JP2001059051A - ポリエステル樹脂水性溶液 - Google Patents

ポリエステル樹脂水性溶液

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JP2001059051A
JP2001059051A JP11236773A JP23677399A JP2001059051A JP 2001059051 A JP2001059051 A JP 2001059051A JP 11236773 A JP11236773 A JP 11236773A JP 23677399 A JP23677399 A JP 23677399A JP 2001059051 A JP2001059051 A JP 2001059051A
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polyester resin
aqueous solution
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acid
resin
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JP11236773A
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Eiji Fujita
英二 藤田
Tetsuya Miyagawa
徹也 宮川
Seika Jo
静華 徐
Takeshi Senzuka
健史 千塚
Kiyomi Hata
喜代美 畑
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Unitika Ltd
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Unitika Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 貯蔵安定性や他成分との混合安定性に優れ、
しかも、硬度、加工性、耐水性及び耐溶剤等に優れた樹
脂被膜が得られるポリエステル樹脂水性溶液を提供す
る。 【解決手段】 下記(A)〜(D)成分からなり、
(C)成分の重量比率が下記数式[I]に示される範囲に
あることを特徴とするポリエステル樹脂水性溶液。 (A)多塩基酸成分と多価アルコール成分とより構成さ
れ、多塩基酸成分の60モル%以上が芳香族多塩基酸成
分であり、多価アルコール成分の40モル%以上がエチ
レングリコール成分であり、かつ、酸価が12〜45m
gKOH/gであり、重量平均分子量が10,000以
上であるか又は相対粘度が1.22以上であるポリエス
テル樹脂。 (B)塩基性化合物 (C)ケトン、アルコール、又は、1個以上の水酸基を
有するグリコール類から選ばれ、炭素が直接3個以上結
合した構造を有する両親媒性の有機溶剤。 (D)水 【数1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗料、接着剤、イ
ンキ、繊維処理剤、紙塗工剤や各種コーティング剤のバ
インダー成分として有用なポリエステル樹脂水性溶液に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】多塩基酸成分と多価アルコール成分より
構成される高分子量のポリエステル樹脂(いわゆるオイ
ルフリーアルキド樹脂)は、繊維、フィルムや各種成形
材料として使用されている。また、塗料、インキ、接着
剤、コーティング剤等の分野においても、良好な顔料分
散性を示すこと及び形成される被膜が加工性、有機溶剤
に対する耐性(耐溶剤性)、耐候性、各種基材への密着
性等に優れることから、各種のバインダー成分として大
量に使用されている。かかる高分子量ポリエステル樹脂
において、その多塩基酸成分として芳香族多塩基酸、特
にテレフタル酸成分を含有する場合には、この樹脂から
形成される被膜の他の物性を犠牲にすることなく、被膜
の加工性、耐水性、耐溶剤性、耐候性を向上させること
ができることはよく知られている。しかしながら、ポリ
エステル樹脂においては、これを構成する全酸成分に占
める芳香族多塩基酸、特にテレフタル酸成分の割合が増
加するにつれ、汎用の有機溶剤に高濃度で安定に溶解す
ることができなくなるため、液状で調製することができ
ず、このことがかかる樹脂の使用に著しい制限を加える
原因となっていた。そこで、かかる樹脂の高濃度での
「液状化」技術の開発が長年にわたって望まれていると
ころであった。
【0003】一方、近年の環境保護、省資源、消防法等
による危険物規制、職場環境改善の立場から、各種の樹
脂の有機溶剤による「液状化」を水性媒体による「液状
化」、すなわち、水性化に代替する動きが活発である。
そのような事情は、ポリエステル樹脂についても同様で
あるが、酸成分として芳香族多塩基酸、特にテレフタル
酸を多量に含有する高分子量ポリエステル樹脂は、優れ
た性能を有する被膜を形成するだけでなく、かかる樹脂
骨格が耐加水分解性に優れることから、水性化した場合
の貯蔵安定性にも優れることが期待される。
【0004】このような状況に対して、本発明者らは先
に、ポリエステル樹脂が特定量の酸価を有しておれば、
これを液状化せずにペレット状〜粒状で水性化処理に供
しても、ポリエステル樹脂に対して可塑化能力を有する
両親媒性の有機化合物(有機溶剤)及び塩基性化合物を
用いて、ポリエステル樹脂のガラス転移温度又は60℃
のうちの高い方の温度以上に加熱し、しかも所定の条件
で撹拌すれば、驚くほどの速さで水性化が進行すること
を見いだし、そして、得られたポリエステル樹脂水分散
体中の樹脂微粒子の粒径分布を最適化し、さらにポリエ
ステル樹脂の分子量分布を制御するか、あるいは、水性
化の際に特定の保護コロイド作用を有する化合物をごく
少量併用すれば、水分散体の貯蔵安定性が著しく向上
し、しかもこれを用いて形成される被膜がポリエステル
樹脂の本来有する優れた性能を発現することをも見いだ
し、特許出願した(特開平9−296100号公報)。
【0005】ところで、特に印刷やフィルムコーティン
グの分野では、コート法として、その高速性や連続して
重ね刷りが容易である等のメリットからグラビアコート
が多用されている。また、厚塗り印刷や特に織布関係の
コーティングではスクリーン印刷が一般的に用いられて
いる。これらのコート法においては、版の細かい部分詰
まりを防ぎ、また洗浄を容易にする目的から、エマルジ
ョン、コロイダルディスパーションといった樹脂分散体
よりも樹脂溶液の使用が望ましい場合がある。また、そ
の他のコート、印刷法においても、コーティング液の流
動特性の設計は重要であり、特に高速でのコーティング
において、ミスティングやレベリング等の問題から、コ
ーティング液にはニュートン流動に近い流動特性が求め
られ、樹脂分散体では、その構造に由来するチキソ性ゆ
えに十分でない場合がある。このように、ポリエステル
樹脂の水性化としては、水分散体だけではなくポリエス
テル樹脂の水性溶液も求められているが、ポリエステル
樹脂を水性溶液化した場合には、水分散体と比較して、
貯蔵中に樹脂骨格(高分子主鎖)を形成するエステル結
合が加水分解し易く、その結果として貯蔵安定性が損な
われ、ポリエステル樹脂が低分子量化してしまい、得ら
れる被膜の諸性能が低下するという問題がある。
【0006】ポリエステル樹脂を改質して水性溶液化す
る方法としては、ポリエステル樹脂を低分子量化し、同
時に分子鎖末端のカルボキシル基やアルコール性水酸基
といった親水基の含有量を増加させることにより、樹脂
の水性媒体に対する溶解性を向上させる方法が試みられ
ているが、この方法では、ポリエステル樹脂の特徴であ
る被膜の加工性等が発現し難い。また、樹脂骨格中にエ
ーテル結合等の親水性構造を導入する方法も試みられて
いるが、これを高分子量のポリエステル樹脂に適用しよ
うとすると、例えば、ポリエチレングリコール等のエー
テル結合含有のモノマー成分を共重合させて、樹脂骨格
自身を親水化せねばならず、その結果として、樹脂骨格
中に水に弱い構造がさらに導入されることになり、加水
分解に対する耐性がより低下してしまうという問題があ
る。
【0007】これに対して、高分子量のポリエステル樹
脂を水性溶液化する方法として、例えば、特公昭56−
5476号公報、特公昭63−22219号公報、特開
平5−86174号公報等に開示されているように、5
−ナトリウムスルホイソフタル酸のようなスルホン酸金
属塩基を有するモノマー成分を用いてポリエステル樹脂
を合成し、樹脂中に強力な親水基であるスルホン酸金属
塩基を導入し、これにより水性化を達成させる方法が知
られている。この方法によれば、強力な親水基が樹脂中
の側鎖として組み込まれるために、少量の親水基でも水
溶液化が可能となり、しかも、樹脂骨格自身の耐加水分
解性が低下することはない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この方法によ
って得られた水性溶液を用いて形成された樹脂被膜中に
は、上記のスルホン酸金属塩基が残存するため、被膜の
耐水性や耐溶剤性等が十分でないという問題がある。ま
た、これらの被膜性能を改善するために、スルホン酸金
属塩基の導入量を水性溶液化を可能にする必要最低量ま
で低減すると、水性溶液の貯蔵安定性が損なわれるだけ
でなく、他成分を配合したり水性媒体等で希釈する際
