JP2000226207A - 活性化木炭の製造方法および活性化木炭 - Google Patents

活性化木炭の製造方法および活性化木炭

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 数多くの化合物に対して優れた吸着性を発揮
し、吸放湿性などの木炭が本来有していた機能について
も優れた性能が発揮できる活性化木炭を提供する。 【解決手段】 木材チップを450〜550℃で熱処理
して炭化させる低温炭化工程と、低温炭化工程に引き続
いて、木材チップの炭化物を800〜900℃、480
〜960秒で熱処理して、さらに炭化させる高温炭化工
程と、高温炭化工程の終了時点で、前記炭化物に水を接
触させる活性化工程とを含むことで、吸着性等の機能が
向上するとともに、低温炭化部分と高温炭化部分とのそ
れぞれが有する優れた特性を相乗的に発揮できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、活性化木炭の製造方
法、活性化木炭、活性化木炭粉、繊維質シート、樹脂成
形品および塗料に関し、通常の木炭に対して有害物質の
吸着性や脱臭性、吸放湿性などの特性が付与された活性
化木炭と、このような活性化木炭を用いて製造された活
性化木炭粉と、このような活性化木炭粉の機能を発揮し
得る各種製品に関する。
【0002】
【従来の技術】木炭には、ガスや蒸気に対する吸着性が
あり、吸放湿性、脱臭性などの機能を有していることが
知られている。特に、木材の細片を炭化させてなる木材
チップ炭化物は、上記のような機能に特に優れた材料と
なる。特許第2561433号公報には、木材チップ炭
化物の具体的製造方法や利点が示されている。
【0003】また、木炭や泥炭などの炭を塩化亜鉛や燐
酸などの薬剤で処理して吸着性などの機能を向上させた
活性炭も知られている。薬剤を用いて活性化処理を行っ
た活性炭は、通常の木炭に比べて、吸着性が向上し、特
に特定成分に対する選択的な吸着性に優れたものとな
る。前記した木炭および活性炭は、一般住宅や工場など
の各種環境下において、有害なガス成分や悪臭の吸着除
去に広く利用されている。また、近年、木炭や活性炭を
担持させた紙や布、あるいは、木炭や活性炭を含有する
樹脂で成形されたシートなどが開発され、前記した木炭
や活性炭の機能を有効に発揮できる素材として、各種製
品に利用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記した活性炭は、通
常の木炭に比べて、特定の有害成分に対する選択的な吸
着性や除去効果には優れているのであるが、有害成分の
種類によっては吸着性に乏しい場合がある。通常の使用
環境においては、単一の有害成分だけが存在する環境は
少なく、複数の有害成分が混在している場合がほとんど
である。例えば、住宅の室内には、建材などから放出さ
れるホルムアルデヒド、アンモニア、硫化水素その他、
数多くの化学物質からなる有害成分が存在している。従
来の活性炭の場合、そのうちの何れか1種に対する吸着
性には優れていても、全ての有害成分を実用的に十分な
程度に吸着できるものではなかった。
【0005】前記した薬剤による活性化処理を行った活
性炭には、処理薬剤の成分が含まれているため、使用環
境に処理薬剤が漏出して環境汚染を引き起こす心配があ
る。また、活性炭の吸放湿性機能を果たしている微細孔
構造が、処理薬剤で埋められたり覆われたりするため
に、活性炭そのものが有していた吸放湿性などの特性が
低下してしまうという問題も発生する。
【0006】さらに、従来の活性炭および木炭は何れ
も、有害ガスなどに接触してから吸着除去が進行するま
での立ち上がり時間が比較的長くかかるため、例えば、
室内の空気に含まれる有害成分を除去しようとしても直
ぐには効果が発現しないという問題もある。本発明の課
題は、数多くの化合物に対して優れた吸着性を発揮し、
吸放湿性などの木炭が本来有していた機能についても優
れた性能が発揮できる活性化木炭を提供することであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる活性化木
炭の製造方法は、木材チップを450〜550℃で熱処
理して炭化させる低温炭化工程と、低温炭化工程に引き
続いて、木材チップの炭化物を800〜900℃、48
