JPH09505579A - イノシトール三燐酸エステルの薬剤調製への使用 - Google Patents

イノシトール三燐酸エステルの薬剤調製への使用

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Abstract

(57)【要約】 この発明は、レトロウイルス性の病気に対して効果的な薬剤の調製にイノシトール三燐酸のエステルを使用することに関する。

Description

【発明の詳細な説明】 イノシトール三燐酸エステルの薬剤調製への使用 この発明は、レトロウイルス性の病気に効果的な薬剤の調製にイノシトールト リスホスフェート(inositoltrisphosphate、以下イノシ トール三燐酸という)のエステルを使用することに関する。 後天性免疫不全症候群(AIDS)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の1 型及び2型(HIV−1及びHIV−2)によって引き起こされる重大な免疫不 全病である。HIVは、AIDSの病因学的因子であり、レンチウイルス亜科( lentivirus subfamily)に属する非発癌性の細胞変性レト ロウイルスである。レトロウイルスは、その遺伝物質をデオキシリボ核酸(DN A)ではなく、リボ核酸(RNA)の形で有しており、そのRNAをDNAにす るために、逆転写酵素と呼ばれる特殊な酵素を有している。 HIVウイルスは、直径100nmで、エンベロープで覆われており、表面に 糖タンパクを、そして、内部に円柱形コアを含んでいる。このエンベロープはリ ン脂質と糖タンパクにより形成されており、コアはゲノムと何種類かの酵素を含 んでいる。 HIVは先ず感受性細胞表面のCD4受容体に結合し、これにより人間の細胞 がHIVに感染する。この結合は、HIVのオリゴマーエンベロープ糖タンパク (gp)と標的細胞表面の受容体を媒介にして生じ、次いで、ウイルスエンベロ ープと原形質膜との間の融合が起こる。結合後の膜融合に至るまでの機構はあま りわかっていないが、この融合反応では、gp41エンベロープタンパク質の疎 水性アミノ末端が露出したエンベロープタンパク質が形態変化することが推測さ れている。 HIV感染の第1段階は、HIV−1のエンベロープ糖タンパクのgp120 が細胞受容体に結合することである。しかし、CD4が関係しない感染機構の証 拠も存在しており、多くの生体外(in vitro)のCD4陰性細胞(CD 4−negative cell)のHIV感染が報告されている(ハロウズ( Harouse)、J.M.氏他、J.Virol、63、2527、1989 年、ザッチャー(Zachar)、V.B.氏他、J.Virol、65、21 02、1991年)。 上記のデータは、HIV感染にはCD4の発現だけが絶対的な条件ではなく、 それだけでは感染をサポートするに不十分であることを示しており、他にも感染 に必要とされる分子が存在することを示唆している。 また、感染後の重大かつ取り返しのつかない免疫低下についての病理生理学的 根拠は不明である。 AIDSは、1981年に、日和見感染、カポジ肉腫及び一次CNSリンパ腫 の症状を持つ米国の若い男性同性愛者に対して初めて認定された。その当時、例 外的な症例として全身的な悪性リンパ腫も認められていたが、1985年までは 統計的に目立つ程の増加数は認められなかった。また、罹病者は、遍在しても通 常は病気の原因となり得ない微生物による他の日和見感染も患っていた。実際の ところ、AIDS患者にみられる感染症及び癌は、以前には、生まれつき免疫機 構に所定の欠陥を持つ人々に対してしか知られていないものであった。 この病気が最初に認定されて以来、症例数は急速に増加してきた。世界保健機 関によれば、AIDSの増加によって、西暦2000年までにはHIV感染者が 4千万人にもなるとされている。 最近、HIV感染は3つの別個の段階に分類されるようになった。即ち、数週 間継続する急性期、数年間継続する慢性期、及び、数カ月〜数年継続する最終的 な発病期(一般的にAIDSと呼ばれる段階)である。 AIDSは特異な病気である。他の感染症で、人間の免疫機構を直接攻撃して 類似した害を及ぼす病気は知られていない。 