JP2001047452A - ポリイミド管状物及びその製造方法 - Google Patents

ポリイミド管状物及びその製造方法

Info

Publication number
JP2001047452A
JP2001047452A JP23028899A JP23028899A JP2001047452A JP 2001047452 A JP2001047452 A JP 2001047452A JP 23028899 A JP23028899 A JP 23028899A JP 23028899 A JP23028899 A JP 23028899A JP 2001047452 A JP2001047452 A JP 2001047452A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polyimide
mold
tubular article
imide conversion
semi
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP23028899A
Other languages
English (en)
Inventor
Takahiro Yoshida
孝広 吉田
Akira Tsutsumi
章 堤
Yoji Tani
治 谷庸
Masafumi Matsumura
将文 松村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
IST Corp Japan
Original Assignee
IST Corp Japan
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by IST Corp Japan filed Critical IST Corp Japan
Priority to JP23028899A priority Critical patent/JP2001047452A/ja
Publication of JP2001047452A publication Critical patent/JP2001047452A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Moulding By Coating Moulds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面平滑特性、真円度、及び機械的特性の優
れた耐久性の良いポリイミド樹脂管状物を低コストで提
供する。 【解決手段】 円筒状内金型11の外面にポリイミド前駆
体液を塗布し乾燥してポリイミド半硬化管状物10を得た
後、その外側に円筒状外金型12を挿入し加熱してイミド
転化を完了させる。内金型11の熱膨張係数を外金型12の
熱膨張係数より大きくすることで、ポリイミド半硬化管
状物10を外金型12と内金型11との間に狭接せしめながら
イミド転化を進行させることができる。これにより、表
面平滑特性、真円度等に優れたシームレス管状物が得ら
れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複写機やプリンタ
ーあるいは熱ラミネーターなどに好適に使用されるポリ
イミド樹脂からなるシームレス状管状物とその製造方法
に関する。さらに詳しくは、ポリイミド樹脂前駆体液を
支持体上に塗布し、イミド転化させて得られるポリイミ
ド樹脂シームレス管状物とその製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】ポリイミド樹脂は優れた耐熱性、寸法安
定性、機械的特性、および化学的特性を有しており、ポ
リイミド樹脂からなる管状物の用途としては複写機やレ
ーザービームプリンターなどのトナー画像の中間転写ベ
ルトや熱定着ベルト、あるいは熱ラミネーターベルトな
ど多くの産業分野で使用されている。ここで、複写機や
レーザービームプリンターなどの中間転写ベルトとして
使用されるポリイミド管状物について例を挙げて説明す
る。
【0003】電子写真技術を利用したカラーレーザープ
リンターあるいはカラー複写機などの画像成形方法で
は、シアン、イエロー、マセンダ、ブラックなどの基本
色のトナーを用い感光ドラム表面に画像を形成し、その
後、個々のトナー画像を転写ドラムを介して複写紙(コ
ピー用紙)上に転写させ、トナー像を熱定着させる方法
が採られている。
【0004】最近、前述の転写ドラム方式に代わって中
間転写ベルトを用いたカラー画像の形成方法が提案さ
れ、様々な機構が開発されつつある。これは、感光ドラ
ムに形成したトナー画像を一度中間転写ベルト上に転写
させ、その後、複写紙に再転写し熱定着ののちカラー画
像を得る方式である(例えば、電子写真学会誌 第36
巻第4号(1997年)「中間転写型デジタルカラー電
子写真技術」)。
【0005】この中間転写ベルトには、引張弾性率が大
きく装置内部の温度上昇に対して寸法安定性の良いポリ
イミド管状物が使われている。中間転写ベルトとして
は、機械特性及び耐熱性などの特性以外に、転写ベルト
の表面にトナー画像を転写させるため、ベルト内外表面
の平滑性、厚み均一性、及び管状物としての真円度など
の特性が要求される。
【0006】このような用途及び要求特性に合致したポ
リイミド管状物の製造方法も種々の方法が検討され実用
化されている。
【0007】例えば、特開平1−156017号公報で
は、シリンダーの内面にポリイミド前駆体液を塗布し、
その後、シリンダーの内径と所定の間隙を有する外径を
持つ弾丸状あるいは球状の走行体をポリイミド前駆体液
の塗布内周面に沿って走行させ一定の厚みでシリンダー
内周面にポリイミド前駆体液を成形させた後、加熱によ
りイミド転化させ、その後シリンダーから管状物を分離
する方法が記載されている。
【0008】また、特開昭57−74131号公報で
は、円筒状金型の内面に揮発性溶剤に溶解した熱硬化性
樹脂を注入し、加熱しながら回転させ遠心成形法にて薄
肉のエンドレスベルトを製造する方法が記載されてい
る。
【0009】また、特開平6−23770号公報では、
芯体の外面に管状物成形体の前駆体材料を塗布し、その
後芯体の外面に沿って所定の内径を有するリング状ダイ
スを通過させ所定の厚みの前駆体液を成形し、その後加
熱などの手段で皮膜化させ金型と芯体を分離し管状物を
得る方法が記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
管状物の製造方法はそれぞれ一長一短があり、いずれの
方法も前記の転写ベルトの要求特性である厚みの均一性
