JP2000228029A - 光記録媒体 - Google Patents

光記録媒体

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JP2000228029A JP11027617A JP2761799A JP2000228029A JP 2000228029 A JP2000228029 A JP 2000228029A JP 11027617 A JP11027617 A JP 11027617A JP 2761799 A JP2761799 A JP 2761799A JP 2000228029 A JP2000228029 A JP 2000228029A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 使用前に初期化工程を行う必要がなく安価で
高性能な相変化型の光記録媒体を提供する。 【解決手段】 光照射により多結晶状態と非晶質状態と
の間を可逆的に変化する相変化記録層を備えた光記録媒
体であって、前記相変化記録層が前記多結晶状態にある
時、その多結晶を構成する結晶粒の粒径に対する個数の
分布が少なくとも2つの異なる粒径において極大値を有
するものとすれば、結晶化が極めて迅速且つ確実に生ず
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光記録媒体に関
し、より詳しくは、光ビームを照射して情報の記録・再
生を行う相変化型の光記録層を有する光記録媒体であっ
て、記録層の堆積後に結晶化させるための初期結晶化工
程が不要な光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】光ビームを照射して情報の記録・再生を
行う相変化型の光記録媒体は、大容量性、高速アクセス
性、媒体可搬性を兼備する他、競合する光磁気媒体に比
較して、再生原理がCDと同じ反射率変化形なのでCD
互換ドライブが安価に提供出来る、信号品質が優れてい
るので高密度化し易い、1ビームオーバライトが容易な
ので記録データ転送速度が速い、等の利点を有してい
る。
【0003】以下では、光記録媒体の一例として光ディ
スクを例に挙げつつ説明する。相変化記録方式において
は、記録層に対して照射するレーザパワーレベルの違い
に応じて、形成される膜の微細構造を変化させる。すな
わち、一般に十分高いパワーレベル照射(レーザパワー
をPとしたとき、P>Pw0)により非晶質部を形成
し、中間パワーレベル(Pw0>P>Pe0)によって
結晶化を生じさせる。
【0004】P>Pw0のパワーレペル照射により記録
層をその融点以上に加熱し、その後の冷却の際の「結晶
化保持時間」を「結晶化時間」よりも短く設定すること
によって、溶融した不規則な原子配列状態を再配列させ
ることなく、そのまま冷却して非晶質状態に固定するこ
とができる。ここで、「結晶化保持時間」とは、記録層
の温度が融点未満で結晶化温度以上の温度帯に保持され
る時間をいい、「結晶化時間」とは、記録層が結晶化す
るのに必要な時間をいう。
【0005】一方、Pw0>P>Pe0のパワーレベル
照射においては、記録層を融点未満で結晶化温度以上に
加熱し、「結晶化保持時間」を「結晶化時間」よりも長
く設定することにより、原子の再配列を起こして結晶化
させる。
【0006】このようにして形成した非晶質マークと、
その周囲の結晶部の光反射率の違い、および/または反
射された光の位相差を利用して、マークの存在を検知す
る。
【0007】以上のように照射パワーの調整のみによっ
て、記録層を結晶状態、非晶質状態のいずれかの状態に
変化させることが出来るので、光ビーム変調オーバライ
トが可能である。すなわち、相変化型光記録媒体の一つ
の特徴は、ダイレクトオーバーライトが可能なことであ
り、記録トラックの初期状態が結晶・非晶質のいずれで
あるかにかかわらず、高パワーレーザ照射部分は非晶質
に、中間パワー照射部は結晶にできる。
【0008】記録媒体の代表的な膜構成としては、基板
上に、誘電体層、記録層、誘電体層、金属層を順次積層
した構成を挙げることができる。そして、記録層の材料
としては、例えば、GeSbTe、InSbTeなどの
合金膜、またはそれらにAg、Cr、Vなどの添加元素
を加えた材料を挙げることができる。これらの膜は、通
常はスパッタ成膜法により成膜される。スパッタ成膜法
は、真空成膜法の一種で、大面積基板に均一な膜厚の膜
を付着させる方法として適している。
【0009】さて、スパッタ成膜法では、付着される材
料の平板をターゲット電極とし、真空容器中に保持す
る。この真空容器中に希ガスであるAr(アルゴン)を
大略O.01Pa〜10Pa程度の圧力で導入し、この
ターゲット電極に直流または高周波の電力を印加するこ
とでグロー放電を生じさせる。すると、電極付近の陰極
降下電圧によって加速されたガス粒子により、該ターゲ
ットの表面からターゲット材料原子あるいは同原子の集
合体が跳ね飛ばされ、対向または隣接して配置された基
板に高遠で飛来する。このように飛来する材料原子また
は分子はスパッタ粒子と呼ばれる。
【0010】スパッタ粒子は、一般に数eVのエネルギ
ーを持つといわれている。1eVは104Kに相当し、
室温の熱エネルギーと比較して非常に高いエネルギーを
有する。このように高いエネルギーをもった高速の粒子
は、基板に到着すると結晶化時間よりもはるかに短い時
間で冷却される。そのため、as−depo.(as−
deposited:堆積したままの状態)の記録膜は
非晶質となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このようにし
て製造した従来の光記録媒体は、実際に記録媒体として
使用する前に、ディスクの記録に供する記録層金体をあ
らかじめ低線速の連続レーザ照射によって結晶化してお
く必要がある。この工程は、「初期化工程」または「初
期化」と呼ばれる。
【0012】この工程が必要な理由は、次のとおりであ
る。すなわち、as−depo.非晶質の膜を結晶化す
るためには、その後の記録によって非晶質化した部分を
