JP2001049522A - ポリビニルアルコール系難燃繊維 - Google Patents

ポリビニルアルコール系難燃繊維

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JP2001049522A
JP2001049522A JP11219791A JP21979199A JP2001049522A JP 2001049522 A JP2001049522 A JP 2001049522A JP 11219791 A JP11219791 A JP 11219791A JP 21979199 A JP21979199 A JP 21979199A JP 2001049522 A JP2001049522 A JP 2001049522A
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polymer
phosphorus
flame
fibers
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Hiroyuki Oki
弘之 大木
Yoshitaka Uehara
剛毅 上原
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 実質的にハロゲンを含有せず、難燃性が高
く、しかも難燃性が洗濯等の水処理によっても大きく低
下しない、優れたPVA系難燃繊維及びその効率的な製
造方法、さらに該繊維を用いてなる布帛を提供する。 【解決手段】 ハロゲン含有率が1重量%以下であるポ
リビニルアルコール系繊維であって、該繊維を構成する
ポリマーの少なくとも一部がエステル結合を介してリン
を含有する基が主鎖に結合しているビニルアルコール系
ポリマーとし、かつ該繊維を構成するポリマーの結晶化
度を65〜85%、配向度を55〜95%とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工業的に安価に製
造可能で、かつ実質的にハロゲン原子を含有しないポリ
ビニルアルコール(以下PVAと略記)系難燃繊維及び
該繊維を用いてなる布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、アクリル繊維、ポリエステル繊
維、レーヨン繊維、アラミド繊維等の種々の繊維に難燃
性を付与する方法が検討されている。なかでもPVA系
繊維は、機械的性能が高く低コストでしかもメルトドリ
ップが発生しにくい等の特徴があることから難燃性繊維
として注目されている。
【0003】たとえば、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニ
リデン等のハロゲン含有樹脂やハロゲン化難燃剤を含有
するPVA系繊維や、塩化ビニル共重合PVAを用いた
PVA系繊維が提案されている(特公昭37―1292
0号公報、特公昭37−12920号公報、特公昭49
−10823号公報、特公昭51−19494号公報、
特開平8―92833号公報、特開平5―78909号
公報等)。しかしながら、近年、さまざまな材料・素材
が環境に与える影響が非常に問題視されており、特に焼
却時にダイオキシンが発生する点等から、ポリ塩化ビニ
ルを代表とするハロゲン含有素材(ハロゲン含有樹脂、
ハロゲン系難燃剤等)を非ハロゲン系素材に置き換える
ことが強く要望されている。
【0004】以上のことから、実質的にハロゲンを含ま
ない非ハロゲンPVA系難燃繊維の検討がなされてお
り、たとえばPVA繊維表面にシリコーン樹脂を塗布す
る方法が特開昭60―209076号公報に記載されて
いる。しかしながら、一般に無機系難燃剤はハロゲン系
難燃剤や後述するリン系難燃剤に比して難燃効果が低い
ために十分な難燃効果が得られにくく、また繊維が本来
有する強度、弾性率、風合等が損われやすい問題があ
り、特にシリコーン樹脂は高価であるために工業的生産
は難しい。
【0005】上記問題を解決する手段として性能的にも
コスト的に工業的に有用な非ハロゲン難燃剤を添加する
方法が検討されており、たとえばポリリン酸アンモニウ
ムやリン含有化合物を添加する方法が知られているが
(特開昭49―74768号公報、特開昭49―201
53号公報、特開昭49―31650号公報等)、長期
間経過すると難燃剤がブリードアウトして繊維表面に析
出し、また洗濯時や雨天時に難燃剤が流出するために、
時間の経過とともに風合が劣化するのみでなく難燃効果
が低下する問題があった。
【0006】また繊維表面に縮合したリン酸を塗布して
加熱することによりエステル化させる方法(特開昭48
―28085号公報、特開昭49―108399号公報
等)、N−メチルピロリドンの存在下、リン酸と反応さ
せることによりPVAをエステル化する方法(特開昭5
3―115794号公報)等も提案されている。かかる
方法によればリン含有化合物を添加する場合に比してブ
リードアウトが生じにくいものの、やはり十分な難燃性
は得られにくく、難燃性を高めるためにリン酸エステル
の割合を高めると繊維性能が低下してしまう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、実質
的にハロゲンを含有せず、しかも難燃剤のブリードアウ
トが生じず、耐久性、機械的性能、品位、難燃効果等の
諸性能に優れたPVA系難燃繊維、さらに該繊維を用い
てなる布帛を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1) ハロ
ゲン含有率が1重量%以下であるポリビニルアルコール
系繊維であって、該繊維を構成するポリマーの少なくと
も一部がエステル結合を介してリンを含有する基が主鎖
に結合しているビニルアルコール系ポリマー(ポリマー
A)であり、かつ該繊維を構成するポリマーの結晶化度
が65〜85%、配向度が55〜95%であるポリビニ
ルアルコール系難燃繊維、(2) 繊維を構成するビニ
ルアルコール系ポリマー中のリン原子結合量が0.5〜
40%である(1)に記載のポリビニルアルコール系難
燃繊維、(3) 少なくともリンを含有する基を実質的
に有しないビニルアルコール系ポリマー(ポリマーB)
を含む(1)に記載のポリビニルアルコール系難燃繊
維、(4) ビニルアルコール系ポリマー(ポリマー
A)が一般式(1)で示される構成単位を少なくとも有
するビニルアルコール系ポリマーである(1)に記載の
ビニルアルコール系難燃繊維、
【0009】
【化2】
【0010】(5) (1)〜(4)のいずれかに記載
のポリビニルアルコール系難燃繊維を用いてなる布帛、
に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】まず本発明においては繊維におけ
るハロゲン含有率を1重量%以下/繊維、好ましくは
0.1重量%以下/繊維、さらに好ましくは0〜0.0
01重量%/繊維とする必要がある。ハロゲン含有率が
高い場合にはダイオキシン発生等の環境上の問題が生じ
る。一般的にハロゲン含有率を低くすると十分な難燃性
が得られにくくなるが、本発明は実質的にハロゲンを用
いることなく難燃性に優れたPVA系繊維を得るもので
ある。なお、本発明にいうハロゲン含有率とは、繊維重
量に占めるハロゲン元素重量の割合であり、実施例に記
載の方法により求められる。
【0012】本発明の難燃繊維の特徴は、リン原子を含
有する基(リン含有基)がエステル結合を介して主鎖に
結合しているビニルアルコール系ポリマーにより構成さ
れている点にある。かかる結合を介してリン含有基を導
入することにより、長時間経過したり洗濯等を繰り返し
てもブリードアウトが生じにくく、しかも難燃効果及び
繊維性能等の諸性能に優れた難燃繊維が得られる。
【0013】かかる繊維を構成するビニルアルコール系
ポリマー中のリン原子結合量は、難燃効果の点から0.
