JP5665321B2 - 複合繊維 - Google Patents

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本発明は、複合繊維に関し、詳細には、難水溶解性の海成分と、易水溶解性の島成分とからなる海島型構造を有する複合繊維に関する。
EVOH(エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物)は親水性であり、吸湿・放湿性を有することから、EVOHからなる繊維やEVOHを表面に有する繊維が冷感繊維として用いられている。例えば、特許文献1には、EVOHとパラフィンワックスの混合体を鞘成分とする複合繊維が開示されている。
一方、特許文献2には、海成分としてEVOH等の熱可塑性重合体を用い、島成分として水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(PVA)を用いた複合繊維が開示され、さらに島成分としてのPVAを水で溶解除去した中空繊維が開示されている。特許文献2の発明は、軽量性、透け防止性、ふくらみ感、ソフト感等に優れることを目的とするものであり、特許文献2は冷感特性について開示していないが、海成分としてEVOHを用いて得られた中空繊維は、表面積の増大によって、より優れた冷感特性が得られることが期待できる。しかしながら、特許文献2の技術によって得られた中空繊維は、冷感特性の点でさらなる改良の余地がある。
特開2003−293223号公報 特開2002−155426号公報
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷感特性がさらに改良されたEVOH系の多孔繊維を得るための複合繊維を提供することにある。
本発明者が上記に鑑み詳細に検討した結果、下記に示す特定のPVA系共重合体がEVOHとの相溶性に優れることを見い出した。したがって、EVOHを海成分とし、下記に示す特定のPVA系共重合体を島成分とすることにより、微細な海島型構造を有する複合繊維となる。また、下記に示す特定のPVA系共重合体が熱溶融成形性に優れ、EVOHの溶融紡糸条件、すなわち低温での紡糸が可能であるので、PVA系共重合体の熱劣化が少なく、そのため水溶性に優れ、水による溶解除去が容易である。したがって、島成分を溶解除去することによって、微細空隙が形成され、表面積が大きい多孔繊維が得られる。よって、吸湿量が多く、冷感特性が優れた多孔繊維が得られる。
すなわち、本発明の要旨は、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(EVOH)を海成分とし、下記一般式(1)で表わされる構造単位を有するポリビニルアルコール(PVA)系共重合体を島成分とする海島型構造を有する複合繊維である。
Figure 0005665321
〔式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。〕
本発明の複合繊維から得られる多孔繊維(以下、「本発明の多孔繊維」とも記す。)は、微細空隙が形成され、表面積が大きく、EVOHから構成されているので、吸湿量が多く、冷感特性に優れる。また、本発明の複合繊維は、EVOHを海成分とし、EVOHとの相溶性に優れ、かつ熱溶融成形性に優れる特定のPVA系共重合体を島成分とするので、微細な海島型構造になるとともに、成形時の熱劣化によるPVA系共重合体の水溶解性の低下が生じ難く、PVA系共重合体が水により容易に溶解除去される。したがって、本発明の複合繊維は、本発明の多孔繊維の製造に適したものである。
本発明の複合繊維は、EVOHを海成分とし、一般式(1)で表わされる構造単位を有するPVA系共重合体を島成分とする海島型構造を有する。まず、EVOHについて説明する。
海成分としてのEVOHは、エチレン含有量が、通常20〜60モル%であり、特に25〜45モル%が好ましく、さらに28〜40モル%が好ましい。エチレン含有量が多すぎると、PVA系共重合体との相溶性が低下し、複合紡糸時に糸切れが多発する傾向がある。また、エチレン含有量が少なすぎると、融点が高くなるため、溶融紡糸時に熱劣化しやすくなったり、繊維とした後の耐洗濯性が低下する傾向がある。EVOHのMFR(メルトフローレート)は、通常3〜50g/10分(210℃、2160g)であり、特に5〜40g/10分(210℃、2160g)が好ましく、さらに20〜35g/10分(210℃、2160g)が好ましい。MFRが大きすぎると、溶融紡糸時の張力が弱く、安定な溶融紡糸が困難になる傾向がある。また、小さすぎると、溶融粘度が高すぎ、紡糸が困難になる傾向がある。EVOHのケン化度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常99モル%以上、特に99.5モル%以上が好ましい。ケン化度が低すぎると、溶融紡糸時の熱劣化によって異臭が発生したり、繊維が着色しやすくなる傾向がある。なお、EVOHは、公知の方法により製造することができる。
本発明で用いる島成分としてのPVA系共重合体は、下記一般式(1)で示される1,2−ジオール構造単位を有するもので、一般式(1)におけるR1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。
Figure 0005665321
一般式(1)で表わされる構造単位中のR1〜R3及びR4〜R6は、すべて水素原子であることが望ましく、下記一般式(1’)で表わされる構造単位を有するPVA系共重合体が好適に用いられる。
Figure 0005665321
かかる一般式(1)で表わされる構造単位中のR1〜R3及びR4〜R6は、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば、有機基であってもよく、その有機基としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、必要に応じて、これらアルキル基がハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
