JP2000212112A - ベンゼンの直接酸化によるフェノ―ルの製造方法 - Google Patents

ベンゼンの直接酸化によるフェノ―ルの製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ベンゼンの直接酸化によりフェノールを高収
率で製造できる方法を提供する。 【解決手段】 ベンゼン、還元剤としてアスコルビン
酸、およびバナジウム担持アルミナ触媒を、酢酸水溶液
溶媒に入れ、3atm以上の酸素雰囲気下において反応
させ、ベンゼンを直接酸化して8%以上の収率でフェノ
ールを生成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ベンゼンを直接酸
化して一段階でフェノールを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、フェノールの製造方法としてはキ
ュメン法が用いられている。この方法では以下のような
三段階を経てベンゼンからフェノールを製造する。すな
わち、(I)酸触媒の存在下でベンゼンとプロピレンと
を反応させてキュメンを生成する。(II)キュメンと酸
素とを反応させてキュメンヒドロペルオキシドを生成す
る。(III)酸触媒の存在下でキュメンヒドロペルオキ
シドを分解してフェノールとアセトンを生成する。
【0003】しかし、キュメン法は三段階プロセスであ
るため、経済的に非効率である。また、キュメン法を用
いた場合、フェノールの製造が副生成物であるアセトン
の市場動向に左右されるという問題がある。
【0004】そこで、本発明者らはこれまでにCu担持
触媒を用いてベンゼンから直接酸化により一段階でフェ
ノールを生成させる反応の研究を行ってきた。しかし、
従来はフェノールの収率が十分ではなく、コスト面でも
改善の余地があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ベン
ゼンの直接酸化によりフェノールを高収率または低コス
トで製造できる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の第1のフェノー
ルの製造方法は、ベンゼン、還元剤としてアスコルビン
酸、およびバナジウム担持アルミナ触媒を、酢酸水溶液
溶媒に入れ、酸素雰囲気下においてベンゼンを直接酸化
してフェノールを生成することを特徴とする。
【0007】本発明の第2のフェノールの製造方法は、
ベンゼン、および亜鉛−バナジウム担持アルミナ触媒
を、酢酸水溶液溶媒に入れ、酸素雰囲気下においてベン
ゼンを直接酸化してフェノールを生成することを特徴と
する。
【0008】本発明の第3のフェノールの製造方法は、
銅担持ゼオライト触媒を充填した流通型反応器に、ベン
ゼンおよび酸化剤としてN2Oを供給し、ベンゼンを直
接酸化してフェノールを生成することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、ベンゼンを液相接触法
または気相接触法により直接酸化してフェノールを製造
する方法である。
【0010】本発明の第1の方法でベンゼンを直接酸化
してフェノールを製造する場合について説明する。この
方法では還元剤としてアスコルビン酸を用いる。なお、
還元剤の候補化合物としてはアスコルビン酸のほかに
も、ハイドロキノン、ピロカテコール、亜硫酸ナトリウ
ム、亜鉛などが挙げられる。触媒としてはバナジウム担
持アルミナ触媒(V/Al23触媒)を用いる。アルミ
ナにバナジウムを担持させる方法としてはイオン交換
法、含浸法、ゾルゲル法などが挙げられる。溶媒として
は濃度1N程度の酢酸水溶液を用いる。なお、ベンゼン
と還元剤であるアスコルビン酸との比率は、モル比で
1:0.15〜0.5の範囲に設定することが好まし
い。反応は酸化剤として作用する酸素の雰囲気中におい
て、たとえば1〜10atm(約0.1〜1MPa)、
好ましくは3atm(約3MPa)以上の圧力下で行わ
れる。反応温度は293〜333K、反応時間は10〜
25時間の範囲に設定することが好ましい。この方法に
おいて、バナジウム触媒の担体としてアルミナを用いる
のは、たとえばシリカやMCM−41などの他の担体を
用いた場合と比較して、反応時のバナジウムの溶出量が
少なくなるためである。
【0011】この方法では、以下に示す(1)〜(5)
の反応経路を経由し、過酸化水素の生成を伴って、ベン
ゼンの直接酸化によりフェノールが生成されるものと考
えられる。そして、上述した適切な条件下では、8%以
上の高い収率でフェノールが得られる。
【0012】
【化1】
【0013】本発明の第2の方法でベンゼンを直接酸化
してフェノールを製造する場合について説明する。この
方法では、第1の方法と異なり、還元剤であるアスコル
ビン酸を用いない。その代わりに、触媒として、アルミ
ナ担体にバナジウムとともに還元作用を示す亜鉛を担持
させた、亜鉛−バナジウム担持アルミナ触媒(Zn−V
/Al23触媒)を用いる。その他の条件は、第1の方
法と同様でよい。
【0014】この方法では、フェノールの収率は高くな
いが、高価なアスコルビン酸を使用しないので、低コス
トを実現できる可能性がある。
【0015】本発明の第3の方法でベンゼンを直接酸化
してフェノールを製造する場合について説明する。この
方法は、第1および第2の方法のような液相接触法では
なく気相接触法である。この方法では、銅担持ゼオライ
