JP3979865B2 - 高精度管状体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒状型と円形断面内型とを使用して高精度の表面を有する、つまり表面うねり精度が優れた管状体を形成する管状体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリイミド樹脂材料は、その高い機械的強度、耐熱性等の理由から宇宙航空分野から電気電子材料まで幅広い分野において実用化されている。その中でもポリイミド樹脂製シームレス状管状体は、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の電子写真画像形成装置の定着ベルト、転写ベルト、中間転写ベルト、搬送ベルト、感光体ベルト等の機能性ベルト及びこれらの基材として使用されている。これらのベルトは未定着トナー像を加圧加熱しながら転写体を搬送したり、現像部で現像した像をトナー像として保持しつつ転写体に転写する等、ベルトとして複数の機能を複合化させた形で機能を果たしているため、その熱伝導性、導電性、半導電性といった基本機能だけでなく、かような機能にも影響を与える表面精度、膜厚精度等の寸法精度に対する要求が強くなっている。
【0003】
従来、シームレス状でないポリイミドフィルムを円筒状にし加熱溶融等の手法により、接合ベルトとして前記ベルト及びその基材として用いることが知られている(特開平8−72164号公報、特開平10−698号公報他)。しかしながら、接合ベルトを電子写真画像形成装置用部材として用いる場合では、接合部の凹凸が画像に影響を与えてしまうため、前記凹凸部を検知する機構を設ける必要があり、この機構が画像形成装置のコスト高になる原因となっている。また、接合部の強度が弱いために、近年の画像形成装置の高速化に伴う強度及び耐久性の向上という要求に答えられなくなっている。
【0004】
これを解決する方法として接合によらないポリイミド製シームレス状管状体の製造方法が提案されている。その一例としては、円筒状金型をポリアミド酸溶液中に浸漬塗布し、次いで円筒状金型に対し所定の内径を有する外金型を自重落下させて塗布した後、加熱硬化させる管状体の製造方法が知られている(特開平7−186162号公報)。一方、円筒状金型内面に液状の耐熱樹脂を塗布する方法において、円筒状金型を回転させながらディスペンサー状の供給部を回転軸方向に移動することにより、塗布層を形成し、次いで硬化させて管状体を製造する方法が知られている(特開平3−34817号公報、特開平9−85756号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、浸漬塗布する方法(特開平7−186162号公報)、及び円筒状型の内面に移動可能な吐出口から筋状に飛翔させ塗布する方法(特開平3−34817号公報)では、塗布ムラに起因する寸法精度の悪化、基材表面のうねりが発生するという問題があった。
【0006】
なお、特開2002−18872号公報にも、円筒状金型内面に液状の耐熱樹脂をスパイラル状に塗布して塗布層を形成した後、これを硬化させて高精度の管状体を製造する方法が知られているが、管状体の表面うねりについては更に改善する余地があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、表面うねりや塗布の方法に由来する凹凸が生じにくい高精度の管状、つまり表面うねり精度が優れた管状体の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、ポリアミド酸溶液の塗布方法やその後処理工程について鋭意研究したところ、塗布・固化後の円筒状被膜を特定表面を有する円形断面内型に挿入して、加熱によりイミド転化させることで表面うねりや塗布の方法に由来する凹凸が生じにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の管状体の製造方法は、円筒状型を周方向に回転させながらディスペンサー供給部に対して回転軸方向に相対移動させることにより、型内面にポリアミド酸溶液をディスペンサーにより塗布し、その塗膜面の凹凸を遠心力によりレベリングし、加熱又は抽出により硬化または固化した円筒状被膜を得た後、円筒状金型から円筒状被膜を離型し、離型されたこの円筒状被膜を表面粗さRaの平均値0.5μm〜3μm、表面粗さRaの最大値と最小値の差が0.5μm以内の円形断面内型に挿入して、加熱によりイミド転化させ、表面うねり精度が0.7mm以下の管状体を形成することを特徴とする。本発明において、表面粗さRaなどの物性は、実施例に記載の測定方法により測定される値である。
