JP2000226813A - 橋梁鋼桁の補剛板 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 橋梁鋼桁の補剛板の剛性を高めること、及び
補剛板の特定部分への応力集中をなくす手段を創案す
る。 【解決手段】 長方形又は正方形の平板を実質的に水平
方向に１８０度曲げ加工して曲面部分３ｄをもつ形態の
部材を補剛板３とし、これにより橋梁鋼桁の主桁１と分
配横桁２とを接合する。この際、曲げ加工に伴い形成さ
れた曲面部分３ｄはいかなる部材に対しても接合しな
い。補剛板３の形態は、半円筒形、半楕円筒形、又はＵ
字筒形であり、主桁１及び分配横桁２に溶接で接合す
る。 【効果】 疲労強度が格段に向上して亀裂が発生し難く
なる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、橋梁鋼桁の補剛
板の改良に関するものであり、橋梁を通過する車両等に
よる活荷重により主桁と分配横桁との取り合い部に設け
られる補剛板及びその溶接部に発生するき裂を防止する
技術に関するものでる。

【０００２】

【従来の技術】橋梁の床版を長手方向に支持すると共
に、その上を通過する車両等の重量を橋脚に伝える橋梁
鋼桁の内、プレートガーダー橋は、通常、主桁と分配横
桁とから構築されている。

【０００３】このような橋梁鋼桁の構築部材である主桁
と分配横桁とが交差する部分には通常、補剛板が設けら
れ、橋梁鋼桁の剛性を高めている。図３に、橋梁鋼桁の
主桁と分配横桁との交差部分に設けられている補剛板の
従来例を説明する概略斜視図を示す。

【０００４】図３において、１は主桁、そして２は分配
横桁であり、主桁１と分配横桁２とは直交し、且つ、主
桁１の上端面は分配横桁２の上端面よりも高い位置にな
るように構築されている。そして、主桁１は、第一の水
平部材である上フランジ１ａ、第二の水平部材である下
フランジ１ｂ、及び当該上フランジ１ａと当該下フラン
ジ１ｂとの間に介在し両者に溶接接合している鉛直な構
造部材である腹板１ｃからなり、その横断面形状はＩ型
であり、主桁１の長手方向は橋梁の長手方向と一致して
いる。一方、分配横桁２は、主桁１と類似し、第一の他
の水平部材である上フランジ２ａ、第二の他の水平部材
である下フランジ２ｂ、及びこれらの間にあって両者に
溶接接合している他の鉛直な構造部材である腹板２ｃか
らなり、その横断面形状はＩ型である。そして、主桁１
と分配横桁２との直交部には、補剛板４が設けられてい
る。即ち、補剛板４の配設場所は、主桁の上フランジ１
ａ下面と腹板１ｃの側面と分配横桁の上フランジ２ａ上
面との３部材で３方向が囲まれた空間であり、これに合
わせて採寸切断された鋼板、即ち、補剛板がその空間部
に嵌め合わせられ、補剛板の３端面が上記３部材に溶接
接合されている。なお、図３における他の補剛板４’
も、上述した補剛板４に準じるものである。

【０００５】上記の通り構成された補剛板４には、橋梁
を車両等が走行通過する度に、活荷重が床版を介して伝
達され繰り返し応力が作用する。こうして補剛板４には
下記のように、疲労損傷が発生することがある。

【０００６】図４に、従来の補剛板とその周辺部材との
構成例を示す概略正面図を示し、補剛板に発生する疲労
損傷の代表例であるき裂の発生位置を示す。同図は、従
来の一般的な補剛板の例であり、この場合に疲労損傷が
発生する主な位置と状態は次の通りである。

【０００７】補剛板４の上端部と主桁の上フランジ１
ａ下面との溶接接合部の内、 ・回し溶接部止端部側に溶接部に沿って発生するき裂５
ａ、 ・主桁の腹板１ｃ側接合部に形成させたスカラップ６側
に溶接部に沿って発生するき裂５ｂ、 上記スカラップ６の中心付近から補剛板４に斜め下方
向に向かって発生するき裂５ｃ、 補剛板４と主桁の腹板１ｃとの溶接接合部の内、上記
スカラップ６側に溶接部に沿って発生するき裂５ｄ等、
である。なお、補剛板が、主桁の腹板１ｃを挟んでその
両側に配設される場合には、他方の補剛板４”に対して
も上述した補剛板４と同じようにき裂が発生する。

