JP2001015116A - リチウムイオン二次電池電極用バインダー、およびその利用 - Google Patents

リチウムイオン二次電池電極用バインダー、およびその利用

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温及び低温での充放電特性に優れた電池を
与える電極製造用のリチウム二次電池電極用バインダー
を得る。 【解決手段】 シス−1,4構造含量が5%以上50%
以下であるポリブタジエンを含有するリチウムイオン二
次電池電極用バインダーとして用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はリチウムイオン二次
電池電極に用いられるバインダー及びその利用に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、ノート型パソコン、携帯電話、P
DAなどの携帯端末の普及が著しい。これら携帯端末の
電源に用いられている二次電池には、リチウムイオン二
次電池(以下、単に電池ということがある)が多用され
ている。携帯端末は、より快適な携帯性を求め、小型
化、薄型化、軽量化、高性能化が急速に進んだ。その結
果、携帯端末は様々な場で利用されるようになってい
る。利用範囲の増大に伴って電池に対しても、携帯端末
に対するのと同様に小型化、薄型化、軽量化、高性能化
が要求されている。
【0003】こうした電池の性能向上のために、電極、
電解液、その他の電池部材の改良が検討されている。電
極については、活物質や集電体そのものの検討の他、活
物質を集電体に保持するためのバインダーとなるポリマ
ーに関する検討もなされている。通常、このバインダー
を水や有機液体と混合してバインダー組成物となし、当
該組成物と活物質及び必要に応じて添加される導電性カ
ーボン等の添加剤とを混合してスラリーを得、これを集
電体に塗布、乾燥して電極が製造される。こうしたバイ
ンダーとして、ブタジエンを主原料とするポリマーを用
いることが提案されている。
【0004】特開昭62−090863号公報記載の比
較例33では、ポリブタジエンをバインダーとして、こ
れをトルエンに溶解した後、活物質等と混合してスラリ
ーを得、これを集電体に塗布・乾燥して電極を製造した
例が示されている。当該公報における評価では、この電
極は比誘電率が小さく電池の過電圧が小さいため、ポリ
ブタジエンは電極用バインダーとして不適であると結論
している。
【0005】特開平4−255670号公報記載の実施
例においては、負極のバインダーとしてブタジエンゴム
5重量%及び10重量%含む電極用スラリーを用いて製
造された電極を含む電池について、初期放電容量と50
サイクル後の放電容量維持率が81〜85%であること
を示している。しかしながら、充放電特性に対する要求
が高まっている現在、この維持率は実用レベルとは言い
難い。
【0006】特開平6−215761号公報では、ブタ
ジエンを主体とした非フッ素系有機重合体とフッ素系有
機重合体の混合物をバインダーとして用いることが提案
され、スチレン−ブタジエンおよびアクリロニトリル/
ブタジエンといったブタジエン共重合体のディスパージ
ョンとポリ四フッ化エチレンディスパージョンとを併用
した場合、充放電特性に優れることが示されている。し
かしブタジエンの単独重合体についての具体的な説明は
なく、その効果も明らかにされていない。
【0007】特開平7−335221号公報では、コイ
ン型リチウム二次電池の負極バインダーにゴム系高分子
とカルボキシメチルセルロースナトリウム等の保液性を
有するセルロースエーテルをバインダーに用いることが
提案されている。当該公報によれば、こうしたゴム系高
分子とセルロース類とを活物質となる炭素質物質と混練
し、ペレット状にしたものを加圧プレス機などを用いて
成形し、負極を製造している。ここで使用されるゴム系
高分子の具体例としてブタジエンゴムが例示されている
ものの、ブタジエンゴムの詳細は説明されておらず、ま
たその効果も確認されていない。
【0008】特開平9−320604号公報において
は、ブタジエン結合量が30〜98重量%のカルボキシ
変性スチレンブタジエン共重合体ラテックスをバインダ
ーとすることが提案されている。この公報中で、ブタジ
エン結合量が98重量%を越える重合体は接着強度に欠
けると指摘されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このようにブタジエン
系ゴムをバインダーとする試みは従来からなされている
ものの、必ずしも十分な性能を有するものは得られてお