【0010】
上記において、前記円形断面内型に挿入した円筒状被膜のイミド転化前後の収縮率が、円筒状被膜の長手方向において4.7%以下であることが好ましい。
【0011】
また、前記円形断面内型に挿入する円筒状被膜の切断除去される部分又は円形断面内型に、全面積の10ppm以上の面積を有する貫通孔を設けて、前記円筒状被膜をイミド転化することが好ましい。
【0012】
[作用効果]
本発明の製造方法によると、塗布・固化後の円筒状被膜を特定表面を有する円形断面内型に挿入して、加熱によりイミド転化させるため、実施例の結果が示すように、得られる管状体の表面うねりや塗布の方法に由来する凹凸が生じにくくすることができる。その理由の詳細は明らかでないが、上記の塗布方法を行う場合、それに由来する溝やうねりが発生し易いところ、上記のごとき特定表面を有する円形断面内型に挿入して、加熱によりイミド転化させることで、円形断面内型が円筒状被膜の収縮を好適に拘束してうねりの発生を抑制するためと推測される。従って、上記のような管状体を電子写真用画像形成装置の定着ベルト、転写ベルト、中間転写ベルト、搬送ベルト、感光体ベルト等の機能性ベルト及びこれ等の基材として使用した場合、紙シワ、画像ムラがなく、優れた定着性、転写性、搬送性等を得ることができる。
【0013】
イミド転化前後の収縮率が円筒状被膜の長手方向において4.7%以下である場合、円筒状被膜の収縮量が小さくなるため、より確実にうねりの発生を抑制することができる。
【0014】
前記円形断面内型に挿入する円筒状被膜の切断除去される部分又は円形断面内型に、全面積の10ppm以上の面積を有する貫通孔を設けて、前記円筒状被膜をイミド転化する場合、イミド転化時に貫通孔を介して揮発成分などが放出され易くなるため、揮発成分の不均一による収縮の不均一化によるうねりの発生をより好適に防止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の管状体の製造方法を説明するための模式図であり、図2は、塗布部を説明するための模式図である。
【0016】
本発明の管状体の製造方法は、図1に示すように、円筒状型2を周方向(矢印A1)に回転させながらディスペンサー供給部3に対して回転軸方向(矢印A2)に相対移動させることにより、型内面にポリアミド酸溶液1をディスペンサーにより塗布する工程を有する。本実施形態では、ディスペンサーの吐出口3aを円筒状型2の内面から距離を隔てて相対的に固定状態に配置した状態で、円筒状型2を回転軸方向(矢印A2)に移動させる(ディスペンサー供給部3を回転軸方向に移動させてもよい)ことにより、ポリアミド酸溶液1をスパイラル状に塗布する例を示す。
【0017】
ポリアミド酸溶液としては、溶媒中にポリアミド酸が溶解していればよく、一部イミド化したものや、共重合成分、その他の成分、充填材等が含まれていてもよい。
【0018】
ポリアミド酸溶液は、公知のものを使用することができ、酸二無水物とジアミンを溶媒中で重合反応させてなるポリアミド酸溶液が使用される。芳香族ポリイミド樹脂の前駆体となるポリアミド酸溶液を用いると、得られる管状体の機械的強度や耐熱性が好適なものが得られる。
【0019】
