調
まず、以下の要領で、この実施例に用いる式(1)の化
合物であるS1化合物のペンタナトリウム塩及びS2化
合物のヘプタナトリウム塩を調製した。
【0102】(1)糸状菌10092菌株の培養方法
(通気撹拌培養法) 前培養1 225mL容フラスコ中に下記組成からなる培地1(6
0mL)を入れ、スラントより種菌を植菌した後、25
℃で3日間培養する。 [培地1の組成] グリセリン2% シュークロース2% ファーマメディア2% 乾燥酵母 1% ペプトン 1% KH2PO4 0.1% Tween 80 0.1%
【0103】前培養2 500mL容フラスコ中に下記組成からなる培地2(1
40mL)を入れた後、上記の前培養1で得られた菌液
(2.4mL)を植菌し、25℃で3日間培養する。 [培地2の組成] コーンスターチ 3% コーンスチープリカー3% CaCO3 0.2% NaOHでpH7に調整
【0104】本培養 30L容ジャー中に上記培地2(24L)を入れた後、
滅菌してから、前培養2の菌液(480mL)を加え、
毎分20Lの無菌空気を吹込みながら300回転で撹拌
しつつ25℃で4日間培養した。培養後の液中に濾過助
剤(昭和化学製「ラジオライト」:食品添加物用濾過
材,けいそう土)を加え、濾過プレス(東京エンジニア
リング製「TFP−6−12型フィルタープレス」)を
用いて濾液と菌体に分けた。その結果、30L容ジャー
3基から濾液(40L:乾燥固形分1.7%)を得た。
【0105】(2)培養濾液からの精製・単離上記方法
で得られた培養濾液(5.1L)をpH=3に調整した
後、酢酸エチル(7.6L)で抽出した。得られた抽出
液を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留
去すると茶色透明の油状物質(37g)が得られた。
【0106】この油状物質を下記条件に従ってHPLC
で分取すると、S1無水物の前溶出画分、S1無水物及
びS2無水物を含む溶出画分とに分離した。 [HPLC分取条件] カラム :直径50mm,長さ250mmのYMC製 ODSカラム カラム温度:室温 移動相 :アセトニトリル:リン酸緩衝液=6:4
(リン酸緩衝液の組成:KH2PO46.53g,H3
41.18g,水3L) 流速 :50mL/min 検出 :UV210nm
【0107】次いで、上記S1無水物の前溶出画分、S
1無水物及びS2無水物を含む溶出画分について、アセ
トニトリルを減圧留去した後、得られた水層から酢酸エ
チルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、酢酸エ
チルを減圧留去すると、S1無水物の前溶出画分(3.9
g)、S1無水物(7.7g)及びS2無水物(13.
7g)が得られた。
【0108】この様にして単離されたS1無水物及びS
2無水物のうち、S1無水物(206mg)、S2無水
物(199mg)を夫々水(100mL)中に懸濁させ
た後、該懸濁液の液性がpH=7になるまで撹拌しなが
ら0.1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下して中和、溶
解させてから、該溶液を減圧下に濃縮乾固することによ
り、粉末状のS1化合物のペンタナトリウム塩(304
mg)及びS2化合物のヘプタナトリウム塩(290m
g)を夫々得た。これらの性状及び機器分析データは以
下の通りである。
【0109】S1化合物のペンタナトリウム塩の性状
及び機器分析データ a)性状:無色の粉末状物質 b)赤外線吸収スペクトル(nujol,NaCl
板):νmax:3700〜2600,2960,166
0,1630,1560,1400cm-1 c)1H−NMRスペクトル(重水中): δ(積分値,多重度):6.38(1H,d,J=1
5.8Hz),5.87(1H,dt,J=15.8,
6.6Hz),2.54〜2.10(10H,m),1.