ト触媒を充填した流通型反応器に、ベンゼンおよび酸化
剤としてN2Oを供給して反応させる。反応ガスのキャ
リヤーガスとしてはたとえば窒素ガスが用いられる。反
応圧力は1atm以上、反応温度は650〜700Kの
範囲に設定することが好ましい。
【0016】この方法では、酸化剤としてO2を用いた
場合よりも、フェノールを高収率で得ることができる。
【0017】
【実施例】実施例1 アルミナ担体にVO(C5722エタノール溶液を含
浸させた。このアルミナ担体を一昼夜乾燥した後、空気
流中において573Kで3時間焼成して、バナジウム担
持アルミナ触媒(バナジウム含有量2wt%)を調製し
た。
【0018】バッチ式反応器に、上記で調製したV/A
23触媒0.1g、ベンゼン5.6mmol、溶媒と
して1N(80vol%)酢酸水溶液5mL、還元剤と
してアスコルビン酸を入れ、酸素雰囲気下においてマグ
ネティックスターラーにより反応液を攪拌しながら、反
応温度333Kで24時間反応させた。反応生成物をガ
スクロマトグラフィーにより分析した。
【0019】まず、酸素雰囲気の圧力を4atm(約
0.4MPa)に設定し、還元剤であるアスコルビン酸
の量を0〜3mmolの範囲で変化させた。図1に、ア
スコルビン酸の量とフェノール収率との関係を示す。図
1から、アスコルビン酸の量が1mmol以上であれ
ば、8%以上の高い収率でフェノールが得られることが
わかる。
【0020】なお、図1において、フェノール収率が最
大値(約12%)を示した条件で、触媒からのバナジウ
ム(V)の溶出量は約40%であった。
【0021】次に、アスコルビン酸の量を1mmolに
設定し、酸素雰囲気の圧力を0〜7atm(0〜約0.
7MPa)の範囲で変化させた。図2に、酸素圧力とフ
ェノール収率およびH22生成量との関係を示す。図2
から、酸素圧力が3atm以上であれば、7%以上の高
い収率でフェノールが得られることがわかる。
【0022】実施例2 アルミナ担体にバナジウムとともに還元作用を示す亜鉛
を共含浸させて亜鉛−バナジウム担持アルミナ触媒を調
製した。このZn−V/Al23触媒を用いる一方で還
元剤であるアスコルビン酸を用いずに、その他は実施例
1と同様の条件下で反応を実施しフェノールを生成し
た。その結果、0.1%の収率でフェノールが得られ
た。
【0023】このようにZn−V/Al23触媒を用い
た場合には、低収率ではあるが、高価なアルコルビン酸
を使用しなくてもフェノールが得られる。したがって、
この方法ではフェノールを低コストに製造できる可能性
がある。
【0024】実施例3 触媒として銅イオン交換H型ZSM−5ゼオライト触媒
(銅含有量1wt%)を用意した。このCu/HZSM
−5触媒を充填した固定床流通型反応器に、モル比でN
2O(酸化剤):N2(キャリヤーガス):ベンゼン=1
1:10:1の混合ガスを、触媒重量W(g-cat.)と全
ガス流量F(mol/min)との比W/Fが4.2×10
2(g-cat.mol/min)となるように供給して、1atm、
673Kの条件で反応させた。その結果、フェノールの
初期収率は6.3%であった。
【0025】一方、酸化剤としてO2ガスを用いた以外
は上記とほぼ同様な条件でベンゼンを反応させた場合、
フェノールの初期収率は0.8%であった。
【0026】上記のように酸化剤としてN2Oを用いて
ベンゼンを気相接触法により直接酸化してフェノールを
製造した場合、酸化剤としてO2を用いた場合よりも、
フェノールの収率を上げることができる。
【0027】
【発明の効果】以上詳述したように本発明の方法を用い
れば、ベンゼンの直接酸化によりフェノールを高収率ま
たは低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の反応における、アスコルビ
ン酸の量とフェノール収率との関係を示す図。
【図2】本発明の実施例1の反応における、酸素圧力と
フェノール収率およびH22生成量との関係を示す図。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年11月29日(1999.11.
29)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ベンゼン、還元剤としてアスコルビン
    酸、およびバナジウム担持アルミナ触媒を、酢酸水溶液
    溶媒に入れ、酸素雰囲気下においてベンゼンを直接酸化
    してフェノールを生成することを特徴とするフェノール
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 ベンゼン、および亜鉛−バナジウム担持
    アルミナ触媒を、酢酸水溶液溶媒に入れ、酸素雰囲気下
    においてベンゼンを直接酸化してフェノールを生成する
    ことを特徴とするフェノールの製造方法。
  3. 【請求項3】 銅担持ゼオライト触媒を充填した流通型
    反応器に、ベンゼンおよび酸化剤としてN2Oを供給
    し、ベンゼンを直接酸化してフェノールを生成すること
    を特徴とするフェノールの製造方法。
JP11018084A 1999-01-27 1999-01-27 ベンゼンの直接酸化によるフェノ―ルの製造方法 Expired - Lifetime JP3054705B1 (ja)

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