好適な酸二無水物の例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。一方、ジアミンの例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン等が挙げられる。これらの酸無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては適宜なものを用いうるが溶解性等の点から極性溶媒が好ましく用いられ、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が考えられる。これらは単独で用いても構わないし、併せて用いても差し支えない。さらに、上記有機極性溶媒にクレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ベンゾニトリル、ジオキサン、ブチロラクトン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等を単独もしくは併せて混合することもできる。なお水の存在によってポリアミド酸が加水分解して低分子量化するので、ポリアミド酸の合成、保存は無水環境下で行うのが好ましい。上記の酸無水物(a)とジアミン(b)とを有機極性溶媒中で反応させることによりポリアミド酸溶液が得られる。その際のモノマー濃度(溶媒中における(a)+(b)の濃度)は、種々の条件に応じて設定されるが、5〜30重量%が好ましい。また、反応温度は80℃以下に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜50℃であり、反応時間は0.5〜10時間が好ましい。本発明では管状体に熱伝導性、導電性、帯電防止性、半導電性、耐磨耗性等の所望の機能を付与するために、適宜無機粒子、無機酸化物、金属酸化物、界面活性剤等の充填材を混入することが可能である。充填材の混入量は、種々の条件に応じて設定されるが、1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%である。上記充填量より少ないと目的とする特性を発揮させることが難しく、一方多いと脆性のため機械的強度が管状体として不足するので好ましくない。このようにしてポリアミド酸を得ることができ、その反応の進行に伴い溶液粘度が増大する。この際のB型粘度計における粘度を調整することができ、また前記モノマー濃度による調整も可能である。
【0020】
塗布するポリアミド酸溶液の粘度は10〜10000ポイズ、好ましくは50〜5000ポイズ(B型粘度計,23℃)程度である。粘度が10ポイズ以下であるといわゆるタレや塗布層のハジキが生じ易くなり、塗膜厚の均一性が得られ難くなるため好ましくない。一方、10000ポイズ以上であると、吐出の際に高い圧力をかける必要があり、またレベリングの際、遠心効果が出にくいので好ましくない。
【0021】
スパイラル状に塗布された塗布層は、図2に示すように、隣接部分で一定のラッピング部分を持たせるように塗布すると、塗膜面が均一になりやすいため好ましい。ラップ量7は、±2mmが好ましい。ここでいうラップ量7とは、既に塗布されたポリアミド酸溶液の塗膜面4と吐出口3aから塗布されるポリアミド酸溶液の重なりを示したものであり、本明細書中においてはラップ量が0の時ディスペンサーの吐出口3aと塗膜面4の端が一致している場合を示し、プラス値の場合は重なり度合いを長さで示したもの、マイナスの場合は離れ度合いを長さで示したものを指す。上記の最適なラップ量7は溶液の粘度や金型の回転数、塗布幅等で変わるため、適宜実験的に確認するのが好ましい。ラップ量7がマイナスすぎると膜厚の薄い部分が発生し塗膜面の凹凸が発生し、ラップ量7が大きすぎるとレベリングに時間がかかり、また膜厚ムラの原因となる傾向がある。
【0022】
ディスペンサーの吐出口3aの開口形状は、種々の条件により適宜決定されるが、回転軸方向に長辺をもつ長方形であると好ましい。開口形状における短辺と長辺は、短辺が0.5〜5mm、長辺が5〜100mm、好ましくは10〜50mmであるが、種々の条件により適宜決定される。
【0023】
本発明では、吐出口3aと円筒状型2の内面との距離(ギャップ量)が塗膜面の均一性に大きく影響を与えることが実験的に確認されている。ここでいうギャップ量は、図2で示すように円筒状型2とディスペンサー吐出口3aの距離6を示す。適切なギャップ量は0.01〜5.0mm、好ましくは0. 1〜3.0mmである。ラップ量との兼ね合いもあるが、ギャップ量が小さすぎると塗膜面と吐出口が接触するため塗膜面に筋が残ってしまい、ギャップ量が大きすぎると塗布時に溶液に乱れが生じて厚み精度等の寸法精度を悪化させる傾向がある。
