【発明の詳細な説明】
抗炎症活性及び抗ウイルス活性を有する新規な種類の化合物、これらを単 独
で又は逆転写酵素抑制剤と組合せて含有するウイルスの複製を阻止、予防又は排
除するための組成物及びその使用方法
発明の背景
1.発明の分野
本発明は抗炎症活性、抗ウイルス活性及び気管支拡張活性を有する、更に、逆
転写酵素抑制剤と組合せた場合、ヒト細胞集団におけるレトロウイルスの複製の
阻止又は抑制又はレトロウイルスの排除に有用な追加の又は相乗効果を示す新規
な種類の化合物に関する。
2.関連技術の説明
“後天性免疫不全症候群”(“Acquired Immuno-Deficiency Syndrome”(“A
IDS”)という用語は、日和見感染(opportunistic infection)とカポジ肉腫の出
現が極めて活発に進展することを特徴とする、ホモセクシュアルにおける細胞免
疫不全の状態を表現するのに1981年に初めて使用された[CDC(Center for Diseas
e Control),MMWR,1981;30:305-308.DC]。1983年には、現在、HIV(Human Immunod
eficiency Virus)と呼ばれるレトロウイルスがAIDS患者から単離された(Barre-S
inoussi F等,Science,1983;220:868-871]。
過去、数年来、研究者及び臨床医力HIVに感染した個体について、しばしば長
期間に亘ってHIV疾患とAIDSを研究し、注意した結果、かなりの経験が得られた
。この経験に基づいて、HIVの感染と疾患の基礎となる病原機構は一元的なもの
ではなく、むしろ、非常に複雑なものであることが明らかになった(Fauci AS,Sc ience
,1988;239:617)。HIV疾患についての包括的治療方法を設計するための試み
においてはこの事実を考慮にいれることが必要であった(Fauci,Science,1993;26
2:1011-1018)。
多数の2'-3'-ジデオキシヌクレオシドがレトロウイルスの感染、特に、
HIV及びAIDSの処置又は予防に有用であることが認められいる。かかる物質の例
としては2'-3'-ジデオキシ-シトシン(ddC)、2'-3'-ジデオキシ-アデノシン(ddA)
、2'-3'-ジデオキシ-グアノシン(ddG)、2'-3'-ジデオキシ-イノシン(ddI)、2'-3
'-ジデオキシ-チミジン(ddT)、3'-アジド-2'-3'-ジデオキシチミジン(AZT)、2'-
デオキシ-3'-チオシチジン(3TC)及び2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(d4
T)が挙げられる。
しかしながら、レトロウイルスの抑制(suppresion)、特に、HIVの予防(preven
tion)及び/又は阻止(inhibition)及び/又は抑制のためのより効果的な処置が依
然として求められている。残念ながら、現在、入手し得る薬剤はウイルスの複製
と拡散を阻止するのに、部分的に有効であるにすぎない;かかる効果は永久的な
ものではなく、ウイルスを排除する(eliminate)のには全く効果を示さない(Hirs
ch MS等,New Engl.J.Med,1993,328:1686-1695)。3'-アジド-2'-3'-ジデオキシ
チミジン、すなわち、アジドチミジン(azidothymidine)(AZT)をHIV疾患の進行し
た患者に投与した場合、明らかな、カットされた(cut)、但し、制限された利益
が認められるが、早期の介入(early intervention)の利益は、通常、一時的なも
のに過ぎず、疾患と死亡の経過に関して重要な、長期間の利点を与えるものでは
ない(Concorde Coordinating Committee,The Lancet,1994;343:871-881)。
効果的な抗HIV化学療法は少なくとも下記の3つの要件を満たすことに基づい
ている。第1に、医薬の弊害(drug failure)を回避するために、完全なウイルス
の抑制を行うことができることが必要である(Richman D,Aids、Res.Hum.Retrovi r
.,1994;10:901-905)。第2に、新規な抗レトロウイルス剤は毒性が低くかつAZT
より抗ウイルス活性の大きい化合物を包含しなければならない。第3に、追加的
な又は相乗的効果を提供するかつ薬剤耐性分離物(drug resistant isolate)の存
在の可能性の低い医薬の組合せ(drug combination)が要求されている。
HIVウイルスの細胞内への侵入とHIV粒子のアンコーテイングの後、ウイルスRN
AゲノムのDNAレプリカへの逆転写が生起する。種々の形の非組込み(unintegrate
d)ウイルスDNA(これは、5’末端と3’末端とに長い繰返し
体(repeat)[LTRs]を含有している)の内、2-LTR線状形だけが宿主ゲノム中に組
込まれることができる。かかるプロセスはTリンパ球の細胞活性化/複製に厳密
に依存していると思われるが、“休止”(“resting”)T細胞は明らかにHIVの
感染を受ける(Zack J,A等,Cell,1990;61:213-222)。更に、非活性化T細胞にお
いては、逆転写プロセスの一部は、細胞が十分な活性化を受けた場合には数時間
、存在することができかつ宿主ゲノム中に組込まれたままであることができる不
完全DNA分子の蓄積を生じるプロセスも生起し得る(Zack J,A等,Cell,1990;61:21
3-222)。従って、感染した“休止”CD4+Tリンパ球細胞は感染した個体における
永続的ウイルス貯蔵体であると考えることができ(Bukrinsky M.I等,Science,199
1;254:423-427)、リンパ様組織においては、潜在形の細胞内ウイルスとして、高
いHIV量(HIV burden)も観察されている(Embretson J.等,Nature,1993;362:359-3
62)。
新規な種類の化合物が、単独で又は逆転写酵素抑制剤と組合せた場合、ヒト細
胞集団、特に、HIV-感染休止ヒトリンパ球において、レトロウイルスの複製の阻
止及びレトロウイルスの排除に有用であることが認められた。この種類の化合物
には、新規化合物であるD-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸;D-ア
セトアミド-N-ヒドロキシスクシンイミド、D-トリフルオロアセトアミド-N-ヒド
ロキシスクシンアミド酸、D-トリフルオロアセトアミド-N-ヒドロキシスクシン
イミド及びその塩が包含される。更に、これらの化合物は、もし存在するとして
も、非常に低い細胞毒又は細胞増殖抑制活性を有するということにおいて、他の
抗ウイルス剤より優れた利点を有しており、このことにより、これらの化合物は
感染細胞集団内でその抗ウイルス効果を利用するために使用された場合、広範囲
の治療的用途に使用し得る。
更に、これらの化合物は喘息の処置に有用であり、関節炎及び喘息状疾患を包
含するある範囲の疾患の処置のための抗炎症剤及び気管支拡張剤として治療に使
用し得ることが認められた。R.M.McMillan及びE.R.H.Walker,“Designing Thera
peutically Effective 5-Lipogenase Inhibitors”Elsevier Science Publisher
s Ltd,TIPS,Vol.13,(1992,8),pp323-330には3つのクラスの5-リポキシゲナーゼ
抑制剤:“レドックス”抑制剤、“ノン
レドックス”抑制剤及び“鉄リガンド”抑制剤が存在すること及びヒドロキシメ
ート化合物は強力な鉄リガンド抑制剤であることが開示されている。
理論により拘束されるものではないが、強力な気管支収縮剤であることが知ら
れているロイコトリエンの合成を阻害することにより、この新規な種類のヒドロ
キシメート化合物は、特に、関節炎及び喘息状疾患を包含するある範囲の疾患に
おいて抗炎症剤及び気管支拡張剤として治療に使用し得る。ここで引用されてい
る全ての文献は、全体として、これを参照するために、説明として引用されてい
ることに留意すべきである。
発明の要約
本発明は、下記の線状又は環状構造式:
(式中、R1は場合によりハロゲンでモノ-、ジ-又はトリ-置換された、炭素数1
〜4個のアルキル基である;R2、R3及びR4の各々は水素であるか又は1〜8
個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を含有
するアルケニル基、2〜8個の炭素原子を含有するアルキニル基、3〜6個の炭
素原子を含有するシクロアルキル基、4〜6個の炭素原子を含有するシクロアル
ケニル基又は7〜11個の炭素原子を含有するビシクロアルキル基であり、これら
の基は場合によりハロゲン、ヒドロキシル、1〜4個の炭素原子を含有するアル
キルオキシ、各々のアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有しているジアルキル
アミノ、アルキル基が1〜4個の炭素原子を含有しているフェニルアルキル、3