結晶化するのに比べて、結晶化温度領域により長い時間
の間保つ必要がある。従って、高密度・高転送速度を目
的に設定された使用時の線速においては、as−dep
o.非晶質膜を一回の消去レベルのレーザ照射では結晶
化できない。ユーザーが使用するドライブすなわち駆動
装置を用いてas−depo.非晶質部を結晶化するた
めには、低線速でレーザ照射するか、同一トラックを複
数回レーザ照射する必要が生じる。
【0013】しかし、新しい媒体の使用に先立って、そ
の都度このような初期結晶化をユーザーに強いるのは利
便性の点で好ましくない。そこで、媒体の製造者があら
かじめ結晶化(初期化)を行うのが通常である。すなわ
ち、初期結晶化は媒体の製造過程の一部として行われ、
記録膜が結晶化した状態で販売される。
【0014】初期結晶化工程では、作製した記録媒体に
レーザビームで比較的遅い線速でディスクの記録部全体
を走査することで結晶化が行われる。ここで使用される
レーザは、記録用レーザあるいは読み出し用レーザとは
異なり、ビームスポットをきわめて小さく絞る必要はな
い反面、出力1W程度と比較的高パワーが必要とされ、
長円形状のビーム形状にして一度に複数トラックを走査
するなどの方法によりできるだけ短時間ですむように工
夫されている。それでも初期化工程は媒体の全面を走査
する必要上ディスク一枚あたり数分必要である。これ
は、成膜工程のタクトタイム(たとえば10秒/枚)に
比べて非常に長く不経済である。また、初期化工程に使
用される設備投資は製品価格に転嫁され商品価格が上昇
するという問題もあった。
【0015】本発明は、かかる課題の認識に基づいてな
されたものであり、as−depo.状態から直ちに使
用できる記録膜を提供することによって相変化光記録媒
体の製造に必要な設備投資を低減し、それによって低価
格の相変化記録媒体を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明によれば、消去レベルの光照射を行った
とき、記録膜が複数の結晶粒の集合体である多結晶とな
り、該結晶粒の粒径分布が複数の極大を持つ光記録媒体
とすることを特徴とする。
【0017】以下、本発明の実施に必要な手段とその作
用を詳述する。前述したように、従来はas−dep
o.の光記録膜を結晶化するために必要とされるレーザ
パワーと、溶融非晶質化(すなわち記録)によって形成
された非晶質部を結晶化するために必要なレーザパワー
及び結晶化時間とは異なっていた。この理由は、as−
depo.の非晶質状態とその後の光記録により形成し
た非晶質状態とでは、微細構造に相違がある為である。
すなわち、スパッタ成膜時の膜付着過程における冷却速
度がきわめて速く(1012K/秒と見積もられる)、記
録時の非晶質部形成過程の冷却速度(1010〜1011
/秒とみられる)よりも一桁から二桁速い。このため
に、as−depo.状態の記録層においては、記録後
の非晶質部と比較してより無秩序性の高い、換言すれば
短範囲規則性が小さい非晶質が形成されていると考えら
れる。
【0018】これに対して、本発明者は、理論的な検討
と試作実験とを繰り返すことにより、初期結晶化工程を
経ることなく直ちに記録(as−depo.記録)が可
能な記録層を得た。そして、その微細構造を詳細に調べ
た結果、結晶化後の結晶粒の分布において、従来とは異
なる独特の特徴を有することを知得するに至った。すな
わち、本発明の光記録媒体においては、消去レベルのレ
ーザビームを照射して形成される結晶状態は、いずれも
異なる結晶粒径の微結晶の集合体であり、該微結晶の粒
径分布が複数の極大を持つことが判明した。
【0019】具体的には、本発明の光記録媒体は、光照
射により結晶状態と非晶質状態との間を可逆的に変化す
る相変化記録層を備えた光記録媒体であって、前記相変
化記録層が前記結晶状態にある時、その記録層を構成す
る結晶粒の粒径に対する個数の分布が少なくとも2つの
異なる粒径において極大値を有することを特徴とする。
【0020】すなわち、記録層は多結晶体であり、その
多結晶体は、大きな結晶粒と小さな結晶粒にそれぞれピ
ークをもった粒径分布を有する。
【0021】また、前記少なくとも2つの異なる粒径の
うちの小なる粒径における極大値を中心とした分布に属
する結晶粒が前記相変化記録層に占める割合は、面積比
で30%以上80%以下の範囲であることが望ましい。
【0022】また、前記少なくとも2つの異なる粒径の
うちの小なる粒径は、2nm〜15nmであり、前記少
なくとも2つの異なる粒径のうちの大なる粒径は、15
nm〜200nmであることが望ましい。
【0023】as−depo.記録を実現するために
は、ディスクを記録/再生装置にセットして実使用時と
同様の高線速で動作させ、消去パワーレベルのレーザビ
ーム照射をしたときに一回の照射で十分に結晶化し、デ
ィスク反射率が完全に結晶化レベルになることが必要と
される。ここでいう高線速とは、具体的には例えば6m
/秒以上の値をさす。ピックアップ光が波長630〜6
60nm、NA0.55〜0.65程度の場合、記録時
のレーザパワーは、消去レベルPeと記録レベルPw、
そして読み出しレベルPrの3値とされ、具体的にはP
e=3〜6mW、Pw=10〜15mW、Pr=1.0
mW程度のパワーが選択される。
【0024】記録を行うと、Peレベルの照射を受けた
部分は結晶化し、Pwレベルの照射を受けた部分は非晶
質化する。レーザビームの照射を受けない部分(対象ト
ラック以外の部分)は、as−depo.の非晶質のま
まである。as−depo.記録についていえば、初回
記録時の結晶化領域(すなわちマーク間の領域)からの
信号レベルと、2回以上オーバーライトしたときの結晶
化領域からの信号レベルに違いがないことが重要であ
る。この様子は、例えば、再生波形をオシロ・スコープ
で観察することにより確認できる。
【0025】as−depo.記録に適した記録膜を使
用する上では、ディスクを「Low−to−High」
すなわち結晶部からの反射率が非晶質部からの反射率よ
りも低くなるように設計することが望ましい。これは、
トラッキングを容易にするとともに、あらかじめ基板に