【0024】
ディスペンサー吐出口3aは複数あると、迅速に円筒状型内面全体を塗布することが可能となり、製造の迅速化がはかれるため好ましい。また、材質の異なる層を積層させる場合、従来は低粘度ポリアミド酸溶液を塗布後、高速回転で平滑化、乾燥固化して、再度低粘度ポリアミド酸溶液を塗布していた。しかし、本発明の方法によれば、ポリアミド酸溶液を塗布後、低速で回転しレベリングを行いながらその上にポリアミド酸溶液を塗布できるので、工程的にも少ない工程で安く高精度の積層管状体を得ることが可能となる。
【0025】
スパイラル状に塗布する際の円筒状型2の駆動は、矢印A1方向の回転と矢印A2方向の移動とを同期させる駆動方法で行えばよく、例えば円筒状型2を片持ちの回転軸で支持しつつ、その回転軸を一定速度で回転させながら、円筒状型2を支持・回転機構と共に一定速度で移動させる方式が採用できる。また、円筒状型2を片持ち支持する軸を雄ねじ加工し、雌ねじ部を形成した支持台で前記軸を螺合支持した状態で、円筒状型2を外周部からローラで支持しつつ、周方向又は螺旋方向に回転力を与える方式を採用することも可能である。何れの駆動方式を採用しても、ディスペンサーの吐出口3aを固定しているため、両者を駆動する場合と比較して、相対的な駆動精度も向上するので、精度良く吐出口3aと型内面との位置関係を高精度に維持することができる。
【0026】
ディスペンサーやその供給部は、従来公知のものが使用できるが、供給部を駆動させずに塗布する場合、その構成部材の制約が少なく、変位や振動が生じにくい材料、構造を採用することができる。吐出口3aからのポリアミド酸溶液の供給量は、塗布膜の厚みが50〜1000μmとなる程度が好ましい。塗布膜の厚みは、円筒状型2の駆動速度によっても制御する事ができる。
【0027】
本発明では、スパイラル状に塗布された塗膜面4の凹凸を遠心力によりレベリングする。このレベリングでは円筒状型2の回転遠心力よって、塗布層のラッピングによる凸部5(又は塗布帯の隙間部分)の膜厚を均一化することができる。
【0028】
従って、回転遠心の好ましい条件は、溶液の粘度やギャップ量によって異なるが、100〜10000rpmで0.1〜60分間程度行うのが好ましく、500〜5000rpmで1〜30分間程度行うのがより好ましい。なお、回転遠心は、加熱又は抽出による溶媒除去等と同時に行うことも可能である。
【0029】
本発明では、レベリング後の塗膜を加熱又は抽出により硬化または固化して円筒状被膜を得る。加熱や抽出は従来公知の方法により行うことができ、円筒状型を低速で回転させながら行うのが好ましい。また、溶媒除去と同時に脱水閉環の除去等を行ってもよく、溶媒除去を行いながら徐々に昇温して一部イミド転化を行ってもよい。
【0030】
本発明では、円筒状被膜を得た後、この円筒状被膜を表面粗さRaの平均値0.5μm〜3μm、表面粗さRaの最大値と最小値の差(ばらつき)0.5μm以内の円形断面内型に挿入して、加熱によりイミド転化させ、表面うねり精度が0.7mm以下の管状体を形成する。好ましくは、表面粗さRaの平均値1μm〜2μm、表面粗さRaのばらつき0.3μm以内の円形断面内型を用いる場合である。
【0031】
Raの平均値0.5μmより小さいと、ベルトの長手方向の収縮率が大きく、うねりが発生しやすい。Raの平均値3μmを超えると、パイプにベルトが食い込み、離型しにくくなる。Raのばらつきが0.5μmを超えると、ベルトの収縮率が長手方向で不均一となり、うねりが発生し好ましくない。
【0032】
また、前記円形断面内型に挿入した円筒状被膜のイミド転化前後の収縮率が、円筒状被膜の長手方向において4.7%以下であることが好ましい。収縮率4.7%を超えるとうねりが0.7mmを超えやすくなる傾向がある。
【0033】
