【発明の詳細な説明】
つや消し効果を有する放射線硬化可能な水性塗料
技術分野
本発明は、(a)少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも1
つの水と相溶性の結合剤、(b)少なくとも1つのつや消し剤、(c)場合によ
っては酸を中和剤として含有する水、(d)場合によっては他の充填剤および/
または顔料、(e)場合によっては光重合開始剤および(f)場合によっては他
の助剤および/または添加剤を含有するつや消し効果を有する放射線硬化可能な
水性塗料に関する。
背景技術
アクリル酸エステルを基礎とする材料を、放射線、殊にUV線によって硬化す
ることは公知である。しかしこの場合、表面を硬化する際に空気の存在が障害に
なるという問題が生じる。
ドイツ連邦共和国特許第2625538号明細書の記載からは、還元剤もしく
は連鎖移動化合物としてアミンを含有する、光重合可能な被覆材が公知である。
このような遊離アミンの使用は、このアミンが可塑剤として作用する可能性があ
り、ならびに表面上で望ましくない被膜、およびわずらわしい臭気をもたらすと
いう欠点を有する。
なお重合可能な基を含有する分子中にアミノ基を導入することによって、前述
の欠点を有しない、硬化の際に重合導入されるアミンが得られる。導入の公知の
方法は、二重結合の豊富な分子へのアミンの付加であり、この付加はマイケル付
加と同様に進行し、および例示的にF.メラー(F.Moeller)、Houben-Weyl、第1
1/1巻(1957)、277〜280ページ中に記載されている。米国特許第
2759913号明細書の記載は、活性化されたエチレン性二重結合を完全に変
換させる等モル量での、活性化されたオレフィン性不飽和化合物、例えばアクリ
レートへのアミンの付加を示している。アクリレートへのアミノアルコールの付
加による体系的な試験は、N.オガタ(N.Ogata)およびT.アサハラ(T.Asahara)
、Bull.Chem.Soc.Jap.39、1486〜1490ページにより実施された。
ドイツ連邦共和国特許第2346424号明細書には、多価アルコールのアク
リルエステルおよび第二脂肪族一官能性アミンから出発する、放射線硬化可能な
材料の製造が記載されている。この材料は、貯蔵安定性の減少という欠点を有す
る。さらに第二アミンの付加は、分子のアクリルエステル官能価の減少をもたら
し、ひいては放射線誘発された重合に対して架橋性の減少をももたらす。
欧州特許出願公開第0280222号明細書の記載からは、アクリル酸または
メタクリル酸と多価アルコ
ールとのエステルと、第一モノアミンとからなる付加生成物が公知であり、この
場合、モノアミンと、エステルの(メト)アクリル性二重結合とのモル比は、0
.05:1〜0.4:1である。欧州特許出願公開第0280222号明細書に記
載の付加生成物は、空気中で硬化する、放射線硬化可能な材料中に使用される。
しかし、欧州特許出願公開第0280222号明細書から公知の生成物の貯蔵安
定性は、不十分である。即ち、付加生成物を貯蔵する際には明白な粘度上昇が記
録されるべきである。さらに4価のポリオールと第一モノアミンとからなる付加
生成物の場合、相容性の問題が生じる。この種の生成物は混濁しているか、もし
くは乳白色の外観を有する。さらに欧州特許出願公開第0280222号明細書
中に記載された、アミン変性された材料の場合の欠点は、得られた付加生成物中
で、例えばベンゾフェノンを用いて開始された系に対して十分に高い窒素含量を
保証するため、比較的高いモノアミン含量が必要とされることである。十分に高
い窒素含量は、常用の放射線量の場合に、実地において十分、かつ完全に進行す
る光重合を配慮するため、必要である。
欧州特許出願公開第0002457号明細書には、形成されたプラスチック部
材のためのプラスチックが記載されており、この場合、プラスチックは高められ
た温度で硬化される。プラスチックは、アクリル酸エ
ステルモノマーと、少なくとも3のアミン水素−官能価を有するアミンとからな
るマイケル付加生成物である。成分は、アクリレートとアミン水素との当量比0
.5〜2.0の場合に反応される。
米国特許第4547562号明細書および同第4675374号明細書の記載
からは、ポリアクリレートおよびモノアミン、ジアミンまたはポリアミンを基礎
とする、放射線硬化可能で溶剤不含の組成物が公知である。適当なジアミンおよ