あるいは表面の平滑性などの特性を備えたポリイミド管
状物を得ることが難しい。その理由は以下の通りであ
る。
【0011】ポリイミド前駆体液は加熱することによっ
てイミド転化反応が進みイミド転化の完結で強靭で平滑
なフィルム層が得られる。しかし加熱によるイミド転化
反応の過程においては溶媒の蒸発や縮合水の発生及び気
化などの現象を伴ない、これらの溶媒や縮合水の気化ガ
スが平滑なポリイミドフィルムの成形や、真円度の高い
管状物を製造する上で大きな問題になる。
【0012】例えば、従来例のように金型の内面あるい
は外面にポリイミド前駆体液を所定の厚みに塗布成形
し、オーブン内で加熱してイミド転化反応を進めていく
過程においては、塗布成形物の最外表面から溶媒や縮合
水の蒸発が始まり皮膜化が進んでいく。そしてこのまま
加熱を続けイミド転化を進行させて行くと、イミド転化
反応はポリイミド前駆体液の表層から進行していく。そ
の結果、表層のイミド転化がある程度進行すると、金型
近傍部分からの溶媒や縮合水の蒸発ガスの放出が次第に
困難になってしまう。この状態をそのまま継続すると金
型とポリイミドが接している境界面に溶媒などの蒸発ガ
スが閉じ込められ、その部分で金型とフイルムが局部的
に分離しガス溜りができフィルム表面の平滑性を阻害す
ることになる。こられの現象は平滑な表面特性を必要と
する中間転写ベルトの用途では致命的な欠陥になる。
【0013】これらの不具合点を解消するために、例え
ば金型の外周に塗布成形したポリイミド前駆体液を中間
段階までイミド転化を進め、その後、ポリイミド管状物
の中間体(半硬化管状物)を一度金型から分離し、再
度、当該管状物の内径より小さい外径の金型に挿入して
イミド転化を完結させる方法が用いられている。しかし
ながら、この方法は製造方法が煩雑で、製造原価が高い
ものになる。
【0014】本発明は上記問題点を解決し、表面平滑特
性、真円度、及び機械的特性の優れた耐久性の良いポリ
イミド樹脂管状物を低コストで提供することを目的とす
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に本発明は以下の構成とする。
【0016】本発明のポリイミド管状物は、表面粗度R
zが3μm以下、表面平滑度が1.5mm以下であるこ
とを特徴とする。
【0017】ポリイミド管状物の表面平滑度が1.5m
m以下であると転写ベルトに使用した場合、感光ドラム
表面からトナー画像をベルト表面にスムーズに転写でき
る。表面平滑度は1.0mm以下であるとより好まし
い。
【0018】また、ポリイミド管状物の表面粗度Rzが
3μm以下であれば、転写ベルトに使用した場合、高品
質の転写画像を得ることができる。また、熱ラミネート
ベルトに使用した場合には、管状物の表面粗度が熱ラミ
ネート後の製品に転写されるので、表面粗度が細かい方
が表面が平滑な製品が得られる。表面粗度Rzは1μm
以下であるのがより好ましい。
【0019】また、上記において、ポリイミド管状物の
厚みが30〜500μmであることが好ましい。ポリイ
ミド管状物の厚みが30〜500μmであると適度な機
械的強度を有し、回転駆動による耐久性にも優れ、前記
転写ベルトや熱ラミネートベルトに要求される機械的特
性や耐久性に対応できる。
【0020】また、上記において、ポリイミド管状物の
体積抵抗値が107〜1013Ωcmであることが好まし
い。体積抵抗値が107〜1013Ωcmの範囲である
と、感光ドラムからトナー画像を転写ベルト表面に静電
気的に転写させるときにトナーの飛散がなく、また転写
ベルト自体の静電気的な帯電が少ないため、良好な画像
を得ることができる。
【0021】上記の体積抵抗値とするためには、ポリイ
ミド管状物に導電材料を含有させることで達成可能であ
る。導電材料を含有させると、転写ベルトに使用した場
合、ベルト表面に電荷をかけトナー画像をベルト表面に
静電的に転写させる事が可能になる。またポリイミド管
状物から発生する静電気を良好に放出させることができ
る。
【0022】以上のように、本発明のポリイミド管状物
は、その表面の平滑性及び表面粗さなどの外観的な特性
に加えて、管状物の厚み、真円度、あるいは機械特性に
すぐれ、さらに精度の高い体積抵抗値を有するため、電
子写真装置のカラー複写機やレーザービームプリンター
などの転写ベルトとして用いた場合、実用的に十分な特
性を発揮できる。
【0023】また、上記のポリイミド管状物を得るのに
適した本発明のポリイミド管状物の製造方法は、熱膨張
率が異なる円筒状外金型と円筒状内金型との間で挟接せ
しめながらポリイミド前駆体のイミド転化を進行させる
ことを特徴とする。かかる構成によれば、外金型と内金
型とに狭接させながらイミド転化反応を進行させるの
で、イミド転化反応の進行途中で発生する溶媒や縮合水
の蒸発ガスによってポリイミド半硬化管状物が金型から
剥離することがない。その結果、フイルム厚さの均一
性、表面平滑度に優れ、複写機の中間転写ベルトやラミ
ネーターの熱転写ベルトの用途において実用的に十分な
特性を有するポリイミド管状物を得ることができる。ま
た、内金型と外金型の熱膨張率を変えておくことで、イ
ミド転化の際の加熱温度を利用して容易にポリイミド半
硬化管状物を両金型の間に狭接せしめ、加圧することが
できる。
【0024】上記の製造方法において、前記内金型の熱
膨張率が前記外金型の熱膨張率より大きいことが好まし
い。かかる構成によれば、イミド転化反応を進行させる
ために加熱すると外金型と内金型との間隔が狭くなるの
で、簡単な構成でポリイミド中間体を両金型に狭接さ
せ、適度に加圧しながらながらイミド転化反応を進行さ
せることができる。また、外金型の内径と内金型の外径
と両金型の熱膨張率差等を適切に設定することで、イミ
ド転化を進行させるときの加熱温度に対して内外の金型
で挟接させるときの圧力をコントロールすることができ
る。
【0025】また、上記の製造方法は、円筒状内金型の
外面にポリイミド前駆体液を塗布し、乾燥して、ポリイ
ミド半硬化管状物を得る第1のイミド転化工程と、前記
円筒状内金型の外側に円筒状外金型を挿入し、加熱し
て、前記ポリイミド半硬化管状物を前記外金型と前記内
金型との間に狭接せしめながらイミド転化を進行させる
第2のイミド転化工程とを有することが好ましい。
【0026】あるいは、上記の製造方法は、円筒状外金
型の内面にポリイミド前駆体液を塗布し、乾燥して、ポ
リイミド半硬化管状物を得る第1のイミド転化工程と、
前記円筒状外金型の内側に円筒状内金型を挿入し、加熱
して、前記ポリイミド半硬化管状物を前記外金型と前記
内金型との間に狭接せしめながらイミド転化を進行させ
