JP2000199042A - Cu―Ag合金線材の製造方法およびCu―Ag合金線材 - Google Patents
Cu―Ag合金線材の製造方法およびCu―Ag合金線材Info
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Abstract
線材を加工性良く製造する。また低いAgの添加量にお
いて高強度のCu−Ag合金を得る。 【解決手段】 2乃至14重量%のAgを含有し残部が
Cuおよび不可避的不純物からなるCu基合金の鋳造ロ
ッドに縮径のための冷間加工を行い、この冷間加工の途
中で1回以上の熱処理を施し、最後に熱処理を施した後
に90%以上の減面率で最終線径にまで冷間加工を行
う。さらに必要に応じより高い減面率をとることで極め
て高い強度を得る。
Description
性のCu−Ag合金線材の製造方法に関する。
たCu−Ag合金が開発され、高磁界発生用のロングパ
ルスマグネットなどの導体材料として用いられている。
このCu−Ag合金は、鋳造時に銅基中に銅と銀の共晶
相を網目状に形成させ、さらに加工中に熱処理を行うこ
とで銅基中に過飽和に固溶した銀を析出相として析出さ
せ、冷間加工との組合わせによりフィラメント状の組織
を得ることで、高い強度と導電率を両立させたものであ
る。
公平7−109027号公報に記載されたものがある。
この例においては、Cu基中に4乃至32原子%(7乃
至44重量%)のAgを含むCu−Ag合金を鋳造、冷
間加工の後に析出熱処理と冷間加工とを繰返して施すこ
とで、800乃至900MPa程度の引張強度と80%
程度の導電率(IACS)をもつ、強磁界ロングパルス
マグネット用のCu−Ag合金導体を得た旨が記載され
ている。
平6−103809号公報においては、Cuに10乃至
20原子%(16乃至30重量%)のAgを含むCu−
Ag合金を連続鋳造後に析出熱処理を施し、90%以上
の冷間加工を加えて直径0.05mmの極細線を製作
し、1000MPa程度の引張強度を得ている旨が記載
されている。
24重量%程度の高いAg濃度の組成をもつCu−Ag
合金の高強度化については研究が進んでいたが、Ag濃
度が低い領域については充分に検討が進んでいなかっ
た。Ag濃度と強度との関係を調べた研究の例として
は、金属材料技術研究所、坂井義和氏学位論文「高強度
・高導電率Cu−Ag合金の開発に関する研究」(19
96年3月)がある。上記論文の第25頁には、Cu−
Ag合金の引張強さとAg濃度との関係をあらわす図が
示されている。この図では、Ag濃度10wt%のCu
−Ag合金で860MPa、Ag濃度20wt%で10
20MPa、Ag濃度30wt%で1070MPa程度
の引張強さが得られている旨が示されており、Cu−A
g合金の引張強さは組成中でAgの濃度が高くなるにつ
れ上昇し、30wt%程度のAg濃度まで、引張強さの
上昇の効果が得られることがみとめられる。このように
従来においてはCu−Ag合金において高い強度を得る
ためには、組成中のAg濃度をある程度高くした方が有
利であると考えられていた。
冷間加工度に対する加工硬化の割合が大きく、鋳造上が
りのワイヤーロッドから細い線径の細線にまで加工を行
おうとすると所定サイズに加工する前に加工限に達し破
断が生じ易くなり、冷間加工の途中で適宜焼鈍を施す必
要があった。金属材料の加工性の判断には、引張り試験
を行った際の伸びの値を指標として用いることが一般に
行われているが、Cu−Ag合金においては種々の組成
において、減面率が85%から95%をこえるとこの伸
びの値が1%程度となることから、非常に高い減面率の
冷間加工を施すことは難しいと考えられていた。
る高集積化に伴い、パーソナルコンピュータのディスプ