まず、このウイルスは、人体内で、普通は感染症から人体を防御する細胞を攻 撃する。これらの細胞には、単球、マクロファージ、及び、樹状細胞、いわゆる 抗原提示細胞(APC)がある。更に、HIVは、数カ月或いは数年間細胞中に 潜伏しうる。第3の難題は、HIVの遺伝子構成が非常に多様であるということ である。 1985年に、ジドブジン(zidovudine:AZT)がヒト免疫不全 ウイルス即ちHIVに対して生体外活性を有することが分かった。このジドブジ ンの生体外臨床活性については議論されていないが、治療開始の時期については かなり議論されている(J.G.バートレット(Bartlett)氏、New Engl.J.of Med.、329、351、1993年;クーパー(C ooper)D.A.氏他、New Engl.J.of Med.、329、 297、1993年)。 AZTには貧血等の重い副作用があり、また、この薬の使用者については、H IVが突然変異して薬が効かない菌株を生ずることがよくある。 他のヌクレオシド類似体も試験中であるが、副作用を含む作用形態がジドブジ ンに類似するため、その使用は結局は限定されることになろう。 AZTの作用は、HIVの酵素、即ち、逆転写酵素の作用を抑制することであ り、ウイルスの細胞内での複製を阻止することである。 レトロウイルスは、よく知られているように非常に速く変化して、患者に投与 される薬剤や抗体に対して耐性を有するHIV−1菌株を急速に生じさせる。ま た、HIVの複製サイクルの幾つかの他の段階を治療的干渉(therapeu tic intervention)の対象とする構想もなされてきた。このよ うな対象の1つとして、十分な感染力を持ったHIV粒子の集合に不可欠なHI Vプロテアーゼがある。 過去数年において、有効な抗ウイルス治療法を求めて徹底的な調査が行われて きた。これまでに見つかった有効な薬剤には、カルボヴィール(carbovi r)(ヴィンス(Vince)、R.氏他:Biochem.Biophys. Res.Commun.156、1046、1988年)及び、オキサシン(o xathin)安息香酸エステル及び誘導体類(シュルツ(Schultz)、 RJ氏他:Proc.Am.Assoc.Cancer Res.33、409 、1990年)がある。 HIVウイルスの広まりを阻止する新薬の調査が行われているが、以下の条件 を満たさなければならない。 −全くあるいは殆ど副作用がないこと。もしくは、少なくともその副作用が最 小限で許容できるものであること。 −治療係数が高いこと。 −内部でHIVウイルスが増殖する細胞にウイルスが侵入できないようにする か、又は、そのような細胞内でウイルスが増殖できないようにして、HIVウイ ルスの増殖を阻止すること。 −1日1回又は2回の薬剤投与が可能な程度に薬剤の半減期が長いこと。 −個々の投与量を確認できるように、化合物が血中で容易に同定できること。 −薬剤が、代謝活性の結果としてだけでなく、投与された時と同じ形態で標的 細胞に対して効果を有すること。 −薬剤が、奇形学的に安全であること。 この発明によれば、驚くべきことに、レトロウイルス性の病気に対して有効な 薬剤の調製にイノシトール三燐酸のエステルを使用することが可能となった。 この発明の推奨実施例においては、この薬剤は、後天性免疫不全症候群(AI DS)及びAIDS関連の病気の予防及び緩和に、また、これらの病気との闘い のために使用することを目的としたものである。また、この薬剤は、レトロウイ ルスが原因となって起こる他の症状に対しても使用できる。 この薬剤は、レトロウイルス性の感染に対してかなり高い抑制効果を発揮する が、副作用がない。従って、患者にとって非常に有益である。 また、この薬剤は、他の包膜ウイルス(enveloped virus)に よって引き起こされるウイルス性の病気に対しても使用するようにされている。 例えば、この薬剤は、サイトメガロウイルス及びさまざまな種類のヘルペスウイ ルスが原因となって起こるウイルス性の病気に対して使用するようにされている 。 ヨーロッパ特許第179439号によれば、少なくとも1種のイノシトール三 燐酸の異性体を、薬効成分として含んでいる薬剤組成物が周知である。