JP2000264730A - ジルコニア焼結体及びその製造方法 - Google Patents
ジルコニア焼結体及びその製造方法Info
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Abstract
ア原料粉を用いたとしても高強度なジルコニア焼結体を
提供する。 【解決手段】 MgOを8〜12mol%、酸化珪素を
0.05〜3wt%含むジルコニア焼結体において、混
合原料粉の平均粒径を0.4〜0.8μmにすることに
より強度545MPa以上のジルコニア焼結体を得るこ
とを可能とする。さらに、アニール処理を施すことによ
り強度向上を図ることが可能となる。
Description
具、各種ダイス、自動車部品等のように機械的強度を要
求される部材に適用されるジルコニア焼結体に関するも
のである。
ばイットリア(Y2 O3 )、マグネシア(MgO)、カ
ルシア(CaO)等を用いた部分安定化ジルコニア(Z
rO2)が機械的強度が優れていることから自動車部品
や圧延ロール等の構造用部材に使用されていた。
斜晶、立方晶、正方晶等の結晶系が変わり、そのことに
より強度等の特性が変化してしまうといった問題があ
り、例えば特開平6−40769号のように焼結条件を
制御することにより結晶系の安定化が試みられていた。
これら焼結条件の制御は強度の高い焼結体が得られるも
のの製造工程を複雑化してしまっていた。
不純物や偏析物の影響については考慮されていないもの
が多く、例えば特開平6−80468号に記載のよう
に、通常ジルコニア原料粉には酸化珪素等の酸化物不純
物が多く含まれ焼結体を製造した際、強度等の特性劣化
の原因となっていた。また、酸化珪素等の不純物の少な
いジルコニア原料粉は高価であり、これを用いることは
コストアップの原因となり不都合も多かった。
コニア焼結体は、強度等の特性向上のために複雑な製造
工程の管理や、不純物の少ない高価な原料粉を用いなけ
ればならないといった問題が起きていた。
は、酸化珪素などの化合物が0.05〜3wt%含まれ
ていても強度等の特性が優れたジルコニア焼結体を提供
することを目的としている。
体は、請求項1に記載してようにマグネシアを8〜12
mol%含有し、酸化珪素を0.05〜3wt%含有
し、残部ジルコニアであることを特徴とするジルコニア
焼結体。
下含むことを特徴とする請求項1記載のジルコニア焼結
体。室温(25℃)での曲げ強度値が600MPa以上
であることを特徴とする請求項1記載のジルコニア焼結
体。
熱膨張係数の平均値が8×10-6/℃以上であることを
特徴とする請求項1ないし請求項2のいずれかに記載の
ジルコニア焼結体。
0℃への熱履歴後、また室温に戻したときの寸法増加率
が熱履歴前の室温時の寸法と比較して0.05%以下で
あることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか
に記載のジルコニア焼結体。
−O系化合物偏析していることを特徴とする請求項1な
いし請求項4のいずれかに記載のジルコニア焼結体。請
求項6として、粒界相中の偏析物の平均粒径が10μm
以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5い
ずれかに記載のジルコニア焼結体。
が、焼結体全体中に10vol%以下であることを特徴
とする請求項1ないし請求項6いずれかに記載のジルコ
ニア焼結体。
ol%含有し、酸化珪素及び酸化チタンの合計量が0.
