JP2000178827A - クッション材用短繊維とクッション材、およびその製造方法 - Google Patents

クッション材用短繊維とクッション材、およびその製造方法

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JP2000178827A JP35586998A JP35586998A JP2000178827A JP 2000178827 A JP2000178827 A JP 2000178827A JP 35586998 A JP35586998 A JP 35586998A JP 35586998 A JP35586998 A JP 35586998A JP 2000178827 A JP2000178827 A JP 2000178827A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】車両用などの高温度下に晒される機会の多い用
途に対し、高熱耐へたり性と有し、且つ、柔らかな風合
いと弾力性に富んだクッション材に適したクッション材
用ポリエステル短繊維、クッション材を提供すること。 【解決手段】 極限粘度〔ηs〕が0.66以上、強伸
度曲線における定応力伸長域伸度が20%以下、破断伸
度が80〜180%、沸水収縮率と180℃乾熱収縮率
がともに−5〜5%、ヤング率が50g/d以下、ガラ
ス転移温度が75℃以上であるクッション材用ポリエス
テル短繊維であり、さらに該クッション材用ポリエステ
ル短繊維を母材繊維として用い、該母材繊維が熱接着繊
維で点接合されている70℃耐ヘタリ性が70%以上で
あるクッション材である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、柔らかな風合いと
弾力性に富み、かつ、車両用などの高温度下に晒される
機会の多い用途に対し高熱耐へたり性を有するクッショ
ン材に適したクッション材用ポリエステル短繊維、クッ
ション材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】これまでクッション材には、主としてポ
リウレタンフォームが使用されてきたが、リサイクルで
きない点や通気性が悪く快適性の面でも問題があり、近
年、ポリエステル繊維を主体とした繊維クッション材が
提案されている。
【0003】繊維クッション材は、母材繊維と熱接着繊
維を混ぜてカード機で一度開繊した後、熱処理機で母材
繊維を熱接着する方法が知られている。この方法におい
て、通常の繊維クッション材はウレタンフォームに比較
して柔らかさ・弾力性などの風合い面で劣るものであっ
た。
【0004】本発明のクッション材用ポリエステル短繊
維は、母材繊維として使用するものであり、該繊維が特
定の極限粘度、強伸度特性、収縮特性、ガラス転移温度
を有することにより、上記のクッション材としたときの
欠点を改善したものである。
【0005】本発明のクッション材用ポリエステル短繊
維は、強伸度特性以外に、特に収縮特性に特徴があるも
のである。従来から、クッション材用途以外の分野(特
に紡績糸、長繊維、またそれらを使用した織編物)で、
低収縮または自発伸長性を示す繊維には以下のようなも
のが知られている。
【0006】例えば、特公平3−42334号公報のよ
うに異収縮の短繊維を混紡することにより嵩高性を有す
る紡績糸が得られ、皺になりにくく反発性の良好な織編
物が得られること等は広く知られている。その低収縮側
の繊維に伸度が80%以上、伸長剛性率が600kg/
mm2 以下、結晶化度が25%以上、熱応力が40mg
/d以下、沸水収縮率が3%以下の短繊維を用いること
が開示されている。しかし、この短繊維のみをクッショ
ン材用の母材繊維として用いた場合、短繊維化で必須の
カード工程を通すと、この工程張力によって部分的に延
伸が発生し、糸物性が大きく変化する欠点を有してい
た。
【0007】また、特公昭60−54404号公報、特
公昭62−7300号公報、特公昭63−66923号
公報には、自発伸長性のある短繊維が開示されている。
特に、特開平6−346321号公報には、高い固有粘
度のポリマーを用いて3000m/分以上の高速紡糸を
行い、低温で延伸した後、弛緩熱処理して自発伸長性の
あるマルチフィラメントとすることが開示されている。
しかしながら、これらの自発伸長性のある短繊維、もし
くはマルチフィラメントのいずれもが、高速紡糸によっ
て得られたいわゆるPOYを延伸した後、弛緩熱処理し