レイなどに用いられる極細同軸ケーブルや、電子機器の
巻線に用いる銅合金線材として、より線径の細い銅合金
極細線への需要が高まっている。このような用途に用い
る極めて細い銅合金極細線には、従来の銅合金線材に比
べ、より高い単位断面積当りの強度が求められる。上記
に挙げた公報においては1000MPa程度の強度をも
つCu−Ag合金線材が得られている。これは銅合金の
強度としてはかなり高いものであるが、そのように高い
強度を持つ材料であっても、例えば線径0.02mmの
極細線とした場合には、30g程度のわずかな加重で破
断する。銅合金極細線を用いた極細同軸ケーブルや巻線
製品等の応用製品において強度を確保するため、あるい
はそれら応用製品の製造上での、銅合金極細線の撚り合
わせ工程や巻き線工程における作業を容易にするため
に、より高い強度と導電率を兼ね揃えた銅合金極細線が
求められている。
いる場合には、合金中のAgの含有率がなるべく低いこ
とが求められる。周知のようにAgは導電材料に用いる
金属としては非常に高価であることから、それを合金元
素として含むCu−Ag合金線材も必然的に他の銅合金
と比較して高価なものとなり、各種製品への応用が限ら
れる結果となっている。したがって、所望の特性を満た
した上でCu−Ag合金中のAgの含有率を下げること
は、Cu−Ag合金を市場で受入れやすいものとし、各
種製品への適用範囲を広げる上で極めて大きな意味を持
つ。
金材料は、その加工性が良好であることが重要である。
銅合金を鋳造上がりの一定の太さのロッドから長尺の細
い線材に加工する際には、必然的に高い減面率で冷間伸
線加工を行うことになる。長尺の線材を安定して製造す
るためには、このような伸線工程において加工性が良好
であり極細径に至るまで断線等が生じないことが重要と
なる。そのため、過度の加工硬化や金属組織上の欠陥等
による断線を生じず良好に伸線加工が可能な銅合金が求
められている。
4重量%のAgを含有し残部がCuおよび不可避的不純
物からなるCu基合金の鋳造ロッドに縮径のための冷間
加工を行い、この冷間加工の途中で1回以上の熱処理を
施し、最後に熱処理を施した後に90%以上の減面率で
最終線径にまで冷間加工を行うことである。
の鋳造ロッドに、縮径のための冷間加工と析出相の析出
のための熱処理を施し、最後の熱処理の後に減面率90
%以上の高い加工度で冷間加工を加えることにより、C
uとAgの共晶相および析出相が微細な繊維状組織をな
し、高い加工度によってもたらされる充分な加工硬化と
の相乗効果により、高い強度を持つCu−Ag合金線材
を得ることができる。上述のように従来においては、2
乃至14重量%程度の低いAgの含有率の範囲ではCu
とAgの共晶相の量が充分でないために、あまり高い強
度が期待できないと考えられていた。しかし本発明にお
いてはAg濃度を下げることにより冷間加工性を向上さ
せたため、最後の熱処理の後に高い加工度で冷間加工を
行うことができ、上記のように比較的低いAgの含有率
でも高い強度を得ることができる。
の含有率を2乃至14重量%としたのは、2%以下のA
gの含有率では熱処理を施しても充分なCuとAgの共
晶相と析出相が得られず、熱処理の後に高い加工度で冷
間加工を行っても充分な強度が得られないためである。
また14%以上のAgを含有した場合は加工性が低下
し、高い加工度で冷間加工を行い極細線にまで伸線加工
を行う際に何回もの焼鈍処理を必要とする。また高価な
Agを多量に含有させることはコストアップにつなが
る。上記Agの含有率の範囲はCu−Ag合金線材にお
いて、高い強度と導電率、良好な伸線加工性を得るのに
最適なものである。
最後の熱処理を施した後の冷間加工の減面率をさらに大
