JP2000240551A - イオン電流検出装置 - Google Patents

イオン電流検出装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 点火時期制御を行う場合に最も検出しなくて
はならない小中強度のノッキングに対する検出性能を高
める為、イオン電流量に応じてイオン電流に含まれる交
流成分の出力ゲインを変化させたものである。 【解決手段】 点火コイル1の発生電圧によって点火プ
ラグ5に生じた火花放電でシリンダ内の混合気を着火直
後に、点火プラグ5の周囲に発生するイオン電流を検出
するイオン電流検出装置において、点火コイル1を介し
点火プラグ5に印加するイオン電流検出用高電圧を生成
するバイアス電圧生成部26と、高電圧により点火プラ
グの電極間を流れたイオン電流を電圧に変換するイオン
電流−電圧変換部24と、電圧変換効果に基づき、ノッ
クに相当する周波数帯域を抽出して増幅するノック信号
発生器25を備えている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の燃焼に
よって生じる燃焼ガスの電離をイオン電流として検出
し、そのイオン電流より燃焼状態を検出するイオン電流
検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】点火式内燃機関(以下エンジンと記載す
る)では、燃焼室(以下シリンダと記載する)内に導入
する空気と燃料の混合気をピストンで圧縮し、点火プラ
グで点火し燃焼させて動力を取り出している。エンジン
の出力とシリンダ位置に対する点火時期は密接な関係を
有している。一般には点火時期を進めると高出力が得ら
れる。しかし、進角過多の場合ノッキングと呼ばれる異
常燃焼状態が発生する。ノッキングが連続的に発生した
場合にエンジンの破壊を引き起こすことがある。
【0003】シリンダ内で混合気が燃焼すると燃焼ガス
が電離(イオン化)するため、燃焼ガスに電圧を印加す
ると、イオンの作用で燃焼ガス中を電流が流れる。この
電流はイオン電流と呼ばれ、シリンダ内の燃焼状態に応
じて敏感に変化する。従って、燃焼状態はイオン電流の
検出によって判定することができる。
【0004】イオン電流は、点火直後に急激に増加し短
時間でピークに達し、その後緩やかに減少する。ノッキ
ングが発生した場合は、イオン電流に数キロヘルツの振
動成分が重畳する。急激に変動するイオン電流からノッ
キングに起因する振動成分のみを抽出することが不可欠
であり、特開平7ー163869号公報では、イオン電
流−電圧変換部として、イオン電流を検出するイオン電
流検出部とダイオードで構成されされたものが提案され
ている。このイオン電流−電圧変換部は、ダイオードの
順方向電圧の対数特性を用いてイオン電流検出部で検出
されたイオン電流に含まれる交流成分(振動成分)の比
率に比例する電圧を出力する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の様にイオン電流
−電圧変換部の電圧出力特性を、ダイオードの順方向電
圧の対数特性を用いたイオン電流検出部で検出したイオ
ン電流に含まれる交流成分の比率に比例する電圧を出力
するような特性にすると、ノッキングによる振動成分が
イオン電流量に比例した大きさでイオン電流に重畳する
と、イオン電流より良好に振動成分の抽出が行える。
【0006】しかし、ノッキングによる振動成分がイオ
ン電流量に比例した大きさでイオン電流に重畳するの
は、強度的に大きいノッキングの場合のみである。点火
時期制御を行う場合に最も検出しなくてはならない小強
度から中強度のノッキングの場合に、ノッキングによる
振動成分はイオン電流量に比例した大きさでイオン電流
に重畳せず、大イオン電流量領域から小イオン電流量領
域までほぼ同じ大きさの振動成分がイオン電流に重畳す
ることが実験的に明らかになった。