る第2のイミド転化工程とを有することが好ましい。
【0027】すなわち、第1のイミド転化工程で一方の
金型上に塗布成形したポリイミド前駆体液を加熱して適
度に乾燥させて、溶媒や縮合水の蒸発ガスを適度に放出
させた後に、他方の金型をかぶせて両金型に狭接させな
がら第2のイミド転化工程を行なう。これにより、ポリ
イミド前駆体液中の溶媒や縮合水の蒸気によるガス溜り
の発生がなく、平滑で均一な管状物を容易に製造するこ
とができる。さらに、ポリイミド前駆体液を金型表面に
塗布してから最終のイミド転化反応を完結するまでポリ
イミド管状物を金型から一切取り外すことなく管状物の
完成品を製造できるため、従来の方法と比較して加工工
程を大幅に簡略化でき低コストでポリイミド管状物を製
造できる。
【0028】また、上記において、前記第1のイミド転
化工程終了時の前記ポリイミド半硬化管状物の下記式で
定義される厚み収縮率Xが65〜90%であることが好
ましい。
【0029】
【数2】 X={(V0−Va)/V0}×100 ・・・(1) ここで、 X:ポリイミド半硬化管状物の厚み収縮率 V0:ポリイミド前駆体液の当初(すなわち塗布直後)
の塗布厚さ Va:ポリイミド半硬化管状物の厚さ
【0030】すなわち、第1のイミド転化工程で、厚み
収縮率Xが65〜90%になるまでイミド転化を進行さ
せ、その後第2のイミド転化工程に移行する。厚み収縮
率Xが上記範囲未満の段階で第2のイミド転化工程に移
行すると、第2のイミド転化工程で大量の溶媒や縮合水
の蒸気が発生するので、両金型間でポリイミド皮膜が分
解し、均一なフィルムが得られないばかりか、最悪の場
合にはフィルムがバラバラに分解されてしまう。一方、
厚み収縮率Xが上記範囲を越えるまで第1のイミド転化
工程を行なうと、第1のイミド転化工程で発生する溶媒
や縮合水の蒸気により、フィルムが金型と剥離してしま
い、厚さの均一性、表面平滑度に優れた管状物が得られ
ない。
【0031】上記の製造方法によって得られたポリイミ
ド管状物は、その内外面に金型の表面形状が転写されて
いることが好ましい。一般に、上記の導電材料や熱伝導
性物質など微粒子状のフィラーを含有させると、フィラ
ーがポリイミド管状物の表面に現れ表面粗度の低下を招
く。ところが、本製造方法にれば、金型表面の特性がそ
のままポリイミド管状物表面に転写されるため、導電性
等の必要な特性を付与させながら必要な表面特性を有す
る管状物が得られる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下に本発明のポリイミド管状物
及びその製造方法について代表的な実施の形態に従って
説明する。
【0033】本発明のポリイミド管状物は、ポリイミド
前駆体液を金型上に塗布し、イミド転化させて製造され
る。
【0034】本発明に用いるポリイミド前駆体液は、例
えば芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン
成分を有機極性溶媒中で反応させることによって得るこ
とができる。このような芳香族テトラカルボン酸の代表
例としては次のようなものが挙げられる。例えば、ピロ
メリット酸二無水物、3、3'、4、4'−ビフェニルテトラカ
ルボン酸二無水物、3、3'、4、4'−ベンゾフェノンテトラ
カルボン酸二無水物、2、3、4、4'−ビフェニルテトラカル
ボン酸二無水物、2、3、6、7−ナフタレンテトラカルボン
酸二無水物、1、2、5、6−ナフタレンテトラカルボン酸二
無水物、2、2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エー
テル二無水物、あるいはこれらのテトラカルボン酸エス
テル、又は上記各テトラカルボン酸類の混合物等を例示
することができる。
【0035】一方、芳香族ジアミン成分としては特に制
限はなく、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジ
アミン、4、4'−ジアミノジフェニルエーテル、4、4'−ジ
アミノフェニルメタン、ベンジジン、3、3'−ジアミノジ
フェニルメタン、3、3'−ジメトキシベンチジン、4、4'ジ
アミノジフェニルプロパン、2、2−ビス〔4-(4−アミノ
フェノキシ)フェニル〕プロパンなどが挙げられる。
【0036】本発明の製造方法においてはポリイミド前
駆体が有機極性溶媒に溶解している組成物(原料)を用
い管状物を製作する。前記の有機極性溶媒としては、ジ
メチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチ
ル−2−ピロリドン、フェノール、O−,M−,P−ク
レゾール、などが挙げられる。これらの有機極性溶媒に
はキシレン、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類(ハ
イドロカーボン)などを混合することもできる。
【0037】本発明の一実施例においては、ポリイミド
前駆体液として、例えば、N−メチル−2−ピロリドン
中にP−フェニレンジアミンと3,3',4,4'−ビフ
ェニルテトラカルボン酸二無水物を常温下で攪拌溶解し
たポリミド前駆体液((株)IST製RC−5063)
を使用することができる。
【0038】また、芳香族テトラカルボン酸成分と芳香
族ジアミン成分とを有機極性溶媒中で重合させて得られ
たポリイミド前駆体液の中に窒化ホウ素、金属粉末など
の熱伝導改良剤などを混合しても良い。
【0039】本発明の製造方法においては、上記ポリイ
ミド前駆体液を円筒状金型の内面あるいは外面に均一に
塗布する。このとき、所望によりポリイミド前駆体を塗
布する面にシリコンあるいはフッ素、セラミックなどの
塗布による離型処理を施しておいても良い。
【0040】ポリイミド前駆体液の塗布方法は特に限定
されるものではない。金型の外周側にポリイミド前駆体
液を塗布する場合は、ディッピング方法、スクレバー方
法、押出し方法などにより金型表面にポリイミド前駆体
液を付着させた後、リング状外型ダイスの中を通過させ
るなどして所定厚みに均一に塗布することができる。ま
た金型の内周側に塗布する場合は、あらかじめ金型内面
にスクレバーなどで前駆体液を塗布したのち回転遠心成
形法などを用いてポリイミド前駆体液を均一に塗布する
ことができる。あるいは、特開平1−156017号公
報に記載されているように、金型内面に前駆体液を塗布
し、その後、金型内径より所定量だけ小さい径の弾丸状
又は球体状の走行体を通過させる方法を採ることもでき
る。
【0041】金型にポリイミド前駆体溶液を塗布した
