JP4056606B2 - 水系塗料組成物、その製造方法及びそれから得られる塗膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系塗料組成物及びその製造方法、更には該水系塗料組成物より形成される塗膜に関するものである。更に詳しくは、塗料の貯蔵安定性に優れており、しかも、光沢、金属板への密着性、耐水性、耐薬品性、加工性及び硬度等に優れた塗膜を形成し得る水系塗料組成物及びそれより形成される塗膜であり、特に缶用塗料やプレコートメタル(PCM)用塗料として好適な水系塗料組成物に関するものである。そして、特殊な設備や煩雑な操作を必要とせずに容易に製造できる該水系塗料組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
実質的に多塩基酸成分と多価アルコール成分より成る高分子量のポリエステル樹脂(所謂、オイルフリーアルキド樹脂)は、繊維、フィルムや各種成形材料として使用されているばかりでなく、塗料、インキ、接着剤、各種コーティング剤等の分野においても、良好な顔料分散性、形成される塗膜の優れた加工性、耐薬品性、耐候性、各種基材への密着性等により、各種のバインダー成分として大量に使用されている。その中でも、缶用塗料やPCM用塗料としては、ポリエステル樹脂/アミノ樹脂、ポリエステル樹脂/多官能イソシアネート化合物等の焼付け塗料が種々提案されており、実用化されている。しかしながら、これらの塗料は、有機溶剤を含むため、消防法等に規定された危険物であり、作業環境の悪化を招くばかりか、焼付け時に多量の有機溶剤が揮発することから、環境汚染や省資源の点からも好ましくない。この観点から、塗料業界でも従来の溶剤型塗料から、粉体塗料、ハイソリッド塗料、水系塗料、紫外線・電子線硬化(UV・EB)塗料への移行が進みつつある。その中でも、水系塗料は、溶剤型塗料と同様に液状であり、現行の塗料製造及び塗装ラインをほぼそのまま使用できるといった長所を有するため、代替技術のうちで最も有望視されている。
【0003】
飲料缶、食缶をはじめとする金属缶に用いられる缶用塗料や建築内外装材、家電製品等に使用されるPCM用塗料に要求される代表的な性能としては、塗料の貯蔵安定性及び塗膜の金属板への密着性、耐薬品性、耐水性、耐候性は勿論のことながら、塗装、焼付け後に施される種々の成形、加工に耐え得る塗膜の加工性(可撓性)及び成形時、或いは輸送時の摩擦等により傷が付かない塗膜硬度(耐傷付き性)を必要とする。しかしながら、塗膜の加工性と硬度は一般に相反する性能であり、両者を両立させることは困難であり、ましてや水系塗料で前述の塗料の安定性や塗膜性能を兼ね備えてこれを達成することは極めて困難であった。
【0004】
これに対して本発明者等は、特定のポリエステル樹脂水分散体に特定の親水性のアミノ樹脂を適当量を配合することによって、これらの問題を解決できることを先に見いだした。しかし、この発明によって得られた水系塗料組成物から形成される塗膜は、配合や焼き付け条件等を最適化しても、その耐水性は十分とはいえず、該水系塗料組成物についても、なお、その貯蔵安定性を向上させる必要があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状を鑑みてなされたものであり、その第一の目的は、塗料の貯蔵安定性が更に改善され、かつ金属板への密着性、耐薬品性、耐候性、加工性や硬度等の性能だけでなく、特に光沢や耐水性に優れた塗膜を形成し得る水系塗料組成物を提供すること、該水系塗料組成物から得られ、前記のように優れた性能を有する塗膜を提供することにある。
また、本発明の第二の目的は、該水系塗料組成物を、特殊な設備や煩雑な操作を必要とせずに容易に、しかも安価に製造できる製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題のうちの塗膜の耐水性を向上させることにまず注目し、塗膜の耐水性を低下させる原因物質として、ポリエステル樹脂水分散体中に含まれる保護コロイド作用を有する化合物を考えた。そこでこの含有量の少ないポリエステル樹脂水分散体を用いて、これと親水性のアミノ樹脂との配合を試みた。しかし、得られた水系塗料組成物の貯蔵安定性については改善効果は認められず、上記課題を解決するには至らなかった。
更に、ポリエステル樹脂の酸価や分子量分布、有機溶剤の含有量等を変化させて検討を行ったが、水系塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される塗膜の耐水性を同時に満足させることはできなかった。
【0007】
これに対して、本発明者等は、ポリエステル樹脂から均一で安定な水分散体を得る方法を先に見いだしているが(特願平8−51362号公報)、該方法に従ってポリエステル樹脂水分散体の製造を行った際に、親水性のアミノ樹脂を特定の条件下で系に添加することによって上記問題を一挙に解決できることを見いだした。そして更に驚くべきことに、該製造方法に従えば、(1)水系塗料組成物の優れた貯蔵安定性を確保しながら、有機溶剤の含有率を著しく低減でき、有機溶剤を全く含まない水系塗料組成物の製造さえも可能であること、(2)塗膜の耐水性だけでなく、加工性及び硬度の両特性も更に向上できることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、
第1に、下記成分(A)〜(F)を少なくとも含有し、成分(A)と(B)の重量比(A)/(B)が95/5〜60/40であることを特徴とする水系塗料組成物である。
(A)多塩基酸成分と多価アルコール成分より実質的に構成され、多塩基酸成分の50モル%以上が芳香族多塩基酸であり、多価アルコール成分が主としてエチレングリコール及び/又はネオペンチルグリコールで構成されており、酸価が8〜36mgKOH/gであり、数平均分子量が4,000以上で分子量分布の分散度が4.0以上であるポリエステル樹脂
(B)平均重合度が5以下の親水性アミノ樹脂
(C)アンモニア及び/又は沸点が250℃以下の有機アミン化合物
(D)成分(A)に対して可塑化能力を有する両親媒性の有機溶剤が水系塗料組成物に対して12重量%以下
(E)保護コロイド作用を有する化合物が成分(A)及び(B)の合計に対して0.05重量%以下
(F)水
【0009】
第2に、分散工程、加熱工程、水性化工程及び冷却工程から成り、前記分散工程では、撹拌下に下記成分(A)の全部と成分(B)〜(E)の全部又は一部を水媒体中に粗分散させ、加熱工程及び水性化工程においては、水性化工程が終了する前までに、撹拌下に残りの成分を加え、あるいは加えつつ、60℃及び成分(A)のガラス転移温度のうちの高い方の温度〜90℃に加熱し、この温度で粗大粒子が系内になくなるまで継続して撹拌することを特徴とする水系塗料組成物の製造方法である。
(A)多塩基酸成分と多価アルコール成分より実質的に構成され、多塩基酸成分の50モル%以上が芳香族多塩基酸であり、多価アルコール成分が主としてエチレングリコール及び/又はネオペンチルグリコールで構成されており、酸価が8〜36mgKOH/gであり、数平均分子量が4,000以上で分子量分布の分散度が4以上であるポリエステル樹脂
(B)平均重合度が5以下の親水性アミノ樹脂
(C)アンモニア及び/又は沸点が250℃以下の有機アミン化合物
(D)成分(A)に対して可塑化能力を有する両親媒性の有機溶剤が水系塗料組成物に対して12重量%以下
(E)保護コロイド作用を有する化合物が成分(A)及び(B)の合計に対して0.05重量%以下
【0010】
第3に、前記水系塗料組成物より得られ、60゜グロスが85%以上であることを特徴とする塗膜である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
(ポリエステル樹脂)
本発明の水系塗料組成物を構成する成分(A)であるポリエステル樹脂は、本来それ自身で水に分散又は溶解しない本質的に疎水性のものであり、多塩基酸成分と多価アルコール成分より実質的に構成されるものであって、多塩基酸、多価アルコール類より実質的に合成されるものである。以下に該ポリエステル樹脂の構成成分について説明する。
【0012】
ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸としては、芳香族多塩基酸、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸が挙げられ、芳香族多塩基酸のうちの芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、インデンジカルボン酸等を挙げることができ、必要に応じて耐水性を損なわない範囲で少量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸や5−ヒドロキシイソフタル酸を用いることができる。脂肪族多塩基酸のうちの脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、(無水)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、水添ダイマー酸等の飽和ジカルボン酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和ジカルボン酸等を挙げることができ、脂環族多塩基酸のうちの脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸(無水物)、テトラヒドロフタル酸(無水物)等を挙げることができる。
【0013】
全多塩基酸成分に占める芳香族多塩基酸成分の含有率の合計は、50モル%以上である必要がある。この値が50モル%未満の場合には、脂肪族多塩基酸及び脂環族多塩基酸に由来する構造が樹脂骨格中の過半を占めるため、形成される塗膜の硬度、耐汚染性、耐薬品性、耐水性が低下し、脂肪族及び脂環族のエステル結合は芳香族エステル結合に比して耐加水分解性が低いために、水系塗料組成物の貯蔵安定性が低下することがある。水系塗料組成物の貯蔵安定性及び優れた塗膜性能(特に塗膜硬度)を確保するためには、全多塩基酸成分に占める芳香族多塩基酸成分の含有率は60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、形成される塗膜の他の性能とバランスをとりながらその加工性、耐水性、耐汚染性、耐薬品性、耐候性を向上させることができる点において、ポリエステル樹脂を構成する全多塩基酸成分の65モル%以上がテレフタル酸であることは、本発明の目的を達成するうえで特に好ましい態様である。
【0014】
一方、ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールとしては、グリコールが挙げられ、グリコールとしては、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数が6〜12の脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコールを挙げることができる。炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等が挙げられ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、更にビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。分子量200〜2,000のポリエチレングリコール、同ポリプロピレングリコール、同ポリテトラメチレングリコールも必要により使用し得る。ただし、エーテル構造は塗膜の耐水性、耐候性を低下させることから、その使用量は全多価アルコール成分の10重量%以下、更には5重量%以下にとどめるべきである。
【0015】
本発明においては、ポリエステル樹脂を構成する全多価アルコール成分の50モル%以上、更には65モル%以上がエチレングリコール及び/又はネオペンチルグリコールからなるグリコール成分で実質的に構成されていることが好ましい。エチレングリコール及びネオペンチルグリコールは工業的に多量に生産されていることから安価であり、しかも形成される塗膜の諸性能にバランスがとれ、エチレングリコール成分は特に耐薬品性を、ネオペンチルグリコール成分は特に耐候性を向上させるという長所を有する。
【0016】
本発明で使用されるポリエステル樹脂は、必要に応じて3官能以上の多塩基酸及び/又は多価アルコールを共重合することができる。3官能以上の多塩基酸としては(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が使用される。一方、3官能以上の多価アルコールとしてはグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用される。3官能以上の多塩基酸又は多価アルコールは、全多塩基酸成分あるいは全多価アルコール成分に対し、0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%の範囲で共重合されるが、10モル%を越えるとポリエステル樹脂の長所である塗膜の高加工性が発現されなくなる。
【0017】
また、必要に応じて、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸やそのエステル形成性誘導体、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等の高沸点のモノカルボン酸、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等の高沸点のモノアルコール、ε−カプロラクトン、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やそのエステル形成性誘導体を使用してもよい。
【0018】
かかるポリエステル樹脂は、前記のモノマー類より公知の各種の方法を用いて合成される。例えば、(a)全モノマー成分及び/又はその低重合体を不活性雰囲気下で180〜250℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応を行い、引き続いて触媒の存在下、1Torr以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めてポリエステル樹脂を得る方法、(b)前記重縮合反応を、目標とする分子量に達する以前の段階で終了し、反応生成物を次工程で多官能のエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、オキサゾリン系化合物等から選ばれる鎖長延長剤と混合し、短時間反応させることにより高分子量化を図る方法、(c)前記重縮合反応を目標とする分子量以上の段階まで進めておき、モノマー成分を更に添加し、不活性雰囲気、常圧〜加圧系で解重合を行うことで目標とする分子量のポリエステル樹脂を得る方法等を挙げることができる。
【0019】
ポリエステル樹脂の酸価としてその含有量が表されるカルボキシル基は、ポリエステル樹脂の微粒子の形成(水性化)に必要な基であり、樹脂骨格中に存在するよりも樹脂分子鎖の末端に偏在していることが、得られる水系塗料組成物の安定性及び形成される塗膜の耐水性の面から好ましい。副反応やゲル化等を伴わずに、高分子量のポリエステル樹脂の分子鎖末端にカルボキシル基を導入する方法としては、前記の方法(a)において、重縮合反応の開始時以降に3官能以上の多塩基酸、或いはそのエステル形成性誘導体を添加するか、或いは、重縮合反応の終了直前に多塩基酸の酸無水物を添加する方法、前記の方法(b)において、大部分の分子鎖末端がカルボキシル基である低分子量ポリエステル樹脂を鎖長延長剤により高分子量化させる方法、前記の方法(c)において、解重合剤として多塩基酸、或いはそのエステル形成性誘導体を使用する方法等が好ましい態様である。
ただし、200℃以上の高温下では常にエステル交換反応が競争反応として起こり、その結果、該樹脂の分子量分布の分散度が経時で低下してしまう。従って、上記のいずれの方法においても、最終工程は、系が平衡状態に達する以前の段階で反応を終了すべきである。
【0020】