びポリアミンとしては、1個を上回る第一アミノ基を有する種類が挙げられる。
このポリアミンを使用する場合、高架橋性、高分子、ひいては高粘度の被覆材が
得られ、この被覆材は反応希釈剤および溶剤の添加なしで、過度に高い塗布粘度
を有するか、もしくは固体の生成物をもたらす。
米国特許第4045416号および同第3845056号明細書は、アミンア
クリレートを基礎とする放射線硬化可能な被覆材に関し、この被覆材は、ポリア
クリレートと、少なくとも1個のアミン水素を有するアミンとの反応によって得
られる。適当なアミンとしては、第一モノアミンおよび第二モノアミンならびに
ポリアミンが挙げられる。上記の米国特許明細書の記載によれば、ポリアミン成
分としては、1個を上回る第一アミノ基を有するポリアミン、専ら第二アミンを
有するポリアミン、または第二アミノ基および第三アミノ基を有するポリアミン
が挙げられる。1個を上回
る第一アミノ基を有するポリアミンを使用する場合、貯蔵安定性の少ない不均質
な付加生成物が得られ、専ら第二アミノ基を有するポリアミン、例えばピペラジ
ンの使用により、不十分な反応性または非相容性に基づき不均質な混合物がもた
らされる。第二アミノ基および第三アミノ基を有するポリアミンの使用は、分子
のアクリル酸エステル官能価もしくはメタクリル酸エステル官能価の減少をもた
らすだけである。
記載された被覆材は、殊に装飾の目的に使用され、この場合、例えば木材下地
上での特別な装飾効果は、つや消しする被覆剤の使用によって達成される。
つや消しされた表面は、一般にいわゆるつや消し剤を用いて表面を構成するこ
とによって達成される。
この場合、市場で一般的な、公知技術水準に基づく被覆剤は、つや消し効果の
達成に必要な光沢度の減少を、全く達成しないか、あるいは専ら生態学的および
/または健康上懸念される溶剤を使用することによって得られるにすぎない。ま
た市場で一般的な被覆材の場合、しばしばそれぞれ使用されるつや消し剤と結合
剤との間の分布の問題が起こり、このことは光沢度の偏倚および塗料表面の不均
質性をまねく。
発明の開示
したがって前述から生じる課題は、前述の欠点を克服し、かつ十分な貯蔵安定
性、良好な反応性、低い粘度およびその結果生じる、比較的良好に生じる被膜特
性、殊に被膜硬度を有する放射線硬化可能な塗料を提供することである。
さらに、殊に生態学的理由から、モノマー添加剤、またはいわゆる反応希釈剤
の使用、ならびに有機溶剤の添加は、十分に断念されるはずであった。
生じる被覆は、下塗り、殊に重要な下塗り、例えばフィルム被覆された圧縮材
、またはプラスチック、例えばポリ塩化ビニルまたはポリプロピレン上で良好な
付着力を有するはずである。
特に、つや消しされた表面からぼんやりしたつや消しの外観に至るまでを有す
る被覆を可能にし、同時に塗料成分としての有機溶剤および/または反応モノマ
ー希釈剤を完全に回避しつくすような塗料が、提供されるべきであった。さらに
塗料中でのできるだけ均質なつや消し剤の分布、殊に高度な作業安全性を可能に
するための被覆の製造が必要とされる。
驚くべきことに、冒頭に記載された課題を有利に解決する、
(a)少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含有する、少なくとも1つの水と
相溶性の結合剤 40〜85重量%、有利に50〜75重量%、
(b)つや消し剤 1〜20重量%、有利に5〜15重量%、
(c)場合によっては中和剤として酸を含有する、水 5〜40重量%、有利に
10〜30重量%、
(d)他の充填剤および/または顔料 0〜25重量%、有利に0〜20重量%
、
(e)UV使用の場合の光重合開始剤 0〜6重量%、有利に3〜5重量%、
(f)他の助剤および/または添加剤 0〜15重量%、有利に0〜10重量%
、
を含有するつや消し効果を有する放射線硬化可能な水性塗料が見出された。
この場合、結合剤(a)として有利に、水と相容性である、即ち、目視可能な
相分離なしに、少なくとも一定の混合比で水と混合可能な、有利にエトキシル化
されたポリオールの(メト)アクリル酸エステルが使用される。このような水と
の相容性は、有利に(メト)アクリル化されたポリエーテルポリオールを用いて
実現されるが、このポリエーテルポリオールは、分子量600〜1000ダルト
ンを有するエトキシル化されたポリオールからなり、このポリオールは(メト)
アクリル酸でエステル化されており、有利にOH価150〜350mgKOH/