後、オーブンなどを用いて加熱してイミド転化反応を完
結させる。このとき、加熱による溶媒の蒸発あるいは縮
合水の気化などを考慮し、段階的に温度を上げて行き最
終的にはポリイミド樹脂のガラス点移転温度近くまで加
熱し、イミド転化を完結させる。
【0042】本発明の一実施例の場合、金型表面のポリ
イミド前駆体は、例えば80〜120℃で60分間程度
加熱することにより、溶媒であるN−メチル−2−ピロ
リドン(NMP)の蒸発とともにイミド転化反応も進行
し、さらに約200℃の温度で20分間前後の加熱でポ
リイミド半硬化管状物を得ることができる(第1のイミ
ド転化工程)。この半硬化管状物の上記式(1)で定義
される厚み収縮率は50%以上になっており、大半の溶
媒は除去されている。この状態ではイミド転化は完結し
ていないが最外面は皮膜化が進行している。その後、こ
の半硬化管状物が金型に密着した状態のまま、これを挟
むように別の金型を挿入し段階的に380℃近くの温度
まで加熱しイミド転化反応を完結させる(第2のイミド
転化工程)。その後、冷却して金型と分離し、本発明の
ポリイミド管状物を得ることができる。
【0043】第1のイミド転化工程の温度や加熱時間は
ポリイミド原料によって異なるが、第1のイミド転化温
度が低かった場合や時間が短かった場合はイミド転化反
応が遅れているためポリイミド管状物としての十分な皮
膜化がなされていない。従って厚み収縮率も65%未満
であり同時にNMPも多く残存している。この状態で半
硬化管状物を挟むように別の金型を挿入し加熱してイミ
ド転化反応を完結しようとすると、狭接された管状物か
ら大量のNMPや縮合水の蒸気が発生してポリイミド皮
膜が分解し均一なフィルムにならず、最悪の場合はバラ
バラに粉砕された状態になる。
【0044】本発明の好ましい第1のイミド転化工程の
熱処理条件は、約120℃で60分間、その後200℃
で20分間加熱処理することであり、また、厚み収縮率
が65〜90%、好ましくは70〜85%になるまでイ
ミド転化を進行させることが好ましい。しかしながらポ
リイミド前駆体の種類、溶媒の種類、固形分濃度、ある
いは金型の材質、熱膨張率、2つの金型の組合わせなど
の条件によって温度条件は異なる。前記において厚み収
縮率のほかにポリイミドの半硬化状態を確認する方法と
して、イミド転化率を赤外吸収スペクトル分析(IR)
によって確認することができる。また簡単な方法ではポ
リイミド半硬化物中の溶媒の残留量の測定などでも確認
できる。
【0045】図1は、内金型の外周上でポリイミド前駆
体液成形物の第1のイミド転化工程を終了させた後、外
金型を挿入していく状態を示した一部切り欠き斜視図で
ある。図示したように、第1のイミド転化工程が終了し
て内金型11の外周面上にポリイミド半硬化管状物10
を得た後、ポリイミド半硬化管状物10を内金型11か
ら分離することなく、外金型12を矢印方向に挿入す
る。図1は、内金型11の外周面上にポリイミド前駆体
液を塗布した例であるが、外金型12の内周面上にポリ
イミド前駆体液を塗布した場合であれば、同様に第1の
イミド転化工程終了後、内金型を外金型の内側に挿入す
ればよい。
【0046】本発明の製造方法で使用する円筒状金型
は、熱膨張率の異なる金型2個(外金型と内金型)を1
組として使用する。ポリイミド前駆体液を外金型の内周
面又は内金型の外周面に塗布し、第1のイミド化工程を
終了させた後、もう一方の金型を半硬化管状物を挟むよ
うに挿入して第2のイミド化工程に移行する。第2のイ
ミド化工程では、第1のイミド化工程よりさらに高温で
熱処理される。内金型の熱膨張率が外金型の熱膨張率よ
り大きくなるように両金型材料を選択することにより、
第2のイミド化工程で、半硬化状管状物を2つの金型間
に挟接させながら、すなわち、両金型により半硬化状管
状物に半径方向に適度の圧縮荷重を付与しながらイミド
転化反応を完了させることができる。
【0047】例えば、アルミニウム製内金型(線膨張係
数23.6×10-6)と鉄製外金型(線膨張係数11.
4×10-6)を使用して本発明を実施することができ
る。内金型の外側に前駆体液を塗布し第1のイミド転化
を行なう場合には、アルミニウム製内金型の外表面に前
駆体液を塗布し、第1のイミド転化の熱処理条件で所定
の半硬化管状物が得られるまでイミド転化を進行させ
る。その後、アルミニウム製内金型の外側に鉄製外金型
を挿入し、イミド転化の完結温度まで加熱して第2のイ
ミド転化を行なう。この場合、アルミニウム製内金型の
外径と鉄製外金型の内径を、イミド転化を完結するため
の最高温度、それぞれの金型材料の線膨張係数、さらに
ポリイミド管状物の厚みなどから算出した所定のサイズ
に加工しておく。これにより、イミド転化の温度を段階
的に上げ加熱することによってアルミニウム製内金型と
鉄製外金型の間隙はその熱膨張率の差によって徐々に小
さくなって行き、ポリイミド半硬化管状物は両金型間に
挟接されたままイミド転化して行く。
【0048】また回転遠心成形方法などによって外金型
の内面に前駆体液を塗布しイミド転化を進行させる場合
には、鉄製外金型の内面に前駆体液を塗布し、第1のイ
ミド転化の熱処理条件で所定の半硬化管状物を得た後、
鉄製外金型の内側にアルミニウム製内金型を挿入し、イ
ミド転化の完結温度まで加熱して第2のイミド転化を行
なう。この場合も、鉄製外金型の内径とアルミニウム製
内金型の外径を所定のサイズに加工しておくことで、半
硬化状管状物は2つの金型に挟接された状態でイミド転
化を進行させることができる。
【0049】半硬化管状物を2つの金型の間隙で挟接さ
せるための、常温時の両金型のサイズは前述のように金
型の材質、金型の組合わせ、イミド転化温度、前駆体の
種類、管状物の厚みなどの要素から算出しあらかじめ設
定することができる。
【0050】円筒状金型は上記の例に限定されず一般的
な金属材料が用いられる。金型材料としてはアルミニウ
ム、ジュラルミン、鉄、ステンレス、ニッケルなどが有
用でありこれら金属材料の中で熱伝導率の異なる材料を
用いて本発明の金型に使用できる。金型の内面あるいは
外面など、ポリイミド前駆体液あるいはポリイミド管状
物が接する面はメッキ、研磨、ホーニング加工などによ
って平滑に仕上げたものを使用することができる。また
ポリイミド管状物の用途に応じポリイミド前駆体液ある
いはポリイミド管状物が接する金型表面を、あらかじめ
所定の規格に仕上げたものを使用することもができる。
このとき、ポリイミド管状物の使用目的に応じて、内金
型の外表面と外金型の内表面とをそれぞれ異なる状態に
仕上げておくこともできる。
【0051】金型表面を所定の粗さにあらかじめ加工し