埋め込まれた凹凸で構成されるヘッダ部の情報読み取り
を容易にするためである。Low−to−Highで
は、消去部(結晶質)からの再生信号レベルは記録マー
ク部(非晶質)からのものよりも低い。理想的には1回
のみの記録によって、Peレベルの照射部分を完全に結
晶化し、Pwレベルの照射部分は完全に非晶質となるこ
とが望ましい。
【0026】すなわちLow−to−Highにおいて
は、Peレベル照射部からの信号が十分に「Low」す
なわち下がることが望ましい。しかし、従来の光記録媒
体の場合は、1回のPe照射では再生信号レベルが十分
には下がらず、2回以上オーバーライトすることで徐々
に下がる傾向が認められた。これに対して、本発明の記
録媒体の場合は、上述したような信号で変調したレーザ
ビームを1回照射しただけで、Pe照射部からの信号レ
ベルが十分低下することが確認された。すなわち、本発
明の記録媒体の場合には、2回以上繰り返してオーバー
ライトしても、Pe照射部からの信号レベルに変化がな
く、一回目の照射のみで十分に結晶化したことが分かっ
た。一方、本発明の記録媒体においては、Pw照射部か
らの信号レベルはas−depo.領域からのものと同
一であった。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明の光記録媒体は、as−d
epo.状態から1回だけ記録した場合でも、マーク間
(消去レベルPe照射部)において十分に結晶化が生
じ、粒径が比較的大きい結晶粒の周りを粒径が比較的小
さい多数の結晶粒が取り囲んだような微細構造を有す
る。このような微細構造は、例えば、TEM(Transmis
sion Electron Microscope:透過電子顕微鏡)により観
察し、特定することができる。
【0028】すなわち、TEM観察により得られるTE
M像においては、記録マーク部(非晶質部)はコントラ
ストに乏しい一様な領域として観察される。一方、マー
ク間のPe照射部(結晶部)は、その結晶化の度合いに
応じて結晶粒が観察され、十分に結晶化した場合には、
結晶方位により異なるコントラストを持つ微結晶の集合
体として観察される。この傾向は一般的にどのディスク
の記録膜でも同様である。
【0029】図1は、本発明の光ディスクのマーク間部
分の記録層のTEM像の一例を表す概略図である。ここ
で、同図は、本発明の光ディスクにおいて、記録層の堆
積後に一回だけPeレベルのレーザビームを照射した後
の状態を表す。同図から分かるように、本発明の記録層
においては、マーク間のすべての部分において結晶粒が
観察され、完全に結晶化して多結晶体となっている。ま
た、その結晶粒径に着目すると、粒径が比較的大きい結
晶粒の周りを粒径が比較的小さい多数の結晶粒が取り囲
んで埋め尽くしている微細構造を有することが分かる。
【0030】これに対して、従来の光ディスクの場合に
ついて説明すると、as−depo.状態でPe照射し
た部分は、一様なコントラストで結晶粒が判然とせず、
依然として非晶質あるいはTEMの分解能以下(約2n
m以下)のきわめて小さい微結晶の集合体であった。こ
の部分の光反射率も、結晶状態の値とは異なることか
ら、光学的にも非晶質であるといえる。さらに、この部
分の電子線回折パターンはほぼハロー状であり、この点
からも非晶質状態であるといえる。
【0031】一方、本発明の光ディスクに対して、10
回のオーバーライトを行い、マーク間部分の記録層をT
EM観察した結果、図1とほぼ同様のTEM像が得られ
た。つまり、本発明の光ディスクにおいては、記録層の
マーク間の微細構造はas−depo.状態からの一回
目の消去レベルのレーザ照射により完全に結晶化して決
定され、その後のオーバーライトにより変化しないこと
が分かった。
【0032】ここで、TEM観察のための試料の作成方
法について説明すると以下の如くである。すなわち、ま
ず、記録媒体に上述した方法により記録を行った後、金
属反射膜と基板とを除去し、金属メッシュ上にとって観
察サンプルとする。この際の基板の除去は、有機溶媒を
用いて行うことができる。しかし、試料作成の際に熱的
な影響が加わることを避ける必要がある。このため、イ
オンミリング法などを用いる場合にも、試料が150℃
以上に加熱されないように十分に注意する必要がある。
【0033】さて、図1に例示したようなTEM像を画
像処理により解析して、粒径分布を定量的に求めること
ができる。
【0034】図2は、本発明の光ディスクのマーク間部
分の結晶粒径の分布を表すグラフ図である。ここで、同
図は、図1に例示したようなTEM像において符号Aで
表したような粒径20nm以上の大きい結晶粒の出現頻
度分布をプロットしたものである。なお、この分布は、
TEM像において無作為に抽出した200nm角の領域
において得られたものである。また、ここで「粒径」と
は、一個の結晶粒に注目した場合その最長径と最短径と
を測定し、その平均と定義する。また、本願明細書にお
いて示すデータにおいては、TEMの分解下限(2n
m)以下の極めて微細な結晶粒は、計測対象から除外し
た。
【0035】図2の(a)は、as−depo.状態か
ら1回だけ記録した場合を表し、(b)は、10回のオ
ーバーライトを行った場合を表す。同図2から、大きい
結晶粒は、概ね25〜80nmの範囲に分布しているこ
とが分かる。また、(b)で表したように10回のオー
バーライトを繰り返した後も、この結晶粒径の分布には
実質的な差異が認められない。大きい結晶粒に属する結
晶粒の径の平均は、(a)では50.5 nm、(b)
では60.8 nmであった。以上の結果から、本発明
の光記録媒体は、as−depo.状態から1回記録す
るだけで十分に結晶化が進行したことが分かる。
【0036】ここで、図1において符号Aで表した大き
い結晶粒の粒径は、記録膜の組成や製造方法などの諸条
件に依存する傾向がある。しかし、本発明者が種々の相
変化記録媒体について比較検討をした結果によれば、大
きい結晶粒の粒径は、概ね15〜200nmの範囲にあ
ることが判明した。
【0037】一方、図1をみると、符号Aで表した大き
い結晶粒の周りに多数の微細な結晶粒があることが分か