【0007】よって、イオン電流量と振動成分の比率に
比例した大きさで電圧変換を行い振動成分を検出する特
性をイオン電流−電圧変換部に持たせると、イオン電流
量が大きい領域では大振幅の振動でなくては振動成分の
検出は困難である。また、イオン電流量が小さい領域で
は微少振幅の振動をも検出してしまうのでイオン電流の
軽微な変動でもそれを振動成分として検出してしまう。
【0008】このため、イオン電流−電圧変換部にイオ
ン電流量と振動成分の比率に比例する振動成分検出特性
を持たせた場合、点火時期制御を行う場合に最も検出し
なくてはならない小強度および中強度のノッキングに対
する振動成分の検出精度が悪化するという問題点があっ
た。
【0009】本発明は上記のような問題点を解消するた
めになされたものであり、点火時期制御を行う場合に検
出しなくてはならない小強度および中強度のノッキング
による振動成分の検出特性を向上させることができる内
燃機関用のイオン電流検出装置を得ることを目的とす
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係るイ
オン電流検出装置は、点火コイルの発生電圧により点火
プラグに生じた火花放電でシリンダ内の混合気を着火直
後に、前記点火プラグの周囲に発生するイオン電流を検
出するイオン電流検出装置において、前記点火コイルを
介して前記点火プラグに印加するイオン電流検出用高電
圧を生成する電圧生成部と、この高電圧によって前記点
火プラグの電極間を流れるイオン電流を電圧に変換して
イオン信号を出力するイオン電流−電圧変換部と、前記
イオン信号に対して信号処理を行う信号処理部を備え、
前記イオン電流−電圧変換部は、イオン電流量の少ない
領域において、イオン電流の電圧変換比率を小さくす
る。
【0011】請求項2の発明に係るイオン電流検出装置
のイオン電流−電圧変換部は、イオン電流量が所定値以
上である場合、イオン電流の電圧変換比率を一定にす
る。
【0012】請求項3の発明に係るイオン電流検出装置
のイオン電流−電圧変換部は、イオン電流量が所定値以
下である場合、イオン電流の電圧変換比率をイオン電流
量に比例して減少させる。
【0013】請求項4の発明に係るイオン電流検出装置
のイオン電流−電圧変換部は、イオン電流量が大きい領
域ではイオン電流量が大きくなるにつれてイオン電流の
電圧変換比率を減少させ、かつイオン電流量が小さい領
域ではイオン電流量が小さくなるにつれてイオン電流の
電圧変換比率を減少させる。
【0014】請求項5の発明に係るイオン電流検出装置
のイオン電流−電圧変換部は、イオン電流量が第1の所
定値以上の領域ではイオン電流量が大きくなるにつれイ
オン電流の電圧変換比率を減少させ、かつイオン電流量
が第2の所定値以下の領域ではイオン電流量が小さくな
るにつれてイオン電流の電圧変換比率を減少させ、かつ
イオン電流量が第2の所定値以上、第1の所定値以下の
ときは、イオン電流の電圧変換比率を一定にする。
【0015】
【発明の実施の形態】実施の形態1.この発明の実施例
を図1及び2に示す。図1は本実施の形態に係るイオン
電流検出装置の概略的な構成図である。図において、1
はイグニションコイルである。このイグニションコイル
1は一端に直流高電圧VBが印加された一次巻線1aと
二次巻線1bを有している。一次巻線1aに流れる一次
電流はパワートランジスタ2により通電/遮断制御がな
される。一次電流遮断時に二次巻線1bの一端に高電圧
が発生する。この高電圧により二次巻線の一端に接続さ
れた点火プラグ5の電極間に火花放電が生じて図示しな
いエンジンのシリンダ燃焼室内の混合気が着火する。
【0016】二次巻線1bの他端には電流制限用抵抗器
3と二次電流充電経路を構成するダイオード4との並列
回路が接続されている。二次巻線1bの他端はこの並列
回路を介してバイアス電源回路26に接続される。
【0017】バイアス電源回路26はバイアス電源用の