たものか、弛緩熱処理した後、延伸して得たものであ
り、延伸工程を経るため、ヤング率が高くなりやすく、
クッション材を成形した後の柔らかさが不十分となって
しまう。
【0008】更に、柔軟なポリエステルマルチフィラメ
ントもしくは短繊維を得る手段として、特開昭53−5
2721号公報には、固有粘度の高いポリエステルチッ
プを用いて、紡糸速度4000m/分以上の超高速度で
溶融紡糸して得ることが開示されている。該公報によれ
ば、延伸熱処理を行うことなく実用的なポリエステルマ
ルチフィラメントもしくは短繊維が得られるものの、い
わゆる超高速紡糸で得られるため、ヤング率が高いほ
か、超高速紡糸設備が必要であった。
【0009】特開昭62−199827号公報、特開昭
62−199828号公報で、高速紡糸によって得られ
るPOYを特定の条件でストレッチ熱処理することによ
って、極めて柔軟な織編物を得ることのできる紡績糸が
本出願人によって開示されている。該公報による紡績糸
を用いるとウールに似た曲げ特性を有する優れた織編物
が得られるものの、高速紡糸設備が必要であるという欠
点があった。更に、該公報は紡績糸とした後に織編物と
して用いるものであり、熱成型して得るクッション材用
途として用いるなどという点に関しては何ら記述されて
いないのである。
【0010】一方、特開平4−194007号公報、特
開平4−194010号公報には、断面積が異なる複数
の吐出孔群を有する紡糸口金を用いて重合体からなる混
繊糸を得る方法において、吐出孔群の少なくとも1群の
吐出孔の断面積を連続的に拡大する吐出孔とし、最大の
断面積が少なくとも0.785mm2 の紡糸口金として
1群を高ドラフトで溶融紡糸することによって、一発紡
糸で混繊糸を得る製造方法が開示されている。該公報に
よれば、比較的低い紡糸速度で太デニール成分の配向度
および伸度レベルを細デニール成分の配向度および伸度
レベルよりも高くすることが可能であることが示されて
いる。しかしながら、該異繊度混繊未延伸糸は、延伸・
熱処理が必要であり、得られる延伸糸は高配向、低伸度
で、ヤング率が高く、クッション材に成型した際の柔ら
かさに欠ける欠点を有する。
【0011】特開平10−251933号公報には、紡
糸速度2500m/分以下で巻き取ったポリエステル未
延伸束を用いて熱伸長性ポリエステル短繊維を製造する
方法が開示されている。該繊維は、金属酸化物を1重量
%以上含有、三〜六葉断面形状の未延伸糸からなる未延
伸束を特定範囲で延伸、弛緩熱処理を施す方法である。
この場合も、繊維の添加物量・断面に限定がある他、延
伸工程を経るため、ヤング率が高くなりやすく、柔らか
さの点で不十分である。
【0012】以上述べたように、これまで自発伸長性を
示す繊維は得られていたが、クッション材用途に用いる
等ということはなされておらず、更に超高速紡糸設備を
必要とする場合や、延伸工程を経てヤング率が高く柔ら
かさに欠けるものでしかなく、ウレタンフォームの如
き、柔らかな風合いと弾力性に富むクッション材にはな
り得なかった。
【0013】更に、ウレタンフォームと比べて繊維クッ
ション材は、真夏の炎天下に放置された自動車の車内の
温度が示すといわれている70℃条件下等での高熱耐へ
たり性が著しく劣る欠点を有している。
【0014】一般的な繊維クッション材としてポリエス
テル系の繊維を溶融接着させたクッション材が開発され
ている(特開昭57−101018号公報、特開昭58
−31150号公報等)が、これらのクッション材は、
低融点の接着成分を接着剤に使うものであるために40
℃以上の雰囲気での塑性変形が激しく、このため、70
℃条件下等での高熱耐へたり性が著しく劣り、一般に車
両用では使用不可能なものである。
【0015】また、車両用クッション材の高熱耐へたり
性を向上させることを目的として母材繊維、熱接着繊維
の両面からさまざまなアプローチがなされている。
【0016】母材繊維の面からは、特開平6−1658
84号公報、特開平7−54253号公報のようにガラ
ス転移温度が80℃以上、融点150℃以上のポリエス
テル繊維が融点80℃以上の共重合ポリエステル系熱接
着繊維で接合されたポリエステル固綿が開示されてい
る。これらの繊維については、70℃条件下等での高熱
耐へたり性の向上は認められるものの、通常の紡糸・延
伸工程により得られた繊維ではヤング率が高く、該繊維
によりクッション材を作製した場合には、ウレタンフォ
ームの如き、柔らかな風合いと弾力性に富むクッション