53(1H,m),1.33(2H,m),1.00(3
H,t,J=7.4Hz),0.86(3H,t,J=
7.0Hz)ppm d)13C−NMRスペクトル(重水中): δ(多重度):185.5(s),182.0(s),
181.8(s),181.7(s),180.8
(s),143.0(s),141.0(d),14
0.4(s),139.8(s),135.2(s),
126.6(d),41.3(d),39.1(t),
36.4(t),35.3(t),29.7(t),2
8.8(t),27.4(t),15.7(q),1
2.9(q)ppm
【0110】S2化合物のヘプタナトリウム塩の性状
及び機器分析データ a)性状 :無色の粉末状物質 b)赤外線吸収スペクトル(nujol,NaCl
板):νmax:3700〜2600,2960,166
0,1630,1565,1400cm-1 c)1H−NMRスペクトル(重水中): δ(積分値,多重度): 6.38(1H,d,J=15.8Hz),5.86(1
H,dt,J=15.8,6.7Hz),2.53〜
2.19(14H,m),1.60〜1.18(6H,
m),1.01(3H,t,J=6.4Hz),0.8
6(3H,t,J=7.0Hz),0.84(3H,
t,J=7.0Hz)ppm d)13C−NMRスペクトル(重水中): δ(多重度):185.4(s),182.3(2C:
s),181.9(2C:s),181.7(s),1
81.0(s),142.7(s),140.9
(d),140.8(s),140.7(s),14
0.1(s),140.0(s),135.4(s),
126.6(d),41.4(d),40.6(d),
39.1(t),37.1(2C:t),36.4
(t),35.3(t),29.6(t),28.8
(t),27.1(2C:t),15.8(q),1
2.9(q),12.8(q)ppm
【0111】2.製造実施例 この発明の製造実施例を以下に示す。各成分を以下の配
合割合で添加し、水を加えて合計100重量部とした。
尚、高温高圧水系用水処理剤の製造実施例において、
「式(1)の化合物」とは、上記方法で得られたS1化
合物のペンタナトリウム塩及びS2化合物のヘプタナト
リウム塩を夫々、14:11の重量比率で混合したもの
である。
【0112】2−1.スケール防止剤の製造実施例(1) 上記方法で得られたS1化合物のペンタナトリウム塩:
28重量部 上記方法で得られたS2化合物のヘプタナトリウム塩:
22重量部2−1.スケール防止剤の製造実施例(2) 上記方法で得られたS1化合物のペンタナトリウム塩:
50重量部2−1.スケール防止剤の製造実施例(3) 上記方法で得られたS2化合物のヘプタナトリウム塩:
50重量部2−2.高温高圧水系用水処理剤の製造実施例(1) グルコン酸ナトリウム :20重量部 塩化第一錫・二水塩 : 1重量部 式(1)の化合物 : 2重量部 水酸化カリウム :14重量部 水に、グルコン酸ナトリウム、式(1)の化合物、pH
調整剤である水酸化カリウムを加えて溶解した後、塩化
第一錫・二水塩を加えて混合撹拌し、一液型軟水ボイラ
用高温高圧水系用水処理剤を得た。
【0113】2−2.高温高圧水系用水処理剤の製造実施例(2) グルコン酸ナトリウム :30重量部 塩化第一錫・二水塩 : 1重量部 式(1)の化合物 : 2重量部 水酸化カリウム :14重量部 水に、グルコン酸ナトリウム、式(1)の化合物、pH
調整剤である水酸化カリウムを加えて溶解した後、塩化