〜6個の炭素原子を含有するシクロアルキル、場合により置換されているフェニ
ル、シアノ、カルボキシル又はアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有している
アルキルオキシカルボニルから選ばれた少なくとも1個の置換基によって置換さ
れている;nは0〜6
の整数である)を有する化合物;及びその塩に関する。
特に、かかる化合物は、D-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸(DANH
SA)、D-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンイミド、D-トリフルオロアセトアミ
ド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸(DTFANHSA)、D-トリフルオロアセトアミド-N-
ヒドロキシスクシンイミド及びその塩からなる群から選ばれる。
本発明は、更に、前記したごとき化合物と、1種の逆転写酵素抑制剤(RT抑制
剤)とからなる組成物に関する;この逆転写酵素抑制剤はこの組成物が医薬を構
成する場合には、相乗効果を示す組合せの成分である。好ましくは、RT抑制剤は
、特に、AZT、ddC、ddA、ddG、ddI、ddT、3TC及びd4Tからなる群から選ばれたジ
デオキシヌクレオシドである。例えば、ジデオキシヌクレオシドはddT、AZT、dd
C又は3TCである。
かかる組成物においては、前記したごとき化合物の濃度は、下記の濃度範囲:
約0.5μM〜約20000μM;
約 1μM〜約10000μM;
約 5μM〜約 5000μM;
約 10μM〜約 1000μM
からなる群から選ばれ得る。
かかる組成物においては、RT抑制剤の濃度は下記の濃度範囲:
約0.01μM〜約200μM;
約0.1 μM〜約100μM;
約0.2 μM〜約 10μM;
からなる群から選ばれ得る。
本発明は、更に、前記したごとき化合物又は組成物からなる医薬に関する。
かかる組成物においては、その組成を、場合により、下記の濃度範囲:
約0.5μM〜約20000μM;
約 1μM〜約10000μM;
約 5μM〜約 5000μM;
約10 μM〜約1000μM
からなる群から選ばれた血漿濃度を提供するように更に選択する。
この医薬は、所望ならば、製剤学的に許容される担体、賦形剤、ビヒクル又は
これらの混合物を更に含有する。
前記した医薬は、ウイルスの生成又は拡散の阻止又はウイルスの拡散の抑制又
はウイルスの生成の防止に使用される。このウイルスは、特に、HSVタイプ1、H
SVタイプ2、HBV、HCV、CMV及びエプスタイン-バールからなる群から選ばれる。
このウイルスは、特に、レトロウイルス、例えば、HIV-1、HIV-2、HTLV-1、HT
LV-2及びSIVからなる群から選ばれたレトロウイルスである。
前記した医薬は、抗ウイルス医薬として、免疫刺激物質、免疫調節剤、サイト
キニン、IL-2、IL-12及びインターフェロンからなる群から選ばれたレトロウイ
ルス感染の処置に使用するための他の医薬組成物又は化合物を更に含有する。
前記したごとき医薬の好ましい用途はHIV感染患者及びAIDS患者の処置である
が、これに限定されるのではない。
図面の簡単な説明
図1はHIVウイルスに感染した非活性化ヒトPBMCに対するDANHSAの抗ウイルス
活性の検討結果を図示するものである。
(感染休止ヒトリンパ球におけるHIV-1 p24の生産に対する医薬処理の効果)
図2(a,b,c)は、各々、HIVウイルスに感染した非活性化ヒトPBMCに対する、AZ
Tと組合せたDANHSAの抗ウイルス活性の検討結果を図示するものである。
(感染休止ヒトリンパ球におけるHIV-1 p24の生産に対する医薬処理の効果) 図3(a,b,c)は、各々、HIVウイルスに感染した非活性化ヒトPBMCに対するddC
と組合せたDANHSAの抗ウイルス活性の検討結果を図示するものである。
(感染休止ヒトリンパ球におけるHIV-1 p24の生産に対する医薬処理の効果)
図4(a,b,c)は、各々、HIVウイルスに感染した非活性化ヒトPBMCに対するddI
と組合せたDANHSAの抗ウイルス活性の検討結果を図示するものである。
(感染休止ヒトリンパ球におけるHIV-1 p24の生産に対する医薬処理の効果) 図5(a,b,c)は、各々、HIVウイルスに感染した非活性化ヒトPBMCに対する3TC
と組合せたDANHSAの抗ウイルス活性の検討結果を図示するものである。
(感染休止ヒトリンパ球におけるHIV-1 p24の生産に対する医薬処理の効果)
図6はHIVウイルスに感染した非活性化ヒトPBMCに対するDTFANHSAの抗ウイル
ス活性の検討結果を図示するものである。
(感染休止ヒトリンパ球におけるHIV-1 p24の生産に対する医薬処理の効果) 図7(a,b,c)は、各々、HIVウイルスに感染した非活性化ヒトPBMCに対するAZT
と組合せたDTFANHSAの抗ウイルス活性の検討結果を図示するものである。
(感染休止ヒトリンパ球におけるHIV-1 p24の生産に対する医薬処理の効果)
図8(a,b,c)は、各々、HIVウイルスに感染した非活性化ヒトPBMCに対するddC
と組合せたDTFANHSAの抗ウイルス活性の検討結果を図示するものである。
(感染休止ヒトリンパ球におけるHIV-1 p24の生産に対する医薬処理の効果) 図9(a,b,c)は、各々、HIVウイルスに感染した非活性化ヒトPBMCに対するddI
と組合せたDTFANHSAの抗ウイルス活性の検討結果を図示するものである。
(感染休止ヒトリンパ球におけるHIV-1 p24の生産に対する医薬処理の効果)
図10(a,b,c)は、各々、HIVウイルスに感染した非活性化ヒトPBMCに対する3TC
と組合せたDTFANHSAの抗ウイルス活性の検討結果を図示するものである。
(感染休止ヒトリンパ球におけるHIV-1 p24の生産に対する医薬処理の効果) 発明の詳細な説明
本発明によれば、抗炎症剤及び気管支拡張剤として有用な新規な種類の化合物
が提供される。本発明の化合物は関節炎及び喘息を包含するある範囲の疾患に有
用である。更に、これらの化合物は抗ウイルス活性を有するために有用である。
新規な種類の化合物は、下記の構造:
(式中、R1は場合によりハロゲンでモノ-、ジ-又はトリ-置換された、炭素数1
〜4個のアルキル基である;R2、R3及びR4の各々は水素であるか又は1〜8
個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を含有
するアルケニル基、2〜8個の炭素原子を含有するアルキニル基、3〜6個の炭
素原子を含有するシクロアルキル基、4〜6個の炭素原子を含有するシクロアル
ケニル基又は7〜11個の炭素原子を含有するビシクロアルキル基であり、これら
の基は場合によりハロゲン、ヒドロキシル、1〜4個の炭素原子を含有するアル
キルオキシ、各々のアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有しているジアルキル
アミノ、アルキル基が1〜4個の炭素原子を含有しているフェニルアルキル、3
〜6個の炭素原子を含有するシクロアルキル、場合により置換されているフェニ
ル、シアノ、カルボキシル又はアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有している
アルキルオキシカルボニルから選ばれた少なくとも1個の置換基によって置換さ
れている;nは0〜6の整数である)を有する。
R1が場合によりハロゲンでモノ-、ジ-又はトリ-置換された、炭素数1〜4個
のアルキル基であり、R2、R3及びR4の各々が水素であり、n=1〜4である化
合物がより好ましい。R1がCH3又はCF3であり、R2、R3及びR4の各々が水素で
あり、n=1である化合物が最も好ましい。
本発明によれば、更に、場合により薬剤学的に許容される担体、賦形剤、ビヒ
クル又はこららの組合せを含有する医薬組成物を含めて、これらの化合物を含有
する組成物が提供される。
これらの化合物の一般的な製造方法は下記の通りである:n=0の場合、反応の出発物質はD-セリンである。
合成に関する情報は、更に、Greenstein J.P.,Winitz,M.,Chemistry of the A mino Acids
,John Wiley(ニュウヨーク),1961,p927及び2065;D.Stanley Tarbel
l,Yutaka Yamamoto及びBarry M.Pope,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,Vol.69,No.3,1972
,p730-732;Merck Index,10,8741,8744,8745(1983);Warren,Briggs,Ber.64,29,(1
931);M.Bondansky,A.The Practice of Peptide Synthesis,125,(1984)及びA.I.