コンデンサ(以下、コンデンサと記載する。)6、コン
デンサ6に並列接続されたバイアス電圧クランプ用のツ
ェナーダイオード(以下、ツェナーダイオードと記載す
る)7、及びツェナーダイオード7のアノードにアノー
ドを接続しカソードをグランドに接続した二次電流充電
経路を構成するダイオード8より構成される。二次電流
はダイオード4、コンデンサ6、ダイオード8を通して
コンデンサ6に電荷を充電する。
【0018】21はイオン電流を検出するカレントミラ
ー回路であり、このカレントミラー回路21はエミッタ
を抵抗を通して後述する積分回路の出力端子に共通接続
すると共にベースを互いに接続したトランジスタT1,
T2、T3と、エミッタをトランジスタT1,T2,T
3のベースに接続し、ベースをトランジスタT1のコレ
クタおよびバイアス電源回路26のコンデンサ6とダイ
オード8の接続点Pに接続し、コレクタをグランドに接
続したトランジスタT4より構成されている。
【0019】トランジスタT2のコレクタは後述するの
イオン電流−電圧変換回路の入力端子に接続され、そし
てトランジスタT3のコレクタは後述する他のイオン電
流−電圧変換回路の入力端子に接続されている。
【0020】27はOPアンプを用いた積分回路であ
る。この積分回路27はツェナーダイオード7とダイオ
ード8との接続点Pの電圧をゼロボルトに帰還制御する
と共に、P点の電位が負になると、その電位を正に反転
して抵抗の共通接続点に印加する。
【0021】22はカレントミラー回路21におけるト
ランジスタT3を流れるイオン電流を電圧変換してイオ
ン信号を出力するイオン電流−電圧変換回路、23はイ
オン電流−電圧変換回路22より出力されたイオン信号
より燃焼/失火を判定するための信号を生成する燃焼/
失火信号発生回路、24はカレントミラー回路21にお
けるトランジスタT2を流れるイオン電流を電圧変換す
るイオン電流−電圧変換回路、25はイオン電流−電圧
変換回路24より出力されたイオン信号よりノックに相
当する振動成分の信号を抽出して増幅して出力するノッ
ク検出信号発生回路、28はECU(エンジン制御ユニ
ット)であり、ECU28は燃焼/失火信号発生回路2
3及びノック検出信号発生回路25からの信号を入力し
てイオン信号認識演算処理し、失火検知及びノッキング
発生度に応じた点火時期制御を図示しないシリンダに対
して行う。
【0022】次に上記構成に基づいて本実施の形態に係
るイオン電流検出装置の動作について説明する。パワー
トランジスタ2は、イグニッションコイル1の一次巻線
1aに流れる一次電流を通電遮断制御して二次電圧を昇
圧し、イグニッションコイル1の二次巻線1bから点火
用の高電圧(数10kV)である二次電圧を発生させ
る。この高電圧により点火プラグ5に火花放電を生じさ
せることで図示しないエンジンのシリンダ内の混合気を
着火して燃焼させる。燃焼が正常であれば、点火直後に
点火プラグ5の周辺およびシリンダ内に燃焼に応じたイ
オンが発生する。
【0023】二次巻線1bに発生した高電圧により点火
プラグ5に放電が起こると、ダイオード4からなる充電
経路を通してバイアス回路26に2次電流が流れる。バ
イアス回路26では、2次電流によりコンデンサ6が充
電され、ツェナーダイオード7の制限電圧によりコンデ
ンサ6にバイアス電圧(数100V程度)が発生する。
【0024】点火プラグ5での放電終了後、コンデンサ
6に充電されたバイアス電圧が点火プラグ5バイアスさ
れ、バイアス電圧によりイオン電流が流れると、接続点
P点の電位は負となってOPアンプの反転入力端子に入
力され正の出力をOPアンプの出力端子よりエミッタ抵
抗に印加する。そしてトランジスタT4がオン動作する
とトランジスタT1とカレントミラー回路を構成するト
ランジスタT2,T3がオン動作する。イオン電流は、
エミッタ抵抗に係る正電位、エミッタ抵抗、トランジス
タT1、コンデンサ6,抵抗3,二次巻線1b、点火プ
