JP2001049145A - カーボンブラック及びそれを配合してなるptc組成物 - Google Patents

カーボンブラック及びそれを配合してなるptc組成物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気回路の過電流保護素子や自己温度制御型
発熱体などとして好適なPTC機能を付与することので
きるカーボンブラック、及びこのカーボンブラックをポ
リマー成分に配合してなるPTC組成物の提供。 【解決手段】 凝集体ストークス相当径分布のモード径
(Dst)が150nm以上トルエン着色透過度(LT)が
60%以上、圧縮電気比抵抗(50kg/cm2加圧時)が0.
4Ω・cm以下の特性を備えるカーボンブラック、及び該
カーボンブラックをポリマー成分100重量部に5〜2
00重量部配合してなるPTC組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂やゴムなどの
ポリマー成分に配合して、正の抵抗温度係数(PTC;
Positive Temperature Coefficient)を付与することの
できるカーボンブラック、及びこのカーボンブラックを
ポリマー成分に配合してなるPTC組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】PTC組成物は電気回路の過電流保護素
子や自己温度制御型発熱体などに有用されており、例え
ばポリエチレンなどの結晶性樹脂にカーボンブラック、
黒鉛粉末、金属粉末などの導電性粉末を分散、充填した
組成物が一般的に用いられている。このうち、カーボン
ブラックは軽量性や価格面で他の導電性粉末に比べて有
利であり、例えば特開昭63−265961号公報には
1次粒子径が25 mμ以下で、かつDBP吸油量が40
〜60ml/100g のカーボンブラックと、前記カーボンブ
ラックの表面官能基と親和性のある変性基が導入された
結晶性樹脂とを混練した自己温度制御発熱体組成物が提
案されている。
【0003】また、特開平3−252101号公報には
融点が120℃以下で、極性基を有すると共にエポキシ
基を有する結晶性ポリマー100重量部と、導電性付与
材5〜150重量部とからなる低温型PTC材料が提案
されており、実施例では導電性付与材としてアセチレン
ブラックが例示されている。
【0004】更に、特表平4−500694号公報には
PTC挙動を示し、(1) 結晶度が少なくとも5%である
有機ポリマー、(2) ポリマーを溶解するのに適した活性
溶媒および (3)pHが4.0未満のカーボンブラックを
含んでなるポリマー厚膜インキが、特開平5−3458
60号公報には (a)結晶性高分子と、(b) これに分散さ
れた、少なくとも約60ミリミクロンの平均粒子径を有
し、少なくとも約80cc/100gのジブチルフタレート吸
収を有するカーボンブラックとからなる、正の温度係数
を有する導電性高分子組成物が開示されている。
【0005】また、本出願人も、均一な高温発熱性とP
TC機構を併有する導電性シートの製造方法として、繊
維化性のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とカーボン
ブラックの混合物にシリコーン樹脂をグリセリンまたは
2−メチル、4ペンタンジオールに溶解した混練助剤を
加えて混練し、混練物をロール圧延によりシート化する
ことを特徴とする導電性シートの製造方法(特開平4−
39814 号公報)を開発提案している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、電気回
路における過電流を保護したり、発熱体の熱暴走を防ぐ
自己温度制御型の発熱体などに好適に使用されるために
は、より高性能のPTC組成物が要求されている。例え
ば、ショートや電圧サージなどの過剰な電流に対して効
果的に保護機能を発揮するためには、定常状態において
は電力損失を極力防ぐために低抵抗であることが好まし
く、一方、ある範囲の温度上昇に対しては急激に抵抗値
が増大するPTC特性を備えていることが好ましいこと
になる。
【0007】本発明者らは、このような優れたPTC機
能を備えたPTC組成物の開発を、主にカーボンブラッ
クの特性面から研究を進めた結果、カーボンブラック粒
子の凝集形態および表面性状などを特定することによ
り、優れた性能を有するPTC組成物が得られることを
見出した。
【0008】すなわち、本発明はこの知見に基づいて開
発されたものであって、その目的は電気回路の過電流保
護素子や自己温度制御型発熱体などとして好適に使用す
ることのできる優れたPTC機能を付与することのでき
るカーボンブラック、及びこのカーボンブラックをポリ
マー成分に配合してなるPTC組成物を提供することに
ある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明に係るカーボンブラッックは、凝集体ストー
