JP2001316940A - 難燃性ポリビニルアルコール系繊維 - Google Patents

難燃性ポリビニルアルコール系繊維

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JP2001316940A
JP2001316940A JP2000135962A JP2000135962A JP2001316940A JP 2001316940 A JP2001316940 A JP 2001316940A JP 2000135962 A JP2000135962 A JP 2000135962A JP 2000135962 A JP2000135962 A JP 2000135962A JP 2001316940 A JP2001316940 A JP 2001316940A
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pva
phosphorus
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Hiroyuki Oki
弘之 大木
Naohiko Uchiumi
直彦 内海
Atsushi Ito
厚志 伊藤
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 難燃性が高く繊維性能に優れたPVA系難燃
繊維及び該繊維を用いてなる布帛を提供する。 【解決手段】 リン系難燃剤(A)および多価アルコー
ル(B)を含有するポリビニルアルコール系難燃繊維と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工業的に安価に製
造可能なポリビニルアルコール(以下PVAと略記)系
難燃繊維及び該繊維を用いてなる布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、アクリル繊維、ポリエステル繊
維、レーヨン繊維、アラミド繊維等の種々の繊維に難燃
性を付与する方法が検討されている。なかでもPVA系
繊維は、機械的性能が高く低コストでしかもメルトドリ
ップが発生しにくい等の特徴があることから難燃性繊維
として注目されている。
【0003】たとえば、ポリ塩化ビニル等のハロゲン含
有樹脂やハロゲン化難燃剤を含有するPVA系繊維や、
塩化ビニル共重合PVAを用いたPVA系繊維が提案さ
れている(特公昭37―12920号公報、特公昭37
−12920号公報、特公昭49−10823号公報、
特公昭51−19494号公報)。しかしながら、近
年、さまざまな材料・素材が環境に与える影響が非常に
問題視されており、特に焼却時にダイオキシンが発生す
る点等から、ポリ塩化ビニルを代表とするハロゲン含有
素材(ハロゲン含有樹脂、ハロゲン系難燃剤等)を非ハ
ロゲン系素材に置き換えることが強く要望されている。
【0004】以上のことから、実質的にハロゲンを含ま
ない非ハロゲンPVA系難燃繊維の検討がなされてい
る。例えばリン系難燃剤を用いる方法として、PVA系
繊維をポリリン酸アンモニウムの水性懸濁液等に浸漬し
て表面コーティング処理する方法(特開昭45−347
62公報、特開昭49−74768公報)、PVA系繊
維を縮合リン酸液及び反応促進剤を混合した液の中に浸
漬後、該繊維を加熱してリン酸エステル化する方法(特
開昭48−28085公報)、さらにポリリン酸アンモ
ニウム又はポリリン酸アミドを含有するPVA水溶液を
乾式紡糸する方法(特開昭50−22050公報、特開
昭50−22051公報)等が提案されている。しかし
ながら、リン系難燃剤はハロゲン系難燃剤に比して難燃
効果が低いために十分な難燃効果が得られにくく、また
十分な難燃効果を得るために多量の難燃剤を配合すると
繊維性能が損われる問題がある。またリン酸エステル化
したPVA系樹脂と通常のPVA系樹脂の混合物を繊維
化することが特開昭53−115794号公報に記載さ
れているが、やはり十分な難燃性は得られにくく、難燃
性を高めるためにリン酸エステルの割合を高めると繊維
性能が低下してしまう。
【0005】一方、リン酸含有化合物により架橋構造を
形成させてPVA系繊維の耐熱水性を改良する方法も提
案されている(特開平2−249705号公報、特開平
4−228610号公報、特開平2−84587号公
報、特開平4−228610号公報、特開平3−287
812号公報、特開平4−163309号公報、特開平
4−100912号公報、特開平3−213510号公
報、特開平4−240207号公報、特開平4−126
829号公報、特開平4−163310号公報、特開平
4−126830号公報等)。確かに架橋構造が形成さ
れると繊維の耐熱水性は向上するものの、架橋構造が形
成された繊維の難燃性は低下しやすい問題がある。さら
にPVAの分子内脱水が進行して共役2重結合が生じる
ために激しく着色し、また繊維の柔軟性が低下して品位
が損われる問題があり、消防服や作業服などの衣料分野
やカーペットなどのリビング分野、カーシートなどの産
業資材分野には不適当なものとなる。またかかる架橋構
造を形成させるのを目的とする場合、繊維に配合される
リン系化合物はせいぜい5質量%/繊維(通常1質量%
以下/繊維)であることから十分な難燃効果は奏されな
い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、難燃
性が高く機械的性能、品位等の諸性能に優れたPVA系
難燃繊維及び該繊維を用いて成る布帛を提供することに
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1) リン
系難燃剤(A)および多価アルコール(B)を含有する
ポリビニルアルコール系難燃繊維、(2) ポリビニル
