JP2000355881A - 炭素繊維用サイジング剤、炭素繊維用サイジング剤溶液、炭素繊維およびそれを用いた炭素繊維シート状物並びに炭素繊維強化樹脂組成物 - Google Patents

炭素繊維用サイジング剤、炭素繊維用サイジング剤溶液、炭素繊維およびそれを用いた炭素繊維シート状物並びに炭素繊維強化樹脂組成物

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JP2000355881A
JP2000355881A JP17030099A JP17030099A JP2000355881A JP 2000355881 A JP2000355881 A JP 2000355881A JP 17030099 A JP17030099 A JP 17030099A JP 17030099 A JP17030099 A JP 17030099A JP 2000355881 A JP2000355881 A JP 2000355881A
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reinforced resin
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直樹 杉浦
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エポキシ樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエ
ステル樹脂、ビニルエステル樹脂などのラジカル重合系
樹脂との樹脂含浸性が良く、また、これらの樹脂と炭素
繊維との接着力に優れ、さらに、安定した物性改善効果
が得られる炭素繊維、炭素繊維シート状物ならびにこの
炭素繊維を強化材料とした炭素繊維強化樹脂組成物、そ
の為のサイジング剤。 【解決手段】 下記一般式(1)で示される官能基と環
状脂肪族エポキシ基を有する化合物を含有する炭素繊維
用サイジング剤。式中のRは水素原子またはアルキル基
を示す。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素繊維シート状
物ないし炭素繊維強化樹脂組成物、およびそれらに用い
られる炭素繊維、さらにそのサイジング剤およびサイジ
ング溶液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、繊維強化複合材料の一つに炭
素繊維と樹脂からなる炭素繊維強化樹脂組成物がある。
炭素繊維強化樹脂組成物を構成するマトリックス樹脂と
しては、一般的に広く使用されているエポキシ樹脂のほ
か、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ア
クリル樹脂などのラジカル重合系樹脂など多くの樹脂が
用いられている。炭素繊維強化樹脂組成物に使用されて
いる炭素繊維は、化学組成の大部分(90%以上)が炭
素よりなる繊維であり、再生セルロース、ポリアクリロ
ニトリル(PAN)、ピッチなどから得られ、高強度炭
素繊維、高弾性炭素繊維などに区別される。この炭素繊
維は、軽量で、比強度および比弾性率に対して特に優れ
た性質を有している。加えて、耐熱性、耐薬品性にも優
れていることなどから、強化材として有効であり、広範
囲に用いられている。
【0003】しかしながら、この炭素繊維は、伸度が小
さく脆い材料であるため、その使用に際し、機械的摩擦
などによって毛羽が発生しやすいという不都合がある。
また、炭素繊維は、一般にマトリックス樹脂に対する接
着性に乏しいため、これを使用した炭素繊維強化樹脂組
成物において、炭素繊維の有する優れた性質を十分に発
揮させることが困難であるという不都合が生じる。これ
らの不都合を軽減するため、従来から炭素繊維に対して
サイジング剤による処理が施されている。この炭素繊維
用サイジング剤は、炭素繊維の取扱性を向上させるため
に、また、マトリックス樹脂に対する接着性を向上させ
て、炭素繊維強化樹脂組成物の性質を向上させるために
使用されるもので、マトリックス樹脂と炭素繊維の含浸
性を向上させ、また、接着性を向上させるなどの性能を
有している。このような炭素繊維に使用されるサイジン
グ剤として、例えば、ポリグリシジルエーテル類などを
用いるもの(参照:特公昭57−15229号公報等)
(以下、「サイジング剤1」と略記する)や、分子内に
少なくとも三つのエポキシ基を有するエポキシ化合物