gおよび粘度300〜1000mPasを有し、有利に10〜20回エトキシル
化されており、有利にエトキシル化されたペンタエリトリットから構成されてお
り、有利にポリエーテルポリオール50〜75重量%、(メト)アクリル酸20
〜50重量%および常用の助剤0〜5重量%からなり、および有利にUV−開始
剤、特に有利にベンゾフェ
ノンを含有する。
本発明のもう1つの実施態様の場合、(メト)アクリル酸エステルの水との相
容性は、前記の(メト)アクリル酸エステル、有利に前記の(メト)アクリル化
されたポリエーテルポリオールにジアミンおよび/またはポリアミン(B)を付
加し、引続き酸を用いてアミノ基を中和させることによって達成されることがで
きる。
ジアミンおよび/またはポリアミン(B)としては、第一アミノ基および第三
アミノ基を有するジアミンが有利であり、この場合ジアミン(B)の第一アミノ
基と、オリゴマーおよび/またはポリマー(A)の(メト)アクリル性二重結合
との比は、0.01:1〜0.2:1、特に有利に0.03:1〜0.1:1であ
る。
さらに、つや消し剤(b)としては有利に表面処理された層状珪酸塩、または
低密度を有するポリアミドが有利である。
発明を実施するための最良の形態
水と相容性の結合剤(a)
請求項3の記載により水と相容性の結合剤(a)として使用される(メト)ア
クリル化されたポリエーテルポリオールは、分子量500〜1000ダルトン、
有利に700から900ダルトンを有するエトキシル化されたポリオールからな
り、このポリオールはアク
リル酸および/またはメタクリル酸でエステル化されている。
本発明の有利な実施態様の場合、(メト)アクリル化されたポリエーテルポリ
オール(a)は、ポリエーテルポリオール50〜75重量%、有利に55〜65
重量%、(メト)アクリル酸20〜50重量%、有利に30〜45重量%と、常
用の助剤0〜5重量%とからなる。
使用できるエーテルアルコールは、一般にエトキシル化度10〜20、有利に
13〜17を有し、この場合、エトキシル化度は、開始剤分子として使用される
ポリオール1モルに対して平均して付加される、酸化エチレンのモル数が記載さ
れる。特に有利には、エトキシル化度3〜6および分子量224〜400ダルト
ンを有する、エトキシル化された3価アルコールおよび/または4価のアルコー
ルが使用される。有利には、分子量500〜1000ダルトン、有利に700〜
900ダルトンを有するエトキシル化されたペンタエリトリットが使用される。
1つの例はエトキシ単位15個を用いてエーテル化されているペンタエリトリッ
トである。
有利には、OH価150〜350mgKOH/g、特に有利に250〜320
mgKOH/g、および粘度300〜1000mPas、特に有利に400〜6
00mPasを有するポリエーテルポリオールである
。
アクリル酸および/またはメタクリル酸を用いてエステル化されるヒドロキシ
ル基含有ポリエーテルは、周知の方法により2価アルコールおよび/または多価
アルコールと、種々の量の酸化エチレンとの反応によって得られる(例えば、Ho
uben-Weyl、第14/2巻、Makromolekulare Stoffe II,1963参照)。
ポリエーテルポリオールは、本質的に酸化プロピレン単位を有しない。このこ
とは、アルコキシル化反応の際には、酸化エチレンとともにいずれにせよ副次的
な量の酸化プロピレンが存在していてよいことを意味する(酸化エチレンと酸化
プロピレンとのモル比は少なくとも5:1である)。
(メト)アクリル化されたポリエーテルポリオールの製造には、有利に次の方
法が使用される:
まず、ポリエーテルポリオールおよび(メト)アクリル酸を、発生する反応水を
除去するために使用される連行剤の存在下に、70〜110℃、有利に80〜1
00℃に加熱する。この場合、沸点が60〜110℃、有利に70〜90℃であ
る物質だけが、連行剤として当てはまる。反応温度は、酸価が60〜80mgK
OH/g未満、有利に65〜75mgKOH/g未満に減少するまで、維持され
る。この場合、ポリエーテルポリオールの含量は、通常50〜75重量%、有利
に55〜65重量%である。(メト)アクリル酸を2
0〜50重量%、有利に30〜45重量%の量で添加する。それとともに、なお
反応混合物に、重合抑制剤、例えばヒドロキノン、エステル化反応を促進させる
触媒、ならびに酸化防止剤を添加する。