アルコール系難燃繊維を構成するビニルアルコール系ポ
リマー(C)の結晶化度が65〜85%、配向度が55
〜95%である(1)に記載のポリビニルアルコール系
難燃繊維、(3) リン系難燃剤(A)として、少なく
ともリン酸系化合物を含有する(1)又は(2)に記載
のポリビニルアルコール系難燃繊維、(4) 多価アル
コール類(B)として、ペンタエリスリトール、ジペン
タエリスリトール、トリペンタエリスリトールから選ば
れる少なくとも一種以上を含有する(1)〜(3)のい
ずれかに記載のポリビニルアルコール系難燃繊維、
(5) 280℃における水分発生率が70%以上であ
る(1)〜(4)のいずれかに記載のポリビニルアルコ
ール系難燃繊維、(6) (1)〜(5)のいずれかに
記載のポリビニルアルコール系難燃繊維を用いてなる布
帛、に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明においては、繊維に十分な
難燃性を付与する点から少なくともリン系難燃剤(A)
を含有させる必要がある。リン系難燃剤は他の非ハロゲ
ン系難燃剤に比して難燃効果が高く、しかも繊維性能を
劣化させにくいことから優れた効果が得られる。リン系
難燃剤による難燃効果は、以下の〜の少なくとも1
以上のメカニズムにより発現し、通常2以上のメカニズ
ムが相乗的に作用していると考えられる。 リン系難燃剤が燃焼時に縮合してポリリン酸を形成
し、これが繊維表層を被膜することによって外部からの
燃焼熱を遮断したり、繊維内部からの可燃性ガスの発生
を抑制する。 リン系難燃剤によりビニルアルコール系ポリマーの脱
水反応が促進されて架橋・炭化反応が加速され、この時
生じたPVA由来の炭化物(チャーと呼ばれる)が繊維
表面を被膜して、外部からの燃焼熱を遮断したり繊維内
部からの可燃性ガスの発生を抑制する。 難燃剤中のリン原子が燃焼時に発生する活性ラジカル
のトラップ剤として働く。 ビニルアルコール系ポリマーの脱水反応によって発生
する水分の気化熱によって繊維表面が冷却される。
【0009】本発明者等は、リン系難燃剤によるPVA
系繊維の難燃化について詳しく検討した結果、上記発現
メカニズムのなかでも及びが繊維の難燃性に大きな
影響を与えることを見出した。上記メカニズム及び
を十分に発現させるためには、燃焼時に繊維の分解反応
が大きく進行する前に脱水反応が生じ、しかも脱水反応
がある温度以上で急激に進行することが重要となる。以
上のことから、280℃における水分発生率が70%以
上、特に75%以上、さらに80%以上であるのが好ま
しい。なお、本発明にいう水分発生率とは、繊維を構成
するビニルアルコール系ポリマーから理論的に生成する
水分量に対する「280℃の窒素中にPVA系繊維を2
時間放置した際に発生する水分量」の割合(百分率)で
あり、実施例に記載の方法により求められる。280℃
における水分発生率の高い繊維ほど上記メカニズム及
びが効果的に発現して優れた難燃効果が奏される。
【0010】また上記メカニズム及びを効率的に発
現させる点からは、燃焼時にビニルアルコール系ポリマ
ーの脱水反応を進行させるのに十分な酸性を有するリン
系難燃剤を用いるのが好ましい。具体的には、リン酸系
化合物が好適に挙げられる。工業的汎用性、難燃性発現
効果、着色抑制性等を考慮すると、リン酸、亜リン酸、
メタリン酸等やこれらの誘導体(リン酸、亜リン酸、メ
タリン酸等のリン原子に直接アルキル基又はフェニル基
が結合した化合物等)、さらにリン酸、亜リン酸、メタ
リン酸等又はこれらの誘導体の縮合物、また該縮合物の
エステル類(アルキルエステル類、フェニルエステル類
等)、アンモニウム塩、アミド化物等がリン酸系化合物
として好適に使用できる。なかでも同理由からリン酸及
びリン酸誘導体、あるいはこれらの縮合物のアルキルエ
ステル類、フェニルエステル類、アンモニウム塩、アミ
ド化物がより好適に使用できる。
【0011】より具体的にはメチルホスフェート、ジメ
チルホスフェート、トリメチルホスフェート、エチルホ
スフェート、ジエチルホスフェート、トリエチルホスフ
ェート、ジエチルヘキシルホスフェート、ブチルホスフ
ェート、ジブチルホスフェート、トリブチルホスフェー
ト、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフ
ェート、エチルジエチルフォスホノアセテート、ブチル
ピロホスフェート、ブトキシエチルホスフェート、2−
エチルヘキシルホスフェート、ジ(2−エチルヘキシ
ル)ホスフェート、フェニルホスフェート、ジフェニル
ホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジ
フェニルホスフェート等のリン酸エステル(アルキルエ
ステル類、フェニルエステル類等)、リン酸3アンモニ
ウム、亜リン酸アンモニウム、リン酸水素2アンモニウ
ム、リン酸2水素アンモニウム等のリン酸化合物塩、そ
のほかホスフェートアミン化合物、リン酸アミド、フェ
ニルホスホン酸、ジメチルフェニルホスホネート、ジエ
チルフェニルホスホネート等が挙げられる。またポリリ
ン酸メチル、ポリリン酸エチル、ポリリン酸プロピル、
ポリリン酸ブチル、ポリリン酸フェニル等のリン酸又は
リン酸誘導体の縮合物のエステル類(アルキルエステル
類、フェニルエステル類)等も好適に使用できる。
【0012】また重合性2重結合を有するリン含有モノ
マーの重合体、あるいはこれらリン含有モノマーとその
他重合性モノマーとの共重合体、あるいはこれら重合体
の誘導体をリン系難燃剤として用いてもかまわない。重
合性2重結合を有するリン含有モノマーは特に限定され
ないが、例えばアクリルアミド基、メタクリルアミド
基、アクリレート基、メタクリレート基、ビニルエステ
ル基、ビニルエーテル基等から選ばれる少なくとも1以
上の基を有するモノマーが好適に挙げられる。これらの
