JP2001052930A - 積層インダクタとその製造方法 - Google Patents

積層インダクタとその製造方法

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JP2001052930A JP11224640A JP22464099A JP2001052930A JP 2001052930 A JP2001052930 A JP 2001052930A JP 11224640 A JP11224640 A JP 11224640A JP 22464099 A JP22464099 A JP 22464099A JP 2001052930 A JP2001052930 A JP 2001052930A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】スピネル型フェライトを基体とし、銀またはそ
の合金を内部導体とする積層インダクタにおいて、内部
導体と基体との界面の応力を緩和し、特性の安定した積
層インダクタとその製造方法を提供する。 【解決手段】スピネル型フェライトに属する組成物から
なる基体の内部に銀を主成分とする内部導体を有する。
内部導体を基体の外面に引き出し、該引き出し部に外部
電極を設ける。内部導体にマンガンとビスマスを含有す
る共に、内部導体と基体との間の界面のマンガンとビス
マスの含有量が他の領域の含有量より大である。内部導
体に用いる銀を主成分とするペースト中に、MnO2
0.02〜0.1wt%、B2O3 0.5〜1.2w
t%を添加し、該ペーストをスピネルフェライト材料と
同時焼成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スピネル型フェラ
イトに属する組成物からなる基体の内部に銀を主成分と
する内部導体を有し、ノイズ成分を減衰させる積層イン
ダクタとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子機器においては、素子の搭載密度は
過密の一途をたどり、素子間の相互干渉やノイズの輻射
の問題が顕在化してきた。ノイズ抑制手段は多くの場
合、使用する信号の高調波であり、この高調波の抑制に
力が注がれている。このようなノイズ抑制手段として、
フェライト磁性材料を用いたビーズと称される積層イン
ダクタや、回路のある領域を金属板で遮蔽して他の回路
ブロックへの悪影響を防ぐものや、LC共振回路によっ
てノイズを次の段への伝播を防ぐもの等がある。
【0003】これらのうち、フィルタによる場合は、ノ
イズが抑制されるわけではなく、ノイズ成分は前段に反
射されることになり、また発振など思わぬ悪影響を与え
ることがあるが、ノイズ吸収型の積層インダクタは、こ
のような事態の発生を起こさなため、ノイズ対策部品と
して広く用いられる。
【0004】このような積層インダクタは、900℃程
度で焼結可能なセラミック磁性体と、銀やその合金でな
る内部導体とを組み合わせ、これを同時焼成することに
よって、セラミック焼結体内部にコイル状の導体を形成
することも行われる。このように、内部導体をコイル状
に形成することでインピーダンスを大きくとることがで
き、材料の損失を効率良く利用することができる。そし
て、その結果、素子形状を小型にすることができる。
【0005】このような目的で用いられるフェライトは
スピネル型フェライトと呼ばれ、ほとんどのものが、N
iCuZnFe24系の組成物によって構成されてい
る。このようなスピネル型フェライトを用いる場合、こ
の種のフェライトは、応力に対して敏感で、見かけ上の
μが応力の影響を受けて著しく低下する。
【0006】このような積層インダクタは、内部導体の
ための銀粉体と、基体のためのフェライト粉体とを焼成
し、一体化して製造されるが、フェライトセラミックよ
り銀は線膨張係数が大きく、このため、一体焼成によ
り、銀とフェライトとの界面に応力が発生し、フェライ
トも見かけ上のμが著しく低下する。また、銀とフェラ
イトとの界面はもろく、半田付け等の熱処理時間に界面
の応力が解放され、見かけ上のμがその都度変化し、特
性が不安定になるという問題点がある。
【0007】このような問題点を解決するため、特開平
4−65807号公報には、図7に示すように、銀でな
る内部導体2とフェライトでなる基体1との間に空隙3
を形成し、これにより銀でなる内部導体2と基体3間の
応力を緩和してμの向上を図っている。なお、4は内部