さらに本発明の実施態様の場合、水と相容性の結合剤(a)は、1分子当たり
アクリル酸エステル基および/またはメタクリル酸エステル基少なくとも2個を
有するオリゴマーおよび/またはポリマー(A)と、ジアミンおよび/またはポ
リアミン(B)とからなる付加生成物(AB)からなり、この場合、有利に付加
生成物(AB)のアミノ基は酸を用いて中和されている。
適当な化合物(A)は、例えばアクリル酸および/またはメタクリル酸と、2
価脂肪族アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール−1,
2およびプロピレングリコール−1,3、ブタンジオール−1,4、ペンタンジ
オール−1,2、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール−1,6、2−メ
チルペンタンジオール−1,5、2−エチルブタンジオール−1,4、ジメチロ
ールシクロヘキサン、およびジエチレングリコール、有利に3価アルコール、例
えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびトリメ
チロールブタン、有利に4価アルコール、例えばペンタエリトリットならびに有
利に多価アルコール、例えばジ(トリメチロールプロ
パン)、ジ(ペンタエリトリット)およびソルビトールとのエステルである。さ
らに、多価脂環式アルコール、例えば1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)−シ
クロヘキサン、多価芳香脂肪族アルコール、例えば1,3−キシリレンジオール
ならびに多価フェノール、例えば2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−
プロパン(ビスフェノール−A)が適当である。
有利には、成分(A)としてアクリル酸および/またはメタクリル酸と3価ア
ルコールおよび/または4価アルコールとからなるエステルが使用される。
特に有利には、既に(メト)アクリル化されたポリエーテルポリオールの製造
の場合に記載されているように、前述の多価アルコールは、アクリル酸またはメ
タクリル酸とのエステル化の前に、例えば酸化エチレンまたは酸化プロピレンを
用いてアルコキシル化することによって、高分子エーテルアルコールに移行され
る。その結果、前記のポリエーテルアクリレートまたはポリエーテルメタクリレ
ートが生じる。この種のポリエーテル(メト)アクリレートは、特に有利に成分
(A)として本発明による結合剤(a)中で使用される。
アクリル酸および/またはメタクリル酸を用いてエステル化される、ヒドロキ
シル基含有ポリエーテルは、周知の方法(例えば、Houben-Weyl、第XIV巻、
2、Makromolekulare Stoffe II、(1963)参照
)により、2価アルコールおよび/または多価アルコールと種々の量の酸化エチ
レンおよび/または酸化プロピレンとを反応させることによって得られる。また
テトラヒドロフランまたは酸化ブチレンの重合生成物も使用可能である。
また、成分(A)としては、ポリエステルアクリレートおよび/またはポリエ
ステルメタクリレートもこれに該当する。ポリエステル(メト)アクリレートの
製造には、多価アルコールとして、ヒドロキシル基含有ポリエステル(ポリエス
テルポリオール)が使用される。これらの化合物は、周知の方法(例えば、P.J
.Flory,J.Am.Chem.Soc.58,1877(1936)およびJ.Am.Chem.Soc.63,3
083(1953)参照)により、ジカルボン酸と、ジオールおよびトリオールとをエ
ステル化することによって製造されてよい。
ポリエーテルアクリレートおよびポリエステルアクリレートの製造は、例えば
、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3836370号明細書中に記載されている
。
成分(B)として有利な、第一アミノ基および第三アミノ基を有するジアミン
は、例えばN,N−ジアルキルジアミノアルカン、例えばN,N−ジメチル−1
,3−ジアミノプロパンであり、この化合物はジメチルアミノプロピオンニトリ
ルを接触水素添加することによって得られる。このジアミンの製造は、例えば、
Houben-Weyl、第11/1巻、1957、565ページ、欧州特許出願公開第3