2重結合含有化合物から重合体を得る方法は特に限定さ
れず、2重結合の反応性によってラジカル重合法、アニ
オン重合法、カチオン重合法、配位重合法等の一般的に
利用されている重合法から適宜選択される。
【0013】またリン含有モノマーと共重合する成分と
しては、αオレフィン(エチレン、プロピレン、ブテ
ン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン他)、ス
チレン、スチレン誘導体、メタクリレート類、アクリレ
ート類、アクリロニトリル、ビニルエステル類、ビニル
エーテル類、ブタジエン、イソプレン、イソブテン、エ
チレングリコール、プロピレングリコール、エチレンオ
キシド、プロピレンオキシド等の重合性モノマー類から
選ばれる1種、あるいは2種以上の成分が挙げられる。
なかでも紡糸原液を構成する溶剤に対する親和性、溶解
性を考慮すると、メタクリレート類、アクリレート類、
メタクリルアミド類、アクリルアミド類、ビニルエステ
ル類が好適に使用できる。これらの共重合モノマー類と
リン含有重合性モノマーからなる共重合体は、ランダム
コポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等の
いずれであってもよく、さらに共重合体の後変性によっ
て選られる誘導体も好適に用いられる。
【0014】より具体的には、ビニルエステル類とリン
含有重合性モノマーとを共重合後、側鎖であるエステル
基の一部あるいは全てを鹸化してビニルアルコールユニ
ットに変換することで得られるビニルアルコール/リン
含有ユニット共重合体、アクリレート類またはメタクリ
レート類とリン含有重合性モノマーとを共重合後、側鎖
であるエステル基の一部あるいは全てを加水分解しアク
リル酸あるいはアクリル酸塩に変換することで得られる
アクリル酸(またはアクリル酸塩)含有ポリマー/リン
含有ユニット共重合体等が挙げられる。
【0015】また上記を発現し高い難燃効果を得る点
からは、リン系難燃剤として縮合リン酸系化合物又は燃
焼時に容易に縮合してポリリン酸型の縮合物を形成しや
すい低分子化合物を用いるのが好ましく、特にビニルア
ルコール系ポリマーとの親和性・相溶性の点、さらに紡
糸性を高める点から縮合リン酸系化合物を用いるのが好
ましい。好適な例としては、ポリリン酸等の縮合リン
酸、ポリリン酸アンモニウム等の縮合リン酸塩、ほかに
ポリリン酸アミド、ポリリン酸エステル類(アルキルエ
ステル類、フェニルエステル類等)が挙げられる。
【0016】好適なポリリン酸アミドとしては、リン酸
源及び窒素源、さらに必要に応じて縮合剤を混合して焼
成、縮合反応を行わせて得られるアミド型窒素を含有す
る高分子化合物が挙げられる。好適なリン酸源としては
リン酸アンモニウム、リン酸尿素、無水リン酸、縮合リ
ン酸、リン酸から選ばれる1種以上の化合物、好適な窒
素源としてはメラミン、ジシアンジアミド、グアニジ
ン、グアニル尿素等のシアナミド誘導体、好適な縮合剤
としては尿素、リン酸尿素が挙げられる。また焼成条件
によっては脱水作用が一部に生じることがあるが、かか
る方法により得られる化合物、たとえばホスホリルアミ
ド、ホスホリルイミドの結合を一部に有する化合物、ま
た尿素結合が一部残存している化合物等もポリリン酸ア
ミドに包含される。
【0017】また難燃効果、紡糸性及び繊維性能等の点
からは、少なくともポリリン酸アンモニウムをリン酸系
化合物として用いるのが好ましく、該難燃剤を用いるこ
とにより顕著な効果が奏される。ポリリン酸アンモニウ
ムは、一般的にはオルソリン酸と尿素、無水リン酸とア
ンモニア、縮合リン酸と尿素、あるいはオルソリン酸ア
ンモニウムと尿素、無水リン酸とアンモニウムなどのよ
うな、リン酸源及びアンモニア発生源、さらに必要に応
じて縮合剤を配合してなる1種または数種の適当な組み
合わせ原料を加熱縮合することにより得ることができ
る。なかでもH(n -m)+2(NH4mn3n+1で示される
直鎖状リン酸塩が好適に使用できる。なおnは5以上の
整数であり、0<m≦n+2である。なかでもnは10
以上の整数であるのが好ましく、(n−m)+2は実質
的に0であるのが好ましい。
【0018】なお本発明にいうリン系難燃剤(A)とは
リンを含有する化合物であり、難燃性及び繊維性能の点
からリン含有化合物に占めるリン原子の質量割合が10
質量%以上、特に20〜80質量%であるのが好まし
い。また2種以上のリン系難燃剤を併用してもよく、本
発明の効果を損わない範囲であればリン系難燃剤以外の
難燃剤をさらに併用しても構わない。PVA系繊維中の
リン系難燃剤の総含有量は難燃剤の種類等によって変更
すれば良いが、難燃効果、繊維の機械的性能、着色抑制
等の点から1質量%以上/繊維、特に8〜45質量%/
繊維、特に10〜40質量%/繊維とするのが好まし
い。
【0019】本発明者等は、リン系難燃剤(A)ととも
に多価アルコール類(B)を含有させることにより、P
VA系繊維の難燃性が顕著に高まることを見出した。リ
ン系難燃剤を配合すると、燃焼時に該難燃剤が縮合して
ポリリン酸を形成し、これが繊維表層を被膜することに
よって外部からの燃焼熱を遮断したり、繊維内部からの
可燃性ガスの発生を抑制するため優れた難燃効果が奏さ
れるが、多価アルコール類(B)を併用すると、燃焼時
に生成するポリリン酸と多価アルコール類(B)がエス
テル化反応を生じ、多価アルコール類(B)がポリリン
酸の架橋剤として働く。その結果、ポリリン酸被膜がよ
り熱的安定性を増して強固に繊維表層を被膜するため、
外部からの燃焼熱の遮断や繊維内部からの可燃性ガスの
発生抑制効果が増大すると考えられる。さらに、前述の
で示したように、燃焼時にビニルアルコール系ポリマ
ー(C)が熱分解して生じるチャーは難燃性付与に重大