この特許 では、薬剤組成物の効果が血小板凝集等の異なる分野に対して示されている。 イノシトール三燐酸エステル類の生成及びその異なる異性体の単離については 、ヨーロッパ特許出願第0269105号に開示されている。 イノシトール三燐酸エステル類の治療的プロフィール(therapeuti c profile)は、多くの重要な点でイノシトール三燐酸のプロフィール と異なっている。脂肪親和性(lipophilicity)、溶解度及びpKA 値等の化学的性質が異なっており、それが化合物の効力及び選択性に影響して いる。 更に、イノシトール三燐酸エステル類については、酵素分解に対する感受性が 非常に低減されており、それによって持続時間が長くなっている。 この発明により使用される薬剤は、単位剤形(unit dosage fo rm)で存在することが適切である。このような単位剤形に適した投与形態は、 錠剤、顆粒剤あるいはカプセルである。また、錠剤及び顆粒剤に対しては、胃中 で制御できない加水分解が起こらないようにし、腸内で所望の吸収がなされるよ うに、エンテリックコーティング等の表面処理を容易に行うことができる。他の 適切な投与形態としては、緩速放出投与(slow release)及び経皮 吸収投与(transdermal administration)がある。 この薬剤には、薬学的に許容できる通常の添加剤、賦形剤、及び/または、担体 が含まれていてもよい。また、錠剤または顆粒剤の腸内での分解を容易にする崩 壊剤が、錠剤または顆粒剤に含まれていてもよい。所定の場合、特に、急性の場 合には、静脈投与用として溶液の単位剤形を使用することが好ましい。他に、投 与形態としてこの化合物を含む懸濁液を用いることが好ましい場合もあり得る。 また、この薬剤は、添加剤、賦形剤、または担体を使用せずに、イノシトール 三燐酸エステル類等だけで構成されるようにすることもできる。 この薬剤は、各々が実質的に純粋な形態で存在する1以上の特定のイノシトー ル三燐酸エステル類の異性体から構成されるか、又はこれを含むものとすること ができる。すなわち、異なる異性体を実質的に純粋な形態で互いに分離すること ができる。この実質的に純粋な形態とは、異性体が、例えば、82〜100%や 85〜100%、好ましくは90〜100%というような80〜100%の純度 を有していることを意味するものである。異性体を純粋な形態で生成することが できるため、当然、これらの異性体をどの様な比率ででも混合することができる 。 大抵の場合において、この発明による薬剤の調製に使用されるイノシトール三 燐酸エステルは、鉱質のバランス(mineral balance)に悪影響 を及ぼさないように塩の形態で存在することが適切である。この塩は、ナトリウ ム、カリウム、カルシウム、亜鉛、又はマグネシウムの塩か、これらの塩の2種 類以上を混合したものからなるものであることが好ましい。 また、上記した理由により、この薬剤に、カルシウム、亜鉛又はマグネシウム と鉱酸又は有機酸との塩のうち少なくとも1種類の薬学的に許容できる塩を余分 に添加するとよい。このことは、特に、上記の鉱物が不足しがちな高齢者に有益 である。 人間の患者に薬剤投与する場合には、薬剤を様々な量で動物に投与した結果に 基づいて、当業者により適切な服用量が常套的に決められる。人間に対する推奨 服用量は、0.1〜1000mg化合物/日/kg体重の範囲内であり、特に、 0.1〜200mg化合物/日/kg体重である。 動物実験では、マウスに静脈注射で300mg/kg体重の高投薬量のイノシ トール三燐酸エステル類を投与した後でも、何ら毒性作用は見られなかった。 通常、この薬剤は、1回の投薬量当たり、例えば、0.05〜1.3g、好ま しくは、0.1〜1gというように、0.01〜1.5gの上記化合物を含んで いる。 この発明により使用される組成物は、次の構造式を持つイノシトール三燐酸エ ステル類に対応する以下の化合物の少なくとも1つ、場合によっては、2以上の 化合物を含んでいる。