第一錫・二水塩を加えて混合撹拌し、一液型軟水ボイラ
用高温高圧水系用水処理剤を得た。
【0114】2−2.高温高圧水系用水処理剤の製造実施例(3) グルコン酸ナトリウム :20重量部 塩化第一錫・二水塩 : 1重量部 式(1)の化合物 : 4重量部 水酸化カリウム :14重量部 水に、グルコン酸ナトリウム、式(1)の化合物、pH
調整剤である水酸化カリウムを加えて溶解した後、塩化
第一錫・二水塩を加えて混合撹拌し、一液型軟水ボイラ
用高温高圧水系用水処理剤を得た。
【0115】2−2.高温高圧水系用水処理剤の製造実施例(4) リンゴ酸 :15重量部 塩化第一錫・二水塩 : 1重量部 式(1)の化合物 : 2重量部 水酸化カリウム :14重量部 水に、リンゴ酸、式(1)の化合物、pH調整剤である
水酸化カリウムを加えて溶解した後、塩化第一錫・二水
塩を加えて混合撹拌し、一液型軟水ボイラ用高温高圧水
系用水処理剤を得た。
【0116】2−2.高温高圧水系用水処理剤の製造実施例(5) グルコン酸ナトリウム :20重量部 塩化第一錫・二水塩 : 1重量部 式(1)の化合物 : 2重量部 水酸化カリウム :14重量部 モリブデン酸ナトリウム・二水塩: 1重量部 2-アミノ-2-メチル-1-フ゜ロハ゜ノール : 5重量部 水に、グルコン酸ナトリウム及び水酸化カリウムを溶解
した後、塩化第一錫・二水塩を加え、次いで、式(1)
の化合物、モリブデン酸ナトリウム・二水塩、2−アミ
ノ−2−メチル−1−プロパノールを加えて混合撹拌
し、一液型軟水ボイラ用高温高圧水系用水処理剤を得
た。
【0117】2−2.高温高圧水系用水処理剤の製造実施例(6) グルコン酸ナトリウム :20重量部 式(1)の化合物 : 2重量部 水酸化ナトリウム : 1重量部 水に、グルコン酸ナトリウム、式(1)の化合物、及び
水酸化ナトリウムを加えて混合撹拌し、一液型純水ボイ
ラ用高温高圧水系用水処理剤を得た。
【0118】2−2.高温高圧水系用水処理剤の製造比較例(1) グルコン酸ナトリウム :20重量部 塩化第一錫・二水塩 : 1重量部 水酸化カリウム :14重量部 水に、グルコン酸ナトリウム及び水酸化カリウムを溶解
した後、塩化第一錫・二水塩を加えて混合撹拌し、一液
型軟水ボイラ用高温高圧水系用水処理剤を得た。
【0119】2−2.高温高圧水系用水処理剤の製造比較例(2) グルコン酸ナトリウム :20重量部 塩化第一錫・二水塩 : 1重量部 ポリアクリル酸ナトリウム : 5重量部(分子量
5000〜8000) 水酸化カリウム :14重量部 水に、グルコン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウ
ム、及び水酸化カリウムを溶解した後、塩化第一錫・二
水塩を加えて混合撹拌し、一液型軟水ボイラ用高温高圧
水系用水処理剤を得た。
【0120】3.実施例1:高温高圧下におけるスケー
ル防止効果確認試験(1) 撹拌はねを付したオートクレーブにヒータ鞘管を挿入
し、高温高圧水系における本発明スケール防止剤の効果
を確認した。具体的には、M−アルカリ度が200mg
/リットル(CaCO3換算値)、カルシウム硬度が6
0mg/リットル(CaCO3換算値)、pH7.3の
合成試験水に、下記表4に示す薬剤を添加し、ヒータ鞘
管を加熱して試験水温を室温から183℃(1MPa)
に上昇させた。試験終了後、ヒータ鞘管に付着したスケ
ールの重量(mg)を測定した。得られた結果を表4に
併記する。
【0121】