な役割を果たしているが、多価アルコール類(B)を配
合することによって、ポリリン酸被膜とチャー被膜とが
多価アルコール類(B)を介して相互にからみあい、難
燃性付与効果を一層高めると考えられる。以上のよう
に、ビニルアルコール系ポリマー(C)、リン系難燃剤
(A)および多価アルコール類(B)を組み合わせるこ
とによって、上記の機構が発現することからPVA系繊
維の難燃性を顕著に高めることができる。
【0020】なお、従来、リン酸含有化合物により架橋
構造を形成させてPVA系繊維の耐熱水性を改良する方
法が検討されているが(特開平2−249705号公
報、特開平4−228610号公報、特開平2−845
87号公報、特開平4−228610号公報、特開平3
−287812号公報、特開平4−163309号公
報、特開平4−100912号公報、特開平3−213
510号公報、特開平4−240207号公報、特開平
4−126829号公報、特開平4−163310号公
報、特開平4−126830号公報等)、予め架橋構造
を形成させている場合には、燃焼時にポリリン酸皮膜及
びチャーが形成されにくくなることから、さらに多価ア
ルコール類(B)を配合しても本発明のような効果は得
られない。
【0021】本発明に用いられる多価アルコール類
(B)は特に限定されず、1分子に水酸基を2つ以上有
する化合物及び該化合物の誘導体(好適には燃焼時に該
化合物と同等・類似の挙動を示す誘導体;たとえば好適
には脂肪族又は芳香族1〜2価カルボン酸との部分エス
テル化合物)が好適に用いられる。たとえばペンタエリ
スリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリ
スリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトー
ル、グルコース、マンニトール、セルロース、ブドウ
糖、グリセリン、トリスヒドロキシエチルイソシアネー
ト、ポリエチレングリコール、ビスフェノールA、アジ
ピン酸とペンタエリスリトールの反応生成物、アジピン
酸とジペンタエリスリトールの反応生成物、トリメチロ
ールエタン、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒ
ドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリト
ール、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールプ
ロパン、ジペンタエリスリトール、2,2,6,6−テ
トラメチロールシクロヘキサノール、ソルビトール、マ
ンニトール、イノシトールなどのポリオール類およびこ
れらポリオールと脂肪族又は芳香族1〜2価カルボン酸
との部分エステル化合物などがあげられる。もちろん、
2種以上のポリアルコール類を併用してもかまわない。
【0022】なかでも、ペンタエリトリトール、ジペン
タエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ペンチ
トール類、ヘキシトール類およびサッカリド類よりなる
群の中から選択された少なくとも一つの多価アルコール
類は、燃焼時に生成するポリリン酸系化合物と反応して
効率よく架橋構造を形成するため好ましい。なお、ペン
チトール類としてはアドニトール、アラビニトール等
が、ヘキシトール類としてはズルシトール、ソルビトー
ル等が、サッカリド類としてはアミロース、キシラン等
を挙げることができる。特に、ビニルアルコール系ポリ
マーとの親和性・相溶性の点、さらに紡糸性を高める点
から、多価アルコール類として、少なくともペンタエリ
スリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリ
スリトールから選ばれる1種以上を用いるのが好まし
い。繊維における多価アルコール(B)の含有量は、
0.1〜30質量%/繊維であり、特に0.5〜10質
量%/繊維であるのが好ましい。
【0023】本発明の難燃繊維を構成するビニルアルコ
ール系ポリマー(C)は特に限定されず、あらゆるビニ
ルアルコール系ポリマーが使用できる。しかしながら、
特定のビニルアルコール系ポリマーにより構成された繊
維とすることにより、繊維の難燃性を顕著に高めること
ができる。前述のに示したように、リン系難燃剤によ
るPVAの難燃化において最も重要な効果は、リン系難
燃剤により繊維を構成するPVA系樹脂の脱水反応が促
進され、これに続く架橋、炭化反応により生じたPVA
由来の炭化物(チャー)が繊維表面を被膜し、外部から
の燃焼熱を遮断したり、繊維内部からの可燃性ガスの発
生を抑制することにあることを本発明者等は明らかにし
た。
【0024】この時、実際にはPVA自身の熱分解反応
が競争反応として存在しており、PVAの熱分解反応が
生じると、チャー生成量の減少に繋がるばかりか、分解
物が燃焼性ガスとして働くため難燃性発現を大きく妨げ
ることとなる。従って、如何に繊維を構成するPVA系
樹脂の熱分解反応を抑制するかが非常に重要となる。さ
らに燃焼時に生成するPVA由来のチャーの性状も当然
重要であり、燃焼に耐えうる耐熱性の高いチャーを如何
に効率よく、高収率で生成するかがポイントとなる。
【0025】そこで燃焼時のPVAからのチャー生成機
構を詳しく調べた結果、リン系難燃剤によりPVAの脱
水反応が生じ、その結果生成したポリエン構造がディー
ルス・アルダー反応によって環化する際、同じ分子
(鎖)内で環化するいわゆる分子内環化と、異なる分子
(鎖)間で環化、架橋する分子間環化の2つのパスに大
別され、分子間環化反応を優先させることが最終的に得
られるチャーの収率向上及び耐熱性向上、すなわち難燃
性発現に非常に有効であることを見出した。すなわち、
如何にして燃焼時にポリエン鎖同志の分子間環化を促進