きくとり、99%以上の減面率で最終線径にまで冷間加
工を行うことである。
処理の後に高い減面率で冷間加工を行うことで2乃至1
4重量%の低いAg濃度のCu−Ag合金においても高
い強度を得ることができるが、冷間加工の減面率をさら
に高くとり99%以上とすることで、低いAg濃度のC
u−Ag合金においても従来の24重量%程度のAgを
含むCu−Ag合金と同等の強度を得ることができる。
g濃度の範囲は6乃至14重量%であり、より望ましく
は8乃至14重量%である。この範囲のAg濃度であれ
ば、高い冷間加工度による強度の上昇はより顕著なもの
となり、従来の24重量%程度のAgを含むCu−Ag
合金と同等以上の強度を得ることができる。また、最後
の熱処理の後の最終冷間加工の減面率をAg濃度に応じ
て更に高くとれば、従来得られなかった極めて強度の高
いCu−Ag合金線材を得ることができる。
600度の温度で1乃至100時間施すことである。
のように指定したのは次の理由による。析出熱処理の温
度が600℃を超えると極細線の強度と導電率が低下す
る。これは600℃を超える温度では析出物が再固溶す
るためと考えられる。一方400℃以下の温度では析出
相の析出が充分になされず、高い強度が得られない。析
出熱処理の温度を400乃至600℃とし、かつその場
合に熱処理時間を1乃至100時間、より望ましくは1
乃至10時間とすることで充分な析出熱処理の効果を得
ることができる。
に該当する熱処理条件で析出熱処理を行った公知例は存
在する。しかし、本発明においては、Cu−Ag合金の
Agの含有率を2乃至14重量%に指定し、上記条件で
析出熱処理を施した後に高い冷間加工を加えることで、
極めて高い強度と良好な導電率、加工性が得られる所に
特徴がある。
含有し残部がCuおよび不可避的不純物からなるCu基
合金の鋳造ロッドに、析出熱処理を施し、中間の冷間加
工を行い、次いで焼鈍・回復のための回復熱処理を施
し、更に90%以上の減面率で最終線径にまで最終冷間
加工を行うことである。
14重量%とした理由は上述の通りである。この組成を
もつCu−Ag合金の鋳造ロッドに、所望により最初に
冷間加工を行うことで結晶粒の微細化と歪みエネルギー
の蓄積がなされる。次いで析出熱処理を行うことでCu
基中に析出相が微細かつ良好に析出する。上記析出熱処
理を施した後、細線化のために冷間加工を行うが、直ち
に最終サイズまで冷間加工を進めるのではなく、ある程
度冷間加工を進めたところで焼鈍・回復のための回復熱
処理を施す。この回復熱処理により、冷間加工によって
低下したCu−Ag合金の伸び特性が回復し、伸線加工
性が改善される。本手段はCu−Ag合金線材において
も特に良好な加工性の要求される極細線の製造に適した
ものである。また、この回復熱処理により製品の導電率
が向上するという効果もある。上記回復熱処理を施した
後に、減面率90%以上の高い最終冷間加工を加える
と、共晶相が微細な繊維状組織をなし、また高い加工度
によってもたらされる充分な加工硬化との相乗効果によ
り、高い強度を持つCu−Ag合金線材を得ることがで
きる。
終冷間加工の加工度をさらに大きくとり、99%以上の
減面率で最終線径にまで最終冷間加工を行うことであ
る。
理の後に高い減面率で冷間加工を行うことで2乃至14
重量%の低いAg濃度のCu−Ag合金においても高い
強度を得ることができるが、冷間加工の減面率をさらに
高くとり99%以上とすることで、低いAg濃度のCu
−Ag合金においても従来の24重量%程度のAgを含
むCu−Ag合金と同等以上の強度を得ることができ
る。
ましいAg濃度の範囲は6乃至14重量%であり、より
望ましくは8乃至14重量%である。この範囲のAg濃
度であれば、高い冷間加工度による強度の上昇はより顕