に、ポリエステル樹脂が析出して相分離や沈澱が生成し
たり増粘するといった、いわゆる、ソルベント・ショッ
クを受け易いという問題があった。
【0009】本発明は、上記現状を鑑みてなされたもの
であり、貯蔵安定性や他成分との混合安定性に優れ、し
かも、硬度、加工性、耐水性及び耐溶剤等に優れた樹脂
被膜が得られるポリエステル樹脂水性溶液を提供するこ
とを課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このよう
な課題に対して、上記の本発明者らの先願発明(特開平
9−296100号公報)をもとに鋭意研究を重ね、ポ
リエステル樹脂を構成する多塩基酸成分及び多価アルコ
ール成分を検討してポリエステル樹脂の耐加水分解性を
改善し、また、特定の有機溶剤を適量使用することによ
って、そのようなポリエステル樹脂の水性溶液化を可能
にし、さらに、ポリエステル樹脂を水性化する際の温度
条件を制御することにより、得られる水性溶液の貯蔵安
定性や他成分との混合安定性を向上させることに成功
し、本発明に到達した。
【0011】すなわち、本発明の要旨は、下記(A)〜
(D)成分からなり、(C)成分の重量比率が下記数式
[I]に示される範囲にあることを特徴とするポリエステ
ル樹脂水性溶液である。 (A)多塩基酸成分と多価アルコール成分とより構成さ
れ、多塩基酸成分の60モル%以上が芳香族多塩基酸成
分であり、多価アルコール成分の40モル%以上がエチ
レングリコール成分であり、かつ、酸価が12〜45m
gKOH/gであり、重量平均分子量が10,000以
上であるか又は相対粘度が1.22以上であるポリエス
テル樹脂。 (B)塩基性化合物 (C)ケトン、アルコール、又は、1個以上の水酸基を
有するグリコール類から選ばれ、炭素が直接3個以上結
合した構造を有する両親媒性の有機溶剤。 (D)水
【0012】
【数2】
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂水性溶液は、上記の(A)〜
(C)成分が(D)成分である水に配合されてなる水性
溶液である。まず、(A)〜(C)成分について説明す
る。
【0014】[(A)成分:ポリエステル樹脂]本発明に
おけるポリエステル樹脂は、本来それ自身で水に分散又
は溶解しない、水不溶性のものである。
【0015】本発明におけるポリエステル樹脂は、多塩
基酸成分と多価アルコール成分より構成されており、多
塩基酸と多価アルコールを用いて合成することができ
る。そのような多塩基酸としては、芳香族多塩基酸、脂
肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸を挙げることができる。
具体的な化合物では、芳香族多塩基酸としては、テレフ
タル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジ
カルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカル
ボン酸類が挙げられ、脂肪族多塩基酸としては、シュウ
酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン
酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添
ダイマー酸等の飽和ジカルボン酸類、フマル酸、マレイ
ン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、
シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽
和の脂肪族ジカルボン酸類が挙げられ、脂環族多塩基酸
としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,
3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキ
サンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン
酸、無水2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒ
ドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジ
カルボン酸類が挙げられる。また、樹脂の耐水性を損な
わない範囲で、必要に応じて少量の5−ナトリウムスル
ホイソフタル酸や5−ヒドロキシイソフタル酸を用いる
ことができる。
【0016】上記した多塩基酸の中でも、芳香族多塩基
酸が主に用いられ、ポリエステル樹脂を構成する多塩基
酸成分に占める芳香族多塩基酸成分の割合としては、6
0モル%以上であることが必要である。この割合が60
モル%未満の場合には、脂肪族多塩基酸成分及び脂環族
多塩基酸成分に由来する構造が樹脂骨格中の過半を占め
るため、ポリエステル樹脂水性溶液から形成して得られ
る被膜(以下、被膜形成物と記す)の硬度、耐溶剤性、
耐水性が低下し、また、脂肪族及び脂環族のエステル結
合が芳香族エステル結合に比して耐加水分解性が低いた
めに、ポリエステル樹脂水性溶液の貯蔵安定性が低下す
る。水性溶液の貯蔵安定性や(A)〜(D)成分以外の
他成分との混合安定性を向上させる点においては、多塩
基酸成分に占める芳香族多塩基酸成分の割合としては、
65モル%以上、さらには70モル%以上であることが
好ましい。また、被膜形成物の諸性能とバランスをとり
ながらその加工性、耐水性、耐溶剤性、耐候性を向上さ
せ、しかも、ポリエステル樹脂の耐加水分解性をより向
上させ、かつ、水性溶液の貯蔵安定性や混合安定性をよ
り向上できる点において、多塩基酸成分のうちの65モ
ル%以上がテレフタル酸成分であることは、本発明にお
いて特に好ましい態様である。
【0017】また、多価アルコールとしては、炭素数2
〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グ
リコール、エーテル結合含有グリコール等を挙げること
ができる。具体的な化合物では、炭素数2〜10の脂肪
族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−
プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、
1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパ
ンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチル
グリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−
1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、
2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等が挙げら
れ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,
4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。エー
テル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコー
ル、さらにはビスフェノール類の2つのフェノール性水
酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを
それぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類、例
えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)
プロパン等が挙げられるが、エーテル構造は被膜形成物
の耐水性、耐候性を低下させることから、ポリエステル
樹脂を構成する多価アルコール成分としてのエーテル結
合含有グリコールの使用量は、全多価アルコール成分の
10重量%以下、さらには5重量%以下にとどめること
が好ましい。なお、ポリエチレングリコール、ポリプロ
ピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必
要に応じて使用することができる。
【0018】上記した多価アルコールの中でも、エチレ
ングリコールは必ず用いられ、ポリエステル樹脂を構成
する全多価アルコール成分に占めるエチレングリコール
の割合としては、40モル%以上であることが必要であ
り、45モル%以上が好ましく、50モル%以上が特に
好ましい。上記のエチレングリコールの割合が40モル
%未満では、水性溶液が得られなかったり、得られたと
しても貯蔵安定性が劣る。
【0019】また、多塩基酸又は多価アルコールとして
は、3官能以上の多塩基酸又は多価アルコールを使用し
てもよい。そのような3官能以上の多塩基酸としては、
トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット
酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボ
ン酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシ
ン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテ
ート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテー
ト)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が挙
げられ、3官能以上の多価アルコールとしては、グリセ
リン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパ
ン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。このとき、
3官能以上の多塩基酸又は多価アルコールの使用量とし
ては、ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分又は多
価アルコール成分に対し10モル%以下、さらには5モ
ル%以下となる範囲にとどめることが、被膜形成物の高
加工性を発現させるうえで好ましい。
【0020】なお、本発明におけるポリエステル樹脂を
構成する酸成分としては、本発明の目的を損なわない範
囲で、多塩基酸以外に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パ
ルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、
リノレン酸等の脂肪酸やそのエステル形成性誘導体、安
息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサ
ン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等の高沸点
のモノカルボン酸、ε−カプロラクトン、乳酸、β−ヒ
ドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ
カルボン酸やそのエステル形成性誘導体を使用してもよ
い。また、ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分
としては、本発明の目的を損なわない範囲で、ステアリ
ルアルコール、2−フェノキシエタノール等の高沸点の
モノアルコールを使用してもよい。
【0021】本発明におけるポリエステル樹脂の酸価と
しては、12〜45mgKOH/gであることが必要で
あり、12〜40mgKOH/gが好ましく、15〜3
8mgKOH/gがより好ましい。この酸価が12mg
KOH/g未満では、水性溶液化に寄与するカルボキシ
ル基の量が不足して、良好な水性溶液を得ることができ
ない。一方、酸価が45mgKOH/gを超えると、被
膜形成物の耐水性が低下する。
【0022】また、本発明におけるポリエステル樹脂
は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ
ー,ポリスチレン換算)で測定される重量平均分子量が
10,000以上であるか、又は相対粘度が1.22以
上であるかのいずれかの条件を満たす必要がある。この
いずれの条件をも満たさない場合には、被膜形成物の加
工性、耐溶剤性が低下するばかりでなく、耐水性も低下
する。ポリエステル樹脂の重量平均分子量としては、1
1,000以上が好ましく、12,000以上がより好
ましい。また、相対粘度としては、1.23以上が好ま
しく、1.24以上がより好ましい。このとき、ポリエ
ステル樹脂に十分な酸価を付与でき、かつ水性溶液の異
常な増粘を防ぐという点において、重量平均分子量の上
限としては45,000が好ましく、相対粘度の上限と
しては、1.95が好ましい。
【0023】本発明におけるポリエステル樹脂を合成す
る方法としては、公知の方法を応用すればよい。例え
ば、(a)全モノマー成分又はその低重合体を不活性雰
囲気下で180〜250℃、2.5〜10時間程度反応
させてエステル化反応を行い、引き続いてエステル交換
反応触媒の存在下、1Torr以下の減圧下に220〜
280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応
を進めてポリエステル樹脂を得る方法、(b)前記重縮
合反応を、目標とする分子量に達する以前の段階で終了
し、反応生成物を次工程でエポキシ系化合物、イソシア
ネート系化合物、ビスオキサゾリン系化合物等から選ば
れる鎖長延長剤と混合し、短時間反応させることにより
高分子量化を図る方法、(c)前記重縮合反応を目標と
する分子量以上の段階まで進めておき、モノマー成分を
さらに添加し、不活性雰囲気、常圧〜加圧系で解重合を
行うことで目標とする分子量のポリエステル樹脂を得る
方法等を用いることができる。
【0024】なお、ポリエステル樹脂において、水性溶
液化に必要なカルボキシル基は、樹脂骨格中に存在する
よりも樹脂分子鎖の末端に偏在していることが、被膜形
成物の耐水性、耐溶剤性等の面から好ましい。副反応や
ゲル化等を伴わずに、そのようなポリエステル樹脂を得
る方法としては、上記した方法(a)において、重縮合
反応開始時以降に3官能以上の多塩基酸またはそのエス
テル形成性誘導体を添加するか、あるいは、重縮合反応
の終了直前に多塩基酸の酸無水物を添加する方法、上記
した方法(b)において、大部分の分子鎖末端がカルボ
キシル基である低分子量ポリエステル樹脂を鎖長延長剤
により高分子量化させる方法、上記した方法(c)にお
いて解重合剤として多塩基酸またはそのエステル形成性
誘導体を使用する方法等を用いることができる。
【0025】本発明のポリエステル樹脂水性溶液中にお
けるポリエステル樹脂の含有率としては、その使用され
る用途、目的とする被膜の厚み、成形方法によって適宜
選択されるが、0.5〜50重量%とすることが好まし
く、1〜40重量%がより好ましい。後述するように、
本発明のポリエステル樹脂水性溶液はポリエステル樹脂
の含有率が20重量%以上といった高固形分濃度であっ
ても貯蔵安定性に優れるという長所を有するが、ポリエ
ステル樹脂の含有率が50重量%を超えると水性溶液の
粘度が著しく高くなり、使用に供せない場合があるので
好ましくない。
【0026】[(B)成分:塩基性化合物]本発明のポリ
エステル樹脂水性溶液において、塩基性化合物は、ポリ
エステル樹脂を水性溶液化させる際に、ポリエステル樹
脂を中和させるための成分として必要である。本発明に
おいては上記の中和反応、すなわち塩基性化合物とポリ
エステル樹脂中の親水基であるカルボキシル基との中和
反応が水性溶液化の起動力であり、しかも中和反応で生
成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって、
ポリエステル樹脂分子鎖間の凝集を防ぐことができる。
塩基性化合物としては、被膜形成時、あるいは硬化剤を
配合しての焼付硬化時に揮散する化合物が好ましい。
【0027】そのような塩基性化合物としては、沸点の
低いアンモニアや有機アミン化合物が挙げられ、有機ア
ミン化合物の沸点としては、250℃以下であることが
好ましい。また、水と共沸可能なものが特に好ましい。
本発明に好ましく用いられる塩基性化合物を具体的に例
示すれば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミ
ン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジプロピル
アミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチ
ルアミン、イソブチルアミン、ジイソブチルアミン、t
ert−ブチルアミン、ペンチルアミン、N,N−ジエ
チルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールア
ミン、N−メチル−N−エタノールアミン、アミノエタ
ノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミ
ン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、
エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピル
アミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−
ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピル
アミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノ
ビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モ
ノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノ
ールアミン、プロピレンジアミン、ピペリジン、モルホ
リン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等
が挙げられる。なお、塩基性化合物としては、単一で
も、また複数の種類のものを混合して用いてもよい。
【0028】本発明のポリエステル樹脂水性溶液におけ
る塩基性化合物の含有率としては、ポリエステル樹脂中
に含まれるカルボキシル基の量に応じて、少なくともこ
れを部分中和し得る量、すなわち、カルボキシル基に対
して0.4〜2.0倍当量であることが好ましく、0.
