JP2000248258A - 金属配位能を有する糖誘導体から成るゲル化剤 - Google Patents

金属配位能を有する糖誘導体から成るゲル化剤

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JP2000248258A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 調製や取扱が容易であり各種の有機溶媒のゲ
ル化に適用することができ、強固なゲルを形成すること
ができる新しいゲル化剤を提供する。 【解決手段】 図1に示す構造式に代表される糖誘導体
からなる溶媒ゲル化剤。金属イオンが存在することによ
り、ゲル化能が高められるという特性を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゲル化現象を利用
する技術分野に属し、詳述すれば、糖誘導体から成る新
規な溶媒ゲル化剤に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ゲルの特性に基づく応用開発が盛
んに進められているが、これまで実用に供されてきたゲ
ルは、主として、高分子ハイドロゲル、すなわち、高分
子(ポリマー)から成るゲル化剤が溶媒として水を含んで
ゲル化する現象を利用したものである。これに対して、
最近、比較的低分子の有機化合物をゲル化剤原料として
非水性有機溶媒をゲル化する有機ゲルについても研究が
行われるようになり、台所廃油や流出原油等をゲル化に
より固めて除去するのに実用化の例も見られる。しかし
ながら、有機溶媒等をゲル化し得るものとして見出され
た有機低分子化合物は未だきわめて少ない。
【0003】また、有機溶媒用ゲル化剤として提示され
ているものは、低分子化合物とは言っても実際には長大
で複雑なものが多く、したがって、調製や取扱の点では
必ずしも満足すべきものではない。例えば、「R. J. H.
Hafkamp他、J. Chem. Soc.,Chem. Commun., 1997, 54
5」や「G. T. Crisp他、Synthetic Commun., 27, 2203
(1997)」には、オイルゲル化剤の例が報告されている
が、ゲル化剤として用いられるのは長鎖アルキル基を含
む比較的複雑な化合物である。
【0004】さらに、従来から知られているゲル化剤
は、専ら特定の構造から成る特定の目的に向けられたも
のが多く、目的に応じて各種の溶媒に適用し得るように
簡単に分子設計できるような融通性のあるゲル化剤は見
られない。特に、必要に応じてゲル化能を高めて、ゲル
化剤の量を少なくしたり、あるいは、より強固なゲルが
得られるように調節できれば、実用面からも好ましい
が、そのようなゲル形成系は知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、調製
や取扱が容易であり各種の有機溶媒のゲル化に適用する
ことができ、且つ、強固なゲルを形成することができる
新しいタイプのゲル化剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、ピラノース
環を有する単糖類から誘導され、有機溶媒をゲル化し得
るとともに、金属が存在すると該金属と錯体を形成し
て、より強固なゲルを形成し得る新規な有機低分子化合
物を見出すことにより本発明を導き出したものである。
【0007】すなわち、本発明は、下記の式(1)〜
(4)のいずれかで表される糖誘導体から成る溶媒ゲル
化剤を提供する。
【0008】
【化3】
【0009】但し、式(1)〜(4)中、Rはアルキ
ル基またはフェニル基を表わし、R は下記の(5)ま
たは(6)を表わす。
【0010】
【化4】
【0011】本発明のゲル化剤を構成する糖誘導体とし
て、特に好ましいのは、p−アミノフェニル−4,6−O
−ベンジリデン−α−D‐グルコピラノシド、p−アミ
ノフェニル−4,6−O−ベンジリデン−β−D‐グルコ
ピラノシド、p−アミノフェニル−4,6−O−ベンジリ
デン−α−D‐ガラクトピラノシド、およびp−アミノ
フェニル−4,6−O−ベンジリデン−β−D‐ガラクト
ピラノシドであり、それぞれ、図1の1a、1b、2a
および2bの構造式で示されるものである。さらに、本
発明のゲル化剤は、特に好ましい態様として、金属イオ
ンとともに使用される。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の溶媒ゲル化剤を構成する
化合物は、(1)〜(4)の構造式または図1に示す構
造式から理解されるようにピラノース環を含む。よく知
られているように単糖のピラノース環には多様な立体構
造がある。
【0013】すなわち、本発明の溶媒ゲル化剤は、単糖
の糖骨格とR(アルキル基またはフェニル基)および
/またはR〔(5)または(6)〕との結合角度の違
いにより、ゲル化剤としてのパッキングのしやすさの違
いによってゲル可能に差が生じる。したがって、本発明
の溶媒ゲル化剤を使用するに当たっては、対象とする溶
媒に応じて、(1)〜(4)、あるいは図1の1a〜2
bで示されるような糖誘導体の中から最適のものを選択
すればよい。
【0014】さらに、本発明の溶媒ゲル化剤は、金属
(金属イオン)が存在すると、ゲル化能が高められると
いう特性を有する。これは、本発明のゲル化剤を構成す
る糖誘導体は、アミノフェニル基やピリジル基など金属
と配位結合し得る官能基を持つので、金属と錯体を形成
して、より強固なゲルになるためと理解される。かくし
て、本発明のゲル化剤は、必要に応じて、金属イオンと
ともに使用することにより、ゲル化剤の量を少なくした
り、より強固なゲルが得られるように調節することが可
能である。本発明のゲル化剤がそのような特性を発揮す
る金属イオンとしては、遷移金属(銀、コバルトなど)
およびカドミウムなどが挙げられる。
【0015】本発明のゲル化剤は、広範囲の有機溶媒を
ゲル化するのに使用することができる。適用される有機
溶媒の例としては、エタノール、メタノールなどが挙げ
られ、さらに、溶媒として水を含む系にも適用可能であ
る。
【0016】本発明のゲル化剤が、ゲル化能を発揮して
溶媒をゲル化し得るためには、上記の式(1)〜(4)
において、Rはフェニル基または炭素数6以上のアル
キル基でなければならない。フェニル基または炭素数6
以上のアルキル基は分子配向することによりゲル化に寄
与すると考えられる。アルキル基は、飽和アルキル基の
みならず、不飽和アルキルでもよいが、分枝しているア
ルキル基は好ましくない。但し、アルキル基が長すぎる
と、溶解またはゲル化を阻害するので、一般に、アルキ
ル基は炭素数12以下のものとする。
【0017】本発明の溶媒ゲル化剤を構成する単糖誘導
体は、既知の反応を利用することにより比較的簡単に合
成することができる。略述すれば、単糖(グルコースま
たはガラクトース)のp−ニトロフェニル化合物(R
が(5)の場合)またはピリジル化合物(Rが(6)
の場合)に、ベンズアルデヒト(Rがフェニル基の場
合)またはアルキルアルデヒド(Rがアルキル基の場
合)を適当なルイス酸触媒(例えば、塩化亜鉛)の存在
下に反応させる。Rが(5)の場合は、得られた生成
物を接触還元してニトロ基をアミノ基に転化する。
【0018】如上のように、糖誘導体から成る本発明の
ゲル化剤は、調製(合成)や取扱が簡単であり、対象に
応じて適宜選択して使用することができ、また、金属イ
オンを存在させることにより、ゲルを強固にしたりゲル
化剤の使用量を少なくすることも可能である。かくし
て、本発明の溶媒ゲル化剤は、その特性を活かして、油
の処理剤、化粧品の固定化剤、電解質の固定化剤(ゲル
電池)などに使用できる。
【0019】
【実施例】本発明の特徴をさらに明かにするため、以下
に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例によって限
定されるものではない。実施例1:単糖誘導体の合成 p−ニトロフェニル−α−D−グルコース(500mg、
1.66mmol)とベンズアルデヒド2ml(19.6mmo
l)を塩化亜鉛(300mg、2.2mmol)触媒の存在下
で20時間室温、窒素雰囲気下で反応させた。20時間後、
この反応混合液に水50mlを加え、水溶液とした。この
水溶液からクロロホルムを用いて、反応物であるp−ニ
トロフェニル−4,6−O−ベンジリデン−α−D−グ
ルコピラノシドを抽出し、エバポレーターでクロロホル
ムを除き、THF−ヘキサンで再沈精製した。(収率7
7.4%)このp−ニトロフェニル−4,6−O−ベンジ
リデン−α−D−グルコピラノシド(500mg、1.29m
mol)をエタノール40mlに溶解し、Pd−C触媒を
用いて水素による接触還元を行い、図1に示す化合物1
a(p−ニトロフェニル−4,6−O−ベンジリデン−
α−D−グルコピラノシド)を得た。この際の精製はカ
ラムクロマトグラフを用いた(収率25%)。同様の方法
により、図2に示す化合物1b(p−アミノフェニル−
4,6−O−ベンジリデン−β−D−グルコピラノシ
ド)を合成した。
【0020】実施例2:ゲル化試験 実施例1で合成した糖誘導体をゲル化剤として、各種の
溶媒に対するゲル化能を調べた。ゲル化試験は、次のよ
うに行った:ゲル化剤(3.0mg)をキャップ付試験管
内で溶媒(0.1ml)と混合し、固形分が溶解するまで
を加熱した。得られた溶液を室温に冷却し、1時間放置
してゲルの形成を観察した。その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】この結果から理解されるように、本発明の
ゲル化剤は、各種の有機溶媒をゲル化することができ、
ゲル化剤を構成している単糖が変わるとゲル化能が変化
する。
【0023】実施例3:金属イオン存在下でのゲル化試
純粋なエタノールの代わりに、0.1重量%の塩化コバル
トを含む塩化コバルト/エタノール溶液を用いて実施例
2と同様のケ゛ル化試験を行った。その結果、糖誘導体1
aは、1.0(wt/vol)%の濃度でも強固なゲルを
形成させ、金属イオンが存在するとゲル化剤濃度が低く
なっても充分なゲル化能を発揮することが示された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶媒ゲル化剤として好適な糖誘導体の
構造式を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 新海 征治 福岡県福岡市東区三苫2−13−17 Fターム(参考) 4C057 BB02 DD03 JJ23 4G075 AA33 CA51

