JP2000358356A - 渦電流式減速装置 - Google Patents

渦電流式減速装置

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JP2000358356A
JP2000358356A JP11165920A JP16592099A JP2000358356A JP 2000358356 A JP2000358356 A JP 2000358356A JP 11165920 A JP11165920 A JP 11165920A JP 16592099 A JP16592099 A JP 16592099A JP 2000358356 A JP2000358356 A JP 2000358356A
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晋 小林
Tadaharu Yamada
忠治 山田
Masaki Asano
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Makoto Ogawa
誠 小川
Toru Kuwabara
徹 桑原
Noritoshi Narumi
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 制動トルクを増大させること。 【解決手段】 制動ドラム7の内周面に近接した外周壁
12を含むケース10と、ケース10内に支持された非
磁性体からなる支持筒22と、支持筒22に周方向に間
隔をおいて配設されかつ周方向両端に磁極面を有する複
数の磁石26と、磁石26の各々に対し、各磁極面にそ
れぞれ密着してかつ外周壁12の内周面に面する対向面
を有するよう支持筒22に配設された一対の強磁性部材
27と、支持筒22の強磁性部材27の各々に対応して
外周壁12に配設された強磁性部材28とを備えた渦電
流式減速装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両、特にトラッ
ク等の大型車両のメインブレーキであるフットブレーキ
を補助するのに適用される渦電流式減速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】本出願人であるいすゞ自動車株式会社が
先に開発し、そして同社から出願された特願平10−1
05846号明細書に開示された渦電流式減速装置は、
回転軸に連結された制動ドラムと、制動ドラムの内側に
同軸に配設された環状のケースとを備えている。ケース
は、制動ドラムの内周面に近接した、非磁性体からなる
外周壁を備えている。この外周壁は薄板から形成されて
いる。ケース内には静止支持筒及び可動支持筒が軸方向
に並列して配設されている。静止支持筒はケースの内周
壁に固定され、可動支持筒はケースの内周壁に正逆回動
可能に支持されている。支持筒の各々は非磁性体から形
成されている。支持筒の各々には、周方向に間隔おいて
複数の永久磁石が配設されている。永久磁石の各々は、
周方向両端に磁極面を有すると共に支持筒の各々間で並
列されるよう配設されている。支持筒の各々にはまた、
磁石の各々に対し、一端が各磁極面にそれぞれ密着しか
つ他端が外周壁を介して制動ドラムの内周面に面する対
向面を規定すると共に支持筒の各々間で並列されるよう
に一対の強磁性部材が配設されている。強磁性部材の各
々は、永久磁石の各々における磁極面の各々から半径方
向外側に延び出すよう配設されている。ケースには、可
動支持筒を正逆回動させて制動と非制動との切換を行な
うアクチュエータが備えられている。
【0003】また本出願人であるいすゞ自動車株式会社
が先に開発し、そして同社から出願された他の出願であ
る特願平10−106963号明細書に開示された渦電
流式減速装置は、回転軸に連結された制動ドラムと、制
動ドラムの内側に同軸に配設された環状のケースとを備
えている。ケースは、制動ドラムの内周面に近接した、
非磁性体からなる外周壁を備えている。ケース内には非
磁性体からなる支持筒が軸方向移動可能に支持されてい
る。支持筒には周方向に間隔おいて複数の永久磁石が支
持されている。永久磁石の各々は、周方向両端に磁極面
を有している。ケースの上記外周壁には、永久磁石の各
々に対し、各磁極面との間にそれぞれ対向面が形成され
るよう、一対の強磁性部材が半径方向内側に延び出すよ
うに一体に配設されている。強磁性部材の各々は、制動
ドラムの内周面に面する一つの対向面を有するよう外周
壁に配設されている。支持筒は、アクチュエータによっ
て、永久磁石の各々における磁極面の各々が対応する強
磁性部材の対向面と対向する制動位置と、対応する強磁
性部材から退避する非制動位置とに軸方向に往復移動さ
せられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】特願平10−1058
46号明細書に開示された渦電流式減速装置において
は、強磁性部材の各々の対向面は、薄板からなる外周壁
を介して制動ドラムの内周面に面する(対向する)よう
構成されているので、上記外周壁が、該対向面の各々と
制動ドラムの内周面との間に形成される磁束の流路にお
けるエアギャップとなって磁力を低下させ、したがって
制動トルクを低下させる。また、強磁性部材の各々は、
永久磁石の各々における磁極面の各々から半径方向外側
に延び出すよう、支持筒の各々に配設されているので、
永久磁石の各々における磁極面の各々と制動ドラムの内
周面との間の磁束の流路の距離が比較的長くなる。その
結果、磁力を低下させ、したがって制動トルクを低下さ
せる。なお同明細書には、支持筒の各々において、永久
磁石の各々及び強磁性部材の各々を対応する支持筒内に
鋳込むよう構成する技術も開示されている。静止支持筒
においてはケースの一方の端壁とも一体化されている。
強磁性部材の各々の、制動ドラムの内周面に面する対向
面のみが支持筒の各々の外周面において露呈されてい
る。そして支持筒の各々の相互に隣接する外周部の側縁
部間、及びケースの一方の端壁とそれに隣接する可動支
持筒の外周部の側縁部間にはダストシールが配設されて
いる。この技術によれば、上記したエアギャップの問題
は解消されるが、ダストシールを設ける必要があるの
で、長期の使用によりダストシールが劣化してダストが
ケース内に侵入するおそれがある。
【0005】他方、特願平10−106963号明細書
に開示された渦電流式減速装置においては、強磁性部材
の各々がケースの外周壁から半径方向内側に延び出すよ
うに一体に配設されているので、強磁性部材と一体型の
ケースの製造が困難となる。また永久磁石の各々におけ
る磁極面の各々と制動ドラムの内周面との間の磁束の流
路の距離が比較的長くなるので、磁力を低下させ、した
がって制動トルクを低下させる。
【0006】本発明は上記事実に基づいてなされたもの