らず、特に50℃以上や0℃以下での充放電サイクル特
性、及び高温保存と低温保存を繰り返し行う温度変化
(ヒートショック試験)条件での保存特性(以下、単に
保存特性ということがある)に優れた電池を得ることが
できないことが判った。
【0010】そこで本発明者らは、高温及び低温での充
放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を得
るべく鋭意研究した結果、電極用バインダーとして、シ
ス−1,4構造含量がある特定の範囲にあるポリブタジ
エンを用いれば、高温及び低温での充放電サイクル特性
の優れた電池が得られることを見いだし、本発明を完成
するに到った。また、この電池は保存特性も良好であ
る。
【0011】
【課題を解決する手段】かくして本発明によれば、第一
の発明として、シス−1,4構造含量が5%以上50%
以下であるポリブタジエン(以下、低シスポリブタジエ
ンということがある)を含有するリチウムイオン二次電
池電極用バインダーが提供され、第二の発明として、シ
ス−1,4構造含量が5%以上50%以下であるポリブ
タジエンが、常圧での沸点が80℃以上350℃以下の
分散媒に分散された分散体であるリチウムイオン二次電
池電極用バインダー組成物が提供され、第三の発明とし
て、当該バインダー組成物と活物質とを含有するリチウ
ムイオン二次電池電極用スラリーが提供され、第四の発
明として当該バインダーを含有する電極が提供され、第
五の発明として当該電極を用いて製造されるリチウムイ
オン二次電池が提供される。
【0012】
【発明の実施の態様】1.バインダー 本発明のバインダーは、ポリブタジエンを含むものであ
り、その分子中、シス−1,4構造含量(モル基準)
が、下限が5%、好ましくは10%、より好ましくは1
5%であり、上限は50%、好ましくは40%、より好
ましくは30%である。この範囲であれば、充放電特性
が、高温でも低温でも安定しているばかりでなく、保存
特性にも優れている。このようなポリブタジエンを得る
方法は、特に制限されないが、以下の(1)および
(2)の方法は、シス−1,4含量が上述の範囲のもの
を得ることが容易なため、特に好ましい。 (1)1,3−ブタジエンを過硫酸塩等の触媒存在下、
水系媒体中でラジカル重合することによってポリブタジ
エンが粒子状で水に分散されたラテックスとして得る。
(2)1,3−ブタジエンをリチウム系触媒の存在下、
有機溶媒中でアニオン重合することによって得る。
【0013】また、上述した低シスポリブタジエンのう
ち、特に、ポリブタジエンのもう一つの結合様式である
1,2−ビニル構造含量の下限は5モル%、好ましくは
10モル%、より好ましくは15モル%であり、上限は
50モル%、好ましくは40モル%、より好ましくは3
0モル%である。この範囲であるものが良好な充放電特
性と保存特性を示す。本発明において各結合様式の比率
は、13C−NMRスペクトルから算出した値である。
【0014】本発明のバインダーを使用する際に、上記
範囲のシス−1,4構造含量を有するポリブタジエンを
単独で用いることはもちろん、これ以外のジエン系ポリ
マー、フッ素系ポリマー、オレフィン系ポリマー、スチ
レン系ポリマー、アクリレート系ポリマー、アミド系ポ
リマー、イミド系ポリマー、エステル系ポリマーなどバ
インダーとして公知の他のポリマー(以下、ポリマー
(1)という)を併用することができる。
【0015】このようなポリマー(1)を併用する場
合、低シスポリブタジエンに対するポリマー(1)の使
用割合は、70重量%以下、好ましくは50重量%以
下、より好ましくは30重量%以下である。
【0016】また、本発明においては、上述したバイン
ダーに、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロー
ス、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース
類、及びこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属
塩;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、変性ポリ(メ
タ)アクリル酸などのポリカルボン酸類、及びこれらの
アルカリ金属塩;ポリビニルアルコール、変性ポリビニ
ルアルコール、ポリエチレングリコール、エチレン−ビ
ニルアルコール共重合体などの水酸基を多く含むポリマ
ー;(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸塩と
ビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸またはマ
レイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールの共重合
体などの酸とアルコールとの共重合体;ポリエチレンオ
キシド誘導体、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル重合
体、ポリアクリロニトリルなどの水酸基やカルボキシル
基以外の極性基を有するポリマー;等の極性ポリマー
(以下、ポリマー(2)という)を添加することができ
る。
【0017】ポリマー(2)の特に好ましい例として
は、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、ポ
リアクリロニトリル、エチレン−ビニルアルコール共重
合体やこれらの誘導体が例示される。こうしたポリマー
(2)を併用することにより、下記の電極用スラリーの
粘度を適度に高めたり、集電体への塗布を容易にするこ
とができる。
【0018】特にポリマー(2)のうち、分散媒が水で
ある場合は、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金
属塩、ポリ(メタ)アクリル酸及びこれらのアルカリ金
属塩、ポリエチレンオキシドやその誘導体が好ましい。
分散媒が有機分散媒である場合は、ポリアクリロニトリ
ル及びその誘導体やエチレン−ビニルアルコール共重合
体及びその誘導体などが好ましい例として挙げられる。
これらを用いると、塗布性に優れ電極製造が容易にな
る。
【0019】このようなポリマー(2)を併用する場
合、低シスポリブタジエンに対するポリマー(2)との
使用割合は、重量比で95:5〜5:95、好ましくは
80:20〜20:80、さらに好ましくは75:25
〜25:75である。
【0020】2.バインダー組成物 本発明のバインダー組成物は、上述した低シスポリブタ
ジエンの分散体である。もちろん、当該組成物中には、
上述したポリマー(1)やポリマー(2)が存在してい
てもよく、その存在形態は分散状態であっても、溶解さ
れた状態であってもよい。組成物中の低シスポリブタジ
エン含量は、通常0.2〜80重量%、好ましくは0.
5〜70重量%、より好ましくは0.5〜60重量%で
ある。
【0021】本発明において分散体を構成する分散媒
は、常圧における沸点が80℃以上350℃以下の分散
媒、好ましくは常圧における沸点が100℃以上300
℃以下の分散媒である。分散媒の具体例としては水(1
00)の他、n−ドデカン(216)、テトラリン(2
07)などの炭化水素類;2−エチル−1−ヘキサノー
ル(184)、1−ノナノール(214)などのアルコ
ール類;ホロン(197)、アセトフェノン(20
2)、イソホロン(215)などのケトン類;酢酸ベン
ジル(213)、酪酸イソペンチル(184)、γ−ブ
チロラクトン(204)、乳酸メチル(143)、乳酸
エチル(154)、乳酸ブチル(185)などのエステ
ル類;o−トルイジン(200)、m−トルイジン(2
04)、p−トルイジン(201)などのアミン類;N
−メチルピロリドン(204)、N,N−ジメチルアセ
トアミド(194)、ジメチルホルムアミド(153)
などのアミド類;ジメチルスルホキシド(189)、ス
ルホラン(287)などのスルホキシド・スルホン類な
どの有機分散媒が挙げられる。尚、化合物名の後に記載
された( )内の数字は常圧での沸点(単位は℃)であ
り、小数点以下は四捨五入または切り捨てされた値であ
る。また、沸点に幅がある化合物については下限が80
℃以上であることを確認して上限を記載した。
【0022】本発明のバインダー組成物中の低シスポリ
ブタジエンは、通常粒子形状で分散媒中に分散されてい
る。低シスポリブタジエン粒子存在の確認は、透過型電
子顕微鏡法や光学顕微鏡法等によって容易にできる。粒
子の体積平均粒径は、0.001μm〜1mm、好まし
くは0.01μm〜500μmである。体積平均粒径は
コールターカウンターやマイクロトラックを用いて測定
することができる。
【0023】本発明のバインダー組成物を得る方法は特
に制限されないが、低シスポリブタジエンが水に分散さ
れたラテックスを製造し、ラテックスをそのままバイン
ダー組成物として用いる方法や、得られたラテックスの
水を前述の有機分散媒に置換する方法が好ましい。分散
媒の置換方法としては、ラテックスに有機分散媒を加え
た後、分散媒中の水分を蒸留法、分別濾過法、分散媒相
転換法などにより除去する方法などが挙げられる。
【0024】ラテックスの製造方法は特に制限されず、