ラグ5、グランドのループを通し流れる。
【0025】トランジスタT1はカレントミラー回路2
1の基準電流発生素子である。イオン電流がトランジス
タT1を流れると、トランジスタT1を流れるイオン電
流を基準としてトランジスタT2、T3には同様のイオ
ン電流が流れる。このようにして燃焼/失火検出用のイ
オン電流−電圧変換回路22、ノック検出用のイオン電
流−電圧変換回路24にはイオン電流と同等又は相似な
電流が入力される。各イオン電流−電圧変換回路22、
24は流入したイオン電流を電圧に変換してイオン信号
を生成し、燃焼/失火信号発生回路23,ノック信号発
生回路25に出力する。
【0026】燃焼/失火信号発生回路23では入力され
たイオン信号より燃焼/失火を判定する判定信号を生成
してECU28に入力する。また、ノック信号発生回路
25はイオン信号よりノックに相当する信号を抽出して
増幅し、ECU28に入力する。ECU28は入力した
信号を演算処理し、失火検知及びノッキング発生度に応
じた点火時期制御を行う。
【0027】図2は上記ノック検出用のイオン電流−電
圧変換回路24の一例を示す。トランジスタT1、T2
は図1記載のものと同一であり、トランジスタT2より
イオン電流と同一の電流が流入する。図1では示されな
いが、トランジスタT1,T2のベースとエミッタをそ
れぞれ共通接続し、カレントミラー回路を構成するトラ
ンジスタT5からもイオン電流と同一の電流が流入す
る。
【0028】イオン電流−電圧変換回路24の構成とし
て、トランジスタT2のコレクタを接続する入力端子と
グランド間には抵抗RoとダイオードD1、D2が直列
接続されている。抵抗RoとダイオードD1との接続点
と直流電源VCCとの間に抵抗Raを介して順方向にダイ
オードD3が接続される。
【0029】更に、イオン電流−電圧変換回路24には
トランジスタT6,T7より構成されるカレントミラー
が内蔵され、各トランジスタT6,T7のエミッタは抵
抗を通してグランドに接続され、トランジスタT6のコ
レクタとベースはトランジスタT7のベースに接続され
る。また、トランジスタT6のコレクタはトランジスタ
T5のコレクタを接続する入力端子に接続され、トラン
ジスタT7のコレクタはダイオードD3のアノードに接
続される。
【0030】次に本実施の形態の動作について説明す
る。トランジスタT2を流れるイオン電流Ioはダイオ
ードD1、D2のアノード電圧にRoの電圧降下分を加
えた電圧(Vf)に変換される。イオン電流をIoと
し、D3を流れる電流をIa(アイドル電流と呼ぶ)と
するとVfは下記(1)式で表される。
【0031】 Vf=2*{k*T*ln(Io+Ia)}/e+Ro*Io・・・・(1) k:ボルツマン係数、e:素電荷量、T:絶対温度 したがって、ノッキングによるイオン電流の変動量をΔ
IとするとVfの電圧変動幅Vf”は下記(2)式で表
される。
【0032】 Vf”=[2*{k*T*ln(Io+Ia+ΔI)}/e+Ro*(Io+ ΔI)]−[2*{k*T*ln(Io+Ia)}/e+Ro*Io] Vf”=−2*{k*T*ln(Io+Ia)/(Io+Ia+ΔI)}/e +Ro*ΔI ・・・(2)
【0033】ただし、(Vcc−3VF)/Ra−Io
*Rx/Ry>0のとき、 Ia=(Vcc−3VF)/Ra−Io*Rx/Ry (Vcc−3VF)/Ra−Io*Rx/Ry=<0の
とき Ia=0
【0034】VCC=5V、ΔI=1μA、Ro=750
Ω、Ra=180kΩ、Rx=1.5kΩ、Ry=20
0Ωとした場合のイオン電流量と電圧変動幅Vf”の関
係のグラフを図3に示す。Roの調整によりノッキング
によるイオン電流の変動量ΔIの電圧変換比率が決定す
る。
【0035】カレントミラー回路を構成するトランジス
タT6,T7にイオン電流Ioが流れると、イオン電流
IoはトランジスタT6に流れ、アイドル電流Iaはト
ランジスタT7に流れる。このとき抵抗RxとRyの比