【０００８】これに対して、補剛板のき裂発生防止対策
として現在までに下記種々の検討がなされている。

【０００９】（１）図５は、スカラップを設けない補剛
板の例を示す橋梁鋼桁の概略正面図である。このよう
に、スカラップ６を設けず応力集中個所をなくすことに
よりき裂５ｂ、５ｃ、５ｄ（図４参照）の発生を防止し
ようとする方法が提案されている（以下、先行技術１と
いう）。

【００１０】（２）また、補剛板４の回し溶接部止端部
側に発生するき裂５ａを防止するために、当該溶接部止
端部をグラインダーで研削し、滑らかな曲面に仕上げる
方法や、当該溶接部止端部をＴＩＧ溶接で溶融して滑ら
かな曲面に仕上げる方法が提案されている（以下、先行
技術２という）。

【００１１】（３）また、補剛板の板厚を厚くすること
により、補剛板の応力低減を図り、更にその剛性を高め
ることにより、周辺部材の変形を小さくしてこの周辺部
材の変形に伴なう補剛板の応力を低減させる方法が提案
されている（以下、先行技術３という）。

【００１２】

【発明が解決しようとする課題】上述した先行技術１の
補剛板のスカラップを設けない方法によれば、スカラッ
プの中心付近から補剛板に斜め下方向に発生していたき
裂５ｃやスカラップを起点とするその他のき裂５ｂ、５
ｄを防止することはできる。しかしながら、回し溶接部
止端部から補剛板に発生するき裂５ａを防止することは
できない。

【００１３】そこで、先行技術２のグラインダー研削や
ＴＩＧ溶接による溶融により、回し溶接部止端部を滑ら
かに成形することにより、当該部分への応力集中を緩和
して、き裂５ａの発生防止を図ることが可能である。し
かしながら、橋梁鋼桁には多数の補剛板が配設されてい
るので、先行技術２の方法ではその作業が煩雑である。
また、グラインダー研削やＴＩＧ溶接の仕上げ精度によ
り当該部分の疲労強度が大きく左右されるが、現場作業
であるため施工品質管理が難しいという問題がある。

【００１４】一方、先行技術３の補剛板の板厚を厚くす
る方法によれば、その剛性を高める効果はあるが、十分
とは言い難い。即ち、橋梁を車両が通過すると、主桁と
平行な方向に通過する車両重量による活荷重により、補
剛板には面外曲げ荷重が作用する。この補剛板の面外曲
げに対する剛性の強化に対しては、その板厚を厚くして
もあまり効果は発揮されない。また、補剛板の板厚を厚
くしても、回し溶接部止端部における応力集中を緩和す
ることは殆どできない。

【００１５】このように先行技術１〜３では、橋梁鋼桁
の補剛板に発生する疲労損傷を十分に防止することはで
きない。従って、この発明の課題は、橋梁鋼桁の補剛板
の剛性を高めること、及び補剛板の特定部分への応力集
中をなくす手段を創案することにある。こうしてこの発
明の目的は、上記課題の解決により上述した種々の問題
を解決することにより、疲労強度に優れ、疲労損傷が発
生し難い橋梁鋼桁の補剛板を提供することにある。

【００１６】

【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記観点
から試験研究を重ねた結果、下記知見を得た。

【００１７】橋梁鋼桁の補剛板の形態を次の通りとす
る。即ち、補剛板の形態を図２（ａ）、（ｂ）及び
（ｃ）のそれぞれに示す半円筒形補剛板７、半楕円筒形
補剛板８、又はＵ字筒形補剛板９とし、そしてこれら各
補剛板の半円形状、半楕円形状、又はＵ字形状を呈した
上下二つの端面のそれぞれ７ａ、７ｃ；８ａ、８ｃ；９
ａ、９ｃを、主桁の上フランジ下面と分配横桁の下フラ
ンジ上面とに溶接接合し、且つ、残りの端面である、各
補剛板の反曲面側の二本の鉛直方向の端面７ｂ；８ｂ；
９ｂを、主桁の腹板に溶接接合する。こうして補剛板を
形成すれば、その剛性は従来の補剛板の剛性に比べて著
しく向上すること、及び従来の補剛板における回し溶接
部止端部をなくし、応力集中を防ぐことにより、従来の
橋梁鋼桁の補剛板と比較して、疲労強度に格段に優れた
ものが得られることを知見した。