6〜1.8倍当量がより好ましく、0.7〜1.5倍当
量が特に好ましい。0.4倍当量未満では塩基性化合物
添加の効果が認められず、一方1.8倍当量を超える
と、水性溶液が著しく増粘する場合がある。なお、ここ
で言う塩基性化合物の含有率としては、上記の中和反応
によってカルボン酸塩を生成するのに消費された分も含
めて計算された値とする。すなわち、水性溶液を得る際
に添加された塩基性化合物の添加量から計算された値と
する。
【0029】[(C)成分:有機溶剤]本発明のポリエス
テル樹脂水性溶液において、ポリエステル樹脂の水性溶
液化を達成させる成分として、両親媒性の有機溶剤が含
有されていることが必要である。ここで、両親媒性の有
機溶剤とは、20℃での水に対する溶解性が5g/L以
上の有機溶剤を言う。20℃での水に対する溶解性とし
ては、10g/L以上が好ましく、この溶解性が5g/
L未満では、水性溶液化の速度が遅いため水性溶液化が
困難であり、水性溶液が得られた場合でもその貯蔵安定
性に乏しく、貯蔵中に樹脂が析出して相分離や沈殿が発
生する場合がある。
【0030】また、(C)成分である有機溶剤として
は、ケトン、アルコール、又は、1個以上の水酸基を有
するグリコール類から選ばれる。これらの有機溶剤に含
まれるケトン基やアルコール性水酸基のような強力な親
水基を有しない場合には、有機溶剤が多量に必要になる
ばかりでなく、水性溶液の混合安定性が低下する。
【0031】さらに、(C)成分である有機溶剤の分子
構造としては、炭素が直接3個以上結合した構造を有し
ている必要がある。この構造を満たさない場合には、有
機溶剤が多量に必要になるばかりでなく、水性溶液の貯
蔵安定性も確保できない。
【0032】また、有機溶剤としては、水性溶液から樹
脂被膜を形成してこれを乾燥する際に速やかに蒸発し、
被膜形成物への残存量が少なくなることが望ましい点か
ら、沸点が250℃以下のものが好ましく、しかも毒
性、爆発性や引火性の低いものが好ましい。
【0033】本発明のポリエステル樹脂水性溶液におけ
る(C)成分である有機溶剤の重量比率としては、上記
した(A)成分と(B)成分、及び(D)成分である水
との関係において、下記数式[I]に示される範囲にあ
り、好ましくは下記数式[II]に示される範囲にあり、よ
り好ましくは下記数式[III]に示される範囲にある。
【0034】
【数3】
【0035】上記数式[I]に示される範囲より(C)成
分の比率が小さいと、水性溶液の貯蔵安定性、混合安定
性及び被膜形成性が劣る。一方、(C)成分の比率が大
きすぎると、水性溶液が異常に増粘したり、貯蔵安定性
や被膜形成性に劣り、また、水性溶液化という本来の目
的に合致しない。
【0036】本発明に用いられる(C)成分である有機
溶剤の具体例を示せば、ケトンとしては、メチルエチル
ケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケト
ン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられ、アル
コールとしては、n−プロパノール、イソプロパノー
ル、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノ
ール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、
イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、t
ert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノ
ール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノー
ル、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキ
シブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられ、グリ
コール類としては、エチレングリコールモノプロピルエ
ーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエ
チレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレング
リコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレン
グリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール
モノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチ
ルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレング
リコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール
モノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロ
ピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエー
テル等が挙げられる。これらの有機溶剤は単一で用いて
もよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】なお、有機溶剤としては、本発明の目的を
損なわない範囲で、上記した(C)成分以外の有機溶剤
がポリエステル樹脂水性溶液に含有されていても良い。
そのような有機溶剤としては、両親媒性の有機溶剤であ
ることが好ましく、具体例としては、エタノールやテト
ラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチ
ル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n
−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢
酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピ
オン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステ
ル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメ
チルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテ
ル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジ
エチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチル
エーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、
ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロ
ピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコ
ール類、さらには、アセトニトリル、ジメチルホルムア
ミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、
アセト酢酸エチル等が挙げられる。
【0038】次に、上記の(A)、(B)、(C)成分
と(D)成分である水とから本発明のポリエステル樹脂
水性溶液を製造する方法について説明する。本発明のポ
リエステル樹脂水性溶液は、当業者等に広く知られた方
法によって製造することができるが、以下の製造方法は
特殊な設備や煩雑な操作を要せずに容易に、しかも経済
的に行えるうえ、水性溶液の特性を制御し易いという特
長を有しており、本発明において好ましく用いられる。
また、この好ましい方法においては、比較的粗大な粒状
の樹脂を用いて行ってもポリエステル樹脂を水性溶液化
することができ、この方法に用いるポリエステル樹脂粉