る。この微細な結晶粒についても、同様に粒径の分布を
測定した。
【0038】図3は、微細な結晶粒の粒径分布を表すグ
ラフ図である。ここで、同図は、図1に例示したような
TEM像において符号Bで表したような粒径20nm以
下の小さい結晶粒の出現頻度分布をプロットしたもので
ある。なお、この分布は、as−depo.状態から1
回だけ記録した試料のTEM像を観察し、無作為に抽出
した90nm角の領域において観察された約300個の
結晶粒の出現頻度分布の例をグラフ化したものである。
【0039】図3から、小さい結晶粒の粒径は、概ね2
〜15nmの範囲に分布していることが分かる。分布の
極大値に対応する粒径は約5nmであった。また、10
回のオーバーライトを繰り返した後においても、この分
布は実質的に変化しなかった。
【0040】これに対して、従来の光ディスクの場合を
説明すると以下の如くである。すなわち、従来の光ディ
スクの場合には、1回のPeレベルのレーザ照射では結
晶化せず、結晶粒は観察されないが、オーバーライトを
繰り返すと結晶化が進行し、Pe照射部において比較的
大きい結晶粒が観察されるようになる。その粒径分布を
画像処理により解析すると、記録膜の組成に応じて粒径
は異なるが、所定の平均値を中心にある範囲に分布して
いる。たとえばGe2Sb2Te5の場合は、粒径80〜
120nmの範囲に分布しており、結晶化部はこのよう
なサイズの結晶粒に埋め尽くされている。すなわち、記
録層は、大きい結晶粒により埋め尽くされ、粒径分布は
単一の極大をもつ。
【0041】従来の光ディスクを、初期化装置によって
初期化した場合も同様である。すなわち、80〜120
nm程度の粒径をもつ比較的大きい結晶粒により埋め尽
くされることが分かった。より詳しく観察すると、これ
らの結晶粒に挟まれて微細結晶が観察される場合がある
が、それらの占める面積は小さく、通常10〜20%の
範囲であった。
【0042】以上、従来の光ディスクと比較しつつ説明
したように、本発明の光ディスクの特徴は、消去レベル
のレーザビームを1回だけ照射しただけで十分に結晶化
がおこり、その粒径分布が大きい結晶粒と微細な結晶粒
の2つの極大値を有することである。
【0043】本発明の記録膜が有する独特の微細構造
は、次のようなメカニズムにより表れると考えられる。
すなわち、一般に、結晶化は結晶核生成とその粒成長の
二段階でおこることが良く知られている。そして、本発
明の光ディスクの記録層においては、as−depo.
状態でも、結晶化の初期核となり得る多数のきわめて小
さい微細規則構造がすでに存在していることが推測され
る。このような微細規則構造は、例えば、2〜10nm
程度の間隔で存在していることが推測される。
【0044】レーザビームの照射によって結晶化温度の
近傍まで昇温されると、これらの微細規則構造が成長
し、それぞれの微細規則構造を中心にして5nm程度の
小さい結晶粒が生成される。この状態において記録層の
殆どの部分は、このような小さい結晶粒により埋め尽く
される。これらの結晶粒は、図1において符号Bで示し
たような微細な結晶粒を構成する。この結晶粒径は光学
的に重要な値であり、これ以下では複素屈折率が非晶質
のそれに近づく。2nm以上の粒径を持つことで複素屈
折率が結晶と等しくなる。また、結晶粒が小さいので、
先述の微細構造から5nm程度に成長するために必要な
時間が短くて済むことになる。従って、高線速でもas
−depo.のディスクに消去レベルのレーザー照射を
するだけで、光学的に結晶化レベルの状態にすることが
できる。
【0045】一方、このような初期核生成過程の後に
は、結晶粒成長過程が生ずるが、本発明の光記録媒体の
場合には、レーザビーム照射の初期の段階において既に
多数の結晶核が生成するために、殆どの結晶核は、これ
以上大きく成長することができず、何らかの要因で突発
的に成長した少数の結晶粒のみが、図1に符号Aで示し
たような大きい結晶粒となる。なお、このような大きい
粒径に属する結晶は、光学的には当然ながら結晶の屈折
率をもつ。
【0046】本発明の記録膜は、従来の初期化装置によ
って初期化した場合も同様の微細構造を示す。すなわ
ち、2〜15nm程度の微細結晶粒に取り囲まれて25
〜80nmの粗大な結晶粒が存在する状態となる。この
場合にも、多くの結晶粒の粒径が微細であることから、
非晶質から結晶化する際の結晶化時間が短くて済む。す
なわち、より高線速に適した記録膜であり、消去率の向
上に効果がある。
【0047】また、本発明の光記録媒体は、TEM像に
おいて、小さい粒径に属する結晶粒が全体に対する面積
比で30%以上80%以下であることを特徴とする。さ
らに、本発明者の検討の結果によれば、この面積比が5
0%以上70%以下の場合により安定して確実な結晶化
を実現できることが分かった。すなわち、結晶化してこ
のような粒径分布を示す場合に、結晶核生成と結晶成長
とのバランスが最も良好で、高い消去率が実現できると
共にas−depo.記録にも適した記録膜となる。
【0048】本発明による独特の構成を有する光記録媒
体を製造する方法としては、例えば、以下に説明する方
法を用いることができる。
【0049】まず、第1の方法としては、記録媒体の堆
積工程において、スパッタ雰囲気中にArよりも原子量
の大きいガス種を混合させる方法を挙げることができ
る。このようなガス種としては、例えば、クリプトン
(Kr)やキセノン(Xe)を挙げることができる。す
なわち、本発明者の検討によれば、as−depo.の
状態で好適なランダムネスを持った非晶質を制御性よく
成膜する方法として、記録層の成膜時にクリプトン(K
r)及び/またはキセノン(Xe)を用いることが好適
であることが見出された。
【0050】この理由を検討した結果、次のように説明
できることが判明した。すなわち、スパッタ法による成
膜に際しては、ターゲットからたたき出されたスパッタ
粒子は基板に到達する過程で雰囲気ガス粒子に衝突す
る。その際に失う運動エネルギーは衝突の相手の質量に
依存する。剛体衝突モデルで近似すると、入射粒子と衝
突する相手ガスの粒子が同一の質量を持ち、衝突する相
