JP2000314030A - ポリビニルアルコール系難燃繊維及びその製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系難燃繊維及びその製造方法

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JP2000314030A
JP2000314030A JP11939599A JP11939599A JP2000314030A JP 2000314030 A JP2000314030 A JP 2000314030A JP 11939599 A JP11939599 A JP 11939599A JP 11939599 A JP11939599 A JP 11939599A JP 2000314030 A JP2000314030 A JP 2000314030A
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flame retardant
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phosphorus
pva
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Hiroyuki Oki
弘之 大木
Masahiro Sato
政弘 佐藤
Shinya Inada
真也 稲田
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 実質的にハロゲンを含有せず、しかも難燃性
が高く繊維性能に優れたPVA系難燃繊維及びその効率
的な製造方法、さらに該繊維を用いてなる布帛を提供す
る。 【解決手段】 ビニルアルコール系ポリマー(A)及び
リン系難燃剤(B)から構成され、該ビニルアルコール
系ポリマー(A)の結晶化度が65〜85%、配向度が
55〜95%であり、かつL*が35以上、ハロゲン含
有率が1重量%以下であることを特徴とするポリビニル
アルコール系難燃繊維とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工業的に安価に製
造可能で、かつ実質的にハロゲン原子を含有しないポリ
ビニルアルコール(以下PVAと略記)系難燃繊維及び
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、アクリル繊維、ポリエステル繊
維、レーヨン繊維、アラミド繊維等の種々の繊維に難燃
性を付与する方法が検討されている。なかでもPVA系
繊維は、機械的性能が高く低コストでしかもメルトドリ
ップが発生しにくい等の特徴があることから難燃性繊維
として注目されている。
【0003】たとえば、ポリ塩化ビニル等のハロゲン含
有樹脂やハロゲン化難燃剤を含有するPVA系繊維や、
塩化ビニル共重合PVAを用いたPVA系繊維が提案さ
れている(特公昭37―12920号公報、特公昭37
−12920号公報、特公昭49−10823号公報、
特公昭51−19494号公報)。しかしながら、近
年、さまざまな材料・素材が環境に与える影響が非常に
問題視されており、特に焼却時にダイオキシンが発生す
る点等から、ポリ塩化ビニルを代表とするハロゲン含有
素材(ハロゲン含有樹脂、ハロゲン系難燃剤等)を非ハ
ロゲン系素材に置き換えることが強く要望されている。
【0004】以上のことから、実質的にハロゲンを含ま
ない非ハロゲンPVA系難燃繊維の検討がなされてい
る。例えばリン系難燃剤を用いる方法として、PVA系
繊維をポリリン酸アンモニウムの水性懸濁液等に浸漬し
て表面コーティング処理する方法(特開昭45−347
62公報、特開昭49−74768公報)、PVA系繊
維を縮合リン酸液及び反応促進剤を混合した液の中に浸
漬後、該繊維を加熱してリン酸エステル化する方法(特
開昭48−28085公報)、さらにポリリン酸アンモ
ニウム又はポリリン酸アミドを含有するPVA水溶液を
乾式紡糸する方法(特開昭50−22050公報、特開
昭50−22051公報)等が提案されている。しかし
ながら、リン系難燃剤はハロゲン系難燃剤に比して難燃
効果が低いために十分な難燃効果が得られにくく、また
十分な難燃効果を得るために多量の難燃剤を配合すると
繊維性能が損われる問題がある。またリン酸エステル化
したPVA系樹脂と通常のPVA系樹脂の混合物を繊維
化することが特開昭53−115794号公報に記載さ
れているが、やはり十分な難燃性は得られにくく、難燃
性を高めるためにリン酸エステルの割合を高めると繊維
性能が低下してしまう。
【0005】一方、リン酸含有化合物により架橋構造を
形成させてPVA系繊維の耐熱水性を改良する方法も提
案されている(特開平2−249705号公報、特開平
4−228610号公報、特開平2−84587号公
報、特開平4−228610号公報、特開平3−287
812号公報、特開平4−163309号公報、特開平
4−100912号公報、特開平3−213510号公
報、特開平4−240207号公報、特開平4−126
829号公報、特開平4−163310号公報、特開平
4−126830号公報等)。確かに架橋構造が形成さ
れると繊維の耐熱水性は向上するものの、架橋構造が形
成された繊維の難燃性は低下しやすい問題がある。さら
にPVAの分子内脱水が進行して共役2重結合が生じる
ために激しく着色し、また繊維の柔軟性が低下して品位
が損われる問題があり、消防服や作業服などの衣料分野
やカーペットなどのリビング分野、カーシートなどの産
業資材分野には不適当なものとなる。またかかる架橋構
造を形成させるのを目的とする場合、繊維に配合される
リン系化合物はせいぜい5重量%/繊維(通常1重量%
以下/繊維)であることから十分な難燃効果は奏されな
い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、実質
的にハロゲンを含有せず、しかも難燃性が高く機械的性