著なものとなり、従来の24重量%程度のAgを含むC
u−Ag合金以上の強度を得ることができる。要求され
る最終の仕上り線径が非常に細く高いトータルの加工度
が必要とされる場合には、上記の中間の冷間加工と回復
熱処理を2回以上繰返すこともできる。
熱処理を行うこと自体は、一般論としては文献に記載例
がある。しかし本発明においては、Cu−Ag合金の極
細線化に際し上記指定のCu−Ag合金組成において上
述のような冷間加工と析出熱処理、回復熱処理を組合わ
せ、最後に非常に高い減面率で最終冷間加工を行うこと
で極めて高い強度と良好な加工性が得られる所に特徴が
ある。
至600℃の温度で1乃至100時間施し、上記回復熱
処理は200乃至450℃の温度で5乃至100時間施
すことである。
のは次の理由による。析出熱処理の温度が600℃を超
えると極細線の強度と導電率が低下する。これは上述の
ように600℃を超える温度では析出物が再固溶するた
めと考えられる。一方400℃以下の温度では析出相の
析出が充分になされず、高い強度が得られない。析出熱
処理の温度を400乃至600℃とし、かつ熱処理時間
を1乃至100時間、より望ましくは1乃至10時間と
することで充分な析出熱処理の効果を得ることができ
る。
のは次の理由による。熱処理温度が200℃以下では充
分な伸びの回復の効果が得られない。一方、回復熱処理
の温度の上限を450℃としたのは回復熱処理の際に析
出相が再固溶するのを避けるためである。また、上記回
復熱処理のより望ましい温度の範囲は300乃至380
℃である。ここで回復熱処理の下限を300℃としたの
はより充分な回復の効果を得るためである。一方上限を
380℃としたのは、回復熱処理をバッチ処理で行う際
に、線材同士の粘着が生じるのを防ぐためである。本手
段はCu−Ag合金線材の中でも特に極細線の製造に適
したものであるが、このような線材に熱処理を行う際
は、線材をボビン等に巻付けて雰囲気炉を用いて熱処理
を行う方法が効率的である。ここで極細線の製造工程に
おいては必然的に細い線径の線材に熱処理を施すことに
なる。このように細い線材を、長尺でボビン等に巻付け
て熱処理を行う場合、熱処理の温度が高いと巻き重ねら
れた線材同士で粘着が生じる。線材の粘着が生じると線
材の表面状態を荒したり、線材をボビンから引出す際に
断線が生じて作業ができなくなる。線材の線径が細い場
合には線材単位体積当りの表面積が大きいため、より線
材同士の粘着を起しやすく、線材の耐えられる荷重が低
いために、線材を引出す作業もより困難になる。上記の
回復熱処理の温度において熱処理時間を5乃至100時
間、より望ましくは10乃至50時間とすれば、充分な
回復熱処理の効果が得られる。
により鋳造されたものであることである。
ット鋳造に比べ冷却速度が速いので、銅と銀が相互に過
飽和に固溶し、また結晶粒が細く偏析が少ないという特
徴がある。本発明ではこの連続鋳造によって得られた鋳
造ロッドに上記のように冷間加工と析出熱処理、回復熱
処理を行い最後に高い減面率で最終冷間加工を行い極細
線等の線材とする。これにより、連続鋳造による微細な
鋳造組織に共晶相が形成され、その鋳造組織が減面加工
により繊維状とされ、強固なテンションメンバを形成す
ることで高い強度が得られる。
金線材の仕上りの最終線径を0.01乃至0.1mmと
することである。
法においては、このような範囲の仕上り線径としたとき
に特に高い強度がえられる。また本発明によるCu−A
g合金線材は伸線加工性が良好であるため、0.01m
mまで極細化しても断線が発生せず極細線径への加工が
容易である。
後にAg濃度に応じた高い減面率で最終線径にまで冷間
加工を行うことで、2乃至14重量%のAgを含有し残