率の調整により、所定のイオン電流量に対応してアイド
ル電流を調整可能にできる。この結果、大イオン電流領
域におけるイオン電流の電圧変換比率を低くできる。
【0036】アイドル電流の調整(大電流化)により従
来のイオン電流−電圧変換部の欠点であった低イオン電
流領域におけるイオン電流の変動量ΔIの電圧変換比率
の増加を低減できる。
【0037】実施の形態2.図4にノック検出用のイオ
ン電流−電圧変換回路24の他の一例を示す。トランジ
スタT1および図示しないT3は図1記載のトランジス
タと同一であり、トランジスタT2よりイオン電流と同
一の電流がイオン電流−電圧変換回路に流入する。
【0038】本実施の形態に係るイオン電流−電圧変換
回路の構成として、コレクタをトランジスタT2のコレ
クタに共通接続し、各ベース同士、各エミッタ同士を接
続したトランジスタT7,T8、コレクタに直流電圧V
CCを印加し、ベースをトランジスタT7,8のベースお
よびコレクタに接続し、エミッタを抵抗Rcおよびトラ
ンジスタT11を通してグランドに接続したトランジス
T10より構成される。
【0039】尚、カレントミラー回路を構成するトラン
ジスタT8,T9のエミッタは抵抗Rb、トランジスタ
T10のエミッタは抵抗Rcを通してトランジスタT1
1のベース、コレクタに共通接続される。この共通接続
点には抵抗Raを通して直流電圧VCCが印加されてい
る。イオン電流は抵抗Rcによる電圧降下にてノック信
号発生回路25に入力される。
【0040】次に上記構成に従って本実施の形態の動作
について説明する。トランジスタT8,T9に流れる電
流をIi(イオン電流と等しい)、トランジスタT10
に流れる電流をIoとする。電流IoはトランジスタT
2より流入されたイオン電流中で実際に電圧変換する分
のイオン電流である。またトランジスタT11はノック
振動の正負両側の振動を後段のノック信号発生回路25
へ伝えるために変換された直流電圧のレベルをシフトす
るために用いる。直流電圧レベルをイオン電流量によら
ず一定に保つ為に十分なアイドル電流を直流電源VBよ
り抵抗Raを介してトランジスタT11のベースに供給
する。この結果、トランジスタT11のベース−エミッ
タ間電圧VBEが発生する。このエミッタ−ベース間電
圧VBEにより、ノック信号発生回路25への入力信号
の直流電圧レベルがシフトする。
【0041】イオン電流Iiおよびアイドル電流が流れ
ることで発生するVoについて以下の(A)式が成立す
る。
【0042】 Vo=Rb*Ii+VBE(T8,T9)+VBE(T11)=Rc*Io+ VBE(T10)+VBE(T11) ・・・・・・(A)
【0043】Rb=Rc=Rとして、式(A)よりIo
とIiの比を求めると、以下の(B)となる。
【0044】 Io/Ii=1+(VBE(T8,T9)−VBE(T10))/Ii*R =1+((kT/q)Ln(Is(T10)*Ii/Is(T8) *Io))/(Ii*R) ・・・・・・(B)
【0045】ここで、Io/Ii=0.9(流入したイ
オン電流Iiの90%の電流がトランジスタT10に流
れる。)とした場合、イオン電流−電圧変換回路24の
正規変換率は以下のようになる。
【0046】R=Rc=Rb=1[kΩ]とし式(B)
に代入すると、 0.9=1+(26[mV]*Ln(0.5*1.1
1)/(Ii*1[kΩ]) 15.3[mV]/(Ii*1[kΩ])=0.1 Ii=15.3[mV]/0.1*1[kΩ]=153
[μA]
【0047】以上のことから流入したイオン電流Iiが
153[μA]のときトランジスタT11に流れる電圧
変換分の電流Ioはイオン電流Iiの90%となる。電
流IoをRcで電圧変換し後段のノック信号発生回路
(25)に伝える。また、Io/Ii=0.6(イオン
電流Iiの60%の電流がトランジスタT10に流れ
る。)とし、同様にIiを求める。 Ii=4.74[mV]/0.4*1[kΩ]=11.
