JP2001045968A - 低脂肪ヨーグルトの製造方法および当該方法により得られる低脂肪ヨーグルト - Google Patents
低脂肪ヨーグルトの製造方法および当該方法により得られる低脂肪ヨーグルトInfo
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Abstract
酸菌等の微生物の生菌数が通常のヨーグルトと遜色な
く、かつ、保存後においても生菌数の減少が少ない低脂
肪ヨーグルトを製造することのできる方法を提供するこ
と。 【解決手段】 脱脂乳を主原料とする乳成分に乳酸菌を
接種し、これを培養してヨーグルトを製造するにあた
り、乳酸菌による発酵前または発酵後に、オレイン酸ま
たはその塩もしくはそのエステルを、好ましくは製品化
後の終濃度としてオレイン酸換算で15μl/ml以上
となる量添加することを特徴とする低脂肪ヨーグルトの
製造方法および当該方法により得られる低脂肪ヨーグル
ト。
Description
の製造方法に関し、更に詳細には、低脂肪でありながら
製品中に含まれる乳酸菌等の微生物の生菌数が通常のヨ
ーグルトと遜色のない低脂肪ヨーグルトの製造方法およ
び当該方法により得られる低脂肪ヨーグルトに関する。
ーグルトは、整腸作用、免疫賦活作用等の生理効果を有
する健康食品として、広く飲食されている。これらの生
理効果を高く維持するためには、乳酸菌等有用細菌の菌
数を生きた状態でより多く維持することや、菌の活性
(酸産生能)を高く保つことが重要となる。
品が好まれており、ヨーグルト等についても例外でな
い。ヨーグルトについてカロリーを低下させるために
は、低脂肪の脱脂粉乳を原料として用いることが必須で
ある。しかし、脱脂粉乳を用いて低脂肪ヨーグルトを調
製すると、製品中の乳酸菌等の生菌数が少なくなる現象
がしばしば認められており、生菌含有タイプのヨーグル
トが本来有する整腸作用、免疫賦活作用等の生理効果が
不十分となる場合もあった。
生菌数が少なくなるという問題は知られていた。すなわ
ち、ヨーグルト製造時等において乳酸発酵が進み過ぎる
と、発酵産物である乳酸がヨーグルトのpHを低下さ
せ、これに伴い乳酸菌の活性・菌数が低下するという問
題がある。このような活性・菌数の低下は、pHの低い
製品を製造したときほど顕著である。
5程度であり、乳酸菌の活性は製品化後も維持されてい
る場合が多い。このような製品では、製品化後も製品が
冷蔵保存されていれば、菌は静止状態にあり、酸も産生
されず、死滅の問題は起こりにくい。しかし、流通時や
家庭での保存の際に製品温度が上昇してしまうと、菌が
再び動き出し、酸を生成してしまい、菌数減少や活性の
低下が起こる。
菌数維持等を図るため、乳酸菌の培養終了時の菌数や生
残性を向上させる各種の試みがなされている。例えば、
菌培養時のクロレラ添加等がそれにあたるが、このよう
な物質の添加は、製品自体の風味に影響を与えてしまう
場合が多く、また、製品のコストを上昇させてしまうと
いう問題がある。更に、菌数を多く維持できても、その
高い活性を維持するのは困難であった。
ために、培養終了時菌数の増加や、生残性の改善を行え
る物質を添加することがまず考えられるが、通常のヨー
グルト以上にこのような物質を加える必要がある上に、
当該物質による効果はあまり認められないのが実状であ
った。
により、生菌を増やすことも考えられるが、培養条件が
発酵乳等に製品化後の菌の動態へ与える影響に関する知
見は、現在ほとんど得られておらず、不明な点が多い。
ながら最終製品中に含まれる乳酸菌等の微生物の生菌数
が通常のヨーグルトと遜色なく、かつ、保存後において
も生菌数の減少が少ない低脂肪ヨーグルトおよびその製
造方法の提供が求められていた。
粉乳により調製した低脂肪ヨーグルト中の生菌数が少な
くなる原因について解明すべく検討を行ったところ、発
酵を菌の定常期から死滅期に近いところまで行い製品化
した場合、その後の菌の増殖速度や酸産生はそれ以前と