手が静止していると仮定すると、正面衝突ならば入射粒
子の運動エネルギーは100%相手の粒子に移動する。
正面衝突以外では衝突パラメータ(インパクトパラメー
タ)に応じた割合で運動エネルギーが移動するが、全衝
突パラメータに関して積分すると、同一種類の粒子同士
の衝突では一回あたり、平均して半分の運動エネルギー
が相手に移動する。剛体衝突モデルを仮定すると、衝突
する粒子の質量をm1、衝突される粒子の質量をm2 と
して、失うエネルギーの割合は、2m1 m2 /(m1 +
m2)2表される。
【0051】以下、光記録膜としてGeSbTeを例に
とる。Ge、Sb、Te原子の優勢な質量数はそれぞ
れ、73、122、123である。たとえば、SbがA
r(質量数40)に衝突する場合、持っていたエネルギ
ーの37%しか移動しないのに対し、Xeに衝突する場
合は50.0%が移動する。一個の粒子が複数回の衝突
を経る場合は、特にガス種による違いが顕著となる。一
般に、衝突する二個の粒子同士の質量数が近い程、効率
良く運動エネルギーを失う。このためスパッタ粒子がK
r、Xeに衝突する過程を経ると、十分にそのエネルギ
ーが低下し、すなわち温度が低くなって基板に到達する
ことになる。そのため、基板上において室温まで持ち来
される過程での冷却速度が小さくなり、そのために膜の
ランダムネスが小さくなる。その結果として、光記録後
の非晶質部に近いランダムネスを持った非晶質が得られ
る。ここで、スパッタ粒子が運動エネルギーを失う程度
は衝突頻度も依存するが、衝突頻度νはν=1/nσ
(σは衝突断面積、n=p/kBTはガス粒子密度)と
表され、雰囲気ガス圧によって好適な範囲に調節するこ
とができる。
【0052】一方、本発明の光記録媒体を製造する方法
としては、スパッタ時に基板にバイアスを印加してスパ
ッタ粒子の基板上での表面マイグレーションを助長する
方法も挙げることができる。この様にして形成したディ
スクはスパッタ成膜直後の状態が、光記録で形成される
非晶質状態に近い。
【0053】このようにして形成された相変化光ディス
クに非晶質マークの記録を実行すると、独特の構成が形
成される。すなわち、マーク間が結晶化してトラック幅
よりも狭い結晶化バンド中に非晶質マークが点在する状
態となる。ここで、マークの幅は結晶化バンドよりも狭
いか若しくは等しい。等しい場合には非晶質部がネット
ワーク状に連結し、その中に結晶化したマーク間領域が
存在する状態となる。線速が速くなくて、非晶質マーク
端部が結晶化する場合には、トラック幅よりも若干狭い
結晶バンドが形成され、そのバンド中にバンド幅よりも
若干狭い非晶質マークが存在する状態となる。結晶バン
ドの間の領域はスパッタ形成直後の非晶質状態を保持す
る。
【0054】一方、本発明の光記録媒体を製造する方法
としては、スパッタ成膜直後の記録層に圧縮性応力を付
与して結晶化し易くする方法も挙げることができる。す
なわち、記録層自体の圧縮応力を高めるか、記録層の上
下に配される干渉膜に圧縮応力を付与して記録層が収縮
し易くする。記録層は非晶質状態にある時よりも結晶状
態にある時の方が体積が小さいので、圧縮応力を付与し
た状態におけば体積収縮し易い、即ち結晶化し易い状態
にある。スパッタ膜の場合は、一般的に成膜時に基板上
に高エネルギーの粒子を入射させることで圧縮応力を付
与することができる。具体的手段としては、記録層もし
くは上下の干渉層形成時に、ガス圧力を低下させて基板
に入射するスパッタ粒子のエネルギーを増加させるか、
基板にバイアスを印加してガスイオンを加速して積極的
に基板に入射させる方法がある。
【0055】これらの方法は、前記したスパッタ粒子の
エネルギーを低くする方法と相反するが、基板上でのス
パッタ粒子の冷却速度を適度に低下させて、かつ記録層
に適度な圧縮応力を付与する条件が本発明を実施する上
で好適であり、それは他の手法との関連の中で見出され
るものである。ここで、記録膜はKrやXeなどの重希
ガスで高圧スパッタ成膜し(基板にバイアスを印加する
と圧縮応力を付与する上で好適)、上下の干渉膜形成時
は低圧バイアススパッタして大きな圧縮応力を付与する
方法が好ましい。また、記録膜に対して熱膨張率の差が
大きい材料を用いて上下の薄膜層あるいは基板を構成
し、且つ昇温状態で膜形成を行うことにより、室温に冷
却後に圧縮応力を発生させることも有効である。
【0056】以上、本発明の光記録媒体を製造する具体
的な方法について説明した。
【0057】以下、具体的な実施例を例示しつつ本発明
の実施の形態についてさらに詳細に説明する。 (実施例1)図4は、本発明の第1実施例に係る相変化
光記録媒体の概念断面図である。同図において、1は基
板、2は第一干渉層、3は記録層、4は第二干渉層、5
は反射層である。この媒体は、以下の手段で作製した。
まず、0.6μm幅のグルーブが設けられたポリカーボ
ネイト製の光ディスク基板1を多室スパッタリング装置
の基板ホルダーに装着する。そして、ZnS−SiO2
コンポジットターダットを具備するスパッタ室におい
て、RFスパッタ法により膜厚80nmの第一干渉層2
を成膜し、次にGeSbTeターゲットを具備するスパ
ッタ室においてDCスパッタ法により膜厚20nmの記
録層3を成膜し、続いてZnS−SiO2コンポジット
ターゲットを具備するスパッタ室において、RFスパッ
タ法により膜厚30nmの第二干渉層4を成膜し、最後
にAlターゲットを具備するスパッタ室において、DC
スパッタ法により膜厚50nmの反射層5を成膜する。
【0058】ここで、記録層3以外の成膜には純Arを
用いてスパッタしたが、記録層3の成膜に際してはスパ
ッタガスとしてAr+Krの混合ガスを用いた。ガスの
組成はAr:Kr=1:10とし、全圧は4.0Paと
した。ガス圧を測定する真空計は全圧測定に適したダイ
アフラムゲージを用い、その測定子はガス導入口の直近
ではなく、ガス圧の位置分布の影響を受けない位置に設
置した。成膜終了後に取り出したディスク基板にもう一
枚のダミー基板(厚さ0.6mm)をUV樹脂で接着
し、評価媒体とした。
【0059】この記録媒体を線速一定の条件で評価し
た。記録膜はas−depo.状態のままで、線速8.