導体2の両端に接続される外部電極である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、積層インダク
タは、半田付けによる実装を前提としているので、外部
電極4に電解めっきを施す必要があり、内部導体と基体
との間の空隙3にめっき液が浸入することになる。しか
しこのめっき液はフェライトに対してエッチング効果が
あり、フェライト基体にさまざまな悪影響を与える。
【0009】本発明は、上記問題点に鑑み、スピネル型
フェライトを基体とし、銀またはその合金を内部導体と
する積層インダクタにおいて、内部導体と基体との界面
の応力を緩和し、特性の安定した積層インダクタとその
製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の積層インダク
タは、スピネル型フェライトに属する組成物からなる基
体の内部に銀を主成分とする導体を内蔵し、該導体を外
面に引き出し、該引き出し部に外部電極を設けた積層イ
ンダクタにおいて、内部導体にマンガンとビスマスを含
有する共に、内部導体と基体との間の界面のマンガンと
ビスマスの含有量が他の領域の含有量より大であること
を特徴とする。
【0011】本発明においては、内部導体と基体である
スピネル型フェライトとの間にマンガンとビスマスとを
存在させることにより、応力の緩和を達成している。こ
のことは以下のようにして説明することができる。マン
ガン元素は、MnZnフェライトでも知られているよう
に、一般にフェライト結晶格子中にはいる。また、Mn
Znフェライトは本発明で用いるNiCuZnフェライ
トに比べて応力の影響を受けにくいことが分かってい
る。しかしながら、MnZnフェライトはその焼結温度
が高く、本発明において用いる内部導体である銀の融点
以上となり、マンガンの添加だけでは部分的に焼結の進
んでいない場所をつくることが考えられる。
【0012】一方、ビスマスは、フェライト焼結体の焼
結温度を下げることが知られている。本発明の場合、マ
ンガンの添加だけでは焼結が進まないが、ビスマスを添
加することによって銀を内部導体を用いることを可能と
する低温焼結が可能となり、緻密化が進み、界面におけ
る応力が緩和された積層インダクタが提供可能となる。
【0013】請求項2の積層インダクタの製造方法は、
内部導体に用いる銀を主成分とするペースト中に、Mn
2 0.02〜0.1wt%、Bi23 0.5〜
1.2wt%を添加し、該ペーストをスピネルフェライ
ト材料と同時焼成することを特徴とする。
【0014】本発明の製造方法において、MnO 2の添
加量が0.02wt%よりも少ないと、めっき前のイン
ピーダンスが低くなり、その結果、めっき前後のインピ
ーダンスの変化率が大きくなる。また、半田耐熱試験で
の変化率も大きくなる。一方、0.1wt%を越えると
取得インピーダンスが著しく低くなる。このMnO 2
より好ましい添加量は0.05wt%以上、0.07w
t%以下である。
【0015】一方、Bi23の添加量が0.5wt%よ
り少なくなると、めっき前のインピーダンスが低く、か
つめっき前後のインピーダンスの変化率が大きくなり、
また、半田耐熱試験でのインピーダンス変化率も大きく
なる。一方、Bi23の添加量が1.2wt%を越える
と取得インピーダンスがやはり著しく低くなる。このB
23のより好ましい添加量は0.8wt%以上、1.
0wt%以下である。
【0016】
【発明の実施の形態】図1(A)は本発明による積層フ
ェライトインダクタの一実施の形態を示す透視図、図1
(B)はその部分断面図である。この積層フェライトイ
ンダクタは、スピネル型フェライトでなる基体1の内部
に、銀を主成分とする内部導体2を積層構造で内蔵し、
端部に内部導体2の外部への引きだし部に接続される外
部電極4を設けたものである。なお内部導体2はコイル
状に形成されるのではなく、単に直線状あるいは曲線状
に形成される場合もある。また、複数のものを同層ある
いは異層に並べてアレイとして構成される場合もある。
【0017】本発明の積層インダクタにおいて、内部導
体に加えるMnO 2やBi23の添加量を種々に変え、
添加量とインピーダンスのめっき前後の変化と半田試験
後の変化を調べた。試験に供する積層インダクタは、ま
ずスピネル型フェライトを次のようにして作成した。ま
ず、所定の組成比となるように、NiO、CuO、Zn
O、Fe23を秤量し、ボールミルを用いて水中で6時
間粉砕を施した。その後、乾燥後、20メッシュの篩に