Vogel,Text-Book of Practical Organic Chemistry,371,375-377及び840(3版、1
957)によって提供される。ここで引用されている全ての文献は、全体として、こ
れを参照するために、説明として引用されている
特に、D-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸とD-アセトアミド-N-ヒ
ドロキシスクシンイミドは下記の反応工程に従ってD-アスパラギン酸又はD-アス
パラギンから得られる:
A.D-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸(DANHSAと略記する)及びD
-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンイミドの合成及び特性決定工程1:D-アスパラギン酸β-エチルエステルの合成:
D-アスパラギン酸13.31g(0.1モル)を、乾燥塩化水素8.7gを含有する無水エタ
ノール135mlに溶解した。この反応混合物を約2時間攪拌した。得られた反応溶
液を、無水エタノール250mlを加えることにより希釈した。次いで、この溶液に
トリエチルアミンを溶液がアルカリ性になるまで滴下した。この溶液を+4℃で
16時間放置した後に、生成した結晶を濾過し、冷無水エタノール及びエーテルで
連続的に洗浄し、次いで乾燥した。この反応によりD-アスパラギン酸β-エチル
エステルが11.5g得られた(収率71%)。
D2O中における13C-NMR(75.47MHz):d 14.3ppm(CH3);35.04ppm(CH2);50.2ppm(C
H);63.7ppm(CH2-O);171.7ppm(C=Oエステル);172.3ppm(C=O-酸)
工程2:D-アスパラギン酸β-ヒドロキサメートの合成:
D-アスパラギン酸β-エチルエステル0.1モルをメタノール200mlに溶解し、次
いでヒドロキシルアミン塩酸塩0.2モルを加え、完全に溶解するまで混合物を攪
拌した。トリエチルアミン0.4モルを加え、室温で約48時間攪拌を続けた。生成
した沈殿物を濾紙を用いて採取した。この粗生成物を水に溶解し、次いで無水エ
タノール中に希釈することにより再結晶した。この溶液を+4℃で12時間保持し
た。生成した結晶を濾過し、無水エタノールで洗浄し、風
乾した。この反応によりD-アスパラギン酸β-ヒドロキサメートが50〜70%の収
率で得られた。
元素分析値:C4H8N2O4(分子量148.1)として
計算値:C=32.41;H=5.40;N=18.90;O=43.21
実測値:C=32.38;H=5.31;N=18.89;O=43.26
D2O中における1H-NMR(300.13MHz):(d)2.7ppm(dd,1H,J=7.5,16Hz);
2.8ppm(dd,1H,J=4.5,16Hz);4ppm(dd,1H,J=4.5,7.5Hz);4.8ppm(s,HOD)
D2O中における13C-NMR(75.47MHz):d 32.8ppm(CH2);51.7ppm(CH);169.0ppm(C=
Oヒドロキサメート);173.4ppm(C=O-酸)
工程3:D-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸及びD-アセトアミド-
N-ヒドロキシスクシンイミドの合成:
D-アスパラギン酸β-ヒドロキサメート29.6gを冷1N NaOH 200mlに溶解した。
得られた溶液を氷水浴中で攪拌した。1N NaOH 40mlを加え、次いで無水酢酸4.0
8gを加えた。この段階では溶液のpHはアルカリ性であるはずであり;もしそうで
ない場合には1N NaOHを少量加えてアルカリ性にする。この方法(NaOH及び無水
酢酸の添加)を4回以上反復した。それぞれの段階で、溶液のpHを測定して前記
のようにして調整すべきである。この溶液の攪拌を室温で16時間〜18時間行った
。次いで、得られた反応混合物を陽イオン交換樹脂Dowex 50Wx8カラムにかけ
た。水を用いて溶出を行い、得られた溶出液を減圧で蒸発乾燥した。得られた結
晶を磨砕し(triturate)、無水エタノールで洗浄し、濾過し次いで乾燥すること
によって、環状型の化合物(α-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンイミド)から
線状型の化合物(α-アセトアミド-N-ヒドロキシ-スクシンアミド酸)を分離した
。この反応によりDANBSAが22〜25g得られた。D- アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸の化学構造の証明
:
元素分析値:C6H10N2O5(分子量190.1)として:
計算値:C=37.87;H=5.26;N=14;72;O=42.08
実測値:C=37.84;H=5.19;N=14.5 ;O=42.08
核磁気共鳴(NMR):
NMRスペクトルは、分光計Bruker AMを用いて、外部標準としてトリメチルシ
ラン(TMS)を用いてD2O又はDMSO-D6中で300.13MHz及び75.47MHzで記録した。化学
シフト(d)はTMSに対するppm(パーツパーミリオン)で記録した。
D2O中における1H-NMR(300.13MHz):(d)1.8ppm(s,3H);2.6ppm(dd,1H,J=7.5
,15Hz);2.7ppm(dd,1H,J=5.5,15Hz);4.7ppm(dd,1H,J=5.5,7.5Hz);4.8ppm(
s,HOD)
DMSO-D6中における1H-NMR(300.13MHz):d 12.6ppm(s,1H,酸);10.4ppm(s,1H
,NH);8.8ppm(s,1H,NOH);8.1ppm(d,1H,NH);4.5ppm(dd,1H,CH);2.4及び2.3
ppm(2dd,2H,CH 2);1.8ppm(s,3H,CH3)
(D2O+NaOD1滴)中における13C-NMR(75.47MHz):d 22.5ppm(CH3);36.1ppm(C
H2);53.05ppm(CH);164.7ppm(C=Oアセチル=);174.1ppm(C=Oヒドロキサメート);178.6 ppm(C=O-
酸)D- アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンイミドの化学構造の証明
:
元素分析値:C6H8N2O4(分子量172.1)として:
計算値:C=41.83;H=4.65;N=16.27;O=37.20
実測値:C=41.55;H=4.75;N=16.55;O=37.42
D2O中における13C-NMR(75.47MHz):δ21.9ppm(CH3);33.2ppm(CH2);47.3ppm(CH
);174.5ppm(C=Oアセチル);173.9及び175ppm(C=O)
DMSO-D6中における1H-NMR(300.13MHz):δ10.7ppm(s,1H,NOH);8.5ppm(d,1H
,NH);4.3ppm(dd,1H,CH);2.9及び2.4ppm(2dd,2H,CH 2);1.8ppm(s,3H,CH 3)
ヒドロキサム酸官能基の熱量測定:
DANHSAのヒドロキサム酸官能基を、第二鉄イオンと錯体を形成させることによ
って分光光度計Beckman DU-70を用いて観察した。ヒドロキサム酸の鉄錯体は、
次の波長範囲:すなわち500〜550nmにおいて典型的には赤−紫色を示す最大吸収
である。
薄層クロマトグラフィー(TLC):
TLCはMerck Kieselgel 60 F254(層の厚み0.2mm)を用いてエタノール−水の8
:2(容量/容量比)混合溶液中で行った。DANBSAは単一のスポットを与え、これ
は2%塩化第二鉄水溶液を噴霧することによって肉眼で観察された。
B.D-トリフルオロアセトアミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸(DTFANBSAと