即ち、 ここでR1、R2及びR3は隣位であり、全て、 このときAは、 (1) 1〜24個の炭素原子を含む直鎖または枝分かれ(分枝)鎖アルキル (2) 3〜16個の炭素原子を含むシクロアルキル (3) 2〜24個の炭素原子を含むアルケニル (4) 5〜16個の炭素原子を含むシクロアルケニル (5) 6〜24個の炭素原子を含むアリール (6) 7〜48個の炭素原子を含むアラルキル (7) 7〜48個の炭素原子を含むアルカリール (8) 8〜48個の炭素原子を含むアラルケニル (9) 8〜48個の炭素原子を含むアルケニルアリール (10) 酸素、窒素または硫黄のうち少なくとも1つの原子を含むヘテロ環 なお、上記物質(1)〜(10)は、ヒドロキシ、オキソ、アルコキシ、アリ ールオキシ、ハロ、シアノ、イソシアノ、カルボキシ、エステル化カルボキシ、 アミノ、置換アミノ、ホルミル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルフ ィニル、スルホニル、ホスフィノ、ホスフィニル、ホスホニル、メルカプト、ア ルキルチオ、アリールチオ、シリル、シリルオキシ、シリルチオ、ニトロ、また は、アジドで置換されることもあれば、置換されないこともある。 (11) カルボキシ (12) エステル化カルボキシ (13) アミノ、または、 (14) 置換アミノ である。 また、R4、R5及びR6は隣位であり、全て、 このときR7及びR8は同じであるか、または、異なるものであり、 (1) 水素 (2) 1価、2価または3価のカチオン である。 更に、Xはミオ−イノシトール又はその立体配置異性体(configura tion isomer)のラジカルである。 置換基Aは、R1、R2及びR3の全てについて同じであってもよいし、上記定 義に従ったそれぞれ異なる構造を有するものであってもよい。 この発明の別の推奨実施例においては、R1、R2及びR3は隣位であって、全 てが、 ここでnは1〜10の整数であり、好ましくは、2〜4である。 ここでnは1〜10の整数であって、R9は置換または未置換の、直鎖又は分 枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールである。好ましく は、nは2〜4であり、R9はメチル、エチルまたはプロピル等の低級アルキル である。 ここでn及びmは1〜10の整数であって、Yは酸素または硫黄である。好ま しくは、nは1であり、mは2〜4である。 ここでn及びmは1〜10の整数であって、Yは酸素または硫黄であり、また 、R9は置換または未置換の、直鎖又は分枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリ ー ルまたはアルカリールである。好ましくは、nは1でmは2〜4であり、R9は メチル、エチルまたはプロピル等の低級アルキルである。 ここでnは1〜10の整数であって、R9,は置換または未置換の、直鎖又は 分枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルである。好ましく は、nは1又は2であり、R9はメチル、エチルまたはプロピル等の低級アルキ ルである。 ここでnは1〜10の整数であって、R10は水素、または、置換または未置換 の、直鎖又は分枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであ る。好ましくは、nは2又は3であり、R10は水素、または、メチル、エチルま たはプロピル等の低級アルキルである。 ここでnは1〜10の整数であって、R9は置換または未置換の、直鎖又は分 枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルである。好ましくは 、nは1であり、R9はメチル、エチルまたはプロピル等の低級アルキルである 。 ここでnは1〜10の整数であって、R9は置換または未置換の、直鎖又は分 枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、R10は水素 、または、置換または未置換の、直鎖又は分枝鎖アルキル、シクロアルキル、ア リールまたはアラルキルである。好ましくは、nは1であり、R9はメチル、エ チ ルまたはプロピル等の低級アルキルであり、R10は水素である。 