であり、その目的は、磁石側と制動ドラムとの間のエア
ギャップを少なくすることを可能にし、その結果、制動
トルクを増大させることができる、新規な渦電流式減速
装置を提供することである。
【0007】本発明の他の目的は、磁石と制動ドラムと
の間に形成される磁束の流路の距離を短縮することを可
能にし、その結果、制動トルクを増大させることができ
る、新規な渦電流式減速装置を提供することである。
【0008】本発明の更に他の目的は、製造及び組立が
容易である、新規な渦電流式減速装置を提供することで
ある。
【0009】本発明のその他の目的及び特徴は、本発明
に従って構成された渦電流式減速装置の実施形態につい
て添付図面を参照して詳細に説明する後の記載から明ら
かになるであろう。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の一局面によれ
ば、制動ドラムと、制動ドラムの内周面に近接した外周
壁を含むケースと、ケース内に軸方向に並列して支持さ
れた非磁性体からなる支持筒と、支持筒の各々に周方向
に間隔をおいて配設されかつ周方向両端に磁極面を有す
ると共に支持筒の各々間で並列される複数の磁石と、磁
石の各々に対し、各磁極面にそれぞれ密着してかつ上記
外周壁の内周面に面する対向面を有するよう支持筒の各
々に配設されると共に支持筒の各々間で並列される一対
の強磁性部材と、支持筒の各々間で並列される強磁性部
材の各々に対応してその一方から他方にわたって延在す
るよう上記外周壁に配設された強磁性部材とを備え、上
記外周壁の強磁性部材の各々は、支持筒の各々間で並列
される強磁性部材の各々の対向面に面する内側対向面
と、制動ドラムの内周面に面する外側対向面とを有す
る、ことを特徴とする渦電流式減速装置、が提供され
る。
【0011】本発明の他の局面によれば、制動ドラム
と、制動ドラムの内周面に近接した外周壁を含むケース
と、ケース内に支持された非磁性体からなる支持筒と、
支持筒に周方向に間隔をおいて配設されかつ周方向両端
に磁極面を有する複数の磁石と、磁石の各々に対し、各
磁極面にそれぞれ密着してかつ上記外周壁の内周面に面
する対向面を有するよう支持筒に配設された一対の強磁
性部材と、支持筒の強磁性部材の各々に対応して上記外
周壁に配設された強磁性部材とを備え、上記外周壁の強
磁性部材の各々は、支持筒の強磁性部材の各々の対向面
に面する内側対向面と、制動ドラムの内周面に面する外
側対向面とを有する、ことを特徴とする渦電流式減速装
置、が提供される。
【0012】本発明の更に他の局面によれば、制動ドラ
ムと、制動ドラムの内周面に近接した外周壁を含むケー
スと、ケース内に支持された非磁性体からなる支持筒
と、支持筒に周方向に間隔をおいて配設されかつ周方向
両端に磁極面を有する複数の磁石と、磁石の各々に対
し、各磁極面にそれぞれ密着してかつ上記外周壁の内周
面に面する対向面を有するよう支持筒に配設された一対
の強磁性部材と、上記外周壁に周方向に間隔をおいて配
設された複数の強磁性部材とを備え、上記外周壁の強磁
性部材の各々は、支持筒においてそれぞれ磁石を介さな
いで周方向に間隔をおいて対向する強磁性部材の各々に
対応してその一方から他方にわたって周方向に延在する
よう配設されると共に該強磁性部材の各々の対向面に面
する内側対向面と、制動ドラムの内周面に面する外側対
向面とを有する、ことを特徴とする渦電流式減速装置、
が提供される。
【0013】本発明の更に他の局面によれば、制動ドラ
ムと、制動ドラムの内周面に近接した外周壁を含むケー
スと、ケース内に支持された非磁性体からなる支持筒
と、支持筒の外周面に等間隔をおいて配設されかつ周方
向両端に磁極面を有する複数の磁石と、磁石の各々間に
各磁極面に密着して配設された強磁性部材と、上記外周
壁に周方向に等間隔をおいて配設された、支持筒の強磁
性部材と同数の強磁性部材とを備え、上記外周壁の強磁
性部材の各々は、支持筒の強磁性部材の各々に対し、周
方向長さが短く規定されると共に各々の周方向中央部に
配置されかつ各々の外周面に面する内側対向面と、制動
ドラムの内周面に面する外側対向面とを有する、ことを
特徴とする渦電流式減速装置、が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適実施形態を添
付図面を参照して更に詳細に説明する。なお、図1〜図
16において実質上同一部分は同一符号で示されてい
る。図1を参照して、図示しないトラックにおけるトラ
ンスミッションの出力軸(回転軸)2には、半径方向外
方に延びるフランジ部4が取り付けられている。フラン
ジ部4には、パーキングブレーキ用の制動ドラム6と、
渦電流式減速装置用のロータである制動ドラム7とが複
数のボルト8により共締めされている。以上の構成によ
り制動ドラム7は出力軸2に連結される。制動ドラム7
は鉄などの透磁率の大なる強磁性体から形成されてい
る。制動ドラム7の半径方向外側及び軸方向の外側には
複数の冷却フィン9が一体に設けられている。制動ドラ
ム7の内側(環状空間の内側)には、中空円環状のケー
ス10が同軸に配設されている。ケース10はそのほぼ
全体が制動ドラム7の内側に配置されている。図示しな
いミッションケースに装着されたケース10は、全体が
ほぼ円筒形状をなす外周壁12と、外周壁12よりも小
径の内周壁14と、外周壁12及び内周壁14の軸方向
両端においてそれらを連結するように配設された円環状
の端壁16及び18とから構成されている。外周壁12
は図1に示すように制動ドラム7の内側に配置されかつ
制動ドラム7の内周面に近接して配置されている。外周
壁12と端壁16、内周壁14と端壁18は、それぞれ
一体に形成され、これら二つの構成部材は複数のボルト
により結合されている。ケース10は、後述する強磁性
部材28の各々を除き、全体が例えばアルミニウムなど
の非磁性体から構成されている。ケース10の円環状の
中空部は、図1に示すように縦断面がほぼ矩形状をなし
ている。
【0015】ケース10内の内周壁14には、それぞれ
非磁性体からなる静止支持筒20と可動支持筒22とが
軸方向に並列して支持されている。静止支持筒20は端
壁18及び内周壁14に固定され、可動支持筒22は内
周壁14に一対のベアリング24を介して正逆回動可能
に支持されている。図1と共に図2を参照して、円筒形
状をなす静止支持筒20及び可動支持筒22の各々の外
周部には、周方向に等間隔をおいて複数の磁石26が鋳
込まれる形態で一体に配設されている。磁石26の各々
は、ほぼ直方体形状をなす永久磁石から構成され、それ
ぞれ周方向両端に磁極面を有している。磁石26の各々
は、相互に周方向に間隔をおいて対向する磁極面の極性
が異極(N−S)となるように配列されている。静止支
持筒20及び可動支持筒22の各々にはまた、磁石26
の各々に対し、一対の強磁性部材27が鋳込まれる形態