8[μA] となり、イオン電流Iiが11.8[μA]のときトラ
ンジスタT11に流れる電圧変換分の電流Ioはイオン
電流Iiの60%となる。以上のことから低イオン電流
領域におけるイオン電流−電圧変換回路24の正規変換
率を低減することが出来る。
【0048】また上記153[μA]以上の大イオン電
流領域では、イオン電流Iiと同等に近いIoを流せる
ので大イオン電流領域におけるイオン電流−電圧変換回
路24の正規変換率はほぼ一定となる。以上のようにR
b=Rc=1[kΩ]、トランジスタのサイズ比(T
8、T9:T10)を2:1とした場合のイオン電流量
とIoの関係のグラフを図5に示す。
【0049】また、トランジスタのサイズ比は2:1の
ままで、R=Rc=Rb=2[kΩ]とした場合のイオ
ン電流量とIoの関係のグラフを図6に示す。Ioがイ
オン電流の90%となるイオン電流量は76.5[μ
A]、及びIoがイオン電流の60%となるイオン電流
量は同様に計算すると5.9[μA]となる。
【0050】尚、T8、T9にもう一つトランジスタT
x(図示しない)を並列に接続しトランジスタ比を3:
1にし、Rb=Rc=1[kΩ]した場合のイオン電流
量とIoの関係のグラフを図7に示す。Ioがイオン電
流Iiの90%となるイオン電流量は258[μA]、
Ioがイオン電流Iiの60%となるイオン電流量は同
様に計算すると25.5[μA]となる。
【0051】以上の様に、イオン電流−電圧変換比率を
低減する電流領域及び低減度はトランジスタサイズ比及
び抵抗Rc、Rbの値で設定することができる。この結
果、大イオン電流領域におけるイオン電流Iiの変換率
をほぼ一定に保ちつつ、低イオン電流領域のイオン電流
Iiの変換率を低くすることができる。
【0052】実施の形態3.図8にノック検出用のイオ
ン電流−電圧変換回路24の他の一例を示す。尚、図
中、図4と同一符号は同一または想到部分を示す。本実
施の形態では、トランジスタT10のコレクタをカレン
トミラー回路を構成するトランジスタT8,T9のコレ
クタに接続し、エミッタを抵抗Rcを通してグランドに
接続する。
【0053】トランジスタT10を通して電流Ioが抵
抗RCに流れると抵抗RCの両端に電圧降下が発生し電
圧変換される。この電圧変換された電圧は出力が抵抗R
cの両端にトランジスタT12のベースとコレクタが接
続されトランジスタT11のベース−エミッタ間電圧V
BEでレベルシフトされてノック信号発生回路25に入
力される。トランジスタT8,T9のエミッタも抵抗R
bを通してグランドに共通接続される。
【0054】トランジスタT8,T9のコレクタにはト
ランジスタT12のベース、コレクタが接続され、その
エミッタは直流電源電圧Vdcに対して並列接続された
トランジスタT13、抵抗Rd、Reの直列回路におけ
る抵抗Rd、Reの接続点に接続され、抵抗Reによる
電圧降下分VdeをトランジスタT12のエミッタにか
ける。
【0055】次に、本実施の形態の動作について説明す
る。実施の形態2と同様に低イオン電流領域のIoとI
iの比は前記の式(B)にて求められる。高イオン電流
領域のイオン電流IiとIoの関係は、抵抗RdとRe
の接続点電位をVde、直流電源電圧をVdc、トラン
ジスタT10に流れる電流をIo、トランジスタT8,
T9に流れる電流をIi、トランジスタT12に流れる
電流をId、トランジスタT13に流れる電流をIcと
すると、下記の式が成立する。
【0056】Vo=Io*Rc+VBE(T10)=I
i*Rb+VBE(T8,T9)=Vde+VBE(T
12)とする。
【0057】ここで、Vdc=1.25[V]、VBE
(T8,T9)=VBE(T10)=VBE(T12)
=VBE(T13)=VF=0.7[V]、Rd=40
0[Ω]、Re=700[Ω]、Rb=Rc=4[k
Ω]とすると、上式は以下の(10)式となる。
【0058】 Vo=I*4[kΩ]+VF=Vde+VF・・・・・・・・(10)
【0059】Ic=(Vdc−VBE(T13)−Vd
e)/Rdとなるが上記条件より以下の(11)式とな
る。
【0060】 Ic=(Vdc−VF−Vde)/4000[Ω]・・・・(11)
【0061】Vde=(Ic+Id)*Reとなるが上
記条件より以下の(12)式となる。
【0062】 Vde=(Ic+Id)*700[Ω]・・・・・・・・・(12)
【0063】次に、イオン電流IiとIoの関係を求め