5%以上、さらに1.5%以上、特に3%以上であるの
が好ましく、繊維性能の点からは40%以下、特に30
%以下、さらに20%以下、またさらに10%以下とす
るのが好ましい。なおここにいうビニルアルコール系ポ
リマー中のリン原子結合量とは、繊維を構成するPVA
の主鎖を構成する全炭素数に対するリン原子数の割合
(百分率)であり、PVA中に添加配合されているリン
含有化合物を構成するリン原子は含まれない。また繊維
を構成するPVAの主鎖を構成する全炭素数とは、リン
含有基の量がきわめて少ない繊維構成PVAや実質的に
リン含有基を有しない繊維構成PVAの主鎖を構成する
炭素数をも含めたものである。
【0014】ポリマーA中のリン含有基の具体的構造は
特に限定されず、リン含有基に2以上のリン原子が含ま
れていてもかまわないが、難燃効果及び繊維性能が高
く、しかも製造工程性が良好で所望量のリン含有基をP
VA主鎖に均一に導入しやすいことから、下記の一般式
(1)で示される構成単位を少なくとも有するポリマー
Aを用いるのがより好ましい。なかでも、繊維性能の点
で優れた効果が得られ、またリン含有基を所望量導入し
やすい点、さらにリン含有基を導入する反応を終了後に
連続的に紡糸可能な点から、繊維を構成するPVA中の
リン原子の50%以上、特に80%以上が一般式(1)
に示された構造単位に含まれるリン原子であるのが好ま
しい。
【0015】
【化3】
【0016】一般式(1)で示される構成単位におい
て、Rはフェニレン基またはメチレン基、特にフェニ
レン基であるのが好ましく、R及びRはH,メチル
基、エチル基、フェニル基から選ばれる基、特にメチル
基であるのが好ましい。
【0017】ポリマーAの平均重合度は適宜設定すれば
よいが、繊維性能、難燃性能の点からは500以上、特
に800以上、さらに1500以上であるのが好まし
く、紡糸性、コストの点からは30000以下、特に5
000以下であるのが好ましい。またポリマーAのケン
化度は繊維の耐熱水性、紡糸性等の点から70モル%以
上、さらに90モル%以上、特に99モル%以上である
のが好ましい。なおここでいうケン化度は、酢酸ビニル
の単独重合体または共重合体中の「ケン化によりビニル
アルコール単位に変換され得る単位」に対するケン化後
のビニルアルコール単位の割合を示したものであり、残
基は酢酸ビニル単位である。また本発明の効果を損わな
い範囲であれば、リン原子含有ユニットはもちろんのこ
と他のユニットが共重合されていてもよく、また他の成
分により変性されていてもかまわない。さらにPVA
(A)中のリン原子結合量は0.8%以上、さらに1.
5%以上、特に3%以上であるのが好ましく、繊維性能
の点からは40%以下、特に30%以下、さらに20%
以下、またさらに10%以下とするのが好ましい。
【0018】本発明に用いられるポリマーAの製造方法
は特に限定されず、たとえば、リン含有基を有する重合
性モノマーとポリビニルアルコールユニットを形成し得
る重合性モノマー(たとえば酢酸ビニル)を共重合し、
得られた共重合体をケン化することにより所望のポリマ
ーを効率的に製造できる。リン含有基を有する重合性モ
ノマーは特に限定されないが、難燃効果及び繊維性能が
高く、しかも製造工程性が良好で所望量のリン含有基を
PVA主鎖に均一に導入しやすいことから、少なくとも
下記の一般式(2)で示されるリン含有化合物を用いる
のが好ましい。
【0019】
【化4】
【0020】またベースポリマーであるビニルアルコー
ル系ポリマーと、リン含有化合物を反応させることによ
りリン含有基を導入することもできる。リン含有基を所
望量容易に導入できる点からは本方法を採用するのが好
ましい。このときベースポリマーとなるビニルアルコー
ル系ポリマーとしては、ポリ酢酸ビニルあるいはその共
重合体をケン化して得られるポリマーを用いるのが好ま
しい。またピバリン酸ビニル、蟻酸ビニルのごとき側鎖
の嵩高いビニルエステルまたは極性の高いビニルエステ
ル、もしくはt―ブチルビニルエーテルやトリメチルシ
リルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテルのごとき
ビニルエーテルの単独重合体または共重合体を分解して
得られるものを使用してもかまわない。
【0021】該ビニルアルコール系ポリマーの平均分子
量は繊維性能の点から500以上、特に1000以上で
あるのが好ましく、紡糸性、コストの点からは1000
0以下、特に5000以下であるのが好ましい。またケ
ン化度は繊維の耐熱水性等の点から95モル%以上、9
9モル%以上、さらに99.5モル%以上であるのが好
ましい。もちろん、本発明の効果を損わない範囲であれ
ばベースポリマーとなるビニルアルコール系ポリマーに
他のユニットが共重合されていてもよく、また他の成分
により変性されていてもかまわない。また先に説明した
リン含有化合物が共重合されたビニルアルコール系ポリ
マーを用いることもできる。
【0022】ベースポリマーと反応させるリン含有化合
物としては、ビニルアルコール系ポリマーの分子中に存
在する水酸基と反応し得る原子団を分子内に少なくとも
1つ含有するリン含有化合物を用いるのが好ましい。特
にリンを含有するポリビニルアルコール重合体中の水酸
基との反応性を有するカルボキシル基及び/又はエステ
ル基を有するリン含有化合物が好適に使用できる。もち