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の式(1)〜(4)のいずれかで表
    される糖誘導体から成ることを特徴とする溶媒ゲル化
    剤。 【化1】 〔但し、式(1)〜(4)中、Rはアルキル基または
    フェニル基を表わし、Rは下記の(5)または(6)
    を表わす。〕 【化2】
  2. 【請求項2】 p−アミノフェニル−4,6−O−ベンジ
    リデン−α−D‐グルコピラノシド、p−アミノフェニ
    ル−4,6−O−ベンジリデン−β−D‐グルコピラノシ
    ド、p−アミノフェニル−4,6−O−ベンジリデン−α
    −D‐ガラクトピラノシド、およびp−アミノフェニル
    −4,6−O−ベンジリデン−β−D‐ガラクトピラノシ
    ドから選ばれる糖誘導体から成ることを特徴とする請求
    項1のゲル化剤。
  3. 【請求項3】 金属イオンとともに使用されることを特
    徴とする請求項1または請求項2のゲル化剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2003014249A1 (en) * 2001-08-07 2003-02-20 Japan Science And Technology Corporation Sugar-derived gellant for hydrogel formation
US8697758B2 (en) 2008-09-24 2014-04-15 National University Corporation Shizuoka University Urea compound, self-assembly of urea compounds, organogel containing self-assembly, and method for producing organogel

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