た金型で成形し、その金型表面の形状を転写させた管状
物は、その管状物を回転駆動する場合のスリップを防止
するなどの効果を発揮させることができる。
【0052】また、鏡面形状を持つ2つの金型表面で挟
接して得られたポリイミド管状物の表面は、ポリイミド
中に微粒子状フィラーを混合したものであっても、その
表面は極めて平滑で優れた表面粗度を有する。
【0053】また金型のポリイミド前駆体液が接する部
分は離型性を良くするためにシリコン、フッ素、あるい
はセラミックなどの離型剤を塗布することもできる。
【0054】本発明の管状物は導電性材料を含有させる
ことで電気的特性を改良することができる。使用できる
導電性物質としては、例えばファーネスブラック、アセ
チレンブラックなどのカーボンブラックや、金属粉末、
チタン酸カリウム、導電性金属酸化物などの導電性ある
いは半導電性を有する物質であれば良い。またカーボン
ブラックと導電性金属酸化物の混合物を用いることもで
きる。含有させる導電性物質の種類と含有量はポリイミ
ド管状物の用途に応じて適宜選択して付加することがで
きる。
【0055】本発明の方法で製造されるポリイミド管状
物の特徴について述べる。
【0056】前述のようにポリイミド前駆体液は熱硬化
性樹脂であり金型表面に塗布し加熱することによってイ
ミド転化を完結させ強靭で平滑な管状物を得ることがで
きる。しかし加熱によるイミド転化の過程において溶媒
の蒸発や縮合水の発生及び気化などの現象を伴ない、こ
れらの溶媒や縮合水の気化気体が平滑で真円度の高い管
状物を製造する上で大きな問題になっていた。
【0057】例えば金型の表面にポリイミド前駆体液を
所定の厚みに液状成形しオーブン中で加熱しイミド転化
反応を進めていく場合、金型表面に成形されたポリイミ
ド前駆体の最外表面から溶媒が蒸発していき皮膜化が進
んでいく。従って、最外層がある程度皮膜化した後は、
金型近傍のポリイミド前駆体液から発生する溶媒や縮合
水の蒸発が難しくなる。この状態をそのまま継続してイ
ミド転化を進行させると金型とポリイミド半硬化管状物
との境界面に溶媒などのガスが閉じ込められ、その部分
で金型とフイルムが局部的に分離しガス溜りができフィ
ルム表面の平滑性を阻害する。この現象を回避する方法
として、従来は第1のイミド転化処理を行なった後、金
型から半硬化管状物を一度脱型分離し、外径の小さい金
型に再度挿入し、ポリイミド管状物の内面側のイミド転
化を進行させ、内面側の縮合水の蒸気などを除去する必
要があった。
【0058】本発明によれば、金型表面上で所定状態ま
で第1のイミド転化処理を行なったポリイミド半硬化管
状物を、当該金型に密着させたままの状態で、これを挟
接するように別の金型を挿入しイミド転化を完結させ
る。半硬化管状物の両面を両金型で圧縮しながら第2の
イミド転化を進行させるため、ポリイミドフイルムのフ
クレや歪みは発生せず、当初から金型に接していた側か
ら発生する溶媒や縮合水は両金型との境界部を通って放
出される。
【0059】本発明の方法の利点は下記の通りである。
【0060】(1)表面が平滑で真円度の高いポリイミ
ド管状物が得られる。
【0061】(2)第1のイミド転化の完了後、脱型し
二次金型に挿入する工程が省ける。
【0062】(3)ポリイミド管状物が挟接する金型の
それぞれの接触面を鏡面加工等することによって管状物
の内外面を所定の形状に仕上げることができる。
【0063】(4)鏡面加工された2つの金型表面で挟
接して得られたポリイミド管状物の表面は、ポリイミド
中に微粒子状フィラーを混合したものであっても、優れ
た表面粗度を有する。
【0064】(5)管状物が接する金型表面の仕上げ形
状を得られる管状物の表面に転写させることができるの
で、電気的特性などを変化させるために添加剤を含有さ
せる場合であっても、これとは別個独立して管状物の表
面を容易に制御することができる。
【0065】
【物性の測定方法】本発明における物性値の測定方法は
以下の通りであり。
【0066】(1)表面平滑度 図2に表面平滑度の測定装置の概略を示す。被測定物で
あるポリイミド管状物20を2本のローラ21,22を
用いて張力Fを付与しながら搬送する。走行中のポリイ
ミド管状物20の振動を防止するために2本のローラ間
に、ポリイミド管状物20の内面と接するように平板状
の摺動板23を設置し、ポリイミド管状物20がその上
を摺動するようにする。摺動板23に対向する所定位置
に非接触変位測定装置25を設置する。管状物20を走
行させながら、非接触変位測定装置25を幅方向に走査
して、管状物20の上面の変位量を求め、最大変位量を
表面平滑度とする。
【0067】非接触変位測定装置25としてはレーザー
光を用いた変位測定装置(例えば、(株)キーエンス社
製レーザ変位計LC−2440)を用いることができ
る。
【0068】また、張力Fの値は走行中にポリイミド管
状物にたるみや振動が生じない程度に付与すればよい。
【0069】(2)表面粗度Rz JIS−B0601に基づいて測定した。
【0070】(3)厚み、厚みバラツキ ポリイミド管状物の厚みは、ダイヤルゲージ(テクロッ
ク(株)製US−22B)を用い管状物の円周方向及び
幅方向で等間隔に測定し、その平均値を厚みの測定値と
した。
【0071】また、円筒状金型の内面上あるいは外面上
のポリイミド管状物(ポリイミド半硬化管状物)の厚み
は、渦電流式膜厚計((株)SANKO EDY−I)
を用いて、円周方向及び幅方向で等間隔に測定し、その
平均値を厚みの測定値とした。
【0072】厚みバラツキは、上記平均厚みに対する、
各測定点での測定値の最大値と最小値の差の比率(%)
より求めた。
【0073】
【実施例】(実施例1)外径150mm、長さ500m
mで20℃における線膨張係数が23.6×10-6のア
ルミニウム製内金型と、内径150.7mm、長さ50
0mmで線膨張係数が11.4×10-6の鉄製外金型を
用意した。アルミニウム製内金型の外面及び鉄製外金型
の内面を表面粗さRzが1μmに研磨加工を行なった。
【0074】まず、アルミニウム製金型の外表面に15
00ポイズのポリイミド前駆体液((株)IST社製
RC5063PyreMLワニス)を塗布したのち内径
151.2mmのリング状ダイスをアルミニウム製金型
の上部から挿入し走行させアルミニウム製金型の表面に
600μmの厚みのポリイミド前駆体液を成形した。そ
の後、第1のイミド転化処理として、120℃オーブン
に入れ60分間乾燥後、200℃の温度まで40分間で
昇温させ同温度で20分間保持した。オーブンから取出
し常温まで冷却したのち、ポリイミド半硬化管状物がア
ルミニウム製金型に装着されたままの状態で、その外側