ほとんど変わらない一方、菌の死滅速度が増加すること
が見出された。また、発酵を菌の対数期で停止させ製品
化を行っても、前記のような流通時等のアクシデントに
より温度が上がり、菌の増殖が起こってしまうと、死滅
が促進されることがわかった。そして更に、定常期から
死滅期における菌の死滅に影響する因子を探索していた
ところ、全脂粉乳には含まれるが脱脂粉乳では除かれる
可能性のある脂肪酸成分のうちオレイン酸が菌の死滅に
影響していることを見出し本発明を完成した。
乳成分に乳酸菌を接種し、これを培養してヨーグルトを
製造するにあたり、乳酸菌による発酵前または発酵後
に、オレイン酸またはその塩もしくはそのエステルを添
加する低脂肪ヨーグルトの製造方法を提供するものであ
る。
しくはエステルを、乳酸菌による発酵前または発酵後
に、製品化後の終濃度としてオレイン酸換算で15μl
/ml以上となる量添加することを特徴とする低脂肪ヨ
ーグルトの製造方法を提供するものである。
得られる低脂肪ヨーグルトを提供するものである。
は、乳等省令により定められている発酵乳、乳製品乳酸
菌飲料等の飲料やハードヨーグルト、ソフトヨーグル
ト、プレーンヨーグルト、更にはケフィア等も包含する
ものである。
原料として製造される低脂肪ヨーグルトにオレイン酸ま
たはその塩もしくはエステルを添加したものである。
により牛乳等の獣乳からクリームを分離した残りの部分
をいい、一般的には乳脂分が0.5%以下、好ましくは
0.1%以下のものである。この脱脂乳は、クリームを
除去した状態のままの脱脂液乳を用いても、あるいは一
旦凍結乾燥して調製した脱脂粉乳を用いても良い。
おいて用いられるオレイン酸またはその塩もしくはエス
テル(以下、「オレイン酸等」という)は特に限定され
るものではなく、遊離のオレイン酸やオレイン酸の無機
塩の他、一般的に乳化剤として用いられているシュガー
エステル、グリセリド、ソルビタンエステル、プロピレ
ングリコールエステル等において、その脂肪酸部分がオ
レイン酸であるものも好適に使用できる。具体的には、
ナトリウム塩、カリウム塩、グリセリンオレイルエステ
ル、ポリグリセリンオレイルエステル、ソルビタンオレ
イルエステル、プロピレングリコールオレイルエステル
およびショ糖オレイルエステル等が挙げられる。中で
も、オレイン酸モノグリセリドや、ポリグリセリンモノ
オレイルエステルは、培養終了時菌数の増加効果、生残
性改善効果が高いため好ましく、また、溶解性等の物性
の面からショ糖オレイルエステル等が好ましい。これら
は1種または2種以上組み合わせて使用することができ
る。
含む食品素材を使用することも可能である。なお、構造
中にオレイン酸を含んでいるものであっても、リゾレシ
チンのような形態のものは本発明のヨーグルト製品中の
菌数・活性を維持する効果は得られない場合がある。
の最終濃度がオレイン酸換算で、15μg/ml〜60
μg/ml、特に15μg/ml〜40μg/mlとな
るようにすることが好ましい。すなわち、5μg/ml
以下では製品化後の菌の死滅抑制効果が弱く、逆に60
μg/ml以上では製造コストの上昇の問題と共に最終
製品の脂肪含量が増加するという問題が生じ、また菌の
増殖速度も低下してしまうのである。
て、発酵に用いる乳酸菌も特に限定されず、ラクトバチ
ルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、エ
ンテロコッカス属等に属する細菌を用いることができ
る。これら細菌の具体例としては、ラクトバチルス・カ
ゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシ
ドフィルス(L.acidophilus)、ラクトバチルス・ガリ
ナラム(L.gallinarum)、ラクトバチルス・ガッセリ
(L.gasseri)、ラクトバチルス・ジョンソニ(L.johns
oni)、ラクトバチルス・デルブルッキィ(L.delbrucck