上記の方法で製造されるポリエステル樹脂の酸価は8〜36mgKOH/g、好ましくは8〜33mgKOH/g、更に好ましくは10〜30mgKOH/gである。この酸価が36mgKOH/gを越えると、形成される塗膜の耐水性が劣る場合がある。一方、酸価が8mgKOH/g未満の場合は、水性化に寄与するカルボキシル基量が十分でなく、良好な水系塗料組成物を得ることができない。
また、かかるポリエステル樹脂は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー,ポリスチレン換算)で測定される数平均分子量が4,000以上でなくてはならない。数平均分子量が4,000未満の場合、該ポリエステル樹脂を含む水系塗料組成物から形成される塗膜に十分な加工性、耐薬品性ばかりでなく耐水性も付与されない。ポリエステル樹脂の数平均分子量は4,500以上、更には5,000以上が特に好ましい。上限については20,000以下が好ましい。20,000を越えると、ポリエステル樹脂に十分な酸価を付与することが困難になるばかりでなく、酸価が十分であっても、このようなポリエステル樹脂を使用した水系塗料組成物では粘度が異常に高くなることがある。
【0021】
本発明においては、上記GPCから求められるポリエステル樹脂の重量平均分子量を数平均分子量で除した値として定義される分子量分布の分散度が4.0以上であることが、該樹脂を用いた水系塗料組成物から形成される塗膜が優れた耐水性を発現するために特に重要である。すなわち、分子量分布の分散度(以下、分散度と略す)が4.0未満であると、特に低酸価のポリエステル樹脂を用いた場合の水性化が円滑に進行しなくなり、たとえ水系塗料組成物が得られたとしても、その貯蔵安定性を満足し得るものとするために必要な有機溶剤や保護コロイド作用を有する化合物の添加量が多くなってしまい、結果として塗膜の耐水性を向上させることができなくなってしまう。ポリエステル樹脂の分散度は、4.3以上、更には4.5以上が好ましい。上限については15以下が好ましい。15を越えるようなポリエステル樹脂の製造はその条件を過度に制御しなければならないため非常に困難であるばかりでなく、数平均分子量に関する上記条件を満足するのが難しくなる。
【0022】
(アミノ樹脂)
本発明の水系塗料組成物には、水系塗料組成物の硬化剤として親水性アミノ樹脂(成分(B))を含有する必要がある。
アミノ樹脂は、尿素及び/又はメラミンにホルムアルデヒドとアルコール(ROH)が付加縮合したものの総称である。本発明では、全骨格構造の70モル%以上が尿素及び/又はメラミンより構成されることが好ましい。このように、アミノ樹脂の基本骨格として尿素及びメラミンが使用されることが望ましいが、親水性を阻害しない程度、すなわち、全骨格構造の30モル%未満の範囲でアセトグアナミン、ベンゾグアナミン、グリコールウリル等の疎水性の骨格構造を導入してもよい。これらの疎水性の骨格構造を30モル%以上含有すると、有機溶剤の含有率を低減できない場合があり、得られた水系塗料組成物の粘度が高くなる場合がある。
【0023】
また、基本骨格を形成するこれらの含アミノ化合物に対して、全アミノ基の2倍当量のホルムアルデヒド及びアルコール(ROH)を付加縮合させる必要はなく、実際にはこれらの反応の際にはある程度の自己縮合を伴うことから、本発明でいうアミノ樹脂とは、上記の骨格構造を成す含アミノ化合物のアミノ基が、(a)そのまま残存しているか(−NH2 )、(b)イミノメチロール基(−NHCH2 OH)、(c)イミノアルキルエーテル基(−NHCH2 OR)、(d)ジメチロールアミノ基{−N(CH2 OH)2 }、(e)部分アルキルエーテル化ジメチロールアミノ基{−N(CH2 OH)CH2 OR}、(f)完全アルキルエーテル化ジメチロールアミノ基{−N(CH2 OR)2 }のいずれかの構造に変換され、しかもこれら(a)〜(f)が縮合して単量体〜数十量体に高分子量化した複雑で様々な構造を含有する化合物の総称である。但し、本発明では、その平均重合度は5以下でなければならない。平均重合度が5を越えると、もはや親水性とはいえなくなり、後述する水系塗料組成物の製造の際に、系が著しく増粘するか、該アミノ樹脂由来の粗粒子を含むものしか得られない場合がある。平均重合度としては1.2〜3.5、更には1.2〜3.0が好ましい。また、アルコール(ROH)としては、該アミノ樹脂中のアルキルエーテル基の70モル%以上、好ましくは80モル%以上がメチルエーテル基でなければならない。その他のアルキルエーテル基としては、エチルエーテル基、n−プロピルエーテル基、イソプロピルエーテル基、n−ブチルエーテル基、イソブチルエーテル基、tert−ブチルエーテル基等を例示できるが、メチルエーテル基の含有率が70モル%未満の場合には、水系塗料組成物を得る際に有機溶剤の含有率を低減できない場合があり、得られた水系塗料組成物の粘度が高くなる場合がある。
【0024】
本発明の水系塗料組成物の樹脂固形分は特に限定されるものではないが、通常、5〜60重量%の範囲が好ましい。樹脂固形分において、ポリエステル樹脂(A)と親水性のアミノ樹脂(B)の重量比(A)/(B)は95/5〜60/40であり、90/10〜65/35が好ましく、88/12〜70/30であることがより好ましい。重量比(A)/(B)が95/5を超える場合には、どのような乾燥、焼き付け条件を採用しても、塗膜の耐傷つき性、耐薬品性、耐水性等は十分ではない。一方、(A)/(B)が60/40未満の場合には、安定な水系塗料組成物が得られないか、塗膜の加工性が低下する場合がある。
【0025】
(塩基性化合物)
本発明の水系塗料組成物には、樹脂微粒子間の凝集を防ぐために、塩基性化合物を使用することが必要である。この塩基性化合物は水性化に際して使用され、ポリエステル樹脂中のカルボキシル基を中和することに消費されることが好ましく、中和反応で生成したカルボキシアニオン間の電気反発力によって、或いは、後述のごく少量の特定の保護コロイド作用を有する化合物との併用により、特にポリエステル樹脂微粒子間の凝集を防ぎ、水系塗料組成物として優れた貯蔵安定性を発現することができる。塩基性化合物としては塗膜形成時、或いは焼き付け時に揮散する化合物が好ましく、アンモニア及び/叉は沸点が250℃以下の有機アミン化合物を使用する(成分(C))。望ましい有機アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。塩基性化合物は、ポリエステル樹脂中に含まれるカルボキシル基に応じて、少なくとも部分中和し得る量、すなわち、カルボキシル基に対して0.5〜1.5倍当量を添加することが望ましい。0.5倍当量未満では塩基性化合物添加の効果が認められない恐れがあり、1.5倍当量を越えると、水系塗料組成物が著しく増粘する場合があり、また貯蔵安定性にも劣る場合がある。
【0026】
(有機溶剤)
本発明においては、生成した水系塗料組成物の安定性を確保する目的で、或いは、後述の水性化処理速度を加速させる目的で、該ポリエステル樹脂に対して可塑化能力を有する両親媒性の有機化合物(成分(D))を含有してもよい。但し、沸点が250℃を越えるものは、あまりに蒸発速度がおそく、塗膜の焼き付け時にもこれを十分に取り除くことができないため、沸点が250℃以下であり、しかも毒性、爆発性や引火性の低い、いわゆる、有機溶剤と呼ばれる汎用の化合物が対象となる。
【0027】
本発明でいう有機溶剤に要求される特性は、両親媒性であること、前記のポリエステル樹脂に対して可塑化能力を有することである。ここで両親媒性の有機溶剤とは、20℃における水に対する溶解性が少なくとも5g/L以上、望ましくは10g/L以上であるものをいう。この溶解性が5g/L未満のものは、水性化処理速度を加速させる効果に乏しく、安定性が十分ではない水系塗料組成物しか提供できない。また、有機溶剤の可塑化能力は、次のような簡便な試験によって判断することができる。すなわち、対象とするポリエステル樹脂から3cm×3cm×0.5cm(厚さ)の角板を試作し、これを50mlの有機溶剤に浸漬して25〜30℃の雰囲気で静置する。3時間後に角板の形状が明らかに変形しているか、或いは、厚さ方向に対して1kg/cm2 の力を静的に加えながら0.2cm径のステンレス製の丸棒を接触させた際に、丸棒の0.3cm以上が角板に侵入する場合、その有機溶剤の可塑化能力はあると判断される。可塑化能力が無いと判断される有機溶剤は、水性化処理速度を加速させる効果及び得られた水系塗料組成物の水媒体中に分散している樹脂微粒子を安定化させる効果に乏しい。