に鉄製金型を挿入し、そのままオーブンに入れ200℃
で10分、320℃で40分、400℃で20分間加熱
し、イミド転化を完成させたのちオーブンから取出し冷
却した。その後鉄製金型を取り除き、さらにポリイミド
管状物をアルミニウム製金型から分離して、内径150
mm、長さ(幅)470mmのシームレスのポリイミド
管状物を得た。
【0075】この管状物を400mmの幅に両端部を切
断した。厚みは70μmで、厚みバラツキは±3%で均
一な膜厚特性を有しており、同時に内外面の表面粗度R
zは1.1μmであった。その後、変位測定装置として
(株)キーエンス社製レーザー変位計LC2440を用
いた図2の測定装置の二軸のローラーに管状物を装着し
て3kg/400mmのテンションをかけながら回転さ
せて、管状物の回転方向及び幅方向のうねりや膨れ部分
の最大値と最小値を測定しその差の値を平滑度として求
めた結果、平滑度は0.2mmであり、管状物の表面は
平滑で、うねりや膨れなどの問題になる欠陥はなかっ
た。また第1のイミド転化が完了した半硬化管状物の厚
み収縮率は82%であった。
【0076】(実施例2)内径119.25mm、長さ
500mmで線膨張係数が17.3×10-6のステンレ
ス製外金型と、外径119.mm、長さ480mmで線
膨張係数が23.6×10-6のアルミニウム製内金型を
用意した。ステンレス製金型の内面をホーニング加工し
鏡面状態に仕上げ、アルミ金型の外表面は表面粗さRz
3μmの梨地処理加工を行なった。
【0077】ステンレス製金型の内表面に220ポイズ
のポリイミド前駆体液((株)IST社製 RC505
7PyreMLワニス)を厚みが600μmになるよう
に投入し、塗布し、回転遠心成形装置に装着した。
【0078】図3に使用した回転遠心成形装置の概略構
成を示す。図3において、30は内金型、31は内金型
30を支持し回転させる回転軸、32は回転軸31を介
して内金型30を回転させる駆動モータである。33は
加熱媒体を通すための通路であり、加熱媒体は加熱媒体
供給口33aから供給され、加熱媒体排出口33bから
排出される。34は断熱材、35は開閉蓋である。
【0079】回転遠心成形装置にて常温で徐々に回転数
を上げて行き560RPMの回転数で常温から50分間
で120℃まで昇温させ、さらに30分間で200℃ま
で昇温し同温度で10分間放置し、ステンレス金型の内
側に半硬化管状物の成形層を得た。その後、常温まで冷
却し回転遠心成形装置から金型を取り外した。半硬化管
状物がステンレス金型の内周面に装着されたままの状態
でその内側にアルミニウム製金型を挿入し、そのままオ
ーブンにいれ200℃で10分、300℃で40分、3
60℃で20分間加熱し、イミド転化を完結させたのち
オーブンから取出し冷却した。アルミニウム製金型を取
り除き、ポリイミド管状物をステンレス金型から分離し
て、内径119mm、長さ450mmのシームレスのポ
リイミド管状物を得た。
【0080】この管状物の厚みは60μmで、厚みバラ
ツキは±4%で均一な膜厚特性を有していた。ポリイミ
ド管状物の外側の表面粗度Rzは0.1μmであり、内
側の表面粗度Rzは3.4μmであり、ともに対接した
金型面の粗度形状がそのまま転写されていた。この管状
物の両端部を切断し幅400mmの管状物とし、実施例
1と同じようにレーザー変位計を用い平滑性の評価を行
なった結果、平滑度は0.9mmでありフィルム表面の
うねりや膨れなどの現象は実用に耐えるものであった。
また第1のイミド転化処理後のポリイミド半硬化管状物
の厚み収縮率は85%であった。最終的に得られたポリ
イミド管状物を二軸ローラーに装着し回転させた結果、
駆動ローラと管状物内周面とのスリップが少なく円滑な
駆動ベルトとして使用できた。
【0081】(比較例1)実施例1と同一の金型を用い
第1のイミド転化処理までは実施例1と同条件で処理を
行なった。得られた半硬化管状物を二次イミド転化処理
としてポリイミド管状物がアルミニウム製内金型に装着
されたままオーブンにいれ200℃で10分、320℃
で40分、400℃で20分間加熱し、イミド転化を完
結させ、オーブンから取出し冷却した。冷却したポリイ
ミド管状物を金型から分離して、内径150mm、長さ
470mmのシームレスの管状物を得た。
【0082】この管状物の厚みは80μmで、厚みバラ
ツキは±8%でほぼ均一な膜厚み特性を有していた。こ
の管状物を幅400mmになるよう両端部を切断し、二
軸にローラーに装着し回転させながら実施例1と同じレ
ーザー変位計で管状物表面の平滑性を測定した結果、平
滑度は2.8mmでありフィルムの表面に局部的なうね
りや膨れあるいは凹凸などの現象が見られた。
【0083】(比較例2)実施例2と同一条件で第1の
イミド転化を完了させ冷却したのちステンレス製外金型
からポリイミド半硬化管状物を取出した。その後、外径
が118mmのアルミニウム製金型の外周面に半硬化管
状物を装着してオーブンにいれ、第2のイミド転化処理
として200℃で10分、320℃で40分、400℃
で20分間加熱しイミド転化を完結させ、オーブンから
取出し冷却した。冷却された金型から分離し内径118
mm長さ470mmのシームレスのポリイミド管状物を
得た。
【0084】この管状物の厚みは80μmで、厚みバラ
ツキは±8%であったが実施例1と同様にして平滑度を
評価した結果、平滑度は2.2mmでありフィルムの表
面は部分的にうねりや膨れが検出された。
【0085】(比較例3)実施例1と同一条件にてアル
ミニウム製金型の外表面に600μmの厚みのポリイミ
ド前駆体液を成形した。その後、第1のイミド転化処理
として90℃のオーブンで60分間乾燥後オーブンから
取出し常温まで冷却した。その後、半硬化管状物がアル
ミニウム製金型に装着されたままの状態で、その外側に
実施例1と同じ鉄製金型を挿入し、そのままオーブンに
いれ、90℃から200℃まで60分で昇温し、さらに
200℃から380℃まで60分間で昇温させ380℃
の温度で20分間加熱しイミド転化を完結させ、オーブ
ンから取出し冷却した。冷却された鉄製金型を外した結
果、アルミニウム製金型表面のポリイミド管状物には細
かなクラックが入っており触るとバラバラに分解した。
この管状物の第1のイミド転化処理が完了したときの厚
み収縮率は60%であり、十分に第1のイミド転化処理
を行なわずに外金型を装着して第2のイミド転化処理に
移行したため、溶媒や縮合水の残留物が多い状態で金型
の間で挟接され加熱され結果、ポリイミド管状物が分解
した。
【0086】(実施例3)内径300.9mm、長さ5