と、ビニル基含有カルボン酸との反応生成物を主成分と
するもの(参照:特開昭55−84476号公報等)
(以下、「サイジング剤2」と略記する)などの種々の
ものが提案されている。上記サイジング剤1は、その使
用に際し、優れた含浸性や界面接着力などの利点を有し
ている。サイジング剤2は、マトリックス樹脂、特に不
飽和ポリエステル樹脂との接着性を向上させることがで
き、また、従来からの懸念であるエポキシ樹脂をマトリ
ックス樹脂として用いた場合の硬化条件変動による炭素
繊維強化樹脂組成物の物性変動を低減することができる
優れたサイジング剤である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記サ
イジング剤1では、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエ
ステル樹脂、アクリル樹脂などのラジカル重合系樹脂に
対する接着性は十分ではなく、それらの樹脂をマトリッ
クス樹脂とする炭素繊維強化樹脂組成物に対しては適当
ではない。また、サイジング剤2は、分子内にエポキシ
基とビニル基が必ず一つ以上有していない場合があるこ
と、これらの官能基が主鎖末端と分枝支鎖末端のいずれ
かに存在する可能性があり、しかも分子としての嵩高さ
が大きく、また炭素繊維とマトリックス樹脂界面層に架
橋網を形成しやすいなど、安定した物性の発現が望めな
いおそれがあった。
【0005】本発明は前記課題を解決するためになされ
たもので、エポキシ樹脂だけでなく、特に、アクリル樹
脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂など
のラジカル重合系樹脂との樹脂含浸性が良く、また、こ
れらの樹脂と炭素繊維との接着力に優れ、さらに、安定
した物性改善効果が得られる炭素繊維、炭素繊維シート
状物ならびにこの炭素繊維を強化材料とした炭素繊維強
化樹脂組成物、その為のサイジング剤等を提供するもの
である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の炭素繊維用サイ
ジング剤は、下記一般式(1)で示される官能基と環状
脂肪族エポキシ基を有する化合物を含有することを特徴
とするものである。
【化2】 式中のRは水素原子またはアルキル基を示す。本発明の
炭素繊維用サイジング剤溶液は、この炭素繊維用サイジ
ング剤が水溶液中に分散してなることを特徴とするもの
である。本発明の炭素繊維は、上記炭素繊維用サイジン
グ剤が付着されていることを特徴とするものである。本
発明の炭素繊維シート状物は、この炭素繊維を用いてな
るものであり、炭素繊維強化樹脂組成物はこの炭素繊維
を有することを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のサイジング剤は、上記一般式(1)で示される
官能基と環状脂肪族エポキシ基を有する化合物を含有す
るものである。このサイジング剤の化合物として、上記
一般式(1)で示される官能基と環状脂肪族エポキシ基
とを分子内に有する化合物であれば特に限定されない
が、例えば下記一般式(2)〜(6)で示される化合物
が好ましく使用される。
【0008】
【化3】
【0009】このような化合物であると、上記官能基
(1)の二重結合がラジカル重合系樹脂とラジカル反応
して結合し、環状脂肪族エポキシ基が炭素繊維表面の活
性基と物理的あるいは化学的結合を形成することにな
る。このような機構から、官能基(1)のRは、水素原
子または炭素数が1ないし2のアルキル基であることが
好ましく、マトリックス樹脂となる樹脂の種類などに合
わせて適したものが選択される。この一般式(1)で示
される官能基と環状脂肪族エポキシ基とを分子内に有す
る化合物の中でも、上記一般式(2)〜(6)に示され
るように、分子の一方の端部に上記一般式(1)で示さ
れる官能基が、他方の端部に環状脂肪族エポキシ基をそ
れぞれ配したものが好ましく、このような分子構造をと
ることによって、マトリツクス樹脂、例えば、不飽和ポ
リエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂な
どのラジカル重合系樹脂などと炭素繊維をより強力に結
合する。また、環状脂肪族エポキシ基としては、上記一
般式(2)、(5)、あるいは(6)で示される化合物
などに存在するような形態のものが、優れた界面接着性
を発現するため好ましい。
【0010】また、上記化合物の骨格には特に限定はし