乳化重合法、懸濁重合法などによって製造することが出
来る。例えば、「実験化学講座」第28巻、(発行元:
丸善(株)、日本化学会編)に記載された方法、即ち、
攪拌機及び加熱装置付きの密閉容器に水、分散剤や乳化
剤、架橋剤等の添加剤、開始剤、及び1,3−ブタジエ
ンを所定の組成になるように加え、攪拌してモノマー等
を水に懸濁あるいは乳化させ、攪拌しながら温度を上昇
させることによって、低シスポリブタジエンが水に分散
したラテックスを得ることができる。乳化剤はロジン/
脂肪酸系乳化剤を用いるのが特に好ましい。乳化剤や分
散剤、重合開始剤などはこれらの重合法において一般的
に用いられるものであり、その使用量も一般に使用され
る量でよい。また重合に際しては、シード粒子を採用す
ること(シード重合)もできる。
【0025】さらにこれらの方法によって得られるラテ
ックスに、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、C
s)水酸化物、アンモニア、無機アンモニウム化合物
(NHClなど)、有機アミン化合物(エタノールア
ミン、ジエチルアミンなど)などが溶解している塩基性
水溶液を加えてpH5〜13、好ましくは6〜12の範
囲になるように調整することができる。なかでも、アン
モニア及びアルカリ金属水酸化物を用いるpH調整は、
集電体と活物質との結着性(ピール強度)を向上させる
ため好ましい。
【0026】本発明のバインダーが電池電極用バインダ
ーとして機能するためには、電解液に溶解しにくい性質
を有することが重要である。このため、バインダーは、
対電解液ゲル含量(以下、ゲル含量G1という)が、5
0%以上100%以下、好ましくは60%以上100%
以下、より好ましくは70%以上100%以下であるの
が望ましい。ここでG1は、プロピレンカーボネート/
エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチ
ルカーボネート/メチルエチルカーボネート=20/2
0/20/20/20(20℃での体積比)の組成の混
合溶媒にLiPFが1モル/リットルの割合で溶解し
ている溶液である電解液に対するポリマーの不溶分とし
て算出される値である。
【0027】ゲル含量G1は、約0.1mm厚のバイン
ダー膜を120℃で24時間風乾し、更に120℃、2
4時間真空乾燥させてたときの重量(D1)と、この膜
をその100重量倍量の電解液に70℃で74時間浸漬
した後、200メッシュのふるいで濾過して、ふるい上
に残留した不溶分を120℃、24時間真空乾燥させた
ものの重量(D2)について測定し、次式に従って算出
した値である。 ゲル含量G1(%)=(D2/D1)×100
【0028】また、本発明のバインダー組成物は、バイ
ンダーが分散媒に分散している(好ましくは粒子の形状
で分散している)ものであることが、良好な電極を得る
ために重要である。この観点から、バインダー組成物を
構成する分散媒に対するバインダーのゲル含量は、50
%以上100%以下、好ましくは60%以上100%以
下、より好ましくは70%以上100%以下であること
が、高温及び低温での充放電サイクル特性上からも高温
及び低温初期放電容量の点からも望ましい。更に保存特
性の点からも、前述の範囲が好ましい。このゲル含量
は、対分散媒ゲル含量(以下、ゲル含量G2という)で
あり、バインダー組成物を形成している分散媒に対する
ポリマー粒子の不溶分で表される。
【0029】ゲル含量G2は、上記ゲル含量G1の算出
の時と同じ方法で作成されたバインダー膜の重量(D
1)と、この膜をその100重量倍量の分散媒(バイン
ダー組成物の調製に用いた分散媒と同じ分散媒を使用す
る。ただし、分散媒が水の場合はトルエンを使用す
る。)に30℃で24時間浸漬した後、200メッシュ
のふるいで濾過して、ふるい上に残留した不溶分を12
0℃、24時間真空乾燥させたものの重量(D3)につ
いて測定し、次式に従って算出した値である。 ゲル含量G2(%)=(D3/D1)×100
【0030】また、本発明においてはバインダー組成物
には、上述した各種の成分以外の添加剤を分散または溶
解させることができる。
【0031】2.電池電極用スラリー 本発明のスラリーは、上述した本発明のバインダー組成
物に活物質や添加剤を混合して得られるものである。 (活物質)活物質は、通常のリチウムイオン二次電池用
電極の製造に使用されるものであれば、いずれであって
も用いることができる。負極活物質としては、アモルフ
ァスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、MCMB、ピ