ここでnは1〜10の整数であって、R9は置換または未置換の、直鎖又は分 枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、R10は水素 、または、置換または未置換の、直鎖又は分枝鎖アルキル、シクロアルキル、ア リールまたはアラルキルである。好ましくは、nは1であり、R9はメチル、エ チルまたはプロピル等の低級アルキルであり、R10は水素である。 ここでnは1〜10の整数であって、R9は置換または未置換の、直鎖又は分 枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルである。好ましくは 、nは1であり、R9はメチル、エチルまたはプロピル等の低級アルキルである 。 ここでZ1は、置換または未置換の、CH(CH22、CH(CH23、CH (CH24、CH(CH25、CH(CH26、又は、CH(CH22(CH)2 等のシクロアルキルである。 ここでZ1は、置換または未置換の、CH(CH22、CH(CH23、CH (CH24、CH(CH25、CH(CH26、又は、CH(CH22(CH)2 等のシクロアルキルであり、nは1〜10の整数である。好ましくは、nは1 である。 ここでZ2は、置換または未置換の、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アン トラセニル又はフェナントレニルである。 ここでZ2は、置換または未置換の、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アン トラセニル又はフェナントレニルであり、nは1〜10の整数である。好ましく は、nは1である。 ここでZ3は、置換または未置換の、以下のようなヘテロ環式化合物である。 ここでZ3は、置換または未置換の、以下のようなヘテロ環式化合物である。 ここでn及びmは1〜10の整数であって、R9は置換または未置換の、直鎖 又は分枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリールであり、R10及 びR11は水素、または、置換または未置換の、直鎖又は分枝鎖アルキル、シクロ アルキル、アリール、アルカリールである。好ましくは、nは1または2であり 、mは2または3であり、R9は低級アルキルであり、R10及びR11は水素であ る。 (18) −O−アセチル、−O−プロピオニル、−O−ブチリル、−O−イソ ブチリル、−O−(4−アセトキシ)ブチリル、−O−バレリル、−O−イソバ レリル、−O−(4−プロピオニルオキシ)バレリル、−O−ピバロイル、−O −ヘキサノイル、−O−オクタノイル、−O−デカノイル、−O−ドデカノイル 、−O−テトラデカノイル、−O−ヘキサデカノイル、または、−O−オクタデ カ ノイル (19) −O−メチルカルバモイル、−O−エチルカルバモイル、−O−プロ ピルカルバモイル、−O−ブチルカルバモイル、−O−フェニルカルバモイル、 −O−ベンゾイルカルバモイル、−O−(2−アセトキシ)ベンゾイルカルバモ イル、−O−(2−プロピオニルオキシ)ベンゾイルカルバモイル、または、ク ロロスルホニルカルバモイル である。 上記式は、イノシトール部分が、ミオ−イノシトール、シス−イノシトール、 エピ−イノシトール、アロ−イノシトール、ネオ−イノシトール、ムコ−イノシ トール、カイロ−イノシトール及びシロ−イノシトールからなる群から選択され ているイノシトール三燐酸の特定のエステル類を示している。 この発明の1つの推奨実施例では、レトロウイルス性の病気に対して有効な薬 剤の調製に使用される化合物は以下の構造式を有している。 