また、一般式(1)で表わされる構造単位中のXは、微細な海島構造が形成され易く、多孔繊維にしたときの表面積が大きくなり、冷感特性に優れる理由から、単結合であることが最も好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。かかる結合鎖としては特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素基(これらの炭化水素基はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等を有していても良い)の他、−O−、−(CH2O)m−、−(OCH2m−、−(CH2O)mCH2−、−CO−、−COCO−、−CO(CH2mCO−、−CO(C64)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO4−、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である)が挙げられる。中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは−CH2OCH2−が好ましい。
本発明で用いられるPVA系共重合体の製造法は、特に限定されないが、(i)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化する方法や、(ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で示される化合物との共重合体をケン化及び脱炭酸する方法や、(iii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(4)で示される化合物との共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法が好ましく用いられる。なお、(i)、(ii)、及び(iii)の方法については、例えば、特開2006−95825号公報に説明されている方法を採用できる。
Figure 0005665321
Figure 0005665321
Figure 0005665321
上記一般式(2)、(3)、(4)中のR1、R2、R3、X、R4、R5、R6は、いずれも一般式(1)の場合と同様である。R7及びR8はそれぞれ独立して水素原子またはR9−CO−(式中、R9はアルキル基である)である。R10及びR11はそれぞれ独立して水素原子またはR1〜R6と同様の有機基である。
なかでも、共重合反応性および工業的な取り扱い性に優れるという点から、上記一般式(2)においてR1〜R6が水素、Xが単結合、R7〜R8がR9−CO−であり、R9がアルキル基である、3,4−ジアシロキシ−1−ブテンが好ましく、さらにそのなかでも特にR9がメチル基である3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましく用いられる。
上記(i)の方法において、ビニルエステル系モノマーとして酢酸ビニルを用い、これと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを共重合させた際の各モノマーの反応性比は、r(酢酸ビニル)=0.710、r(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.701であり、これは(ii)の方法で用いられる一般式(3)で表される化合物であるビニルエチレンカーボネートの場合の、r(酢酸ビニル)=0.85、r(ビニルエチレンカーボネート)=5.4と比較して、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが酢酸ビニルとの共重合反応性に優れることを示すものである。
また、酢酸ビニルとの共重合時の3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの連鎖移動定数は、Cx(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.003(65℃)であり、これはビニルエチレンカーボネートの場合の、Cx(ビニルエチレンカーボネート)=0.005(65℃)や、(iii)の方法で用いられる一般式(4)で表される化合物である2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソランの場合のCx(2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン)=0.023(65℃)と比較して、重合度が上がりにくくなったり、重合速度が低下したりする原因となり難いことを示すものである。
かかる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは、その共重合体をケン化する際に発生する副生物が、ビニルエステル系モノマーとして多用される酢酸ビニルに由来する構造単位からケン化時に副生する化合物と同一であり、その後処理や溶剤回収系に敢えて特別な装置や工程を設ける必要がなく、従来からの設備を利用出来るという点も、工業的に大きな利点である。
なお、上記3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは、例えば、国際公開第00/24702号に記載の1,3−ブタジエンを出発物質とした合成ルートで製造された製品や、USP5623086、USP6072079に記載の技術によるエポキシブテン誘導体を中間体として製造された製品を入手することができ、また試薬レベルではアクロス社の製品をそれぞれ市場から入手することができる。また、1,4−ブタンジオール製造工程中の副生成物として得られる粗3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを精製して利用することもできる。