ろん2種以上のリン含有化合物を併用してもかまわな
い。なお難燃性及び繊維性能の点から、リン含有化合物
に占めるリン原子の重量割合が5重量%以上、特に10
〜30重量%であるのが好ましい。なかでもリン含有化
合物として少なくとも下記一般式(3)で示されるリン
含有化合物を用いるのが好ましい。
【0023】
【化5】
【0024】一般式(3)においてRはH,メチル
基、エチル基のいずれかであるのが好ましく、Rはフ
ェニレン基またはメチレン基であるのが好ましい。また
及びRはH,メチル基、エチル基、フェニル基か
ら選ばれる基であるのが好ましい。なかでもRがH、
メチル基、エチル基のいずれかであり、Rがフェニレ
ン基、R及びRがともにメチル基であるものがPV
Aとの反応性、繊維性能の点でより好ましい。
【0025】具体的には、カルボキシルフェニルリン
酸、カルボキシルフェニルリン酸メチル、カルボキシル
フェニルリン酸ジメチル、カルボキシルフェニルリン酸
エチル、カルボキシルフェニルリン酸ジエチル、カルボ
キシルフェニルリン酸フェニル、カルボキシルフェニル
リン酸ジフェニル、カルボキシルメチルリン酸、カルボ
キシルリン酸メチル、カルボキシルリン酸ジメチル、カ
ルボキシルメチルリン酸エチル、カルボキシルメチルリ
ン酸ジエチル、カルボキシルメチルリン酸フェニル、カ
ルボキシルメチルリン酸ジフェニル、カルボキシルエチ
ルリン酸、カルボキシルエチルリン酸メチル、カルボキ
シルエチルリン酸ジメチル、カルボキシルエチルリン酸
エチル、カルボキシルエチルリン酸ジエチル、カルボキ
シルエチルリン酸フェニル、カルボキシルエチルリン酸
ジフェニル、カルボキシルフェニルオキシリン酸、カル
ボキシルフェニルオキシリン酸メチル、カルボキシルフ
ェニルオキシリン酸ジメチル、カルボキシルフェニルオ
キシリン酸エチル、カルボキシルフェニルオキシリン酸
ジエチル、カルボキシルフェニルオキシリン酸フェニ
ル、カルボキシルフェニルオキシリン酸ジフェニル等の
カルボン酸類が挙げられる。またこれらのエステル、特
にアルキルエステル類も好適に使用できる。なかでもカ
ルボキシルフェニルリン酸ジメチル及びそのメチルエス
テル(メトキシカルボニルフェニルリン酸ジメチル)は
より好適に使用される。またこれらのリン含有化合物は
2種類以上組み合わせて用いてもよく、また上記に示し
た以外の化合物を使用しても構わない。
【0026】ベースポリマーとリン含有化合物との反応
は固相で行ってもよいが、リン含有基を効率的に導入す
る点からは水系及び/または有機溶剤系の溶液中で反応
させるのが好ましく、特に有機溶剤系の溶液中で反応さ
せるのがより好ましい。有機溶剤系の溶液としては、グ
リセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、ブタンジオールなどの多
価アルコール類やジメチルスルホキシド(DMSO)、
ジメチルホルムアミド、ジエチレントリアミン等から選
ばれる有機溶剤、またはこれら2種以上の混合溶剤、さ
らにこれら有機溶剤と水との混合溶剤などを用いるのが
好ましい。ただしリン含有化合物が凝集したり分離しに
くく反応性も良好である点、さらに反応終了後に引続き
紡糸しやすい点からは、ジメチルスルホキシド及び/又
はグリセリン、特にジメチルスルホキシド(DMSO)
を主成分とする溶液を用いるのがより好ましい。
【0027】反応溶液中のポリマー濃度は特に限定され
ないが、通常5〜50重量%であり、PVAとリン含有
化合物との反応性から、あるいはこれをこのまま紡糸す
る場合の凝固性などを考慮すると5〜30重量%が好ま
しい。この時、必要に応じて加熱するのが好ましく、加
熱温度は20〜230℃の範囲、高温時のPVA系重合
体の分解、着色等の点からは50〜150℃とするのが
好ましい。溶解時間は通常1〜10時間であり、溶剤や
PVA系重合体の分解、着色を抑制するために窒素ガス
などの不活性気体中で行われるのが望ましい。
【0028】かかる溶液中でビニルアルコール系ポリマ
ーとリン含有化合物を反応させればよい。エステル結合
によるリン含有基の導入は、分子内にカルボキシル基、
エステル基、酸無水物骨格などを有するリン含有化合物
を用い、ビニルアルコール系ポリマーと変性剤をエステ
ル化反応させることにより達成される。。まず反応溶液
にリン含有化合物を添加するが、リン含有化合物の添加
量は、PVA系重合体の水酸基に対して通常0.01〜
100モル%である。触媒およびリン含有化合物の添加
順序は特に問わないが、触媒の種類、量によってはPV
A系重合体と共に長時間攪拌すると着色を生じる場合が
あるため、そのときは変性剤を先に添加した後に触媒を
加える。
【0029】エステル化反応は通常、酸、塩基のいずれ
の触媒でも進行し、最適pHは酸触媒を使用する場合に
は2〜4.7、塩基触媒を使用する場合には5〜9.5
である。酸触媒としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リ
ン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、p−トルエン
スルホン酸等の有機酸、p−トルエンスルホン酸ピリジ
ニウム、塩化アンモニウム等の塩、 塩化亜鉛、塩化ア
ルミニウム等のルイス酸等を使用するのが好ましい。そ