略記する)及びD-トリフルオロアセトアミド-N-ヒドロキシスクシンイミドの合成
及び特性決定
D-アスパラギン酸β-ヒドロキサメート0.1モルを無水のトリフルオロ酢酸60ml
に溶解した。これにトリフルオロ酢酸無水物0.14モルを攪拌しながら1.5〜2時
間にわたって滴下した。4時間後に、過剰のトリフルオロ酢酸無水物及びトリフ
ルオロ酢酸を減圧下で30〜40℃で蒸留した。得られた残留物を水に溶解し、濾過
し、陽イオン交換樹脂Dowex 50Wx8カラムにかけた。水を用いて溶出を行い、
得られた溶出液を減圧で蒸発乾燥した。得られた結晶を磨砕し、エーテルで洗浄
し、濾過し次いで乾燥することによって環状型の化合物(α-トリフルオロアセト
アミド-N-ヒドロキシスクシンイミド)から線状型の化合物(α-トリフルオロアセ
トアミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸)の分離を行った。この反応によりDTFA
NHSAが60%の収率で得られた。
元素分析値:C6H7N2O5F3・1/2H2O(分子量253.1)として:
計算値:C=28.44;H=3.16;N=11.06;F=23.35
実測値:C=28.38;H=3.18;N=10.68;F=22.45
核磁気共鳴(NMR):
D2O中における13C-NMR(75.47MHz):d 32.4ppm(CH2);46.8ppm(CH);121.5,11
7.7,113.9及び110.2ppm(q,CF3,J=3.5ppm);160.3,159.8,159.3及び158.8ppm
(q,C=O,J=0.5ppmTFA);172.7ppm(C=Oヒドロキサメート);173.1ppm(C=O-酸)
この新規な一群の化合物は単独で又は少なくとも1種の逆転写酵素(RTと略記
する)阻害剤と組み合わせて、ウイルスの蔓延を予防、阻止又は排除するのに有
用であり、特にレトロウイルスの存在下の細胞集団の治療に有用である。さらに
、本発明は医薬組成物、特レトロウイルス性感染症、特にHIV
及びAIDSに関連した感染症の治療及び予防用の医薬組成物であって、有効成分と
して、前記の新規な一群の化合物、例えばD-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシ
ンアミド酸(DANHSA)、D-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンイミド、D-トリフ
ルオロアセトアミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸(DTFANHSA)、D-トリフルオ
ロアセトアミド-N-ヒドロキシスクシンイミド及びこれらの塩と、少なくとも1
種の逆転写酵素阻害剤との付加又は相乗混合物;特に1種のジデオキシヌクレオ
シド又は2種以上のジデオキシヌクレオシドとDANBSA又はDTFANHSAとの付加又は
相乗混合物;最も好ましくはAZT、ddC、ddI又は3TCの少なくとも1種とDANHSA又
はDTFANHSAとの付加又は相乗混合物を製薬学的に許容し得るビヒクル中に含有す
るか又は一緒に投与される医薬組成物を包含する。また、本発明の医薬組成物は
不活性又は薬力学的に活性な添加剤、担体及び/又は賦形剤を含有し得る。
発明の医薬組成物は、注射用の生理学的溶液に使用直前に溶解されるべき活性
物質の凍結乾燥粉末の形態をとり得る。この場合には、得られた医薬は脳脊髄液
及びその他に非経口的に、例えば静脈内に又は腹腔内に投与できる。注射用には
、活性成分は生理学的溶液に所定の投与濃度が得られるまで溶解する。
また、発明の医薬組成物は経口投与に適した形態をとり得る。例えば、適した
形態としては錠剤、硬ゼラチンカプセル剤、糖衣錠、散剤及び顆粒剤がある。か
かる経口剤の製剤は当業者には周知である。公知の製剤はいずれもインスタント
経口医薬組成物を調製するのに有用である。
本発明の医薬の投与量については、投与すべぎ薬量は治療時間、及び投与の頻
度、宿主並びに病気の性質及び重さ(severity)に従って変化させ得ることは当業
者には明らかであろう。
本発明の医薬組成物は、前記の新規な一群の化合物のうちの少なくとも1種で
あってそれを含有する医薬組成物に関して本明細書に記載した新規な一群の化合
物のうちの少なくとも1種の十分な投薬量単位(dosage unit)の放出を確実にす
るのに十分な実質的に毒性のない投薬量濃度で患者に投与されてレトロウイルス
の蔓延について所望の阻止率を与える。相乗混合物を含有
してなる組成物に関しては、これらもまた、該相乗混合物の十分な投薬量単位の
放出を確実にするのに十分な実質的に毒性のない投薬量濃度で患者に投与されて
レトロウイルスの蔓延について所望の阻止率を与える。
投与される実際の投薬量は、物理学的因子及び生理学的因子、例えば患者の年
齢、体重、病気の重さ及び/又は臨床経歴によって決定される。これらの因子を
考慮に入れて、本発明の化合物を含有してなる医薬組成物及び具体的対象用の付
加又は相乗混合物を含有してなる医薬組成物は、医師が容易に決定し得る。極端
な場合には、毒性濃度に近い投薬量が許容し得る治療プロトコールであってもよ
いことが認められる。
本明細書に記載の新規な一群の化合物のうちのいずれか1種、例えばDANHSA又
はDTFANHSAを含有してなる本発明の組成物は、これらの化合物を約0.5μM〜約2
0,000μM;好ましくは約1μM〜約10,000μM;さらに好ましくは約5μM〜
約5,000μM;最も好ましくは約10μM〜約1,000μMの濃度範囲で含有し得る。
別の組成物は、前記と同じ濃度を有する前記化合物と、当該技術において一般
的に知られ且つ使用されている濃度又は好ましくは約0.01μM〜約200μM;さ
らに好ましくは約0.1μM〜約100μM;最も好ましくは約0.2μM〜約10μMの
濃度の少なくとも1種の逆転写酵素阻害剤又は例えばddIのような少なくとも1
種のジデオキシヌクレオシドとを組み合わせて含有し得る。
例えば、HIVに感染した患者及びAIDSに感染した患者の治療には、組成物は、
前記の本発明の化合物については約0.5μM〜約20,000μM;好ましくは約1μ
M〜約10,000μM;さらに好ましくは約5μM〜約5,000μM;最も好ましくは
約10μM〜約1,000μMの範囲内の血漿濃度及び逆転写酵素阻害剤については当
該技術において一般的に知られ且つ使用されている範囲又は好ましくは約0.01μ
M〜約200μM;さらに好ましくは約0.1μM〜約100μM;最も好ましくは約0.2
μM〜約10μMの範囲内の血漿濃度を与えるような投薬量範囲で投与できる。
また、本発明は、RT阻害剤と、前記の新規な一群の化合物、例えばD-アセトア
ミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸(DANHSA)、D-アセトアミド-N-ヒド
ロキシスクシンイミド、D-トリフルオロアセトアミド-N-ヒドロキシスクシンア
ミド酸(DTFANHSA)、D-トリフルオロアセトアミド-N-ヒドロキシスクシンイミド
及びこれらの塩のうちのいずれか1種と、レトロウイルス性感染症の治療を意図
した他の医薬組成物との組み合わせの使用を包含する。免疫促進剤及び例えばサ
イトカイン類のような免疫調節剤、例えばIL-2、IL-12及びインターフェロン分
子を本発明と組み合わせて使用できる。
本発明の組成物の生体外(in vitro)投与に適した範囲は、本発明の化合物につ
いては約0.5μM〜約20,000μM;好ましくは約1μM〜約10,000μM;さらに
好ましくは約5μM〜約5,000μM;最も好ましくは約10μM〜約1,000μMであ
る。前記の逆転写酵素阻害剤については、生体外投与に適した範囲は、一般的に
知られ且つ使用されている範囲であるか、又は好ましくは約0.01μM〜約200μ
M;さらに好ましくは約0.1μM〜約100μM;最も好ましくは約0.2μM〜約10
μMである。
実施例