0〜960秒で熱処理して、さらに炭化させる高温炭化
工程と、高温炭化工程の終了時点で、炭化物に水を接触
させる活性化工程とを含む。
【0008】〔木材チップ〕木材の細片すなわちチップ
である。木材チップの原木としては、主に、杉材、ヒマ
ラヤ杉材、赤松材等の針葉樹材が用いられ、特に赤松材
が好ましい。木材製品として利用し難く安価な細い木材
や廃材を利用することができる。パルプ製造やボード建
材の原料として大量に工業生産されている木材チップ製
品を用いることもできる。
【0009】木材チップの形状および寸法は特に限定さ
れないが、木材チップの差し渡し径を測ったときに、そ
の最大径が10〜60mmのものが好ましい。大き過ぎる
木材チップは十分な炭化を行い難く、小さ過ぎる木材チ
ップは取扱い難く、製造歩留りも悪い。 〔低温炭化工程〕基本的には、通常の木炭製造装置およ
び製造処理条件を採用すればよい。熱処理の温度を45
0〜550℃に設定する。熱処理時間は、木材チップの
全体が十分に炭化される程度で良く、木材チップあるい
は製造装置の条件によっても異なるが、通常は100〜
120時間をかけて処理される。
【0010】熱処理雰囲気は、空気の流入を遮断した状
態で行う。モミ殻やオガクズで木材チップを覆った状態
で処理することができる。 〔高温炭化工程〕基本的には、通常の木炭製造装置およ
び製造処理条件を採用し、熱処理の温度を800〜90
0℃、熱処理時間を480〜960秒に設定する。
【0011】高温炭化工程では、前工程で低温炭化され
た木材チップ炭化物の表面に近い一部分のみを高温炭化
し、木材チップ炭化物の中心部分には低温炭化部分を残
しておく。処理時間によって、得られる活性化木炭に含
まれる高温炭化部分と低温炭化部分との比率が調整され
る。処理時間が短すぎたり長すぎたりすると、高温炭化
部分と低温炭化部分とのそれぞれの特性が十分に発揮で
きない。
【0012】前記低温炭化工程と同じ装置で、熱処理温
度を上昇させることで、低温炭化された木材チップ炭化
物をそのまま高温炭化させることが好ましい。熱処理雰
囲気は、酸素を供給した状態にする。 〔活性化工程〕高温炭化工程で熱処理を行った炭化物に
水を接触させると、炭化物は急速に冷却されて消火す
る。その際に、水の化学的および物理的な作用によっ
て、炭化物に複雑な形状の微細孔が形成されたり、炭化
物の表面が改質されて吸着能などが向上したりする活性
化が行われる。
【0013】なお、水は液体状態であってもよいが、通
常は水蒸気状態で炭化物に接触することになる。活性化
工程の具体的処理装置や処理条件は、既知の活性炭製造
技術において行われている水との接触処理と同様でよ
い。 〔活性化木炭〕本発明の製造方法で得られる活性化木炭
は、内部に多数の微細孔を有する多孔質構造であり、こ
の微細孔による物理的な吸着作用を有するとともに、微
細孔の表面が化学的あるいは物理的に活性化されていて
高い吸着能を発揮する。前記製造方法から判るように、
活性化木炭は、原料となる木材チップ以外の添加剤や活
性化処理剤を使用する必要がない。
【0014】活性化木炭は、吸着能に優れ、吸放湿性、
脱臭性、防黴性、遠赤外線放射性、導電性、電磁波吸収
性、イオン調整機能などに優れている。活性化木炭の吸
着能は、吸着物質と接触したときの立ち上がり速度が大
きい。また、吸着物質を分解する作用があるため、活性
化木炭の微細孔に吸着物質が詰まって吸着能が低下する
ことが防げ、長期間にわたって安定した吸着能を発揮で
きる。
【0015】活性化木炭には、低温炭化工程で炭化され
た低温炭化部分と、高温炭化工程でさらに炭化された高
温炭化部分とが混在している。通常は、中心側に低温炭
化部分、外周側に高温炭化部分が存在する。低温炭化部
分は、酢酸やアンモニアなどの比較的高分子量の化合物
に対する吸着性が優れている。高温炭化部分は、ホルム
アルデヒド、アセトアルデヒド、エチレンなどの比較的
低分子量の化合物に対する吸着性に優れている。活性化
木炭は、低温炭化部分と高温炭化部分の機能や役目を相
乗的に発揮させることができる。
【0016】〔活性化木炭粉〕活性化木炭を粉砕して活
性化木炭粉にすることで、吸着機能などがより高まると
ともに、他の材料に対する担持や含有の処理が行い易く
なる。粉砕装置および粉砕条件は、通常の木炭粉の製造