部がCuおよび不可避的不純物からなるCu−Ag合金
よりなり、Cu基固溶相並びにCuとAgの共晶相およ
び析出相が冷間加工により繊維状に引きのばされた組織
を有し、引張り強度が1000MPa以上のCu−Ag
合金線材を得ることができる。さらに、Agの濃度を6
乃至14重量%とし、最後に熱処理を施した後に99%
以上でAg濃度に応じた減面率の冷間加工を行えば、引
張り強度が1300MPaをこえるCu−Ag合金線材
を得ることができる。これは従来より検討されていた2
4重量%程度の高いAg濃度をもつCu−Ag合金で得
られる引張り強度を上回るものであり、本発明により初
めて得られるものである。
鉛鋳型を有する水平連続鋳造機を用いて、種々の組成を
もつCu−Ag合金を連続鋳造することによりφ8mm
の鋳造ロッドを作成し、これらに各種条件で冷間加工、
熱処理を施しCu−Ag合金線材とし、特性の調査と比
較を行った。以下にその内容を記す。
有するCu−Ag合金の鋳造ロッドおよび比較用の純銅
のロッドを用意し、450℃で10時間の析出熱処理を
施した後に、加工硬化により破断が生じる加工限まで冷
間加工を施し、加工の途中で採取したサンプルおよび加
工限のサンプルについて引張り強度を測定した。結果を
図1の各種Ag濃度における加工度と引張り強さとの関
係のグラフに示す。図1では、縦軸には引張り強度を、
横軸には実験の結果をよりよく把握するために、冷間加
工の割合を減面率ではなく対数加工度で示している。ま
た、加工途中で採取したサンプルによる引張り強さの測
定値を黒丸で、加工限の対数加工度における引張り強さ
を+印で示している。なお、減面率および対数加工度
は、以下の式で定義される。
S0 )×100 対数加工度 ε = ln( S0 / S ) S0:加工前の断面積 S:加工後の断面積 したがって、減面率と対数加工度は R(%)=(1−( 1 / EXP ε))×100 の式により換算される。
においてはAg濃度が高いほど近似直線の傾きが大きく
冷間加工に対する引張り強さの増加の割合が大きくな
る。また同一の加工度ではAg濃度が高い材料ほど引張
り強さが高い。ここで、Ag濃度が24%の材料では、
冷間加工がおよそ99%の減面率(ε=4.6)に至っ
た段階で加工限に達して伸線中に断線が生じ、得られた
引張強さの最大は加工限のサンプルで1300MPaであ
った。これに対し、Ag濃度が2%から14%の材料で
はさらに高い加工度の冷間加工を施すことが可能であ
り、それにつれて引張り強さは上昇を続ける。Ag濃度
が6%から14%のものではより高い加工度で冷間加工
が行えることで、結果としてAg濃度が24%の場合に
得られる最大の1300MPaをこえる高い引張り強度
が得られている。以下、より詳しく説明する。 イ) 90%(ε=2.3)以上の減面率での加工を施
すことで、従来あまり高い強度が期待されていなかった
6から14%程度の低いAg濃度のCu−Ag合金にお
いても、600MPa以上と比較的高い引張り強さが得
られている。 ロ) さらに減面率を99%(ε=4.6)以上とすれ
ば、Ag濃度が6から14%のものについては1000
MPa程度以上の引張り強度となり、従来の高いAg濃度
のCu−Ag合金と同等以上の強度が得られる。またA
g濃度が2%の場合でも500MPa以上の強度が得られ
る。 ハ) Ag濃度14%、10%、6%のものについて
は、それぞれ減面率を99%(ε=4.6)、99.5
%(ε=5.3)、99.88%(ε=6.8)以上と
した場合、従来の高いAg濃度のCu−Ag合金では得
られない、1300MPaをこえる高い引張り強度が得
られている。 ニ) さらに、Ag濃度14%、10%、6%のものに
ついては、それぞれ減面率を99.7%(ε=5.