本発明の具体的態様に関する下記の実施例は単なる例示を目的として示すもの
であり、本明細書の開示及び請求の範囲の保護の範囲を限定するものではない。
DANHSA又はDTFANHSAと、ddI、AZT、ddC又は3TCのいずれか1種との混合物のHI
Vの生成に対する試験を、HIVに感染させたヒト末梢血液単核細胞(PBMCと略記す
る)を用いて該細胞を植物凝集素(PHAと略記する)及びインターロイキン-2(IL-2
と略記する)で予め活性化/増殖させずに行った。
第1表は、HIVに感染させた非活性化ヒト末梢血液単核細胞(PBMC)におけるDAN
BSA、AZT、ddC、ddI及び3TCそれぞれ単独の抗ウイルス活性並びにDANBSAとAZT、
ddC、ddI又は3TCとの組み合わせの抗ウイルス活性について調べたものであり、p
24 gagタンパク質により測定してpg/mlとして表示したものである。
第2表は、HIVに感染させた非活性化ヒト末梢血液単核細胞(PBMC)におけるDTF
ANHSA、AZT、ddC、ddI及び3TCそれぞれ単独の抗ウイルス活性並びにDTFANHSAとA
ZT、ddC、ddI又は3TCとの組み合わせの抗ウイルス活性について
調べたものであり、p24 gagタンパク質で測定してpg/mlとして表示したもので
ある。
実施例1
HIVに感染させた非活性化静止ヒトリンパ球に対する、DANHSAを単独で使用し
た場合の抗ウイルス活性及びDANHSAとRT阻害剤とを組み合わせて使用した場合の
抗ウイルス活性(第1表及び図1〜5参照)
PBMCをウイルス株HIV-1 Laiと共に細胞106個当たりTCID50104の感染多重度で3
7℃で2時間培養した。次いで、未結合のウイルスを培地で連続して2回洗浄し
、得られた細胞を種々の薬物濃度の存在下で細胞106個/mlの密度(density)で接
種した。7日目に上清をp24検定用に採取し、細胞を3回洗浄して微量の薬物を
除去した。次いで、細胞をPHA(Murex製、1μ/ml)と組換えIL-2(Roussel製、10U
/ml)とを含有する新鮮な培地中で培養することによってPBA活性化に供した。48
時間培養した後に、細胞を洗浄してPHAを除去し、次いでIL-2を含有する新鮮な
培地に再縣濁した。これらの培養物を3週間(9〜28日間)保持し、14日目、21日
目及び28日目に前記培地の半分を採取し、これをIL-2を含有する新鮮な培地(21
日目及び28日目)と交換するか又は14日目にIL-2を補足したRPMI培地1640中の健
康な提供者の血液由来のPHA-活性化PBL(細胞4×105個/ml)と交換した。上清を
HIV p24 gagタンパク質ELISA検定(DuPont)用に保持した。
3種類の濃度、すなわち10、100及び1000μMのDANBSAについて調べ、感染させ
た薬剤未処理の対照と比較したウイルス生成阻止率により測定される抗HIVウイ
ルス活性を得た(図1参照)。
7日目に、10μMのDANHSAでは阻止率98%が得られ、100μMのDANHSAでは阻
止率98.2%が得られ、1000μMのDANHSAでは阻止率98.2%が得られた。
14日目に、DANHSAにより10μMでは阻止率96.5%、100μMでは阻止率88.2%
、1000μMでは阻止率96.7%がそれぞれ得られた。
21目には前記よりも低い阻止率が認められ、28日間を終えて10μMでは阻止率
4.65%、100μMでは阻止率60%、1000μMでは阻止率60.8%がそれぞれ得られ
た。
100μM及び1000μMのDANHSAを単独で使用した場合は4μMのAZTを単独で使
用した場合よりも大きいウイルス生成阻止率が得られた(図2b、2c参照)。
また、AZTとDANHSAとの組み合わせについても調べた(図2a、2b、2c参照
)。感染させた薬剤未処理の対照と比べて、7日目では1000μMのDANHSAと4μ
MのAZTとの組み合わせを用いて観察されたウイルス生成阻止率98.2%は1000μ
MのDANHSAを単独で用いて観察されたウイルス生成阻止率と同等であった。しか
しながら、14日目では、1000μMのDANHSAと4μMのAZTとの組み合わせはウイ
ルス生成に対して意外にも相乗効果を生じ、阻止率99.997%であった。
また、ddCとDANHSAとの組み合わせについても調べた(図3a、3b、3c参照
)。これらはウイルス生成を相乗的に阻止し、1000μMのDANHSAと0.2μMのddC
との組み合わせでは14日目からHIVを完全に排除した。
また、ddIとDANHSAとの組み合わせについても調べた(図4a、4b、4c参照
)。これらはウイルス生成を相乗的に阻止し、前記の3種類の濃度のDANHSAそれぞ
れと10μMのddIとの組み合わせでは14日目からHIVを完全に排除した。
また、3TCとDANHSAとの組み合わせについても調べた(図5a、5b、5c参照
)。これらは前記の3種類の濃度のDANHSAそれぞれと5μMの3TCとの組み合わせ
では7日目からウイルス生成を阻止し、また100μM又は1000μMのDANHSAと5
μMの3TCとの組み合わせは14日目からウイルス生成を相乗的に阻止し、HIVを完
全に排除した。
新規化合物DANHSAは、その酵素リボヌクレオチドレダクターゼに対する阻害効
果によって測定されるように、極めて高い濃度でも細胞集団に対して細胞毒性効
果を及ぼさないことが明らかにされた。リボヌクレオチドレダクターゼの阻害率
はチロシン残基の濃度を分析することによって測定した。実験は、フリーラジカ
ルを有するR2サブユニットの過剰発現(hyperexpression)のために移入したマウ
ス白血球細胞系L1210を使用して行った。DANHSAで4〜5時間処理してある細胞
を電子常磁性共鳴(ESR)で分析した。これらの条
件下では、4mM濃度のDANHSAは阻止効果をもたないことが明らかになった。
実施例2
HIVに感染させた非活性化静止ヒトリンパ球に対する、DTFANHSAを単独で使用
した場合の抗ウイルス活性及びDTFANHSAとRT阻害剤との組み合わせを使用した場
合の抗ウイルス活性(第2表及び図6〜10参照)
PBMCをウイルスHIV-1 Laiと共に細胞106個当たりTCID50104の感染多重度で37
℃で2時間培養した。次いで、未結合のウイルスを培地で連続して2回洗浄し、
得られた細胞を種々の薬物濃度の存在下で細胞106個/mlの濃度で接種した。7
日目に上清をp24検定用に採取し、細胞を3回洗浄して微量の薬物を除去した。
次いで、細胞をPBA(Murex製、1μ/ml)と組み換えIL-2(Roussel製、10U/ml)とを
含有する新鮮な培地中で培養することによってPHA活性化に供した。48時間培養
した後に、細胞を洗浄してPHAを除去し、次いでIL-2を含有する新鮮な培地に再
縣濁した。これらの培養物を3週間(9〜28日間)保持し、14日目、21日目及び28
日目に培地の半分を採取し、これをIL-2を含有する新鮮な培地(21日目及び28日
目)と交換するか又は14日目にIL-2を補足したRPMI培地1640中の健康な提供者の
血液由来のPHA-活性化PBL(細胞4×105個/Ml)と交換した。上清をHIV p24 gag
タンパク質ELISA検定(DuPont)用に保持した。
3種類の濃度、すなわち10、100及び1000μMのDTFANHSAを単独で使用した場合
と、これらと4種類のRT阻害剤のそれぞれとの組み合わせを用いた場合の抗ウイ
ルス効果を調べ、感染させた薬剤未処理の対照と比較したウイルス生成阻止率に
より測定した(図6〜10参照)。
前記の3種類の濃度のDTFANHSAそれぞれと4μMのAZTとの組み合わせについ
て調べた(図7a、7b、7c参照)。これらにより7日目には、感染させた薬剤
未処理の対照と比較してウイルス生成に対して阻止率96.6〜96.9%の阻止効果が
得られ、これに対してAZTを単独で使用した場合には阻止率90.7%が得られた。
また、ddCとDTFANHSAとの組み合わせについても調べた(図8a、8b、