で一体に配設されている。各対における強磁性部材27
の各々の周方向の一端は、対応する磁石26の磁極面に
密着して位置付けられ、各々の周方向の他端は、半径方
向外側に向かうにしたがって相互に周方向に離れてゆく
傾斜面を有している。したがって強磁性部材27の各々
は、制動ドラム7の軸方向から見てほぼ逆台形状をなし
ている。強磁性部材27の各々は、制動ドラム7の内周
面に近接して配置された上記外周壁12の内周面に面す
る対向面27aを有し、各々の対向面27aのみが、静
止支持筒20及び可動支持筒22の各々の外周面から露
呈される形態で該支持筒20及び22に一体に成形され
ている。対向面27aの各々は静止支持筒20及び可動
支持筒22の各々の外周面と実質上同一面上に位置付け
られている。静止支持筒20及び可動支持筒22の各々
はそれぞれに配設された強磁性部材27の各々よりも厚
い肉厚を有している。磁石26の各々及び強磁性部材2
8の各々は、静止支持筒20及び可動支持筒22間で並
列しうるよう(隣接しうるよう)配設されている(換言
すれば、互いに同じ形態で配列されている)。静止支持
筒20及び可動支持筒22間で並列された磁石26同士
は相互に同極となる。
【0016】ケース10の外周壁12には、周方向に間
隔をおいて複数の強磁性部材28が一体に配設されてい
る。強磁性部材28の各々は外周壁12の一部により周
方向に仕切られている。強磁性部材28の各々は、静止
支持筒20及び可動支持筒22間で並列される強磁性部
材27の各々に対応してその一方(静止支持筒20の強
磁性部材27)から他方(可動支持筒22の強磁性部材
27)にわたって軸方向に延在するよう外周壁12に配
設されている。したがって、外周壁12の強磁性部材2
8の各々は、静止支持筒20及び可動支持筒22の各々
間で並列される強磁性部材27の各々の対向面27aに
ほぼ全面的に面する(対向する)内側対向面28aと、
制動ドラム7の内周面に面する外側対向面28bとを有
している。強磁性部材28の各々の内側対向面28aは
外周壁12の内周面と実質上同一面上に位置付けられ、
また各々の外側対向面28bは外周壁12の外周面と実
質上同一面上に位置付けられている。したがって、外周
壁12の、強磁性部材28の各々が一体に配設された部
分は、強磁性部材28の各々を含めて肉厚がその全周に
わたって実質上一定に形成される。図示の実施形態にお
いては、外周壁12における強磁性部材28の各々、強
磁性部材28の各々を周方向に仕切る外周壁12の一部
の各々、静止支持筒20及び可動支持筒22における磁
石26の各々及び強磁性部材27の各々の周方向長さ
は、それぞれ実質上同一に規定されている。なお、この
場合の周方向長さとは、静止支持筒20及び可動支持筒
22の外周面、外周壁12の内周面におけるそれぞれの
長さを意味するものとする。
【0017】ケース10には、可動支持筒22を静止支
持筒20に対して正逆回動させて制動と非制動との切換
を行なうアクチュエータであるエアシリンダ機構30が
付設されている。図1に示すように、エアシリンダ機構
30は、ケース10の端壁16を共有するシリンダ32
と、シリンダ32内に摺動自在に収容されたピストン3
4と、ピストン34に連結されたピストンロッド36
と、ピストンロッド36と可動支持筒22とを図示しな
いユニバーサルジョイントを介して連結する連結アーム
38とを備えている。連結アーム38は、端壁16に、
図において表裏方向に延在するよう形成されたスリット
を貫通して、ピストンロッド36の先端からケース10
の中空部内に延びるよう配設されている。エアシリンダ
機構30の軸線は、可動支持筒22の接線方向と一致す
るよう配置される。エアシリンダ機構30は、周方向に
等間隔をおいて複数個、例えば2個配置されることが好
ましい。
【0018】シリンダ32内はピストン34により二つ
の室に区画され、一方の室に、圧力エア供給源である図
示しないエアタンクから圧力エアが供給されると、ピス
トン34、ピストンロッド36及び連結アーム38を介
して可動支持筒22、可動支持筒22における磁石26
の各々及び強磁性部材27の各々が一体に一方向に、後
述する非制動位置から磁石26の各々における半ピッチ
だけ回動させられる。可動支持筒22における磁石26
の各々及び強磁性部材27の各々は制動位置に位置付け
られる(図2及び図3参照)。この制動状態において、
シリンダ32内の他方の室に圧力エアが供給されると、
ピストン34、ピストンロッド36及び連結アーム38
を介して可動支持筒22、可動支持筒22における磁石
26の各々及び強磁性部材27の各々が一体に、上記制
動位置から逆方向に磁石26の各々における半ピッチだ
け回動させられる。可動支持筒22における磁石26の
各々及び強磁性部材27の各々は非制動位置に位置付け
られる(図4及び図5参照)。
【0019】以上のように構成された渦電流式減速装置
を作動させて、走行中のトラックに制動(補助制動)を
作用させる(制動ONとする)場合には、エアシリンダ
機構30を作動させて可動支持筒22における磁石26
の各々及び強磁性部材27の各々を制動位置に位置付け
る(図2及び図3参照)。これにより、可動支持筒22
における磁石26の各々は、静止支持筒20の磁石26
の各々の同極側と並列して位置付けられ(同極同士が隣
接され)、また可動支持筒22における強磁性部材27
の各々は、静止支持筒20における強磁性部材27の各
々の同極側に並列して位置付けられる(同極同士が隣接
される)。外周壁12の強磁性部材28の各々の内側対
向面28aは、静止支持筒20及び可動支持筒22の各
々間で並列された強磁性部材27の各々の対向面27a
に面するよう相対的に位置付けられる。その結果、可動
支持筒22における磁石26の各々及び強磁性部材27
の各々と制動ドラム7との間、及び、静止支持筒20に
おける磁石26の各々及び強磁性部材27の各々と制動
ドラム7との間に、それぞれ外周壁12の強磁性部材2
8の各々を介して磁気回路が形成されるので、それに対
応して制動ドラム7に渦電流が発生し、制動ドラム7に
対する制動が作動させられる。
【0020】外周壁12の強磁性部材28の各々の外側
対向面28bと制動ドラム7の内周面との間には、薄板
のような介在物が存在しないので、その間のエアギャッ
プを上記従来装置に較べて少なくすることができる。そ
の結果、制動トルクを増大させることが可能となる。外
周壁12側の強磁性部材28の各々は、外周壁12の一
部としてその厚さ(肉厚)とほぼ同じ厚さ(半径方向寸
法)で、外周壁12に一体に成形されるよう構成されて
いるので、強磁性部材28の各々の厚さを外周壁12の
厚さと共に可能な限り薄くすることが可能である。その
結果、磁石26の磁極面の各々と制動ドラム7との間の
磁束流路の距離を短縮することが可能となり、磁力の低