【００１８】この発明は、上記知見にもとづきなされた
ものであり、その要旨は次の通りである。

【００１９】請求項１記載の橋梁鋼桁の補剛板は、橋梁
鋼桁の主桁と分配横桁とを接合する部材であって、その
接合を強化すると共に、主桁及び分配横桁の剛性を高め
るために、長方形又は正方形の鋼製平板を実質的に水平
方向に１８０度曲げ加工された曲面部分をもつ形態の部
材からなり、そして当該曲げ加工に伴い形成された曲面
部分は、他のいかなる部材に対しても接合されていない
ことに特徴を有するものである。

【００２０】請求項２記載の橋梁鋼桁の補剛板は、請求
項１記載の発明において、補剛板の形態として、半円筒
形、半楕円筒形、又はＵ字筒形のいずれかを用い、そし
て当該補剛板の上記主桁及び上記分配横桁に対する接合
が、溶接で施工されていることに特徴を有するものであ
る。

【００２１】

【発明の実施の形態】次に、この発明を図面を参照しな
がら説明する。図１は、本発明の実施の形態例を説明す
る概略斜視図であり、補剛板及びその周辺部材の局部拡
大図である。

【００２２】同図において、１は主桁、２は分配横桁そ
して３は補剛板である。分配横桁２の上フランジ２ａ
は、主桁１の上フランジ１ａよりも低い位置において水
平状態で、主桁１の腹板１ｃに対して垂直に溶接接合さ
れ、こうして分配横桁２は主桁１に対して直交して溶接
接合により構築されている。但し、同図において溶接ビ
ードの図示はすべて省略した。

【００２３】補剛板３の配設位置は、主桁１の上フラン
ジ１ａと主桁１の腹板１ｃと分配横桁２の上フランジ２
ａとで三方を囲まれた空間である。そして、補剛板３は
Ｕ字筒形形態を呈し、その長手方向が鉛直方向に配設さ
れている。その上端面３ａが主桁の上フランジ１ａの下
面に、その下端面３ｃが分配横桁の上フランジ２ａの上
面に、そして側端面３ｂが主桁の腹板１ｃに、いずれも
垂直に溶接接合されている。しかも、補剛板３の曲面部
分３ｄはいかなる部材にも接合されていない。ここで、
溶接方法としては、隅肉溶接あるいは完全溶け込み溶接
等、適宜、従来採用されている方法を選定する。また、
補剛板３の寸法及び材質は、施工対象とする橋梁の主桁
や分配横桁その他の設計諸元に応じて総合的に決められ
るが、一般的には、筒の長さ（高さ）及び幅共に例えば
１５０ｍｍ程度であり、材質については強度の他に特に
溶接性に留意して決める。

【００２４】補剛板３の配設位置については、補剛板設
置の目的から明らかなように、前記図１に示した主桁１
と分配横桁２との構築部位に限定されるものではなく、
図３に示した従来技術の補剛板４’の配設相当位置であ
ってもよい。即ち、主桁１の下フランジ１ｂと主桁１の
腹板と分配横桁２の下フランジとで三方を囲まれた空間
であってもよい。

【００２５】また、補剛板３の形態については、Ｕ字筒
形形態に限定する必要はない。Ｕ字筒形補剛板と同様の
作用・効果を得るためには、長方形又は正方形の平板を
実質的に水平方向に１８０度曲げ加工された形態の部材
であればよく、半円筒形、半楕円筒形及びその他これら
に類似するものであればいずれでもよい。そして、補剛
板３と主桁１及び分配横桁２との接合部位の関係は、上
記平板の曲げ加工前における当該平板の四辺の板端面の
内、当該曲げ加工に伴い変形した二辺の板端面（３ａ及
び３ｂに相当）のそれぞれを、主桁１の上フランジ１ａ
の下面及び分配横桁２の上フランジ２ａの上面にそれぞ
れ垂直に接合し、当該曲げ加工により変形しなかった残
り二辺の板端面（３ｂに相当）を、主桁の腹板（１ｃ）
に垂直に接合するものとする。

【００２６】但し、補剛板３を主桁１の下フランジ１ｂ
と主桁１の腹板と分配横桁２の下フランジとで三方を囲
まれた空間に配設する場合には、上記曲げ加工に伴い変
形した二辺の板端面（３ａ及び３ｂに相当）のそれぞれ
は、主桁１の下フランジの上面及び分配横桁２の下フラ
ンジの下面にそれぞれ垂直に溶接接合し、上記曲げ加工
により変形しなかった残り二辺の板端面（３ｂに相当）
は、主桁の腹板（１ｃ）に垂直に接合する。