ない。一般式(4)のようなビスフェノールA型やビス
フェノールF型、または、ビスフェノールS型、ビフェ
ニル型などでもよい。このビスフェノールA型あるいは
ビスフェノールF型は、その構造が比較的剛直であるこ
とから、これを骨格としてなる上記化合物を主成分とし
たサイジング剤は、炭素繊維に対して良好な力学的特性
を付与することができる。また、このビスフェノールA
型あるいはビスフェノールF型は、π共役系を有してい
ることにより、微小なグラファイト結晶で構成されてい
る炭素繊維に対して良好な親和性を有しているため、優
れた界面接着性を発現するため好ましい。また、この上
記一般式(1)で示される官能基と環状脂肪族エポキシ
基とを有する化合物において、それらの官能基の数は、
分子内に一個ずつであってもよく、また複数個であって
もよい。複数個の各官能基が存在する場合、これら各官
能基の構造は、全て異なるものであってもよく、また、
同一のものが存在していてもよい。
【0011】このような化合物を主成分として構成して
なる炭素繊維用サイジング剤にあっては、その主成分と
して、その化合物の1種類を単独で用いることもできる
が、複数種の化合物を組み合わせて混合物として使用す
ることもできる。サイジング剤としては、上述した化合
物を主成分として含有していればよく、サイジング剤
中、40重量%以上あればよい。この主成分と併用され
る他の成分としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン
樹脂、ポリエステル樹脂を用いることができる。
【0012】このような上記一般式(1)で示される官
能基と環状脂肪族エポキシ基を有する化合物を主成分と
した炭素繊維用サイジング剤は、上記の二種類の官能基
を必ずそれぞれ一つ以上有しているものであるため、炭
素繊維に対しても、また、アクリル樹脂、不飽和ポリエ
ステル樹脂、ビニルエステル樹脂などのラジカル重合系
樹脂などのマトリックス樹脂に対しても優れた親和性を
有している。したがって、本サイジング剤を付着させて
処理した炭素繊維は前記マトリックス樹脂に対し良好な
濡れ性を示し、その結果、優れた力学的特性を有する複
合材料を得ることができる炭素繊維とすることができ
る。
【0013】このサイジング剤を炭素繊維に付着する際
には、水、あるいはアセトンなどの有機溶剤などに分散
させてサイジング剤溶液として使用することが適当であ
る。特に、サイジング剤を水溶液中に分散させて水エマ
ルジョン系としたものが、アセトンなどの有機溶剤溶液
などとした場合と比較して、工業的にも、また安全性の
面からも優れているため好ましい。このような前記炭素
繊維用サイジング剤を水溶液中に分散させてなるサイジ
ング剤溶液を調製する際には、分散性を高め、溶液安定
性を良好にするため、界面活性剤を利用することが好ま
しい。ここで使用される界面活性剤としては、ノニオン
系、カチオン系、アニオン系のいずれのものも用いるこ
とができる。特に、ノニオン系の界面活性剤は、これを
用いたサイジング溶液を使用した炭素繊維強化樹脂組成
物を形成する場合においてプリプレグ状態などでの優れ
た貯蔵安定性を有しているため、また、熱可塑性樹脂と
の複合化などを行う場含にトラブル発生要因となる塩類
を有していないことから扱いやすいなどのため好まし
い。
【0014】ここでの炭素繊維用サイジング剤と界面活
性剤との配合比率は、重量比でサイジング剤/界面活性
剤=95/5〜70/30であり、好ましくは、サイジ
ング剤/界面活性剤=85/15〜75/25である。
この範囲にあっては、それを使用して得られるサイジン
グ剤溶液の安定性がよく、なおかつ、サイジング剤の効
果に悪影響を与えることがなく好ましい。この配合比率
において、界面活性剤の配合比率が上記範囲未満となる
場合には、それを使用して得られるサイジング剤溶液の
安定性が低下する。一方、上記範囲を越える場合では、
それを使用して得られるサイジング剤溶液で炭素繊維を
処理するに際し、炭素繊維の表面が界面活性剤に被覆さ
れるという不都合が生じて、サイジング剤が有効に作用
することができないため、炭素繊維の界面接着性向上効
果に対して悪影響を与える。さらに、このような上記サ
イジング剤溶液に対して、平滑剤を配合することで、耐
擦過性を向上させた炭素繊維を得ることもできる。
【0015】本発明の炭素繊維は、上記炭素繊維用サイ
ジング剤または上記サイジング剤溶液を用いてその表面
を処理してサイジング剤をその表面に付着させたもので
ある。このようなサイジング剤溶液を使用して処理され