また、1,4−ブタンジオール製造工程の中間生成物である1,4−ジアセトキシ−1−ブテンを、塩化パラジウムなどの金属触媒を用いた公知の異性化反応で異性化することによって、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンに変換して用いることもできる。また、国際公開第00/24702号に記載の有機ジエステルの製造方法に準じて製造することも可能である。
上記(ii)や(iii)の方法によって得られたPVA系共重合体は、ケン化度が低い場合や、脱炭酸あるいは脱アセタール化が不充分な場合には側鎖にカーボネート環あるいはアセタール環が残存する場合があり、その結果、PVA系共重合体自身の架橋やEVOHと反応によって水溶性が低下するので、多孔繊維にしたときに空隙率が低下し、含水率の低下や冷感特性の低下が生じる傾向がある。これらの点からも、(i)の方法によって得られたPVA系共重合体が本用途においては最も好適である。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル、トリフロロ酢酸ビニル等が挙げられるが、経済的にみて、中でも酢酸ビニルが好ましく用いられる。
また上述のモノマー(ビニルエステル系モノマー、一般式(2)、(3)、(4)で示される化合物)の他に、樹脂物性に大幅な影響を及ぼさない範囲であれば、共重合成分として、エチレンやプロピレン等のαーオレフィン;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類、およびそのアシル化物などの誘導体;イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル;アクリロニトリル等のニトリル類;メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、AMPS(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩などの化合物、などが共重合されていてもよい。
本発明で用いるPVA系共重合体は、上記一般式(1)で示される構造単位を通常0.1〜12モル%、好ましくは1〜10モル%、さらに好ましくは3〜8モル%を含有する。上記一般式(1)で示される構造単位のモル分率を過度に高くしても、溶融紡糸性や水溶性の向上が頭打ちとなり、所定の重合度のPVA系共重合体が得られ難くなる傾向がある。一方、モル分率が低すぎると、融点が高くなるため成型温度を高くせざるを得ず、溶融紡糸性が低下したり、熱劣化による不溶物が発生する傾向がある。また、PVA系共重合体の水溶性が低下し、複合繊維からの溶出に長時間を要したり、完全に溶出されなかったりする傾向がある。
PVA系共重合体中、一般式(1)で示される1,2−ジオール構造単位の含有率(モル分率)は、PVA系共重合体を完全にケン化したものの1H−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができ、具体的には1,2−ジオール単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、およびメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトンなどに由来するピーク面積から算出することができる。
本発明で用いるPVA系共重合体のケン化度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常80〜100モル%、特に85〜99.9モル%、さらに88〜99.5モル%が好ましい。特に本発明で用いるPVA系共重合体は、ケン化度が高くても側鎖の1,2−ジオール構造によって結晶サイズが制御され、融点の上昇が抑制されており、良好な溶融成形性が得られ、熱劣化の問題が少ないことを特徴とするものである。ケン化度が低すぎると、溶融紡糸時の熱安定性が低下したり、酢酸臭がしたりする傾向がある。また、PVA系共重合体の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常200〜1200、特に250〜1000、さらに300〜600が好ましい。平均重合度が高すぎると、溶融粘度が高くなり、紡糸が困難になる傾向がある。一方、平均重合度が低すぎると、EVOHとの混練時、および溶融紡糸時に表面に排出され、繊維の径方向に均一な海島構造ができ難くなる傾向があり、繊維強度や耐洗濯性が低下する場合がある。さらに、PVA系共重合体のMFR(メルトフローレート)は、通常3〜50g/10分(210℃、2160g)であり、特に5〜40g/10分(210℃、2160g)が好ましく、さらに10〜25g/10分(210℃、2160g)が好ましい。MFRが大きすぎると、溶融紡糸時の張力が弱く、安定な溶融紡糸が困難になる傾向がある。また、小さすぎると、溶融粘度が高すぎ、紡糸が困難になる傾向がある。
本発明で用いるPVA系共重合体には、必要に応じて、添加剤を配合しても良い。例えば、溶融流動性を向上させ、繊維化工程での熱分解を抑え、良好な可塑化性、紡糸性を得るための可塑剤としてグリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、あるいはこれらのアルキレンオキサイド付加物を配合することができる。さらに、エチレンビスステアリルアマイド等の滑剤や酸化防止剤を配合しても良い。