ッチ系炭素繊維などの炭素質材料、ポリアセン等の導電
性高分子、複合金属酸化物やその他の金属酸化物などが
例示される。低シスポリブタジエンを含有する本発明の
バインダーは、特に炭素質材料に対して著効を示す。
【0032】正極活物質としては、TiS、Ti
、非晶質MoS、Cu、非晶質V
−P、MoO、V、V13などの遷
移金属酸化物やLiCoO、LiNiO、LiMn
、LiMnなどのリチウム含有複合金属酸化
物などが例示される。さらに、ポリアセチレン、ポリ−
p−フェニレンなどの導電性高分子など有機系化合物を
用いることもできる。低シスポリブタジエンを含有する
本発明のバインダーは、特にLiCoO、LiNiO
などのリチウム含有複合金属酸化物に対して著効を示
す。
【0033】本発明の電池電極用スラリー中の活物質の
量は特に制限されないが、通常、バインダー組成物の固
形分に対して重量基準で1〜1000倍、好ましくは2
〜500倍、より好ましくは5〜500倍、とりわけ好
ましくは10〜300倍になるように配合する。活物質
量が少なすぎると、集電体に形成された活物質層に不活
性な部分が多くなり、電極としての機能が不十分になる
ことがある。また、活物質量が多すぎると活物質が集電
体に十分固定されず脱落しやすくなる。なお、電極用ス
ラリーに分散媒である水や有機分散媒を追加して集電体
に塗布しやすい濃度に調節して使用することもできる。
【0034】(添加剤)必要に応じて、本発明のスラリ
ーには、その他のバインダー(ポリマー(1))やバイ
ンダー組成物に添加したのと同じ粘度調整剤や流動化剤
(ポリマー(2)等)を添加してもよい。さらに、グラ
ファイト、活性炭などのカーボンや金属粉のような導電
材等を添加することもできる。
【0035】3.リチウムイオン二次電池電極 本発明の電極は、本発明のバインダーを含有しているも
のであり、好ましくは上本発明のスラリーを金属箔など
の集電体に塗布し、乾燥して集電体表面に活物質を固定
することで製造される。本発明の電極は、正極、負極何
れであってもよい。集電体は、導電性材料からなるもの
であれば特に制限されないが、通常、鉄、銅、アルミニ
ウム、ニッケル、ステンレスなどの金属製のものである
が、特に正極の場合は、アルミニウム、負極の場合は、
銅を用いた場合、本発明のバインダーの効果が最もよく
現れる。形状も特に制限されないが、通常、厚さ0.0
01〜0.5mm程度のシート状のものである。
【0036】スラリーの集電体への塗布方法は特に制限
されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、
リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、
エクストルージョン法、浸漬法、ハケ塗り法などによっ
て塗布される。塗布する量も特に制限されないが、水や
有機分散媒を乾燥等の方法によって除去した後に形成さ
れる活物質層の厚さが0.005〜5mm、好ましくは
0.01〜2mmになる量が一般的である。乾燥方法も
特に制限されず、例えば温風、熱風、低湿風による乾
燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による
乾燥が挙げられる。乾燥条件は、通常は応力集中によっ
て活物質層に亀裂が入ったり、活物質層が集電体から剥
離しない程度の速度範囲の中で、できるだけ早く水や有
機分散媒が除去できるように調整する。更に、乾燥後の
集電体をプレスすることにより電極の活物質の密度を高
めてもよい。プレス方法は、金型プレスやロールプレス
などの方法が挙げられる。
【0037】4.リチウムイオン二次電池 本発明のリチウムイオン二次電池は、電解液や本発明の
リチウムイオン二次電池用電極を含み、必要に応じてセ
パレーター等の部品を用いて、常法に従って製造される
ものである。例えば、次の方法が挙げられる。すなわ
ち、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、電
池形状に応じて巻く、折るなどして、電池容器に入れ、
電解液を注入して封口する。電池の形状は、コイン型、
ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など何れで
あってもよい。
【0038】電解液は、通常リチウムイオン二次電池に
用いられるものであれば、液状、ゲル状、固体状などい
ずれでもよく、負極活物質、正極活物質の種類に応じて
電池としての機能を発揮するものを選択すればよい。電
解質としては、例えば、従来より公知のリチウム塩がい
ずれも使用でき、LiClO、LiBF、LiPF