16761号明細書またはP.Lappe,H.SpringerおよびJ.Weber,Cehm.Ztg.111
(4)、117〜125ページ(1987)中に記載されている。
他の適当なジアルキルアミノプロパンは、N,N−ジエチル−1,3−ジアミ
ノプロパン、N,N−ジ−n−プロピル−1,3−ジアミノプロパン、4−モル
ホリノプロピルアミン、3−(N−ピペリジニル)プロピルアミン、N,N−ジ
フェニル−1, 3−ジアミノプロパンである。
本発明による付加生成物の成分(B)としては、さらに次のものがこれに該当
する:N,N−ジアルキル−1,2−ジアミノエタン誘導体、例えばジメチルア
ミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N−β−アミノエチルモルホ
リン(製造は、たとえばHoubenWeyl、第11/1巻、1957、563ページ参
照)、ニトリルの形成下に1−シアンブタジエン−1,3に第二アミンを1,4
−付加し、引続き接触水素添加させることによって製造可能なN,N−ジアルキ
ル−1,5−ジアミノペンタン誘導体(製造は、Houben-Weyl、第11/1巻、
1957、276ページ参照)。適当なN,N−ジアルキル−1,5−ジアミノ
ペンタン誘導体の例は、ジメチルアミノペンチルアミン、ジエチルアミノペンチ
ルアミン、4−モルホリン
ペンチルアミンである。アミン成分(B)として特に好ましいのは、N,N−ジ
メチル−1,3−ジアミノプロパンである。
付加生成物(AB)中の成分(A)と(B)との比は、(B)の第一アミノ基
と、(A)のアクリル性二重結合、もしくはメタクリル性二重結合との比が、0
.01:1〜0.2:1であるように選択される。この場合、好ましいのは、0
.03:1〜0.1:1の比である。
本発明による付加生成物(AB)は、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸
エステル(A)、またはこれらのエステルの混合物に、マイケル反応の場合にジ
アミン(B)を付加することによって製造される。得られたアミン変性されたオ
リゴマーは、未反応のアクリルエステル基および/またはメタクリル酸エステル
基ならびに第三アミノ基を含有している。
つや消し剤(b)
つや消し剤(b)としては、一般に高い寸法安定性を有し、有利に1〜15μ
m、但し5μmを上回らない粒度を有し、および大きな粒子は塗料表面中に不規
則性をもたらすので、比較的狭い粒度分布を有し、ならびに塗装の際の被膜形成
工程中につや消し剤の沈殿をもたらす比較的低い密度を有する粒子が使用される
。
有利にはつや消し剤として、孔容積が大きく、相応
して低密度を有する多孔性層状珪酸塩が使用される。このような層状珪酸塩の例
として、平均粒度有利に1〜10μmを有する、グレース社(Firma Grace)のシ
ロイド((Syloid)登録商標)型が挙げられる。
さらにつや消し剤(b)としては、前述の要求を満たすプラスチック粒子を使
用することができる。有利には、ポリアミド粒子、例えば粒度1〜1Oμm、寸
法安定性を保証するための高いガラス温度、ならびに大きな孔容積を有する、ア
トヘム社(Firma Atochem)のオルガゾル((Orgasol)登録商標)型が使用される。
有利には、つや消し剤と一緒にパラフィンワックスを使用し、このパラフィン
ワックスを、水性塗料処方物中につや消し剤を混入する前につや消し剤に添加し
、および/またはつや消し剤と一緒に塗料処方物中に混入する。このようなパラ
フィンワックスは、有利につや消し粒子の表面を被覆し、これは再度の粒子密度
の低下および粒子の疎水性化をもたらす。
水性塗料の残りの成分(d)〜(f)、水性塗料の製造およびその使用
結合剤(a)の付加生成物(AB)への成分(A)と成分(B)との変換は、
水性塗料の配合前、配合中または配合後に行われてよい。
本発明の実施態様の場合、付加反応を塗料配合前の液相中で、適度な温度で触
媒の不在下に実施する。ジ
アミン(B)を相応する量でエステル(A)に撹拌下に室温で添加する。この場
合、温度は約40℃に上昇させてよい。温度の上昇によって反応は促進され、6
0℃で反応は約12時間後に消滅する。この場合、得られた混合物の粘度は、一
時的に一定である。再現可能性のため、反応はできるだけ完全に進行すべきであ
り、このことは40℃を上回る反応温度で達成される。
反応は一般に溶剤なしで実施されるが、しかし、殊に溶剤として固体のジアミ