2m/秒、クロック周波数116.45MHzの3T信
号をas−depo.のディスクに記録したところ、5
2.5dBのCNRを得た。また、やはりas−dep
o.状態の異なるトラックに3Tから11Tまでのラン
ダム信号を記録したところ、8.2%のジッタ値を得
た。このトラックにオーバーライトを操り返したとこ
ろ、10回目で8・4%となった。さらにオーバーライ
トを繰り返し、100回、1000回後にジッタ値を測
定したが、いずれも8〜9%の範囲であった。
【0060】このように、as−depo.のトラック
に直接記録することで良好なCNR、繰り返し特性を得
ることができた。
【0061】次に、本発明の記録膜に形成された結晶化
部の結晶状態をTEMで調べた。まず、as−dep
o.トラック上に上記の線速及び記録クロック周波数で
11T信号で変調したレーザビームを一回だけ照射して
マーク列を形成し、再生信号波形を観察した。この実験
において、消去レベルのレーザパワーPeとマーク間か
らの再生信号レベルの関係を測定したところ、Pe=
4.5mWで最小になった。ここで、再生信号レベル
は、レーザビームが読み出しているトラックからの反射
率を反映する。従って、再生信号レベルの最小は最適な
結晶化条件であることを示す。このようにして最適消去
パワーを見出した。
【0062】次に、TEM観察を行う試料を形成した。
すなわち、別のas−depo.トラックにPe=4.
5mW、Pw=12mWでディスク一回転分だけ11T
信号の書き込みを行った。TEM試料として観察しやす
いように、これを複数のトラックに対して行った。この
部分を以下に「as−depo.記録部」と称する。ま
た、比較のために、別のトラックに対して同じ記録条件
で複数回のオーバーライトした試料も作製した。そし
て、Al反射層5と基板1を除去し、金属メッシュ上に
とって観察サンプルとした。Al反射層5は膜にメッシ
ュ状の傷をつけ、テープを接着剤で貼り付けてはがす方
法によって除去した。また、基板1は有機溶剤により溶
かし去った。これらの方法によれば、結晶状態に変化を
及ぼすような熱過程は存在しない。
【0063】まず、as−depo.記録部のマーク間
部分のTEM明視野像を観察した。この結果から、消去
部分は図1に例示したものと同様の多結晶体であり、T
EMで分解できない微結晶あるいは非晶質の部分は特に
観察されなかった。個々の結晶粒はその結晶方位により
異なるコントラストを持つ微結晶の集合体として観察さ
れた。
【0064】一方、隣接するas−depo.部分(非
晶質状態)は、コントラストに乏しい一様な色調を呈す
る領域として観察された。
【0065】撮影したTEM像をもとに、結晶粒の粒径
を測定し、その出現頻度を調べた。解析の結果、as−
depo.記録部のPe照射領域、繰り返しオーバーラ
イト後のPe照射領域の両方とも、5nmを中心として
2〜16nmの範囲に属する微細な結晶粒と、25〜8
0nmの範囲に分布する大きい結晶粒の2種類に明確に
区別出来ることが判明した。これらの大きい結晶粒と微
細な結晶粒の粒径分布を解析すると、図2及び図3とほ
ぼ同様のグラフが得られた。
【0066】このように、as−depo.記録に適し
た本発明の記録膜の特徴は、一回だけ消去レベルのレー
ザを照射することにより多結晶化し、形成される結晶粒
の粒径分布が、35〜100nmの範囲に分布する比較
的に大きい粒径の結晶粒と、その周りを埋め尽くす2〜
20nmの範囲に分布する結晶粒とによって構成される
ことが判明した。言い換えれば、粒径の出現頻度を粒径
に関する関数として考えたときに、その分布が複数の極
大をもつことが特徴であることが判明した。また複数回
オーバーライトした場合でも同様に、結晶化部の粒径分
布は同様に複数の極大を持つことが判明した。
【0067】本実施例では記録膜にGeSbTeを用い
たが、このほかInSbTe、AgInSbTe、Au
InSbTe系やその他の相変化記録膜、またそれに添
加元素を加えた材料系に対しても当然本発明の効果が生
じる。また繰り返し可能媒体のみならず、いわゆるCD
−R、CD−RWなどの一回書込み型、複数回書き込み
型の記録媒体としても効果を発揮する。 (比較例)上記実施例に対する比較のため、記録膜3の
成膜プロセスを通常のプロセスで形成した光ディスクを
用意し、同様の実験を行った。ここで、ディスクの膜構
成、膜厚は実施例と同一である。成膜は、記録膜以外は
第1実施例と同一の方法によった。記録膜は、スパッタ
ガスにArを用い、ガス圧を1.0Paに調節した。
【0068】本ディスクに対し、まず、as−dep
o.トラック上に第1実施例と同様の線速及び記録クロ
ック周波数で11T信号で変調したビーム照射を一回行
ってマーク列を形成し、再生信号波形を観察した。その
結果、Pe照射部分からの信号レベルは一回のPe照射
では十分に下がらなかった。さらにPeを変えて実験し
たが、2.5mW未満ではまったく変化が見られず、
2.5mW以上、6mW未満ではやや反射率低下が見ら
れたが飽和レベルにはほど遠く、as−depo.部か
らの信号レベルに近かった。また、6mW以上のパワー
では反射率低下は、まったく見られなかった。これは、
パワーが高すぎて記録層が部分的に溶融し、冷却時に再
非晶質化したことによるものと考えられる。
【0069】Pe=2.5mW以上、6mW未満として
2回以上のオーバーライトすると、オーバーライトの操
り返しで徐々に反射率が下がった。5回以上のオーバー
ライトによってPe照射部からの信号レベルは飽和レベ
ルに達した。そこで、実使用時の最適Peレベルを、1
0回オーバーライト時のマーク間からの信号レベルがも