クス相当径分布のモード径(Dst)が150nm以上、ト
ルエン着色透過度(LT)が60%以上、圧縮電気比抵
抗(50kg/cm2加圧時)が0.4Ω・cm以下の特性を備え
ることを特徴とする。
【0010】また、本発明のPTC組成物は、ポリマー
成分100重量部に、このカーボンブラックを5〜20
0重量部の割合で配合してなることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明のカーボンブラックは凝集
体ストークス相当径分布のモード径(Dst)の値が15
0nm以上であることが必要である。Dstはカーボンブラ
ックの粒子径やストラクチャーなどを総合的に表すパラ
メータであり、この値が大きくなると樹脂やゴムなどの
ポリマー成分に同一の量比で配合し、分散させた場合
に、ポリマー組成物中におけるカーボンブラック凝集体
間の距離が短くなり、電気伝導性が高くなる。
【0012】したがって、組成物に同一レベルの電気抵
抗(あるいは電気伝導性)を付与するためにはカーボン
ブラックの配合量を相対的に少なくすることが可能とな
る。その結果、組成物の温度上昇に伴い、カーボンブラ
ック凝集体間の距離が大きくなり易くなり、ある温度域
に達すると急激な電気抵抗の上昇を招くことになる。す
なわち、組成物に優れたPTC機能を付与するためには
凝集体ストークス相当径分布のモード径(Dst)の値は
大きいことが望ましく、本発明はこの値を150nm以上
に設定するものである。
【0013】トルエン着色透過度(LT)はカーボンブ
ラック粒子表面に残留する未分解炭化水素量の程度を示
すもので、残留する未分解炭化水素量が少ない程トルエ
ン着色透過度(LT)の値は大きくなる。残留する未分
解炭化水素はカーボンブラックの導電性を阻害する物質
であり、本発明は導電性を阻害するこの未分解炭化水素
量を規制するためにトルエン着色透過度(LT)の値を
60%以上と設定するものである。その結果、ポリマー
成分に配合して組成物とする際の分散加工性が良好で、
また初期の低抵抗化を図ることができる。
【0014】電気比抵抗はカーボンブラック自体の導電
性を示す指標であり、この値が大きくなると導電性が低
下し、ポリマー成分に配合して組成物とした場合に低抵
抗化を図ることができなくなる。そこで、本発明におい
ては、電気比抵抗として50kg/cm2の圧力で加圧した時
の圧縮電気比抵抗の値を0.4Ω・cm以下に設定するこ
とにより組成物の初期電気抵抗の低位化を図っている。
【0015】このように本発明のカーボンブラックは、
カーボンブラック特性として凝集体ストークス相当径分
布のモード径(Dst)、トルエン着色透過度(LT)お
よび圧縮電気比抵抗(50kg/cm2加圧時)を選択し、その
値を特定することにより、ポリマー成分に配合した組成
物の電気抵抗レベルを同一レベルに保持するためのカー
ボンブラック配合量比を相対的に少なくすることが可能
となる。その結果、温度上昇による組成物内におけるカ
ーボンブラック−カーボンブラック間の距離が大きくな
り易く、電気抵抗の増大、すなわち、組成物に優れたP
TC機能を付与することが可能となる。
【0016】上記の構成におけるカーボンブラックの各
特性は、以下の測定方法によって得られる値が用いられ
る。
【0017】凝集体ストークス相当径分布のモード径
(Dst)(nm):JISK6221(1982) 5「乾燥試料の作り
方」に基づいて乾燥したカーボンブラック試料を少量の
界面活性剤を含む20容量%エタノール水溶液と混合し
てカーボンブラック濃度100mg/lの分散液を作成し、
これを超音波で充分に分散させて試料とする。ディスク
・セントリフュージ装置(英国Joyes Lobel 社製)を6
000rpm の回転数に設定し、スピン液(2重量%グリ
セリン水溶液、25℃)を15ml加えた後、1mlのバッ
ファー液(20容量%エタノール水溶液、25℃)を注
入する。次いで、温度25℃のカーボンブラック分散液
0.5mlを注射器で加えた後、遠心沈降を開始し、同時
に記録計を作動させて図1に示す分布曲線(横軸;カー
ボンブラック分散液を注射器で加えてからの経過時間、
縦軸;カーボンブラックの遠心沈降に伴い変化した特定
点での吸光度)を作成する。この分布曲線より各時間T
を読み取り、次式(数1)に代入して各時間に対応する
ストークス相当径を算出する。
【0018】
【数1】
【0019】数1において、ηはスピン液の粘度(0.935
cp) 、Nはディスク回転スピード(6000rpm) 、r1 はカ
ーボンブラック分散液注入点の半径(4.56cm)、r2 は吸
光度測定点までの半径(4.82cm)、ρCBはカーボンブラッ
クの密度(g/cm3) 、ρ1 はスピン液の密度(1.00178g/cm
3)である。
【0020】このようにして得られたストークス相当径
と吸光度の分布曲線(図2)における最大頻度のストー
クス相当径をDstモード径(nm)とする。この測定方法に