【００２７】本発明の補剛板は上述した構成をとるの
で、従来の補剛板と比較して次の優位性を有する。

【００２８】（１）本発明における補剛板３と主桁の上
フランジ１ａ及び分配横桁の上フランジ２ａとの溶接接
合部の形態は、従来の補剛板４のように単なる平板を用
いた上記フランジとの溶接接合による溶接接合部の形態
と著しく異なっている。即ち、従来の補剛板４では、上
下の端面に相当する部分のフランジとの溶接接合では、
回し溶接部の形成が避けられない。これに対して、本発
明の補剛板３では、上記曲面部分３ｄの存在により上下
の端面と上記フランジとの溶接接合で、従来の補剛板に
おけるような回し溶接部は形成されない。本発明では、
この部分の接合溶接部の形態は、その溶接線の形状がＵ
字形状に沿った滑らかな曲線状になる。従来の補剛板の
ように溶接施工が難しく、応力集中発生箇所となる回し
溶接をする必要がなくなる。

【００２９】（２）本発明における補剛板３の形態は、
半円筒形、半楕円筒形、及びＵ字筒形等の形態であるか
ら、従来の平板状補剛板と比較すると剛性が格段に高く
なる。特に、車両等の通過時に発生する活荷重に伴う補
剛板の面外曲げに対する剛性が向上する。従って、当該
補剛板の周囲部材の変形抑制をし得るので、当該補剛板
に発生する応力が著しく低減される。

【００３０】（３）上記（１）及び（２）項の複合的作
用により、本発明の補剛板は、溶接接合部近傍の特定箇
所への応力集中をなくすと共に、当該補剛板に発生する
応力も低減するので、疲労強度に著しく優れたものとな
る。

【００３１】上述した本発明の補剛板の構成は、トラス
橋の床組等のように上述した主桁と分配横桁とに対する
補剛板と同様な関係にある構造部位に対しても適用する
ことができ、従って、その作用・効果も本発明における
と同様に発揮される。

【００３２】

【発明の効果】以上述べたように、この発明の補剛板に
よれば、当該補剛板の溶接接合部分の特定箇所にかかる
応力集中をなくすことができ、更に、補剛板の剛性が著
しく向上するので、従来の補剛板に比べて疲労強度が格
段に向上する。このような橋梁鋼桁の補剛板を提供する
ことができ、工業上有用な効果がもたらされる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による橋梁鋼桁の補剛板の実施形態例を
説明する概略斜視図である。

【図２】本発明による橋梁鋼桁の補剛板の形態例を示す
概略斜視図である。

【図３】従来の橋梁鋼桁及びその補剛板例を説明する概
略斜視図である。

【図４】従来の補剛板に発生する疲労き裂の発生箇所
と、その周辺部材との取り合いを示す概略正面図におい
て示す図である。

【図５】従来の補剛板においてスカラップを設けない場
合の疲労き裂の発生箇所と、その周辺部材との取り合い
を示す概略正面図である。

【符号の説明】

１ 主桁 １ａ 主桁上フランジ １ｂ 主桁下フランジ １ｃ 主桁腹板 ２ 分配横桁 ２ａ 分配横桁上フランジ ２ｂ 分配横桁下フランジ ２ｃ 分配横桁腹板 ３ 補剛板（本発明品） ３ａ 補剛板上端面（本発明品） ３ｂ 補剛板側端面（本発明品） ３ｃ 補剛板下端面（本発明品） ３ｄ 補剛板曲面部分（本発明品） ４ 補剛板（従来品） ４’、４” 補剛板（従来品） ５ａ、５ｂ、５ｃ、５ｄ き裂 ６ スカラップ ７ 半円筒形補剛板 ８ 半楕円筒形補剛板 ９ Ｕ字筒形補剛板 ７ａ、８ａ、９ａ 補剛板上端面（本発明品） ７ｂ、８ｂ、９ｂ 補剛板側端面（本発明品） ７ｃ、８ｃ、９ｃ 補剛板下端面（本発明品）

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 橋梁鋼桁の主桁と分配横桁とを接合する
   部材である補剛板であって、 前記補剛板は、長方形又は正方形の平板を実質的に水平
   方向に１８０度曲げ加工された曲面部分をもつ形態の部
   材からなり、前記曲げ加工に伴い形成された曲面部分は
   いかなる部材に対しても接合されていないことを特徴と
   する、橋梁鋼桁の補剛板。
2. 【請求項２】 前記補剛板の形態は、半円筒形、半楕円
   筒形、又はＵ字筒形であり、そして当該補剛板の前記主
   桁及び前記分配横桁に対する接合は、溶接で施工されて
   いることを特徴とする、請求項１記載の橋梁鋼桁の補剛
   板。