本発明の複合繊維は、海成分となるEVOHと、島成分となる上記PVA系共重合体とを混合紡糸または複合紡糸することにより製造することかできる。混合紡糸では、例えば、EVOHと上記PVA系共重合体とを1つの押出機で溶融混練し、引き続き同一の紡糸ノズルから吐出させて巻取り、繊維化することができる。また、複合紡糸では、EVOHと上記PVA系共重合体とをそれぞれ別の押出機で溶融混練し、引き続き、EVOHが海成分となり、PVA系共重合体が島成分となるようにして海島型複合紡糸ノズルから吐出させて巻き取り、繊維化することができる。紡糸に際しての紡糸口金の温度、ノズル通過時のせん断速度等の製造条件は、製造する複合繊維のEVOHとPVA系共重合体との混合比率、複合繊維の断面形状等に応じて、適宜設定される。
海成分となるEVOHと、島成分となる上記PVA系共重合体との混合比率は、EVOH100質量部に対して、上記PVA系共重合体が通常0.5〜50質量部、好ましくは1〜45質量部、さらに好ましくは5〜40質量部である。EVOHに対して上記PVA系共重合体が多すぎると、溶融紡糸性が低下する傾向があり、上記PVA系共重合体が少なすぎると、PVA系共重合体を除去して多孔繊維とした際の多孔繊維の空隙率が低くなり、冷感特性が低下する傾向がある。本発明の複合繊維の断面形状は、特に限定されず、真円形状、中空形状、異型断面形状のいずれでもよいが、繊維化や製織化での工程通過性の点からは、真円形状が好ましい。
本発明の複合繊維は、海成分となるEVOHと、島成分となる上記PVA系共重合体とともに、他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、上記PVA系共重合体以外のPVA系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂(LLDPE、LDPE、VLDPE等)、ポリエステル系樹脂(PET、PBT等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン6、ナイロン6/66、ナイロン12等)などが挙げられ、特にポリエステル系樹脂が強度等の繊維特性の点で好適である。
他の熱可塑性樹脂を含む複合繊維の形態としては、サイドバイサイド型や芯鞘型が挙げられる。例えば、他の熱可塑性樹脂を芯とし、EVOHとPVA系共重合体との海島型構造を有する複合樹脂を鞘とする芯鞘型の複合繊維が挙げられる。芯鞘型の複合繊維における芯の太さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜80μm、更に好ましくは20〜60μmであり、鞘の厚さは、通常1〜30μm、好ましくは2〜20μm 、更に好ましくは3〜10μmである。
また、本発明においては、上述の複合繊維を用いて紡績された紡績糸もまた本発明の複合繊維に概念的に包含される。かかる紡績糸としては、EVOHとPVA系共重合体との海島型構造を有する複合樹脂を含有する繊維(上述の複合繊維も概念的に包含される)の短繊維のみからなる紡績糸、またはこの短繊維と他の短繊維からなる紡績糸が挙げられる。他の短繊維としては、上述の他の熱可塑性樹脂(ポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂など)や天然繊維(綿、麻、絹など)からなる短繊維が挙げられる。
紡糸又は紡績された複合繊維は、必要に応じて、延伸や熱処理がなされてもよい。熱処理は延伸と同時または延伸と別工程で行なわれ得る。なお、複合繊維からPVA系共重合体を除去する際に生じる収縮を抑えるために、複合繊維に収縮が伴う程度まで熱処理を行なってもよい。
次に、本発明の多孔繊維について説明する。本発明の多孔繊維は、本発明の複合繊維を水で処理し、該複合繊維からPVA系共重合体の少なくとも一部を溶解除去して得られる。PVA系共重合体を溶解除去する際の水の温度は、通常5〜95℃、好ましくは20〜80℃である。水の温度が高すぎると、海成分となるEVOHが軟化し、空隙がつぶれる傾向がある。一方、水の温度が低すぎると、PVA系共重合体の溶出除去に長時間を要したり、除去が不完全になり、空隙率が低下する傾向がある。本発明の多孔繊維は、PVA系共重合体の少なくとも一部が溶解除去されていればよい。例えば、複合繊維中のPVA系共重合体は、吸湿性や保湿性に優れるので、この特性を利用する用途に多孔繊維を用いることを目的として、PVA系共重合体の一部のみを溶解除去してもよい。
水による溶解除去の処理方法としては特に限定されず、複合繊維を高圧下の熱水や温水等の水中に浸漬する方法、複合繊維に水をスプレー等で噴射する方法等を挙げることができる。処理に用いる水は、界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。
本発明の多孔繊維における空隙率は、通常1〜45容積%であり、特に5〜40容積%、さらに20〜30容積%が好ましい。空隙率が高すぎると、繊維強度が不充分となる傾向があり、空隙率が低すぎると、冷感特性が不充分となる傾向がある。なお、多孔繊維における空隙率は、多孔繊維の糸の横断面を走査型電子顕微鏡にて写真撮影し、その横断面における多孔状の空隙部の面積を多孔繊維全体部の面積で除して算出することができる。
本発明の多孔繊維の繊度は、1〜150デニール、好ましくは1.5〜5デニールである。本発明の多孔繊維は、軽量性、吸水性、保温性、柔軟性、不透明性、ふくらみ感のある風合等を有するので、特にタフタ、デシン、ジョーゼット、ちりめん、加工糸、ツイルなどの織物、または天竺、スムース、トリコットなどの編物、不織布に好適に使用され得る。本発明の多孔繊維を用いた具体的な商品としては、衣料、マスク等の衛生材料、枕用充填材、自動車等の内装材、消音材、防振材等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下「%」「部」とあるのは、特にことわりのない限り、質量基準を意味する。
〔評価方法〕