058〜0.14wt%含有し、残部ジルコニアである
焼結体において、粒界相中に、Si−Mg−O系化合物
が偏析していることを特徴とするジルコニア焼結体。
700℃であることを特徴とする請求項1ないし請求項
8のいずれかに記載のジルコニア焼結体の製造方法。請
求項10として、焼結後にアニール処理を行うことを特
徴とするジルコニア焼結体の製造方法、としている。
mol%、好ましくは10〜11mol%、より好まし
くは10.8〜11mol%含有している。特に10m
ol%以上含有する場合は強度600MPa以上を得や
すくなる。マグネシアの量が8mol%より低い又は1
2mol%を超えると焼結時の熱処理温度による晶変態
が激しくなり強度等の特性が安定した焼結体が得られ
ず、精密な製造工程の管理が必要になる。
ジルコニア粉末の平均粒径1.0〜2.0μm、好まし
くは1.2〜1.6μmであり、MgO粉末の平均粒径
を1.0μm以下、好ましくは0.5μm以下、さらに
好ましくは0.3μm以下にするとよい。この時、ジル
コニア粉末の平均粒径≧MgO粉末の平均粒径としてお
くと後述の偏析物の大きさを制御し易くなる。
3wt%及び/又は酸化チタン(TiO2 )を5wt%
以下含有している。これらの化合物は、ジルコニアの原
料粉中に不純物として含まれていても良いし、不足分を
改めて添加しても良く、後述するように、安定化剤Mg
Oとの偏析物を形成し強度向上に効果がある。特に酸化
珪素はMgOとの偏析物を形成し易いので効果が大き
い。
05〜1wt%、より好ましくは0.05〜0.5wt
%であり、さらに好ましくは0.05〜0.09wt%
であり、その他不可避不純物としてジルコニアと分離が
困難な酸化ハフニウム等のハフニウム化合物を除いて
0.5wt%以下含有していてもよい。不純物としてで
はなく添加物として酸化珪素を含有させる場合は、その
粉末の平均粒径を1μm以下とし、ジルコニア原料粉の
平均粒径より小さくする。このように本発明のジルコニ
ア焼結体においては、酸化珪素等の不純物が多少含まれ
ているようなグレードの低い原料粉を用いることも可能
である。
下、好ましくは0.5wt%以下であり、さらに好まし
くは0.008〜0.05wt%である。酸化チタンは
焼結性の向上に寄与する。。
%かつ酸化チタンが0.008〜0.05wt%であっ
てその合計量が0.058〜0.14wt%になるもの
は偏析物の形成状態(大きさ及び量)が優れるので強度
向上し、かつ焼結性も向上するのでより効果的である。
例えば、各成分を混合した原料粉全体をジルコニアメデ
ィア等を用いて平均粒径0.2〜1.0μm、好ましく
は0.4〜0.8μmさらに好ましくは平均粒径0.6
μmである。所定の粒径まで粉砕混合したものを所定の
形状に成形した後1550〜1700℃、好ましくは1
600〜1675℃で焼結する。焼結雰囲気は、特に限
定はなく大気中、窒素やアルゴン等の不活性ガス中が好
ましく、大気中で行えば焼結雰囲気の複雑な制御が不要
になるので製造性が向上する。
曲げ強度が545MPa以上のジルコニア焼結体を得ら
れるが、さらに強度を向上させるために900〜105
0℃でアニール処理を行ってもよい。アニール温度が9
00℃未満、もしくは1050℃を超えた場合反って強
度を低下させるので好ましくない。このアニール処理
は、焼結後室温〜700℃に下がった後に行い、1〜3
0時間、好ましくは4〜16時間行う。この時の雰囲気
は焼結時の雰囲気をそのまま用いればよいので、焼結→
除冷→アニールの順で行う。
焼結体では、例えば曲げ強度が700MPaであったも
のが、アニール処理を行うことにより750MPa以上
となり、約50MPa以上の強度の向上が図れる。アニ
ール温度1000〜1050℃×4時間以上の場合がも
っとも効果的である。
安定な正方晶が多く含まれているため相転移し難くなっ
ていた。アニール処理を行うことにより結晶の安定化度
が低下し、わずかなエネルギーで相転移し易くなるため
正方晶→単斜晶へのマルテンサイト型転移強化機構が働
き、強度が向上するものと考えられる。
の割合が変化し、アニール前は単斜晶の割合が30vo
l%前後であったものが、アニール後は47%前後にな
り、単斜晶が平均42〜50vol%になることが確認
された。ここで単斜晶の割合(Vm;vol%)は、焼
結体の研磨面に対して求められたX線回折強度から次式
によって計算した。
1)]/[Im(111)+Im(11−1)+Ic