末ないし粒状物(以下、樹脂粒子と記す)の大きさを立
方体形状に換算した一辺の長さとしては、8mm以下が
好ましく、1〜5mmがより好ましく、1.5〜3mm
が特に好ましい。
【0039】上記の好ましい方法は、樹脂粒子を室温付
近で水性媒体に混合・粗分散させる分散工程と、これを
撹拌しながら決められた温度まで加熱する加熱工程と、
ポリエステル樹脂のガラス転移温度又は60℃のうちの
高い方の温度〜90℃で所定の条件で撹拌する水性溶液
化工程と、これを40℃以下まで冷却する冷却工程とい
う4工程から構成されており、これらの工程が連続で実
施される。ここで、水性媒体とは、水又は、水と上記の
塩基性化合物もしくは有機溶剤とからなる混合物をい
う。なお、上記の4工程において、(A)成分(ポリエ
ステル樹脂)は、分散工程が終了するまでにその全量が
系に配合されていることが望ましいが、(B)成分(塩
基性化合物)及び(C)成分(有機溶剤)は、分散工
程、加熱工程又は水性溶液化工程のいずれかの工程で配
合すればよい。また、有機溶剤は、沸点が100℃以下
か又は水と共沸可能であれば、水性溶液化工程中あるい
はそれに続く工程で容易に系外に除去(ストリッピン
グ)することができるので、本発明において水性溶液を
製造する際には、過剰量の有機溶剤を配合しておいて、
後でストリッピングして適正量に調整するという方法で
行ってもよい。
【0040】上記の4工程を行うための装置としては、
液体を投入できる槽を備え、槽内に投入された水性媒体
と樹脂粒子との混合物を適度に撹拌でき、槽内を60〜
90℃に加熱できればよく、固/液撹拌装置や乳化機と
して広く当業者に知られている装置を使用することがで
きる。そのような具体的な装置としては、プロペラミキ
サー、タービンミキサーのような一軸の撹拌機、タービ
ン・ステータ型高速回転式撹拌機(特殊機化工業製、
「T.K.Homo−Mixer」「T.K.Homo
−Jettor」、IKA−MASCHINENBAU
社製、「Ultra−Turrax」等)、高速剪断型
ミキサと槽壁面を掻き取るスクレーパ付き低速摺動型の
混練パドルやアンカーミキサを併用した複合型撹拌機
(特殊機化工業製、「T.K.Agi−Homo−Mi
xer」、「T.K.Combimix」等)を例示す
ることができる。装置の方式としては、バッチ式であっ
てもよく、原料投入と処理物の取り出しを連続で行うよ
うな連続生産式のものであってもよい。また、装置の槽
としては、密閉できる形式のものが好ましいが、使用す
る有機溶剤の沸点が100℃以上であれば開放型のもの
であっても作業に支障を生じることはない。
【0041】以下に、上記の4工程を各工程別により詳
細に説明する。 [分散工程]分散工程は、ポリエステル樹脂の塊状化を防
ぐ目的で実施される。水性媒体中に投入された樹脂粒子
は、無撹拌、あるいは撹拌速度が十分でない状態でガラ
ス転移温度以上に加熱されると、樹脂粒子同士が互いに
接着して塊状となり、この塊状化が起こった場合には、
後で高速撹拌しても水性溶液化は困難になる。
【0042】この分散工程は、通常、室温下での撹拌に
よって行われるが、次工程である加熱工程に長時間を要
する場合には、槽内を加熱しながら分散工程を実施して
もよい。ただし、下記の完全浮遊状態に達する以前に槽
内を加熱すると上記の塊状化が起こる場合があるので、
槽内温度が40℃に達するまでに樹脂粒子が水性媒体中
に下記の完全浮遊状態で分散していることが望まれ、し
たがって(A)成分であるポリエステル樹脂は、分散工
程が終了するまでにその全量が槽内に投入されているこ
とが望ましい。分散工程の終点、すなわち、樹脂粒子が
完全浮遊状態で分散している状態とは、T.N.Zwi
etering(Chemical Engineer
ingScience,8巻,244頁,1958年)
が定義した完全浮遊状態、すなわち、一個の粒子といえ
ども槽底に1〜2秒以上留まっていることがない状態の
ことであり、槽内はこの完全浮遊状態を達成する完全浮
遊撹拌速度(NJS)以上で撹拌されることが望ましい。
なお、NJSは、使用する撹拌羽根の種類、大きさや槽内
の位置、ポリエステル樹脂の投入量やその形状等の多数
の因子によって左右されるが、槽内の撹拌状態は通常目
視によって簡単に判断できるので、実際の処理装置を用
いた試験によって決定すればよい。また、槽内の撹拌速
度をNJSよりもさらに高くしていくと、ある速度NSA
上で自由表面からの気体の巻き込みが始まる。この気体
巻き込み現象は、市販の消泡剤を用いれば解消あるいは
低減されるが、槽内の撹拌速度としては、NJS〜N SA
範囲とするのが好ましい。槽内が分散工程の終点に達し
たならば、この状態を保って次の加熱工程に移る。
【0043】[加熱工程]加熱工程は、これに続く水性
溶液化工程に要する温度に槽内を加熱する工程であり、
槽内に有機溶剤及び塩基性化合物が存在しておれば、こ
の工程で既に水性溶液化(樹脂の溶解)は始まってい
る。ただし、その速度は十分でないため、できるだけ短
時間で槽内が所定の温度に達するように加熱することが
好ましい。槽内を加熱する方法としては、槽壁にジャケ
ットを備え付けるか、槽内に螺旋コイル管を挿入する
か、又は両者を併用する方法がある。本発明においては
いずれの方法も採用できるが、加熱工程に要する時間を
短縮し、しかも、槽内温度を均一かつ精度良く制御でき
る方法が望ましい。なお、この加熱工程中に系の粘度が
異常に増加する場合があるが、そのような場合には、次
の水性溶液化工程において上記の有機溶剤又は塩基性化
合物のいずれかを槽内に投入することでこの問題を解決
できる。
【0044】[水性溶液化工程]上記の加熱工程によっ
て槽内温度がポリエステル樹脂のガラス転移温度又は6
0℃のうちの高い方の温度に到達した時点をもって、水
性溶液化工程に移行したとみなす。水性溶液化は低温で
も進行するが、上記の到達温度以上に槽内を加熱するこ
とにより驚くほどの速さで進行するようになるという事
実に加え、低温で処理を行った場合には、系が異常に増
粘して実質的に槽内を撹拌できなくなることがあるの
で、水性溶液化は上記の温度条件で行われる。このと
き、槽内温度が90℃を超えると水の蒸発が著しくな
り、水性溶液から樹脂が析出する場合があるので、槽内
温度は90℃以下に制御することが好ましい。
【0045】また、水性溶液化工程では、系の粘度が幾
分かは上昇するため、上記NSAよりも高い撹拌速度N'
SAで自由表面からの気体の巻き込みが始まる。したがっ
て、攪拌速度としては、NJS〜N'SAの範囲内とするこ
とが好ましい。撹拌速度がNJ S未満では、水性溶液化が
進行している樹脂粒子の表面が速やかに更新され難く、
水性溶液化に長時間を要することになり、一方、N'SA
を超えても、発泡という作業性の問題だけでなく、気体
の巻き込みにより樹脂と水性媒体との接触面積が減少
し、水性溶液化工程に長時間を要することになるので好
ましくない。
【0046】水性溶液化工程は、上記の好ましい条件に
よって行えば、通常15〜150分間程度で終了でき、
その時点では、通常、目視や指触により樹脂粒子は確認
されない状態であることが好ましい。さらに、本発明に
おける好ましい態様としては、好ましくは水性溶液化工
程の最後の段階において、ポリエステル樹脂のガラス転
移温度又は70℃のうちの高い方の温度以上、90℃以
下の温度で、好ましくはNJS〜N'SAの攪拌速度で、好
ましくは10分間以上継続して撹拌するという安定化処
理を行うことによって、ポリエステル樹脂水性溶液の貯
蔵安定性及び混合安定性をより向上させることができ
る。この安定化処理を行わなくとも本発明のポリエステ
ル樹脂水性溶液を得ることはでき、また、安定化処理の
効果が発現する理由については不明であるが、本発明者
らの考えるところでは、この処理によって水性溶液中の
樹脂分子鎖と主に有機溶剤との相互作用に変化が生じ
て、より安定な構造が形成されるものと思われる。な
お、上記の安定化処理は、次の冷却工程を経た後に再度
加熱して行ってもよいし、断続して行ってもよい。ま
た、安定化処理を行う時間としては、加水分解の懸念か
ら、合計で100分以下、さらには80分以下にとどめ
るのが好ましい。水性溶液化工程から、必要に応じて安