下を防止することができ、結果として制動トルクを増大
させることができる。また上記のように強磁性部材が、
静止支持筒20及び可動支持筒22側の強磁性部材27
の各々と、外周壁12側の強磁性部材28の各々とに2
分割されるよう構成されているので、強磁性部材28の
各々と一体型のケース10の製造が容易となり、また装
置の組立も容易となる。更にはまた、上記従来装置にお
けるようなダストシールを設ける必要がないので、長期
にわたりケース内へのダストの侵入を防止することがで
きる。更にはまた、使用される磁石26の数が比較的多
いので強力な制動トルクが得られ、特にトラック等の大
型車両に有利である。
【0021】制動を解除させて非制動状態に切り換える
(制動をOFFに切り換える)場合には、エアシリンダ
機構30を作動させて可動支持筒22における磁石26
の各々及び強磁性部材27の各々を制動位置に位置付け
る(図4及び図5参照)。これにより、可動支持筒22
における磁石26の各々は、静止支持筒20の磁石26
の各々における周方向の中間位置に位置付けられ、また
可動支持筒22における強磁性部材27の各々は、静止
支持筒20における強磁性部材27の各々の異極側に並
列して位置付けられる(異極同士が隣接される)。その
結果、可動支持筒22における磁石26の各々及び強磁
性部材27の各々と、静止支持筒20における磁石26
の各々及び強磁性部材27の各々との間に、外周壁12
の強磁性部材28の各々を介して磁気回路が形成され、
制動ドラム7との間は磁気的に遮断されるので、制動ド
ラム7に対する制動は解除される。
【0022】図1〜図5を参照して説明した渦電流式減
速装置の実施形態においては、静止支持筒20及び可動
支持筒22の各々における磁石26の各々は、相互に周
方向に間隔をおいて対向する磁極面の極性が異極(N−
S)となるように配列されているが、同極(N−N及び
S−S)となるように配列する他の実施形態も成立す
る。図6及び図7にはこのような他の実施形態が示され
ている。図6に示すように、エアシリンダ機構30を作
動させて可動支持筒22における磁石26の各々及び強
磁性部材27の各々を制動位置に位置付けると、静止支
持筒20及び可動支持筒22の各々においてそれぞれ同
極同士が並列された磁石26の各々及び強磁性部材27
の各々と制動ドラム7との間に外周壁12の強磁性部材
28の各々を介して磁気回路が形成され、制動ドラム7
に対する制動が作動させられる。磁気回路の各々は、周
方向に対向する磁石26の各々間で相互に独立して形成
される。エアシリンダ機構30を作動させて可動支持筒
22における磁石26の各々及び強磁性部材27の各々
を、磁石26の各々の1ピッチだけ回動させて非制動位
置に位置付けると、図7に示すように、可動支持筒22
の磁石26及び強磁性部材27の各々と、静止支持筒2
0の磁石26及び強磁性部材27の各々とは相互に異極
同士が並列して位置付けられる。その結果、可動支持筒
22と静止支持筒20との間で相互に並列された磁石2
6の各々及び強磁性部材27の各々と、外周壁12の強
磁性部材28の各々との間で磁気回路が形成され、制動
ドラム7との間は磁気的に遮断されるので、制動ドラム
7に対する制動は解除される。図6及び図7に示す実施
形態においては、上記したように、静止支持筒20及び
可動支持筒22に配設された磁石26の磁極面の向きが
相違するのみで、その他の構成は図1〜図5を参照して
説明した渦電流式減速装置の実施形態と実質上同一であ
るので、実質上同一の作用効果が達成される。
【0023】図8には、図1〜図5を参照して説明した
渦電流式減速装置の実施形態において、ケース10内に
可動支持筒22のみを配設し、静止支持筒20を排除し
た形態の、渦電流式減速装置の他の実施形態が示されて
いる。可動支持筒22には、磁石26の各々及び強磁性
部材27の各々が、上記実施形態と実質上同一の形態で
配設されている(図2参照)。ケース10の外周壁12
には、周方向に間隔をおいて複数の強磁性部材28が一
体に配設されている。強磁性部材28の各々は外周壁1
2の一部により周方向に仕切られている。強磁性部材2
8の各々は、可動支持筒22に配設された強磁性部材2
7の各々に対応して外周壁12に配設されている。した
がって、外周壁12の強磁性部材28の各々は、可動支
持筒22に配設された強磁性部材27の各々の対向面2
7aにほぼ全面的に面する内側対向面28aと、制動ド
ラム7の内周面に面する外側対向面28bとを有してい
る(図2参照)。その他の構成は上記実施形態と実質上
同一であるので説明は省略する。
【0024】図8に示す渦電流式減速装置を作動させて
制動を作動させる場合には、上記実施形態と同様にエア
シリンダ機構30を作動させて、可動支持筒22におけ
る磁石26の各々及び強磁性部材27の各々を、後述す
る非制動位置から、一体に一方向に磁石26の各々の1
/4ピッチだけ回動させて制動位置に位置付ける(図2
参照)。これにより、可動支持筒22における強磁性部
材27の各々の対向面27aは、外周壁12の、対応す
る強磁性部材28の内側対向面28aに面するよう位置
付けられる。その結果、可動支持筒22における磁石2
6の各々及び強磁性部材27の各々と制動ドラム7との
間に、それぞれ外周壁12の強磁性部材28の各々を介
して磁気回路が形成されるので、制動ドラム7に対する
制動が作動させられる(図2参照)。
【0025】制動を解除させて制動をOFFに切り換え
る場合には、エアシリンダ機構30を作動させて可動支
持筒22における磁石26の各々及び強磁性部材27の
各々を、上記制動位置から、逆方向に磁石26の各々の
1/4ピッチだけ回動させて非制動位置に位置付ける
(図9参照)。これにより、可動支持筒22における磁
石26の各々は、外周壁12の、対応する強磁性部材2
8に面して位置付けられ、また可動支持筒22における
強磁性部材27の各々は、外周壁12の、対応する、強
磁性部材28の各々を周方向に仕切る一部、に面して位
置付けられる。その結果、図9に示すように、磁石26
の各々及び磁石26の各々を周方向に挟む一対の強磁性
部材27の各々と磁石26の各々に面する外周壁12の
強磁性部材28の各々との間、及び可動支持筒22にお
いて周方向に磁石26の各々を介在することなく相互に
対向する強磁性部材27の各々とそれらの間の可動支持
筒22の周方向の一部の各々に面して位置する外周壁1
2の強磁性部材28の各々との間に、磁気回路が形成さ
れ、制動ドラム7との間は磁気的に遮断されるので、制
動ドラム7に対する制動は解除される。上記説明から明
らかなように、図8に示す渦電流式減速装置は、図1〜
図5を参照して説明した先の実施形態よりも構成が簡単
で低コストで製造可能であり、しかも、同実施形態と実
質上同じ特徴を有する構成を備えているので、実質上同
一の作用効果が達成される。ただし、先の実施形態の方