8)、99.8%(ε=6.2)、99.96%(ε=
7.9)以上とした場合には、1500MPaをこえる
極めて高い引張り強度が得られている。
り強度は冷間加工の加工度を増すにつれて上昇し、加工
限で最大強度が得られる。Ag濃度と加工限の強度との
関係を図2に示す。図2において縦軸には加工限での引
張り強度、横軸にはAg濃度を示している。加工限の強
度はAg濃度が2から14重量%程度まではAgの濃度
が増すにつれ上昇する。しかしAg濃度が14%程度で
強度の上昇は頭打ちとなり、14%以上のAg濃度では
逆に強度が低下している。これは、一定の加工度におい
てはAg濃度が高いほど引張り強度は高いものの、Ag
濃度が高いと加工限までの加工度は減少するために大き
な加工度の冷間加工を加えることができず、加工硬化に
よる強度の上昇の効果が充分に得られないためと説明で
きる。この6乃至14%程度の低いAg濃度の領域にお
いて24%程度の高いAg濃度の材料よりも高い強度が
えられるという知見は、Cu−Ag合金に対する具体的
な知見としては従来において見出されてておらず、我々
が実験の結果初めて到達したものである。
られる。Cu−Ag合金における高強度化のメカニズム
としては前述のように、イ)鋳造時においてのCuとA
gの共晶相の晶出、ロ)析出熱処理時においてのCu基
中に過飽和に固溶したAg基の析出がある。Cu−Ag
合金のAg濃度が高い場合には、イ)の共晶相の晶出量
が多く、網目状に晶出する際のバンド幅も太い。そのた
め高強度化が顕著であるが、加工度を高くした場合に破
断が生じやすくなる。一方、Cu−Ag合金のAg濃度
が2から14重量%程度の場合には、イ)の共晶相の晶
出する量が減少してバンド幅も細くなる。相対的にCu
基部分が増して加工性が改善され、また、ロ)の析出相
による高強度化の寄与率が増加する。ロ)の析出相はC
u基中に極めて微細に析出するために析出熱処理の後に
高い加工度で冷間加工を行っても破断が生じにくいと考
えられ、加工により析出相に転移が集積することで、結
果としてAg濃度が高い場合よりも大きな強度が得られ
ることとなる。しかし、これらメカニズムの詳細につい
ては現在検討中である。
加工限までの加工度が減少することについて、その模様
を図3に示す。図3において縦軸には加工限までの対数
加工度を、横軸にはAg濃度を示している。図3からわ
かるように、Cu−Ag合金に施すことのできる冷間加
工の加工度の大きさは、Agの濃度が増加するにつれて
減少している。
造の実施例を表1および表2に示す。表1では本発明を
線径0.5mm乃至1.2mmの線材に適用した実施例
1乃至4を、表2では線径0.02mm乃至0.05m
mの極細線に適用した実施例5乃至8を示す。
残部がCuからなるCu−Ag合金を、外周に水冷ジャ
ケットを設けた黒鉛鋳型を有する水平連続鋳造機によっ
て連続鋳造して、8mmφの鋳造ロッドを作成し、これ
に表1に示した各種条件で冷間加工、熱処理を施してC
u−Ag合金極細線を製造した。
に、まず61%の減面率で冷間加工を施しφ5mmと
し、次いで450℃の温度で10時間の析出熱処理を行
い、最後に94.2%の減面率で最終冷間加工を施し、
φ1.2mmの線材とした。本実施例においては121
0MPaの引張り強度が得られており、従来の24重量
%Agを用いたものと同等以上である。また本実施例に
おいて導電率は76%(IACS)が得られている。
に、まず61%の減面率で冷間加工を施しφ5mmと
し、次いで450℃の温度で10時間の析出熱処理を行
うまでは実施例1と同じであり、最後に99.0%の減
面率で最終冷間加工を施し、φ0.5mmの線材とし
た。本実施例においては最終の冷間加工の減面率を99
%以上としたことで、1530MPaと、従来のCu−
Ag合金にない極めて高い引張り強度が得られている。
また導電率は63%(IACS)であり、極めて高い引
張り強度にかかわらず比較的高い値が得られている。
に、冷間加工は施さずに450℃の温度で10時間の析
出熱処理を行い、次いで98.4%の減面率で最終冷間
加工を施し、φ1.0mmの線材とした。本実施例にお
いては1320MPaの引張り強度と71%(IAC
S)の導電率が得られている。
uからなるCu−Ag合金を連続鋳造して、8mmφの
鋳造ロッドを作成し、冷間加工は施さずに450℃の温
度で10時間の析出熱処理を行い、次いで98.4%の
減面率で最終冷間加工を施し、φ1.0mmの線材とし
た。本比較例では低いAgの濃度であるにもかかわら
ず、引張り強度は1115MPaが得られており、また
導電率は78%(IACS)と高い値が得られている。
残部がCuからなるCu−Ag合金を同様に鋳造して、
8mmφの鋳造ロッドを作成し、これに表2に示した各
種条件で冷間加工、熱処理を施してCu−Ag合金の極
細線を製造した。
ロッドに、まず61%の減面率で冷間加工を施しφ5m
mとし、次いで450℃の温度で10時間の析出熱処理
を行い、更に84%の減面率で中間の冷間加工を施しφ
2mmとし、次いで370℃の温度で15時間の回復熱
処理を施し、最後にそれぞれ、99.93%、99.9
6%、99.98%の減面率で最終冷間加工を施し、φ
0.05mm、φ0.04mm、φ0.03mmの極細
線とした。実施例5では最終の冷間加工において99.