の中でもp−トルエンスルホン酸が溶解性の点で好適に
使用される。酸触媒の使用量は、酸触媒の種類によって
も異なるが、通常変性剤1モルに対して約0.01〜1
0モルの範囲が適当である。また塩基触媒としては、た
とえば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチ
ウムなどのアルカリ水酸化物、ナトリウムメチラート、
ナトリウムエチラートなどの金属アルコラート、トリエ
チルアミン、トリブチルアミン、ピリジンなどのアミ
ン、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩などが
挙げられる。塩基触媒の使用量は、使用する塩基触媒の
性質によっても異なるが、通常変性剤に対して0.01
〜100モル%、特に0.5〜20モル%の範囲が適当
である。
【0030】また反応温度は通常20〜230℃の範囲
内であるが、反応率、溶剤自身の熱分解、ポリマーの着
色等を考慮すると好ましくは50〜150℃である。反
応時間は、目的とする変性率に達するかあるいは添加し
た変性剤がすべて消費されるまでの総経過時間であり、
通常10分〜20時間である。PVA系重合体とリン含
有化合物との反応においては、反応率を向上させるため
に反応前、あるいは反応中に脱水を行うのが望ましい。
脱水の方法としては、炭化水素系溶媒又はハロゲン化炭
化水素溶媒などを用いる共沸脱水、モレキュラーシーブ
などの脱水剤を共存させることによる脱水、オルトギ酸
トリメチル、オルトギ酸トリエチルなどのオルトエステ
ル類を用い化学的に水を反応除去させることによる脱水
などがある。
【0031】所定時間反応後、酸触媒を使用している場
合には塩基性物質、塩基触媒を使用している場合には酸
性物質によって中和するのが好ましい。中和が不十分で
あると紡糸性が悪化したり、紡糸した繊維を延伸、乾燥
する際に着色する原因となる。ここで用いられる酸性物
質とは、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機
酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸な
どの有機酸などが挙げられ、一方塩基性物質としては、
ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラートなどの金
属アルコラート、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの
アルカリ金属炭酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウ
ム、水酸化リチウム、などのアルカリ水酸化物、酢酸ナ
トリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩などが挙げられ
る。中和時間は通常0.5〜1時間である。
【0032】かかるポリマーAを用いて紡糸を行えばよ
いが、このとき溶液中で反応させてポリマーAを得た後
にそのまま連続的に紡糸することも可能であり、この場
合、製造工程性等の点で顕著な効果が得られる。このと
き反応液を紡糸に適したPVA濃度、温度とするのが好
ましく、反応液を紡糸塔に圧送すればよい。また本発明
においてはポリマーAを用いてPVA系繊維を紡糸する
必要があるが、ポリマーA以外の他のポリマーを紡糸原
液に添加して紡糸してもかまわない。特に繊維の機械的
性能、耐湿熱性を高める点、さらに繊維を構成するポリ
マーの結晶化度及び配向度を高める点からは、他のビニ
ルアルコール系ポリマー、なかでもリン含有基を実質的
に有しないビニルアルコール系ポリマー(ポリマーB)
をさらに用いて繊維を製造するのが好ましい。ポリマー
Bのリン原子結合量は0.1%以下であるのが好まし
い。
【0033】ポリマーBの平均重合度は500以上、特
に1000以上、さらに1500以上であるのが好まし
く、コスト、紡糸性の点からは5000以下であるのが
好ましい。ケン化度は98モル%以上、さらに99モル
%以上、特に99.5モル%以上であるのが好ましい。
他のモノマーが共重合されていてもよいが、繊維性能、
難燃性能等の点からはビニルアルコールユニットを全構
成ユニットの70モル%以上有するポリマーとするのが
好ましい。
【0034】かかるポリマーAとポリマーBの混合比は
特に限定されないが、重量比95/5〜5/95、特に
93/7〜7/93、さらに70/30〜30/70と
するのが好ましい。難燃性を高めたい場合にはポリマー
Aの配合割合を高め、繊維の強度、耐湿熱性等を高めた
い場合にはポリマーBの配合割合を高めればよい。ポリ
マーA及びポリマーBが均一に混合された繊維としても
かまわないが、海島構造繊維や芯鞘型などの相分離型複
合繊維としてもかまわない。もちろん、ポリマーA及び
ポリマーB以外のポリマーやホウ酸、界面活性剤、分解
抑制剤、染料、顔料などを添加することも可能である。
しかしながら、難燃性の点からポリマーAの割合が30
重量%以上/繊維、特に40重量%以上/繊維であるの
が好ましく、紡糸性、機械的性能の点からは繊維に占め
るビニルアルコール系ポリマーの割合を50重量%以上
/繊維、特に80重量%以上/繊維とするのが好まし
い。
【0035】また本発明は、特定の結合によりリン含有