ンおよび/またはポリアミン(B)を供給するためには、溶剤が使用されてもよ
い。この場合には、溶剤をマイケル付加の終了後除去する。付加反応の際に望ま
しくない重合が生じないようにするために、一般に反応混合物に重合抑制剤を添
加する。適当な重合抑制剤には、公知の生成物、例えば置換されたフェノール、
例えば2,6−ジ−第三ブチル−p−クレゾール、ヒドロキノン、例えばメチル
ヒドロキノン、およびチオエーテル、例えばチオジグリコールまたはフェノチア
ジンが属する。
本発明のもう1つの実施態様の場合には、結合剤(a)の成分(B)は成分(
a)〜(f)からなる水性塗料配合物の製造中および/または製造後に添加され
、この場合、結合剤(a)は単独で成分(A)からなるか、あるいは成分(A)
および(B)の前付加物からなる。
本発明によれば、成分(B)の添加に引き続く工程中で、成分(A)と(B)
とからなる付加生成物(AB)を、殊に第三アミノ基を少なくとも1つの酸を用
いて中和することによって、水に希釈可能な形に変換する。
塩基性基の中和に適当な酸は、例えば有機酸、例えば乳酸、酢酸またはギ酸、
または無機酸、例えばリン酸または有利に塩酸である。
本発明による放射線硬化可能な組成物は、前記の結合剤とともに、なお他の光
重合可能で、同様にアミン変性されていてよい結合剤を含有することができる。
この種の他のアミン変性された結合剤としては、例えば欧州特許出願公開第02
80222号明細書、ならびに米国特許明細書第4045416号、第4547
562号および第4675374号の記載から公知の放射線硬化可能な結合剤が
これに該当する。アミン変性されていない結合剤としては、例えばポリエーテル
アクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリ
エステルメタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、エ
ポキシアクリレートおよびエポキシメタクリレートがこれに該当する。
本発明による水性塗料中に場合によっては存在する、例えば密度において、つ
や消し剤(b)と著しく異なる充填剤および/または顔料(d)は、無機材料お
よび/または有機材料であってよい。無機充填剤および/または顔料については
、例示的に次のものが挙げられる:二酸化チタン、炭酸塩、例えば炭酸カルシウ
ムまたはカルシウムーマグネシウム−カルボネート、硫酸塩、例えば硫酸バリウ
ム(重晶石)または硫酸カリウム(石膏)または珪酸塩、例えばカオリン、雲母
または石英紛。無機充填剤および/または顔料(d)の場合、“充填剤”と“顔
料”との概念的な区別はしばしば困難であることが考慮されるべきであり、それ
というのも、例えば硫酸バリウムまたは二酸化チタンのような物質は、同時に充
填剤かつ顔料として作用するからである。有機充填剤および/または顔料は、例
示的におよび代表的に次のものが挙げられる:カーボンブラック、アゾ染料−顔
料またはフタロシアニン染料−顔料。
光硬化可能な水性塗料は、場合によっては成分(e)として、常法によれば光
硬化可能な被覆剤中で使用される光重合開始剤、例えばベンゾフェノン、ベンゾ
インまたはベンゾインエーテル、有利にベンゾフェノンをUV調剤中に含有して
いる。被覆剤中に含有されるエステルはアミン変性されており、ひいては相乗作
用を有するので、相乗剤の使用は断念されてよい。
本発明による放射線硬化可能な水性塗料は、場合によっては常用の助剤および
添加剤(f)、例えば消泡剤、流展剤、被膜形成助剤、例えばセルロース誘導体
、滑剤、ならびに10重量%までの量の溶剤、例えばメトキシプロパノールを含
有する。滑剤は、例えば塗料に対して0.5〜3重量%の含量で、流展剤は塗料
に対して0.2〜1重量%の含量で水性塗料中に存在していてよい。
本発明による変法の場合、水性塗料の粘度および反応性は、使用前にアミン成
分(B)を添加することによって一定の範囲内で調節することができる。アミン
成分(B)の添加から被覆材の塗布までの約48時間の間、アミン(B)はもは
や遊離した形では存在せず、水性塗料、ことに結合剤(a)の常用の成分に、化
学的または物理的に結合している。驚くべきことに、アミン添加下に生じた塗料
の、前記塗料配合物に対する反応性は上昇する。試験により、UV線の下で添加
されるアミン(B)の量に応じて、ほぼ2倍の反応速度および2倍の粘度が観察
されうることが判明した。