材にはなり得ないのである。
【0017】熱接着繊維の面からは、例えば、特開平5
−247724号公報、特開平5−247819号公報
等で、芯鞘構造からなる熱接着成分の鞘部にポリエステ
ルエラストマーを用いた熱接着繊維、クッション材が提
案されているが、ポリエステルエラストマーの耐熱性が
考慮されていないため、比較的高い温度雰囲気下に長時
間晒されると接着部が劣化して耐久性が劣る欠点があ
る。
【0018】特開平6−200461号公報等では、熱
接着繊維の鞘部として耐熱性を向上させたポリエステル
エラストマーを用い、更に母材繊維としてガラス転移温
度が65℃以上の熱可塑性ポリマーを用いた耐熱性繊維
構造体が提案されているが、ポリエステルエラストマー
自体のガラス転移温度は依然として低く、高熱耐へたり
性は十分とは言えないものであった。
【0019】本発明者らの各種検討によれば、母材繊維
の極限粘度、強伸度特性、収縮特性、ガラス転移温度を
特定範囲とすることで、柔らかな風合いと弾力性に加
え、高熱耐へたり性を満足させ得ることが分かった。更
に70℃条件下等での高熱耐へたり性の向上を図るに
は、熱接着繊維のガラス転移温度と融点の関係も関わっ
ている。本発明の母材繊維に加え、熱接着繊維のガラス
転移温度と融点の関係を特定の範囲とすることでクッシ
ョン材の70℃耐へたり性をさらに向上させることが可
能となる。
【0020】以上のように、従来技術では通常の雰囲気
下で用いられる母材繊維およびクッション材は得られた
としても、特に高温に晒される車両用クッション材分野
において柔らかな風合いと弾力性に富み、かつ、高熱耐
へたり性が満足したクッション材を提供することはでき
なかった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来技術では達成できなかった、柔らかな風合いと弾力
性に富み、かつ、高熱耐へたり性を有するクッション材
に適した母材繊維、クッション材、および該母材繊維の
製造方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明のクッション材に
適した母材繊維は、極限粘度〔ηs〕が0.66以上、
強伸度曲線における定応力伸長域伸度が20%以下、破
断伸度が80〜180%、ヤング率が50g/d以下、
沸水収縮率と180℃乾熱収縮率がともに−5〜5%、
ガラス転移温度が75℃以上であることを特徴とするク
ッション材用ポリエステル短繊維であり、また、本発明
のクッションは、該本発明のポリエステル繊維を母材繊
維として用い、該母材繊維が熱接着繊維で点接合されて
いる70℃耐へたり性が70%以上であることを特徴と
するクッション材である。
【0023】また、本発明のクッション材用ポリエステ
ル短繊維の製造方法は、極限粘度〔ηc〕が0.68以
上であるポリエステルからなるチップを口金面深度70
mm以下で、紡糸速度2000m/分以下で紡糸ドラフ
ト5000以上とした口金を用いて溶融紡糸し、得られ
た未延伸糸を、乾熱140〜200℃で1〜7%の緊張
状態で熱処理し、しかる後短繊維化して、上記本発明の
クッション材用ポリエステル短繊維を製造することを特
徴とするものである。
【0024】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。
【0025】本発明におけるクッション材用ポリエステ
ル短繊維(以下、母材繊維という)は、極限粘度〔η
s〕が0.66以上である。極限粘度〔ηs〕が0.6
6未満では、後述する製造方法において、強伸度曲線に
おける定応力伸長域伸度が20%以下、破断伸度が80
〜180%である母材繊維とすることができにくくな
る。また、極限粘度〔ηs〕が0.66未満では、本発
明の目的とする柔らかな風合いと弾力性に富んだクッシ
ョン材を得ることが困難になる。通常の極限粘度〔η
s〕である0.62程度に比べて極限粘度〔ηs〕が
0.66以上でより高い弾力性を発揮する理由は明確で
はないが、分子鎖が長いことにより、結晶に囲まれた非
晶が多くなり、曲げなどの変形に対して戻りやすくなる
ためと考えられる。
【0026】また、本発明における母材繊維は、強伸度
曲線における定応力伸長域伸度が20%以下のものであ
る。本発明における定応力伸長域とは、図1の1のよう
に一定応力で伸長する領域(イ)の伸度を示し、定応力
伸長域伸度20%以下とは、従来の高速紡糸によって得
られる、いわゆるPOYの定応力伸長域伸度よりも十分