ここでR1、R2及びR3は隣位であり、全て、 このときAは、 (1) 1〜24個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキル (2) 3〜16個の炭素原子を含むシクロアルキル (3) 2〜24個の炭素原子を含むアルケニル (4) 5〜16個の炭素原子を含むシクロアルケニル (5) 6〜24個の炭素原子を含むアリール (6) 7〜48個の炭素原子を含むアラルキル (7) 7〜48個の炭素原子を含むアルカリール (8) 8〜48個の炭素原子を含むアラルケニル (9) 8〜48個の炭素原子を含むアルケニルアリール (10) 酸素、窒素または硫黄のうち少なくとも1つの原子を含むヘテロ環 なお、上記物質(1)〜(10)は、ヒドロキシ、オキソ、アルコキシ、アリ ールオキシ、ハロ、シアノ、イソシアノ、カルボキシ、エステル化カルボキシ、 アミノ、置換アミノ、ホルミル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルフ ィニル、スルホニル、ホスフィノ、ホスフィニル、ホスホニル、メルカプト、ア ルキルチオ、アリールチオ、シリル、シリルオキシ、シリルチオ、ニトロ、また は、アジドで置換されることもあれば、置換されないこともある。 (11) カルボキシ (12) エステル化カルボキシ (13) アミノ、または、 (14) 置換アミノ である。 また、R4、R5及びR6は全て、 このときR7及びR8は同じであるか、または、異なるものであり、 (1) 水素 (2) 1価、2価または3価のカチオン である。 本発明のこの実施例で予期される化合物は、ミオ−イノシトール三燐酸のエス テル類であり、推奨される化合物は、D−ミオ−イノシトール−1,2,6−三 燐酸のエステル類である。 また、この発明は、以下の例によっても説明される。例1は、静脈投与用のミ オ−イノシトール三燐酸エステルの溶液の生成について示したものであり、例2 〜6は、ミオ−イノシトール三燐酸の種々のエステルの生成について示したもの であり、例7は、HIVによって生じる感染を抑制するミオ−イノシトール三燐 酸エステルの効果を示したものである。また、例8は、HIV患者から臨床的に 採取されたウイルスにより生じる感染を抑制するミオ−イノシトール三燐酸エス テルの能力を示すものであり、例9は、慢性的に感染した培養における感染の拡 大を抑制するミオ−イノシトール三燐酸エステルの性質を示すものである。例1 D−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6 −三燐酸(PP10−202)のナトリウム塩の注射溶液 PP10−202のナトリウム塩0.5gと塩化ナトリウム0.77gを98 .73mlの注射用の水に溶解させて、人間又は動物への注射に適した溶液を生 成した。例2 1.92mmolの酸の形態のD−ミオ−イノシトール−1,2,6−三燐酸 (IP3)を、残留する水を除去するために蒸発させた後、25mlのジメチル ホルムアミド(DMF)に溶解させた。1.24gのトリエチルアミンを添加し た後、蒸発させて1.15gの4−(ジメチルアミノ)−ピリジンを加えた。こ の溶液に、100mlの塩化ジメチレン(dimethylene chlor ide)に溶解させた5.30gの4−アセトキシ酪酸無水物を30分間にわた って加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌した後、蒸発させて乾燥した。 この残留物を100mlのメタノールに溶解させ、3×20mlのヘプタンで (20mlのヘプタンを3回使用して)抽出した。メタノール部分(metha nol−fraction)を蒸発させて、残った生成物をNMRで分析した。 構造決定及びNMRにより、この化合物はD−3,4,5−トリ−O−(4−ア セトキシブチリル)−ミオ−イノシトール−1,2,6−三燐酸であることがわ かった。例3 例2で述べた手順と同様の実験において、以下のD−ミオ−イノシトール−1 ,2,6−三燐酸のエステルを良好な収率で合成した。 D−3,4,5−トリ−O−プロピオニル−ミオ−イノシトール−1,2,6 −三燐酸 D−3,4,5−トリ−O−ブチリル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三 燐酸 D−3,4,5−トリ−O−イソブチリル−ミオ−イノシトール−1,2,6 −三燐酸 D−3,4,5−トリ−O−(4−ヒドロキシ)ペンタノイル−ミオ−イノシ トール−1,2,6−三燐酸 D−3,4,5−トリ−O−ドデカノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6 −三燐酸例4 1.4gのD−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(N−エチルジイソ プロピルアンモニウムハイドロゲンホスフェート)(D−mio−inosit ol−1,2,6−tris(N−ethyldiisopropyl amm onium hydrogenphosphate))を15mlの塩化メチレ ンに溶解させた。