能、品位等の諸性能に優れたPVA系難燃繊維及びその
効率的な製造方法、さらに該繊維を用いてなる布帛を提
供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1) ビ
ニルアルコール系ポリマー(A)及びリン系難燃剤
(B)から構成され、該ビニルアルコール系ポリマー
(A)の結晶化度が65〜85%、配向度が55〜95
%であり、かつL*が35以上、ハロゲン含有率が1重
量%以下であることを特徴とするポリビニルアルコール
系難燃繊維、(2) リン系難燃剤(B)の含有量が8
〜45重量%である(1)に記載のポリビニルアルコー
ル系難燃繊維、(3) リン系難燃剤(B)がリン酸系
化合物であることを特徴とする(1)又は(2)に記載
のポリビニルアルコール系難燃繊維、(4) 280℃
における水分発生率が70%以上である(1)〜(3)
のいずれかに記載のポリビニルアルコール系難燃繊維、
(5) ビニルアルコール系ポリマー(A)を有機溶媒
に溶解して得られる紡糸原液を、該紡糸原液を構成する
有機溶媒を10重量%以上含む固化浴に湿式紡糸または
乾湿式紡糸するとともに、得られた糸篠を固化浴から離
浴させてから乾熱延伸工程にいたるまでのいずれかの工
程で糸篠にリン酸系難燃剤を付与し、かつビニルアルコ
ール系ポリマーの脱水反応が実質的に生じない温度条件
で乾熱延伸を行うポリビニルアルコール系難燃繊維の製
造方法、(6) (1)〜(4)のいずれかに記載のポ
リビニルアルコール系難燃繊維を用いてなる布帛、に関
する。
【0008】
【発明の実施の形態】まず本発明においては繊維におけ
るハロゲン含有率を1重量%以下/繊維、好ましくは
0.1重量%以下/繊維、さらに好ましくは0〜0.0
01重量%/繊維とする必要がある。ハロゲン含有率が
高い場合にはダイオキシン発生等の環境上の問題が生じ
る。一般的にハロゲン含有率を低くすると十分な難燃性
が得られにくくなるが、本発明は実質的にハロゲンを用
いることなく難燃性に優れたPVA系繊維を得るもので
ある。なお、本発明にいうハロゲン含有率とは、繊維重
量に占めるハロゲン元素重量の割合であり、実施例に記
載の方法により求められる。
【0009】本発明においては、繊維に十分な難燃性を
付与する点から少なくともリン系難燃剤(B)を用いる
必要がある。リン系難燃剤が他の非ハロゲン系難燃剤に
比して難燃効果が高く、しかも繊維性能を劣化させにく
いことから優れた効果が得られる。リン系難燃剤による
難燃効果は、以下の〜の少なくとも1以上のメカニ
ズムにより発現し、通常2以上のメカニズムが相乗的に
作用していると考えられる。 難燃剤中のリン原子が燃焼時に発生する活性ラジカル
のトラップ剤として働く。 リン系難燃剤が燃焼時に縮合してポリリン酸を形成
し、これが繊維表層を被膜することによって外部からの
燃焼熱を遮断したり、繊維内部からの可燃性ガスの発生
を抑制する。 リン系難燃剤によりビニルアルコール系ポリマーの脱
水反応が促進されて架橋・炭化反応が加速され、この時
生じたPVA由来の炭化物(チャーと呼ばれる)が繊維
表面を被膜して、外部からの燃焼熱を遮断したり繊維内
部からの可燃性ガスの発生を抑制する。 ビニルアルコール系ポリマーの脱水反応によって発生
する水分の気化熱によって繊維表面が冷却される。 このように、リン系難燃剤(B)を配合することによっ
て上記の1以上のメカニズムが発現されることから、他
の非ハロゲン系難燃剤に比して優れた難燃効果が奏され
る。
【0010】本発明者等は、リン系難燃剤によるPVA
系繊維の難燃化について詳しく検討した結果、上記発現
メカニズムのなかでも及び、特にが繊維の難燃性
に大きな影響を与えることを見出した。上記メカニズム
及びを十分に発現させるためには、燃焼時に繊維の
分解反応が大きく進行する前に脱水反応が生じ、しかも
脱水反応がある温度以上で急激に進行することが重要と
なる。以上のことから、280℃における水分発生率が
70%以上、特に75%以上、さらに80%以上である
のが好ましい。なお、本発明にいう水分発生率とは、繊
維を構成するビニルアルコール系ポリマーから理論的に
生成する水分量に対する「280℃の窒素中にPVA系
繊維を2時間放置した際に発生する水分量」の割合(百
分率)であり、実施例に記載の方法により求められる。
280℃における水分発生率の高い繊維ほど上記メカニ
ズム及びが効果的に発現して優れた難燃効果が奏さ
れる。
【0011】また上記メカニズム及びを効率的に発
現させる点からは、燃焼時にビニルアルコール系ポリマ
ーの脱水反応を進行させるのに十分な酸性を有するリン
系難燃剤を用いるのが好ましい。具体的には、リン酸系
化合物が好適に挙げられる。工業的汎用性、難燃性発現
効果、着色抑制性等を考慮すると、リン酸、亜リン酸、
メタリン酸等やこれらの誘導体(リン酸、亜リン酸、メ
タリン酸等のリン原子に直接アルキル基又はフェニル基
が結合した化合物等)、さらにリン酸、亜リン酸、メタ
リン酸等又はこれらの誘導体の縮合物、また該縮合物の
エステル類(アルキルエステル類、フェニルエステル類
等)、アンモニウム塩、アミド化物等がリン酸系化合物
として好適に使用できる。なかでも同理由からリン酸及
びリン酸誘導体、あるいはこれらの縮合物のアルキルエ
ステル類、フェニルエステル類、アンモニウム塩、アミ
ド化物がより好適に使用できる。
【0012】より具体的にはメチルホスフェート、ジメ
チルホスフェート、トリメチルホスフェート、エチルホ
スフェート、ジエチルホスフェート、トリエチルホスフ
ェート、ジエチルヘキシルホスフェート、ブチルホスフ
ェート、ジブチルホスフェート、トリブチルホスフェー
ト、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフ
ェート、エチルジエチルフォスホノアセテート、ブチル
ピロホスフェート、ブトキシエチルホスフェート、2−
エチルヘキシルホスフェート、ジ(2−エチルヘキシ
ル)ホスフェート、フェニルホスフェート、ジフェニル
ホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジ
フェニルホスフェート等のリン酸エステル(アルキルエ
ステル類、フェニルエステル類等)、リン酸3アンモニ
ウム、亜リン酸アンモニウム、リン酸水素2アンモニウ
ム、リン酸2水素アンモニウム等のリン酸化合物塩、そ
のほかホスフェートアミン化合物、リン酸アミド、フェ
ニルホスホン酸、ジメチルフェニルホスホネート、ジエ
チルフェニルホスホネート等が挙げられる。またポリリ
ン酸メチル、ポリリン酸エチル、ポリリン酸プロピル、
ポリリン酸ブチル、ポリリン酸フェニル等のリン酸又は
リン酸誘導体の縮合物のエステル類(アルキルエステル
類、フェニルエステル類)等も好適に使用できる。
【0013】また重合性2重結合を有するリン含有モノ
マーの重合体、あるいはこれらリン含有モノマーとその
他重合性モノマーとの共重合体、あるいはこれら重合体
の誘導体をリン系難燃剤として用いてもかまわない。重
合性2重結合を有するリン含有モノマーは特に限定され
ないが、例えばアクリルアミド基、メタクリルアミド
基、アクリレート基、メタクリレート基、ビニルエステ
ル基、ビニルエーテル基等から選ばれる少なくとも1以
上の基を有するモノマーが好適に挙げられる。これらの
2重結合含有化合物から重合体を得る方法は特に限定さ
れず、2重結合の反応性によってラジカル重合法、アニ
オン重合法、カチオン重合法、配位重合法等の一般的に
利用されている重合法から適宜選択される。
【0014】またリン含有モノマーと共重合する成分と
しては、αÑオレフィン(エチレン、プロピレ
ン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン
他)、スチレン、スチレン誘導体、メタクリレート類、
アクリレート類、アクリロニトリル、ビニルエステル
類、ビニルエーテル類、ブタジエン、イソプレン、イソ
ブテン、エチレングリコール、プロピレングリコール、
エチレンオキシド、プロピレンオキシド等の重合性モノ
マー類から選ばれる1種、あるいは2種以上の成分が挙
げられる。なかでも紡糸原液を構成する溶剤に対する親
和性、溶解性を考慮すると、メタクリレート類、アクリ
レート類、メタクリルアミド類、アクリルアミド類、ビ
ニルエステル類が好適に使用できる。これらの共重合モ
ノマー類とリン含有重合性モノマーからなる共重合体
は、ランダムコポリマー、ブロックポリマー、グラフト
ポリマー等のいずれであってもよく、さらに共重合体の
後変性によって選られる誘導体も好適に用いられる。
【0015】より具体的には、ビニルエステル類とリン
含有重合性モノマーとを共重合後、側鎖であるエステル
基の一部あるいは全てを鹸化してビニルアルコールユニ
ットに変換することで得られるビニルアルコール/リン
含有ユニット共重合体、アクリレート類またはメタクリ
レート類とリン含有重合性モノマーとを共重合後、側鎖
であるエステル基の一部あるいは全てを加水分解しアク
リル酸あるいはアクリル酸塩に変換することで得られる
アクリル酸(またはアクリル酸塩)含有ポリマー/リン
含有ユニット共重合体等が挙げられる。
【0016】また上記を発現し高い難燃効果を得る点
からは、リン系難燃剤として縮合リン酸系化合物又は燃
焼時に容易に縮合してポリリン酸型の縮合物を形成しや
すい低分子化合物を用いるのが好ましく、特にビニルア
ルコール系ポリマーとの親和性・相溶性の点、さらに紡
糸性を高める点から縮合リン酸系化合物を用いるのが好
ましい。好適な例としては、ポリリン酸等の縮合リン
酸、ポリリン酸アンモニウム等の縮合リン酸塩、ほかに
ポリリン酸アミド、ポリリン酸エステル類(アルキルエ
ステル類、フェニルエステル類等)が挙げられる。
【0017】好適なポリリン酸アミドとしては、リン酸
源及び窒素源、さらに必要に応じて縮合剤を混合して焼
成、縮合反応を行わせて得られるアミド型窒素を含有す
る高分子化合物が挙げられる。好適なリン酸源としては
リン酸アンモニウム、リン酸尿素、無水リン酸、縮合リ
ン酸、リン酸から選ばれる1種以上の化合物、好適な窒
素源としてはメラミン、ジシアンジアミド、グアニジ
ン、グアニル尿素等のシアナミド誘導体、好適な縮合剤
としては尿素、リン酸尿素が挙げられる。また焼成条件
によっては脱水作用が一部に生じることがあるが、かか
る方法により得られる化合物、たとえばホスホリルアミ
ド、ホスホリルイミドの結合を一部に有する化合物、ま
た尿素結合が一部残存している化合物等もポリリン酸ア
ミドに包含される。
【0018】また難燃効果、紡糸性及び繊維性能等の点
からは、少なくともポリリン酸アンモニウムをリン酸系
化合物として用いるのが好ましく、該難燃剤を用いるこ
とにより顕著な効果が奏される。ポリリン酸アンモニウ
ムは、一般的にはオルソリン酸と尿素、無水リン酸とア
ンモニア、縮合リン酸と尿素、あるいはオルソリン酸ア
ンモニウムと尿素、無水リン酸とアンモニウムなどのよ
うな、リン酸源及びアンモニア発生源、さらに必要に応
じて縮合剤を配合してなる1種または数種の適当な組み
合わせ原料を加熱縮合することにより得ることができ
る。なかでもH n−m)+2(NH
3n+1で示される直鎖状リン酸塩が好適に使用でき
る。なおnは5以上の整数であり、0<m≦n+2であ
る。なかでもnは10以上の整数であるのが好ましく、
(n−m)+2は実質的に0であるのが好ましい。
【0019】なお本発明にいうリン系難燃剤(B)とは
リンを含有する化合物であり、難燃性及び繊維性能の点
からリン含有化合物に占めるリン原子の重量割合が10
重量%以上、特に20〜80重量%であるのが好まし
い。また2種以上のリン系難燃剤を併用してもよく、本
発明の効果を損わない範囲であればリン系難燃剤以外の
難燃剤をさらに併用しても構わない。PVA系繊維中の
リン系難燃剤の総含有量は難燃剤の種類等によって変更
すれば良いが、難燃効果、繊維の機械的性能、着色抑制
等の点から1重量%以上、特に8〜45重量%/繊維、