る炭素繊維は、ピッチ、レーヨンあるいはポリアクリロ
ニトリルなどのいずれの原料物質からなるものでもよ
い。またその種類は、例えば、高強度タイプ(低弾性率
炭素繊維)、中高弾性炭素繊維および超高弾性炭素繊維
などのいずれの種類のものでもよい。さらに、その形態
は、長繊維、短繊維あるいは織物、編み物、不繊布など
のシート状形態を有するものなどいずれのものでもよ
く、特に限定されない。
【0016】この炭素繊維に付着させる炭素繊維用サイ
ジング剤の付着量は、0.1重量%〜5.0重量%であ
り、好ましくは、0.2重量%〜3.0重量%である。こ
の範囲の付着量にあっては、炭素繊維に対して、サイジ
ング剤の効果を十分に付与することができる。この炭素
繊維用サイジング剤の付着量は、0.1重量%未満で
は、炭素繊維の収束性、耐擦過性が十分に得られないた
め、機械的摩擦などによって毛羽が発生して好ましくな
い。また、樹脂との親和性、界面接着力が不十分である
ため、これを使用してなる炭素繊維強化樹脂が良好な力
学的特性を得ることができないなどの不都合が生じる。
一方、5.0重量%を越える場合では、収束性が強すぎ
ることにより、炭素繊維束の開繊性が悪くなって、マト
リックス樹脂との複合化の際に束内部への樹脂の含浸が
阻害されることになるなどの不都合が生じる。このよう
な上記サイジング剤溶液を使用して炭素繊維の表面を処
理し、炭素繊維用サイジング剤を付着させた炭素繊維
は、機械的摩擦などによる毛羽などが発生しにくく、さ
らに、マトリックス樹脂に対する親和性や接着性に優れ
たものである。
【0017】炭素繊維用サイジング剤による炭素繊維の
処理は、ローラー浸漬法、ローラー接触法など一般に工
業的に用いられている方法などを適用でき、炭素繊維の
表面に炭素繊維用サイジング剤が付着する。炭素繊維に
対する炭素繊維用サイジング剤の付着量は、サイジング
剤溶液の濃度調整や、絞りコントローラーなどの通過工
程の調整などの方法によって調節される。炭素繊維用サ
イジング剤の付着した炭素繊維は、続いて乾燥処理さ
れ、サイジング剤を付着させる際に同時に付着したサイ
ジング剤溶液に含まれていた水、あるいは有機溶媒など
の除去が行われた後に、炭素繊維強化樹脂組成物等に使
用されるものとなる。ここでの乾燥処理は、熱風、熱
板、ローラー、各種赤外線ヒーターなどを熱媒として利
用した方法などによって行われる。
【0018】本発明の炭素繊維シート状物は、上述した
サイジング剤で処理された炭素繊維を用いたことを特徴
とするものであり、織布、一方向配列シート、不織布、
マット等、これらを組み合わせたものが挙げられる。織
り組織は特に限定はされず、平織り、綾織り、朱子織り
等の他、これら原組織を変化させたものでもよい。ま
た、緯、経糸共に上記炭素繊維でもよく、また他の炭素
繊維あるいは炭素繊維以外の繊維との混織でもよい。炭
素繊維以外の繊維としては、ガラス繊維、チラノ繊維、
SiC繊維などの無機繊維、アラミド、ボリエステル、
PP、ナイロン、アクリル、ポリイミド、ビニロンなど
の有機繊維などを挙げられる。2種以上からなる複合繊
維でもよい。また、本発明に係る炭素繊維を経糸とし
て、取扱性、樹脂含浸性を良好に保つ目的で、該経糸よ
り低い引張弾性率の繊維を緯糸とする炭素繊維シート状
織物が好ましい。緯糸として用いられる繊維の引張弾性
率が高い場合には、経糸が長手方向に蛇行し易くなり、
補強用シートとして十分に強度を発現しにくくなるから
である。
【0019】炭素繊維シート状物としては、炭素繊維を
一方向に引き揃えて形成したものが好ましく、単に一方
向に炭素繊維を一定間隔で引き揃えること、あるいは幅
方向に緯糸を配する、あるいは緯糸として熱融着性繊維
を利用して横方向に配置後熱融着で固定する、あるいは
熱融着性のウェブあるいはネットをシート表面に配する
等の手段によりシート状に形成される。特に本発明にお
いては、炭素繊維を一方向に配列してなるシート状物
が、(a)一方向に引き揃えた炭素繊維のシート状物の
少なくとも一方の面に、炭素繊維と直行する方向に熱融
着性繊維を等間隔で配置し熱融着したもの、(b)一方
向に引き揃えた炭素繊維のシート状物の少なくとも一方
の表面に、熱可塑性樹脂からなるあるいは熱可塑性樹脂
で被覆されたネット状支持体、ウェブ状支持体などの融
着性繊維布を熱融着したものが好ましく用いられる。本
発明の炭素繊維シート状織物は、高い強度を発揮し、橋
梁、橋脚、建造物の柱等の補強用シート材用途にも用い
られ得る。