【0028】
かかる有機溶剤としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール、シクロヘキノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、更には、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等を例示することができる。これらの溶剤は単一でも、また2種以上を混合しても使用できる。
【0029】
これら例示した有機溶剤のうち、以下の2条件を満足する化合物を単一で使用するか、また2種以上を混合して使用する場合、水性化処理速度を加速させる効果が特に優れるばかりでなく、該有機溶剤の含有率が低くても得られた水系塗料組成物の安定性に優れ、しかも塗膜形成性にも優れる等の長所を有し、特に好ましい態様である。
(条件1)分子中に、炭素原子が直接4個以上結合した疎水性構造を有すること(条件2)分子末端に、ポーリング(Pauling)の電気陰性度が3.0以上の原子を1個以上含有する置換基を有し、該置換基中の電気陰性度が3.0以上の原子と直接結合している炭素原子の13C−NMR(核磁気共鳴)スペクトルのケミカルシフトが、室温、CDCl3 中で測定した場合に50ppm以上であるような極性の置換基を有すること
【0030】
(条件2)で規定される置換基としては、アルコール性ヒドロキシル基、メチルエーテル基、ケトン基、アセチル基、メチルエステル基等を例示でき、前記2条件を満足する化合物のうち、特に好適な有機溶剤としては、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル等のエステル類、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、更には、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール等を例示することができる。
【0031】
かかる有機溶剤は、沸点が100℃以下であったり、水と共沸可能であれば、後述の水性化工程中、あるいはその後の工程でその一部又はその全てを系外に除去(ストリッピング)することができ、最終的にはその含有率は水系塗料組成物に対して12重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは8重量%以下である必要がある。水系塗料組成物に対して該有機溶剤の含有率が12重量%を越えると、水系塗料本来の目的が損なわれるだけでなく、水系塗料組成物の粘度が異常に高くなったり、貯蔵安定性に劣ったりするという不具合を生じる場合がある。
また、後述する製造方法に従えば、有機溶剤の含有率を著しく低減できるか、或いはこれを全く含有しないにも拘らず、貯蔵安定性に優れた水系塗料組成物を得ることができる。
【0032】
(保護コロイド作用を有する化合物)
本発明では、前述した有機溶剤を系外に除去(ストリッピング)する工程での安定性、そして水系塗料組成物の貯蔵安定性や他成分との混合安定性を確保する目的で、保護コロイド作用を有する化合物(成分(E))を使用することができる。本発明でいう保護コロイド作用を有する化合物(以下単に、保護コロイド)とは、水媒体中の樹脂微粒子の表面に吸着し、いわゆる、「混合効果」、「浸透圧効果」、或いは「容積制限効果」と呼ばれる安定化効果を示して樹脂微粒子間の凝集を防ぐ作用を有するものであり、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を一成分とするビニル単量体の重合物、ポリイタコン酸、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、膨潤性雲母等を例示することができる。かかる化合物は水溶性、或いは、塩基性化合物で部分的に中和することによって水溶化するが、形成される塗膜の耐水性を損なわないためには、該塩基性化合物はアンモニア及び/又は前記の有機アミン化合物でなければならない。また、少量添加で保護コロイドとしての作用を発現し、形成される塗膜の耐水性、耐薬品性等を損なわないためには、該保護コロイド作用を有する化合物の数平均分子量は2,000以上が好ましく、2,500以上がより好ましく、更には3,000以上が好ましい。
かかる保護コロイド作用を有する化合物は、ポリエステル樹脂及び親水性アミノ樹脂の合計に対して0.05重量%以下、更に好ましくは0.01重量%以下で使用すれば、形成される塗膜の諸性能、特に耐水性を低下させること無く、上述の各種安定性を著しく向上させることができる。
また、後述する製造方法に従えば、保護コロイド作用を有する化合物を全く含有しなくても、優れた貯蔵安定性や他成分との混合安定性を有する水系塗料組成物を得ることができる。
【0033】
(水系塗料組成物の製造方法)
本発明では、上述の各成分を用いて以下の方法により、特殊な設備や煩雑な操作を必要とせず容易にしかも安価に目的とする水系塗料組成物を製造することができる。すなわち、この製造方法は、分散工程、加熱工程、水性化工程及び冷却工程の実質的に4つの工程より成っており、分散工程においては、撹拌下に前記ポリエステル樹脂である成分(A)の全部と前記の成分(B)〜(E)の全部又は一部を水媒体中に粗分散させ、加熱工程及び水性化工程においては、水性化工程が終了する前までに(実施例によれば10分前までに)、撹拌下に残りの成分を加え、或いは加えつつ、60℃及びポリエステル樹脂のガラス転移温度のうちの高い方の温度〜90℃に加熱し、この温度で粗大粒子が系内になくなるまで(実施例によれば20〜150分間)継続して、撹拌を行うことにより、樹脂の微粒子化を達成し、冷却工程においては、得られた水分散体を40℃以下まで冷却するというものである。本発明の目的とする水系塗料組成物を得るためには、これらはいずれも不可欠の工程であり、連続して実施されなければならない。
【0034】
処理装置としては、槽内に投入された水媒体と樹脂粉末ないしは粒状物等から成る混合物を適度に撹拌でき、槽内を60〜90℃に加熱できればよく、固/液撹拌装置や乳化機として広く当業者に知られている装置を使用することができる。かかる装置として、プロペラミキサー、タービンミキサーのような一軸の撹拌機、タービン・ステータ型高速回転式撹拌機(特殊機化工業社製:「T.K.Homo−Mixer」、「T.K.Homo−Jettor」、IKA−MASCHINENBAU社製:「Ultra−Turrax」)、高速剪断型ミキサと槽壁面を掻き取るスクレーパ付き低速摺動型の混練パドルやアンカーミキサを併設したような複合型撹拌機(特殊機化工業社製:「T.K.Agi−Homo−Mixer」、「T.K.Combimix」)等を例示することができる。処理装置は、バッチ式であってもよく、原料投入と処理物の取り出しを連続で行うような連続生産式のものであってもよい。また処理槽は密閉できるものが好ましいが、使用する有機溶剤の沸点が100℃以上であれば開放型のものであっても作業に支障を生じることはない。
【0035】
(分散工程)
かかる処理装置に原料を投入する方法としては、全原料を一括して槽内に投入する方法、原料の一部をまず投入して、ある段階で残りの原料を投入する方法、原料を分割するか、或は、連続して投入する方法が考えられる。また、分散工程以降の工程で一部の原料を投入することも考えられる。本発明ではこれらの何れの方法も基本的には採用できる。しかし、粉末、粒状叉はペレット状で供給されるポリエステル樹脂は無撹拌、或いは撹拌速度が十分でない状態でガラス転移温度以上に加熱されると、粉末、粒状又はペレットが互いにくっついて塊状となり、これをいくら高速撹拌しても完全な水性化は達成されなくなることから、少なくともポリエステル樹脂は分散工程中に、その全てを槽内に投入すべきである。その他の原料(B)〜(E)については、分散工程〜水性化工程の何れの段階でも槽内に投入することができるが、後述のように水性化工程が終了する前までに(実施例によれば10分前までに)、その全てを槽内に投入する必要がある。もしこの条件が満足されない場合は、得られる水系塗料組成物の貯蔵安定性が劣ったり、高光沢の塗膜が得られない場合がある。また、保護コロイドは、これを添加する目的から、水性化が始まる以前に水媒体中に溶解、或は均一分散しておく必要がある。特に水媒体に難溶性のものは分散工程以前に投入するか、或いは、保護コロイドの水溶液を予め調整しておき、これを槽内に投入することが好ましい。