定化工程を経た後は、次の冷却工程に移行するが、その
前に有機溶剤のストリッピングを行ってもよい。
【0047】[冷却工程]この工程は、上記で得られた水
性溶液を室温付近まで冷却するための工程であり、自然
冷却してもよいし、上記したジャケットやコイル管に冷
媒を通して強制冷却してもよい。その際には、水性溶液
表面の水が蒸発して固形分濃度の高い被膜を形成すると
いう皮張り現象を防ぐために、また、水性溶液は高温ほ
ど貯蔵安定性に劣る点から、水性溶液が40℃以下に冷
却されるまでは撹拌することが好ましい。このときの撹
拌速度としては、上記の目的を達するためのものであれ
ばよいが、NJS以下とするのが好ましい。以上のように
して、本発明のポリエステル樹脂水性溶液を製造するこ
とができる。
【0048】次に、ポリエステル樹脂水性溶液の特性に
ついて説明する。本発明のポリエステル樹脂水性溶液の
光線透過率(セル長1cm、光線波長750nm、温度
25℃)としては、85%を超えることが好ましく、8
8%以上、さらには90%以上がより好ましい。光線透
過率はポリエステル樹脂自身の色や水性溶液の固形分濃
度等の影響を受けるが、この値が高い方が調色等も容易
であり、また、この値が85%以下のものは、水性溶液
とは言い難く、ポリエステル樹脂分散体の範疇に属する
ものと言える。なお、上記の光線透過率の値は、水性溶
液中に光線の透過を吸収や散乱等によって妨げる顔料や
染料等を含まない場合の値であり、そのような顔料や染
料等を含む場合については、以下の2法のいずれかによ
り測定した値を光線透過率とすることができる。 [第1法] ポリエステル樹脂水性溶液に対して比重差の
大きい顔料を含む場合は、遠心分離等を行い、固形分に
対する顔料の比率が1重量%未満でかつ、顔料以外の固
形分濃度が配合量から計算された値の98%以上を満た
す上澄液を調製し、これを測定に供する。 [第2法] 上記の第1法が使えない染料等を含む場合
は、その染料等に由来する透過率の低下分(吸光度)を
予め測定しておき、染料等を含むポリエステル樹脂水性
溶液について測定した値に対して上記の低下分を補正す
る。
【0049】また、本発明のポリエステル樹脂水性溶液
は、ニュートニアンに近い流動挙動を示し、後述する方
法で測定したチキソ性の値としては、1.0〜5.0が
好ましく、1.0〜4.0がより好ましく、1.0〜
3.5が特に好ましい。
【0050】本発明のポリエステル樹脂水性溶液は塗
料、接着剤、インキ、繊維処理剤、紙塗工剤や各種コー
ティング剤等の用途に使用することができる。使用の際
には、必要に応じて硬化剤、顔料、染料、他の水性樹脂
や各種の薬剤等を他成分として添加して配合することが
でき、本発明のポリエステル樹脂水性溶液は、他成分と
の混合安定性に優れている。上記の硬化剤の例として
は、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、多官能エポ
キシ化合物、多官能イソシアネート化合物及びその各種
ブロックイソシアネート化合物、多官能アジリジン化合
物等を挙げることができる。反応触媒や促進剤も必要に
応じて併用することができる。また、他の水性樹脂の例
としては、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹
脂、アクリル樹脂変性オレフィン樹脂、セルロース誘導
体等があげられ、これらの水溶液又は水分散体を使用す
ることができる。また、薬剤の例としてはハジキ防止
剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、レオロジーコ
ントロール剤、顔料分散剤、滑剤、防腐剤、防錆剤等を
挙げることができる。
【0051】また、本発明のポリエステル樹脂水性溶液
は、ディップコート法、はけ塗り法、ロールコート法、
スプレーコート法、グラビアコート法、カーテンフロー
コート法、各種印刷法等により、金属、樹脂成形体(フ
ィルム、織布、糸等も含む)、紙、ガラス等の各種基材
上に均一にコーティングしたり、基材中に含浸させるこ
とができる。特に本発明のポリエステル樹脂水溶液はニ
ュートニアンに近い流動特性を有することから、ロール
コートやグラビアコート法等の高速コートが適用でき、
水性溶液であることから、電着塗装、スクリーン印刷や
基材中に含浸させる用途には特に好適である。
【0052】
【実施例】以下に実施例によって本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。なお、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂水性
溶液及びこれを使用して得られた塗膜(被膜形成物)の
特性を調べるにあたっては、以下の方法によって分析、
測定又は評価した。
【0053】(1)ポリエステル樹脂の構成1 H−NMR分析(バリアン社製,300MHz)によ
り、構成成分を分析した。また、1H−NMRスペクト
ル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノ
マーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メ
タノール分解を行った後に、ガスクロマトグラム分析に
供し、定量分析を行った。
【0054】(2)ポリエステル樹脂の重量平均分子
量、相対粘度 重量平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユ
ニットLC−10ADvp型及び紫外−可視分光光度計
SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶
媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求
めた。なお、樹脂がテトラヒドロフランに溶解せずGP
C分析ができない場合には、相対粘度を測定した。相対
粘度は、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエ
タンとの等重量混合溶媒にポリエステル樹脂を1重量%
の濃度で溶解し、ウベローデ粘度管を用いて20℃で測
定した。
【0055】(3)ポリエステル樹脂の酸価 ポリエステル樹脂1gを50mlのジオキサン/水=9
/1(容積比)混合溶媒に完全に溶解し、フェノールフ
タレインを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消
費されたKOHのmg数を酸価として求めた。
【0056】(4)ポリエステル樹脂のガラス転移温度 ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示
差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC
7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、
得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲
点の温度の中間値を求め、これをガラス転移温度とし
た。
【0057】(5)ポリエステル樹脂水性溶液の固形分
濃度 ポリエステル樹脂水分散体を適量秤量し、これを温度2
20℃で残存物(固形分)の重量が恒量に達するまで加
熱し、固形分濃度を求めた。
【0058】(6)ポリエステル樹脂水性溶液の光線透
過率 ポリエステル樹脂水性溶液をセル長1.0cmの石英製
セルに入れ、波長750nmの光に対する温度25℃で
の光透過率を測定した。このときのブランクとしては蒸
留水を用いた。
【0059】(7)ポリエステル樹脂水性溶液の粘度及
びチキソ性 二重円筒型の回転粘度計(レオメトリック・サイエンテ
ィフィック・F・E社製、ストレスレオメータSR−2
00)を用い、せん断速度10sec-1、30℃での粘
度を測定した。このとき、回転を始めて定常状態になっ
た時点での粘度を測定値とした。また、チキソ性につい
ては、せん断速度10-1sec-1での粘度η1及び102
sec-1での粘度η2を上記と同様にして測定し、η1
η2で除した値(η1/η 2)をチキソ性の値とした。
