JP2000186745A - バランスシャフト - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 エンジンの振動特性に対応してウェイトの質
量の変更が容易に可能なバランスシャフトを提供するこ
と。 【解決手段】 エンジンのクランク軸５に連動して回転
するシャフト部２と、シャフト部２に対して回転不能に
取り付けられ、シャフト部２の軸心に対して偏心するウ
ェイト部３と、を有するバランスシャフト１であり、ウ
ェイト部３は板状のウェイトプレート４をシャフト部２
の軸方向に複数枚重ね合せることによって構成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンの振動を
減少するためのエンジンバランサ装置に用いられるバラ
ンスシャフトに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より、クランクシャフトからチェー
ンやギヤを介して偏心軸をエンジンの回転に同期回転さ
せることにより、エンジンの振動と逆方向の振動を与え
て振動を相殺し、エンジンの静粛性を得る技術がある。

【０００３】このようなエンジンバランサ装置として、
実開昭５９−９９１１１号公報や実開昭６１−１８４１
４４号公報に開示される技術がある。

【０００４】実開昭５９−９９１１１号公報には、クラ
ンク軸と連動して回転するシャフト部の回転軸心に対し
て偏心したウェイト部とシャフト部とを一体に形成して
バランスシャフトを構成している。また、実開昭６１−
１８４１４４号公報には、ボルトによりウェイト部をシ
ャフト部に固定してバランスシャフトを形成する技術が
開示されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ここで、エンジンの振
動はピストンやコンロッドの慣性力によってその大きさ
が変化するものであり、エンジンが異なると振動も変化
する。そのためエンジンの振動を吸収するためにはバラ
ンスシャフトのウェイト部の質量または重心位置をエン
ジンに応じて変化させる必要がある。しかしながら上記
の実開昭５９−９９１１１号公報の技術では、ウェイト
部がバランスシャフトと一体で構成されているので、エ
ンジンに応じてバランスシャフト全体を変えなければな
らず、部品を共通化できないという問題がある。

【０００６】また、実開昭６１−１８４１４４号公報の
技術では、バランスシャフトのシャフト部とウェイト部
とが別体で構成されており、シャフト部は共通部品とし
て用いることが可能であるが、エンジンに応じてウェイ
ト部全体を変える必要があり、この場合にも部品の共通
化が完全に行われていない。

【０００７】そこで本発明は、上記問題点を解決すべく
エンジンの振動特性に対応してウェイトの質量の変更が
容易であるとともに、部品の共通化が可能なバランスシ
ャフトを提供する事を技術的課題とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明の請求項１の発明は、エンジンのクランク軸に
連動して回転するシャフト部と、シャフト部に対して回
転不能に取り付けられ、シャフト部の軸心に対して偏心
するウェイト部と、を有するバランスシャフトであっ
て、板状のウェイトプレートをシャフト部の軸方向に複
数枚重ね合せることによってウェイト部を構成した。

【０００９】本発明によると、クランクシャフトの回転
に伴ってバランスシャフトが回転し、エンジンバランサ
装置による振動がエンジンの振動と釣り合ってエンジン
の振動が相殺される。複数のウェイトプレートを重ね合
せることによってウェイト部を構成しているので、異な
る振動特性のエンジンに採用する場合にはウェイトプレ
ートの数を変化させるだけでウェイト部の質量を変化さ
せることができ、ウェイト部全体またはバランスシャフ
ト全体を変更する必要がない。したがって、部品の共通
化が可能になる。

【００１０】

【実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照して説
明する。図１〜図４は本発明の第１の実施の形態におけ
るバランスシャフト１に係る図である。第１の実施の形
態のバランスシャフト１は直列４気筒エンジンに用いら
れるものであり、図１に示すようにハウジング７内に２
本並行に配設されている。２本のバランスシャフト１
Ａ、１Ｂは端部で噛合しており、第１バランスシャフト
１Ａはクランク軸５の回転に伴って回転し、第２バラン
スシャフト１Ｂは１対の反転ギヤ８Ａ、８Ｂにより第１
バランスシャフト１Ａと逆方向に回転する。

【００１１】バランスシャフト１について説明する。図
２〜図４は第１バランスシャフト１Ａ及び第２バランス
シャフト１Ｂの主要部を示す図であり、第１バランスシ
ャフト１Ａと第２バランスシャフト１Ｂとはクランク軸
５との連結に関して異なり、それ以外の主要な構成は同
一であるため、同じ符号を付して説明する。バランスシ
ャフト１は、クランク軸５の回転に伴って回転するシャ
フト部２と、シャフト部２に対して回転不能に取り付け
られ、シャフト部２の軸心に対して重心が偏心するウェ
イト部３と、を有するバランスシャフト１であり、板状
のウェイトプレート４をシャフト部２の軸方向に複数枚
（１７枚）重ね合せることによってウェイト部３を構成
している。