9%以上の減面率で冷間加工を施しているため、140
0MPa以上の極めて高い引張り強さが得られている。
また実施例6乃至7では最終の冷間加工の減面率を更に
上げ、99.95%以上としているために、1500M
Paを超える引張り強さが得られている。また実施例5
乃至7のいずれにおいても、60%IACS以上の導電
率が得られている。金属材料では強度を上げた場合導電
率は低下するのが普通であるが、上記実施例は極めて高
い引張り強度を示すCu−Ag合金であるにもかかわら
ず、満足すべき程度の導電率を示している。またいずれ
も極細線への伸線加工性は良好であった。
理を2回繰返した例を示している。実施例8では370
℃の温度で15時間の回復熱処理を施すまでは実施例5
乃至7と同様であり、次いで97.8%の減面率で再度
中間の冷間加工を施し、次いで370℃の温度で60時
間の回復熱処理を再度施し、最後に99.6%の減面率
で最終冷間加工を施し、φ0.02mmの極細線とし
た。本実施例においては最終の冷間加工の減面率を99
%以上としたため、1200MPaを越える高い引張り
強度を示している。また導電率は71%と、実施例5乃
至7に比して高い値を示し、強度と導電率のバランスの
とれた極細線となっている。実施例8においても極細線
への伸線加工性は良好であった。
材および各種銅合金線材の屈曲特性の試験結果を示して
いる。本試験においてはサンプルとなる線材に図5に示
すように35gの荷重をかけた状態で曲げ半径0.5m
mで、90度首振り繰返し曲げ試験を行った。サンプル
としては、Ag濃度10重量%のCu−Ag合金による
1400MPaの引張り強度をもつ線径0.1mmの線
材を用いた。また比較のために純銅硬材、Cu−Zn合
金およびCu−Be合金による線材に対しても同一の試
験を行った。図に表すようにCu−Ag合金の線材にお
いては700回程度の耐屈曲特性が得られ、純銅硬材の
約50倍の特性が得られており、またほぼ同一強度のC
u−Be合金線材と比較しても2倍程度の特性が得られ
た。
広く用いられているCu−Zn合金やCu−Be合金に
対して強度および導電率に優れ、同程度の強度ものでは
より高い導電率が得られ、同程度の導電率のものではよ
り高い強度が得られるという特長がある。これに加え
て、屈曲特性においても高い特性をもつことが本試験に
おいて確認された。
金線材は、高い強度と導電率、耐屈曲特性をかねそなえ
ており、極細同軸ケーブル、小型振動コイル用巻線、ロ
ボット用ケーブル、デバイスネット用ケーブル、電磁シ
ールド用線材、抗菌用線材、電子機器用接点およびバネ
材料などに使用するのに適したものである。また、上記
の極細同軸ケーブルは、ノートパソコンにおいて蝶番部
を通して用いられたり医療用の内視鏡に用いられるなど
高い耐屈曲特性が必要とされているが、本発明によるC
u−Ag合金線材を用いることで大幅に耐屈曲特性を向
上させることができる。また本発明によるCu−Ag合
金線材のその他の応用としては、釣竿、テニスラケット
やゴルフクラブ等のシャフトの補強材などがある。
に熱処理を行った後に高い加工度で冷間加工を施すこと
で、次のうちの一つ以上の効果が得られるものである。 イ) 2から14重量%の低いAg濃度においても高い
強度をもつCu−Ag合金線材を製造することが可能と
なる。これにより低いAgの添加量であっても高強度の
Cu−Ag合金が得られ、Agの使用量の減少によりコ
ストの削減がはかれることでCu−Ag合金の用途の拡
大に大きく寄与する。 ロ) Ag濃度に応じた高い加工度で熱処理後の冷間加
工を行うことで、従来より検討されていた24重量%程
度の高いAg濃度をもつCu−Ag合金を上回る、きわ