が使用される磁石26の数が多いので、得られる制動力
は先の実施形態の方が強力であるといえる。
【0026】図10及び図11には、主として図8及び
図9を参照して説明した渦電流式減速装置の他の実施形
態が示されている。この実施形態において、ケース10
の内周壁14は先の実施形態と同様に非磁性体から構成
されている。そして内周壁14には、磁石26の各々と
同じピッチで周方向に間隔をおいて磁石26の各々と同
数の強磁性部材39が配設されている。強磁性部材39
の各々の周方向長さは、磁石26の周方向長さと同一ま
たはそれ以上に規定されている。その他の構成は、図8
及び図9を参照して説明した渦電流式減速装置の実施形
態と実質上同一であり、説明は省略する。
【0027】制動をON−OFFする場合には、エアシ
リンダ機構30を作動させて、可動支持筒22における
磁石26の各々及び強磁性部材27の各々を、磁石26
の各々の1/4ピッチだけ正逆回動させることにより制
動位置と非制動位置とに選択的に位置付ける。図10に
示す制動ONの状態においては、先に述べたと同様に、
可動支持筒22における磁石26の各々及び強磁性部材
27の各々と制動ドラム7との間に、それぞれ外周壁1
2の強磁性部材28の各々を介して磁気回路が形成され
るので、制動ドラム7に対する制動が作動させられる。
この制動状態で、強磁性部材39の各々は、磁石26の
各々の周方向の一方側に配置されている強磁性部材27
の各々に面して相対的に位置付けられるよう配置されて
いるので、上記磁気回路の形成を妨げることはない。制
動OFFの状態においては、図11に示すように、可動
支持筒22における磁石26の各々及び強磁性部材27
の各々は、先に述べた図9に示す位置と実質上同じ位置
に位置付けられる。また強磁性部材39の各々は、磁石
26の各々に面して相対的に位置付けられる。その結
果、図11に示すように、磁石26の各々及び磁石26
の各々を周方向に挟む一対の強磁性部材27の各々と磁
石26の各々に面する外周壁12の強磁性部材28の各
々との間に磁気回路が形成されることに加えて、更に、
磁石26の各々及び磁石26の各々を周方向に挟む一対
の強磁性部材27の各々と磁石26の各々に面する内周
壁14の強磁性部材39の各々との間にも磁気回路が形
成されるので、非制動時における磁束洩れを効果的に防
止することができる。上記説明から明らかなように、図
10及び図11に示す渦電流式減速装置は、図8及び図
9を参照して説明した先の実施形態と同様に、図1〜図
5を参照して説明した先の実施形態と実質上同じ特徴を
有する構成を備えているので、実質上同一の作用効果が
達成される。
【0028】図12及び図13には、主として図8及び
図9を参照して説明した渦電流式減速装置の更に他の実
施形態が示されている。この実施形態において、外周壁
12には、先の実施形態と相違する形態で、周方向に間
隔をおいて複数の強磁性部材40が配設されている。強
磁性部材40の各々は、可動支持筒22においてそれぞ
れ磁石26を介さないで周方向に間隔をおいて対向する
強磁性部材27の各々に対応してその一方から他方にわ
たって周方向に延在するよう配設される(図12参
照)。強磁性部材40の各々は、上記強磁性部材27の
各々の対向面27aに面する内側対向面40aと、制動
ドラム7の内周面に面する外側対向面40bとを備えて
いる。可動支持筒22における磁石26及び強磁性部材
27の各々の形態は、図8及び図9を参照して説明した
先の実施形態と実質上同一である。外周壁12の強磁性
部材40の周方向長さは、磁石26の各々間の周方向間
隔(周方向長さ)に相当する。なおここでの周方向長さ
も、先に述べたと同様に、可動支持筒22の外周面、外
周壁12の内周面における長さを意味するものである。
磁石26の各々は、相互に周方向に間隔をおいて対向す
る磁極面の極性が同極(N−N及びS−S)となるよう
に配列されている。その他の構成は図8及び図9を参照
して説明した渦電流式減速装置の実施形態と実質上同一
であり、説明は省略する。
【0029】制動をON−OFFする場合には、エアシ
リンダ機構30を作動させて、可動支持筒22における
磁石26の各々及び強磁性部材27の各々を、磁石26
の各々の半ピッチだけ正逆回動させることにより制動位
置と非制動位置とに選択的に位置付ける。図12に示す
制動ONの状態においては、強磁性部材40の各々の内
側対向面40aは、可動支持筒22においてそれぞれ磁
石26を介さないで周方向に間隔をおいて対向する強磁
性部材27の各々の対向面27aに面してその一方から
他方にわたって周方向に延在するよう相対的に位置付け
られる(図12参照)。この制動状態において、可動支
持筒22における磁石26の各々及び磁石26の各々を
周方向に挟んで位置する一対の強磁性部材27の各々
と、一対の強磁性部材27の各々に対向する外周壁12
の強磁性部材40の各々における周方向の端部と、制動
ドラム7との間に磁気回路がそれぞれ独立して形成され
るので、制動ドラム7に対する制動が作動させられる。
制動OFFの状態においては、図13に示すように、可
動支持筒22における磁石26の各々及び磁石26の各
々を周方向に挟む一対の強磁性部材27の各々と、外周
壁12の強磁性部材40の各々とが周方向の同位置にお
いて相互に対向するよう位置付けられる(図13参
照)。その結果、磁石26の各々及び磁石26の各々を
周方向に挟む一対の強磁性部材27の各々と、これらに
対向する強磁性部材40の各々との間に磁気回路が形成
されるので、制動ドラム7との間は磁気的に遮断され、
制動ドラム7に対する制動が解除される。上記説明から
明らかなように、図12及び図13に示す渦電流式減速
装置は、図8及び図9を参照して説明した先の実施形態
と同様に、図1〜図5を参照して説明した先の実施形態
と実質上同じ特徴を有する構成を備えているので、実質
上同一の作用効果が達成される。
【0030】図14及び図15には、図12及び図13
を参照して説明した渦電流式減速装置の更に他の実施形
態が示されている。この実施形態は、図12及び図13
を参照して説明した渦電流式減速装置における、可動支
持筒22の強磁性部材27の各々を周方向に一体に連続
させたような形態をなし、その他の構成は実質上同一で
ある。可動支持筒22の外周面には、周方向両端に磁極
面を有する複数の磁石26が周方向に等間隔をおいて配
設されている。可動支持筒22の外周面にはまた、複数
の強磁性部材42が、磁石26の各々間に各磁極面に密
着して配設されている。したがって磁石26の各々は強
磁性部材42の各々によって相互に周方向に仕切られて
いる。磁石26及び強磁性部材42の各々の肉厚はそれ
ぞれ実質上同一に規定され、可動支持筒22の外周面の
全周を覆うよう配設されている(各々の外周面はほぼ同
一面上に位置付けられている)。強磁性部材42の各々