よるASTMD-24 Standard Reference BlackC-3(N23
4)のDstは80nmである。
【0021】トルエン着色透過度(LT)(%):J
ISK6221(1982)「ゴム用カーボンブラックの試験方
法」 6.2.4項による。
【0022】圧縮電気比抵抗(50kg/cm2加圧時)(Ω
・cm):JISK1469(1984)「アセチレンブラック」
5.6項による。
【0023】本発明のPTC組成物は、上記の特性を備
えるカーボンブラックをポリマー成分100重量部に対
して5〜200重量部の割合で配合してなるものであ
る。カーボンブラックの配合量が5重量部未満では組成
物の強度が充分でなく、一方200重量部を越えると組
成物を作成する際の加工性が低下するとともに、PTC
機能の低下を招くためである。なお、ポリマー成分とし
ては各種の樹脂やゴムをはじめインキ用ビヒクルなどが
適用され、さらに必要に応じ他のフィラーや薬品類を適
宜添加することもできる。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して具
体的に説明する。
【0025】実施例1〜5、比較例1〜5 特性の異なるカーボンブラック試料を用い、これらのカ
ーボンブラック試料をEVA樹脂〔エチレン/酢酸ビニ
ル共重合体、東洋曹達 (株) 製、ウルトラセン633〕に
量比を変えて配合し、東洋精機(株)製ラボプラストミ
ルにより120℃の温度で10分間混練して、EVA樹
脂組成物を調製した。このEVA樹脂組成物を140℃
の温度でロール成形して、120×120×2mmのシー
トを作製した。
【0026】得られた各シートについて、下記の方法に
より電気抵抗を測定した。 体積固有抵抗 LogVR(Ω・cm)の測定;JIS K67
23に準拠し、電極70φ、印加時間60sec 、印加電圧
5V、測定温度 −10、30、50℃の各条件で測
定。
【0027】また、各シートについて、JIS K7210
「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」に準じて、温
度230℃、荷重12.5kgの条件で流動特性を測定
し、加工性(MI)を評価した。なお、この値が大きい
ほど加工性が良好であることを示している。
【0028】このようにして得られた結果を表1(実施
例)、表2(比較例)に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】表1、2の結果から、抵抗値が107 Ω・
cm前後の導電性シートにおいて、本発明で選択、特定し
たカーボンブラック特性の全てを充足するカーボンブラ
ックを配合した実施例のEVA樹脂組成物シートは、少
なくとも1つの特性が外れるカーボンブラックを配合し
た比較例のEVA樹脂組成物シートに比べて、−10℃
から50℃の温度変化に対応する体積固有抵抗値が増大
し、その変化率が大きいことが判る。また、比較例にお
いては体積固有抵抗値の変化率が小さいばかりでなく、
比較例4では負の抵抗温度係数を示していることが認め
られる。
【0032】更に、加工性の良否を判断するMIの値
も、実施例は比較例に比べていずれも大きく、実施例の
カーボンブラックを配合したEVA樹脂シートは比較例
に比べて加工性においても優れていることが認められ
る。
【0033】
【発明の効果】以上のとおり、本発明で選択、特定した
特性を備えるカーボンブラックによれば、このカーボン
ブラックをポリマー成分に配合することによりポリマー
組成物に優れたPTC機能を付与することができ、更
に、加工性も良好である。したがって、例えば、電気回
路の過電流保護素子や自己温度制御型発熱体などとして
好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Dstの測定時におけるカーボンブラック分散液
を加えてからの経過時間とカーボンブラックの遠心沈降
による吸光度の変化を示した分布曲線である。
【図2】Dstの測定時に得られるストークス相当径と吸
光度の関係を示す分布曲線である。
フロントページの続き Fターム(参考) 4J002 AA001 BB061 DA036 GQ00 4J037 AA02 CC00 DD05 DD12 FF02 FF11 5E034 AA07 AA08 AB01 AC10 DA10

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 凝集体ストークス相当径分布のモード径
    (Dst)が150nm以上、トルエン着色透過度(LT)
    が60%以上、圧縮電気比抵抗(50kg/cm2加圧時)が
    0.4Ω・cm以下の特性を備えるカーボンブラック。
  2. 【請求項2】 ポリマー成分100重量部に、請求項1
    記載のカーボンブラック5〜200重量部を配合してな
    るPTC組成物。
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