【0020】本発明の炭素繊維強化樹脂組成物は、上述
したサイジング剤で処理された炭素繊維を用いたことを
特徴とするものである。炭素繊維が補強繊維となって、
マトリックス樹脂と複合化され、一方向プリプレグ、ク
ロスプリプレグ、トウプレグ、短繊維強化樹脂含浸シー
ト、短繊維マット強化樹脂含浸シートなどの炭素繊維強
化樹脂組成物となる。マトリックス樹脂としては、特に
限定されないが、例えば、ラジカル重合系樹脂であるア
クリル樹脂、ビニルポリエステル樹脂、不飽和ポリエス
テル樹脂などが使用される。また、熱可塑性アクリル樹
脂などでも良い。さらに、一般に用いられているエポキ
シ樹脂などでも良い。このようなサイジング剤で処理さ
れた炭素繊維を用いた炭素繊維強化樹脂組成物を製造す
るには、一般に通常行われている方法を採用することが
でき、例えば、ホットメルト法、溶剤法、シラップ法、
あるいはSMCなどに用いられる増粘樹脂法などの方法
を適用でき、炭素繊維をマトリックス樹脂に含浸して行
われる。
【0021】このような炭素繊維強化樹脂にあっては、
上述したサイジング剤で処理された炭素繊維を用いてい
るため、マトリックス樹脂として、アクリル樹脂、不飽
和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などのラジカ
ル重合系樹脂などを使用しても、前記サイジング剤の主
成分である化合物の有する環状脂肪族エポキシ基が炭素
繊維と、一般式(1)で示される官能基がマトリックス
樹脂と強靱に接着することから、炭素繊維とマトリック
ス樹脂の界面接着力が強く、良好な力学的特性を示す。
また、例えば、土建用コンクリート補強材のような補強
用シート材として用いる場合には、炭素繊維強化複合材
をコンクリートの支柱等の周囲に巻き付けて用いられる
が、この際、炭素繊維強化複合材どうしの重ね合わせた
部分の剥離強度が他の重ね合わされていない部分の引張
強度よりも同等以上であることが必要とされる。本発明
の炭素繊維強化樹脂組成物を用いてなる複合材である
と、そのような重ね合わせた部分の強度が高く、特に補
強用シート材として有用なものである。
【0022】
【実施例】以下、本発明を、実施例および比較例によっ
て具体的に詳しく説明するが、本発明は、これらの実施
例のみに限定されるものではない。 [実施例1]アクリロニトリル97重量%とメタクリル
酸3重量%からなるアクリロニトリル共重合体をジメチ
ルホルムアミド(DMF)に溶解して、紡糸ノズルより
吐出させ、乾−湿式紡糸方式で、洗、沸水延伸し、続い
て沸水洗浄、乾燥して、単糸デニール0.7の前駆体繊
維を製造した。次いで、この前駆体繊維を、空気中、2
00℃〜300℃で耐炎化して耐炎繊維とした後、窒素
ガス中、最高温度1400℃で炭素化して炭素繊維とし
た。このようにして作成された炭素繊維に対し、電気化
学的に表面酸化処理を施して炭素繊維束を得た。この炭
素繊維束を、サイジング剤溶液にローラー浸漬し、熱風
乾燥して、サイジング剤付着糸とした。炭素繊維束に対
するサイジング剤の付着量は1.50重量%とした。
【0023】サイジング剤溶液としては、上記一般式
(2)で示される化含物(「M−100」ダイセル化学
(株)製)に、ノニオン系の界面活性剤を20重量%配
合し、水で希釈して2wt%の水性エマルジョン溶液に
調製したものを使用した。このサイジング剤付着糸を製
繊して、200g/m2の目付を有する平織りクロスと
して炭素繊維シート状物を製造した。また、メタクリル
シラップ(メチルアクリレートプレポリマー液(「ビー
ズレジンBR−73」三菱レイヨン(株)製を20重量
部と、メチルメタクリレートを80重量部とからな
る))を100重量部に対して、硬化剤(50%希釈ベ
ンゾイルパーオキサイド(「カドックスB−CH50」
化薬アクゾ(株)製))を4重量部と、硬化促進剤(ジ
メチル−p−トルイジン)を1重量部混合してマトリッ
クス樹脂を調製した。そして、上記炭素繊維シート状物
にこのマトリックス樹脂を含浸させて、繊維体積含有率
VF40%の炭素繊維強化樹脂組成物を製造し、これを
0.05mm厚のポリエステルフィルム間で、室温にて
25分間静置して硬化させてシート状の複合材とした。
【0024】この複合材について、曲げ試験、断面の観
察、破断断面の走査型電子顕微鏡による観察(以下、
「SEM観察」と略記する)を行った。曲げ試験は、JI
S K7074に準ずる方法により曲げ強度の測定を行った。
その結果、曲げ強度は600MPaであった。また、断
面には、ボイド、未含浸部は全く確認されなかった。S