は、外周壁12の内周面に近接して面する対向面42a
を有している。外周壁12の強磁性部材40の各々は、
可動支持筒22の強磁性部材42の各々に対し、周方向
長さが短く規定されると共に各々の周方向中央部に配置
されかつ各々の外周面である対向面42aに面する内側
対向面40aと、制動ドラム7の内周面に面する外側対
向面40aとを有している(図14参照)。
【0031】制動をON−OFFする場合には、エアシ
リンダ機構30を作動させて、可動支持筒22における
磁石26の各々及び強磁性部材27の各々を、磁石26
の各々の半ピッチだけ正逆回動させることにより制動位
置と非制動位置とに選択的に位置付ける。図14に示す
制動ONの状態においては、外周壁12の強磁性部材4
0の各々は、可動支持筒22の強磁性部材42の各々に
対し、周方向中央部に位置付けられる。強磁性部材40
の各々の内側対向面40aは強磁性部材42の各々の対
向面42aに面して位置付けられる。可動支持筒22に
おける磁石26の各々は、外周壁12の、強磁性部材4
0の各々を周方向に仕切る一部の周方向中央部に位置付
けられる。この制動状態において、可動支持筒22にお
ける磁石26の各々及び磁石26の各々を周方向に挟ん
で位置する強磁性部材42の各々における周方向の端部
と、強磁性部材42の各々に対向する外周壁12の強磁
性部材40の各々における周方向の端部と、制動ドラム
7との間に磁気回路がそれぞれ独立して形成されるの
で、制動ドラム7に対する制動が作動させられる。制動
OFFの状態においては、図15に示すように、可動支
持筒22における磁石26の各々及び磁石26の各々を
周方向に挟んで位置する強磁性部材42の各々における
周方向の端部と、外周壁12の強磁性部材40の各々と
が相互に対向するよう位置付けられ、それらの間に磁気
回路が相互に独立して形成されるので、制動ドラム7と
の間は磁気的に遮断され、制動ドラム7に対する制動が
解除される。上記説明から明らかなように、図14及び
図15に示す渦電流式減速装置は、図8及び図9を参照
して説明した先の実施形態と同様に、図1〜図5を参照
して説明した先の実施形態と実質上同じ特徴を有する構
成を備えているので、実質上同一の作用効果が達成され
る。
【0032】図1〜図15に示す渦電流式減速装置にお
いて、制動と非制動との切換は、ケース10内に配置さ
れた可動支持筒22を周方向に正逆回動させることによ
り、制動と非制動との切換を行なうよう構成されている
が、これに代えて、磁石26の支持筒を後述するエアシ
リンダ機構70により軸方向に往復移動させることによ
り行なうよう構成する他の実施形態もある。図16を参
照して、制動ドラム7の内側(環状空間の内側)には、
中空円環状のケース50が同軸に配設されている。図示
しないミッションケースに装着されたケース50は、全
体がほぼ円筒形状をなす外周壁52と、外周壁52より
も小径の内周壁54と、外周壁52及び内周壁54の軸
方向両端においてそれらを連結するように配設された円
環状の端壁56及び58とから構成されている。ケース
50の軸方向のほぼ半分は制動ドラム7の内側に配置さ
れている。
【0033】ケース50における外周壁52の、制動ド
ラム7の軸方向の外側に位置付けられた軸方向の一部分
である外側部分52aと、外側部分52aの軸方向の一
端から半径方向内側に延びる端壁56と、端壁56の半
径方向内端から軸方向の他端に向かって制動ドラム7の
内側に延びる内周壁54とは、縦断面において、水平方
向に向けられたほぼチャンネル形状(外周壁52の外側
部分52aよりも内周壁54の方がほぼ倍ほど長いので
長さ違いのチャンネル形状)をなすよう、例えばアルミ
ニウムなどの非磁性体から一体に形成されている。ま
た、外周壁52の、制動ドラム7の内側において制動ド
ラム7の内周面に近接して位置付けられた内側近接部分
52bを含む軸方向の他の部分と、該他の部分の軸方向
の一端から半径方向内側に延びる端壁58とは、縦断面
がほぼ逆L形状をなすよう、例えばアルミニウムなどの
非磁性体から一体に形成されている。ケース50はこれ
ら二つの環状部材から構成されている。外周壁52の外
側部分52aは、内側近接部分52bを含む他の部分よ
りも肉厚に形成されている。外周壁52の、内側近接部
分52bを含む他の部分の軸方向の他端であって、制動
ドラム7の開放端に対し軸方向の外側において近接した
他端には、半径方向外方に延びる環状のフランジ部52
cが形成されている。ケース50における内周壁54
の、制動ドラム7の内側に位置する軸方向の他端には、
半径方向内方に延びる環状のフランジ部52dが形成さ
れている。ケース50を構成する上記二つの環状部材
は、複数のボルト52e及び52fにより、上記フラン
ジ部52c及び52dの各々を介して一体に結合されて
いる。ケース50の円環状の中空部は、図16に示すよ
うに縦断面がほぼ矩形状をなしている。
【0034】ケース50の中空部内には、例えばアルミ
ニウムなどの非磁性体からなる支持筒60が軸方向移動
可能に支持されている。円筒形状をなす支持筒60の外
周部には、複数の磁石26及び強磁性部材27が、図1
〜図5を参照して説明した渦電流式減速装置の実施形態
(したがって図8及び図9を参照して説明した渦電流式
減速装置の実施形態)と実質上同一の形態で配設されて
いる。ケース50の外周壁52、更に具体的には外周壁
52b(制動ドラム7の内周面に近接して位置付けられ
た上記内側近接部分52b)の一部には、複数の強磁性
部材28が、支持筒60の磁石26の各々及び強磁性部
材27の各々に対し、上記各実施形態と実質上同一の形
態で配設されている。
【0035】ケース50には、支持筒60を軸方向に往
復移動させて制動と非制動との切換を行なうアクチュエ
ータであるエアシリンダ機構70が付設されている。エ
アシリンダ機構70は、ケース50の端壁56の外側に
装着されたシリンダ72と、シリンダ72内に摺動自在
に収容されたピストン74と、ピストン74と支持筒6
0とを連結するピストンロッド76とを備えている。ピ
ストンロッド76は、端壁56を貫通してピストン74
からケース50の中空部内に延びるよう配設されてい
る。
【0036】シリンダ72内はピストン74により二つ
の室に区画され、一方の室(図16において左側の室)
に、圧力エア供給源である図示しないエアタンクから圧
力エアが供給されると、ピストン74及びピストンロッ
ド76を介して支持筒60及び磁石26の各々が一体に
図16において右方に移動させられ、磁石26の各々に
おける磁極面の各々が対応する強磁性部材28の周方向
の対向面と近接して対向する、制動位置に位置付けられ
る。またこの制動状態において、シリンダ72内の他方
の室(図16において右側の室)に図示しないエアタン
クから圧力エアが供給されると、ピストン74及びピス