(111)]]×100(vol%) ここで、Im(111)は単斜晶ジルコニア(111)
面の回折強度、Im(11−1)は単斜晶(11−1)
面の回折強度、Ic(111)は立方晶ジルコニア(1
11)面の回折強度を示している。なお、通常のX線回
折では測定誤差は±5vol%である。
処理の有無に関わらず、その粒界相中に例えば、Si−
Mg−O系化合物が形成され粒界相中に偏析物として存
在している。この偏析物が粒界相に存在した方が強度は
向上する。ジルコニア焼結体の粒界相中での偏析物の平
均粒径は10μm以下、焼結体全体の中での偏析物の量
(割合)は10vol%以下である。
及び割合が10vol%を超える場合は強度が低下す
る。これは該偏析物がジルコニア粒子の結合に関与して
いるためと考えられ、該偏析物が全くないとジルコニア
粒子間の結合力が弱まり、逆にあまり多すぎると粒界相
が大きくなりすぎるので強度が低下すると考えられる。
粉の平均粒径を0.4〜0.8μm及び混合割合を制御
することが有効であり、偏析物の平均粒径を7μm以
下、さらには5μm以下とさらに小さくでき、その割合
を6vol%以下に減少させることが可能となる。
焼結体のジルコニア結晶粒の大きさは、20〜50μm
となり、焼結温度を1620℃以上にすることにより3
2〜50μmに粒成長させることが可能となる。さらに
焼結体の密度も5g/cm3以上になり、焼結温度を1
600℃以上にすることにより5.5〜6.0g/cm
3 と高密度化され、これも高強度化への要因と考えられ
る。
アニール処理を行っているが、このアニール処理は焼結
体を形成した後に行う処理のため、成形体等の複雑な管
理や仮焼き体のように型崩れし易い状態ではないため製
造上の取扱いも容易である。
とにより、室温での曲げ強度を545MPa以上、さら
には690MPa以上の焼結体を得られるようになる。
また、室温における熱膨張係数8×10-6/℃以上、好
ましくは8×10-6〜10×10-6/℃と金属の熱膨張
係数、特にステンレス鋼に近い高熱膨張特性が得られ、
かつ熱膨張係数のバラツキの少ない安定したジルコニア
焼結体を得られる。この焼結体は200℃と高温中であ
っても、その熱膨張係数に大きな変化はなく、そのた
め、室温→200℃→室温の熱履歴を施したものであっ
ても、熱履歴を施す前との寸法増加率が0.05%以下
と熱変形の小さい焼結体が得られる。
化の激しい分野、例えば熱処理用冶工具、各種ダイス、
燃料噴射装置、自動車部品等の分野に有効であり、特に
熱膨張係数が金属に近似しているので金属部材と組合せ
て使用される部材に有効である。
残部ジルコニアの焼結体において、表1に示すように酸
化珪素量及び酸化チタン量を変化させ、1650℃で焼
結した試料を作製し3点曲げ強度及び粒界相での析出物
の平均サイズ、そのvol%を測定した。なお、酸化珪
素、酸化チタンおよびMgO原料粉としては平均粒径
0.3μm、ジルコニア原料粉末としては平均粒径1.
4μmのものを用い、混合原料粉を平均粒径0.6μm
になるまで粉砕混合を施した。
合物が1.7wt%、それ以外の不可避不純物が0.5
wt%含まれていた。また、不純物として酸化珪素が
0.02wt%、酸化チタンが0.008wt%含まれ
ていた。
1650℃で常圧焼結を施すことにより試料を作製し
た。偏析物の平均粒径及び量の測定方法としては、縦5
mm×横5mm×厚み5mmの試料を作製し、各面を1
mm削った後、任意に切断した断面をSEMにより任意
の100μm×100μmの範囲を3個所測定した結果
の平均値で判断した。
量を0.02又は5wt%と本発明の範囲外の量を入れ
た以外は実施例1と同様のジルコニア焼結体、及びこれ
ら化合物を含まない高純度ジルコニアを実施例1と同様
の条件で作製した。
合、酸化珪素及び酸化チタンの量が本発明の範囲内のも
のは強度が上がり偏析物の大きさ及び量(vol%)が
改善されていることが分かる。
高純度ジルコニアからなる焼結体も強度が低下してい
る。これは、Si−Mg−O系化合物の偏析物が形成さ
れていないことが原因と考えられる。
gO量、酸化珪素、酸化チタン量を変化させた以外は実
施例1と同様の方法で焼結体を作製し強度を測定した。
は、不可避不純物が0.5wt%程度含まれていたとし
ても3点曲げ強度がいずれも545MPa以上と高い数
値が得られている。
いグレードの低いものかつ大気中で常圧焼結であっても
十分な強度が得られることを示しており、コスト低減な
ど製造性向上への効果が大きい。
例21で用いたジルコニア焼結体に関して、混合原料粉