【００１２】各構成について詳細に説明する。シャフト
部２の両端はハウジング７に軸受されており、ハウジン
グ７の外部に突出するシャフト部２の端部はベルト６に
よりクランク軸５と連結されて動力伝達が行われ、クラ
ンク軸５の２倍の回転数で回転する。また、シャフト部
２の外周面の一部には軸心方向に沿ってスリット２ａが
穿設されている。

【００１３】ウェイト部３は、複数枚の板状のウェイト
プレート４をシャフト部２の軸方向に重ね合せることで
構成される。各ウェイトプレート４は半円形状を呈して
アンバランスとし、半円形状の中心にシャフト部２の断
面形状に対応する貫通穴４ａが設けられ、シャフト部２
に貫通穴４ａを嵌め込むことによって１７枚のウェイト
プレート４をシャフト部２に取付ける。貫通穴４ａには
シャフト部２のスリット２ａに対応する爪部４ａ１が形
成されており、爪部４ａ１がスリット２ａに嵌め合わさ
ることでウェイトプレート４がシャフト部２に対して回
転しないようになっている。各ウェイトプレート４同士
の接触面には凹部４ｂ及び凸部４ｃが形成されており、
ウェイトプレート４を重ね合せる際に隣り合うウェイト
プレート４の凹部４ｂと凸部４ｃとが嵌合することで各
ウェイトプレート４が回転方向に対して一体に固定され
る。このように一旦シャフト部２に嵌め込まれたウェイ
トプレート４は一体のウェイト部３として構成される。

【００１４】次に、第１の実施の形態におけるバランス
シャフト１の作用について説明する。図示しないエンジ
ンが始動すると、クランク軸５の回転に伴って第１バラ
ンスシャフト１Ａが回転し、第２バランスシャフト１Ｂ
は第１バランスシャフト１Ａと反対方向に回転する（図
１の矢印方向）。直列４気筒エンジンの場合にはクラン
ク軸５が１回転すると４つの気筒全てのピストン及びコ
ンロッド（図示せず）が１回の往復動を行う。このと
き、エンジン回転の１次振動（エンジン回転の１倍の周
波数の振動）とクランクシャフトのカウンターウェイト
とが釣り合うことでエンジン回転の１次振動は発生しな
いが、エンジン回転の２次振動（エンジン回転の２倍の
周波数の振動）が発生する。バランスシャフト１はクラ
ンク軸５の２倍の回転数で回転するように設定されてお
り、４つのピストン及びコンロッドのそれぞれの往復動
に伴ってバランスシャフト１が回転する。したがって、
ピストン及びコンロッドの往復動により発生する２次振
動がウェイト部３の慣性力により発生する逆位相の振動
で打ち消され、エンジンの振動が相殺される。

【００１５】第１の実施の形態によると、エンジンを変
えた場合、即ちピストン及びコンロッドの往復動による
慣性力が異なる場合には、ウェイト部３を構成するウェ
イトプレート４の枚数を変化させるだけの簡単な作業で
対応が可能である。例えば、ピストン及びコンロッドの
質量が軽くなった場合にはウェイトプレート４の枚数を
減らし、逆にピストン及びコンロッドの質量が重くなっ
た場合にはウェイトプレート４の枚数を増やし、慣性力
により発生する振動が釣り合うように設定すればよい。
このように、エンジンを変えてもウェイトプレート４の
枚数が変化するだけであるので、部品の共通化に際して
非常に好適である。

【００１６】本発明の第２の実施の形態について図５〜
図７を用いて説明する。第２の実施の形態におけるバラ
ンスシャフト１１は、外周形状が円形に形成され内周に
シャフト部１２の中心から偏心した中空部１４ｄを設け
てアンバランスとしたウェイトプレート１４を、シャフ
ト部１２の軸方向に複数枚（１７枚）重ね合せてウェイ
ト部１３を構成したものである。ウェイト部１３の両端
に重ね合わされるウェイトプレート１４Ａ、１４Ｂには
中空部が設けられておらず、円板状の板により構成され
ている。それ以外の構成は上述した第１の実施の形態と
同一であるものとして、説明を省略する。