基が導入されたPVAを用いると同様、あるいはそれ以
上にマトリックス樹脂であるビニルアルコール系ポリマ
ーの構造、及びこの構造を発現するための紡糸法が非常
に重要であることを見出したものである。すなわち、リ
ン含有基を導入したことによる最も重要な効果は、リン
含有基によりPVA系樹脂の脱水反応が促進され、これ
に続く架橋、炭化反応により生じたPVA由来の炭化物
(チャー)が繊維表面を被膜し、外部からの燃焼熱を遮
断したり、繊維内部からの可燃性ガスの発生を抑制する
ことにあることを本発明者等は明らかにした。この時、
実際にはPVA自身の熱分解反応が競争反応として存在
しており、PVAの熱分解反応が生じると、チャー生成
量の減少に繋がるばかりか、分解物が燃焼性ガスとして
働くため難燃性発現を大きく妨げることとなる。従っ
て、如何に繊維を構成するPVA系樹脂の熱分解反応を
抑制するかが非常に重要となる。さらに燃焼時に生成す
るPVA由来のチャーの性状も当然重要であり、燃焼に
耐えうる耐熱性の高いチャーを如何に効率よく、高収率
で生成するかがポイントとなる。
【0036】そこで燃焼時のPVAからのチャー生成機
構を詳しく調べた結果、リン含有基の存在によりPVA
の脱水反応が生じ、その結果生成したポリエン構造がデ
ィールス・アルダー反応によって環化する際、同じ分子
(鎖)内で環化するいわゆる分子内環化と、異なる分子
(鎖)間で環化、架橋する分子間環化の2つのパスに大
別され、分子間環化反応を優先させることが最終的に得
られるチャーの収率向上及び耐熱性向上、すなわち難燃
性発現に非常に有効であることを見出した。すなわち、
如何にして燃焼時にポリエン鎖同志の分子間環化を促進
させるかが難燃性発現に非常に重要となる。
【0037】本発明は、リン系難燃剤添加により効率よ
く難燃性を発現するためには、繊維を構成するPVA系
重合体が高い結晶性及び配向度を有していることも重要
であることを見出したものである。具体的には、PVA
系繊維を構成するビニルアルコール系ポリマーの結晶化
度を65〜85%とする必要があり、かかる構成とする
ことによってPVA系樹脂の燃焼時の熱分解を抑制す
る、すなわちチャー生成までの時間を稼ぐことが可能に
なり、よってチャー生成の収率が向上して難燃性効果が
高まると推察される。
【0038】また繊維を構成するビニルアルコール系ポ
リマーの配向度を55〜95%とすることによって一層
顕著な効果が得られる。すなわち、分子鎖同志が高い配
向度で同一方向に並列しているほど、脱水後のデイール
スアルダー反応が分子鎖間で生じやすくなり、その結
果、最終的に再生するチャーの収率、耐熱性等が向上
し、難燃性発現に大きく貢献するものと思われる。該ポ
リマーの結晶化度及び配向度が低い場合には繊維の機械
的性能等が低くなるのみでなく、耐熱性の高いチャーが
効率的に生成されないために難燃効果も低いものとな
る。逆に繊維の結晶化度及び配向度が高すぎると加工
性、耐摩耗性、柔軟性等に問題が生じる。
【0039】本発明のPVA系難燃繊維の製造方法は特
に限定されないが、構成ポリマーが特定の結晶化度とな
るような条件で製造する必要があり、具体的にはビニル
アルコール系ポリマーを有機溶剤に溶解して得られる紡
糸原液を用い、かつ下記の条件を採用して紡糸するのが
好ましい。
【0040】ビニルアルコール系ポリマー水溶液を紡糸
原液とし、これを飽和芒硝浴等の凝固浴に吐出してPV
A系繊維を製造する方法等がこれまで広く採用されてい
たが、かかる方法によると凝固浴中で急激に脱水凝固反
応が起るために繊維表層部に緻密なスキン層が形成され
たスキンコア構造が形成される。そのため繊維内部まで
十分に固化反応が進行せず、さらに高度に延伸を行うこ
とができないことから得られる繊維の結晶化度はせいぜ
い50〜60%となる。よって、機械的性能、寸法安定
性が不十分になるのみでなく、リン含有基を有するPV
Aを用いても所望の難燃効果が得られなくなる。さらに
スキンコア構造が形成されている場合には、ビニルアル
コール系ポリマーが脱水反応により水分を発生したとし
ても、繊維表層部が緻密なスキン層により覆われている
ため効率的に気化できないため、繊維表面の冷却効果も
低くなってしまう。また同紡糸原液を気体中に吐出する
乾式紡糸法を採用することも知られているが、該方法を
採用したとしても繊維内部まで十分に固化させることが
困難である等の理由から結晶化度はせいぜい50〜60
%、配向度も40〜50%と小さいため、やはり上記の
方法と同様に所望の難燃効果が得られない。
【0041】以上のことから、結晶化度の高い繊維を得
る点から下記の方法を採用してPVA系難燃繊維を製造
するのが好ましい。下記の方法によれば、固化反応が時
間をかけて行われるためスキンコア構造が形成されるこ
となくかつ繊維内部まで十分に固化されることから、繊
維構成ポリマーの結晶化度及び配向度が高くなり、その
結果、機械的性能、乾湿寸法安定性等が向上するのみで
なく優れた難燃効果が奏される。以下に本発明のPVA
系難燃繊維の好適な製造方法を詳細に説明する。
【0042】まず、紡糸原液を構成するビニルアルコー
ル系ポリマーの溶剤として、たとえばグリセリン、エチ
レングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレン
グリコール、ブタンジオールなどの多価アルコール類や
ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムア
ミド、ジエチレントリアミン等から選ばれる有機溶剤、
またはこれら2種以上の混合溶剤、さらにこれら有機溶
剤と水との混合溶剤などを用いるのが好ましい。なかで
も繊維性能、紡糸性等の点からはジメチルスルホキシド
及び/又はグリセリン、特にジメチルスルホキシドがよ
り好ましい。紡糸性、繊維性能等の点からは、紡糸原液
中のビニルアルコール系ポリマー濃度は5〜30重量%
程度が好ましく、紡糸原液の温度は80〜230℃が一
般的である。また本発明の効果を損わない範囲であれば
ホウ酸、界面活性剤、分解抑制剤、染料、顔料などを紡
糸原液に添加してもかまわない。
【0043】このようにして得られた紡糸原液を紡糸ノ
ズルを通して固化浴中に湿式紡糸、あるいは乾湿式紡糸
する。固化浴を紡糸ノズルに直接接触させる湿式紡糸方
法は、ノズル孔ピッチを狭くしても繊維同士が膠着せず
に紡糸できるために多孔ノズルを用いた紡糸に適してお
り、一方固化浴と紡糸ノズルの間にエアギャップを設け
る乾湿式紡糸の場合は、エアギャップ部での伸びが大き
いことより高速紡糸に適している。目的や用途に応じて
適宜紡糸法を選択するのが好ましい。
【0044】紡糸原液を固化し繊維化させる固化液とし
ては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ア
セトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などのよう
にPVAに対して固化能を有する有機溶媒が好ましい。
このとき、結晶化度の高い繊維を得る点から固化におけ
る溶剤抽出をゆっくり行って均一ゲル構造を形成させる
ことが重要であり、この点から該固化液に紡糸原液を構
成する有機溶剤を10重量%以上混合させるのが好まし
い。固化溶媒としてメタノール、紡糸原液溶媒としてD
MSOを用いるのがより効果的である。紡糸性、繊維性
能等の点からは固化浴中の紡糸原液溶媒の濃度を20〜
70重量%、さらに25〜65重量%とするのがより好
ましく、固化液/紡糸原液溶媒の組成重量比は25/7
5〜85/15であるのが好ましい。また本発明の効果
を損わない範囲であれば他の添加物が配合されていても
かまわない。
【0045】さらに固化反応速度を小さくして繊維内部
まで十分に均一ゲル構造を形成させる点からは固化浴の
温度を30℃以下とするが好ましく、特に20℃以下、
さらに15℃以下とするのが好ましい。かかる方法を採
用することによって、固化が断面方向に均一でありかつ
熱処理等を施さない場合であっても結晶化度の高い繊維
が得られる。繊維間の膠着を少なくしその後の乾熱延伸
を容易にする点からは、固化浴から離浴した糸篠を有機
溶剤を含んだ状態で2〜10倍の湿延伸をするのが好ま
しく、20〜60℃の温度範囲で湿延伸を行うのがより
好ましい。
【0046】次いで繊維を抽出浴に浸漬して溶剤の抽出
を行えばよい。抽出剤としてはメタノール、エタノー
ル、プロパノールなどのアルコール類やアセトン、メチ
ルエチルケトン、エーテル、水などが使用できる。続い
て、必要に応じ、油剤などを付与して乾燥すればよい。
PVA系繊維の強度、耐熱性、耐湿熱性を高める点から
はさたに乾熱延伸を行うのが好ましく、特に総延伸倍率
が6倍以上、好ましくは8倍以上となるように乾熱延伸
するのが好ましい。なお、総延伸倍率は湿延伸倍率と乾
熱延伸倍率の積で表される。繊維の機械的性能、結晶化
度の点からは、高い温度で乾熱延伸を行う方が好ましい
ことから延伸温度が高い方が好ましく、特にビニルアル
コール系ポリマーの重合度が高いほど延伸温度を高めて
延伸倍率を高めるのが好ましい。また所望によりさらに
熱処理やホルマール化処理等を行ってもかまわない。
【0047】このとき、リン含有ポリマー(ポリマー
A)によりビニルアルコール系ポリマーの脱水反応が進
行しない条件で乾燥及び乾熱延伸するのが好ましい。ビ
ニルアルコール系ポリマーの脱水反応(架橋反応)を実
質的に生じさせない条件でPVA系繊維を製造すること
によって、繊維の着色が抑制され風合及び品位に優れた
繊維が得られる。具体的には繊維のL*を35以上とす
る必要があり、40以上、特に45以上とするのが好ま
しい。L*が大きいほど着色が小さく品位の高い繊維と
いえ、繊維製造工程においてリン系化合物によりビニル
アルコール系ポリマーにポリエン構造が形成されると、
繊維が着色してL*が小さくなり適用可能な用途が限定
されることとなる。
【0048】さらにビニルアルコール系ポリマーの脱水
反応が進行しない条件で乾燥及び乾熱延伸することによ
り、繊維の配向が阻害されずに耐熱性の高いチャーが生
成されやすくなり、しかも燃焼時における脱水反応によ
り水分が生じ易くなることから、難燃効果の点でも一層
優れた効果が得られる。リン含有ポリマー(ポリマー
A)の付与は、繊維が難燃性を発現するに十分な量を付
与可能でありかつ最終的に得られる繊維を構成するビニ
ルアルコール系ポリマーが十分な結晶性を有し得る方法
であれば、紡糸原液から乾熱延伸後のいずれの工程で行
ってもかまわないが、紡糸原液中に添加する方法が好ま
しい
【0049】繊維の単繊維繊度は用途、目的に応じて適
宜変更すれば良く、たとえば布帛等に用いる場合には
0.1〜10d,特に1〜5d程度のものが広く適用で