【0036】
固体で供給されるポリエステル樹脂の塊状化を防ぐ目的で実施される分散工程は、通常、室温下での撹拌によって行われるが、次工程の加熱工程に時間を要する場合には、槽内を加熱しながら分散工程を実施してもよい。その際、槽内温度が40℃に達するまでにポリエステル樹脂粉末ないし粒状物を水媒体に均一分散しておく必要がある。なお、本発明でいう水媒体とは、水又は水と前記有機溶剤及び/又は塩基性化合物及び/又は保護コロイドとの混合物である。分散工程の終点、すなわち、ポリエステル樹脂粉末ないし粒状物が水媒体に均一分散している状態とは、T.N.Zwietering(Chemical Engineering Science,8巻,244頁,1958年)が定義した「完全浮遊状態」、すなわち、粒子が一個も槽底に1〜2秒以上留まってない状態のことであり、槽内はこの「完全浮遊状態」を達成する完全浮遊撹拌速度NJS以上で撹拌されることが好ましい。槽内の撹拌状態は、通常、目視によって簡便に判断できる。完全浮遊撹拌速度は、使用する撹拌羽根の種類、大きさや槽内の位置、ポリエステル樹脂の投入量やその形状等の多数の因子によって左右されるため、実際の処理装置を用いた試験によって決定されなければならない。また、槽内の撹拌速度をNJSよりも更に高くしていくと、ある速度NSA以上で自由表面からの気体の巻き込みが始まる。この現象は、市販の消泡剤によって解消、或いは低減されるが、槽内の撹拌速度は、NJS〜NSAの範囲であるのが好ましい。
槽内がこの状態に達したならば、この状態を保って速やかに加熱工程に移るべきである。「完全浮遊状態」に達する以前に槽内を加熱すると前記の塊状化が起こる場合がある。
【0037】
(加熱工程)
加熱工程は、水性化工程に要する温度に槽内を加熱する工程であり、槽内に前記有機溶剤及び塩基性化合物が存在しておれば、この工程で既に樹脂微粒子の形成は始まっている。但し、その速度は十分でないため、できるだけ短時間で所定の温度まで槽内を加熱することが好ましい。槽内を加熱する方法としては、槽壁にジャケットを備え付けるか、槽内に螺旋コイル管を挿入する、或いは、両者を併用する方法がある。本発明においては何れの方法も採用できるが、加熱工程に要する時間を短縮し、しかも、槽内温度を均一にし、高精度で制御できる方法が望ましい。
また、本工程中に系の粘度が異常に増加する場合があるが、そのような場合には、前記アミノ樹脂、有機溶剤及び塩基性化合物の何れかを水性化工程で槽内に投入することでこの問題を解決することができる。
【0038】
(水性化工程)
槽内温度が、ポリエステル樹脂のガラス転移温度もしくは60℃のうちの高い方の温度に到達した時点をもって、本発明では「水性化工程」に移行したと捉える。これは、低温でも進行する水性化が、該温度以上に槽内を加熱することにより、驚くほどの速さで進行するようになるという事実だけでなく、低温で処理を行った場合には、前述した「系の異常な増粘現象」が発生して、実質的に槽内を撹拌することが不可能になり、目的とする水系塗料組成物が得られなくなる場合があるのに対して、前記温度以上で水性化を進める場合にはこのような問題が一切、発生しないという事実からも、前述した槽内温度に関する条件は、本発明の目的とする水系塗料組成物を得るための重要な条件であると理解すべきである。しかも、槽内の温度が前記温度に達しないと、粗大粒子を含んだ水系塗料組成物しか得られない場合があり、これより形成される塗膜の光沢は低く、性能も劣るという問題がある。
但し、槽内温度は90℃以下で制御されることが好ましい。90℃を越えると、水の蒸発が著しくなり、これにより生成した樹脂微粒子の凝集が助長される場合がある。
【0039】
水性化工程では、水媒体の粘度が幾分かは上昇するため、前記NSAよりも高い撹拌速度N' SAで自由表面からの気体の巻き込みが始まる。従って、NJS〜N' SAの範囲で撹拌を行うのが好ましい。撹拌速度がNJS未満では、水性化が進行しているポリエステル樹脂粉末ないし粒状物の表面の更新が十分ではないため、水性化に要する時間が長くなってしまうし、また、アミノ樹脂の微粒子化が不可能なためか、貯蔵安定性に優れる水系塗料組成物が得られない場合がある。一方、N' SAを越えても、発泡という作業性の問題だけでなく、気体の巻き込みにより樹脂と水媒体との接触面積が小さくなり、水性化工程に時間を要することになる。
【0040】
水性化工程の終点は、粗大粒子が系内になくなった時点とする。粗大粒子の有無は次のようにして判断される。すなわち、系から系を代表する一部をサンプリングしてこれをフィルター等でろ過し、フィルター上の残存物の固形分重量によって、粗大粒子を定量することができ、本発明でいう粗大粒子とは635メッシュ、線径0.02mm、平織のステンレス製フィルターを加圧下でも通過しない樹脂粒子のことであり、該フィルターを用いてろ過した際のフィルター上に残存するものの固形分重量が成分(A)及び(B)の合計に対して1重量%以下の場合に粗大粒子が系内になくなったと判断する。該固形分重量が1重量%を越える場合には、さらに目開きの小さいフィルターでろ過を繰り返しても樹脂粒子の粒径分布が広く、粒子の凝集・沈殿を招き、優れた貯蔵安定性を有する水系塗料組成物は得られない。系内に粗大粒子が認められなくなるまで、攪拌を継続した時点で次の冷却工程に移行してもよいが、有機溶剤の系外への除去(ストリッピング)を行ってもよい。
【0041】
水性化工程は、通常、上述の条件に従って、粗大粒子が系内になくなるまで、攪拌を継続することによって達成される。必要以上に攪拌をつづけるとポリエステル樹脂及びアミノ樹脂が加水分解を受け、優れた性能を有する塗膜が形成されないだけでなく、得られる水系塗料組成物の貯蔵安定性に劣る場合がある。
本発明の実施例の条件では、水性化工程の終点は、前記温度で20〜150分間撹拌継続することによって達成される。この工程が20分未満の場合には、粗大粒子が系内に多く残存しており、得られた水系塗料組成物の貯蔵安定性に劣る場合がある。一方、150分を越えると、ポリエステル樹脂及び親水性アミノ樹脂が加水分解を受け、優れた性能を有する塗膜が形成されないだけでなく、得られた水系塗料組成物の貯蔵安定性に劣るものとなった。
また、本発明では、ポリエステル樹脂と成分(C)〜(E)の全部、又はその一部を用いて、まずポリエステル樹脂水分散体を製造しておき、これに成分(B)と残りの成分(C)〜(E)を加えて分散工程〜水性化工程に供して、目標とする水分散体を製造することもできる。
【0042】
(冷却工程)
この工程では生成した水分散体を40℃以下まで冷却するための工程であり、自然冷却してもよいし、前記ジャケットやコイル管に冷媒を通して強制冷却してもよい。その際には、水分散体表面の水のみが蒸発して固形分濃度の高い被膜を形成する、所謂、「皮張り」を防ぐため、また生成した水分散体は高温ほど貯蔵安定性に劣ることから、該水分散体が40℃以下に冷却されるまでは撹拌することが好ましい。但し、撹拌は前記目的を達するためのものであればよく、その速度はNJS以下で行うのが好ましい。なお、冷却工程で、後述するような他の物質を添加、混合することも可能である。
【0043】
(水系塗料組成物の特性)
かかる方法によって得られた水分散体は、必要に応じて硬化助剤として有機アミン化合物でブロックした酸触媒、例えば、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等を樹脂固形分に対して0.01〜3重量%添加してもよい。また、同様にレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、滑剤、防錆剤、防腐剤等の各種添加剤を添加してもよい。また酸化チタンや亜鉛華、カーボンブラック等の顔料や染料、或いは他の水性樹脂と混合使用することができる。