00mmで20℃における線膨張係数が11.4×10
-6の鉄製外金型と、外径299.5mm、長さ500m
mで線膨張係数が23.6×10-6のアルミニウム製内
金型を用意した。アルミニウム製金型の外面及び鉄製金
型の内面を表面粗さRzが0.5μmにホーニング及び
研磨加工により平滑に仕上げた。
【0087】ポリイミド前駆体液((株)IST社製
RC5063PyreMLワニス)をNMPで希釈し、
ポリイミド固形分濃度が18〜20%のポリイミド前駆
体液を得た。これにポリイミド固形分に対し15wt%
となるようにカーボンブラック(三菱化成(株)製カー
ボンブラックMA100)を攪拌機で混合し、ビーズミ
ルを用い直径1mmのスチールビーズとともに8m/s
ecのスピードで150分間回転させカーボンブラック
のスラリー状原液(A液)を得た。その後、前記カーボ
ンブラック配合の原液(A液)にポリイミド前駆体液
を、全体のカーボン濃度がポリイミド固形分に対して1
2wt%になるよう混合し、カーボンブラックが混合さ
れたポリイミド前駆体液(B液)を用意した。このポリイ
ミド前駆体液(B液)を鉄製金型の内表面に厚みが50
0μmになるように投入し、塗布し、実施例2で用いた
回転遠心成形装置に取り付け、常温で徐々に回転数を上
げて行き450RPMの回転数で常温から70分間で1
20℃まで昇温させ、さらに100分間で200℃まで
昇温し同温度で30分間放置し、鉄製金型の内側に半硬
化管状物の成形層を得た。
【0088】その後、常温まで冷却し回転遠心成形装置
から金型を取り外し半硬化管状物が鉄製金型の内面に装
着されたままの状態でその内側にアルミニウム製金型を
挿入し、そのままオーブンにいれ200℃で10分、3
20℃で120分、400℃で30分間加熱し、イミド
転化を完結させたのちオーブンから取出し冷却した。そ
の後アルミニウム製金型、及びポリイミド管状物を鉄製
金型から分離し、内径300mm、長さ400mmのポ
リイミド管状物を得た。
【0089】この管状物の両端部を切断し、幅320m
mの管状物で周方向及び幅方向の厚みを均等に24点測
定した結果、平均厚さは75μmで厚みバラツキは±
2.5%で均一な膜厚みを有していた。また、内外面の
表面粗度Rzは0.6μmであった。その後、実施例1
と同じ方法で二軸のローラーに装着して2.4kg/3
20mmのテンションをかけ、回転させながら管状物の
回転方向及び幅方向のうねりや膨れ部分の最大値と最小
値を測定しその差の値を平滑度として求めた結果、0.
3mmでうねりや膨れなどの現象は皆無と言えるもので
あった。また電気抵抗測定器(アドバンテスト社 R8
340A)でこの管状物の体積抵抗値を測定した結果、
8.2×1010Ωcmであった。この管状物をレーザー
ビームカラープリンターに組み込み中間転写ベルトとし
て使用した結果、電気抵抗値が安定しているためトナー
画像転写時のトナーの飛散もなく、なお且つ平滑な表面
のためトナー画像を良好に転写でき、鮮明なカラー画像
を得ることができた。この中間転写ベルトの用途に対し
て本実施例のポリイミド管状物は寸法安定性、厚み精
度、平滑度などの外観特性に加え、引張り強度、伸びな
どの機械的特性、及び前述の安定した電気特性、耐久性
などに優れ、複写機やプリンターの中間転写ベルトとし
て最適の特性を有するものであった。
【0090】
【発明の効果】本発明では、ポリイミド前駆体を熱膨張
率の異なる二つの金型間に挟接させイミド転化を完結さ
せることにより、歪みやうねりのない平滑な表面を有す
るシームレス管状物を得ることができる。本発明の管状
物は電子写真機器の中間転写ベルト、写真画像の熱転写
ベルト、あるいは熱ラミネートベルトなどに使用するこ
とができる。また精密部品の搬送ベルト、紙幣のしわの
ばし装置の加圧加熱ベルトなど、ポリイミド樹脂の耐熱
性、寸法安定性、機械特性を生かした用途にも使用する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のポリイミド管状物の製造方法におい
て、第1の1のイミド転化工程終了後、外金型を挿入し
ていく状態を示した一部切り欠き斜視図
【図2】 表面平滑度の測定装置の概略斜視図
【図3】 本発明の実施例において使用した回転遠心成
形装置の概略断面図
【符号の説明】
10 ポリイミド半硬化管状物 11 内金型 12 外金型 20 ポリイミド管状物(被測定物) 21,22 ローラ 23 摺動板 25 非接触変位測定装置 30 内金型 31 回転軸 32 駆動モータ 33 加熱媒体通路 33a 加熱媒体供給口 33b 加熱媒体排出口 34 断熱材 35 開閉蓋
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 谷庸 治 滋賀県大津市一里山5丁目13番13号 株式 会社アイ.エス.テイ内 (72)発明者 松村 将文 滋賀県大津市一里山5丁目13番13号 株式 会社アイ.エス.テイ内 Fターム(参考) 4F205 AA40 AC05 AE09 AG08 AG16 AR12 AR13 GA07 GB01 GC01 GC04 GE01 GE06 GF01 GF23 GF24 GN13 GN17 GN28 GN29

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面粗度Rzが3μm以下、表面平滑度
    が1.5mm以下であることを特徴とするポリイミド管
    状物。
  2. 【請求項2】 厚みが30〜500μmである請求項1
    に記載のポリイミド管状物。
  3. 【請求項3】 体積抵抗値が107〜1013Ωcmであ
    る請求項1に記載のポリイミド管状物。
  4. 【請求項4】 内外面に金型の表面形状が転写されてい
    る請求項1に記載のポリイミド管状物。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載のポリイ
    ミド管状物を用いてなる転写ベルト。
  6. 【請求項6】 熱膨張率が異なる円筒状外金型と円筒状
    内金型との間で挟接せしめながらポリイミド前駆体のイ
    ミド転化を進行させることを特徴とするポリイミド管状
    物の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記内金型の熱膨張率が前記外金型の熱
    膨張率より大きいことを特徴とする請求項6に記載のポ
    リイミド管状物の製造方法。
  8. 【請求項8】 円筒状内金型の外面にポリイミド前駆体
    液を塗布し、乾燥して、ポリイミド半硬化管状物を得る