【表4】
【0122】この結果より、この発明のスケール防止剤
を用いれば、比較例に比べ、優れたスケール防止効果が
得られることが分かる。このスケール防止効果は、式
(1)の化合物を単独で用いるよりも2種併用した方
が、一層顕著に見られることも分かる。尚、スケール付
着状況の外観を観察したところ、この発明のスケール防
止剤は比較例に比べ、付着ムラが少なく、局部腐食が発
生し難いことも確認された。
【0123】4.実施例2:高温高圧下におけるスケー
ル防止効果確認試験(2) 製造実施例(1)〜(4)、及び製造比較例(1)、
(2)を用い、上記実施例1と同様にして高温高圧水系
における各薬剤の効果を調べた。これらの結果を表5に
記載する。尚、試験水への各薬剤の添加量は1000m
g/リットルである。
【0124】
【表5】
【0125】この結果より、この発明の高温高圧水系用
水処理剤を用いれば、式(1)の化合物を含有しない製
造比較例に比べ、優れたスケール防止効果が得られるこ
とが分かる。
【0126】5.実施例3:高温高圧下における軟化水
の防食効果確認試験 撹拌棒にテストピースを取付けたオートクレーブを用
い、高温高圧水系における各薬剤の防食効果を調べた。
この実施例に用いた高温高圧水系用水処理剤は、上記製
造実施例(1)〜(5)の各薬剤である。
【0127】具体的にはまず、大阪市軟化水(水質の組
成を表6に示す)の10倍濃縮水8000ミリリットル
に各種薬剤1000mg/リットルを添加し、オートク
レーブに仕込んだ。次いで、軟鋼テストピース(市販品
名「SPCC」,テストピースの形状は30×50×1
mm)を撹拌棒に吊し、モーターと連動させて液中に浸
漬した後、100rpmで回転させた。このオートクレ
ーブを密閉した後、撹拌しながら1.5MPa(約20
0℃)の加圧条件下、48時間試験を行った。試験終了
後、テストピースの腐食減量(mg)を求め、生じた孔
食(ピッチング)の有無、及びテストピース表面の防食
被膜の有無を肉眼で観察した。これらの試験結果を表7
に示す。
【0128】
【表6】
【0129】
【表7】
【0130】これらの結果より、この発明の高温高圧水
系用水処理剤を用いた場合には、強固な防食被膜が生成
されるため、腐食減量も少なく、孔食も発生せず、優れ
た防食能を有することが分かる。なかでも製造実施例
(5)の高温高圧水系用水処理剤を用いた場合には、極
めて強固な防食被膜が形成され、酸(15%塩酸)で洗
浄後も該被膜が依然として残っていた。
【0131】6.実施例4:高温高圧下における純水ボ
イラの防食効果確認試験 撹拌棒にテストピースを取付けたオートクレーブを用
い、高温高圧水系における薬剤の防食効果を調べた。こ
の実施例に用いた高温高圧水系用水処理剤は、上記製造
実施例(6)の薬剤である。
【0132】具体的にはまず、純水1500ミリリット
ルに上記薬剤1000mg/リットルを添加し、オート
クレーブに仕込んだ。次いで、軟鋼テストピース(市販
品名「SPCC」,テストピースの形状は30×50×
1mm)を撹拌棒に吊し、モーターと連動させて液中に
浸漬した後、100rpmで回転させた。このオートク
レーブを密閉した後、撹拌しながら2.0MPa(約2
14℃)の加圧条件下、72時間試験を行った。試験終
了後、テストピースの腐食減量(mg)を求め、生じた
孔食(ピッチング)の有無、及びテストピース表面の防
食被膜の有無を肉眼で観察した。
【0133】その結果、テストピースの腐食減量は1.