に低い伸度である。後述する強伸度測定における強伸度
曲線の定応力伸長域伸度が20%を越えると、カード工
程で受ける工程張力によって繊維が伸長し、糸物性が大
きく変化してしまう。
【0027】また、本発明における母材繊維は、破断伸
度が80〜180%のものである。破断伸度が80%未
満では、ヤング率が高くなる傾向にあり、本発明の目的
とする柔軟な風合いが得難い。一方、破断伸度が180
%を越えると降伏点応力が低くなり、カード工程で受け
る工程張力によって繊維が伸長しやすく、繊維の均一性
が低下し、糸物性も大きく変化してしまう。
【0028】また、本発明における母材繊維は、沸水収
縮率と180℃乾熱収縮率がともに−5〜5%のもので
ある。沸水収縮率と180℃乾熱収縮率の一方、または
両方が−5%未満である場合、成形体とした際に金型か
ら繊維が突出し、金型に合った目的の成形体が得られな
くなってしまう。一方、沸水収縮率と180℃乾熱収縮
率の一方、または両方が5%を越える場合、クッション
材を熱成形した場合に、風合いが硬くなる他、今度は収
縮により金型に合った目的の成形体が得られなくなって
しまう。収縮サイドよりも、自発伸長サイドにあった方
が弾力性に富んだクッション材が得られる傾向にあり、
沸水収縮率と180℃乾熱収縮率がともに−5〜2%の
範囲がより好ましい。
【0029】また、本発明における母材繊維はヤング率
が50g/d以下であり、40g/d以下であること
が、本発明の柔軟な風合いを発揮することができるので
好ましい。
【0030】また、本発明における母材繊維は、ガラス
転移温度が75℃以上であることが必要である。このこ
とは、クッション材の70℃条件下等での高熱耐へたり
性向上には必須である。
【0031】更に、高い耐熱耐へたり性を得るために
は、ガラス転移温度は80℃以上が好ましく、更に好ま
しくは100℃以上であることである。
【0032】本発明でいう母材繊維を構成する重合体と
しては、ポリエチレンテレフタレート(PET)以外
に、ポリエチレンナフタレート(PEN)、およびその
共重合体などの高いガラス転移温度を持つポリエステル
がより好適に用いられる。
【0033】母材繊維の横断面の形状は、円形であって
も異形であってもよいが、中空断面であることが最も好
ましい。中空断面とすることにより、口金直下のチムニ
ーによる冷却を強化し、繊維を非対称に冷却することが
可能となる。さらに、本発明では後述するように、口金
の孔径や面積を著しく大きくして紡糸ドラフトを高く設
定して紡糸を行うため、冷却効果が大きく、従来の中空
繊維の非対称冷却の場合よりも格段に高いレベルの構造
捲縮が得られるのである。その結果、クリンパーにより
付与する機械捲縮に加え、繊維自身が構造捲縮を有し、
クッション材としたときにより柔らかで、良好な弾力性
を発現するのである。
【0034】また、本発明の母材繊維を用い、熱成形に
より熱接着繊維で点接合して一体構造化したクッション
材は、70℃耐へたり性が70%以上であることが必要
である。70%未満であれば、夏場など高温雰囲気下で
荷重を受けたとき、クッション材がへたりやすく歪回復
しないため、本発明の所期の効果を十分に得ることがで
きない。
【0035】本発明者らの知見によれば、本発明に係る
母材繊維を少なくとも60%以上使用したクッション材
は、70℃耐へたり性は70%以上であり、好ましく
は、85%以上、より好ましくは、90%以上を示すも
のである。
【0036】更に、本発明の母材繊維を使用しクッショ
ン材を作製する場合には、ガラス転移温度、融点が、下
記式(1)〜(3)を同時に満足する重合体を少なくと
も一部に使用した熱接着繊維を使用することが好まし
い。
【0037】75≦Tg ≦150 ・・・(1) 0≦Tm −Tg ≦ 80 ・・・(2) Tm ≦200 ・・・(3) 該熱接着繊維は、特定範囲に特異の熱特性を有する重合
体により構成される。用いられる重合体のガラス転移温
度Tg は、75℃以上150℃以下であることが好ま
しい。75℃未満では70℃雰囲気下で歪を加えられる
と熱による接着点が容易に塑性変形を生じるため、高熱
耐へたり性が著しく劣り、本発明の目的を達成でき難い
のである。逆に、150℃を越えると熱接着繊維として
の機能が低下し、圧縮がかかった際に接着部分が脆く、
簡単に破壊されて永久歪が残ってしまい好ましくないの
である。上記の目的を達成するためには、Tg は、9
0℃以上140℃以下であることが好ましい。