させるかが難燃性発現に非常に重要となる。
【0026】本発明者等は、繊維を構成するPVA系重
合体が高い結晶性及び配向度を有している場合に、繊維
の難燃性が一層向上することを見出した。難燃効果の点
からは、PVA系繊維を構成するビニルアルコール系ポ
リマーの結晶化度を65%以上とするのが好ましく、か
かる構成とすることによってPVA系樹脂の燃焼時の熱
分解を抑制する、すなわちチャー生成までの時間を稼ぐ
ことが可能になり、よってチャー生成の収率が向上して
難燃性効果が高まると推察される。
【0027】また繊維を構成するビニルアルコール系ポ
リマーの配向度を55%以上とすることによって一層顕
著な効果が得られる。すなわち、分子鎖同志が高い配向
度で同一方向に並列しているほど、脱水後のデイールス
アルダー反応が分子鎖間で生じやすくなり、その結果、
最終的に再生するチャーの収率、耐熱性等が向上し、難
燃性発現に大きく貢献するものと思われる。しかしなが
ら、繊維の結晶化度及び配向度が高すぎると加工性、耐
摩耗性、柔軟性等が低下することから、結晶化度85%
以下、配向度95%以下であるのが好ましい。
【0028】本発明のPVA系繊維を構成するビニルア
ルコール系ポリマーは特に限定されないが、ポリマーの
結晶性、機械的性能、難燃性等の点から粘度平均重合度
1000以上、特に1500以上とするのが好ましく、
紡糸性、コストの点から5000以下とするのが好まし
い。また同理由からケン化度98モル%以上、なかでも
99モル%以上、特に99.5モル%以上とするのが好
ましい。ビニルアルコール系ポリマーには他のモノマー
が共重合されていてもよく、共重合成分としてはたとえ
ばエチレン、酢酸ビニル、イタコン酸、ビニルアミン、
アクリルアミド、ピバリン酸ビニル、無水マレイン酸、
スルホン酸含有ビニル化合物などが挙げられる。繊維性
能、難燃性能等の点からはビニルアルコールユニットを
全構成ユニットの70モル%以上有するポリマーとする
のが好ましい。また本発明の効果を損わない範囲であれ
ば、繊維にビニルアルコール系ポリマー以外のポリマー
や他の添加剤を含んでいてもかまわない。繊維性能等の
点からはビニルアルコール系ポリマーの含有量を30質
量%以上/繊維、特に50質量%以上/繊維とするのが
好ましい。
【0029】本発明のPVA系難燃繊維の製造方法は特
に限定されず、たとえばビニルアルコール系ポリマー水
溶液を紡糸原液とし、これを飽和芒硝浴等の凝固浴に吐
出してPVA系繊維を製造する方法等を採用すればよ
い。しかしながら、かかる方法によると凝固浴中で急激
に脱水凝固反応が起るために繊維表層部に緻密なスキン
層が形成されたスキンコア構造が形成される。この場
合、ビニルアルコール系ポリマーが脱水反応により水分
を発生したとしても、繊維表層部が緻密なスキン層によ
り覆われているため効率的に気化できないため、繊維表
面の冷却効果も低くなる。また繊維内部まで十分に固化
反応が進行せず、さらに高度に延伸を行うことができな
いことから得られる繊維の結晶化度はせいぜい50〜6
0%となる。また同紡糸原液を気体中に吐出する乾式紡
糸法を採用することも知られているが、該方法を採用し
たとしても繊維内部まで十分に固化させることが困難で
ある等の理由から結晶化度はせいぜい50〜60%、配
向度も40〜50%と小さくなる。
【0030】よって、繊維の結晶化度を高め、機械的性
能、寸法安定性、難燃性をより高めたい場合には、ビニ
ルアルコール系ポリマーを有機溶剤に溶解して得られる
紡糸原液を用い、かつ下記の条件を採用して紡糸するの
が好ましい。下記の方法によれば、固化反応が時間をか
けて行われるためスキンコア構造が形成されることなく
かつ繊維内部まで十分に固化されることから、繊維構成
ポリマーの結晶化度及び配向度が高くなり、その結果、
機械的性能、乾湿寸法安定性等が向上するのみでなく優
れた難燃効果が奏される。以下に本発明のPVA系難燃
繊維の好適な製造方法を詳細に説明する。
【0031】まず、紡糸原液を構成するビニルアルコー
ル系ポリマーの溶剤として、たとえばグリセリン、エチ
レングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレン
グリコール、ブタンジオールなどの多価アルコール類や
ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムア
ミド、ジエチレントリアミン等から選ばれる有機溶剤、
またはこれら2種以上の混合溶剤、さらにこれら有機溶
剤と水との混合溶剤などを用いるのが好ましい。ただ
し、リン系難燃剤(A)を紡糸原液に直接添加して紡糸
する場合には、該難燃剤を凝集させたり分離させない溶
剤を用いるのが好まく、以上の点からはジメチルスルホ
キシド及び/又はグリセリン、特にジメチルスルホキシ
ドがより好ましい。紡糸性、繊維性能等の点からは、紡
糸原液中のビニルアルコール系ポリマー濃度は5〜25
質量%程度が好ましく、紡糸原液の温度は80〜230
℃が一般的である。また本発明の効果を損わない範囲で
あればホウ酸、界面活性剤、分解抑制剤、染料、顔料な
どを紡糸原液に添加してもかまわない。
【0032】このようにして得られた紡糸原液を紡糸ノ
ズルを通して固化浴中に湿式紡糸、あるいは乾湿式紡糸
する。固化浴を紡糸ノズルに直接接触させる湿式紡糸方
法は、ノズル孔ピッチを狭くしても繊維同士が膠着せず
に紡糸できるために多孔ノズルを用いた紡糸に適してお
り、一方固化浴と紡糸ノズルの間にエアギャップを設け
る乾湿式紡糸の場合は、エアギャップ部での伸びが大き
いことより高速紡糸に適している。目的や用途に応じて
適宜紡糸法を選択するのが好ましい。
【0033】紡糸原液を固化し繊維化させる固化液とし
ては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ア
セトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などのよう
にPVAに対して固化能を有する有機溶媒が好ましい。
このとき、結晶化度の高い繊維を得る点から固化におけ
る溶剤抽出をゆっくり行って均一ゲル構造を形成させる
ことが重要であり、この点から該固化液に紡糸原液を構
成する有機溶剤を10質量%以上混合させるのが好まし
い。固化溶媒としてメタノール、紡糸原液溶媒としてD
MSOを用いるのがより効果的である。紡糸性、繊維性
能等の点からは固化浴中の紡糸原液溶媒の濃度を20〜
70質量%、さらに25〜65質量%とするのがより好
ましく、固化液/紡糸原液溶媒の組成質量比は25/7
5〜85/15であるのが好ましい。また本発明の効果
を損わない範囲であれば他の添加物が配合されていても
かまわない。
【0034】さらに固化反応速度を小さくして繊維内部
まで十分に均一ゲル構造を形成させる点からは固化浴の
温度を30℃以下とするが好ましく、特に20℃以下、
さらに15℃以下とするのが好ましい。かかる方法を採
用することによって、固化が断面方向に均一でありかつ
熱処理等を施さない場合であっても結晶化度の高い繊維
が得られる。繊維間の膠着を少なくしその後の乾熱延伸
を容易にする点からは、固化浴から離浴した糸篠を有機
溶剤を含んだ状態で2〜10倍の湿延伸をするのが好ま
しく、20〜60℃の温度範囲で湿延伸を行うのがより
好ましい。
【0035】次いで繊維を抽出浴に浸漬して溶剤の抽出
を行えばよい。抽出剤としてはメタノール、エタノー
ル、プロパノールなどのアルコール類やアセトン、メチ
ルエチルケトン、エーテル、水などが使用できる。続い
て、必要に応じ、油剤などを付与して乾燥すればよい。
PVA系繊維の強度、耐熱性、耐湿熱性を高める点から
はさらに乾熱延伸を行うのが好ましく、特に総延伸倍率
が6倍以上、好ましくは8倍以上となるように乾熱延伸
するのが好ましい。なお、総延伸倍率は湿延伸倍率と乾
熱延伸倍率の積で表される。
【0036】このとき、リン系難燃剤によりビニルアル
コール系ポリマーの脱水反応が進行しない条件で乾燥及
び乾熱延伸するのが好ましい。リン系難燃剤によりビニ
ルアルコール系ポリマーに脱水反応が進行してしまう
と、分子内の共役2重結合生成に伴う激しい着色が生じ
てしまって繊維の品位が劣化し、また繊維の配向が阻害
されて耐熱性の高いチャーが生成しにくくなり、しかも
燃焼時における脱水反応により生じる水分による難燃効
果が十分得られなくなる。
【0037】具体的には乾燥、乾熱延伸、熱処理などを
行う際の温度条件はリン系難燃剤(A)の脱水開始温度
より低くすることが望ましい。たとえばリン酸、ポリリ
ン酸、オルトリン酸等の酸性が強いリン系難燃剤を用い
る場合には230℃以下、リン酸アンモニウム、ポリリ
ン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、あるいはリン酸
アミド、ポリリン酸アミド等のリン系難燃剤を用いる場
合は250℃以下、トリメチルホスフェート、トリエチ
ルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸
エステル類のリン系難燃剤を用いる場合は260℃以下
の温度条件下で乾燥及び乾熱延伸を行うのが好ましい。
なおリン系難燃剤(Aの脱水開始温度が高い場合であっ
ても、260℃以上の条件ではPVAの分解が生じるこ
とから、260℃以下の温度条件で乾燥及び乾熱延伸を
行うのが好ましい。リン系難燃剤を配合している場合に
は、他の化合物に比してビニルアルコール系ポリマーの
脱水反応をコントロールしやすいことから優れた効果が
得られる。
【0038】本発明は、風合、色調に優れたPVA系繊
維を製造するものであり、火事等により燃焼した際には
じめて架橋構造を形成させて(脱水反応を生じさせて)
難燃発現メカニズ〜を発現させて優れた難燃効果を
得るものである。これまでPVA系繊維の耐熱水性を高
める目的でリン化合物を配合して架橋構造を形成させる
方法が検討されていたが、かかる方法により得られる繊
維は色調等の点で上記のような問題が生じることから本
発明の効果は得られない。
【0039】しかしながら、繊維の機械的性能、結晶化
度の点からは、高い温度で乾熱延伸を行う方が好ましい
ことから延伸温度が高い方が好ましく、特にビニルアル
コール系ポリマーの重合度が高いほど延伸温度を高めて
延伸倍率を高めるのが好ましい。以上のことから、もっ
とも着色が少なく(PVAの脱水反応が進行せず)、か
つ高延伸倍率を達成しうる温度を選択するのが好まし
く、リン系難燃剤(B)の脱水開始温度をXとすると
き、(X―30)℃以上で乾熱延伸を行うのが好まし
い。また所望によりさらに熱処理やホルマール化処理等
を行ってもかまわないが、かかる処理を行う場合にも実
質的にビニルアルコール系ポリマーの脱水反応が進行し
ない条件下で諸処理を行うのが好ましい。
【0040】リン系難燃剤(A)および水酸基を有する
化合物(B)の付与は、繊維が難燃性を発現するに十分
な量を付与可能でありかつ最終的に得られる繊維を構成
するビニルアルコール系ポリマーが十分な結晶性を有し
得る方法であれば、紡糸原液から乾熱延伸後のいずれの
工程で行ってもかまわない。たとえば、紡糸原液中に添
加する方法、膨潤状態の糸篠を難燃剤および/または水
酸基を含有する化合物を添加した抽出浴を通過させる方
法、さらに適当な液体に溶解・分散したリン系難燃剤お
よび/または水酸基を含有する化合物を紡糸した繊維表
面に塗布する方法等が挙げられる。また本発明の効果を
損わない範囲であれば、他の添加剤(難燃剤など)を配
合してもかまわない。しかしながら、環境上の点から
は、繊維におけるハロゲン含有率を5質量%以下/繊