ると、Ii=Io=Iとして、 Ii=2*I+Id・・・・・・・・・・・・・・・・(13)
【0064】次に上記(10)〜(12)式よりIdを
求める。先ず(10),(12)よりVdeを以下の
(14)式のように求める。 Vdc=700Ic−700Id=4000I・・・・・・・(14)
【0065】次に(11),(12)式よりIcを求め
る。 Ic=(Vdc−VF−700Ic−700Id)/400 Ic=(0.55/400)−(700/400)Ic−(700/400) Id Ic=(0.55/1100)−(700/1100)Id・・(15)
【0066】ここで(14),(15)式よりIdを求
める。 (700/1100)(0.55−700Id)+70
0Id=4000I ∴ Id=15.7I−1375[μA]となる。
【0067】Id=0とすると、I=87.58[μ
A]である。上記(13)式より、Ii=2I=17
5.2[μA]となる。
【0068】上記のことから175.2[μA]以上の
イオン電流がトランジスタT2よりイオン電流−電圧変
換回路24に流入するとトランジスタT12にIdが流
れ、Iiに対するIoの比率が低下する。
【0069】次にイオン電流Iiが1000[μA]程
度の大イオン電流領域におけるノッキング振動に対する
電圧変換比率について記載する。流入されたイオン電流
Ii中で電圧変換される分のイオン電流をIo、即ち、
Ioをイオン電流−電圧変換器24への入力電流Iin
とする。Id=15.7I−1375[μA]とIi=
2*I+IdよりIiは以下の式より表せる。
【0070】 Ii=2×I+15.7×I−1375[μA] =17.7I−1375[μA]
【0071】Ii=1000[μA]とすると、Iin
(=I)は17.7I=2375[μA]のい関係から
134.2[μA]となる。このときIdは731.6
[μA]となる。
【0072】以上のことから発生した1000[μA]
のイオン電流に対して13.42%のイオン電流が電圧
変換されるため、大イオン電流領域の電流−電圧変換比
率を低下させることが可能である。また、定数設定によ
り電流−電圧変換比率を低下させる電流領域を設定する
ことが可能である。
【0073】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、点火コイルの
発生電圧により点火プラグに生じた火花放電でシリンダ
内の混合気を着火直後に、前記点火プラグの周囲に発生
するイオン電流を検出するイオン電流検出装置におい
て、前記点火コイルを介して前記点火プラグに印加する
イオン電流検出用高電圧を生成する電圧生成部と、この
高電圧によって前記点火プラグの電極間を流れるイオン
電流を電圧に変換してイオン信号を出力するイオン電流
−電圧変換部と、前記イオン信号に対して信号処理を行
う信号処理部を備え、前記イオン電流−電圧変換部は、
イオン電流量の少ない領域ではイオン電流の電圧変換比
率を小さくすることで、イオン電流量が少ない領域で微
少振幅の振動を検出せずS/Nを高めることができると
いう効果がある。
【0074】請求項2の発明によれば、イオン電流−電
圧変換部はイオン電流量が所定値以上である場合、イオ
ン電流の電圧変換比率を一定にするようにしたので、イ
オン電流量の多い領域でのノック振動を良好に検出でき
るという効果がある。
【0075】請求項3の発明によれば、イオン電流−電
圧変換部は、イオン電流量が所定値以下である場合、イ
オン電流の電圧変換比率をイオン電流量に比例して減少
させることで、微少イオン電流区間でのイオン電流への
ノイズ重畳によるS/N低下を防止することができ、且
つ、小イオン電流区間でもある程度のノック振動を出力
できるという効果がある。
【0076】請求項4の発明によれば、イオン電流−電
圧変換部は、イオン電流量が大きい領域ではイオン電流
量が大きくなるにつれてイオン電流の電圧変換比率を減
少させ、かつイオン電流量が小さい領域ではイオン電流
量が小さくなるにつれてイオン電流の電圧変換比率を減
少させることで、イオン電流のピーク前後の比較的大き
なイオン電流の変化によるS/N低下を防止し、かつ微
少イオン電流区間でのイオン電流へのノイズ重畳による
S/N低下を防止することができるという効果がある。
【0077】請求項5の発明によれば、イオン電流−電
圧変換部は、イオン電流量が第1の所定値以上の領域で
はイオン電流量が大きくなるにつれてイオン電流の電圧