本発明でいう水系塗料組成物とは、上述のような方法で得られる水分散体及びこれにかかる他成分を配合したものの総称である。
【0044】
本発明における水系塗料組成物においては、750nmの光透過率が1〜80%であることが好ましい。かかる光透過率は、水系塗料組成物をなんら希釈すること無く、セル長0.2cmで測定されるものであり、1%未満の場合には、粗粒子を含むため、該水系塗料組成物の貯蔵中に凝集や沈澱を生成し易く、これより得られる塗膜の光沢や各種耐性に劣る場合がある。一方、80%を越えると、水媒体中に分散して存在する樹脂微粒子の粒径が細かすぎるために、ポリエステル樹脂及びアミノ樹脂が加水分解を受け易く、その結果として該水系塗料組成物の貯蔵安定性が劣り、これより形成される塗膜の耐水性や耐薬品性、加工性等が十分でない場合がある。かかる光透過率は、上記水分散体の製造において、ポリエステル樹脂の酸価及び分子量、親水性アミノ樹脂の組成、塩基性化合物の添加量、有機溶剤の種類及び添加量等によって主に制御できるが、水系塗料組成物の固形分濃度や成形方法、更にはこれより形成される塗膜に対する要求性能等を勘案して制御すべきである。一般的には、2〜75%、更には3〜70%が特に好ましい態様である。
【0045】
なお、光の吸収や散乱等により、光の透過を妨げる顔料や染料等を含む水系塗料組成物については、以下の2法のいずれかにより光透過率を測定することができる。
(1)ポリエステル樹脂やアミノ樹脂に対して比重差の大きい顔料を含む場合は、遠心分離等を行い、実質的に顔料を含有しない上澄液を調整し、これを分析に供する。
(2)方法(1)が使えない染料等を含む場合は、該染料に由来する透過率の低下分(吸光度)を予め測定しておき、水系塗料組成物で得られた結果よりこの寄与を除去する。
【0046】
(水系塗料組成物より得られる塗膜)
本発明の水系塗料組成物は、ディップコート法、はけ塗り法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、カーテンフローコート法、各種印刷法等により、金属、樹脂成形体、紙、ガラス等の各種基材上に均一に塗装することができ、必要に応じて室温付近でのセッティングや低温での乾燥工程を経た後、焼き付けを行うことで、均一で光沢度が高く、しかも各種の性能に優れた塗膜を得ることができる。焼き付けは、通常、熱風循環型のオーブンや赤外線加熱ヒーター等により、120〜250℃で15秒〜30分間加熱することで達成される。
得られる塗膜は、塗装方法や用途、要求性能等によっても異なるが、通常は0.1〜100μmの厚みを有し、少なくとも前記の成分(A)、(B)及び(E)を含有し、しかもポリエステル樹脂とアミノ樹脂とが化学結合を介して架橋構造を形成している。
かかる塗膜においては、60゜グロスが85%以上であることが好ましい。85%未満の場合には、上記3成分を含有し、しかもポリエステル樹脂とアミノ樹脂との硬化反応が十分に進んでいても、優れた塗膜性能を発現することができないケースがある。塗膜の60゜グロスは、88%以上、更には90%以上が特に好ましい。
【0047】
本発明では、特に上述した製造方法によって得られる水系塗料組成物は、その優れた貯蔵安定性を確保して、その有機溶剤及び保護コロイドの含有率を低減でき、有機溶剤や保護コロイドを全く含有しない水系塗料組成物を調整することさえもが可能である。この詳細な理由については不明であるが、水系塗料組成物を構成する成分のうちの親水性アミノ樹脂が、有機溶剤、或いは保護コロイドと同様の役割を発現しているためと本発明者等は理解している。
従って、該水系塗料組成物より形成される塗膜は、ポリエステル樹脂とアミノ樹脂とがミクロなレベルにおいても均一に混合していることから、耐水性ばかりでなく、加工性や硬度等にも優れた性能を発現するものと理解される。
【0048】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。各分析項目は以下の方法に従って行った。
【0049】
(1)ポリエステル樹脂の組成
1H−NMR分析(バリアン社製,300MHz)より求めた。また、 1H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解を行った後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析を行った。
【0050】
(2)ポリエステル樹脂の数平均分子量、分子量分布の分散度
前述したように、GPC分析(島津製作所製,溶媒:テトラヒドロフラン,紫外−可視分光光度計、検出波長254nmにより検出,ポリスチレン換算)より求めた。
【0051】
(3)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂1gを30mlのクロロホルム又はジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、フェノールフタレインを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消費されたKOHのmg数を酸価として求めた。
【0052】
(4)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキン エルマー社製 DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、求めた。
【0053】
(5)水系塗料組成物の固形分濃度
作成された水系塗料組成物を適量秤量し、これを該水系塗料組成物中に含まれる有機溶剤の沸点以上の温度で残存物(固形分)の重量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
【0054】
(6)水系塗料組成物の光透過率
作成された水系塗料組成物をなんら希釈することなく、セル長0.2cmの石英製セルに入れ、25℃で750nmの光透過率を測定した。なお、ブランクとして蒸留水を用いた。
【0055】
(7)水系塗料組成物の粘度
コーン・プレート型の回転粘度計((株)レオロジ製,MR−3ソリキッドメータ)を用い、剪断速度10sec-1、30℃での粘度を測定した。但し、水系塗料組成物のチキソ性を考慮して、回転を始めて定常状態になった時点での粘度を求めた。
【0056】
(8)水系塗料組成物の貯蔵安定性
調整した水系塗料組成物について、その塗料粘度をフォードカップ#4を用いて、調整時及び室温、1カ月貯蔵後に25℃の条件で測定し、以下の基準に従って評価した。
○:外観の変化が認められず、調整時及び貯蔵後の塗料粘度の差が10秒以内におさまっている。
△:外観の変化は認められないが、調整時及び貯蔵後の塗料粘度の差が10秒を越えてしまう。
×:相分離、沈殿、固化等の明らかな外観変化が認められる。
【0057】
(9)塗膜の厚み
厚み計(ユニオンツール(株)製、「MICROFINE Σ」)を用いて、金属板の厚みを予め測定しておき、硬化後の塗装板の厚みを同様に測定してその差の平均値を塗膜の厚みとした。
【0058】
(10)塗膜の光沢
グロスメーター(堀場製作所、グロスチェッカIG−310)で60゜グロスを測定した。
【0059】
(11)塗膜の加工性
塗装金属板を塗装面が外面になるように、しかも折り曲げ部に同じ板厚のものを挟んだ状態で折り曲げ、屈曲部に発生する割れを40倍の蛍光顕微鏡で観察し判定した。表2〜4中の「nT」とは、折り曲げ部に同じ板厚のものをn枚挟んだ場合でも屈曲部に割れを発生しない最少枚数を意味する。
【0060】
(12)塗膜の鉛筆硬度
塗面をJIS S−6006に規定された高級鉛筆を用い、JIS K−5400に従って測定した。
【0061】
(13)塗膜の耐傷付き性
塗装金属板の塗装面に、市販のティン・フリー・スチール板(TFS、0.2mm厚、テンパーT4)を載せ、50g/cm2 の荷重を加えながらTFSの圧延方向に対して直角方向に室温でそれぞれ往復100回擦り合せた。そして、以下の基準に従って評価を行った。
○:塗膜に全く損傷が認められない。
△:塗膜表面に傷が認められるが、金属が露出するには至っていない。