っとも低くなるパワーとし、求めたところ、その値はP
e=4.0mWであった。
【0070】次に、TEM観察を行う試料を形成した。
すなわち、異なるas−depo.トラックにPe=
4.0mW、Pw=12mWでディスク一回転分だけ1
1T信号の書き込みを行った。TEM試料として観察し
やすいように、これを複数のトラックに対して行った。
この部分を「as−depo.記録部」と称する。ま
た、比較のため別なトラックに対し同じ記録条件で複数
回のオーバーライトした部分も用意した。
【0071】次に、Al反射膜と基板を除去し、金属メ
ッシュ上にとって観察サンプルとした。まず、一回のみ
記録した部位の個M像を観察したところ、Pe照射部
は、as−depo.記録した場合は一様なコントラス
トで結晶粒が判然とせず、依然として非晶質あるいはT
EMの分解能以下(約2nm以下)のきわめて小さい微
結晶の集合体であることが分かった。これは、同部分の
電子線回折パターンとしてハロー状のパターンしか観察
されなかったことからも裏付けられる。また、記録マー
ク部(非晶質)はコントラストに乏しい一様な領域とし
て観察された。
【0072】一方、同ディスクに繰り返しオーバーライ
トした場合のPe照射部は結晶粒が明らかであった。そ
の粒径分布を画像処理により解析すると、ほとんどの粒
径が50〜150nmの範囲にあることが判明した。
【0073】図5は、個々の結晶粒径を測定し、出現頻
度をプロットしたグラフ図である。すなわち、同図は、
TEM写真上において任意に得られた790nm角の領
域から、TEMで分解可能なすべての結晶の粒径の出現
頻度分布をプロットしたものである。また、ここでも、
TEMの分解下限(2nm)以下の極めて微細な結晶粒
は、計測対象から除外した。図5からわかるように、従
来の光ディスクにおいては、粒径の分布は単一の極大を
もち、その中心値は110nm程度であった。つまり、
記録層は、比較的大きな結晶粒によってほぼ埋め尽くさ
れていることが分かった。
【0074】また、比較のために2回記録を行ったトラ
ックについて同様のTEM観察で調べたところ、十分に
結晶化が進行しておらず、結晶粒が部分的に認められた
ものの、それ以外の大部分の領域は非晶質状態であるこ
とが判明した。 (実施例2)以下、本発明の第2の実施例に係る相変化
光記録媒体について説明する。
【0075】本実施例の相変化光記録媒体も、図4に表
したものと同様の断面構成を有する。但し、各層の膜厚
は、記録膜3が結晶状態の時に反射率が高くなる、いわ
ゆるHigh−to−Lowの構成に合わせて設計し
た。
【0076】すなわち、各層の材料は第1実施例と同様
にしつつ、第一干渉層2の膜厚を160nm、記録層3
の膜厚を20nm、第二干渉層4の膜厚を5nm、反射
層5の膜厚を150nmとした。記録媒体の作成手順
は、第1実施例と同様とした。
【0077】次に、このようにして作成した記録媒体を
初期化装置にかけ、全面初期化を行った。使用した装置
のレーザビームは、95μmx1μmのサイズの長円形
ビームである。初期化条件は線速2m/秒とし、送りピ
ッチ12μm、レーザパワー300mWとした。
【0078】次に、このようして初期化した記録媒体
を、線速一定の条件で評価した。まず、線速8.2m/
s、クロック周波数116.45MHzの3T信号を記
録したところ、51.2dBのCNRを得た。さらに、
本ディスクの別の初期化部に11T信号を一回記録した
ところ、11TのCNRとして56.5dBと良好な値
を得た。
【0079】次に、この11T信号を3T信号によりオ
ーバーライトしたところ、その信号強度は以下の如くで
あった。
【0080】 11Tキャリアレベル:−47.2dBm 3Tキャリアレベル:−12.5dBm 有効消去比: 34.7dB ここで、「有効消去比」とは、書き込んだ11T信号の
信号強度とオーバーライトされた3T信号の信号強度と
の差として定義される。
【0081】次に、やはり初期化した異なるトラックに
3Tから11Tまでのランダム信号を記録したところ、
9.5%のジッタ値を得た。このトラックにオーバーラ
イトを繰り返したところ、8〜9%の範囲で推移し、極
めて良好なジッタ特性を有することが確認された。
【0082】このように良好な繰り返し特性を得ること
ができた理由は、消去率が34.7dBと良いことから
もわかるように、記録した非晶質マークがオーバーライ
トで十分良く消去できたことに起因する。
【0083】次に、本記録膜の結晶状態をTEMで調べ
た。観察したのはディスクのうちの初期化しただけで何
も記録していない部分である。ここで、比較のために、
初期化部分に多数回のオーバーライトを行ったトラック
も形成した。
【0084】第1実施例と同様の方法で試料を作成し、
まず、初期化部のTEM明視野像を観察した。その結果
は図1に例示したものと同様で明らかに多結晶であり、
TEMで分解できない微結晶あるいは非晶質の部位は特
に検出されなかった。個々の結晶粒はその結晶方位によ
り異なるコントラストを持つ微結晶の集合体として観察
された。撮影したTEM像をもとに、結晶粒の粒径を測
定し、その出現頻度を調べた。方法は、200nm角の
範囲で明視野像を撮影し、まず大きい粒径に属する結晶
粒の径を測定した。具体的には、それぞれの結晶粒の最
長径と最短径を測定し、その平均をとって記録した。個
々の結晶粒の径は60〜100nmの範囲に分布してお
り、その平均は82.5nmであった。
【0085】次に、それ以外の部分の結晶状態を高倍率
で観察したところ、どの部分も2〜10nmの粒径をも
つ比較的小さい結晶粒の集まりであり、15nmを超え
