JP2001064531A - アントシアニン色素の界面活性剤による安定化 - Google Patents

アントシアニン色素の界面活性剤による安定化

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anthocyanin
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Hirotoshi Tamura
啓敏 田村
Kohei Shiomi
康平 塩見
Nobuhiro Ito
伸浩 伊藤
Hirotsugu Kato
洋次 加藤
Mikinori Asano
幹則 浅野
Takeshi Nakajo
武 中條
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Taisho Technos Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】フラボノイド類の一種であるアントシアニン色
素を弱酸性条件下に於いて安定化する方法を提供する。 【構成】アントシアニン色素にグリセリン脂肪酸エステ
ル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステ
ル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコ
ール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ア
ルキル硫酸ナトリウム、大豆リン脂質、リゾレシチン及
びコンドロイチン硫酸(塩)から成る群から選択される
1種又は2種の界面活性剤をその限界ミセル濃度以上添
加することを構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フラボノイド類の一種
であるアントシアニン色素の安定化に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】我々の周りに存在する植物色素は、構造
上カロテノイド系の色素、フラボノイド系の色素、ベタ
シアニン系の色素などに分けることができる。一般に、
天然に存在するこれらの色素を抽出し利用しようとした
場合に、個々の色素が持っている弱点、例えば 1)p
Hにより色調が変化する、2)耐熱性が弱い、3)耐光
性が弱い、4)染着性が悪い、5)食品の成分(タンパ
ク質など)の存在で色調が変化する、6)金属塩の存在
で色調が変化する、7)pHにより沈澱を形成する、
8)食塩の存在により沈澱を形成する等の問題があり、
これらの問題のため使用に際しては多くの制約を受ける
ことになる。
【0003】フラボノイド類の一種であるアントシアニ
ン色素は赤、紫、紫黒色などを呈する花や果実の色、ハ
ツカダイコンの根の色、紫ジソ、赤キャベツ、紅葉した
モミジの色などの原因となっている色素である。このア
ントシアニン色素は、他の植物色素と比べ、色調が不安
定で食品や医薬品の着色として用いられる範囲もかなり
制約をうけている。特に添加する対象物のpHの影響を
強く受けるため、対象物のpHは4以下、好ましくは3
以下であることが使用に際しての条件となっていた。
【0004】アントシアニン色素自身が安定化する機構
に関しては、金属錯体説、自己会合、異分子間のコピグ
メンテーション、及び芳香族アシル基によるサンドイッ
チ型の分子内スタッキングなどが知られており、アント
シアニン色素の安定化が悪いという欠点を解決するため
に、多くの方法が検討されている。例えば酸化防止剤を
添加する方法や、他のフラボノイド系の化合物を混合す
る方法やサイクロデキストリンによる包接などが提案さ
れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】提案されている方法で
アントシアニン色素の安定化を試みた場合に、酸化防止
剤を添加する方法では、酸化防止剤の種類によっては逆
効果を示すものがあり、例えばL−アスコルビン酸では
添加目的とは逆に退色を早めることがある。また、フラ
ボノイド系の化合物は一般に黄色い色を有しており、ア
ントシアニン色素の色調そのものを変えてしまうという
欠点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記した
課題を解決すべく鋭意努力して実験を重ねた結果、アン
トシアニン色素にある種の界面活性剤を混合することに
よって、従来アントシアニン色素の安定性が非常に悪く
使用できなかった弱酸性領域に於いて、色素の安定性を
大幅に向上することを見いだすに至ったのである。
【0007】即ち、アントシアニン色素にグリセリン脂
肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪
酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレ
ングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシ
ウム、アルキル硫酸ナトリウム、大豆リン脂質、リゾレ
シチン及びコンドロイチン硫酸(塩)から成る群から選
択される1種又は2種の界面活性剤をその限界ミセル濃
度以上添加することによって、アントシアニン色素の安
定性を向上させることが可能になったのである。
【0008】本発明を実施するための界面活性剤の添加
方法は、予めアントシアニン色素と界面活性剤を混合し
てから食品、化粧品及び医薬品などの対象物に混合する
方法やアントシアニン色素と界面活性剤を別々に対象物
に混合する方法も何れの方法を用いても良い。
【0009】本発明において使用する界面活性剤は、グ
リセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソル
ビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル
の脂肪酸側鎖は特に限定されるものではない。また、ア
ルキル硫酸ナトリウム及び大豆リン脂質、リゾレシチ
ン、コンドロイチン硫酸(塩)のアルキル鎖も特に限定
されるものではない。
【0010】本発明において使用するアントシアニン色
素は、主に食品用の色素を指し、その中には赤キャベツ
色素、ブドウ果皮色素、ブドウ果汁色素、エルダーベリ
ー色素、ブラックカーラント色素、ストロベリー色素、
ハイビスカス色素、シソ色素、赤ダイコン色素、ムラサ
キトウモロコシ色素等が含まれる。
【実施例】
【0011】以下に実施例を挙げて説明するが、本発明
は、以下の実施例に制約されるものではない。
【0012】(マスカット・ベリーA果皮からの粗色素
の抽出)冷凍保存してあったマスカット・ベリーA果皮
1527gから、抽出溶媒(1%TFA−50%メタノ
ール水溶液2L)で一晩抽出した。これをガーゼで濾過
した後、残しょうにさらに1Lの抽出溶媒を入れ、さら
に一晩抽出を行い、色素抽出液4.4Lを得た。メタノ
ールを留去するためにロータリーエバポレーターで98
0mlまで濃縮した。この濃縮液をアンバーライトXA
D−7を充填したカラムに吸着させた。吸着後、0.5
%TFA水溶液を流し、カラムに吸着しない糖や蛋白質
などの極性成分を除去した。その後、0.5%TFA−
80%メタノール水溶液、05%TFA−100%メタ
ノールの順に流し、流出したフラクションをロータリー
エバポレーターで、減圧濃縮乾固した後真空乾燥し、1
%塩酸−メタノールで溶解した。これにジエチルエーテ
ルを少しずつ加え混和し色素を沈殿させ、冷却後遠心分
離(2500rpm、10分間)した。沈殿物として得
られた粗色素は、真空デシケーター内で二晩乾燥させ、
7.4gの粗色素を得た。分離したマスカット・ベリー
A果皮粗色素の高速液体クロマトグラフィーによるクロ
マトグラムは、既に報告されているマスカット・ベリー
A果皮色素のクロマトグラムと比較し、4種類のマルビ
ジン系アントシアニン色素を確認した。
【0012】(粗色素から構造の違う4種類のアントシ
アニン色素の抽出)得られた粗色素5gをODS De
verosil 10〜20μを充填したガラスカラム
を用いた中圧液体クロマトグラフィー及びODS De
verosil 5μを充填したステンレスカラムを用
いた高速液体クロマトグラフィーを用い単離精製し、M
alvidin 3−glcoside(以下Mv3G
lcと略す)、Malvidin 3−0−(6−p−
coumaroylglucoside)(以下Mv3
Glc−pC略す)、Malvidin 3,5−di
glcoside(以下Mv3,5Glcと略す)、M
alvidin 3−0−(6−p−coumaroy
lglucoside)−5−glucoside(以
下Mv3,5Glc−pCと略す)を得た。
【0013】(一例としてアルキル硫酸ナトリウムの限
界ミセル濃度の測定)ローダミン6Gという色素を用い
て滴定により、炭素数が8,10,12,14のアルキ
ル硫酸ナトリウムの限界ミセル濃度を測定した。
【0014】結果を表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】参考例(従来の方法) (単離したアントシアニン色素の安定性)ねじ口試験管
にpH3.0またはpH5.0の緩衝液を2.475m
l取り、そこへ4種類のマルビジン系アントシアニン色
素の10mM濃度の溶液をそれぞれ25μl加え全量を
2.5mlとし、最終アントシアニン色素濃度が1×1
−4Mとなるようにした。試験を開始する前に試験管
にとった緩衝液をアントシアニン色素溶液を30℃の恒
温槽中で10分間インキュベートした。アントシアニン