ii)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lacti
s)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptoco
ccus thermophilus)等を挙げることができる。特にラ
クトバチルス属細菌およびラクトコッカス・ラクチス、
ストレプトコッカス・サーモフィルスを用いると死滅の
抑制効果が高いため好ましく、更にラクトバチルス・カ
ゼイが好ましい。更にまた、ビフィドバクテリウム属細
菌や酵母など、慣用的に食されている菌を併用してもよ
い。
より行なわれる。具体的には、脱脂乳を主原料とする乳
成分に、製品化後の終濃度がオレイン酸換算で15μg
/ml以上となる量のオレイン酸等を添加し、次いで乳
酸菌により発酵させる方法や、脱脂乳を主原料とする乳
成分を、乳酸菌により発酵させた後、上記量のオレイン
酸等を添加する方法等が挙げられる。特に前者の方法を
用いる方が、培養終了時菌数が高く、菌の生残性も高い
ため好ましい。これらの方法において、発酵は乳酸菌を
接種し、35〜37℃程度の温度で3〜5日間程度培養
することにより実施される。このとき、培地中にはシュ
ークロース、異性化糖等の糖質等を添加してもよい。
て、例えば、グルコース、フラクトース、シュークロー
ス等の糖質を含むシロップ液を添加・混合して風味を調
製し、適宜の段階において均質化処理等を施すことによ
り低脂肪ヨーグルトが得られる。なお、この低脂肪ヨー
グルト中には、必要に応じて更に各種ビタミン類やミネ
ラル類等を加えても良いてもよい。
ーグルトは、定常期から死滅期にいたるまで培養した場
合であっても、菌の死滅が抑制され、また、製品化後の
冷蔵保存、保存中の温度上昇に対しても優れた死滅抑制
効果を示すものであり、約1×108cfu/ml以上
の乳酸菌を生菌として存在させることができ、当該製品
を10℃、2週間保存しても、20%以上の生存率を維
持することが可能である。
ヨーグルトの培養を乳酸菌の定常期もしくは死滅期に至
るまで行った場合である。菌の至適pH、耐酸性は菌種
毎に異なるため、用いる菌により培養時間等は異なるも
のの、通常ラクトバチルス・カゼイ、ラクトコッカス・
ラクチス、ストレプトコッカス・サーモフィルス等を用
いた場合には最終製品のpHが3.6〜3.8程度となる
場合であっても上記のような乳酸菌生菌数および生存率
を保証することが可能となる。
い、かつ少量のオレイン酸等しか添加しないため、最終
製品中の脂肪量は0.1重量%程度に押さえられ、カロ
リーの低い低脂肪ヨーグルトとなる。
明らかでない部分もあるが、現時点では次のように考え
られる。すなわち、培地中のオレイン酸濃度が高いと、
菌の細胞膜中の脂肪酸組成中におけるオレイン酸含量と
このオレイン酸から合成されるシクロプロパン脂肪酸含
量が高まり、このことが菌の死滅を抑制するものと考え
られる。このため、オレイン酸の添加は培養前の培地中
へ行うことが好ましいが、培養後においてもなんらかの
保護効果を示すと考えられるため、いつ何時添加しても
かまわない。
するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるもの
ではない。
クトバチルス・カゼイ(L.casei)YIT902
9の培養終了時菌数の関係:20%脱脂粉乳(四つ葉乳
業社製)、3%グルコースの組成で低脂肪ヨーグルト培
地を調製した。この培地に、オレイン酸ナトリウムを
0.003、0.005、0.01、0.02、0.03重
量%の割合で添加し、100℃で60分間殺菌した。次
いで、ラクトバチルス・カゼイYIT9029を0.5
%接種し、37℃で約200時間培養し、培養終了時の
生菌数を測定した。生菌数(cfu/ml)の測定は、
0.1%イーストエキスに適宜希釈した培地をスパイラ
ルプレーターを用いてRogosa寒天平板に塗末し、
37℃で3日間保持した後に出現したコロニーをレーザ