    第1のイミド転化工程と、 前記円筒状内金型の外側に円筒状外金型を挿入し、加熱
    して、前記ポリイミド半硬化管状物を前記外金型と前記
    内金型との間に狭接せしめながらイミド転化を進行させ
    る第2のイミド転化工程とを有する請求項6に記載のポ
    リイミド管状物の製造方法。
  9. 【請求項9】 円筒状外金型の内面にポリイミド前駆体
    液を塗布し、乾燥して、ポリイミド半硬化管状物を得る
    第1のイミド転化工程と、 前記円筒状外金型の内側に円筒状内金型を挿入し、加熱
    して、前記ポリイミド半硬化管状物を前記外金型と前記
    内金型との間に狭接せしめながらイミド転化を進行させ
    る第2のイミド転化工程とを有する請求項6に記載のポ
    リイミド管状物の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記第1のイミド転化工程終了時の前
    記ポリイミド半硬化管状物の下記式で定義される厚み収
    縮率Xが65〜90%である請求項8又は9に記載のポ
    リイミド管状物の製造方法。 【数1】 X={(V0−Va)/V0}×100 ・・・(1) ここで、 X:ポリイミド半硬化管状物の厚み収縮率 V0:ポリイミド前駆体液の当初の塗布厚さ Va:ポリイミド半硬化管状物の厚さ
JP23028899A 1999-08-17 1999-08-17 ポリイミド管状物及びその製造方法 Pending JP2001047452A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23028899A JP2001047452A (ja) 1999-08-17 1999-08-17 ポリイミド管状物及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23028899A JP2001047452A (ja) 1999-08-17 1999-08-17 ポリイミド管状物及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001047452A true JP2001047452A (ja) 2001-02-20

Family

ID=16905477

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP23028899A Pending JP2001047452A (ja) 1999-08-17 1999-08-17 ポリイミド管状物及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001047452A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002292655A (ja) * 2001-03-28 2002-10-09 Sumitomo Rubber Ind Ltd シリコーンゴムベルトの製造方法
JP2008238597A (ja) * 2007-03-27 2008-10-09 Ricoh Co Ltd ポリイミド樹脂シームレスベルトの製造方法、ポリイミド樹脂シームレスベルト及び画像形成装置
JP2011199116A (ja) * 2010-03-23 2011-10-06 Panasonic Corp ボンド磁石の製造方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002292655A (ja) * 2001-03-28 2002-10-09 Sumitomo Rubber Ind Ltd シリコーンゴムベルトの製造方法
JP4757394B2 (ja) * 2001-03-28 2011-08-24 住友ゴム工業株式会社 シリコーンゴムベルトの製造方法
JP2008238597A (ja) * 2007-03-27 2008-10-09 Ricoh Co Ltd ポリイミド樹脂シームレスベルトの製造方法、ポリイミド樹脂シームレスベルト及び画像形成装置
JP2011199116A (ja) * 2010-03-23 2011-10-06 Panasonic Corp ボンド磁石の製造方法
CN102237194A (zh) * 2010-03-23 2011-11-09 松下电器产业株式会社 粘合磁铁的制造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR970002937B1 (ko) 폴리이미드복합관상물과 그 제조방법
US6001440A (en) Heat-conductive polyimide films, process for their preparation and their use
JP4014153B2 (ja) 誘導加熱を用いたシームレスベルトの製造方法
JP4551576B2 (ja) シームレスベルトの製造方法
JP3305467B2 (ja) シームレス樹脂フィルム及びその製造方法
JP2001047452A (ja) ポリイミド管状物及びその製造方法
JPH08176319A (ja) 円筒状ポリイミドフィルム及びその製造方法
JP4399656B2 (ja) 耐久性ポリイミド系フイルム、その製造方法及びその使用
JP3352134B2 (ja) 定着用ベルト
JP6936732B2 (ja) 画像形成装置用転写部材
JP2004291410A (ja) 熱硬化性樹脂成型体の製造方法およびその方法によって作製された熱硬化性樹脂成型体
JP2001215821A (ja) 定着ベルト及びその製造方法
JP5064615B2 (ja) 半導電性シームレスベルトの製造方法
JP2003177630A (ja) 転写定着ベルト
JP4305708B2 (ja) 高精度管状体の製造方法
JP6950283B2 (ja) ポリイミドシームレスベルトの製造方法
JP2003270967A (ja) 転写定着ベルト
JPH0243046A (ja) 複合管状物およびその製法
JP2002082550A (ja) 電磁誘導発熱用定着ベルト及び転写定着ベルト
JP3979865B2 (ja) 高精度管状体の製造方法
JP2004062169A (ja) シームレスベルト及びその製造方法
JP2001131410A (ja) 半導電性ポリアミド酸組成物及びその使用
JP2005014443A (ja) シームレス管状物の製造方法、および画像形成装置
JP4486106B2 (ja) 高精度管状体の製造方法
JPH07178840A (ja) 無端ベルトの精度矯正方法及び装置