したがって本発明の有利な実施態様の場合、塗料は前記の塗料配合物95〜1
00重量%、特に有利に98〜100重量%、およびアミン成分(B)0〜5重
量%、特に有利に0〜2重量%からなる。アミン成分(B)としては、すでに前
記された化合物、すなわち有利に第一アミノ基および第三アミノ基を有するジア
ミン、特に有利にジメチルアミノプロピルアミンがこれに該当する。すでに前述
のように、アミン成分(B)の添加には、酸を用いた水性塗料の中和が引き続く
。
さらに本発明の実施態様の場合、まず成分(a)、(b)、(d)、(e)お
よび(f)を含有する非水溶性の前塗料が配合され、この場合、成分(a)は水
に不溶性である。このように製造される前塗料は、第二工程では有利に室温ない
し60℃の温度で、1〜5時間、まずアミン成分(B)と一緒に撹拌下に混合さ
れ、引続き、アミン成分を中和するための酸を含有する水性成分(c)を用いて
、本発明による塗料に配合する。
被覆剤は、噴霧、ローラー塗布、流し塗り、浸漬、ドクター塗布、刷毛塗り、
注型によって、またはバクメート塗布(Vakumat-Applikation)によって、支持
体、有利にガラス、木材、木工製品または紙上に塗布されてよい。
塗料被膜の硬化は、塗布直後、または存在する水をUV線または電子線を用い
て蒸発させた後に行なわれる。この硬化法のための装置および条件は、文献から
公知であり(例えば、R.Holmes,U.V.and E.B.CuringFormulat1ons for Printin
g Inks, Coatings and Paints, SITA-Technology,Academic Press,London,Uni
ted Kingdom 1984、79〜111ページ参照)、および他の記載を必要とし
ない。
また本発明による被覆剤は、印刷インキとしても適当である。
本発明による放射線硬化可能な被覆剤は、傑出した貯蔵安定性を有する。この
被覆剤は均質であり、良好な放射線硬化可能性を有し、かつこれらは光硬化後、
傑出した性質を有する被膜を生じる。
さらに、得られた被膜は、DIN67530により反射測定法による光沢測定
により測定される、傑出したつや消し効果(同時に高い被膜透明度)を示す。つ
や消し効果を有する物質に対する尺度は、光沢測定の際に検出された反射光の強
度であり−強度が少ないほど、つや消し効果は、ますます顕著になる。
本発明による水性塗料は特に、ガラス、木材、紙、プラスチックまたはあらゆ
る種類の下塗りされた支持体上の上塗り塗料として適当であり、かつガラス、木
材、紙およびプラスチック用の下塗り配合物として使用されてよい。
次に本発明を実施例につき詳説する。別記しない限り、部は重量部を表わす。
実施例:
例1:放射線硬化可能な水性塗料SL1の配合
本発明による放射線硬化可能な水性塗料SL1を、次の成分を混合することに
よって製造する:
(a)ペルストープ杜(Firma Perstorp)のポリオールPP150と、アクリル酸
とから製造されるポリエーテルアクリレート 58.00部
(b)つや消し剤としてのグレース社(Firma Grace)
の層状珪酸塩 シロイド(Syloid) ED 50 12.00部
(c)水 24.40部
(e)ベンゾフェノン 3.00部
ならびに
(f)滑剤(ランガー&Co.社(Firma Langer &Co.)のランコ・ワックス(Lanco
Wax)1362D) 2.00部
および
消泡剤(ビューク社(Firma Byk)のビューク(Byk)022)
0.60部
例2:放射線硬化可能な水性塗料SL2の配合
本発明による放射線硬化可能な水性塗料SL2を、次の成分を混合することに
よって製造する:
(a)バイエル社(Flrma Bayer)のポリオール デスモフェン(Desmophen)55
0Uと、アクリル酸とから製造されるポリエーテルアクリレート98.2重量%
と、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン1.8重量%とからなる混合
物 43.77部
ペルストープ社(Firma Perstorp)のポリオールPP150とアクリル酸とから製
造される、ポリエーテルアクリレート
20.47部
(b)つや消し剤としてのグレース杜(Firma Grace) の層状珪酸塩 シ
ロイド(Syloid)ED 50
10.94部
(c) 1%の塩酸水溶液 16.21部
(e)ベンゾフェノン 3.44部
ならびに