8c参照)。これらは前記の3種類の濃度のDTFANHSAそれぞれと0.2μMのddCと
の組み合わせでは7日目からウイルス生成を阻止し、1000μMのDTFANHSAと0.2
μMのddCとの組み合わせは14日目からウイルス生成を相乗的に阻止し、HIVを完
全に排除した。
また、ddIとDTFANHSAとの組み合わせについても調べた(図9a、9b、9c参
照)。これらは前記の3種類の濃度のDTFANHSAと10μMのddIとの組み合わせでは
7日目からウイルス生成を阻止し、これら3種類の濃度のDTFANHSAと10μMのdd
Iとの組み合わせについては28日目でウイルス生成を相乗的に阻止し、HIVを完全
に排除した。
また、3TCとDTFANHSAとの組み合わせについても調べた(図10a、10b、10c参
照)。これらは前記の3種類の濃度のDTFANHSAと5μMの3TCとの組み合わせでは
7日目からウイルス生成を阻止し、100μM又は1000μMのDTFANHSAと5μMの3
TCとの組み合わせは14日目からウイルス生成を相乗的に阻止し、HIVを完全に排
除した。
実施例3
喘息の治療における可能な使用についての具体例を下記の通り示す。呼吸困難
を患っている患者にDANHSA 25mgを含有する水溶液5mlを経口投与し、数分以内
に血管拡張の効果が生じ、患者の呼吸をかなり容易にした。
本発明を具体的で且つ好ましい態様に関連して説明した。数値の変更及び置換
を本発明の精神及び範囲からかけ離れることなくなし得ることは当業者には認め
られるであろう。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成9年2月17日(1997.2.17)
【補正内容】
請求の範囲
1.下記の線状又は環状構造:
(式中、R1は場合によりハロゲンでモノ-、ジ-又はトリ-置換された、炭素数1
〜4個のアルキル基である;R2、R3及びR4の各々は水素であるか又は1〜8
個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を含有
するアルケニル基、2〜8個の炭素原子を含有するアルキニル基、3〜6個の炭
素原子を含有するシクロアルキル基、4〜6個の炭素原子を含有するシクロアル
ケニル基又は7〜11個の炭素原子を含有するビシクロアルキル基であり、これら
の基は場合によりハロゲン、ヒドロキシル、1〜4個の炭素原子を含有するアル
キルオキシ、各々のアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有しているジアルキル
アミノ、アルキル基が1〜4個の炭素原子を含有しているフェニルアルキル、3
〜6個の炭素原子を含有するシクロアルキル、場合により置換されているフェニ
ル、シアノ、カルボキシル又はアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有している
アルキルオキシカルボニルから選ばれた少なくとも1個の置換基によって置換さ
れている;nは0〜6の整数である)を有するD-化合物;及びその塩。
2.下記の線状又は環状構造:(式中、R1は場合によりハロゲンでモノ-、ジ-又はトリ-置換された、炭素数1
〜4個のアルキル基であるが、但し、化合物が線状型(I)であり、R2及びR3の
各々が水素であり、n=1又は2である場合、又は、化合物が環状型であり、R2
、R3及びR4の各々が水素であり、n=1である場合にはメチル基は除外される;
R2、R3及びR4の各々は水素であるか又は1〜8個の炭素原子を含有する直鎖
又は分岐鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を含有するアルケニル基、2〜8個
の炭素原子を含有するアルキニル基、3〜6個の炭素原子を含有するシクロアル
キル基、4〜6個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基又は7〜11個の炭素
原子を含有するビシクロアルキル基であり、これらの基は場合によりハロゲン、
ヒドロキシル、1〜4個の炭素原子を含有するアルキルオキシ、各々のアルキル
基が1〜4個の炭素原子を含有しているジアルキルアミノ、アルキル基が1〜4
個の炭素原子を含有しているフェニルアルキル、3〜6個の炭素原子を含有する
シクロアルキル、場合により置換されているフェニル、シアノ、カルボキシル又
はアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有しているアルキルオキシカルボニルか
ら選ばれた少なくとも1個の置換基によって置換されている;nは0〜6の整数
である)を有する化合物;及びその塩。
3.D-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸(DANHSA)、D-アセトアミ
ド-N-ヒドロキシスクシンイミド、D-トリフルオロアセトアミド-N-ヒドロキシス
クシンアミド酸(DTFANHSA)、D-トリフルオロアセトアミド-N-ヒドロキシスクシ
ンイミドからなる群から選ばれた、請求項1に記載の化合物;及びその塩。
4.請求項1〜3のいずれかに記載の化合物と逆転写酵素抑制剤の一種とから
なる組成物。
5.前記逆転写酵素抑制剤はジデオキシヌクレオシドである、請求項4に記載
の組成物。
6.ジデオキシヌクレオシドはAZT、ddC、ddA、ddG、ddI、ddT、3TC及びd4Tか
らなる群から選ばれる、請求項5に記載の組成物。
7.ジデオキシヌクレオシドはddI、AZT、ddC又は3TCである、請求項6に
記載の組成物。
8.請求項1〜3のいずれかに記載の化合物の濃度は下記の濃度範囲:
約0.5μM〜約20000μM;
約 1μM〜約10000μM;
約 5μM〜約 5000μM;
約 10μM〜約 1000μM
からなる群から選ばれる、請求項4〜7のいずれかに記載の組成物。
22.前記レトロウイルスはHIV-1、HIV-2、HTLV-1、HTLV-2、SIV、HSV、HBV又
はHCVからなる群から選ばれる、請求項21に記載の使用。
23.HIV感染患者及びAIDS患者の処置に使用するための医薬の調製のための、
請求項20に記載の使用。
【手続補正書】特許法第184条の4第4項
【提出日】平成9年2月18日(1997.2.18)
【補正内容】
請求の範囲
1.下記の線状又は環状構造式:
(式中、R1は場合によりハロゲンでモノ-、ジ-又はトリ-置換された、炭素数1
〜4個のアルキル基である;R2、R3及びR4の各々は水素であるか又は1〜8
個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を含有
するアルケニル基、2〜8個の炭素原子を含有するアルキニル基、3〜6個の炭
素原子を含有するシクロアルキル基、4〜6個の炭素原子を含有するシクロアル
ケニル基又は7〜11個の炭素原子を含有するビシクロアルキル基であり、これら
の基は場合によりハロゲン、ヒドロキシル、1〜4個の炭素原子を含有するアル
キルオキシ、各々のアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有しているジアルキル
アミノ、アルキル基が1〜4個の炭素原子を含有しているフェニルアルキル、3
〜6個の炭素原子を含有するシクロアルキル、場合により置換されているフェニ
ル、シアノ、カルボキシル又はアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有している
アルキルオキシカルボニルから選ばれた少なくとも1個の置換基によって置換さ
れている;nは0〜6の整数である)を有するD−化合物;及びその塩。
2.下記の線状又は環状構造:
(式中、R1は場合によりハロゲンでモノ-、ジ-又はトリ-置換された、炭素数1
〜4個のアルキル基であるが、但し、化合物が線状型(I)であり、R2及びR3の
各々が水素であり、n=1又は2である場合、又は、化合物が環状型であり、R2