トンロッド76を介して支持筒60及び磁石26の各々
が一体に図16において左方に移動させられ、磁石26
の各々における磁極面の各々が、対応する強磁性部材2
8から退避する、非制動位置に位置付けられる。なお、
エアシリンダ機構70は周方向に等間隔をおいて複数
個、例えば3個配設されることが好ましい。
【0037】以上のように構成された渦電流式減速装置
を作動させて、制動ONとする場合には、エアシリンダ
機構70を作動させて支持筒60及び磁石26の各々を
制動位置に位置付ける(図16において実線で示す位置
参照)。制動ドラム7の内側において、支持筒60にお
ける磁石26の各々及び強磁性部材27の各々はケース
50の外周壁52bにおける強磁性部材28の各々に対
し、図2及び図3に示す相対位置と実質上同一の相対位
置に位置付けられ、制動ドラム7に対する制動が作動さ
せられる。制動をOFFに切り換える場合には、エアシ
リンダ機構70を作動させて支持筒60、磁石26の各
々及び強磁性部材27の各々を非制動位置に位置付ける
(図16において2点鎖線で示される位置参照)。磁石
26の各々及び強磁性部材27の各々は、支持筒60と
共に制動ドラム7の内側から軸方向に退避させられ、ケ
ース50の外周壁52a(制動ドラム7の外側に位置付
けられた上記外側部分52a)に包囲された位置に位置
付けられる。その結果、磁石26の各々は、制動ドラム
7に対し磁気を及ぼさなくなり、制動が完全に解除され
る。上記説明から明らかなように、図16に示す渦電流
式減速装置は、図1〜図5を参照して説明した先の実施
形態と実質上同じ特徴を有する構成を備えているので、
実質上同一の作用効果が達成される。なお上記したよう
に、磁石26の可動支持筒60をエアシリンダ機構70
により軸方向に往復移動させることにより制動と非制動
との切換を行なう構成は、図12及び図13に示す実施
形態及び図14及び図15に示す実施形態においても適
用可能である。
【0038】なお、ケース50は実施形態に示すよう
に、その全体を非磁性体により形成することが磁気洩れ
を防止する観点では最も好ましいが、少なくとも、制動
ドラム7の内側(その近傍も含む)において磁石26の
各々に臨む部分(換言すれば、覆う部分もしくは比較的
接近した部分)を非磁性体により構成する実施形態も可
能である。具体的には、上記実施形態において、少なく
も、外周壁52a、それに続く端壁58及び内周壁54
における、制動ドラム7の内側に位置する部分を非磁性
体により構成する実施形態を挙げることができる。この
実施形態によっても、磁気洩れを防止することは十分可
能である。更にはまた、ケース50の、少なくとも、制
動ドラム7の内側に配置された上記外周壁52b及びそ
れに続く端壁58を非磁性体により構成することにより
同様な効果を得ることは十分可能である。この実施形態
においては、内周壁54が強磁性体により構成される場
合を含んでいるが、支持筒60の肉厚を十分厚く形成す
ることにより、磁気洩れを十分確実に防止することがで
きる。またいずれの実施形態においても、ケース50
の、制動ドラム7の内側(その近傍も含む)において磁
石26の各々に臨む部分以外の部分(上記実施形態にお
いては、外周壁52a、それに続く端壁56、内周壁5
4の制動ドラム7の内側に位置する部分)を強磁性体に
より形成しても、磁気洩れを防ぐことは十分可能であ
る。したがって、本発明においては、上記ケース50
の、少なくとも、制動ドラム7の内側に配置された上記
外周壁52b及びそれに続く端壁58を非磁性体により
構成することにより、磁気洩れを効果的に防止し、その
結果、制動時においては制動トルクの増大に寄与し、非
制動実施形態においては制動ドラム7における引きずり
トルクの発生を確実に防止するものである。
【0039】以上、本発明を実施形態に基づいて添付図
面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は上記実施
形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱す
ることなく、更に他の種々の変形あるいは修正が可能で
ある。例えば、図8及び図9に示す実施形態、図10及
び図11に示す実施形態において、磁石26の各々は、
相互に周方向に間隔をおいて対向する磁極面の極性が異
極(N−S)となるように配列されているが、同極(N
−N及びS−S)となるように配列する実施形態も成立
する。また、上記実施形態においては、磁石26の各々
は永久磁石により形成されているが、これに代えて電磁
石を使用する実施形態もある(図10及び図11に示す
実施形態は除く)。電磁石は周知のとおりコイルと鉄心
の組合せ体であるため、電磁石を上記実施形態において
磁石26に置き換えて使用する場合には、電磁石の各々
は上記した制動位置に常時固定され、制動(ON)と非
制動(OFF)との切り換えは、電磁石の各々を励磁す
るか又は非励磁とするか、により行なわれる。したがっ
て磁石26の各々を電磁石に置き換えて使用する実施形
態においては、支持筒は全て固定され、支持筒を正逆回
動させるためのエアシリンダ機構30あるいは支持筒を
軸方向に往復移動させるためのエアシリンダ機構70は
不要となる。
【0040】
【発明の効果】本発明による渦電流式減速装置によれ
ば、磁石側と制動ドラムとの間のエアギャップを少なく
することを可能にし、その結果、制動トルクを増大させ
ることができる。また、磁石と制動ドラムとの間に形成
される磁束の流路の距離を短縮することを可能にし、そ
の結果、制動トルクを増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による渦電流式減速装置の実施形態の要
部を示す縦断面図。
【図2】図1に示す渦電流式減速装置の制動状態を示す
要部横断面図。
【図3】図2に示すケースの内部の一部を展開して概略
的に示す上面図。
【図4】図1に示す渦電流式減速装置の非制動状態を示
す要部横断面図。
【図5】図4に示すケースの内部の一部を展開して概略
的に示す上面図。
【図6】本発明による渦電流式減速装置の他の実施形態
の要部を示す横断面図であって、制動状態を示す図。
【図7】図6に示す渦電流式減速装置の一部を省略して
示す斜視概略図。
【図8】本発明による渦電流式減速装置の更に他の実施
形態の要部を示す縦断面図。
【図9】図8に示す渦電流式減速装置の非制動状態を示
す要部横断面図。
【図10】本発明による渦電流式減速装置の更に他の実
施形態の要部を示す横断面図であって、制動状態を示す
図。
【図11】図10に示す渦電流式減速装置の非制動状態
を示す要部横断面図。
【図12】本発明による渦電流式減速装置の更に他の実
施形態の要部を示す横断面図であって、制動状態を示す
図。
【図13】図12に示す渦電流式減速装置の非制動状態
を示す要部横断面図。