【0060】(8)ポリエステル樹脂水性溶液の貯蔵安
定性 ポリエステル樹脂水性溶液300mlをガラス製の容器
に入れて密封し、25℃以下の室温下で60日間静置し
て貯蔵した。貯蔵後の外観の変化を目視で観察し、ま
た、粘度を上記(7)の方法で測定することにより、貯
蔵安定性を評価した。
【0061】(9)ポリエステル樹脂水性溶液の他成分
との混合安定性 ポリエステル樹脂水性溶液300gを撹拌しながら、他
成分として下記に示すものをそれぞれ添加して、卓上型
のホモミキサー(特殊機化工業製「T.K.ロボミック
ス」)を用いて、室温下(約25℃)で3,000rp
mで30分間撹拌を続けることにより、他成分との混合
液を調製した。なお、下記の他成分B−3を用いたもの
については、ガラスビーズ400gも一緒に加えてペイ
ントシェイカーで1時間振とうした後、ガラスビーズを
濾過で取り除くことによって混合液を得た。そして、上
記の混合液の25℃における流動性の指標として、JI
S K−5400に記載のフォードカップNo.4法に
よる流下時間を測定し、さらに、上記の混合液を室温で
30日間貯蔵した後に同様に流下時間を測定した。これ
らの測定値と混合液の外観から、下記の評価基準によっ
て混合安定性を評価した。
【0062】[他成分] B−1:メチルエーテル型タイプのメラミン樹脂(三井
サイテック社製、「サイメル325」、80重量%イソ
ブタノール溶液)。使用量94g。 B−2:イソプロパノール。使用量50g B−3:酸化チタン粉末(石原産業製、タイペークCR-5
0)。使用量100g。 [混合安定性の評価基準] ○:均一な外観(相分離、沈殿、固化等が認められな
い)が貯蔵後も変化することなく、調製時の流下時間と
貯蔵後の流下時間の差が10秒以内である。 △:均一な外観が貯蔵後も変化していないが、調製時の
流下時間と貯蔵後の流下時間の差が10秒を超える。 ×:貯蔵後の外観に相分離、沈殿、固化等の明らかな変
化が認められる。 ××:調製時から既に相分離、沈殿、固化等の明らかな
外観異常が認められる。
【0063】(10)ポリエステル樹脂水性溶液の耐加
水分解性 上記(2)におけるGPC分析が可能なポリエステル樹
脂を用いたものについてのみ、上記(8)と同様の条件
下で90日間貯蔵した後、外観の変化を目視で観察し
た。また、製造直後及び90日間貯蔵後のポリエステル
樹脂水性溶液から上記(5)の方法で固形分として得た
それぞれのポリエステル樹脂について、上記(2)と同
様のGPC分析を行って重量平均分子量を測定し、下記
数式[IV]により分子量保持率を求めて耐加水分解性の指
標とした。
【0064】
【数4】
【0065】(11)塗膜の光沢度 グロスメーター(堀場製作所、グロスチェッカIG−3
10)を用いて、入射角60°での鏡面光沢度(JIS
K−5400準拠)を測定した。
【0066】(12)塗膜の加工性 厚さ0.19mmの金属板(ティンフリースチール板)
上に塗膜を形成させたものについて、塗膜が外側になる
ように、しかも折り曲げ部に上記と同じ厚さの金属板を
何枚か挟んだ状態で折り曲げ、屈曲部の塗膜に割れが発
生するかどうかを100倍の蛍光顕微鏡で観察して判定
した。このとき、屈曲部に挟む金属板の枚数を変化さ
せ、上記の割れが発生しない最少枚数nを加工性の指標
とし、nTと表示した。このとき、nの数値が小さいほ
ど加工性に優れていることを示す。
【0067】(13)塗膜の鉛筆硬度 JIS S−6006に規定された高級鉛筆を用い、J
IS K−5400に準じて測定した。
【0068】(14)塗膜の耐溶剤性 キシレンを含浸させたガーゼを用いて塗膜をこすり、基
材の金属面が現れるまでの往復回数を記録し、これを耐
溶剤性の指標とした。
【0069】(15)塗膜の耐熱水性 塗膜を有する金属板を70℃の熱水浴中に1時間浸漬し
た後に風乾するという処理を行い、上記(10)の方法
で塗膜の光沢度を測定し、下記数式[V]により光沢保持
率(%)を求め、耐熱水性の指標とした。
【0070】
【数5】
【0071】また、実施例及び比較例で用いたポリエス
テル樹脂は、下記のようにして得られた。 [ポリエステル樹脂A−1〜A−10の製造]テレフタル
酸1,578g、イソフタル酸83g、エチレングリコ
ール372g、ネオペンチルグリコール470g、1,
4−ブタンジオール162gをそれぞれ用意し、これら
を混合して、オートクレーブ中において260℃で2.
5時間加熱してエステル化反応を行った。次いで触媒と
してのテトラ−n−ブチルチタネートを0.88g添加
し、系の圧力を徐々に減じて1時間後に0.1Torr
とした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、1.5
時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げて2
50℃になったところでイソフタル酸33.2gと無水
トリメリット酸38.4gとを添加し、245℃で35
分間撹拌した後、窒素ガスで加圧状態にしておいて、シ
ート状に樹脂を払い出した。そしてこれを室温(約25
℃)まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩
を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリ
エステル樹脂A−1として得た。同様の方法で、酸成分
とアルコール成分の構成が下記表1に示される条件とな
るようにして、ポリエステル樹脂A−2〜A−10を得
た。
【0072】[ポリエステル樹脂A−11の製造]テレフ
タル酸1,329g、イソフタル酸166g、アジピン
酸146g、エチレングリコール434g、ネオペンチ
ルグリコール625gをそれぞれ用意し、これらを混合
して、オートクレーブ中において260℃で2.5時間
加熱してエステル化反応を行った。次いで二酸化ゲルマ
ニウム0.265gを添加し、系の温度を30分で28
0℃に昇温してから、系の圧力を徐々に減じて1時間後
に0.1Torrとした。この条件下でさらに重縮合反
応を続け、1.7時間後に系を窒素ガスで常圧に戻し、
系の温度を下げて255℃になったところでトリメリッ
ト酸42gを添加し、250℃で10分間攪拌を続けて
第1段階の解重合を行った。そして、さらに系を220
℃まで降温し、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ
フェニル)プロパン63.3gを添加して、この温度で
50分間攪拌して第2段階の解重合反応を行った。その
後、上記のポリエステル樹脂A−1を得た場合と同様
に、シート状に払い出した樹脂を粉砕、分画・採取し
て、粒状のポリエステル樹脂A−11を得た。
【0073】[ポリエステル樹脂A−12の製造]第1段
階の解重合を行う際に、トリメリット酸42gの代わり
にイソフタル酸33.2gを添加する以外は上記のポリ
エステル樹脂A−11を得た場合と同様にして、ポリエ
ステル樹脂A−12を得た。
【0074】上記のようにして得られたそれぞれのポリ
エステル樹脂の特性を調べた結果について、下記表1に
示す。なお、これらのポリエステル樹脂のうち、本発明
におけるポリエステル樹脂としての要件を満たすもの
は、A−1〜A−6、及びA−11であった。また、ポ
リエステル樹脂A−1及びA−4については、テトラヒ
ドロフランに溶解しなかったため、重量平均分子量を測
定することができなかった。
【0075】
【表1】
【0076】[ポリエステル樹脂水性溶液の製造]上記の
各ポリエステル樹脂を用いて、以下に示す方法によって
ポリエステル樹脂水性溶液を製造した。
【0077】実施例1 ジャケット付きの5Lガラス容器を備え、しかも装着時
にはこれが密閉状態となる複合型撹拌機(特殊機化工業
製「T.K.Combimix 3M−5」)を用い
て、ガラス容器内に蒸留水を1760g、エチレングリ
コール−n−ブチルエーテル(以下、EG−Buと略記
する)を300g、ポリエステル樹脂A−1を900
g、そしてN,N−ジメチルエタノールアミン(以下、
DMEAと略記する)を48.8g(ポリエステル樹脂
A−1中の全カルボキシル基に対して1.25倍当量に