イミド転化は、円形断面内型に挿して加熱した状態で行うが、特に円筒状被膜の長さが600mmを超える場合は、円筒状被膜の長手方向の幅に対し、中央付近などの切断除去される部分に貫通孔を設けると、うねりが低減され好ましい。貫通させる孔面積は全面積の10ppm以上となるように設けることが好ましい。また、貫通孔は、円形断面内型の方に設けてもよい。10ppm以下の貫通孔面積では、イミド転化前の円筒状被膜が含有する溶剤蒸発が不均一となり、それによる収縮バランスが崩れるため、うねりを低減することが難しくなり、好ましくない。
【0034】
ポリイミドのイミド転化温度は、340〜430℃が好ましい。340℃未満では、ポリイミド前駆体に含まれている溶剤が残存しやすく、経時収縮を起こしやすい傾向がある。430℃を超えると、ポリイミドが劣化し、引き裂き強度が低下する傾向がある。
【0035】
イミド転化されたベルトの内面における塗布のラップ部分に形成される溝は、幅150μm以下、深さ0.15μm以下が好ましい。幅150μm、深さ0.15μmを超えると、うねり精度が0.7mmを超え易く好ましくない。更に、うねり精度が0.7mmを超えた基材を定着ベルトとして使用した場合、紙シワが発生し、中間転写ベルトとして使用した場合、画像ムラとなり好ましくない。尚、うねり精度は円筒状ベルトの長手方向の水平面に対し垂直方向の変位幅を示しており、レーザー変位計で測定した値である。
【0036】
本発明では、更に塗布層中の気泡を除去するための脱泡工程や、塗布前に円筒状型の内面の離型処理などを行ってもよい。また、脱型後に、離型層、弾性体層などを更に管状体に積層形成してもよい。
【0037】
本発明で得ることができる管状体は、好ましくはポリイミド製の管状体の表面うねり精度が0.7mm以下であり、より好ましくは、表面うねり精度が0.6mm以下である。
【0038】
このような管状体を電子写真用画像形成装置の定着ベルト、転写ベルト、中間転写ベルト、搬送ベルト、感光体ベルト等の機能性ベルト及びこれ等の基材として使用した場合、優れた寸法精度を有するため、定着性、転写性、搬送性等求められる機能を最大限満足した機能性ベルトとして有用である。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0040】
(1)円形断面内型の表面粗さRa
株式会社ミツトヨ製の表面粗さ計(SJ301)を用いて、速度0.5mm/秒、カットオフλc0.8mmにて表面粗さRaの測定を行った。表面粗さRaの平均値は、長手方向に合計6箇所の測定を行った際の値から計算した。表面粗さRaの最大値と最小値の差は、長手方向に合計6箇所の測定を行った際の最大値と最小値とから計算した。
【0041】
(2)表面うねり精度
レーザー変位計((株)キーエンス製,LK−030SO)を用いて、管状体の長手方向の水平面に対し垂直方向の変位幅を測定した。
【0042】
(3)溝幅及び溝深さ
粗さ計(東京精密(株)製,サーフコム554A)を用いて、駆動速度0.12mm/sec、倍率10k、触針荷重400mgにて3箇所を測定した値の平均値を求めた。
【0043】
(4)長手方向の収縮率
管状体の両端から1cm内側の部分にマーキングをしておき、イミド転化前後において、その間隔を測定して、イミド転化後の寸法をイミド転化前の寸法で除して、百分率(%)として算出した。
【0044】
(実施例1)
酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、アミン成分としてp−フェニレンジアミンの略等モルをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解(モノマー濃度20重量%)し、窒素雰囲気中において室温で攪拌しながら反応させ、次いで70℃に加温しつつ撹拝して23℃におけるB型粘度計による粘度が2000ポイズのポリアミド酸溶液を作製した。次いで、長方形状のダイス型ディスペンサーを固定しつつ、長さ900mm、直径68mmφの円筒状金型を回転させながら上記ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面の一方端から他方端まで供給しつつ移動させ、円筒状金型内面にスパイラル状に塗布(ラップ量1mm、ギャップ量0.7mm)し、そのまま金型を3000rpmで3分間回転させながら塗膜面のラッピング部分の凹凸をレベリングし、均一な塗膜面を得た。