1.59gの無水ヘキサン酸、1.4mlのN−エチルジイソ プロピルアミン及び403mgの4−(ジメチルアミノ)ピリジンを加えて反応 混合物を40℃で16時間攪拌した。蒸発により溶媒を除去し、残留物に15m lのテトラヒドロフランと20mlの水を加えた。 生成した懸濁液を、溶離剤として水を用いてイオン交換クロマトグラフィ(D owex 50W−X8)で精製した。この溶出液を炭酸水素ナトリウムで中和 し、水を除去した。残留物をNMRで同定したところ、D−3,4,5−トリ− O−ヘキサノイル,ミオ−イノシトールー三燐酸であることがわかった。例5 5gのD−ミオ−イノシトール−1,2,6−三燐酸のN−エチルジイソプロ ピルアミン塩を、100mlの塩化ジメチレンに溶解させた。1.44gの4− (ジメチルアミノ)ピリジンと5mlのエチルジイソプロピルアミンを加えた後 、5.75mlのフェニルイソシアネートを60分かけて滴下して加えた。この 反応混合物を室温で6時間攪拌した後、蒸発させて乾燥した。残留物を30ml のテトラヒドロフランと6mlの水に溶解させた後、H+の形態のカチオン交換 樹脂で処理した。生成物を200mlの水で溶離して、pHが5.8になるまで 炭酸水素ナトリウムで処理した。濾過後、上澄みを蒸発させて乾燥し、NMRで 分析した。この化合物はD−3,4,5−トリ−O−フェニルカルバモイル−ミ オ−イノシトール−1,2,6−三燐酸であると同定された。例6 例5で述べた手順と同様の実験において、以下のD−ミオ−イノシトール−1 ,2,6−三燐酸のカルバメート類を良好な収率で合成した。 D−3,4,5−トリ−O−(2−アセトキシ)ベンゾイルカルバモイル−1 ,2,6−三燐酸 D−3,4,5−トリ−O−ブチルカルバモイル−1,2,6−三燐酸 D−3,4,5−トリ−O−メチルカルバモイル−1,2,6−三燐酸例7 D−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6 −三燐酸(PP10−202)のナトリウム塩の、HIV誘発感染に対する抑制 効果 H9細胞の3つの試料を、HIV−3B(HIVウイルスの型コード)に慢性 的に感染させ、未感染のC8166細胞と混合した。この混合物は、5個よりも 多い核と膨れ上がった細胞形質とを有する多数のシンシチウム細胞(syncy tia−cell)を形成した。 上記試料のうち1つを対照として使用し、第2の試料は、シンシチウム形成を 抑制するものとして知られる可溶性組換えCD4(10μg/ml)とともに培 養(incubate)した。第3の試料は、PP10−202(1000μg /ml)とともに培養した。 24時間後に、全ての試料を顕微鏡で調べて感染の進行度を求めた。 対照試料では、シンシチウム細胞が非常に増加していることが認められ、感染 の進行度が大きくかつ深刻であることがわかった。可溶性CD4を含む試料は、 シンシチウム形成に対する顕著な抑制効果を示した。PP10−202を含む試 料では、24時間後にはシンシチウム細胞の形成が、形態的に明らかな細胞障害 性(cytotoxicity)なしに完全に阻止されていた。 PP10−202の使用は、HIV誘発感染に対して強力な抑制効果を示した 。例8 種々の濃度のD−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール −1,2,6−三燐酸(PP10−202)のナトリウム塩を含有する培養液に 末梢血液単核細胞(PBMC)を加えて感染を誘発させるためにHIV感染者か ら採取したウイルスを使用した。HIV感染者から採取した25CCID50(5 0%の細胞培養感染量)のPBMCを、4つの異なる濃度(0.0625mg/ ml、0.125mg/ml、0.250mg/ml、0.500mg/ml) のPP10−202とともに培養した。対照として、PP10−202を含まな い別の試料を使用した。