、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF
、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl
、LiCl、LiBr、LiB(C、CF
SOLi、CHSOLi、LiCFSO
LiCS0、Li(CFSON、低級
脂肪酸カルボン酸リチウムなどが挙げられる。
【0039】この電解質を溶解させる溶媒(電解液溶
媒)は特に限定されるものではない。具体例としてはプ
ロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレ
ンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカー
ボネートなどのカーボネート類;γ−ブチルラクトンな
どのラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメト
キシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、
テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランな
どのエーテル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキ
シド類;1,3−ジオキソラン、4―メチル−1,3―
ジオキソランなどのオキソラン類;アセトニトリルやニ
トロメタンなどの含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、
酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピ
オン酸エチルなどの有機酸エステル類;リン酸トリエス
テルや炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピルの
ような炭酸ジエステルなどの無機酸エステル類;ジグラ
イム類;トリグライム類;スルホラン類;3−メチル−
2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン類;1,
3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、ナフ
タスルトンなどのスルトン類;等が挙げられ、これらは
単独もしくは二種以上の混合溶媒が使用できる。さらに
ゲル状の電解液を用いるときはゲル化剤を加えることも
できる。
【0040】
【発明の効果】本発明のバインダーをリチウムイオン二
次電池の電極製造に用いると高温及び低温での充放電サ
イクル特性と電池の保存特性に優れ、更に集電体との結
着性にも優れた電極が得られるため、充放電特性に優れ
たリチウム二次電池や非水電解液キャパシターを製造す
ることができる。
【0041】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を説明する
が、本発明はこれに限定されるものではない。尚、本実
施例に於ける部及び%は、特に断りがない限り重量基準
である。
【0042】実施例及び比較例中の評価条件は以下通り
である。 折り曲げ 電極を幅3cm×長さ9cmに切り、長さ方向の中央
(4.5cmの所)を直径1mmのステンレス棒を支え
にして180°折り曲げたときの折り曲げ部分の塗膜の
状態を、10枚の電極片についてテストし、10枚全て
にひび割れまたは剥がれが全く生じていない場合を○、
1枚以上に1箇所以上のひび割れまたは剥がれが生じた
場合を×と評価した。 ピール強度 電極をと同様に切り、これにテープ(セロテープ:ニ
チバン製、JIS Z1522に規定)を貼り付け電極
を固定し、テープを一気に剥離したときの強度(g/c
m)を各10回づつ測定し、その平均値を求めた。
【0043】 高温及び低温初期放電容量 後述の高温及び低温充放電サイクル特性測定時にそれぞ
れ測定される5サイクル目の放電容量である。 高温及び低温充放電サイクル特性 下記の方法で製造したコイン型電池を用いて65℃雰囲
気下と−10℃雰囲気下、負極試験(実施例1〜6およ
び13、比較例1〜5)は、正極を金属リチウムとして
0Vから1.2Vまで、正極試験(実施例7〜12、比
較例6〜10)は、負極を金属リチウムとして3Vから
4.2Vまで、0.1Cの定電流法によって5サイクル
目の放電容量(単位=mAh/g:活物質当たり(以
下、電気容量に関しては同じ))と50サイクル目の放
電容量(単位=mAh/g)を測定し、5サイクル目の