×:金属が露出している。
【0062】
(14)塗膜の耐溶剤性
キシレンを含浸させたガーゼを用いて塗膜をこすり、金属面が現れるまでの往復回数を記録した。
【0063】
(15)塗膜の耐熱水性
塗装金属板を80℃の熱水浴中で1時間処理し、風乾後に上記(10)に従って塗膜の光沢を測定し、次式で表される光沢保持率(%)を求めた。
光沢保持率(%)=(処理後の光沢/処理前の光沢)×100
【0064】
(ポリエステル樹脂の製造例)
ポリエステル樹脂A−1
テレフタル酸15.78kg、イソフタル酸0.83kg、エチレングリコール3.74kg、ネオペンチルグリコール7.30kgからなる混合物をオートクレーブ中で、260℃で2.5時間加熱してエステル化反応を行った。次いで二酸化ゲルマニウム2.62gを触媒として添加し、系の温度を30分で280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1時間後に0.1Torrとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、1.5時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、270℃になったところでイソフタル酸500g、無水トリメリット酸380gを添加し、265℃で15分撹拌し、シート状に払い出した。そしてこれを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画をポリエステル樹脂A−1として得た。ポリエステル樹脂A−1の分析結果を表1に示す。
【0065】
ポリエステル樹脂A−2〜A−4
ポリエステル樹脂A−1と同様な方法、条件で種々のポリエステル樹脂A−2〜A−4を製造した。各樹脂の分析結果を表1に示す。
【0066】
ポリエステル樹脂A−5
テレフタル酸4.984kg、エチレングリコール1.210kg、ネオペンチルグリコール1.875kgからなる混合物をオートクレープ中で、260℃で2.5時間加熱してエステル化反応を行った。次いで二酸化ゲルマニウムを触媒として0.838g添加し、系の温度を30分で280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1時間後に0.1Torrとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、1.5時間後に系を窒素ガスで常圧〜加圧(1,400Torr)にしストランド状に払い出し、水冷後、チップ状にカットした。得られた樹脂チップを十分に乾燥後、該チップ1kgに対して、無水トリメリット酸18.2gをドライブレンドし、ベント付き2軸混練機(池貝鉄工所(株)製、PCM−45)を用いて270℃で押出し、シート状物を得た。なお、押出しに際しては、ベント孔を50Torr以下の減圧状態に保って、昇華物や留出物を捕捉した。そしてシート状物を室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画をポリエステル樹脂A−5として得た。ポリエステル樹脂A−5の分析結果を表1に示す。
【0067】
ポリエステル樹脂A−6
テレフタル酸2.373kg、エチレングリコール390g、ネオペンチルグリコール1.265kgからなる混合物をオートクレープ中で、260℃で2.5時間加熱してエステル化反応を行った。次いで二酸化ゲルマニウム0.405gを添加し、系の温度を30分で280℃に昇温し、その後、系の圧力を徐々に減じて1時間後に0.1Torrとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、1.5時間後に系を窒素ガスで常圧に戻し、系の温度を下げ、250℃になったところで無水トリメリット酸27.4gを添加し、245℃で10分撹拌を続け(第1段階の解重合)、更に系を210℃まで降温し、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン45.2gを添加して20分反応をさせた(第2段階の解重合)。そして、ポリエステル樹脂A−1と同様な方法で粒状のポリエステル樹脂A−6を得た。樹脂の分析結果を表1に示す。
【0068】
ポリエステル樹脂A−7及びA−8
ポリエステル樹脂A−6と同様に、酸無水物を添加して第1段階の解重合を行った後、多価アルコール成分を添加して第2段階の解重合を行い、ポリエステル樹脂A−7及びA−8を製造した。解重合剤の種類、添加量及び各樹脂の分析結果を表1に示す。
【0069】
ポリエステル樹脂A−9及びA−10
イソフタル酸及び無水トリメリット酸を添加して265℃で行った解重合工程が30分(ポリエステル樹脂A−9)、或いは10分(ポリエステル樹脂A−10)であった以外はポリエステル樹脂A−1と同じ条件でポリエステル樹脂A−9及びA−10を製造した。各樹脂の分析結果を表1に示す。
【0070】
ポリエステル樹脂A−11
ポリエステル樹脂A−10 1kgに対してエポキシ化合物(ナガセ化成工業(株),デナコールEX−711)18g、トリフェニルホスフィン 1gをドライブレンドして、前記ベント付き2軸混練機(30Torr以下の減圧状態)を用いて200℃でシート状に押出した。そしてこのシート状物を室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画をポリエステル樹脂A−11として得た。分析の結果、該樹脂の酸価は18.6mgKOH/g、数平均分子量は6,800、分散度は7.4、ガラス転移温度は65℃であった。
【0071】
(アミノ樹脂)
後述する実施例に使用したアミノ樹脂は次のとおりである。
アミノ樹脂B−1:
三井サイテック(株)製、サイメル325 (メチルエーテル型タイプのメラミン樹脂、イソブタノール80重量%溶液)
アミノ樹脂B−2:
三井サイテック(株)製、サイメル370 (メチルエーテル型タイプのメラミン樹脂、イソプロパノール/イソブタノール88重量%溶液)
アミノ樹脂B−3:
三井サイテック(株)製、サイメル212 (メチルエーテル/ブチルエーテル=70/30モル%の混合型タイプのメラミン樹脂、固形分濃度100重量%)
アミノ樹脂B−4:
前記B−1と三井サイテック(株)製、マイコート106 (メチルエーテル型タイプのベンゾグアナミン樹脂、エチレングリコールブチルエーテル77重量%溶液)の固形分が70/30重量%の混合液
アミノ樹脂B−5:
三井サイテック(株)製、サイメル303 (メチルエーテル型タイプのメラミン樹脂、固形分濃度100重量%)
【0072】
(水系塗料組成物の製造及び塗膜の形成,評価)
実施例1〜15及び比較例1〜7
以下の方法によって水系塗料組成物を得た。得られた水系塗料組成物はそれぞれ特性評価を行うと共に、市販のTFS(0.2mm厚、テンパーT4)上に安田精機(株)製、フィルムアプリケータNo.542−AB(バーコータ)を用いて塗布し、70℃で30秒間予備乾燥を行った後、170℃で10分間焼付けを行い、硬化塗膜を得た。水系塗料組成物の原料及び水性化条件、得られた水系塗料組成物の分析結果及び硬化塗膜の評価結果を表2〜4に示す。なお、いずれの場合においても、水性化後に実施されたろ過においては、フィルター上の残存物はごく少量(固形分で1.5g未満)であった。
【0073】
水性化条件C−1:
ジャケット付きの2Lガラス容器を備え、しかも装着時にはこれが密閉状態となる卓上型ホモディスパー(特殊機化工業(株)製,TKロボミックス)を用いて、ガラス容器に、ポリエステル樹脂と所定のアミノ樹脂の固形分の合計 350g、エチレングリコール−n−ブチルエーテル 30g、ポリビニルアルコール(ユニチカ(株)「ユニチカポバール」050G)0.1重量%水溶液 35g、蒸留水 575g及び該ポリエステル樹脂中に含まれる全カルボキシル基量の1.15倍当量に相当するN,N−ジメチルエタノールアミン(以下、DMEA)を投入し、6,000rpmで撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、完全浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保った10分後にジャケットに熱水を通し、加熱した。そして系内温度が60℃、或いは該ポリエステル樹脂のガラス転移温度のうちの高い方の温度に達したところで撹拌を7,000rpmとし、系内温度を70〜72℃に保って更に20分間撹拌し、乳白色の均一な水分散体を得た。そしてジャケット内に冷水を流して3500rpmで撹拌しながら室温まで冷却し、ステンレス製フィルター(635メッシュ、線径:0.02mm、平織)を用いて濾過して水系塗料組成物を得た。