特に10〜40重量%/繊維とするのが好ましい。
【0020】また本発明は、リン系難燃剤によってPV
A系繊維を難燃化する場合、効率的に難燃性を発現する
ためには難燃剤の選択と同様、あるいはそれ以上にマト
リックス樹脂であるビニルアルコール系ポリマーの構
造、及びこの構造を発現するための紡糸法が非常に重要
であることを見出したものである。
【0021】すなわち、前述のに示したように、リン
系難燃剤によるPVAの難燃化において最も重要な効果
は、リン系難燃剤により繊維を構成するPVA系樹脂の
脱水反応が促進され、これに続く架橋、炭化反応により
生じたPVA由来の炭化物(チャー)が繊維表面を被膜
し、外部からの燃焼熱を遮断したり、繊維内部からの可
燃性ガスの発生を抑制することにあることを本発明者等
は明らかにした。この時、実際にはPVA自身の熱分解
反応が競争反応として存在しており、PVAの熱分解反
応が生じると、チャー生成量の減少に繋がるばかりか、
分解物が燃焼性ガスとして働くため難燃性発現を大きく
妨げることとなる。従って、如何に繊維を構成するPV
A系樹脂の熱分解反応を抑制するかが非常に重要とな
る。さらに燃焼時に生成するPVA由来のチャーの性状
も当然重要であり、燃焼に耐えうる耐熱性の高いチャー
を如何に効率よく、高収率で生成するかがポイントとな
る。
【0022】そこで燃焼時のPVAからのチャー生成機
構を詳しく調べた結果、リン系難燃剤によりPVAの脱
水反応が生じ、その結果生成したポリエン構造がディー
ルス・アルダー反応によって環化する際、同じ分子
(鎖)内で環化するいわゆる分子内環化と、異なる分子
(鎖)間で環化、架橋する分子間環化の2つのパスに大
別され、分子間環化反応を優先させることが最終的に得
られるチャーの収率向上及び耐熱性向上、すなわち難燃
性発現に非常に有効であることを見出した。すなわち、
如何にして燃焼時にポリエン鎖同志の分子間環化を促進
させるかが難燃性発現に非常に重要となる。
【0023】本発明は、リン系難燃剤添加により効率よ
く難燃性を発現するためには、繊維を構成するPVA系
重合体が高い結晶性及び配向度を有していることが重要
であることを見出したものである。具体的には、PVA
系繊維を構成するビニルアルコール系ポリマーの結晶化
度を65〜85%とする必要があり、かかる構成とする
ことによってPVA系樹脂の燃焼時の熱分解を抑制す
る、すなわちチャー生成までの時間を稼ぐことが可能に
なり、よってチャー生成の収率が向上して難燃性効果が
高まると推察される。
【0024】また繊維を構成するビニルアルコール系ポ
リマーの配向度を55〜95%とすることによって一層
顕著な効果が得られる。すなわち、分子鎖同志が高い配
向度で同一方向に並列しているほど、脱水後のデイール
スアルダー反応が分子鎖間で生じやすくなり、その結
果、最終的に再生するチャーの収率、耐熱性等が向上
し、難燃性発現に大きく貢献するものと思われる。該ポ
リマーの結晶化度及び配向度が低い場合には繊維の機械
的性能等が低くなるのみでなく、耐熱性の高いチャーが
効率的に生成されないために難燃効果も低いものとな
る。逆に繊維の結晶化度及び配向度が高すぎると加工
性、耐摩耗性、柔軟性等に問題が生じる。
【0025】本発明のPVA系繊維を構成するビニルア
ルコール系ポリマーは特に限定されないが、ポリマーの
結晶性、機械的性能、難燃性等の点から粘度平均重合度
1000以上、特に1500以上とするのが好ましく、
紡糸性、コストの点から5000以下とするのが好まし
い。また同理由からケン化度98モル%以上、なかでも
99モル%以上、特に99.5モル%以上とするのが好
ましい。ビニルアルコール系ポリマーには他のモノマー
が共重合されていてもよく、共重合成分としてはたとえ
ばエチレン、酢酸ビニル、イタコン酸、ビニルアミン、
アクリルアミド、ピバリン酸ビニル、無水マレイン酸、
スルホン酸含有ビニル化合物などが挙げられる。繊維性
能、難燃性能等の点からはビニルアルコールユニットを
全構成ユニットの70モル%以上有するポリマーとする
のが好ましい。また本発明の効果を損わない範囲であれ
ば、繊維にビニルアルコール系ポリマー以外のポリマー
や他の添加剤を含んでいてもかまわない。繊維性能等の
点からはビニルアルコール系ポリマーの含有量を30重
量%以上/繊維、特に50重量%以上/繊維とするのが
好ましい。
【0026】本発明のPVA系難燃繊維の製造方法は特
に限定されないが、構成ポリマーが特定の結晶化度とな
るような条件で製造する必要があり、具体的にはビニル
アルコール系ポリマーを有機溶剤に溶解して得られる紡
糸原液を用い、かつ下記の条件を採用して紡糸するのが
好ましい。ビニルアルコール系ポリマー水溶液を紡糸原
液とし、これを飽和芒硝浴等の凝固浴に吐出してPVA
系繊維を製造する方法等がこれまで広く採用されていた
が、かかる方法によると凝固浴中で急激に脱水凝固反応
が起るために繊維表層部に緻密なスキン層が形成された
スキンコア構造が形成される。そのため繊維内部まで十
分に固化反応が進行せず、さらに高度に延伸を行うこと
ができないことから得られる繊維の結晶化度はせいぜい
50〜60%となる。よって、機械的性能、寸法安定性
が不十分になるのみでなく、リン系難燃剤を配合したと
しても所望の難燃効果が得られなくなる。さらにスキン
コア構造が形成されている場合には、ビニルアルコール
系ポリマーが脱水反応により水分を発生したとしても、
繊維表層部が緻密なスキン層により覆われているため効
率的に気化できないため、繊維表面の冷却効果も低くな
ってしまう。また同紡糸原液を気体中に吐出する乾式紡
糸法を採用することも知られているが、該方法を採用し
たとしても繊維内部まで十分に固化させることが困難で
ある等の理由から結晶化度はせいぜい50〜60%、配
向度も40〜50%と小さいため、やはり上記の方法と
同様に所望の難燃効果が得られない。
【0027】以上のことから、結晶化度の高い繊維を得
る点から下記の方法を採用してPVA系難燃繊維を製造
するのが好ましい。下記の方法によれば、固化反応が時