2mgであり、孔食は認められなかった。また、酸洗後
も酸洗前と同様の強固な防食被膜が形成されていること
が確認された。
【0134】
【発明の効果】この発明は上記の様に構成されているの
で、人体や環境面に対する安全性が高く、特に高温高圧
下でスケール防止効果を発揮し得るスケール防止剤;更
には、ヒドラジン等の脱酸素剤やリン酸系防食剤を使用
することなく、特に純水及び軟水ボイラにおけるスケー
ル防止と腐食抑制を兼ね備えた高温高圧水系用水処理剤
を提供することができた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大内 通秀 大阪府吹田市春日二丁目25−1−602 (72)発明者 大谷 武之 滋賀県大津市北大路三丁目2−5

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下式(1) 【化1】 (式中、nは0〜5の整数、mは1または2の整数を夫
    々意味する。)で示されるポリエンポリカルボン酸また
    はそのカルボキシ基における誘導体若しくはそれらの塩
    類を含有することを特徴とするスケール防止剤。
  2. 【請求項2】 上式(1)中、m=2,n=0であるポ
    リエンポリカルボン酸またはそのカルボキシ基における
    誘導体若しくはそれらの塩類を含有する請求項1に記載
    のスケール防止剤。
  3. 【請求項3】 上式(1)中、m=2,n=1であるポ
    リエンポリカルボン酸またはそのカルボキシ基における
    誘導体若しくはそれらの塩類を含有する請求項1に記載
    のスケール防止剤。
  4. 【請求項4】 上式(1)中、m=2,n=2であるポ
    リエンポリカルボン酸またはそのカルボキシ基における
    誘導体若しくはそれらの塩類を含有する請求項1に記載
    のスケール防止剤。
  5. 【請求項5】(イ)下式(1) 【化2】 (式中、nは0〜5の整数、mは1または2の整数を夫
    々意味する。)で示されるポリエンポリカルボン酸また
    はそのカルボキシ基における誘導体若しくはそれらの塩
    類、及び(ロ)水中で脂肪族オキシカルボン酸イオンを
    放出し得る化合物を含有することを特徴とする高温高圧
    水系用水処理剤。
  6. 【請求項6】 上式(1)中、m=2,n=0であるポ
    リエンポリカルボン酸またはそのカルボキシ基における
    誘導体若しくはそれらの塩類を含有する請求項5に記載
    の高温高圧水系用水処理剤。
  7. 【請求項7】 上式(1)中、m=2,n=1であるポ
    リエンポリカルボン酸またはそのカルボキシ基における
    誘導体若しくはそれらの塩類を含有する請求項5に記載
    の高温高圧水系用水処理剤。
  8. 【請求項8】 上式(1)中、m=2,n=2であるポ
    リエンポリカルボン酸またはそのカルボキシ基における
    誘導体若しくはそれらの塩類を含有する請求項5に記載
    の高温高圧水系用水処理剤。
  9. 【請求項9】 前記(ロ)の水中で脂肪族オキシカルボ
    ン酸イオンを放出し得る化合物は、クエン酸、グルコン
    酸、リンゴ酸、若しくはマンノン酸、またはこれらのア
    ルカリ金属塩またはアンモニウム塩;及びグルコノ−δ
    −ラクトンよりなる群から選択される少なくとも一種の
    化合物である請求項5〜8のいずれかに記載の高温高圧
    水系用水処理剤。
  10. 【請求項10】 更に、 (ハ)水中でジルコニウムイオン、スズイオン、マンガ
    ンイオンまたはニッケルイオンを放出し得る重金属化合
    物を含有するものである請求項5〜9のいずれかに記載
    の高温高圧水系用水処理剤。
  11. 【請求項11】 前記(ハ)の重金属化合物は、ジルコ
    ニウム、スズ、マンガン、またはニッケルの塩化物、硝
    酸塩、または硫酸塩である請求項10に記載の高温高圧
    水系用水処理剤。
  12. 【請求項12】 更に、 (ニ)一般式:H2N(CH2CH2NH)nH (式中、nは2〜5の整数)で表されるポリアミンまた
    はその酸付加塩、及び/又は(ホ)炭素数2〜8個のモ
    ノアミン、及び/又は(ヘ)モリブデン酸、タングステ
    ン酸、若しくは亜硝酸、またはこれらのアルカリ金属
    塩、またはこれらのアンモニウム塩を含有する請求項5
    〜11のいずれかに記載の高温高圧水系用水処理剤。
  13. 【請求項13】 前記(ニ)の成分は、ジエチレントリ
    アミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペン
    タミン、若しくはペンタエチレンヘキサミン、またはこ
    れらの鉱酸塩である請求項12に記載の高温高圧水系用
    水処理剤。
  14. 【請求項14】 前記(ホ)の成分は、シクロヘキシル
    アミン、モルホリン、または2−アミノ−2−メチルプ
    ロパノールである請求項12または13に記載の高温高
    圧水系用水処理剤。
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