相当)投入し、高速剪断型の撹拌翼(ホモディスパー)
の回転数を6,000rpm、アンカーミキサーの回転
数を15rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹
脂粒状物の沈澱が認められず、完全浮遊状態となってい
ることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10
分後にジャケットに熱水を通して加熱した。そして系内
温度が65℃に達したところでホモディスパーの回転数
を7,000rpmに上げ、この20分後には系内温度
が70℃を超えた。そこで系内温度を73〜77℃に保
ってさらに30分間撹拌した後、ジャケット内に冷水を
通し、ホモディスパーの回転数を3,000rpmに下
げて攪拌しつつ室温付近(約25℃)まで冷却し、ポリ
エステル樹脂水性溶液を得た。
【0078】実施例2〜8,10〜14 ポリエステル樹脂、塩基性化合物及び有機溶剤の種類や
仕込み量を変化させて、下記表2に示す仕込み条件とし
て、上記の実施例1と同様の操作によってポリエステル
樹脂水性溶液を得た。このとき、実施例5及び13にお
いては、蒸留水の仕込み量を1,000gとした。
【0079】実施例9 実施例1で使用したのと同じ複合型攪拌機を用い、ガラ
ス容器内に蒸留水を1760g、ポリエステル樹脂A−
5を900g、そしてトリエチルアミン(以下、TE
A)を29.1g(ポリエステル樹脂A−5中の全カル
ボキシル基に対して1.40倍当量に相当)を投入し、
ホモディスパーの回転数を5,800rpm、アンカー
ミキサーの回転数を20rpmとして撹拌したところ、
容器底部には樹脂粒状物の沈澱が認められず、完全浮遊
状態となっていることが確認された。そこでこの状態を
保ちつつ、10分後にジャケットに熱水を通して加熱し
た。そして系内温度が60℃に達したところでホモディ
スパーの回転速度を6,500rpmに上げ、EG−B
uを1分間に50gの割合で合計450g添加しつつさ
らに昇温したところ、60℃に達してから30分後には
系内温度が70℃を超えた。そこで系内温度を73〜7
5℃に保ってさらに30分間撹拌した後、ジャケット内
に冷水を通し、ホモディスパーの回転数を3,000r
pmに下げて攪拌しつつ室温付近(約25℃)まで冷却
し、ポリエステル樹脂水性溶液を得た。
【0080】なお、上記の実施例1〜14における仕込
み条件を下記表2に示す。また、得られたポリエステル
樹脂水性溶液の特性を調べた結果を下記表3に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】比較例1〜8 ポリエステル樹脂、塩基性化合物及び有機溶剤の種類や
仕込み量を変化させて、下記表4に示す仕込み条件とし
て、上記の実施例1と同様の操作によってポリエステル
樹脂水性溶液もしくは水分散体を得た。
【0084】比較例9 EG−Buを300g用いる代わりにエタノールを60
0g用いる他は実施例1と同様にして、ポリエステル樹
脂A−1の水性溶液化を試みたが、ポリエステル樹脂は
軟化したものの撹拌を止めると塊状化し、ポリエステル
樹脂水分散体さえも得られなかった。
【0085】比較例10 EG−Buを300g用いる代わりに酢酸−n−ブチル
を600g用いる他は実施例1と同様にして、ポリエス
テル樹脂A−1の水性溶液化を試みたが、白色のポリエ
ステル樹脂水分散体は得られたが、ポリエステル樹脂水
性溶液を得ることはできなかった。
【0086】なお、上記の比較例1〜10における仕込
み条件を下記表4に示す。また、得られたポリエステル
樹脂水性溶液もしくは水分散体の特性を調べた結果を下
記表5に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】さらに、上記の実施例2,3,5,9,1
0,13及び比較例4,5で得られたポリエステル樹脂
水性溶液について、耐加水分解性を調べた結果を下記表
6に示す。
【0090】
【表6】
【0091】[塗膜の形成] 実施例15〜21及び比較例11,12 上記の実施例1,4,7,8,10,11,14及び比
較例6,7で得られたポリエステル樹脂水性溶液とメラ
ミン樹脂(上記した他成分B−1)とを固形分比で80
/20となるように配合し、卓上型のホモミキサー(特
殊機化工業製「T.K.ロボミックス」)を用いて、室温
下で3,000rpmで30分間撹拌を続けることによ
り、混合液を調製した。この混合液を市販のティンフリ
ースチール板(厚さ0.19mm)の表面に、乾燥膜厚
が8μmになるように、卓上型コーティング装置(安田
精機製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、
バーコータ装着)を用いて、乾燥膜厚が8μmになるよ
うに均一に塗装した後、180℃に設定したオーブン中
に10分間保持することにより、乾燥、焼き付けをし
た。このようにして得られた塗膜の特性を調べた結果を
下記表7に示す。
【0092】
【表7】
【0093】以上の実施例と比較例の結果から、本発明
のポリエステル樹脂水性溶液は、高濃度でも流動特性が
良好で、しかも貯蔵安定性、混合安定性に優れているこ
とが明らかになった。また、本発明のポリエステル樹脂
水性溶液を使用して得られる塗膜は、ポリエステル樹脂
が高分子量であるため加工性が良好で溶剤に対する耐性
を有しており、しかもポリエステル樹脂の酸価が適正で
あるため熱水に対する耐性も有しており、光沢度や硬度
も良好であることが明らかになった。
【0094】
【発明の効果】本発明のポリエステル樹脂水性溶液は、
貯蔵安定性及び混合安定性に優れ、これより形成される
被膜は、上記のポリエステル樹脂が本来有する優れた光
沢、硬度、各種基材への密着性、加工性、耐溶剤性、耐
候性等を兼ね備えているだけでなく、特に耐水性にも優
れるという特長を有する。さらに、本発明のポリエステ
ル樹脂水性溶液は、上記の特長に加えてニュートニアン
に近い良好な流動特性を有しているため、コーティング
剤のバインダー成分として使い易く、特に高速コートや
スクリーン印刷等が適用される塗料、接着剤、インキ、
繊維処理剤、紙塗工剤や各種コーティング剤として幅広
い用途に有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 千塚 健史 京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ株 式会社中央研究所内 (72)発明者 畑 喜代美 京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ株 式会社中央研究所内 Fターム(参考) 4J002 CF011 CF031 CF041 CF051 CF061 CF081 CF091 CF101 DE028 EC037 EC047 ED027 ED037 EE027 EN026 EN036 EN096 EN106 EU076 EU236 FD090 FD140 FD170 FD180 FD200 FD330 GH01 GH02 GJ01 GK02 HA04

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記(A)〜(D)成分からなり、
    (C)成分の重量比率が下記数式[I]に示される範囲に
    あることを特徴とするポリエステル樹脂水性溶液。 (A)多塩基酸成分と多価アルコール成分とより構成さ
    れ、多塩基酸成分の60モル%以上が芳香族多塩基酸成
    分であり、多価アルコール成分の40モル%以上がエチ
    レングリコール成分であり、かつ、酸価が12〜45m
    gKOH/gであり、重量平均分子量が10,000以
    上であるか又は相対粘度が1.22以上であるポリエス
    テル樹脂。 (B)塩基性化合物 (C)ケトン、アルコール、又は、1個以上の水酸基を
    有するグリコール類から選ばれ、炭素が直接3個以上結
    合した構造を有する両親媒性の有機溶剤。 (D)水 【数1】
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