間をかけて行われるためスキンコア構造が形成されるこ
となくかつ繊維内部まで十分に固化されることから、繊
維構成ポリマーの結晶化度及び配向度が高くなり、その
結果、機械的性能、乾湿寸法安定性等が向上するのみで
なく優れた難燃効果が奏される。以下に本発明のPVA
系難燃繊維の好適な製造方法を詳細に説明する。
【0028】まず、紡糸原液を構成するビニルアルコー
ル系ポリマーの溶剤として、たとえばグリセリン、エチ
レングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレン
グリコール、ブタンジオールなどの多価アルコール類や
ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムア
ミド、ジエチレントリアミン等から選ばれる有機溶剤、
またはこれら2種以上の混合溶剤、さらにこれら有機溶
剤と水との混合溶剤などを用いるのが好ましい。ただ
し、リン系難燃剤(B)を紡糸原液に直接添加して紡糸
する場合には、該難燃剤を凝集させたり分離させない溶
剤を用いるのが好まく、以上の点からはジメチルスルホ
キシド及び/又はグリセリン、特にジメチルスルホキシ
ドがより好ましい。紡糸性、繊維性能等の点からは、紡
糸原液中のビニルアルコール系ポリマー濃度は5〜25
重量%程度が好ましく、紡糸原液の温度は80〜230
℃が一般的である。また本発明の効果を損わない範囲で
あればホウ酸、界面活性剤、分解抑制剤、染料、顔料な
どを紡糸原液に添加してもかまわない。
【0029】このようにして得られた紡糸原液を紡糸ノ
ズルを通して固化浴中に湿式紡糸、あるいは乾湿式紡糸
する。固化浴を紡糸ノズルに直接接触させる湿式紡糸方
法は、ノズル孔ピッチを狭くしても繊維同士が膠着せず
に紡糸できるために多孔ノズルを用いた紡糸に適してお
り、一方固化浴と紡糸ノズルの間にエアギャップを設け
る乾湿式紡糸の場合は、エアギャップ部での伸びが大き
いことより高速紡糸に適している。目的や用途に応じて
適宜紡糸法を選択するのが好ましい。
【0030】紡糸原液を固化し繊維化させる固化液とし
ては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ア
セトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などのよう
にPVAに対して固化能を有する有機溶媒が好ましい。
このとき、結晶化度の高い繊維を得る点から固化におけ
る溶剤抽出をゆっくり行って均一ゲル構造を形成させる
ことが重要であり、この点から該固化液に紡糸原液を構
成する有機溶剤を10重量%以上混合させるのが好まし
い。固化溶媒としてメタノール、紡糸原液溶媒としてD
MSOを用いるのがより効果的である。紡糸性、繊維性
能等の点からは固化浴中の紡糸原液溶媒の濃度を20〜
70重量%、さらに25〜65重量%とするのがより好
ましく、固化液/紡糸原液溶媒の組成重量比は25/7
5〜85/15であるのが好ましい。また本発明の効果
を損わない範囲であれば他の添加物が配合されていても
かまわない。
【0031】さらに固化反応速度を小さくして繊維内部
まで十分に均一ゲル構造を形成させる点からは固化浴の
温度を30℃以下とするが好ましく、特に20℃以下、
さらに15℃以下とするのが好ましい。かかる方法を採
用することによって、固化が断面方向に均一でありかつ
熱処理等を施さない場合であっても結晶化度の高い繊維
が得られる。繊維間の膠着を少なくしその後の乾熱延伸
を容易にする点からは、固化浴から離浴した糸篠を有機
溶剤を含んだ状態で2〜10倍の湿延伸をするのが好ま
しく、20〜60℃の温度範囲で湿延伸を行うのがより
好ましい。
【0032】次いで繊維を抽出浴に浸漬して溶剤の抽出
を行えばよい。抽出剤としてはメタノール、エタノー
ル、プロパノールなどのアルコール類やアセトン、メチ
ルエチルケトン、エーテル、水などが使用できる。続い
て、必要に応じ、油剤などを付与して乾燥すればよい。
PVA系繊維の強度、耐熱性、耐湿熱性を高める点から
はさたに乾熱延伸を行うのが好ましく、特に総延伸倍率
が6倍以上、好ましくは8倍以上となるように乾熱延伸
するのが好ましい。なお、総延伸倍率は湿延伸倍率と乾
熱延伸倍率の積で表される。
【0033】このとき、リン系難燃剤によりビニルアル
コール系ポリマーの脱水反応が進行しない条件で乾燥及
び乾熱延伸することが重要である。リン系難燃剤により
ビニルアルコール系ポリマーに脱水反応が進行してしま
うと、分子内の共役2重結合生成に伴う激しい着色が生
じてしまって繊維の品位が劣化し、また繊維の配向が阻
害されて耐熱性の高いチャーが生成しにくくなり、しか
も燃焼時における脱水反応により生じる水分による難燃
効果が十分得られなくなる。
【0034】具体的には乾燥、乾熱延伸、熱処理などを
行う際の温度条件はリン系難燃剤(B)の脱水開始温度
より低くすることが望ましい。たとえばリン酸、ポリリ
ン酸、オルトリン酸等の酸性が強いリン系難燃剤を用い
る場合には230℃以下、リン酸アンモニウム、ポリリ
ン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、あるいはリン酸
アミド、ポリリン酸アミド等のリン系難燃剤を用いる場
合は250℃以下、トリメチルホスフェート、トリエチ
ルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸
エステル類のリン系難燃剤を用いる場合は260℃以下
の温度条件下で乾燥及び乾熱延伸を行うのが好ましい。
なおリン系難燃剤(B)の脱水開始温度が高い場合であ
っても、260℃以上の条件ではPVAの分解が生じる
ことから、260℃以下の温度条件で乾燥及び乾熱延伸
を行うのが好ましい。リン系難燃剤を配合している場合
には、他の化合物に比してビニルアルコール系ポリマー
の脱水反応をコントロールしやすいことから優れた効果
が得られる。