放電容量に対する50サイクル目の放電容量の割合を百
分率で算出した値であり、この値が大きいほど容量減が
少なく良い結果である。
【0044】 ヒートショック法による保存特性 下記の方法で製造したコイン型電池を用いて、4.2V
に充電されている電池を20℃雰囲気下でと同様にし
て5サイクル目の放電容量を測定した後、この電池を8
0℃雰囲気下に30分間、次いで−20℃雰囲気下に3
0分間放置するヒートショック・サイクルを10サイク
ル行い、再び20℃雰囲気下に戻し、と同様にして5
サイクル目の放電容量を測定し、ヒートショック・サイ
クル前の放電容量に対するヒートショック・サイクル後
の放電容量の割合を百分率で算出した値であり、この値
が大きいほどヒートショックによる影響のない、保存特
性に優れる良い結果である。
【0045】 コイン型電池の製造 正極スラリーをアルミニウム箔(厚さ20μm)に、ま
た負極スラリーを銅箔(厚さ18μm)にそれぞれドク
ターブレード法によって均一に塗布し、120℃、15
分間乾燥機で乾燥した後、さらに真空乾燥機にて5mm
Hg、120℃で2時間減圧乾燥した後、2軸のロール
プレスによって活物質密度が正極3.2g/cm、負
極1.3g/cmとなるように圧縮した。この電極を
直径15mmの円形に切り抜き、直径18mm、厚さ2
5μmの円形ポリプロピレン製多孔膜からなるセパレー
ターを介在させて、互いに活物質が対向し、外装容器底
面に正極のアルミニウム箔または金属リチウムが接触す
るように配置し、さらに負極の銅箔または金属リチウム
上にエキスパンドメタルを入れ、ポリプロピレン製パッ
キンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直
径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.2
5mm)中に収納した。この容器中に電解液を空気が残
らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介さ
せて外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャッ
プをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20m
m、厚さ約2mmのコイン型電池を製造した。電解液は
プロピレンカーボネート/エチレンカーボネート/ジエ
チルカーボネート/ジメチルカーボネート/メチルエチ
ルカーボネート=20/20/20/20/20(20
℃での体積比)にLiPFが1モル/リットルの濃度
で溶解した溶液を用いた。
【0046】 ポリブタジエンのシス−1,4構造含
量及び1,2−ビニル構造含量 試料をアルミ皿に取り、105℃で5時間、乾燥機にて
乾燥した後、乾燥試料を、メタノールを用いてソックス
レーで8時間抽出を行う。抽出残を真空乾燥機で乾燥し
て得られる抽出残分を細断し、直径5mmのNMR測定
用試料管に詰め、重水素化クロロホルムを加えて、室温
13C−NMR測定機(「EX−400」日本電子
製)を用いて、得られるH−NMRスペクトルから算
出した。
【0047】(実施例1〜6、比較例1〜4)分散液A
〜Jの固形分2部相当分と、ポリマー(2)2部と、天
然黒鉛96部とを混合し、さらにスラリーの固形分濃度
が42%となるようにそれぞれの実施例及び比較例で用
いた分散媒と同じ分散媒を加えて撹拌し、均一なスラリ
ーを得た。得られたスラリーを用いて上述の方法により
負極電極を製造し、電池性能を評価した。ポリブタジエ
ンのゲル含量及び結果を表1及び2に示す。
【0048】尚、ポリブタジエン分散液A、DおよびE
は乳化重合により得られたポリブタジエンラテックスで
ある。ポリブタジエン分散液BおよびCは、乳化重合に
より得られたポリブタジエンラテックスに目的とする分
散媒を加え、水を除去して分散媒置換したものである。
ポリブタジエン分散液Fはリチウム系触媒存在下でアニ
オン重合により得たポリブタジエンをテトラヒドロフラ
ンに溶解させた後、水中に懸濁分散せしめ、テトラヒド
ロフランを除去して得られた分散液に、目的とする分散
媒を加えて分散媒置換したものである。ポリブタジエン
分散液G、IおよびJはコバルト系触媒を用いた溶液重
合により得られたポリブタジエンをテトラヒドロフラン
に溶解させた後、水中に懸濁分散せしめ、テトラヒドロ
フランを除去して得られた分散液である。ポリブタジエ
ン分散液Hは、コバルト系触媒を用いた溶液重合により
得られたポリブタジエンをテトラヒドロフランに溶解さ
せた後、水中に懸濁分散せしめ、テトラヒドロフランを
除去して得られた分散液に、目的とする分散媒を加えて