る大きさの結晶粒は極めて少ないことが判明した。
【0086】オーバーライト繰り返しで形成された結晶
部の観察では、同様に大きい結晶粒と、それを取り囲ん
で微細な結晶に埋め尽くされた部分に分けられる事が判
明した。
【0087】なお、本実施例においても記録膜3の材料
としてGeSbTeを用いたが、このほかInSbT
e、AgInSbTe、AuInSbTe系やその他の
相変化記録膜、またそれに添加元素を加えた材料系に対
しても当然本発明の効果が生じる。また繰り返し可能媒
体のみならず、いわゆるCD−R、CD−RWなどの一
回書込み型、複数回書き込み型の記録媒体としても効果
を発揮する。
【0088】以上、具体例を例示しつつ本発明の実施の
形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体
例に限定されるものではない。
【0089】例えば、上記した具体例では、光ディスク
として、基板からZnS−SiO2/GeSbTe/Z
nS−SiO2/Alをスパッタ成膜した4層構造のも
のを例示した。しかし、これ以外にも、例えば、これに
Au半透明膜を挿入した5層構造のものでも良く、ま
た、記録層のスパッタ条件や初期化条件が本発明の実施
にとって重要である他は、特に各層の膜材料、膜厚、記
録膜以外の成膜方法・条件には制約されない。
【0090】例えば、5層膜構造の場合に、半透明層と
しては、Auの他に銀(Ag),銅(Cu),シリコン
(Si)などや、誘電体母材中に金属微粒子を分散した
構造の膜を用いることができる。
【0091】また、5層構成の半透明膜のかわりに、屈
折率の異なる2種類以上の透明膜材料を用いた2層以上
の積層膜を用いることもできる。例えば、膜厚を適切に
選んだZnS膜あるいはZnSとSiO2との混合膜、
同じくSiO2膜、同じくZnS膜あるいはZnSとS
iO2との混合膜、を順に積層した膜を用いることによ
り、さらに高密度記録に適した媒体を提供できる。
【0092】また、干渉層としては、ZnS−SiO2
以外に、Ta25,Si34,SiO2,Al23,A
lN等の誘電体膜材料、記録層としてはGeSbTeの
他にInSbTe,AgInSbTe,GeTeSeな
どのカルゴゲン系膜材料、反射層としてはAlの他に
も、AlMo、AlCr、AlTiなどのAl合金系膜
材料などから適宜選択して用いることができる。
【0093】さらに、上述した具体例においては、光記
録媒体の一例として光ディスクを例に挙げて説明した
が、本発明はこれに限定されるものではなく、その他に
も、例えば、光記録カードなど種々の形態の光記録媒体
に同様に適用し、同様の効果を得ることができる。
【0094】
【発明の効果】本発明は、以上説明した形態で実施さ
れ、以下に説明する効果を奏する。
【0095】まず、本発明によれば、記録膜の初期結晶
化という付加的な工程を経ることなく、as−dep
o.状態で直ちに使用でき、かつ記録特性、高繰返しオ
ーバライト特性に優れた光記録媒体を提供できる。
【0096】その結果として、初期結晶化に必要な設備
投資、運転費用、時間を削減し、より安価且つ高性能な
光記録媒体を提供できる。
【0097】例えば、従来の光記録媒体の場合には、デ
ィスク1枚あたりの成膜工程のタクトタイムが約10秒
であるのに対して、初期化工程のタクトタイムが2〜3
分もかかり、製造上の大きなボトルネックとなってい
た。これに対して、本発明によれば、このような初期化
工程を削減することができ、製造スループットを大幅に
改善することもできる。
【0098】以上説明したように、本発明によれば、高
性能でしかも製造工程を簡素化することができる光記録
媒体を提供することができ産業上のメリットは多大であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ディスクのマーク間部分の記録層の
TEM像の一例を表す概略図である。
【図2】本発明の光ディスクのマーク間部分の結晶粒径
の分布を表すグラフ図である。
【図3】本発明の光ディスクの微細な結晶粒の粒径分布
を表すグラフ図である。
【図4】本発明の第1実施例に係る相変化光記録媒体の
概念断面図である。
【図5】比較例において、個々の結晶粒径を測定し、出
現頻度をプロットしたグラフ図である。
【符号の説明】
1 基板 2 第1干渉層 3 記録層 4 第2干渉層 5 反射層

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】光照射により結晶状態と非晶質状態との間
    を可逆的に変化する相変化記録層を備えた光記録媒体で
    あって、前記相変化記録層が前記結晶状態にある時、そ
    の相変化記録層を構成する結晶粒の粒径に対する個数の
    分布が少なくとも2つの異なる粒径においてそれぞれ極
    大値を有することを特徴とする光記録媒体。
  2. 【請求項2】前記少なくとも2つの異なる粒径のうちの
    小なる粒径における極大値を中心とした分布に属する結
    晶粒が前記相変化記録層に占める割合は、面積比で30
    %以上80%以下の範囲であることを特徴とする請求項
    1記載の光記録媒体。
  3. 【請求項3】前記少なくとも2つの異なる粒径のうちの
    小なる粒径は、2nm〜15nmであり、 前記少なくとも2つの異なる粒径のうちの大なる粒径
    は、15nm〜200nmであることを特徴とする請求
    項1または2に記載の光記録媒体。
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