きる。また繊維強度は3cN/dtex以上、特に4c
N/dtex以上であるのが好ましく、本発明において
は繊維の機械的性能を大きく損うことなく優れた難燃性
能を付与できる。また本発明の効果を損わない範囲であ
れば他の難燃化手段を併用してもかまわないが、本発明
によれば他の手段を用いることなく難燃性に優れた繊維
が得られる。具体的にはLOI値は25以上、特に27
以上、さらに29以上の繊維が得られる。
【0050】また該難燃繊維はあらゆる形態で使用でき
る。たとえばフィラメント、カットファイバー(捲縮繊
維等)、紡績糸、紐状物、ロープ、布帛(不織布、織編
物)等の形態で使用でき、また他の非難燃繊維及び/又
は他の難燃繊維と併用して繊維構造物を形成してもかま
わない。なかでも本発明の難燃繊維は風合に優れている
ことから布帛として用いた場合に顕著な効果が得られ
る。本発明の難燃繊維を50重量%以上、さらに80重
量%以上、特に90重量%以上含む布帛とすることによ
り一層優れた難燃効果が奏される。また本発明の繊維ま
たは該繊維を用いてなる繊維構造物と他の素材を複合す
ることも可能であり、たとえば樹脂、ゴム、水硬性材料
等と複合一体化して用いることができる。
【0051】本発明により得られる難燃繊維は、燃焼ガ
ス毒性、メルトドリップ性、コスト、耐洗濯耐久性等の
諸性能に優れ、しかも高い難燃効果を有しているのみで
なく品位、機械的性能等にすぐれていることから、産業
資材用途のみならずあらゆる用途に使用できる。具体的
には戦闘服や消防服などの防護衣料分野、カーシートや
車両バネ受材やエアフィルターなどの産業資材分野、カ
ーテン、カーペット、毛布、フトン側地、シーツカバ
ー、中入綿などの生活資材分野に有効に用いることがで
きる。本発明の繊維は、カーテンやカーペットなどの家
庭内装材、一般衣類、漁網、ロープ、テント、土木シー
ト等の一般産業資材などに有効である、また衣類、装飾
用繊維としても有効。
【0052】
【実施例】次に本発明を実施例にてさらに説明するが、
本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また
実施例中、%や比率は特に断りがない限り重量に基づく
値である。 [繊維強度]JIS L−1013に準じて測定した。
【0053】[難燃指数(LOI値)]JIS K−7
201に準拠して測定した。 [ハロゲン含有率 重量%]試料(A1mg)を酸素気
流中で加熱分解し、このガスを800℃の白金触媒に接
触させて単体ハロゲンを生成させ、次いでこの単体ハロ
ゲンを400〜450℃の加熱銀と反応させ、反応後の
銀の重量増加分(A2mg)を測定し、A22/A1×
100により算出した。 [PVAの粘度平均重合度PA]JIS K−6726
に基づき、30℃におけるPVA系ポリマ−の稀薄水溶
液の比粘度(ηsp)を5点測定し、次式(1)により
極限粘度[η]を求め、さらに下記式(2)により粘度
平均重合度PAを算出した。なおCはPVA水溶液のP
VA濃度である。 [η]=lim(c→0)ηsp/c …(1) PA =([η]×104/8.29)1.613 …(2)
【0054】[PVA中のリン含有量 %]十分に乾燥し
た繊維を50〜140℃のジメチルスルホキシドに溶解
せしめ、プロトンNMRによりPVAのCH2基ピーク
に対する該変性剤のピーク面積比を算出し、予め作成し
た検量線より含有量を求め、リン原子結合量(PVAの
主鎖を構成する炭素原子数に対するリン原子数の割合)
を換算算出した。
【0055】[結晶化度 %]理学電機製「差動型示差
熱天秤 TAS−2000」を用いて、約2〜3mgの
精秤した繊維サンプルを窒素中で25℃から300℃ま
で昇温速度80℃/min、ガス流量20ml/min
の条件で昇温した際のビニルアルコール系ポリマーの結
晶融解に基づく吸熱ピーク面積から融解熱(J)を求め
た。次いで難燃剤等を除いたビニルアルコール系ポリマ
ー1gあたりの融解熱(ΔH/g)を換算し、該値の結
晶化度100%のビニルアルコール系ポリマー1gあた
りの融解熱(174.5J/g)に対する割合(%)を
結晶化度として求めた。 [配向度 %]株式会社オリエンテック製パルス式直読
粘弾性測定器DDV―5―B型を用い、繊維サンプルの
繊維軸に沿った10KHzの音波の速度Cを測定し、ポ
リビニルアルコールのキャストフィルムから得られた無
配向試料の音速Cu(2.20km/sec)と比較し
てMoselayの式(配向度=1―Cu/C)に
より配向度を算出した。 [L*]JIS Z8722―1994に準じて測定し
た。L*が小さいほど強く着色しており、また繊維にポ
リエン構造が多く形成されているといえる。
【0056】[実施例1]粘度平均重合度1700、ケ
ン化度99.9%のPVA8kg(ビニルアルコールユ
ニット換算で182モル)をジメチルスルホキシド80
kg(90℃)に溶解し、PVA濃度9重量%の原液8
8kgを調製した。次にリン基含有化合物としてメトキ
シカルボニルフェニルリン酸ジメチル10.0kg(4
1モル、ビニルアルコールユニットに対して22.6モ
ル%)、さらにナトリウムメチラート0.308kg
(5.7モル)を加え90℃×1時間反応させてPVA
にエステル結合を介することによりリン含有基を導入し
た。次にp―トルエンスルホン酸0.982kg(5.