分散媒置換したものである。
【0049】また、ポリマー(2)は、分散媒が水であ
るポリブタジエン分散液に対してはカルボキシメチルセ
ルロース・ナトリウム(表1中ではCMC−Naと表
記)、分散媒がN−メチル−2−ピロリドン(表1中で
はNMPと表記)であるポリブタジエン分散液に対して
はエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含量
44モル%;表1中ではEVAと表記)、分散媒が乳酸
エチル(表1中ではELと表記)であるポリブタジエン
分散液に対してはポリアクリロニトリル(表1中ではA
Nと表記)を用いた。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】(実施例7〜12、比較例5〜8)ポリブ
タジエン分散液A〜Jの固形分1.5部相当分と、ポリ
マー(2)1.5部と、コバルト酸リチウム92部と、
導電剤としてカーボンブラック5部天然黒鉛96部とを
混合し、さらにスラリーの固形分濃度が55%となるよ
うにそれぞれの実施例及び比較例で用いた分散媒と同じ
分散媒を加えて撹拌し、均一なスラリーを得た。こうし
て得られたスラリーを用いて上述の方法により正極電極
を製造し、電池性能を評価した。結果は表3及び4に示
す。
【0053】尚、ポリマー(2)は、分散媒が水である
ポリブタジエン分散液に対してはカルボキシメチルセル
ロース・ナトリウム(表1中ではCMC−Naと表
記)、分散媒がN−メチル−2−ピロリドン(表1中で
はNMPと表記)であるポリブタジエン分散液に対して
はエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含量
44モル%;表1中ではEVAと表記)、分散媒が乳酸
エチル(表1中ではELと表記)であるポリブタジエン
分散液に対してはポリアクリロニトリル(表1中ではA
Nと表記)を用いた。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】(実施例13)実施例1で用いたスラリー
に、さらにスチレン・ブタジエンラテックス(固形分5
0%、日本ゼオン社製、商品名「Nipol LX42
6」)を固形分が0.4部となるように加えた他は、実
施例1と同様にして負極電極を製造し評価した。その結
果、折り曲げ試験でひび割れや剥がれが認められたもの
はなく、ピール強度は45g/cm、高温初期放電容量
は305mAh/g(活物質当たり)、高温充放電サイ
クル特性は73%、低温初期放電容量は296gAh/
g(活物質当たり)、低温充放電サイクル特性は65
%、保存特性は85%と良好な電池性能であった。
【0057】以上の結果から、シス−1,4構造含量が
5重量%以上、50重量%以下のポリブタジエンをバイ
ンダーとして電極製造に用いると、電池特性に優れたリ
チウムイオン二次電池が得られることが判った。
フロントページの続き Fターム(参考) 4J002 AB03X AC03W AC05W BB10X BE03X BG10X BM003 DA017 DA027 DA037 DE098 DE188 DE189 DG028 DH029 DK009 EC036 EE036 EH036 EL066 EN066 EP016 EU026 EV216 EV306 FA047 FD206 GJ01 GQ00 HA06 5H003 AA01 AA03 AA04 AA06 BB11 BD01 BD04 5H014 AA02 EE01 HH01 HH08

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シス−1,4構造含量が5%以上50%
    以下であるポリブタジエンを含有するリチウムイオン二
    次電池電極用バインダー。
  2. 【請求項2】 シス−1,4構造含量が5%以上50%
    以下であるポリブタジエンが、常圧での沸点が80℃以
    上350℃以下の分散媒に分散された分散体であるリチ
    ウムイオン二次電池電極用バインダー組成物。
  3. 【請求項3】 請求項2記載のバインダー組成物と活物
    質とを含有するリチウムイオン二次電池電極用スラリー
  4. 【請求項4】 請求項1記載のバインダーを含有するリ
    チウムイオン二次電池用電極。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の電極を用いて製造された
    リチウムイオン二次電池。
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