、R3及びR4の各々が水素であり、n=1である場合にはメチル基は除外される;
R2、R3及びR4の各々は水素であるか又は1〜8個の炭素原子を含有する直鎖
又は分岐鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を含有するアルケニル基、2〜8個
の炭素原子を含有するアルキニル基、3〜6個の炭素原子を含有するシクロアル
キル基、4〜6個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基又は7〜11個の炭素
原子を含有するビシクロアルキル基であり、これらの基は場合によりハロゲン、
ヒドロキシル、1〜4個の炭素原子を含有するアルキルオキシ、各々のアルキル
基が1〜4個の炭素原子を含有しているジアルキルアミノ、アルキル基が1〜4
個の炭素原子を含有しているフェニルアルキル、3〜6個の炭素原子を含有する
シクロアルキル、場合により置換されているフェニル、シアノ、カルボキシル又
はアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有しているアルキルオキシカルボニルか
ら選ばれた少なくとも1個の置換基によって置換されている;nは0〜6の整数
である)を有する化合物;及びその塩。
3.D-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸(DANHSA)、D-アセトアミ
ド-N-ヒドロキシスクシンイミド、D-トリフルオロアセトアミド-N-ヒドロキシス
クシンアミド酸(DTFANHSA)、D-トリフルオロアセトアミド-N-ヒドロキシスクシ
ンイミドからなる群から選ばれた、請求項1に記載の化合物;及びその塩。
4.請求項1〜3のいずれかに記載の化合物と逆転写酵素抑制剤の一種とから
なる組成物。
5.前記逆転写酵素抑制剤はジデオキシヌクレオシドである、請求項4に記載
の組成物。
6.ジデオキシヌクレオシドはAZT、ddC、ddA、ddG、ddI、ddT、3TC及びd4Tか
らなる群から選ばれる、請求項5に記載の組成物。
7.ジデオキシヌクレオシドはddI、AZT、ddC又は3TCである、請求項6に
記載の組成物。
8.請求項1〜3のいずれかに記載の化合物の濃度は下記の濃度範囲:
約0.5μM〜約20000μM;
約 1μM〜約10000μM;
約 5μM〜約 5000μM;
約 10μM〜約 1000μM
からなる群から選ばれる、請求項4〜7のいずれかに記載の組成物。
9.逆転写酵素抑制剤の濃度は下記の濃度範囲:
約0.01μM〜約200μM;
約0.1 μM〜約100μM;
約0.2 μM〜約 10μM;
からなる群から選ばれる、請求項4〜7のいずれかに記載の組成物。
10.請求項1〜3のいずれかに記載の化合物又は請求項4〜9のいずれかに記
載の組成物を含有する医薬。
11.その組成を、下記の濃度範囲:
約0.5μM〜約20000μM;
約 1μM〜約10000μM;
約 5μM〜約 5000μM;
約 10μM〜約 1000μM
からなる群から選ばれた血漿濃度を提供するように更に選択する、請求項10に記
載の医薬。
12.製剤学的に許容される担体、賦形剤、ビヒクル又はこれらの混合物を更に
含有する、請求項10又は11に記載の医薬。
13.ウイルスの生産又は拡散の阻止又はウイルスの拡散の抑制又はウイルスの
生産の遮断に使用するための、請求項10〜12のいずれかに記載の医薬。
14.前記ウイルスはHSVタイプ1、HSVタイプ2、HBV、HCV、CMV及びエプスタ
イン-バールからなる群から選ばれる、請求項13に記載の医薬。
15.前記ウイルスはレトロウイルスである、請求項13に記載の医薬。
16.前記レトロウイルスはHIV-1、HIV-2、HTLV-1、HTLV-2及びSIVからな
る群から選ばれる、請求項15に記載の医薬。
17.HIV感染患者及びAIDS患者の処置のための、請求項10〜12のいずれかに記
載の医薬。
18.免疫刺激物質、免疫調節剤、サイトキン、IL-2、IL-12及びインターフェ
ロン分子からなる群から選ばれたレトロウイルス感染の処置に使用するための他
の医薬組成物又は化合物を更に含有する、請求項15〜17のいずれかに記載の医薬
。
19.相乗併用剤として作用する、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物又は
請求項4〜7のいずれかに記載の組成物の、医薬の調製のための使用。
20.ウイルスの生産又は拡散の阻止又はウイルスの拡散の抑制又はウイルスの
生産の遮断に使用するための医薬の調製のための、請求項19に記載の使用。
21.前記ウイルスはレトロウイルスである、請求項20に記載の使用。
22.前記レトロウイルスはHIV-1、HIV-2、HTLV-1、HTLV-2、SIV、HSV、HBV又
はHCVからなる群から選ばれる、請求項21に記載の使用。
23.HIV感染患者及びAIDS患者の処置に使用するための医薬の調製のための、
請求項20に記載の使用。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成9年7月31日(1997.7.31)
【補正内容】
体(repeat)[LTRs]を含有している)の内、2-LTR線状形だけが宿主ゲノム中に組
込まれることができる。かかるプロセスはTリンパ球の細胞活性化/複製に厳密
に依存していると思われるが、“休止”(“resting”)T細胞は明らかにHIVの
感染を受ける(Zack J,A等,Cell,1990;61:213-222)。更に、非活性化T細胞にお
いては、逆転写プロセスの一部は、細胞が十分な活性化を受けた場合には数時間
、存在することができかつ宿主ゲノム中に組込まれたままであることができる不
完全DNA分子の蓄積を生じるプロセスも生起し得る(Zack J,A等,Cell,1990;61:21
3-222)。従って、感染した“休止”CD4+Tリンパ球細胞は感染した個体における
永続的ウイルス貯蔵体であると考えることができ(Bukrinsky M.I等,Science,199
1;254:423-427)、リンパ様組織においては、潜在形の細胞内ウイルスとして、高
いHIV量(HIV burden)も観察されている(Embretson J.等,Nature,1993;362:359-3
62)。
WO-90/13921には、ウイルス感染及び腫瘍を処置するためのベーターヒドロキ
シメートD-アスパラギン酸が記載されている。WO-95/17875には、レトロウイル
スの拡散を防止するためのジデオキシヌクレオシド、特に、ddIと上記酸との混
合物が記載されている。
新規な種類の化合物が、単独で又は逆転写酵素抑制剤と組合せた場合、ヒト細
胞集団、特に、HIV-感染休止ヒトリンパ球において、レトロウイルスの複製の阻
止及びレトロウイルスの排除に有用であることが認められた。この種類の化合物
には、新規化合物であるD-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸;D-ア
セトアミド-N-ヒドロキシスクシンイミド、D-トリフルオロアセトアミド-N-ヒド
ロキシスクシンアミド酸、D-トリフルオロアセトアミド-N-ヒドロキシスクシン
イミド及びその塩が包含される。更に、これらの化合物は、もし存在するとして
も、非常に低い細胞毒又は細胞増殖抑制活性を有するということにおいて、他の
抗ウイルス剤より優れた利点を有しており、このことにより、これらの化合物は
感染細胞集団内でその抗ウイルス効果を利用するために使用された場合、広範囲
の治療的用途に使用し得る。
更に、これらの化合物は喘息の処置に有用であり、関節炎及び喘息状疾患を包
含するある範囲の疾患の処置のための抗炎症剤及び気管支拡張剤として
治療に使用し得ることが認められた。R.M.McMillan及びE.R.H.Walker,“Designi