【００１７】第２の実施の形態によると、第１の実施の
形態の効果に加え、ウェイトプレート１４の外周形を円
形としたことでウェイト部１３が円筒形状に構成される
ので、バランスシャフト１１がオイル内で回転する際に
オイルの攪拌による影響が少なくなる。これによってバ
ランスシャフト１１の回転駆動力が低減され、エンジン
の駆動力が増加する。また、オイルの泡立ちや温度上昇
が防止できる。ここで、オイルの流入防止の観点からは
ウェイトプレート１４Ａ、１４Ｂを設けることが好まし
いが、中空部１４ｄにオイルが流入してもオイルバラン
スシャフト１１が回転すると遠心力によって中空部ｄ内
のオイルが吐出されるので、ウェイトプレート１４Ａ、
１４Ｂを取り除いても機能上特に問題はない。

【００１８】以上、本発明の実施の形態について説明し
たが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものでは
なく、本発明の主旨に沿った形態のバランスシャフトで
あればよく、例えば複数のウェイトプレートを一体的に
固定する際に、各ウェイトプレートの貫通穴と偏心して
位置決め用の穴を設け、この穴にボルトを通して固定し
てもよい。また、シャフト部とウェイト部との連結部分
に関しても、圧入や溶接、或いはロウ付け等により相対
回転を規制してもよい。更に、各ウェイトプレートをシ
ャフト部と連結すればウェイトプレート同士を結合する
必要が無くなり、各ウェイトプレート同士を一体に結合
すればシャフト部とは１枚のウェイトプレートのみとの
結合でもよい。

【００１９】

【発明の効果】本発明によると、複数のウェイト部材を
重ね合せることによってバランサウェイトを構成してい
るので、異なる振動特性のエンジンに採用する場合には
ウェイトプレートの数を変化させるだけでよく、バラン
スシャフト全体またはウェイト部全体を変更する必要が
ない。したがって、部品の共通化が可能になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の実施の形態に係るエンジンバラ
ンサ装置の概略図である。

【図２】第１の実施の形態のバランスシャフトの断面図
である。

【図３】第１の実施の形態のウェイトプレートの正面図
である。

【図４】図３のＡ−Ａ断面図である。

【図５】本発明の第２の実施の形態のバランスシャフト
の断面図である。

【図６】第２の実施の形態のウェイトプレートの正面図
である。

【図７】図６のＢ−Ｂ断面図である。

【符号の説明】

１、１１・・・バランスシャフト ２、１２・・・シャフト部 ３、１３・・・ウェイト部 ４、１４・・・ウェイトプレート ５・・・クランク軸 ６・・・ベルト ７・・・ハウジング

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エンジンのクランク軸に連動して回転す
   るシャフト部と、 該シャフト部に対して回転不能に取り付けられ、前記シ
   ャフト部の軸心に対して偏心するウェイト部と、 を有するバランスシャフトであって、 板状のウェイトプレートを前記シャフト部の軸方向に複
   数枚重ね合せることによって前記ウェイト部が構成され
   ることを特徴とするバランスシャフト。
2. 【請求項２】 前記複数のウェイトプレートにはシャフ
   ト部の軸方向と垂直な断面形状に対応する貫通穴が形成
   され、前記シャフト部を前記ウェイトプレートの貫通穴
   に挿入することによってウェイト部が構成されることを
   特徴とする、請求項１のバランスシャフト。
3. 【請求項３】 前記ウェイト部がシャフト部に対して相
   対回転しないように各ウェイトプレートがシャフト部に
   取り付けられることを特徴とする、請求項１のバランス
   シャフト。
4. 【請求項４】 前記シャフト部は、軸方向と垂直な断面
   形状が非真円であることを特徴とする、請求項３のバラ
   ンスシャフト。
5. 【請求項５】 前記ウェイト部を構成する複数のウェイ
   トプレートがバランスシャフトの回転方向に対して一体
   的に固定されることを特徴とする、請求項１のバランス
   シャフト。
6. 【請求項６】 前記ウェイトプレート同士の接触面には
   凹部及び凸部が形成され、隣り合うウェイトプレートの
   凹部と凸部が嵌合することにより各ウェイトプレートを
   回転方向に対して一体的に固定することを特徴とする、
   請求項５のバランスシャフト。
7. 【請求項７】 前記複数のウェイトプレートはボルトに
   より回転方向に対して一体的に固定されることを特徴と
   する、請求項５のバランスシャフト。
8. 【請求項８】 前記ウェイトプレートは外周形状が円形
   であることを特徴とする、請求項１のバランスシャフ
   ト。