維、特に0.1質量%以下/繊維、さらに0.1%以下
/繊維、またさらに0.1質量%以下/繊維とするのが
好ましく、なかでも0〜0.001質量%/繊維とする
のが好ましい。ハロゲン含有率が高い場合にはダイオキ
シン発生等の環境上の問題が生じる。一般的にハロゲン
含有率を低くすると十分な難燃性が得られにくくなる
が、本発明によれば、実質的にハロゲンを用いることな
く難燃性に優れたPVA系繊維を得ることができる。な
お、本発明にいうハロゲン含有率とは、繊維質量に占め
るハロゲン元素質量の割合であり、実施例に記載の方法
により求められる。
【0041】繊維の単繊維繊度は用途、目的に応じて適
宜変更すれば良く、たとえば布帛等に用いる場合には
0.01〜20dtex,特に0.1〜10dtex程度のもの
が広く適用できる。また繊維強度は3cN/dtex以
上、特に5cN/dtex以上であるのが好ましく、本
発明においては繊維の機械的性能を大きく損うことなく
優れた難燃性能を付与できる。LOI値は25以上、特
に30以上、さらに32以上であるのがが好ましい。本
発明により得られる難燃繊維は、燃焼ガス毒性、メルト
ドリップ性、コスト、耐洗濯耐久性等の諸性能に優れ、
しかも高い難燃効果を有しているのみでなく品位、機械
的性能等にすぐれていることから、産業資材用途のみな
らずあらゆる用途に使用できる。具体的には戦闘服や消
防服などの防護衣料分野、カーシートや車両バネ受材や
エアフィルターなどの産業資材分野、カーテン、カーペ
ット、毛布、フトン側地、シーツカバー、中入綿などの
生活資材分野に有効に用いることができる。
【0042】また該難燃繊維はあらゆる形態で使用でき
る。たとえばフィラメント、カットファイバー(捲縮繊
維等)、紡績糸、紐状物、ロープ、布帛(不織布、織編
物)等の形態で使用でき、また他の非難燃繊維及び/又
は他の難燃繊維と併用して繊維構造物を形成してもかま
わない。なかでも本発明の難燃繊維は風合に優れている
ことから布帛として用いた場合に顕著な効果が得られ
る。本発明の難燃繊維を50質量%以上、さらに80質
量%以上、特に90質量%以上含む布帛とすることによ
り一層優れた難燃効果が奏される。
【0043】
【実施例】次に本発明を実施例にてさらに説明するが、
本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また
実施例中、%や比率は特に断りがない限り質量に基づく
値である。 [繊維強度 cN/dtex] JIS L−1013に準じて測定した。
【0044】[280℃における水分発生率 質量%]
秤量した繊維をあらかじめ280℃に加熱したカールフ
ィッシャー型水分測定装置のセル内に設置し、窒素を流
しながら2時間放置し、発生した総水分量を定量する。
次いで仕込んだ繊維サンプル中のポリビニルアルコール
系ポリマーから生成する理論水分量に対する該総水分量
の質量比(%)を算出する。 [結晶化度 %]理学電機製「差動型示差熱天秤 TA
S−2000」を用いて、約2〜3mgの精秤した繊維
サンプルを窒素中で25℃から300℃まで昇温速度8
0℃/min、ガス流量20ml/minの条件で昇温
した際のビニルアルコール系ポリマーの結晶融解に基づ
く吸熱ピーク面積から融解熱(J)を求めた。次いで難
燃剤等を除いたビニルアルコール系ポリマー1gあたり
の融解熱(ΔH/g)を換算し、該値の結晶化度100
%のビニルアルコール系ポリマー1gあたりの融解熱
(174.5J/g)に対する割合(%)を結晶化度と
して求めた。 [配向度 %]株式会社オリエンテック製パルス式直読
粘弾性測定器DDV―5―B型を用い、繊維サンプルの
繊維軸に沿った10KHzの音波の速度Cを測定し、ポ
リビニルアルコールのキャストフィルムから得られた無
配向試料の音速Cu(2.20km/sec)と比較し
てMoselayの式(配向度=1―Cu2/C2)によ
り配向度を算出した。
【0045】[難燃指数(LOI値)] JIS K−7201に準拠して測定した。 [ハロゲン含有率 質量%]試料(A1mg)を酸素気
流中で加熱分解し、このガスを800℃の白金触媒に接
触させて単体ハロゲンを生成させ、次いでこの単体ハロ
ゲンを400〜450℃の加熱銀と反応させ、反応後の
銀の質量増加分(A2mg)を測定し、A22/A1×
100により算出した。
【0046】[実施例1]重合度1750、ケン化度9
9.8モル%のPVA、ポリリン酸アンモニウム(住友
化学社製「スミセーフP」)、ペンタエリスリトールを
DMSO中窒素気流下80℃で5時間撹拌し、PVA/
ポリリン酸アンモニウム/ペンタエリスリトール=82
/16/2、PVAのポリマー濃度18質量%の組成を
有する紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を孔径0.0
8mm、孔数1000ホールのノズルを通して、メタノ
ール/DMSOの質量比が70/30である5℃の固化
浴中に湿式紡糸した。次いでメタノールでDMSOを抽
出しながら3倍に湿延伸し、100℃の熱風でメタノー
ルを乾燥し、230℃で3.3倍乾熱延伸を施し、単繊
維繊度3.4dtex(繊維強度6.1cN/dtex、P
VAの結晶化度68%、配向度60%、280℃の水分
発生率88%、ハロゲン含有率0%)の繊維を得た。該
繊維の色相は若干薄紫色に着色していたものの従来のリ
ン酸で架橋したPVA系繊維の着色より遥かに軽度であ
り、風合、品位の高いものであり、しかもLOI値は3
6と高く優れた難燃性能を有していた。該実施例1によ
り得られる繊維は風合、機械的性能に優れ、しかも燃焼
時には優れた難燃性能を奏するものであり、諸性能に優
れる布帛を供し得るものであった。
【0047】[実施例2]ポリリン酸アンモニウムにか
えてポリリン酸アミド(住友化学社製スミセーフPM)