ng Therapeutically Effective 5-Lipogenase Inhibitors”Elsevier Science P
ublishers Ltd,TIPS,Vol.13,(1992,8),pp323-330には3つのクラスの5-リポキシ
ゲナーゼ抑制剤:“レドックス”抑制剤、“ノン
の整数である)を有するD化合物;及びその塩に関する。
本発明は、更に、下記の線状又は環状構造式:
(式中、R1は場合によりハロゲンでモノ-、ジ-又はトリ-置換された、炭素数1
〜4個のアルキル基であるが、但し、化合物が線状型(I)であり、R2及びR3の
各々が水素であり、n=1又は2である場合、又は、化合物が環状型であり、R2
、R3及びR4の各々が水素であり、n=1である場合にはメチル基は除外される;
R2、R3及びR4の各々は水素であるか又は1〜8個の炭素原子を含有する直鎖
又は分岐鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を含有するアルケニル基、2〜8個
の炭素原子を含有するアルキニル基、3〜6個の炭素原子を含有するシクロアル
キル基、4〜6個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基又は7〜11個の炭素
原子を含有するビシクロアルキル基であり、これらの基は場合によりハロゲン、
ヒドロキシル、1〜4個の炭素原子を含有するアルキルオキシ、各々のアルキル
基が1〜4個の炭素原子を含有しているジアルキルアミノ、アルキル基が1〜4
個の炭素原子を含有しているフェニルアルキル、3〜6個の炭素原子を含有する
シクロアルキル、場合により置換されているフェニル、シアノ、カルボキシル又
はアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有しているアルキルオキシカルボニルか
ら選ばれた少なくとも1個の置換基によって置換されている;nは0〜6の整数
である)を有する化合物;及びその塩に関する。
特に、かかる化合物は、D-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸(DANH
SA)、D-アセトアミド-N-ヒドロキシスクシンイミド、D-トリフルオロアセトアミ
ド-N-ヒドロキシスクシンアミド酸(DTFANHSA)、D-トリフルオロアセトアミド-N-
ヒドロキシスクシンイミド及びその塩からなる群から選ば
れる。
本発明は、更に、前記したごとき化合物と、1種の逆転写酵素抑制剤(RT抑制
剤)とからなる組成物に関する;この逆転写酵素抑制剤はこの組成物が医薬を構
成する場合には、相乗効果を示す組合せの成分である。好ましくは、RT抑制剤は
、特に、AZT、ddC、ddA、ddG、ddI、ddT、3TC及びd4Tからなる群から選ばれたジ
デオキシヌクレオシドである。例えば、ジデオキシヌクレオシドはddT、AZT、dd
C又は3TCである。
かかる組成物においては、前記したごとき化合物の濃度は、下記の濃度範囲:
約0.5μM〜約20000μM;
約 1μM〜約10000μM;
約 5μM〜約 5000μM;
約 10μM〜約 1000μM
からなる群から選ばれ得る。
かかる組成物においては、RT抑制剤の濃度は下記の濃度範囲:
約0.01μM〜約200μM;
約0.1 μM〜約100μM;
約0.2 μM〜約 10μM;
からなる群から選ばれ得る。
本発明は、更に、前記したごとき化合物又は組成物からなる医薬に関する。
かかる組成物においては、その組成を、場合により、下記の濃度範囲:
約0.5μM〜約20000μM;
約 1μM〜約10000μM;
約 5μM〜約 5000μM;
記載の組成物。
9.逆転写酵素抑制剤の濃度は下記の濃度範囲:
約0.01μM〜約200μM;
約0.1 μM〜約100μM;
約0.2 μM〜約 10μM;
からなる群から選ばれる、請求項4〜7のいずれかに記載の組成物。
10.請求項1〜3のいずれかに記載の化合物又は請求項4〜9のいずれかに記
載の組成物を含有する医薬、特に、抗レトロウイルス剤又は抗炎症剤又は気管支
拡張剤。
11.その組成を、下記の濃度範囲:
約0.5μM〜約20000μM;
約 1μM〜約10000μM;
約 5μM〜約 5000μM;
約 10μM〜約 1000μM;
からなる群から選ばれた血漿濃度を提供するように更に選択する、請求項10に記
載の医薬。
12.製剤学的に許容される担体、賦形剤、ビヒクル又はこれらの混合物を更に
含有する、請求項10又は11に記載の医薬。
13.ウイルスの生産又は拡散の阻止又はウイルスの拡散の抑制又はウイルスの
生産の防止に使用するための、請求項10〜12のいずれかに記載の医薬。
14.前記ウイルスはHSVタイプ1、HSVタイプ2、HBV、HCV、CMV及びエプスタ
イン-バールからなる群から選ばれる、請求項13に記載の医薬。
15.前記ウイルスはレトロウイルスである、請求項13に記載の医薬。
16.前記レトロウイルスはHIV-1、HIV-2、HTLV-1、HTLV-2及びSIVからなる群
から選ばれる、請求項15に記載の医薬。
17.HIV感染患者及びAIDS患者の処置にための、請求項10〜12のいずれかに記
載の医薬。
18.免疫刺激物質、免疫調節剤、サイトキニン、IL-2、IL-12及びインターフ
ェロンからなる群から選ばれたレトロウイルス感染の処置に使用するための他の
医薬組成物又は化合物を更に含有する、請求項15〜17のいずれかに記載の医薬。
19.相乗併用剤として作用する、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物又は
請求項4〜7のいずれかに記載の組成物の、医薬、特に、抗レトロウイルス剤又
は抗炎症剤又は気管支拡張剤の調製のための使用。
20.ウイルスの生産又は拡散の阻止又はウイルスの拡散の抑制又はウイルスの
生産の阻止に使用するための医薬の調製のための、請求項19に記載の使用。
21.前記ウイルスはレトロウイルスである、請求項20に記載の使用。
22.前記レトロウイルスはHIV-1、HIV-2、HTLV-1、HTLV-2、SIV、HSV、HBV又
はHCVからなる群から選ばれる、請求項21に記載の使用。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C07D 207/46 C07D 207/46
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ
,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,
CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,G
E,HU,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR
,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,
MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,P
L,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK
,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,VN
(72)発明者 ヴアレエー,テイエリー
フランス国 エフ−69003 リヨン,リユ
ド ラ バルム 4
(72)発明者 グランジユ,ジヤツク
フランス国 エフ−69003 リヨン,リユ
ド ラ バルム 28
(72)発明者 ヴイラ,ジヨルジユ
フランス国 エフ−69006 リヨン,ブー
ルバール デ ベルジユ 112
(54)【発明の名称】 抗炎症活性及び抗ウイルス活性を有する新規な種類の化合物、これらを単独で又は逆転写酵素抑
制剤と組合せて含有するウイルスの複製を阻止、予防又は排除するための組成物及びその使用方
法