JP2000515026A - 低温濾過ビールの製造法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 本発明は低温濾過されたビールの製造法に関する。前記の方法に従うと、ビールは、カルシウムイオンを吸収することができる膜フィルターを通して濾過される。濾過後、前記の膜フィルターは、水性物質により洗浄され、リンスされる。次に、洗浄され、リンスされた膜フィルターを再使用することができる。本発明は、５．０未満のｐＨをもつ酸性水性物質がリンスのために使用されること又は、リンスのために使用される物質が、それが含有するカルシウムの量を減少させるために処理されることを特徴としている。本発明の方法は、噴き出しの傾向の少ないビールを製造する手段を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】 低温濾過ビールの製造法 本発明は、低温濾過ビールの製造法であって、カルシウムイオンを吸収するこ とができそして、濾過後に、水性媒質で洗浄され、リンスされる膜フィルターを 通してビールが濾過され、その結果、洗浄され、リンスされた膜フィルターが、 新たな濾過のために使用される、製造法に関する。 拡大される市場チャンネル起因し、ビールはそれを貯蔵可能にさせるために、 発芽防止（degerminated）されなければならない。今日、ビールは、主として発 芽防止のために低温殺菌される。この目的のために、例えばビン又は缶入りビー ルは、胞子を殺す６２と６８℃の間の温度に加熱される。 しかし、この低温殺菌は著しいエネルギーの消費を伴う。それは更に、供給さ れるエネルギーが、製品を損ない、そして制御が困難な化学反応の引金となる可 能性があるという欠点をもつ。これらの反応は例えば、製品の香り（「低温殺菌 の味」）に悪い影響を与える可能性があり、そして更に、望ましくない物質が形 成される危険性がある。従って、低温殺菌は、大量のエネルギー消費を伴い、そ してその結果、環境に有害な効果をもちそして、製品の品質を低下させる、比較 的高価な胞子除去法である。 その他の胞子除去法として、膜フィルターを通す低温濾過法が知られている。 低温濾過ビールは、例えば米国、日本及び韓国において、いわゆる「生ビール」 として提供されている。欧州においては、このようなビールは、それらが、工業 的酵素を含むので禁止されている。これらの 工業的酵素により、この方法に固有な低温濾過の欠点：フィルターの早期の目詰 まり、が抑制される。この目詰まりは、膜フィルターの上流側上への、ビールか ら濾出される物質の堆積による。堆積物はフィルターからの除去が困難か不可能 であり、フィルターの使用寿命を短縮させる。これは、膜フィルターが高価なの で、ビールの製造コストを増加させる。 フィルターの使用寿命を長くするために、膜フィルターの製造業者は、プロテ アーゼ、グルカナーゼ及びキシラナーゼ、並びに界面活性剤、酸／塩基のような 化学物質で、そして酸化剤で、それらを処理することにより、使用された膜を洗 浄して、それによりそれらを再使用可能にさせることを推奨した。この洗浄は例 えば、２段階で、第１の段階の洗浄は前記の酵素により、次に、場合によっては 前記の化学物質による更なる洗浄により、実施することができる。 例えば、約３２０ｍ²のフィルター面積に対する具体的な洗浄法は、各５，０ ００ヘクトリッター（ｈｌ）濾過後の酵素による洗浄及び、各２０，０００ｈｌ 濾過後の追加的な化学物質による洗浄を含む。このような洗浄を受けた約３２０ ｍ²の前記のフィルター面積をもつフィルターの具体的な使用寿命は、約１００ ，０００ヘクトリッター（ｈｌ）である。 第１の洗浄法を受けた後、洗浄直後の、あるタイプの膜フィルターは、いわゆ る「噴き出し」の傾向があるビン入り又は缶入りビールを濾過することが知られ ている。 「噴き出し」の語は、ビン又は缶を開ける時のビールの上の天然の発泡を意味 することが知られている。そうすることにより、二酸化炭素が突然噴き出し、ビ ン又は缶が多少とも大規模に空にされ得る強力な発泡 を伴う。 消費者は「噴き出し」のこの傾向を製品の欠陥とみなし、それは醸造業者に重 大な経済的不利益をもたらし得ることは明白である。 