下記の実施例1〜5及び比較例1で得られた多孔繊維の評価方法について説明する。評価に供する多孔繊維は、60℃、90%RHの雰囲気下で1週間放置したものを用いる。吸熱量(ΔH)の測定は、示差走査熱量(DSC)測定(30℃〜160℃、昇温速度10℃/分)により行なう。含水率(%)は、重量測定の後、105℃にて3時間乾燥し、絶乾重量を求め、その差を乾燥前の重量で除して求める。
〔材料〕
実施例1〜5及び比較例1で用いた、表1に記載の材料を下記に示す。
EVOH(1):エチレン含有量29モル%、MFR20g/10分(2160g、210℃)、ケン化度99.5モル%以上
EVOH(2):エチレン含有量32モル%、MFR20g/10分(2160g、210℃)、ケン化度99.5モル%以上
PVA(1):3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを8モル%含有、重合度350、MFR20g/10分(2160g、210℃)、ケン化度98.5モル%
PVA(2):未変性、重合度400、MFR60g/10分(2160g、230℃)、ケン化度98.4モル%
〔PVA(1)の製造方法〕
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル6.85部(全仕込量の10%)、メタノール20.5部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン1.1部(全仕込量の10%、8モル%対仕込み酢酸ビニル)、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに酢酸ビニル61.65部(全仕込量の90%、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン9.9部(全仕込量の90%)を9時間かけて等速滴下した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、重合禁止剤としてm−ジニトロベンゼンを加え、重合を終了した。続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去して、PVA系共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を、PVA系共重合体中の酢酸ビニル構造単位及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して、10.5ミリモルとなる割合で加えて4時間ケン化を行った。ケン化が進行するに伴ってケン化物が析出して、粒子状となった時点で固液分離し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中、70℃で12時間乾燥し、PVA系樹脂を得た。
得られたPVA系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニル及び残存3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、98.5モル%であり、平均重合度はJIS K6726に準じて分析を行ったところ350であった。また、1,2−ジオール構造を含有する側鎖の導入量は、1H−NMR(内部標準:テトラメチルシラン、溶媒:DMSO−d6)で測定して算出したところ8モル%であった。
〔実施例1〕
EVOH(1)のペレットとPVA(1)のペレットを質量比90/10でドライブレンドし、これを二軸押出機(テクノベル社製KZW15−60)によって、下記温度パターンで溶融紡糸を行って、EVOHが海成分、PVAが島成分である複合繊維を得た。
C1:170℃、 C2:180℃、 C3:185℃、 C4:190℃、
C5:190℃、 C6:195℃、 C7:200℃、 C8:200℃、
AD1:200℃、 GP:200℃、 AD2:200℃、 FD:200℃
この複合繊維を80℃の熱水に2時間浸漬した後、40℃で1晩真空乾燥させることで、島成分であるPVAが溶出除去された多孔繊維が得られた。得られた多孔繊維の空隙率は10容積%であった。
〔実施例2〜5、比較例1〕
EVOH、およびPVAとして表1に記載のものを用い、実施例1と同様に多孔繊維を製造し、同様に評価を行った。
ただし、比較例1については下記温度パターンで溶融紡糸を行った。
C1:170℃、 C2:180℃、 C3:195℃、 C4:200℃、
C5:210℃、 C6:215℃、 C7:220℃、 C8:230℃、
AD1:230℃、 GP:230℃、 AD2:230℃、 FD:230℃
実施例1〜5及び比較例1で得られた多孔繊維の評価結果を表1に併せて示す。
Figure 0005665321
実施例1と比較例1の評価結果の対比から、未変性のPVAを用いた場合には、相対的に、吸熱量が低いので、冷感特性に劣り、また含水率が低いので、吸湿性も劣ることがわかる。また、実施例1と実施例3の評価結果の対比から、PVA系共重合体の比率を高くすると、空隙率が高くなり、冷感特性や吸湿性が向上することがわかる。さらに、実施例1,2と実施例4,5の評価結果の対比から、EVOHのエチレン含有量が多くなると、冷感特性や吸湿性が低下する傾向にあることがわかる。その理由は、EVOHのエチレン含有量が多くなると、PVA系共重合体との分散性が低下するためであると推測される。

Claims (1)

  1. エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物を海成分とし、下記一般式(1)で表わされる構造単位を有するポリビニルアルコール系共重合体を島成分とする海島型構造を有する複合繊維。
    Figure 0005665321
    〔式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。〕
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