技術が適用できる。活性化木炭粉を粒径5mm以下に粉砕
するのが好ましい。粒径が小さいほど、単位重量当たり
の表面積が大きくなり、表面性状に基づく諸特性が向上
する。
【0017】前記したように低温炭化部分と高温炭化部
分とが混在する活性化木炭を粉砕した活性化木炭粉に
も、低温炭化部分と高温炭化部分とが混在する。個々の
活性化木炭に低温炭化部分と高温炭化部分が存在するこ
とが好ましいが、低温炭化部分からなる活性化木炭粉と
高温炭化部分からなる活性化木炭粉とが均一に分散して
いてもよい。
【0018】〔使用用途〕活性化木炭は、そのままで、
あるいは通気性を有する容器や袋に収容した状態で、調
湿用品、脱臭用品、有害物質除去用品などとして利用さ
れる。建築土木施工の際に床下に敷設して環境改善に使
用したり、水槽の底に敷設して水質改善に利用したり、
液体や気体の配管経路中に装着して有害成分の除去装置
として用いたりすることができる。その他、通常の木炭
あるいは活性炭の使用用途に利用することができる。
【0019】活性化木炭粉も同様の用途に利用されるほ
か、繊維質シートに担持させたり、樹脂成形品に含有さ
せたりして利用することができる。繊維質シートは、紙
や繊維、不織布が用いられる。活性化木炭粉を繊維から
なる糸に担持させて、この糸を使って編織布を製造する
こともできる。活性化木炭粉を、粉状または液状の樹脂
材料に混合しておき、この樹脂を用いて各種の成形品を
製造することができる。成形品は、フィルム、シートあ
るいは立体的な物品に適用できる。樹脂100重量部に
対して、活性化木炭粉を3〜50重量部の割合で配合す
るのが好ましい。活性化木炭粉が多過ぎると、機械的強
度などの樹脂の特性が低下したり、成形加工が困難にな
る。樹脂に対する活性化木炭粉の親和性を高め均一な分
散を促進するために、樹脂100重量部に0.5〜10
重量部程度の界面活性剤を添加しておくことができる。
【0020】活性化木炭粉を含有する樹脂製品の具体例
として、遠赤外線放射特性に優れていることから農園芸
用シート、マット材、保温シートなどが挙げられる。調
湿材料として、建築用、工業用、農業用に利用できる。
防臭特性に優れていることから消臭用シートに利用でき
る。野菜、果物、切り花などの鮮度保持シート、鮮度保
持用成形品に利用できる。帯電(静電気)防止用成形品
として利用できる。電磁波遮蔽特性に優れていることか
ら、電子機器の誤動作防止対策やテレビやラジオなどへ
の干渉予防対策、携帯電話からの電磁波の放出防止対策
などに利用する電磁波シールド材に利用したり、半導体
分野で利用したりすることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明にかかる活性化木炭の製造
方法で活性化木炭を製造し、その性能を評価した。 〔活性化木炭の製造〕 赤松材をチップ化(最大差し渡し径10〜50mm、
厚さ3〜5mm)して炭材を得た。
【0022】 100m3平窯に炭材を入れ、500℃
で約140時間かけて炭材を炭化させた。この段階が低
温炭化工程である。 前工程の終了後、窯全体の炭材を攪拌することで急
激に酸素を与え、次いで温度を850℃に上昇させて4
0分間かけて十分に精錬を行った。この段階が、高温炭
化工程である。
【0023】 前工程の終了後、水をかけて消火させ
た。この処理によって活性化を行われ、活性化木炭が得
られる。 このようにして得られた活性化木炭は、組織の結着密度
が高く、固いものである。炭素率は85%以上であっ
た。なお、比較のために、前記工程の後で、工程を
行わずに、酸素を遮断して消火させて木炭を得た。この
比較例の木炭は、一般に用いられている木炭と同じもの
である。前記工程を経て得られる本発明の実施例に
比べて、非常に柔らかくもろいものであった。炭素率は
70%以下であった。 〔活性化木炭粉の製造〕前工程で得られた実施例の活性
化木炭と比較例の通常木炭とを、通常の粉砕装置を用い
て粒径200μm以下に粉砕した。 〔活性化木炭の特性〕得られた活性化木炭および通常木
炭の特性を比較する。各試験項目は、常法により実施し
た。
【0024】吸放湿性:試料の重量W0 を測定する。つ
ぎに、温度25℃、湿度90%の環境に2時間維持し、
試験後の重量W1 を測定して、試験前後の重量変化(W
1 −W0 )/W 0 を吸湿率%とした。つぎに、試料を、