通し、780℃で2時間の熱処理を行った。得られた試
料を再び水中で16時間粉砕し、乾燥後、20メッシュ
の篩に通し、セラミック粉体とした。この粉体中の不純
物を蛍光X線によって調べたところ、ビスマスは検出さ
れず、マンガンは0.002wt%程度であった。
【0018】得られたスラリーをドクターブレード法に
よって離型フィルム上にキャストし、約40μmの厚み
のグリーンシートを得た。このグリーンシートの所定の
位置にスルーホールを形成し、ついで、スクリーン印刷
によってコイルパターン形成とスルーホール部への導体
ペースト充填を同時に行った。
【0019】見かけ密度4g/cm3、比表面積0.5
2/gの銀粉体と、所定量のMnO 2およびBi2
3と、予め有機溶剤に溶かしこんだエチルセルロース系
バインダーとをそれぞれ秤量して添加し、3本ロールで
混練して内部導体ペーストとした。
【0020】また、銀ペーストに替え、同様の粉体特性
を持つ銀−パラジウム合金(Pt4wt%)を、銀ペー
ストと同様にペースト化した。ペーストの粘度は有機溶
媒の粘度によっておおむね100cpsになるように調
整した。印刷塗布厚みは15μmになるように印圧を調
整した。
【0021】これらのグリーンシートを所定枚数重ね、
約1ton/cm2の圧力で圧着し、その後、1つ1つ
の素子になるように裁断した。そして裁断したものを9
00℃で2時間焼成し、一体化した。素子の層数は11
層で1層あたりの間隔は約34μm、内部導体の厚みは
約10μmであった。
【0022】この段階で、焼成後の試料を10個ずつ樹
脂に埋め込み、固化後、研磨し、この研磨面を顕微鏡で
観察し、界面剥離の有無を調べた。本発明においては、
特開平4−65807号に示すように界面に空隙を設け
ておらず、すべての試料について界面剥離は観察されな
かった。
【0023】前記のように各チップに裁断後、チップを
バレル研磨し、外部電極4の塗布、焼き付けを行った。
さらにその後、電気めっきを施し、電気めっき前後のイ
ンピーダンス(100MHz)を測定した。さらに、試
料を260℃の半田層に10秒間浸し、そのインピーダ
ンス変化を測定した。
【0024】また、MnO 2を0.05wt%、Bi2
3を0.8wt%添加した場合において、内部導体2と
基体1との間の界面におけるEPMAによる元素分布の
測定を行った結果を図2に示す。図2から明らかなよう
に、マンガンとビスマスは、界面に集中していることが
分かる。また、イオウの痕跡がほとんどないことから、
めっきに使用したイオウを含むめっき液の浸入がほとん
どないことが分かる。
【0025】表1に内部導体2に銀を用い、MnO 2
Bi23の種々の添加量におけるめっき前、めっき後、
半田試験後のインピーダンスの値を示す。また、表2は
銀の代わりに銀−パラジウム合金を用い、MnO 2とB
23の種々の添加量におけるめっき前、めっき後、半
田試験後のインピーダンスの値を示す。各インピーダン
スは各添加量についての10個の使用の平均値である。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】図3は表1に示した銀を内部導体に使用し
た積層インダクタにおいて、MnO 2、Bi23の添加
量とインピーダンスとの関係をグラフ化したものであ
る。また、図4は、表1に示した銀を内部導体に使用し
た積層インダクタにおいて、MnO 2、Bi23の添加
量と、めっきによるインピーダンスの変化、全体のイン
ピーダンスの変化との関係をグラフ化したものである。
【0029】図3から分かるように、MnO 2 0.0
2〜0.1wt%、Bi23 0.5〜1.2wt%を
添加し、該ペーストをスピネルフェライト材料と同時焼
成することにより、約580Ω程度以上のインピーダン
スを得ることができる。また、この範囲であれば、めっ
き、半田によるインピーダンスの変化量も50Ω以下に
収めることができる。
【0030】また、図5は表2に示した銀−パラジウム
を内部導体に使用した積層インダクタにおいて、MnO
2、Bi23の添加量とインピーダンスとの関係をグラ
フ化したものである。また、図6は、表2に示した銀−
パラジウムを内部導体に使用した積層インダクタにおい
て、MnO 2、Bi23の添加量と、めっきによるイン
ピーダンスの変化、全体のインピーダンスの変化との関
係をグラフ化したものである。
【0031】図5、図6から分かるように、銀−パラジ
ウムを内部導体2に用いた場合も、MnO 2 0.02
〜0.1wt%、Bi23 0.5〜1.2wt%を添