めて高い引張り強度を得ることができる。 ハ) Ag濃度を従来より低くしていることで加工性が
向上し、冷間加工度を高くとることができるため、製造
工程において中間焼鈍の回数を少なくすることができ、
製造コストを削減できる。 ニ) 析出熱処理、回復熱処理およびその前後の各種加
工の条件を組合わせることで、高強度かつ高導電率のC
u−Ag合金線材を加工性良く製造できる。
すグラフである。
である。
影響を示すグラフである。
示すグラフである。
Claims (10)
- 【請求項1】2乃至14重量%のAgを含有し残部がC
uおよび不可避的不純物からなるCu基合金の鋳造ロッ
ドに縮径のための冷間加工を行い、この冷間加工の途中
で1回以上の熱処理を施し、最後に熱処理を施した後に
90%以上の減面率で最終線径にまで冷間加工を行うこ
とを特徴とするCu−Ag合金線材の製造方法。 - 【請求項2】2乃至14重量%のAgを含有し残部がC
uおよび不可避的不純物からなるCu基合金の鋳造ロッ
ドに縮径のための冷間加工を行い、この冷間加工の途中
で1回以上の熱処理を施し、最後に熱処理を施した後に
99%以上の減面率で最終線径にまで冷間加工を行うこ
とを特徴とするCu−Ag合金線材の製造方法。 - 【請求項3】前記熱処理は400乃至600℃の温度で
1乃至100時間施すことを特長とする請求項1乃至2
のいずれかに記載のCu−Ag合金線材の製造方法 - 【請求項4】2乃至14重量%のAgを含有し残部がC
uおよび不可避的不純物からなるCu基合金の鋳造ロッ
ドに析出熱処理を施し、中間の冷間加工を行い、次いで
焼鈍・回復のための回復熱処理を施し、更に90%以上
の減面率で最終線径にまで最終冷間加工を行うことを特
徴とするCu−Ag合金線材の製造方法。 - 【請求項5】2乃至14重量%のAgを含有し残部がC
uおよび不可避的不純物からなるCu基合金の鋳造ロッ
ドに析出熱処理を施し、中間の冷間加工を行い、次いで
焼鈍・回復のための回復熱処理を施し、更に99%以上
の減面率で最終線径にまで最終冷間加工を行うことを特
徴とするCu−Ag合金線材の製造方法。 - 【請求項6】前記析出熱処理は400乃至600℃の温
度で1乃至100時間施し、前記回復熱処理は200乃
至450℃の温度で5乃至100時間施すことを特徴と
する請求項4乃至5のいずれかに記載のCu−Ag合金
線材の製造方法。 - 【請求項7】前記鋳造ロッドは連続鋳造によるものであ
ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の
Cu−Ag合金線材の製造方法。 - 【請求項8】上記最終線径は0.01乃至0.1mmで
あることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載
のCu−Ag合金線材の製造方法。 - 【請求項9】2乃至14重量%のAgを含有し残部がC
uおよび不可避的不純物からなるCu−Ag合金よりな
り、Cu基固溶相並びにCuとAgの共晶相および析出
相が冷間加工により繊維状に引きのばされた組織を有す
るCu−Ag合金線材であって、1000MPa以上の
引張り強度を有することを特徴とするCu−Ag合金線
材。 - 【請求項10】6乃至14重量%のAgを含有し残部が
Cuおよび不可避的不純物からなるCu−Ag合金より
なり、Cu基固溶相並びにCuとAgの共晶相および析
出相が冷間加工により繊維状に引きのばされた組織を有
するCu−Ag合金線材であって、1300MPaをこ
える引張り強度を有することを特徴とするCu−Ag合
金線材。
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