噴き出しの発生の真の理由は未知である。噴き出しが、ビール製造に使用され る原料に関連していることが推定される。低分子量化合物、例えば、脂肪酸、ホ ップの辛み物質、ポリペプチド、シュウ酸及びカビの真菌による侵入から由来す る物質が、いわゆる「噴き出し促進物質」と見なされる。更に、膜濾過が噴き出 しの傾向を減少させる可能性があることが知られている。しかし、異なる穴サイ ズをもつ膜フィルターは異なる結果をもたらす。 本出願人の経験に従うと、噴き出しの傾向は、ある種の、新たに洗浄された膜 フィルターを通して濾過されるビールで特に強い。これは、少なくとも一部がポ リアミドで製造されている膜フィルターにおいて、特に著しい。従って、濾過が 膜フィルターにより実施され、しかし、洗浄法の直後に濾過されるビールの噴き 出し傾向が、少なくとも、減少されている低温濾過ビールの製造法を提供するこ とが、本発明の目的である。 カルシウムイオンを吸収することができ、そして濾過後に水性媒質で洗浄され 、リンスされる膜フィルターを通してビールが濾過され、その結果、洗浄され、 リンスされた膜フィルターが新たな濾過に使用される、低温濾過ビールの製造の 、本発明に従う方法は、リンスのために、５．０未満のｐＨをもつ酸性の水性媒 質が使用されること、又は、リンスのために使用される媒質が、カルシウムイオ ン含量の減少を目的とする処理を受けること、を特徴とする。 本発明は、噴き出しの傾向が、ビールがカルシウムイオンを吸収する ことができる膜フィルターを通して濾過される場合、特に強力であるという知見 に基づいている。これは例えば、フィルターが少なくとも一部はポリアミドで製 造されている場合である。洗浄後に、このようなフィルターを水性媒質、例えば カルシウムイオンを含む水道水、でリンスする場合、これらは吸収されて、その ため、フィルターがカルシウムイオンで充填される。カルシウムイオンで充填さ れたこのようなフィルターをビールの新たな濾過に使用する場合、これらのカル シウムイオンは、濾過されるビールの酸性ｐＨにより、濾過の開始時にフィルタ ーにより再度放出される。従って、これらのカルシウムイオンがビール中に侵入 する。本出願人は、ビール中に存在するカルボン酸陰イオン、例えばシュウ酸イ オンと、放出されたカルシウムイオンが、ＣＯ₂ガスの泡の形成の種晶として働 く微細な結晶を形成する、と推定する。 噴き出しの傾向は、新たに洗浄されたフィルターのカルシウムイオンの最初の 放出に由来する可能性があることが、今明らかにされた。従って本発明に従う酸 性のリンスが、洗浄過程中に膜フィルターにより吸収されたカルシウムイオンを 再度すすぎ落とす役目をする。 例えばイオン交換装置による、カルシウムイオン含量の減少、すなわち脱カル シウム化、を目的にした処理を受けた水性媒質が、洗浄及びリンスに使用される 場合、本発明に従う酸性のリンスは不要である。更にこの場合には、新たに洗浄 されたフィルターを通して濾過されるビールは噴き出しの傾向を示さない。 適切には、酸性の水性媒質は、４．５未満の、好ましくは３．０と４．０の間 の、そして特には、３．５未満のｐＨをもつ。 ｐＨの調整のためには、適切には有機酸、特には乳酸が使用される。 更に、本発明は、麦芽、ホップ及び水から製造されるビールが膜濾過を受け、 そして、カルシウムイオン含量の減少を目的にする処理を受けた水が、ビールの 製造のために使用されることを特徴とする、低温濾過ビールの製造法に関する。 本発明は、カルシウムイオンと結合するすべての膜フィルターに応用すること ができる。これは例えば、少なくとも一部分はポリアミドで製造されている膜フ ィルターの場合である。該ポリマーが、カルシウムイオンと結合することができ る遊離カルボン酸基又は類似の反応基を含んでなると推定される。 下記に、本発明がより詳細に説明される。 膜濾過のためには、当該技術分野で通常使用されるポリアミドの膜フィルター が使用された。濾過後、フィルターは以下の方法で、最初に酵素により、次に化 学的に洗浄される： 酵素による洗浄に対しては、詰まったフィルターを、５０℃の温度でｐＨ５（ 界面活性剤及び酸性成分（P3-Ultrasil 75;製造業者:Henkel）の混合物の０．