加し、該ペーストをスピネルフェライト材料と同時焼成
することにより、約580Ω程度以上のインピーダンス
を得ることができる。また、この範囲であれば、めっ
き、半田によるインピーダンスの変化量も50Ω以下に
収めることができる。
【0032】インピーダンス値について評価するとき、
まず、内部導体2と基体1(フェライト)との界面の応
力の影響は、めっきを行う前のインピーダンス値に反映
される。界面での応力が緩和されていれば、インピーダ
ンス値は大きくなる。
【0033】次に、界面での応力が緩和されていれば、
インピーダンス値は大きくなる。次にめっき液が基体1
の外面が内部導体2と基体1との間の界面を伝わって浸
入した場合、界面はエッチングされ、界面における応力
緩和は進むことになる。ただし、この場合のめっき液は
界面に残ることになり、長期信頼性を考慮した場合、望
ましくない。さらに界面が不安定であると、半田槽に積
層チップを浸漬したときにさらに応力が緩和されること
になる。この緩和の度合いが大きいと、長期信頼性の面
でやはり望ましくない。焼成直後の段階で応力がすでに
緩和されているならば、めっき処理、半田槽に浸しても
インピーダンスの値が変動しないはずで、その方が好ま
しい。実際、実施例においては、めっき前のインピーダ
ンスの値も高く、めっき処理したり、半田槽に浸しても
その変化は小さい。これらのことから、ビスマスとマン
ガンが界面に存在することにより、内部導体2とフェラ
イトでなる基体1との界面の応力が緩和され、なおかつ
めっき液の浸入がなく、長期にわたり特性の安定したも
のを提供できることが示唆される。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、スピネル型フェライト
と銀を主成分とする内部導体からなる積層インダクタに
おいて、内部導体と基体との界面にマンガンとビスマス
の含有量の多い部分を形成したことにより、界面におけ
る応力を緩和したので、特性の良好なものを得ることが
でき、しかもめっき液の浸入が防止されるので、めっき
液の浸入による特性の劣化が防止され、長期的に安定し
た特性のものを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明による積層インダクタの一実施
の形態を示す透視図、(B)はその部分断面図である。
【図2】本発明において、内部導体と基体との間の界面
におけるEPMAによる元素分布の測定を行った結果を
示す図である。
【図3】表1に示した銀を内部導体に使用した積層イン
ダクタにおいて、MnO 2、Bi23の添加量とインピ
ーダンスとの関係をグラフ化したものである。
【図4】表1に示した銀を内部導体に使用した積層イン
ダクタにおいて、MnO 2、Bi23の添加量と、めっ
きによるインピーダンスの変化、全体のインピーダンス
の変化との関係をグラフ化したものである。
【図5】表2に示した銀−パラジウムを内部導体に使用
した積層インダクタにおいて、MnO 2、Bi23の添
加量とインピーダンスとの関係をグラフ化したものであ
る。
【図6】表2に示した銀−パラジウムを内部導体に使用
した積層インダクタにおいて、MnO 2、Bi23の添
加量と、めっきによるインピーダンスの変化、全体のイ
ンピーダンスの変化との関係をグラフ化したものであ
る。
【図7】従来の積層インダクタの一例を示す断面図であ
る。
【符号の説明】
1:基体(フェライト)、2:内部導体(銀)、4:外
部電極

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】スピネル型フェライトに属する組成物から
    なる基体の内部に銀を主成分とする内部導体を有し、該
    内部導体を基体の外面に引き出し、該引き出し部に外部
    電極を設けた積層インダクタにおいて、 内部導体にマンガンとビスマスを含有する共に、内部導
    体と基体との間の界面のマンガンとビスマスの含有量が
    他の領域の含有量より大であることを特徴とする積層イ
    ンダクタ。
  2. 【請求項2】内部導体に用いる銀を主成分とするペース
    ト中に、MnO 20.02〜0.1wt%、Bi23
    0.5〜1.2wt%を添加し、該ペーストをスピネル
    フェライト材料と同時焼成することを特徴とする積層イ
    ンダクタの製造方法。
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