変換比率を減少させ、かつイオン電流量が第2の所定値
以下の領域ではイオン電流量が小さくなるにつれイオン
電流の電圧変換比率を減少させ、かつイオン電流量が第
2の所定値以上、第1の所定値以下のときは、イオン電
流の電圧変換比率を一定にすることで、イオン電流への
ノッキング振動の重畳状況に対応した電圧変換比率を設
定することが可能となり、ノッキング検出のS/N向上
が可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係るイオン電流検出装置の構成図
である。
【図2】 この発明の実施の形態1に係るイオン電流−
電圧変換回路の構成図である。
【図3】 本実施の形態に係るイオン電流−電圧変換回
路のイオン電流と変換電圧vf”との関係を示すイオン
電流−vf”特性図である。
【図4】 この発明の実施の形態2に係るイオン電流−
電圧変換回路の構成図である。
【図5】 イオン電流とこのイオン電流の電圧変換比率
との関係を示した図である。
【図6】 イオン電流とこのイオン電流の電圧変換比率
との関係を示した図である。
【図7】 イオン電流とこのイオン電流の電圧変換比率
との関係を示した図である。
【図8】 この発明の実施の形態3に係るイオン電流−
電圧変換回路の構成図である。
【符号の説明】
1 イグニッションコイル、5 点火プラグ、26 バ
イアス電源回路、21カレントミラー回路、22,24
イオン電流−電圧変換回路。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小岩 満 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 大橋 豊 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 Fターム(参考) 3G019 CD06 GA14 LA05 3G084 DA27 EA08 EB22 FA00 FA25

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 点火コイルの発生電圧により点火プラグ
    に生じた火花放電でシリンダ内の混合気を着火直後に、
    前記点火プラグの周囲に発生するイオン電流を検出する
    イオン電流検出装置において、前記点火コイルを介して
    前記点火プラグに印加するイオン電流検出用高電圧を生
    成する電圧生成部と、この高電圧によって前記点火プラ
    グの電極間を流れるイオン電流を電圧に変換してイオン
    信号を出力するイオン電流−電圧変換部と、前記イオン
    信号に対して信号処理を行う信号処理部を備え、前記イ
    オン電流−電圧変換部は、イオン電流量の少ない領域に
    おいて、イオン電流の電圧変換比率を小さくすることを
    特徴とするイオン電流検出装置。
  2. 【請求項2】 イオン電流−電圧変換部は、イオン電流
    量が所定値以上である場合、イオン電流の電圧変換比率
    を一定にすることを特徴とする請求項1に記載のイオン
    電流検出装置。
  3. 【請求項3】 イオン電流−電圧変換部は、イオン電流
    量が所定値以下である場合、イオン電流の電圧変換比率
    をイオン電流量に比例して減少させることを特徴とする
    請求項1に記載のイオン電流検出装置。
  4. 【請求項4】 イオン電流−電圧変換部は、イオン電流
    量が大きい領域ではイオン電流量が大きくなるにつれて
    イオン電流の電圧変換比率を減少させ、かつイオン電流
    量が小さい領域ではイオン電流量が小さくなるにつれて
    イオン電流の電圧変化率を減少させることを特徴とする
    請求項1に記載のイオン電流検出装置。
  5. 【請求項5】 イオン電流−電圧変換部は、イオン電流
    量が第1の所定値以上の領域ではイオン電流量が大きく
    なるにつれイオン電流の電圧変換比率を減少させ、かつ
    イオン電流量が第2の所定値以下の領域ではイオン電流
    量が小さくなるにつれてイオン電流の電圧変換比率を減
    少させ、かつイオン電流量が第2の所定値以上、第1の
    所定値以下のときは、イオン電流の電圧変換比率を一定
    にすることを特徴とする請求項4に記載のイオン電流検
    出装置。
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