【0035】またビニルアルコール系ポリマーの脱水反
応(架橋反応)を実質的に生じさせない条件でPVA系
繊維を製造することによって、繊維の着色が抑制され風
合及び品位に優れた繊維が得られる。具体的には繊維の
L*を35以上とする必要があり、40以上、特に45
以上とするのが好ましい。L*が大きいほど着色が小さ
く品位の高い繊維といえ、繊維製造工程においてリン系
化合物によりビニルアルコール系ポリマーにポリエン構
造が形成されると、繊維が着色してL*が小さくなり適
用可能な用途が限定されることとなる。
【0036】本発明は、ビニルアルコール系ポリマーに
実質的に架橋構造を形成させることなく風合、色調に優
れた繊維を製造するものであり、火事等により燃焼した
際にはじめて架橋構造を形成させて(脱水反応を生じさ
せて)難燃発現メカニズム及びを発現させて優れた
難燃効果を得るものである。これまでPVA系繊維の耐
熱水性を高める目的でリン化合物を配合して架橋構造を
形成させる方法が検討されていたが、かかる方法により
得られる繊維は色調等の点で上記のような問題が生じる
ことから所望の効果が得られない。
【0037】しかしながら、繊維の機械的性能、結晶化
度の点からは、高い温度で乾熱延伸を行う方が好ましい
ことから延伸温度が高い方が好ましく、特にビニルアル
コール系ポリマーの重合度が高いほど延伸温度を高めて
延伸倍率を高めるのが好ましい。以上のことから、もっ
とも着色が少なく(PVAの脱水反応が進行せず)、か
つ高延伸倍率を達成しうる温度を選択するのが好まし
く、リン系難燃剤(B)の脱水開始温度をXとすると
き、(X―30)℃以上で乾熱延伸を行うのが好まし
い。また所望によりさらに熱処理やホルマール化処理等
を行ってもかまわないが、かかる処理を行う場合にも実
質的にビニルアルコール系ポリマーの脱水反応が進行し
ない条件下で諸処理を行うのが好ましい。
【0038】リン系難燃剤の付与は、繊維が難燃性を発
現するに十分な量を付与可能でありかつ最終的に得られ
る繊維を構成するビニルアルコール系ポリマーが十分な
結晶性を有し得る方法であれば、紡糸原液から乾熱延伸
後のいずれの工程で行ってもかまわない。たとえば、紡
糸原液中に添加する方法、膨潤状態の糸篠を難燃剤を添
加した抽出浴を通過させる方法、さらに適当な液体に溶
解・分散したリン系難燃剤を紡糸した繊維表面に塗布す
る方法等が挙げられる。
【0039】なかでも最終的に得られる繊維を構成する
ビニルアルコール系ポリマーの結晶性を高める点から
は、あらかじめPVAの微結晶を成長をさせた後又は全
体の結晶化を進行させた後にリン系難燃剤を付与する方
法を採用するのが好ましい。具体的には、固化浴から離
浴させてから乾熱延伸工程にいたるまでのいずれかの工
程でリン酸系難燃剤を付与するのが好ましく、なかでも
固化浴から離浴して膨潤状態にある糸篠を難燃剤を配合
した抽出浴に通過させることにより難燃剤を繊維内部へ
十分含有させる方法、あるいは紡糸した繊維表面に適当
な液体に溶解又は分散させたリン系難燃剤を塗布する方
法を採用するのが好ましい。特に繊維内部まで均一にか
つ所望量難燃剤を含有させることが容易である点から、
抽出浴に難燃剤を添加する前者の方法が好ましい。難燃
剤の含浸性、抽出効果等の点からは、抽出浴中の難燃剤
の配合量は5〜50重量%/抽出液全重量とするのが好
ましく、抽出浴の温度は−10℃〜50℃とするのが好
ましい。また難燃剤を糸篠の内部に十分浸透させる点か
らは、浴への浸漬時間を5秒以上とするのが好ましく、
効率性の点からは30分以内とするのが好ましい。
【0040】繊維の単繊維繊度は用途、目的に応じて適
宜変更すれば良く、たとえば布帛等に用いる場合には
0.1〜10d,特に1〜5d程度のものが広く適用で
きる。また繊維強度は3cN/dtex以上、特に5c
N/dtex以上であるのが好ましく、本発明において
は繊維の機械的性能を大きく損うことなく優れた難燃性
能を付与できる。LOI値は25以上、特に30以上で
あるのが好ましい。本発明により得られる難燃繊維は、
燃焼ガス毒性、メルトドリップ性、コスト、耐洗濯耐久
性等の諸性能に優れ、しかも高い難燃効果を有している
のみでなく品位、機械的性能等にすぐれていることか
ら、産業資材用途のみならずあらゆる用途に使用でき
る。具体的には戦闘服や消防服などの防護衣料分野、カ
ーシートや車両バネ受材やエアフィルターなどの産業資
材分野、カーテン、カーペット、毛布、フトン側地、シ
ーツカバー、中入綿などの生活資材分野に有効に用いる
ことができる。
【0041】また該難燃繊維はあらゆる形態で使用でき
る。たとえばフィラメント、カットファイバー(捲縮繊
維等)、紡績糸、紐状物、ロープ、布帛(不織布、織編
物)等の形態で使用でき、また他の非難燃繊維及び/又
は他の難燃繊維と併用して繊維構造物を形成してもかま
わない。なかでも本発明の難燃繊維は風合に優れている
ことから布帛として用いた場合に顕著な効果が得られ
る。本発明の難燃繊維を50重量%以上、さらに80重
量%以上、特に90重量%以上含む布帛とすることによ
り一層優れた難燃効果が奏される。
【0042】
【実施例】次に本発明を実施例にてさらに説明するが、
本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また
実施例中、%や比率は特に断りがない限り重量に基づく
値である。 [繊維強度]JIS L−1013に準じて測定した。 [L*]JIS Z8722―1994に準じて測定し
た。L*が小さいほど強く着色しており、また繊維にポ
リエン構造が多く形成されているといえる。
【0043】[280℃における水分発生率 重量%]
秤量した繊維をあらかじめ280℃に加熱したカールフ
ィッシャー型水分測定装置のセル内に設置し、窒素を流
しながら2時間放置し、発生した総水分量を定量する。
次いで仕込んだ繊維サンプル中のポリビニルアルコール
系ポリマーから生成する理論水分量に対する該総水分量
の重量比(%)を算出する。 [結晶化度 %]理学電機製「差動型示差熱天秤 TA