増殖培養液は、10%の牛の胎児の血清、2μMのグル タミン、100IU/mlのペニシリン、100IU/mlのストレプトマイシ ン及び20μg/mlのゲンタマイシンからなるものであった。細胞濃度は、1 mlあたり2×105個であった。全試料を37℃で1時間培養した。 その後、健康なドナーから採取したPBMCを試料に添加した。なお、この細 胞は、添加前に3日間フィトヘマグルチニン(PHA)により刺激を与えられて いたものである。0.5×106個の、PHAの刺激を受けたPBMCを各試料 に加えた後、37℃で3時間培養した。この細胞を、よく洗浄した後、10IU /mlのインターロイキン−2で補足した増殖培養液に再懸濁させ、96ウェル マイクロタイタープレート(96−well microtite plate )中に100.000個の細胞を有する4つのサンプルに植えつけた。その後、 更に7日間培養し、7日目にELISA法によりHIV抗原生成を検定した。得 られた値を標準化して、以下の表にまとめた。 PP10−202濃度(mg/ml) HIV感染率(%) 0 100 0.0625 75 0.125 41 0.250 33 0.500 20 臨床的にHIV感染者から採取されたウイルスによってHIV感染を生じさせ たこの例では、PP10−202は強力な感染抑制効果を示している。例9 新たに分離した末梢血液単核細胞(PBMC)に3日間フィトヘマグルチニン (PHA−P)で刺激を与えた後、この細胞を、多量の、低継代(low pa ssage)で臨床的に分離したHIVのイノキュラムで感染させた。感染した 細胞を4日間培養した後、未感染のPHA−Pで刺激されたPBMCと1:11 の割合で混合した。ペレット化(pelletation)した後、補足してい ない培養液に細胞の半分を再懸濁させ、もう半分の細胞を0.5mg/mlの濃 度のD−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1,2, 6−三燐酸(PP10−202)のナトリウム塩で補足した培養液に再懸濁させ た。再懸濁した細胞は、各ウェルに0.5×106個の細胞を有する4つの24 ウェルマイクロタイタープレートに植えつけて(plate)培養した。培養液 の半分を1週間に2度収集し、PP10−202を含む新しい培養液、または、 これを含まない新しい培養液を加えた。培養してから4日後、7日後及び10日 後に、ELISA法により上澄み中に存在するHIV抗原の量を測定した。抗原 の量の大きさは感染の増大に対応している。得られたデータを以下の表に示す。 この結果から、PP10−202を培養液に添加することによって既に感染し ていた培養が非常に顕著に減少することがわかる。この例は、通常、発病後に有 効な化合物を投与しはじめる臨床的な状況によく合致する。
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Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. イノシトール三燐酸エステルの、レトロウイルス性の病気に対して有効な 薬剤の調製への使用。 2. 上記病気が後天性免疫不全症候群(AIDS)またはAIDS関連の病気 である、請求項1に記載の使用。 3. 上記イノシトール三燐酸エステルが塩の形態をとっている、請求項1及び 2のいずれか1つに記載の使用。 4. 上記イノシトール三燐酸エステルが、ナトリウム、カリウム、カルシウム 、又は亜鉛の塩である、請求項3に記載の使用。 5. 上記イノシトール三燐酸エステルが、ミオ−イノシトール三燐酸のエステ ルである、請求項1及び2のいずれか1つに記載の使用。 6. 上記イノシトール三燐酸エステルが、D−ミオ−イノシトール−1,2, 6−三燐酸のエステルである、請求項1及び2のいずれか1つに記載の使用。 7. 上記薬剤が、錠剤、顆粒剤、カプセル、溶液又は懸濁液を含む単位剤形を とっている、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の使用。
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