【0045】
次いで金型を60rpmで回転させながら、220℃まで段階的に加熱し、溶媒の除去を行った。円筒状金型からイミド転化前の基材を離型し、長さ880mm、直径68mmφ(直径/長さ=0.077)、厚さ90μmの円筒状基材を表面粗さRa1.4〜1.7μm(平均値1.5μm、ばらつき0.3μm)を有する円形断面内型(アルミパイプ)に差し替え、410℃20min加熱し、イミド転化を行った。イミド転化前後の収縮率は4.7%であった。得られた円筒状ポリイミドベルトは、うねり0.596mmとなった。
【0046】
次に、このポリイミドベルトにゴムをコートし、定着ベルトとしてプリンターに装着し運転したところ、紙シワの発生もなく、鮮明な画像が得られた。
【0047】
(実施例2)
実施例1のアルミパイプを表面粗さRa1.5〜1.8μm(平均値1.6μm、ばらつき0.3μm)のパイプに代えたところ、イミド転化前後の収縮率4%、得られた円筒状ポリイミドベルトのうねり0.591mmとなった。このポリイミドベルトにゴムをコートし、定着ベルトとしてプリンターに装着し運転したところ、同様に問題なく定着が行われた。
【0048】
(実施例3)
実施例1のアルミパイプを表面粗さRa1.5〜2.2μm(平均値1.8μm、ばらつき0.7μm)のパイプに代え、更にイミド転化前の円筒状基材の端部から440mmの位置に、3mm2 φの貫通孔を周方向均等に4ケ形成し、貫通孔の全基材面積に対する比を64ppmとした。イミド転化前後の収縮率6%、得られた円筒状ポリイミドベルトのうねり0.531mmとなった。このポリイミドベルトにゴムをコートし、定着ベルトとしてプリンターに装着し運転したところ、同様に問題なく定着が行われた。
【0049】
(実施例4)
実施例3において、基材と当接するアルミパイプに貫通孔を大きさと数を同じにして形成する以外は、実施例3と同様にして円筒状ポリイミドベルトを作製した。イミド転化前後の収縮率6.1%、得られた円筒状ポリイミドベルトのうねり0.553mmとなった。このポリイミドベルトにゴムをコートし、定着ベルトとしてプリンターに装着し運転したところ、同様に問題なく定着が行われた。
【0050】
(比較例1)
実施例1のアルミパイプを表面粗さRa1.5〜2.2μm(平均値1.7μm、ばらつき0.7μm)のパイプに代えて、円筒状基材のイミド転化を行ったところ、イミド転化前後の収縮率5.2%、得られた円筒状ポリイミドベルトのうねり0.753mmとなった。このポリイミドベルトにゴムをコートし、定着ベルトとしてプリンターに装着し運転したところ、同様の定着を行ったところ紙シワが生じた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の管状体の製造方法を説明するための模式図
【図2】本発明の管状体の製造方法の塗布部を説明するための模式図
【符号の説明】
1 ポリアミド酸溶液
2 円筒状型
3 ディスペンサー供給部
3a 吐出口
4 塗膜面
5 ラッピングによる凸部
6 ギャップ量
7 ラップ量

Claims (1)

  1. 円筒状型を周方向に回転させながらディスペンサー供給部に対して回転軸方向に相対移動させることにより、型内面にポリアミド酸溶液をディスペンサーにより塗布し、
    その塗膜面の凹凸を遠心力によりレベリングし、
    加熱又は抽出により硬化または固化した円筒状被膜を円筒状金型内面に接した状態で得た後、円筒状金型から円筒状被膜を離型し、
    この円筒状被膜を表面粗さRaの平均値0.5μm〜3μm、表面粗さRaの最大値と最小値の差が0.5μm以内の円形断面内型に挿入して、加熱によりイミド転化させ、
    前記円形断面内型に挿入した円筒状被膜のイミド転化前後の収縮率が、円筒状被膜の長手方向において4.7%以下であって、
    表面うねり精度が0.7mm以下の管状体を形成する
    管状体の製造方法。
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