S−2000」を用いて、約2〜3mgの精秤した繊維
サンプルを窒素中で25℃から300℃まで昇温速度8
0℃/min、ガス流量20ml/minの条件で昇温
した際のビニルアルコール系ポリマーの結晶融解に基づ
く吸熱ピーク面積から融解熱(J)を求めた。次いで難
燃剤等を除いたビニルアルコール系ポリマー1gあたり
の融解熱(ΔH/g)を換算し、該値の結晶化度100
%のビニルアルコール系ポリマー1gあたりの融解熱
(174.5J/g)に対する割合(%)を結晶化度と
して求めた。 [配向度 %]株式会社オリエンテック製パルス式直読
粘弾性測定器DDV―5―B型を用い、繊維サンプルの
繊維軸に沿った10KHzの音波の速度Cを測定し、ポ
リビニルアルコールのキャストフィルムから得られた無
配向試料の音速Cu(2.20km/sec)と比較し
てMoselayの式(配向度=1―Cu/C)に
より配向度を算出した。
【0044】[難燃指数(LOI値)]JIS K−7
201に準拠して測定した。 [ハロゲン含有率 重量%]試料(A1mg)を酸素気
流中で加熱分解し、このガスを800℃の白金触媒に接
触させて単体ハロゲンを生成させ、次いでこの単体ハロ
ゲンを400〜450℃の加熱銀と反応させ、反応後の
銀の重量増加分(A2mg)を測定し、A22/A1×
100により算出した。
【0045】[実施例1]重合度1750、ケン化度9
9.8モル%のPVA、ポリリン酸アンモニウム(住友
化学社製「スミセーフP」)をDMSO中窒素気流下8
0℃で5時間撹拌し、PVA/ポリリン酸アンモニウム
=83/17、PVAのポリマー濃度18%の組成を有
する紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を孔径0.08
mm、孔数1000ホールのノズルを通して、メタノー
ル/DMSOの重量比が70/30である5℃の固化浴
中に湿式紡糸した。次いでメタノールでDMSOを抽出
しながら3倍に湿延伸し、100℃の熱風でメタノール
を乾燥し、230℃で3.3倍乾熱延伸を施し、単繊維
繊度3.1デニール(繊維強度6.1cN/dtex、
PVAの結晶化度68%、配向度60%、280℃の水
分発生率88%、ハロゲン含有率0%)の繊維を得た。
該繊維の色相は若干薄紫色に着色していたものの従来の
リン酸で架橋したPVA系繊維の着色より遥かに軽度で
あり(L*46)、風合、品位の高いものであり、しか
もLOI値は35と高く優れた難燃性能を有していた。
以上のように、該実施例1により得られる繊維は風合、
機械的性能に優れ、しかも燃焼時には優れた難燃性能を
奏するものであり、諸性能に優れる布帛を供し得るもの
であった。
【0046】[実施例2]ポリリン酸アンモニウムにか
えてポリリン酸アミド(住友化学社製スミセーフPM)
を用いた以外は実施例1と同様に単繊維繊度3.0デニ
ールの繊維(繊維強度6.0cN/dtex、PVAの
結晶化度68%、配向度63%、280℃の水分発生率
82%、ハロゲン含有率0%)を得た。該繊維の色相は
若干薄紫色に着色していたものの従来のリン酸で架橋し
たPVA系繊維の着色より遥かに軽度であり(L*4
7)、風合、品位の高いものであり、しかもLOI値は
33と高く優れた難燃性能を有していた。以上のよう
に、該実施例1により得られる繊維は風合、機械的性能
に優れ、しかも燃焼時には優れた難燃性能を奏するもの
であり、諸性能に優れる布帛を供し得るものであった。
【0047】[実施例3]ポリリン酸アンモニウムにか
えて縮合リン酸アミド(太平化学社製タイエンS)を用
いた以外は実施例1と同様に単繊維繊度3.0デニール
の繊維(繊維強度6.1cN/dtex、結晶化度68
%、配向度65%、280℃の水分発生率85%、ハロ
ゲン含有率0%)を得た。該繊維の色相は若干薄紫色に
着色していたものの従来のリン酸で架橋したPVA系繊
維の着色より遥かに軽度であり(L*47)、風合、品
位の高いものであり、しかもLOI値は36と高く優れ
た難燃性能を有していた。以上のように、該実施例1に
より得られる繊維は風合、機械的性能に優れ、しかも燃
焼時には優れた難燃性能を奏するものであり、諸性能に
優れる布帛を供し得るものであった。
【0048】[実施例4]重合度1750、ケン化度9
9.8モル%のPVAをDMSO中窒素気流下80℃で
5時間撹拌溶解し、PVAのポリマー濃度18%の組成
を有する紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を孔径0.
08mm、孔数1000ホールのノズルを通して、メタ
ノール/DMSOの重量比が70/30である5℃の固
化浴中に湿式紡糸した。さらに40℃メタノール浴で3
倍湿延伸したあと、繊維を2段のメタノール抽出浴を順
次通過させることによりジメチルスルホキシドを全部除
去した。最後のメタノール抽出浴にトリメチルホスフェ
ートを浴に対して30重量%添加して均一溶液としたあ
と、繊維を1.5分間滞留させてメタノール含有繊維の
内部および表面に該リン系難燃剤を浸透させ、100℃
の熱風でメタノールを乾燥し、さらに230℃で3.3
倍乾熱延伸を施して単繊維繊度3.0デニールの繊維
(繊維強度6.3cN/dtex、PVAの結晶化度7
3%、配向度70%、280℃の水分発生率86%、ハ
ロゲン含有率0%)を得た。最終繊維におけるリン系難
燃剤の含有量は25重量%/繊維であった。該繊維の色
相はほぼ無色(L*95)であり、従来のリン酸で架橋
したPVA系繊維の着色より遥かに軽度であり風合、品
位の高いものであり、しかもLOI値は34と高く優れ
た難燃性能を有していた。以上のように、該実施例1に
より得られる繊維は風合、機械的性能に優れ、しかも燃
焼時には優れた難燃性能を奏するものであり、諸性能に
優れる布帛を供し得るものであった。
【0049】[実施例5]トリメチルホスフェートにか
えてトリエチルホスフェートを用いた以外は実施例4と
同様に単繊維繊度3.0デニールの繊維(繊維強度6.