【図14】本発明による渦電流式減速装置の更に他の実
施形態の要部を示す横断面図であって、制動状態を示す
図。
【図15】図14に示す渦電流式減速装置の非制動状態
を示す要部横断面図。
【図16】本発明による渦電流式減速装置の更に他の実
施形態の要部を示す縦断面図。
【符号の説明】
7 制動ドラム 10、50 ケース 12、52(52a、52b) 外周壁 20 静止支持筒 22 可動支持筒 26 磁石 27、28、39、40、42 強磁性部材 30 エアシリンダ機構 60 支持筒 70 エアシリンダ機構
フロントページの続き (72)発明者 浅野 雅樹 神奈川県藤沢市土棚8番地 株式会社い すゞ中央研究所内 (72)発明者 小川 誠 神奈川県藤沢市土棚8番地 株式会社い すゞ中央研究所内 (72)発明者 桑原 徹 神奈川県川崎市川崎区殿町3丁目25番1号 いすゞ自動車株式会社川崎工場内 (72)発明者 鳴海 礼斗史 神奈川県川崎市川崎区殿町3丁目25番1号 いすゞ自動車株式会社川崎工場内 Fターム(参考) 5H649 AA03 BB02 BB07 GG09 GG16 HH08 HH16 JK03 PP02 PP08 PP13

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 制動ドラムと、制動ドラムの内周面に近
    接した外周壁を含むケースと、ケース内に軸方向に並列
    して支持された非磁性体からなる支持筒と、支持筒の各
    々に周方向に間隔をおいて配設されかつ周方向両端に磁
    極面を有すると共に支持筒の各々間で並列される複数の
    磁石と、磁石の各々に対し、各磁極面にそれぞれ密着し
    てかつ上記外周壁の内周面に面する対向面を有するよう
    支持筒の各々に配設されると共に支持筒の各々間で並列
    される一対の強磁性部材と、支持筒の各々間で並列され
    る強磁性部材の各々に対応してその一方から他方にわた
    って延在するよう上記外周壁に配設された強磁性部材と
    を備え、上記外周壁の強磁性部材の各々は、支持筒の各
    々間で並列される強磁性部材の各々の対向面に面する内
    側対向面と、制動ドラムの内周面に面する外側対向面と
    を有する、ことを特徴とする渦電流式減速装置。
  2. 【請求項2】 磁石の各々は永久磁石から構成され、支
    持筒の一方はケースに固定された静止支持筒からなり、
    支持筒の他方はケースに正逆回動可能に支持された可動
    支持筒からなり、可動支持筒を正逆回動させて制動と非
    制動との切換を行なうアクチュエータを備えている、請
    求項1記載の渦電流式減速装置。
  3. 【請求項3】 制動ドラムと、制動ドラムの内周面に近
    接した外周壁を含むケースと、ケース内に支持された非
    磁性体からなる支持筒と、支持筒に周方向に間隔をおい
    て配設されかつ周方向両端に磁極面を有する複数の磁石
    と、磁石の各々に対し、各磁極面にそれぞれ密着してか
    つ上記外周壁の内周面に面する対向面を有するよう支持
    筒に配設された一対の強磁性部材と、支持筒の強磁性部
    材の各々に対応して上記外周壁に配設された強磁性部材
    とを備え、上記外周壁の強磁性部材の各々は、支持筒の
    強磁性部材の各々の対向面に面する内側対向面と、制動
    ドラムの内周面に面する外側対向面とを有する、ことを
    特徴とする渦電流式減速装置。
  4. 【請求項4】 ケースは非磁性体からなる内周壁を有
    し、磁石の各々は永久磁石から構成され、内周壁には磁
    石の各々と同じピッチで周方向に間隔をおいて磁石の各
    々と同数の強磁性部材が配設され、該強磁性部材の各々
    の周方向長さは磁石の周方向長さと同一以上に規定さ
    れ、支持筒はケースに正逆回動可能に支持され、支持筒
    を正逆回動させて制動と非制動との切換を行なうアクチ
    ュエータを備えている、請求項3記載の渦電流式減速装
    置。
  5. 【請求項5】 制動ドラムと、制動ドラムの内周面に近
    接した外周壁を含むケースと、ケース内に支持された非
    磁性体からなる支持筒と、支持筒に周方向に間隔をおい
    て配設されかつ周方向両端に磁極面を有する複数の磁石
    と、磁石の各々に対し、各磁極面にそれぞれ密着してか
    つ上記外周壁の内周面に面する対向面を有するよう支持
    筒に配設された一対の強磁性部材と、上記外周壁に周方
    向に間隔をおいて配設された複数の強磁性部材とを備
    え、上記外周壁の強磁性部材の各々は、支持筒において
    それぞれ磁石を介さないで周方向に間隔をおいて対向す
    る強磁性部材の各々に対応してその一方から他方にわた
    って周方向に延在するよう配設されると共に該強磁性部
    材の各々の対向面に面する内側対向面と、制動ドラムの
    内周面に面する外側対向面とを有する、ことを特徴とす
    る渦電流式減速装置。
  6. 【請求項6】 制動ドラムと、制動ドラムの内周面に近
    接した外周壁を含むケースと、ケース内に支持された非
    磁性体からなる支持筒と、支持筒の外周面に等間隔をお
    いて配設されかつ周方向両端に磁極面を有する複数の磁
    石と、磁石の各々間に各磁極面に密着して配設された強
    磁性部材と、上記外周壁に周方向に等間隔をおいて配設
    された、支持筒の強磁性部材と同数の強磁性部材とを備
    え、上記外周壁の強磁性部材の各々は、支持筒の強磁性
    部材の各々に対し、周方向長さが短く規定されると共に
    各々の周方向中央部に配置されかつ各々の外周面に面す
    る内側対向面と、制動ドラムの内周面に面する外側対向
    面とを有する、ことを特徴とする渦電流式減速装置。
  7. 【請求項7】 磁石の各々は永久磁石から構成され、支
    持筒はケース内に軸方向移動可能に支持され、支持筒を
    軸方向に往復移動させて制動と非制動との切換を行なう
    アクチュエータを備えている、請求項3、5又は6のい
    ずれか1項に記載の渦電流式減速装置。
  8. 【請求項8】 磁石の各々は永久磁石から構成され、支
    持筒はケース内に正逆回動可能に支持され、支持筒を正
    逆回動させて制動と非制動との切換を行なうアクチュエ
    ータを備えている、請求項3、5又は6のいずれか1項
    に記載の渦電流式減速装置。
  9. 【請求項9】 磁石の各々は電磁石から構成され、電磁
    石を励磁又は非励磁させて制動と非制動との切換を行な
    う、請求項1、3、5又は6のいずれか1項に記載の渦
    電流式減速装置。
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