ーコロニーカウンターで測定した。この結果を図1に示
す。図1から、オレイン酸の添加によりラクトバチルス
・カゼイの培養終了時の菌数が上昇することが明らかに
なった。
の生残性改善効果:実施例1の低脂肪ヨーグルト培地
に、オレイン酸ナトリウムを0.003、0.005、
0.01重量%の割合で添加し、乳酸菌を接種、培養し
てオレイン酸ナトリウムが乳酸菌の生残性に与える影響
を検討した。培養は37℃でpH3.6〜pH3.8まで
行い、その他の条件、菌株等は実施例1と同様とした。
℃で30分間殺菌し、これをシロップ液とした。このよ
うにして得られた培養液とシロップ液とを1:1の割合
で混合し、容器に充填して低脂肪ヨーグルト製品を製造
した(製品中の添加したオレイン酸濃度は、それぞれ1
5μg/ml、25μg/ml、50μg/mlであ
る)。また、対照としてオレイン酸ナトリウム無添加の
低脂肪ヨーグルトを製造した。
し、その間の生菌数を経時的に調べた結果を図2に示
す。図2の結果から、通常は製品の保存が7日を過ぎる
と生菌数(製品保存0日目の生菌数のバラツキが培養液
中での生菌数を反映する)が大幅に減少するのに対し、
培養時におけるオレイン酸ナトリウムの添加により、保
存7日を過ぎても高い生残性を維持することが明らかに
なった。
ン酸、オレイン酸ナトリウムもしくは各種乳化剤をオレ
イン酸含有量として0.01%となるよう添加し、ラク
トバチルス・カゼイYIT9029を0.5%接種、培
養し、これら添加剤が乳酸菌の培養終了時菌数、生残性
に与える影響を検討した。培養は37℃でpH3.6〜
3.8まで行い、その他の条件は実施例1と同様とし
た。
施例2のシロップ液と1:1の割合で混合し、容器に充
填して、低脂肪ヨーグルト製品を製造した。また、対照
として、オレイン酸無添加の低脂肪ヨーグルトを製造し
た。
し、その間の生菌数を経時的に調べた。この結果を表2
に示す。
のでは、10℃で2週間保存しても20%以上の生存率
を示すことがわかった。また、オレイン酸の形態とし
て、遊離オレイン酸、オレイン酸塩もしくはエステルを
使用すると、特に優れた培養終了時菌数、生残性を得ら
れることがわかった。
培養終了時の菌数の関係を示す図面。
生残性の関係を示す図面。 以 上
Claims (7)
- 【請求項1】 脱脂乳を主原料とする乳成分に乳酸菌を
接種し、これを培養してヨーグルトを製造するにあた
り、乳酸菌による発酵前または発酵後に、オレイン酸ま
たはその塩もしくはそのエステルを添加することを特徴
とする低脂肪ヨーグルトの製造方法。 - 【請求項2】 オレイン酸またはその塩もしくはエステ
ルを、製品化後の終濃度としてオレイン酸換算で15μ
l/ml以上となる量添加することを特徴とする請求項
第1項記載の低脂肪ヨーグルトの製造方法。 - 【請求項3】 乳酸菌がラクトバチルス属微生物または
ストレプトコッカス・サーモフィルスもしくはラクトコ
ッカス・ラクチスから選ばれる1種または2種以上であ
る請求項第1項または第2項記載の低脂肪ヨーグルトの
製造方法。 - 【請求項4】 オレイン酸のエステルがグリセリンオレ
イルエステル、ポリグリセリンオレイルエステル、ソル
ビタンオレイルエステル、プロピレングリコールオレイ
ルエステルおよびショ糖オレイルエステルよりなる群よ
り選ばれた乳化剤である請求項第1項ないし第3項記載
の低脂肪ヨーグルトの製造方法。 - 【請求項5】 請求項第1項ないし第4項記載の方法に
より製造される低脂肪ヨーグルト。 - 【請求項6】 含有される脂肪の量が0.05ないし0.
5%である請求項第5項記載の低脂肪ヨーグルト - 【請求項7】 乳酸菌を低脂肪ヨーグルト製品中に1×
108cfu/ml以上含み、当該製品を10℃で2週
間保存した場合の乳酸菌の生存率が20%以上である請
求項第5項または第6項記載の低脂肪ヨーグルト。
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