7モル)を加えて90℃×10時間攪拌して中和した。
中和終了後に溶液を一部取出して、NMRにより反応率
を測定すると70%であった。次いで、得られた溶液に
粘度平均重合度1700、ケン化度99.9モル%のP
VA(B)12kg(ビニルアルコールユニット換算で
273モル,PVA(A)/PVA(B)=54/4
6:重量比)を加え、90℃で攪拌してこれを溶解した
後、攪拌を停止して90℃で5時間、160torrの
条件で脱泡した。
【0057】得られた紡糸原液を孔径0.08mm、孔
数1000ホールのノズルを通して、メタノール/DM
SOの重量比が70/30である5℃の固化浴中に湿式
紡糸した。次いでメタノールでDMSOを抽出しながら
3倍に湿延伸した後、繊維を2段のメタノール抽出浴を
順次通過させることによりジメチルスルホキシド、未反
応のリン基含有化合物、触媒残渣及び中和塩を除去して
100℃にて乾燥した。紡糸原糸を組成分析したところ
リン原子結合量は3.2%であった。次に得られた紡糸
原糸に210℃で3.3倍の乾熱延伸を施し、単繊維繊
度3.1デニールの繊維(繊維強度5.0cN/dte
x、ハロゲン含有率0%、結晶化度68%、配向度60
%)を得た。該繊維はLOI値は30と難燃性の高いも
のであり、表面に難燃剤のブリードアウトが見られず風
合いに優れ、しかも機械的性能の高いものであった。ま
た該繊維の色相は若干薄紫色に着色していたものの極め
て軽度であり(L*46)、風合、品位の高いものであ
った。
【0058】[比較例1]粘度平均重合度1700、ケ
ン化度99.9%のPVA20kg(ビニルアルコール
ユニット換算で455モル)と、フェニルリン酸ジメチ
ル5.3kg(28.5モル、ビニルアルコールユニッ
トに対して6.3モル%)をDMSO中窒素気流下80
℃で5時間撹拌し、PVA/フェニルリン酸ジメチル=
79/21(重量比)、PVA濃度18%の組成を有す
る紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を孔径0.08m
m、孔数1000ホールのノズルを通して、メタノール
/DMSOの重量比が70/30である5℃の固化浴中
に湿式紡糸した。次いでメタノールでDMSOを抽出し
ながら3倍に湿延伸し、100℃の熱風でメタノールを
乾燥し、210℃で3.3倍乾熱延伸を施し、単繊維繊
度3.1デニール(繊維強度4.0cN/dtex、ハ
ロゲン含有率0%)の繊維を得た。得られた繊維のLO
I値は29であったが、該繊維表面には、粉末状のフェ
ニルリン酸ジメチルが付着しており風合の劣るものであ
った。
【0059】[比較例2]粘度平均重合度1700、ケ
ン化度99.9%、リン原子結合量3.2%のリン酸エ
ステル化PVA20kgを水中90℃で5時間撹拌し、
ポリマー濃度18%の組成を有する紡糸原液を得た。得
られた紡糸原液を孔径0.08mm、孔数1000ホー
ルのノズルを通して、苛性ソーダ20g/lと芒硝35
0g/lを含有する45℃の水溶液よりなる固化浴中に
湿式紡糸した。次いで1.5倍のローラー延伸、硫酸と
芒硝の水溶液から中和浴にて中和、95℃の飽和芒硝水
溶液中で2倍の湿延伸、30℃の水洗浴で硼酸洗浄、3
00g/lの芒硝水溶液で芒硝置換、100℃で乾燥、
230℃で3.0倍の乾熱延伸を施こして、水系紡糸法
によりPVA系難燃繊維(繊維強度3.8cN/dte
x、ハロゲン含有率0%、PVAの結晶化度56%、配
向度50%)を得た。該繊維のLOI値は28であり実
施例に比して難燃効果の低いものであった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 29/04 C08L 29/04 B D01F 6/50 D01F 6/50 Z D03D 15/00 D03D 15/00 A D04B 1/16 D04B 1/16 21/00 21/00 B Fターム(参考) 4J002 BE02W BE04X FD13X GK01 4J100 AD02P AD07Q BA65H BA65Q BA67H BA67Q CA01 CA04 CA31 HA08 HA11 HA19 HC75 JA11 4L002 AA05 AC00 EA00 FA01 FA06 4L035 BB03 BB06 BB11 BB17 BB18 BB66 BB69 BB85 BB89 BB91 EE14 EE20 GG06 HH10 4L048 AA18 AA42 AA53 AC14 CA06 DA01 DA13 DA16 DA19 DA24 DA29

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハロゲン含有率が1重量%以下であるポ
    リビニルアルコール系繊維であって、該繊維を構成する
    ポリマーの少なくとも一部がエステル結合を介してリン
    を含有する基が主鎖に結合しているビニルアルコール系
    ポリマー(ポリマーA)であり、かつ該繊維を構成する
    ポリマーの結晶化度が65〜85%、配向度が55〜9
    5%であるポリビニルアルコール系難燃繊維。
  2. 【請求項2】 繊維を構成するビニルアルコール系ポリ
    マー中のリン原子結合量が0.5〜40%である請求項
    1に記載のポリビニルアルコール系難燃繊維。
  3. 【請求項3】 少なくともリンを含有する基を実質的に
    有しないビニルアルコール系ポリマー(ポリマーB)を
    含む請求項1に記載のポリビニルアルコール系難燃繊
    維。
  4. 【請求項4】 ビニルアルコール系ポリマー(ポリマー
    A)が一般式(1)で示される構成単位を少なくとも有
    するビニルアルコール系ポリマーである請求項1に記載
    のビニルアルコール系難燃繊維。 【化1】
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載のポリビ
    ニルアルコール系難燃繊維を用いてなる布帛。
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