3cN/dtex、PVAの結晶化度84%、配向度7
1%、280℃の水分発生率80%、ハロゲン含有率0
%)を得た。最終繊維におけるリン系難燃剤の含有量は
24重量%/繊維であった。該繊維の色相はほぼ無色
(L*96)であり、従来のリン酸で架橋したPVA系
繊維の着色より遥かに軽度であり風合、品位の高いもの
であり、しかもLOI値は32と高く優れた難燃性能を
有していた。以上のように、該実施例1により得られる
繊維は風合、機械的性能に優れ、しかも燃焼時には優れ
た難燃性能を奏するものであり、諸性能に優れる布帛を
供し得るものであった。
【0050】[比較例1]重合度1750、ケン化度9
8.5モル%のPVA、ポリリン酸アンモニウム(住友
化学社製スミセーフPM)を水中90℃で5時間撹拌
し、PVA/ポリリン酸アンモニウム=100/10、
PVAのポリマー濃度20%の組成を有する紡糸原液を
得た。得られた紡糸原液を孔径0.08μm、孔攻10
00ホールのノズルを通して、苛性ソーダ20g/lと
芒硝350g/lを含有する45℃の水溶液よりなる固
化浴中に湿式紡糸した。次いで1.5倍のローラー延
伸、硫酸と芒硝の水溶液から中和浴にて中和、95℃の
飽和芒硝水溶液中で2倍の湿延伸、30℃の水洗浴で硼
酸洗浄、300g/lの芒硝水溶液で芒硝置換、100
℃で乾燥、230℃で3.0倍の乾熱延伸を施こして、
水系紡糸法によりPVA系難燃繊維を得た。単繊維繊度
3.1デニールの繊維(繊維強度6.3cN/dte
x、PVAの結晶化度56%、配向度50%、280℃
の水分発生率87%、ハロゲン含有率0%)を得た。該
繊維の色相は若干薄紫色に着色していたものの(L*4
5)、従来のリン酸で架橋したPVA系繊維の着色より
遥かに軽度であり風合、品位の高いものであった。しか
しながら、該繊維を構成するPVAの結晶化度は56%
と低いことからLOI値は31と実施例1よりも低いも
のであった。
【0051】[比較例2]260℃で乾熱延伸を施した
以外は実施例1と同様に単繊維繊度3.1デニール(繊
維強度5.2cN/dtex、PVAの結晶化度48
%、配向度280℃の水分発生率72%、ハロゲン含有
率0%)の繊維を得た。該繊維の色相は紫色に濃く着色
しており(L*21)、剛直で風合、品位に劣るもので
あった。また該繊維のLOI値は31であり実施例1に
比して難燃性能の低いものであった。
【0052】
【発明の効果】本発明繊維は、難燃性アクリル繊維、難
燃性ポリエステル繊維、熱硬化性繊維、アラミド繊維、
難燃性綿、難燃性羊毛などのPVA系以外の難燃繊維素
材に比べ、燃焼ガス毒性、メルトドリップ性、強度、コ
スト、耐洗濯耐久性、風合などの点に優れるPVA系難
燃繊維のノンハロゲン難燃化を目指したものである。本
発明繊維は、戦闘服や消防服などの防護衣料分野、カー
シートや車両バネ受材やエアフィルターなどの産業資材
分野、カーテン、カーペット、毛布、フトン側地、シー
ツカバー、中入綿などの生活資材分野に有効に用いるこ
とができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D06M 13/292 D06M 11/08 Fターム(参考) 4L031 AA16 AB01 BA38 CA08 CA09 DA16 4L033 AA05 AB01 AB04 AC05 BA39 4L035 AA09 BB03 BB07 BB76 BB80 BB89 BB91 EE14 EE20 FF01 FF04 JJ01 4L038 AA09 AB09 BA22 CA07 DA11

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ビニルアルコール系ポリマー(A)及び
    リン系難燃剤(B)から構成され、該ビニルアルコール
    系ポリマー(A)の結晶化度が65〜85%、配向度が
    55〜95%であり、かつL*が35以上、ハロゲン含
    有率が1重量%以下であることを特徴とするポリビニル
    アルコール系難燃繊維。
  2. 【請求項2】 リン系難燃剤(B)の含有量が8〜45
    重量%である請求項1に記載のポリビニルアルコール系
    難燃繊維。
  3. 【請求項3】 リン系難燃剤(B)がリン酸系化合物で
    あることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポ
    リビニルアルコール系難燃繊維。
  4. 【請求項4】 280℃における水分発生率が70%以
    上である請求項1〜3のいずれかに記載のポリビニルア
    ルコール系難燃繊維。
  5. 【請求項5】 ビニルアルコール系ポリマー(A)を有
    機溶媒に溶解して得られる紡糸原液を、該紡糸原液を構
    成する有機溶媒を10重量%以上含む固化浴に湿式紡糸
    または乾湿式紡糸するとともに、得られた糸篠を固化浴
    から離浴させてから乾熱延伸工程にいたるまでのいずれ
    かの工程で糸篠にリン酸系難燃剤を付与し、かつビニル
    アルコール系ポリマーの脱水反応が実質的に生じない温
    度条件で乾熱延伸を行うポリビニルアルコール系難燃繊
    維の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれかに記載のポリビ
    ニルアルコール系難燃繊維を用いてなる布帛。
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