【0074】
水性化条件C−2:
有機溶剤としてn−ブタノール 20g、保護コロイドとしてポリイタコン酸(磐田化学工業(株)製、PIA−728)0.01g、蒸留水620g及び該ポリエステル樹脂中に含まれる全カルボキシル基量の1.2倍当量に相当するトリエチルアミンを用いる以外はC−1と同様な操作を行って水系塗料組成物を得た。
【0075】
水性化条件C−3:
原料としてポリエステル樹脂と所定のアミノ樹脂の固形分の合計 350g、蒸留水640g及び該ポリエステル樹脂中に含まれる全カルボキシル基量の1.2倍当量に相当するDMEAを投入する以外は上記C−1と同様な操作で水性化を行い、冷却工程を経て、系内温度が室温になったところで、該水系塗料組成物の全固形分に対して1重量%のp−トルエンスルホン酸(実際には、等モルのトリエチルアミンとの中和塩として)を、3500rpmで撹拌しながら系に添加し、10分間撹拌を続けた後に、上記の濾過を行って水系塗料組成物を得た。
【0076】
水性化条件C−4:
水性化条件C−1において、アミノ樹脂以外の原料を投入して分散工程〜加熱工程を行い、水性化工程が開始してから10分後に所定量のアミノ樹脂を系に添加して、この状態を10分間保った後に冷却工程に移行した。そして、同様の操作を行い、水系塗料組成物を得た。
【0077】
水性化条件C−5:
水性化条件C−1において、アミノ樹脂以外の原料を用いてまずポリエステル樹脂水分散体を得た。そしてこれを室温で15日間貯蔵した後に所定量のアミノ樹脂を添加して、C−1と同様の操作を行って水系塗料組成物を得た。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
比較例8
実施例11において、蒸留水の投入量を490gに変更し、新たにエチレングリコール−n−ブチルエーテル 150gを分散工程以前に系に添加する以外は同様の操作で水系塗料組成物を得たが、室温で貯蔵後、1週間で固化していた。
【0083】
比較例9〜10
水性化工程を15分に短縮した以外は実施例1と同様に水性化を行ったが(比較例9)、系内に粗大粒子が多く残存していたため、濾過を行わなかった。該水分散体を室温で貯蔵したところ、経時で沈澱量が増加してゆき、実用に供し難いものであった。一方、水性化工程を200分実施したところ(比較例10)、750nmの光透過率が88.5%の水系塗料組成物が得られた。該水分散体を室温で貯蔵したところ、20日後には固化していた。
【0084】
比較例11
実施例15において、アミノ樹脂B−1を10g/分の速度でポリエステル樹脂水分散体中に添加して、その後、撹拌を室温で30分続けたのみで得た水系塗料組成物の貯蔵安定性の評価は△であった。
【0085】
比較例12
ポリビニルアルコール1重量%水溶液を用いる以外は実施例1と同様にして水系塗料組成物X−23を得た。水系塗料組成物X−23の特性及びこれより得られた塗膜の評価結果を表4に示す。
【0086】
実施例16〜19
前記の各種水系塗料組成物を用いて、市販のアルミ(3004H19材、リン酸−クロム酸塩系化成処理品、0.26mm厚)板上に実施例1と同様にして硬化塗膜を形成した。使用した水系塗料組成物及び塗膜の評価結果を表5に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
【発明の効果】
本発明の水系塗料組成物は、酸成分が芳香族多塩基酸の含有率が高く(特にテレフタル酸の含有率が高いものは後述の特性が顕著)、数平均分子量が4,000以上であり、酸価が8〜36mgKOH/gであり、分子量分布の分散度が4以上であるポリエステル樹脂が用いられており、このような特定のポリエステル樹脂と特定の親水性のアミノ樹脂とを含有することで、本発明の水系塗料組成物は有機溶剤や保護コロイド作用を有する化合物の含有率が低くても優れた貯蔵安定性を有し、この水系塗料組成物から形成される硬化塗膜は、優れた光沢、金属板への密着性、加工性、耐傷付き性、耐薬品性、耐候性、硬度等を兼ね備えているだけでなく、特に耐水性に優れる。したがって、この水系塗料組成物は缶用塗料やPCM塗料として好適である。
【0089】
さらに本発明の製造方法によれば、このような水系塗料組成物を、特殊な設備や煩雑な操作を必要とせずに容易に製造でき、この方法によれば、樹脂の水性化と塗料化を一工程で行えることから、生産コストの面からも非常に有利である。従来の水系塗料の製造方法は、溶剤型塗料に比べ、樹脂を水性化させる分、生産コストが上昇することが問題となっていたが、本発明の製造方法は、この問題を解決することができる点においても画期的ということができる。しかも、該方法に従えば、有機溶剤や保護コロイド作用を有する化合物を全く使用しなくても優れた貯蔵安定性を有する水系塗料組成物を製造することができる。
Claims (5)
- 下記成分(A)〜(F)を少なくとも含有し、成分(A)と(B)の重量比(A)/(B)が95/5〜60/40であることを特徴とする水系塗料組成物。
(A)多塩基酸成分と多価アルコール成分より実質的に構成され、多塩基酸成分の50モル%以上が芳香族多塩基酸であり、多価アルコール成分の50モル%以上がエチレングリコール及び/又はネオペンチルグリコールで構成されており、酸価が8〜36mgKOH/gであり、数平均分子量が4,000以上で分子量分布の分散度が4.0以上であるポリエステル樹脂
(B)アルコール成分としてアミノ樹脂中のアルキルエーテル基の70モル%以上がメチルエーテル基である平均重合度が5以下の親水性アミノ樹脂
(C)アンモニア及び/又は沸点が250℃以下の有機アミン化合物
(D)成分(A)に対して可塑化能力を有する両親媒性の有機溶剤が水系塗料組成物に対して0〜12重量%
(E)保護コロイド作用を有する化合物が成分(A)及び(B)の合計に対して0〜0.05重量%
(F)水 - 750nmの光に対する透過率が1〜80%であることを特徴とする請求項1記載の水系塗料組成物。
- ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分の65モル%以上がテレフタル酸である請求項1又は2記載の水系塗料組成物。
- 分散工程、加熱工程、水性化工程及び冷却工程から成り、前記分散工程では、撹拌下に下記成分(A)の全部と成分(B)〜(E)の全部又は一部を水媒体中に粗分散させ、加熱工程及び水性化工程においては、水性化工程が終了する前までに、撹拌下に残りの成分を加え、あるいは加えつつ、60℃及び成分(A)のガラス転移温度のうちの高い方の温度〜90℃に加熱し、この温度で粗大粒子が系内になくなるまで継続して撹拌することを特徴とする水系塗料組成物の製造方法。
(A)多塩基酸成分と多価アルコール成分より実質的に構成され、多塩基酸成分の50モル%以上が芳香族多塩基酸であり、多価アルコール成分が主としてエチレングリコール及び/又はネオペンチルグリコールで構成されており、酸価が8〜36mgKOH/gであり、数平均分子量が4,000以上で分子量分布の分散度が4以上であるポリエステル樹脂(B)平均重合度が5以下の親水性アミノ樹脂(C)アンモニア及び/又は沸点が250℃以下の有機アミン化合物(D)成分(A)に対して可塑化能力を有する両親媒性の有機溶剤が水系塗料組成物に対して12重量%以下(E)保護コロイド作用を有する化合物が成分(A)及び(B)の合計に対して0.05重量%以下 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の水系塗料組成物より得られ、60゜グロスが85%以上であることを特徴とする塗膜。
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