(f)メトキシプロパノール 5.16部
例3:放射線硬化可能な水性塗料SL3の配合
本発明による放射線硬化可能な水性塗料SL3を、次の成分を混合することに
よって製造する:
(a)ベルストープ社(Firma Perstorp)のポリオールPP150と、アクリル酸
とから製造されるポリエーテルアクリレート 58.00部
(b)つや消し剤としてのグレース杜(Firma Grace)の層状珪酸塩 シロイド(Sy
loid) ED 50
11.50部
(c)水 22.50部
(e)ベンゾフェノン 3.00部
ならびに
(f)表面助剤(ランガー&Co.社(Firma Langer&Co.)のランコ・ワックス
(Lanco Wax) 1362D) 2.00部
表面助剤(グロールマン社(Firma Grolmann)の滑石 ステアミック(St
eamic)00S) 2.50部
および
濃稠化剤(デグッサ社(Firma Degussa AG)の
アエロシル(Aerosil)R972) 0.50部
例4:水と非相容性の前塗料からの、水と相容性の塗料SL4の製造
前塗料を、次の成分を混合することによって製造する:
(a):ポリエーテルアクリレート(BASF社(Firma BASF AG)のラロマー
(Laromer)P033F) 58.00部
(b):つや消し剤としてのグレース社(Firma Grace)の層状珪酸塩 シロイ
ド(Syloid)ED 50 12.00部
(e):ベンゾフェノン(チバ社(Firma Ciba)のイルガキュア(Irgacure)500
) 3.00部
ならびに
(f):表面助剤(ランガー&Co.社(Firma Langer&Co.)のランコ・ワック
ス(Lanco Wax)1362D 2.00部
消泡剤(ビューク社(F1rma Byk)のビューク(Byk)022)
0.30部
消泡剤(ビューク社(Firma Byk)のビューク(Byk)024)
0.30部
前塗料の製造に引続き、まずN,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン
2.00部を添加し、次に
室温で3時間撹拌し、最後に3%の塩酸水溶液 24.40部を添加する。
塗布の際に、塗料SL1、SL2およびSL3と同様に均質な被覆をもたらす
、均質な塗料SL4が生じる。
比較例:水との相容性を生じさせない、水中もしくは3%の塩酸水溶液中での前
塗料の分散(塗料VL1)
まず例4による前塗料を製造し、引続き水もしくは3%の塩酸水溶液を26.
40部添加する。
不均一な塗料VL1が生じ、この塗料は、塗布の際に不均一な被覆をもたらす
。
例5:塗料SL1、SL2、SL3、SL4およびVL1を塗布した被覆の光沢
測定
光沢測定を、DIN67530により、反射測定法で60度の角度で実施し、
この場合、光沢の尺度は、反射される光束が入射する光電受容体と接続されてい
る測定装置の単位(E)が使用される。視覚的に良好に見えるつや消し効果は、
60E未満の数値(シルク様つや消し効果40〜50E)、特に良好なつや消し
効果は30E未満で生じる。
本発明による塗料SL1、SL2、SL3、SL4ならびに比較塗料VL1を
、支持体、ポリ塩化ビニルPVC(プラスチック)、ガラスおよび下塗りしたさ
くらの木KBH上で試験した。さくらの木KBHの被
覆の場合、まず塗料SL3を下塗りし(GR)、引続き塗料SL1とSL2とを
上塗りする(DL)。塗装および硬化後に生じる塗料層の層厚を、それぞれかっ
こ内に記載した。
塗料の硬化は80ワット−水銀−UV照射器の下で行なわれた。この場合、通
常100〜250mJ/cm2のエネルギー供給が典型的である。
塗料 下記支持体上の光沢測定/E(塗料の層厚、μmで)
ガラス PVC KBH
SL1 18(20) 10(12) 10(10 DL)
SL2 20(20) 16(12) 12(10 DL)
SL3 18(20) 13(12) 18(10)
SL4 30(20) 9(12) −
VL1 81(20) 45(12) −
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
// C08F 299/02 C08F 299/02
(72)発明者 ヨルゲ プリート
ドイツ連邦共和国 ミュンスター ローゼ
ンエック 9
(72)発明者 カール―ハインツ ディッカーホフ
ドイツ連邦共和国 ドレンシュタインフル
ト ガルテンヴェーク 26