温度25℃、湿度55%の環境に2時間維持し、試験前
後の重量変化(W2 −W1 )/W0 を放湿率%とした。
【0025】吸着能:ガラス製容器(11.4リット
ル)に試料3gを入れ、試験ガスを注入して容器内の環
境を初濃度に設定した。容器内の環境を攪拌しながら所
定時間(120分)おいたあと、容器内のガス濃度を測
定した。 吸脱着性:試験ガスを所定濃度注入した20℃±5℃の
試験環境に、試料1.0gを10時間放置したあと、試
料を試験環境から取り出して14時間放置した。この操
作を2回繰り返した。試験前後の重量変化から試料に残
留する試験ガスの割合を求めた。
【0026】
【表1】 ─────────────────────────── 特 性 実施例 比較例 ─────────────────────────── 粒径 μm <200 同左 BET比表面積 m2/g 213 91 ─────────────────────────── 吸放湿性 % 吸湿率 3.2 2.3 放湿率 −3.2 −2.3 吸着能 残留/初期 ppm アンモニア 25/100 − 硫化水素 13/30 − 吸脱着性 % アンモニア 0.4 0.5 (初期濃度400±50ppm ) アセトアルデヒド 1.7 4.2 (初期濃度60±5ppm ) ─────────────────────────── 上記測定の結果、本発明の実施例は比較例に比べて、比
表面積が大きく吸放湿性に優れていることが明らかであ
る。
【0027】吸脱着性試験の結果によると、本発明の実
施例では、一旦ガス成分を吸着しても、その後に環境中
のガスが無くなると、ガス成分が吸着されたままにはな
り難いことが判る。これは、一旦吸着されたガス成分を
環境に放出する作用があるだけでなく、吸着されたガス
成分を分解してしまう作用もあるものと推定できる。そ
の結果、吸脱着を繰り返しても機能が低下し難いという
利点が発揮できる。
【0028】
【発明の効果】本発明のかかる活性化木炭の製造方法で
は、低温炭化工程と高温炭化工程とを組み合わせ、さら
に水による活性化工程を組み合わせることで、吸着能の
非常に優れた活性化木炭を効率的に得ることができる。
通常の木炭製造装置および処理技術を組み合わせている
ため、特別な製造設備は必要ない。
【0029】活性化木炭は、吸着能が高く、吸放湿性や
脱臭性に優れており、特に、様々な有害成分に対して十
分な吸着除去性能を発揮できる。吸着能を発揮する立ち
上がり時間が短いため、有害成分を迅速に吸着除去する
ことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D21H 21/14 D06M 11/00 Z

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】木材チップを450〜550℃で熱処理し
    て炭化させる低温炭化工程と、 前記低温炭化工程に引き続いて、前記木材チップの炭化
    物を800〜900℃、480〜960秒で熱処理し
    て、さらに炭化させる高温炭化工程と、 前記高温炭化工程の終了時点で、前記炭化物に水を接触
    させる活性化工程とを含む活性化木炭の製造方法。
  2. 【請求項2】前記木材チップが、最大差し渡し径10〜
    60mmの赤松材からなる木材チップである請求項1に記
    載の活性化木炭の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1の方法で得られた活性化木炭を粒
    径5mm以下に粉砕して活性化木炭粉を得る活性化木炭粉
    の製造方法。
  4. 【請求項4】実質的に木材由来の成分のみからなり、 平均粒径2〜5mmであり、 BET比表面積200〜300m2/gである活性化木炭
    粉。
  5. 【請求項5】低温炭化部分と高温炭化部分とが混在する
    請求項4に記載の活性化木炭粉。
  6. 【請求項6】請求項4または5に記載の活性化木炭粉が
    担持された繊維質シート。
  7. 【請求項7】請求項4または5に記載の活性化木炭粉を
    含有する樹脂成形品。
  8. 【請求項8】請求項4または5に記載の活性化木炭粉を
    含有する塗料。
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