を用いた以外は実施例1と同様に単繊維繊度3.3dtex
の繊維(繊維強度6.0cN/dtex、PVAの結晶
化度68%、配向度63%、280℃の水分発生率82
%、ハロゲン含有率0%)を得た。該繊維の色相は若干
薄紫色に着色していたものの従来のリン酸で架橋したP
VA系繊維の着色より遥かに軽度であり、風合、品位の
高いものであり、しかもLOI値は34と高く優れた難
燃性能を有していた。該実施例1により得られる繊維は
風合、機械的性能に優れ、しかも燃焼時には優れた難燃
性能を奏するものであり、諸性能に優れる布帛を供し得
るものであった。
【0048】[実施例3]ペンタエリスリトールにかえ
てジペンタエリスリトールを用いた以外は実施例1と同
様に単繊維繊度3.3dtexの繊維(繊維強度6.0cN
/dtex、PVAの結晶化度68%、配向度63%、
280℃の水分発生率82%、ハロゲン含有率0%)を
得た。該繊維の色相は若干薄紫色に着色していたものの
従来のリン酸で架橋したPVA系繊維の着色より遥かに
軽度であり、風合、品位の高いものであり、しかもLO
I値は34と高く優れた難燃性能を有していた。該実施
例3により得られる繊維は風合、機械的性能に優れ、し
かも燃焼時には優れた難燃性能を奏するものであり、諸
性能に優れる布帛を供し得るものであった。
【0049】[比較例1]重合度1750、ケン化度9
8.5モル%のPVA、ポリリン酸アンモニウム(住友
化学社製スミセーフPM)を水中90℃で5時間撹拌
し、PVA/ポリリン酸アンモニウム=100/10、
PVAのポリマー濃度20%の組成を有する紡糸原液を
得た。得られた紡糸原液を孔径0.08μm、孔攻10
00ホールのノズルを通して、苛性ソーダ20g/lと
芒硝350g/lを含有する45℃の水溶液よりなる固
化浴中に湿式紡糸した。次いで1.5倍のローラー延
伸、硫酸と芒硝の水溶液から中和浴にて中和、95℃の
飽和芒硝水溶液中で2倍の湿延伸、30℃の水洗浴で硼
酸洗浄、300g/lの芒硝水溶液で芒硝置換、100
℃で乾燥、230℃で3.0倍の乾熱延伸を施こして、
水系紡糸法によりPVA系難燃繊維を得た。単繊維繊度
3.4dtexの繊維(繊維強度6.3cN/dtex、P
VAの結晶化度56%、配向度50%、280℃の水分
発生率87%、ハロゲン含有率0%)を得た。該繊維の
色相は若干薄紫色に着色していたものの(L*45)、
従来のリン酸で架橋したPVA系繊維の着色より遥かに
軽度であり風合、品位の高いものであった。しかしなが
ら、LOI値は31と実施例1よりも低いものであっ
た。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、難燃性アクリル繊維、
難燃性ポリエステル繊維、熱硬化性繊維、アラミド繊
維、難燃性綿、難燃性羊毛などのPVA系以外の難燃繊
維素材に比べ、燃焼ガス毒性、メルトドリップ性、強
度、コスト、耐洗濯耐久性、風合などの点に優れるPV
A系難燃繊維を得ることができる。本発明の繊維は、戦
闘服や消防服などの防護衣料分野、カーシートや車両バ
ネ受材やエアフィルターなどの産業資材分野、カーテ
ン、カーペット、毛布、フトン側地、シーツカバー、中
入綿などの生活資材分野に有効に用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D03D 15/12 D03D 15/12 Z D04B 1/16 D04B 1/16 21/00 21/00 B D06M 13/148 D06M 13/148 13/292 13/292 // D06M 101:24 101:24 Fターム(参考) 4J002 BE021 BE042 BF012 BG072 BG132 CQ012 DH036 DH046 EC077 ED027 EW046 EW126 EW156 FD132 FD136 GK01 4L002 AA05 AC00 EA04 FA01 FA06 4L033 AB01 AC05 BA12 BA39 4L035 AA08 BB03 BB07 BB85 BB89 BB91 EE14 EE20 JJ14 JJ25 4L048 AA18 AA53 AA56 AC14 CA06 DA01 DA13 DA16 DA19 DA25 DA40

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン系難燃剤(A)および多価アルコー
    ル類(B)を含有するポリビニルアルコール系難燃繊
    維。
  2. 【請求項2】 ポリビニルアルコール系難燃繊維を構成
    するビニルアルコール系ポリマー(C)の結晶化度が6
    5〜85%、配向度が55〜95%である請求項1に記
    載のポリビニルアルコール系難燃繊維。
  3. 【請求項3】 リン系難燃剤(A)として、少なくとも
    リン酸系化合物を含有する請求項1又は請求項2に記載
    のポリビニルアルコール系難燃繊維。
  4. 【請求項4】 多価アルコール類(B)として、ペンタ
    エリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタ
    エリスリトールから選ばれる少なくとも一種以上を含有
    する請求項1〜3のいずれかに記載のポリビニルアルコ
    ール系難燃繊維。
  5. 【請求項5】 280℃における水分発生率が70%以
    上である請求項1〜4のいずれかに記載のポリビニルア
    ルコール系難燃繊維。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載のポリビ
    ニルアルコール系難燃繊維を用いてなる布帛。
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