EM観察から、樹脂の疑集破壊様式が確認された。
【0025】[実施例2]上記実施例1において、サイ
ジング剤溶液中、上記一般式(2)の化合物に代えて上
記一般式(3)で示される化合物(「A−200」ダイ
セル化学(株)製)を用いたこと以外は、実施例1と同
様にして、炭素繊維を製造し、炭素繊維シート状物ない
し炭素繊維強化樹脂組成物を製造し、シート状の複合材
を得た。さらに、上記実施例1と同様の方法により、曲
げ試験、断面の観察、さらに破断断面のSEM観察を行
った。その結果、曲げ強度は550MPaであった。ま
た、断面には、ボイド、未含浸部は全く確認されなかっ
た。さらに、SEM観察から、樹脂の凝集破壊様式が確
認された。
【0026】[実施例3]上記実施例1において、サイ
ジング剤溶液中、上記一般式(2)の化合物に代えて上
記一般式(4)で示される化合物を用いたこと以外は、
実施例1と同様にして、炭素繊維を製造し、炭素繊維シ
ート状物ないし炭素繊維強化樹脂組成物を製造し、複合
材を得た。さらに、上記実施例1と同様の方法により、
曲げ試験、断面の観察、さらに破断断面のSEM観察を
行った。その結果、曲げ強度は620MPaであった。
また、断面には、ボイド、未含浸部は全く確認されなか
った。さらに、SEM観察から、樹脂の凝集破壊様式が
確認された。
【0027】[実施例4]上記実施例1で製造したサイ
ジング剤付着糸と、マトリックス樹脂からなる引抜き成
形品を成形して、炭素繊維強化樹脂組成物からなる複合
材を製造した。マトリックス樹脂としては、ビニルエス
テル樹脂(「デックライト3505」大日本インキ化学
工業(株)製)を使用した。複合材について、引張試
験、断面の観察、さらに破断断面のSEM観察を行っ
た。その結果、引張強度は1400MPaであった。ま
た、断面には、ボイド、未含浸部は全く確認されなかっ
た。さらに、SEM観察から、樹脂の凝集破壊様式が確
認された。
【0028】[実施例5]上記一般式(2)で示される
化合物に対してノニオン系の界面活性剤20重量%を配
合して、水で希釈して2wt%の水性エマルジョン溶液
としてサイジング剤溶液を調製した。このサイジング剤
溶液に、炭素繊維(三菱レイヨン(株)製「パイロフィ
ルTR30X」(引張強度4.9GPa、引張弾性率2
35GPa、フィラメント数12,000本))をロー
ラー浸漬し、熱風乾燥して、炭素繊維束に対するサイジ
ング剤の付着量を1.50重量%としたサイジング剤付
着糸とした。この炭素繊維を経糸として10本/イン
チ、緯糸にガラス繊維(引張弾性率72.5GPa、融
点840℃)と低融点ナイロン繊維(マルチフィラメン
ト、融点125℃)の交絡糸(0.03g/m)を6本
/インチで製織した後、180℃の熱をかけて簾状炭素
繊維織布を得た。得られた織物はしなやかで多少乱暴に
扱っても繊維の乱れや目崩れの起きない極めて取り扱い
易いものであった。
【0029】また、メチルメタクリレートを70重量部
と、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートを2
重量部と、末端にメタクリル基を有する数平均分子量が
6000のn−ブチルアクリレートマクロモノマーを2
5重量部と、n−パラフインを1重量部と、γ−メタク
リロキシプロピルトリメトキシシランを1重量部とを均
一になるまで十分に混合し、最後にN,N−ジメチル−
p−トルイジンを1重量部添加混合し、反応性混合物を
得た。この反応性混合物100重量部に対して、ベンゾ
イルパーオキサイド2重量部を添加混合し、上記製造し
た簾状織物に含浸し、炭素繊維強化樹脂組成物を製造
し、室温で1時間放置して硬化し、複合材を得た。
【0030】得られた複合材から切り出して、図1に示
すような、全長250mm、幅12.5mmの引張試験
片を作製し、室温にて引張強度を測定した。繊維含有率
100%に換算した(織物の理論厚みで割り返した)引
張強度は4100MPaであった。また、上記炭素繊維
強化樹脂組成物から、矩形状の2枚のシート状物を切り
出し、未硬化のまま、図2に示すように、100mmの
継手重なり部10を形成するように重ね合わせ、室温で
1時間放置して一体硬化させて継手引張強度試験片を作
製し、室温にて継手引張強度を測定した。繊維含有率1
00%に換算した(織物の理論厚みで割り返した)継手
引張強度は4050MPaであり、継手部のない引張強
度とほぼ同等であった。破断は、継手部破断と母材の引
張破断の混合で、コンクリート補強材等にも適するもの