末の大きさを表3に示すように変えて製造し、3点曲げ
強度、偏析物の大きさ及びその割合を測定した。なお、
焼結条件及び測定方法については実施例1と同様の方法
を用いた。
粒径が0.4〜0.8μmの方が、各成分の含有量が同
じであっても強度が向上されていることが分かる。 (実施例43〜48)実施例3で用いたジルコニア焼結
体に対し、表4に示すようなアニール処理を行い、アニ
ール処理前後の3点曲げ強度および単斜晶の割合を測定
した。なお、単斜晶の割合の測定はX線回折を用い前述
の計算式を用いて測定した。 (比較例7〜8)比較のためにアニール温度を700
℃、1100℃で行った。
たものは3点曲げ強度が平均50MPa程度向上してい
る。各実施例とも単斜晶の割合が増加しており、いずれ
も単斜晶が40〜50vol%の範囲であった。それに
対し比較例の方は強度が低下していることが分かった。
した実施例の中から任意に選んだ実施例2、4、18、
26、28のジルコニア焼結体をに対し、室温および2
00℃での熱膨張係数及び熱履歴後の寸法増加率を測定
し表5に示した。
×厚さ(長さ)20mmの試験片を用い、熱膨張係数の
測定を押し棒式で測定した。熱履歴後の寸法増加率の測
定は、試験片を室温から200℃に加熱し1時間保持し
た後、放置し室温に戻した際の寸法を測定し加熱前の寸
法と比較した。従って、熱履歴後の寸法増加率(%)=
[(熱処理後の寸法−熱処理前の寸法)/熱処理前の寸
法]×100となる。
膨張係数を同様の方法で測定し、熱膨張係数のバラツキ
を表6に示した。比較のために比較例6のジルコニア焼
結体に対しても同様の測定を行った。
膨張係数が高く、熱履歴後の寸法増加率が小さいことが
分かる。表6から熱膨張係数のバラツキが小さいことも
分かり、安定した熱膨張係数を持つジルコニア焼結体が
得られることが分かる。そのためこれら焼結体を金属部
材、特にステンレス鋼と組合せて使用する分野、例えば
自動車エンジンに搭載する燃料噴射装置に適用したとこ
ろ良好な結果を示した。
焼結体は、酸化珪素等の通常不純物として含まれている
化合物の量を特定し、原料粉の粒径又はアニール処理等
を考慮することにより、不純物の多いグレードの低いジ
ルコニア原料粉を用いた焼結体であっても十分な強度を
得られることが可能となる。また、熱膨張係数が比較的
高強度金属に近いことから金属部材と組合せて使用する
分野に特に有効である。
Claims (10)
- 【請求項1】 マグネシアを8〜12mol%含有し、
酸化珪素0.05〜3wt%含有し、残部ジルコニアで
あることを特徴とするジルコニア焼結体。 - 【請求項2】 酸化チタンを5wt%以下含むことを特
徴とする請求項1記載のジルコニア焼結体。 - 【請求項3】 室温(25℃)における熱膨張係数の平
均値が8×10-6/℃以上であることを特徴とする請求
項1ないし請求項2のいずれかに記載のジルコニア焼結
体。 - 【請求項4】 室温(25℃)から200℃への熱履歴
後、また室温に戻したときの寸法増加率が熱履歴前の室
温時の寸法と比較して0.05%以下であることを特徴
とする請求項1ないし請求項3いずれかに記載のジルコ
ニア焼結体。 - 【請求項5】 粒界相中に、Si−Mg−O系化合物が
偏析していることを特徴とする請求項1ないし請求項4
のいずれかに記載のジルコニア焼結体。 - 【請求項6】 粒界相中の偏析物の平均粒径が10μm
以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5い
ずれかに記載のジルコニア焼結体。 - 【請求項7】 粒界相中の偏析物の割合が、焼結体全体
中に10vol%以下であることを特徴とする請求項1
ないし請求項6いずれかに記載のジルコニア焼結体。 - 【請求項8】 マグネシアを8〜12mol%含有し、
酸化珪素及び酸化チタンの合計量が0.058〜0.1
4wt%含有し、残部ジルコニアである焼結体におい
て、粒界相中に、Si−Mg−O系化合物が偏析してい
ることを特徴とするジルコニア焼結体。 - 【請求項9】 焼結温度が1550〜1700℃である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに
記載のジルコニア焼結体の製造方法。 - 【請求項10】 焼結後にアニール処理を行うことを特
徴とするジルコニア焼結体の製造方法。
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