０ ５％水溶液により調整された）をもつ、β−グルカナーゼ及びキシラナーゼ（P3 -Ultrasil 65;製造業者:Henkel）の混合物の１％水溶液で１時間処理した。以後 この処理を繰り返した。 次に、フィルターを５０℃の温度で、９〜９．５のｐＨ（界面活性剤及びアル カリ性成分（P3-Ultrasil 91;製造業者:Henkel）の混合物の０．１５％水溶液に より調整された）をもつ、界面活性剤、グルカナーゼ及びプロテアーゼ（P3-Ult rasil 62;製造業者:Henkel）の混合物の０．５％水溶液で３時間処理し、その後 温水道水（５０℃）でリンスした。 化学的洗浄のためには、フィルターを、６０℃で界面活性剤及び酸性 成分(P3-Ultrasil 75;製造業者:Henkel)の混合物の１％水溶液で３０分間処理し 、次いで新鮮な水道水でリンスした。その後、フィルターを６０℃の温度で、界 面活性剤及びアルカリ性成分(P3-Ultrasil 91;製造業者:Henkel)の混合物１％並 びに、界面活性剤及び酸素供与体（P3-Ultrasil 05;製造業者:Henkel）の混合物 １％を含む水溶液で３０分間処理し、その後新鮮な水道水でリンスした。次いで 、フィルターを、界面活性剤及び酸性成分（P3-Ultrasil 75;製造業者:Henkel） の混合物の０．５％水溶液で３０分間もう一度処理し、その後、リンス水が新鮮 水の電気伝導度を得るまで、新鮮な水道水でリンスした。 使用された膜フィルターの洗浄及びリンスに使用された水は、それぞれの場合 脱カルシウム化されていない水道水であった。 最初に、前記の方法に従って洗浄された、この膜フィルターを通して濾過され たビールは、噴き出しの傾向を示すことが示された。噴き出しの傾向をもたない ビールを再度濾過できるのは、１平方メーターのフィルター面積当たり、約０． ８ｈｌ以上の濾過量において、そしてカルシウムの放出が終結した時のみであっ た。 前記の方法に従って洗浄された同じフィルターを、そのｐＨが、乳酸の添加に より４．５に調整された水でリンスした場合、リンス水は、明らかに、新たに洗 浄された膜フィルターから出るカルシウムイオンの濃度が濃くなったことが示さ れた。酸性のリンス水でリンスされたこの膜フィルターを通して濾過されたビー ルは噴き出しの傾向を示さなかった。 洗浄及びリンスのために脱カルシウム化水を使用した時に、同様な効果を認め ることができた。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 モサー，ジルベルト オーストリア・エイ―8055グラーツ・トリ ースターシユトラーセ103

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １． カルシウムイオンを吸収することができ、濾過後水性媒質で洗浄及びリン スされる膜フィルターを通してビールが濾過され、それにより、洗浄され、リン スされた膜フィルターが新たな濾過のために使用される、低温濾過ビールを製造 するための方法であって、 リンスのために、５．０未満のｐＨをもつ酸性水性媒質が使用されるか又は、 リンスのために使用される媒質が、カルシウムイオン含量の減少を目的とする処 理を受けていることを特徴とする方法。 ２． 酸性水性媒質が４．５未満のｐＨをもつことを特徴とする、第１項に記載 の方法。 ３． 水性媒質が、３．０と４．０の間の、特には３．５未満のｐＨをもつこと を特徴とする、第１項又は第２項のいずれか１項に記載の方法。 ４． リンスのために使用される酸性の水性媒質が有機酸を含むことを特徴とす る、第１項ないし第３項のいずれか１項に記載の方法。 ５． 酸性の水性媒質に含まれる酸が乳酸であることを特徴とする、第４項記載 の方法。 ６． カルシウムイオン含量の減少を目的とする処理を受けている水が、ビール の製造に使用されることを特徴とする、麦芽、ホップ及び水から製造されるビー ルが膜濾過を実施される、低温濾過ビールの製造方法。 ７． 少なくとも一部分はポリアミドから製造されている膜フィルターが使用さ れることを特徴とする、第１項ないし第６項のいずれか１項に記載の方法。