であった。
【0031】[実施例6]実施例5と同様なサイジング
剤付着糸である炭素繊維を2.5mm間隔300mm巾
で、目板及び櫛を使って一方向に引き揃え、その両表面
にガラス繊維(引張弾性率72.5GPa、融点840
℃)と低融点ナイロン繊維(マルチフィラメント、融点
125℃)の交絡糸(0.03g/m)を片面当たり2
5mm間隔(シートとしては12.5mm間隔で両表面
に交互に緯線は配置される)で配置して熱プレスにより
180℃で熱融着させることによって炭素繊維シート状
物を得た。得られた炭素繊維シート状物はしなやかで多
少乱暴に扱っても繊維の乱れや目崩れの起きない極めて
取り扱い易いものであった。実施例5と同様に上記反応
性混合物100重量部に対して、ベンゾイルパーオキサ
イド2重量部を添加混合し、上記炭素繊維シート状物に
含浸し、炭素繊維強化樹脂組成物を製造し、室温で1時
問放置して硬化し、複合材を得た。本炭素繊維シート状
物の樹脂含浸性は優れたものであった。
【0032】上記同様に、図1に示した引張試験片と図
2に示した継手引張強度試験片を作製し、室温にて、引
張強度と、継手引張強度を測定した。繊維含有率100
%に換算した(織物の理論厚みで割り返した)引張強度
は4200MPaであった。継手引張強度は4100M
Paであり、継手部のない引張強度とほぼ同等であっ
た。破断は、継手部破断と母材の引張破断の混合であっ
た。
【0033】[比較例1]上記実施例1において、サイ
ジング剤溶液の主成分を市販のビスフェノールA型エポ
キシ樹脂(「エピコート828」油化シェル製)とした
こと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を製造し、
炭素繊維シート状物ないし炭素繊維強化樹脂組成物を製
造した。得られた炭素繊維強化樹脂組成物に関し、上記
実施例1と同様の方法により、曲げ試験、断面の観察、
さらに破断断面のSEM観察を行った。その結果、曲げ
強度は300MPaであった。また、断面には、ボイ
ド、未含浸部が確認された。さらに、SEM観察から、
炭素繊維と樹脂との界面の剥離が明らかに確認された。
【0034】[比較例2]上記実施例1におけるサイジ
ング剤溶液の主成分を下記一般式(7)で示される化合
物としたこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を
製造し、炭素繊維シート状物ないし炭素繊維強化樹脂組
成物を製造した。
【化4】 得られた炭素繊維強化樹脂組成物について、曲げ試験、
断面の観察、さらに破断断面のSEM観察を行った。そ
の結果、曲げ強度は450MPaであった。また、断面
には、ボイド、未含浸部は全く確認されなかった。しか
し、SEM観察から、炭素繊維と樹脂との界面の剥離が
明らかに確認された。
【0035】[比較例3]上記比較例1で用いたものと
同様のサイジング剤の付着された炭素繊維と、マトリッ
クス樹脂からなる引抜き成形品を成形して、炭素繊維強
化樹脂組成物からなる複合材を製造した。マトリックス
樹脂としては、上記実施例4と同様ものを使用した。そ
して、得られた複合材について、上記実施例1と同様
に、引張試験、断面の観察、さらに破断断面のSEM観
察を行った。その結果、引張強度は1200MPaであ
った。また、断面には、ボイド、未含浸部が一部存在す
ることが確認された。さらに、SEM観察から、炭素繊
維と樹脂との界面の剥離が明らかに確認された。
【0036】[比較例4]炭素繊維束に対するサイジン
グ剤の付着量を0.05重量%としたこと以外は上記実
施例1と同様にして炭素繊維を製造し、炭素繊維シート
状物ないし炭素繊維強化樹脂組成物を製造し、複合材を
得た。得られた複合材について、上記実施例1と同様の
方法により、曲げ試験、断面の観察、さらに破断断面の
SEM観察を行った。その結果、曲げ強度は340MP
aであった。また、断面には、ボイド、未含浸部が一部
存在することが確認された。さらに、SEM観察から、
炭素繊維と樹脂との界面の剥離が明らかに確認された。
【0037】[比較例5]炭素繊維束に対するサイジン
グ剤の付着量を6.00重量%としたこと以外は上記実
施例1と同様にして炭素繊維を製造し、炭素繊維シート
状物ないし炭素繊維強化樹脂組成物を製造し、複合材を
得た。得られた複合材について、上記実施例1と同様の
方法により、曲げ試験、断面の観察、さらに破断断面の
SEM観察を行った。その結果、曲げ強度は350MP
aであった。また、断面には、ボイド、未含浸部が一部