色素溶液を添加した直後を0時間とし、30℃に設定し
た恒温槽中でインキュベートして1,2,4,8,12
及び24時間後の溶液の吸光度を測定した。測定波長
は、pH3.0のとき540nm,pH5.0のとき5
50nmとし、0時間後の吸光度を100%として経過
時間に対する退色の割合(残存 率)を求め、その残存
率から安定性を比較した。
【0017】結果を表2に示す。
【0018】
【表2】
【0019】(実施例1) (単離したアントシアニン色素の安定性に対するアルキ
ル硫酸ナトリウムの効果)ねじ口試験管にデシル硫酸ナ
トリウムを10mMまたは30mM濃度になるように、
ドデシル硫酸ナトリウムを10mM濃度になるようにp
H3.0またはpH5.0の緩衝液に溶解する。この溶
液を2.475ml取り、そこへ4種類のマルビジン系
アントシアニン色素の10mM濃度の溶液をそれぞれ2
5μl加え全量を2.5mlとし、最終アントシアニン
濃度が1×10−4Mとなるようにした。試験を開始す
る前に試験管にとった緩衝液をアントシアニン色素溶液
を30℃の恒温槽中で10分間インキュベートした。ア
ントシアニン色素溶液を添加した直後を0時間とし、3
0℃に設定しな恒温槽中でインキュベートして1,2,
4,8,12及び24時間後の溶液の吸光度を測定し
た。測定波長は、pH3.0のとき540nm、pH
5.0のとき550nmとし、0時間後の吸光度を10
0%として経過時間に対する退色の割合(残存率)を求
め、その残存率から安定性を比較した。
【0020】結果を表3に示す。
【0021】
【表3】
【0022】(実施例2)実施例1の結果を参考にし
て、実際に食品に使用されている天然色素を使用して実
施した。市販アントシアニン色素として赤キャベツ色
素、界面活性剤として表4に示したものを使用して、3
0℃恒温槽中で4,8,12及び24時間後の結果を表
4に示した。
【0023】
【表4】
【0024】試験の結果、市販の赤キャベツ色素に対し
て、各界面活性剤を添加することによって顕著な色素安
定効果を得ることができた。また、同様な方法により、
エルダーベリー色素、紫イモ色素及びブドウ果皮色素に
おいても各々界面活性剤を併用すると明らかに色素安定
性が向上することを示した。
【0025】
【発明の効果】弱酸性水溶液条件下で安定性が悪くなる
アントシアニン色素に界面活性剤を臨界ミセル濃度以上
混合することによって、弱酸性での安定性を著しく向上
させることが出来るようになった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浅野 幹則 静岡県駿東郡小山町湯船1157番16号 ハイ テクパーク富士小山 株式会社タイショー テクノス内 (72)発明者 中條 武 静岡県駿東郡小山町湯船1157番16号 ハイ テクパーク富士小山 株式会社タイショー テクノス内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アントシアニン色素にグリセリン脂肪酸エ
    ステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エス
    テル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリ
    コール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、
    アルキル硫酸ナトリウム、大豆リン脂質、リゾレシチン
    及びコンドロイチン硫酸(塩)から成る群から選択され
    る1種又は2種の界面活性剤を配合することを特徴とす
    るアントシアニン色素の安定化方法。
  2. 【請求項2】アントシアニン色素にグリセリン脂肪酸エ
    ステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エス
    テル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリ
    コール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、
    アルキル硫酸ナトリウム、大豆リン脂質、リゾレシチン
    及びコンドロイチン硫酸(塩)から成る群から選択され
    る1種又は2種の界面活性剤をその限界ミセル濃度以上
    添加することを特徴とする請求項1記載のアントシアニ
    ン色素の安定化方法。
  3. 【請求項3】アントシニン色素にアルキル硫酸ナトリウ
    ムをその限界ミセル濃度以上添加することを特徴とする
    アントシアニン色素の安定化方法。
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