存在し、上記炭素繊維束内に樹脂が十分に含浸していな
いことが確認された。一方、SEM観察から、樹脂の凝
集破壊様式が観察され、接着性が十分であることが確認
された。 [比較例6]上記実施例5におけるサイジング剤の主成
分を市販のビスフェノールA型エポキシ樹脂(「エピコ
ート828」油化シェル製)としたこと以外は、実施例
5と同様にして、炭素繊維を製造し、炭素繊維シート状
物ないし炭素繊維強化樹脂組成物を製造した。得られた
炭素繊維強化樹脂組成物から、引張強度試験片と継手引
張強度試験片をそれぞれ作製し、引張強度と継手引張強
度を測定した。その結果、引張強度は4300MPaで
あったが、継手引張強度は3300MPaでかなり小さ
な値になった。継手引張強度試験片の破断は全て継手部
の剥離であった。
【0038】[比較例7]上記実施例5におけるサイジ
ング剤の主成分を市販のビスフェノールA型エポキシ樹
脂(「エピコート828」油化シェル製)としたこと以
外は実施例5と同様にして、炭素繊維を製造し、その炭
素繊維を用いて、実施例6と同様にして、炭素繊維シー
ト状物ないし炭素繊維強化樹脂組成物を製造した。得ら
れた炭素繊維強化樹脂組成物から、引張強度試験片と継
手引張強度試験片を作製し、引張強度と継手引張強度を
測定した。その結果、引張強度は4200MPaであっ
たが、継手引張強度は3400MPaでかなり小さな値
になった。継手引張強度試験片の破断は全て継手部の剥
離であった。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】以上の結果から、本発明の実施例において
は十分な強度が得られ、またボイド、未含浸部は全く確
認されず、さらに、SEM観察から樹脂の凝集破壊様式
を確認することができて、比較例に比べて優れているこ
とが確認できた。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のサイジン
グ剤を用いた炭素繊維は、エポキシ樹脂だけでなく、ア
クリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル
樹脂などのラジカル重合系樹脂などのマトリックス樹脂
に対しても優れた親和性を有し、炭素繊維とマトリック
ス樹脂の両方に対し、濡れ性を向上させることができ、
また、安定した効果を得ることができるものである。ま
た、本発明の炭素繊維が処理されるサイジング剤溶液
は、炭素繊維用サイジング剤を水溶液中に分散させてな
るものであるので、炭素繊維に本サイジング剤の効果を
付与する処理に際して、工業的にも、また安全性の面か
らも優れたものとすることができる。さらに、本発明の
炭素繊維シート状物ならびに炭素繊維強化樹脂組成物
は、それに使用する炭素繊維を、本発明の炭素繊維用サ
イジング剤を用いて処理したものとしているので、炭素
繊維とマトリックス樹脂との界面に強い接着力を得るこ
とができることから、優れた力学的特性を有するものと
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 引張試験片を示すもので、図1(a)は側面
図、図1(b)は平面図である。
【図2】 継手引張強度試験片を示すもので、図2
(a)は側面図、図2(b)は平面図である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(1)で示される官能基と環
    状脂肪族エポキシ基を有する化合物を含有することを特
    徴とする炭素繊維用サイジング剤。 【化1】 式中のRは水素原子またはアルキル基を示す。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の炭素繊維用サイジング剤
    が水溶液中に分散してなることを特徴とする炭素繊維用
    サイジング剤溶液。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の炭素繊維用サイジング剤
    が付着されていることを特徴とする炭素繊維。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の炭素繊維を用いてなるこ
    とを特徴とする炭素繊維シート状物。
  5. 【請求項5】 請求項3記載の炭素繊維を有することを
    特徴とする炭素繊維強化樹脂組成物。
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