【0038】また、高熱耐へたり性を付与するための重
合体の融点とガラス転移温度との差、Tm−Tgは0℃
以上80℃以下であることが必要である。TmとTg
は、できるだけ近い値である方が成形温度下での熱接着
性が良好となる。最も良好なのは、Tm−Tg=0、す
なわち、Tm=Tgのときである。
【0039】Tm−Tgが80℃を越える場合は、熱接
着繊維の融点が高くなり、その結果、成形後の熱接着力
の低下が生じ、歪がかかった際に接着部分が簡単に破壊
されて永久歪が残ってしまうのである。上記の目的を達
成するためには、Tm−Tgは、0℃以上50℃以下で
あることが好ましく、50℃以下であれば、熱接着性も
良好であり、歪みに対して接着部分が簡単に破壊される
こともない。
【0040】また、重合体の融点は200℃以下である
ことが必要である。200℃を越えると、成形体を作成
するときの成形温度を高く設定する必要が生じ、その結
果、母材繊維に軟化・融解が生じ、高熱耐へたり性が低
下してしまうのである。また、クッション材の風合いも
硬くなってしまい好ましくない。
【0041】熱接着繊維の横断面の形状は、円形であっ
ても異形であってもよい。
【0042】また、単成分繊維、複合繊維いずれでもよ
く、複合繊維の場合は熱特性を規定した該重合体が少な
くとも表面に露出していればよく、複合する重合体のガ
ラス転移温度は母材繊維と同様に75℃以上が好まし
く、更に高い耐熱耐へたり性を得るためには、ガラス転
移温度は80℃以上、更に好ましくは100℃以上であ
る。紡糸後、ついで延伸、捲縮付与して、更に所望の繊
維長に切断し得ることができる。
【0043】上述の該熱接着繊維は、繊維クッション材
を構成する繊維として使用することができる。
【0044】熱接着繊維のデニールは、通常1〜10デ
ニール程度であればよいが、5デニール未満が好まし
い。繊維長は、5〜100mmであればよく、接着点の
増加・分散性の向上という観点から見れば60mm以下
であることがより好ましい。
【0045】クッション材中における熱接着繊維の好ま
しい含有量は、5重量%以上40%重量以下、より好ま
しくは10重量%以上30重量%以下である。5重量%
以下では、クッション材中に熱接着点として形成される
3次元網目構造が少なく、歪が加わったときに物理的変
形が生じ、耐へたり性、耐久性、クッション性が著しく
低下してしまうので好ましくない。40重量%を越える
と、熱接着点が増える点は好ましい。しかし、風合いが
硬くなる他、歪が加わったときの変形に対して、耐へた
り性、耐久性が著しく低下してしまい好ましくないので
ある。
【0046】また、従来の熱接着繊維は延伸後、スチー
ム処理しながらクリンパーにて機械捲縮を付与しようと
すると膠着が生じるため、スチーム処理なしで行うこと
を余儀なくされ、捲縮も十分に付与できなかった。ま
た、その後の熱セットも行うことができなかった。一
方、該熱接着繊維は、従来のものと異なる高いガラス転
移温度・融点範囲を有しているため、上記の如き方法で
十分な機械捲縮を付与することができるのである。
【0047】すなわち、従来は、熱接着繊維のガラス転
移温度、融点が低いために、捲縮を十分に付与すること
が困難であり、よって捲縮率も低く、かつ、ウエブの作
製時にも捲縮形態が変形しやすい欠点があった。従っ
て、母材繊維と熱接着繊維同士が絡み合うことにより形
成される接着点を増やすことに限界があったのである。
強固な捲縮が十分付与された本発明の熱接着繊維を用い
ることにより、母材繊維と熱接着繊維の熱接着点が増加
し、接合点が強固なものとなる。また、繊維長を短くし
分散性を高めた際にも、抜け落ちることが少ない。この
ように該熱接着繊維を使用すれば、クッション材全体が
3次元コイルスプリング状網目構造となるので、どのよ
うな方向に大変形を与えられても個々の繊維のコイルが
少しずつ変形して力や歪を吸収でき、高熱耐へたり性が
維持できるのである。
【0048】該熱接着繊維を構成する重合体としては、
テレフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカル
ボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコール、プロ
ピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロ
ヘキサン−1,4−ジメタノール、ペンタメチレングリ
コール、ヘキサメチレングリコール、ビスフェノールS
のEO付加物(BPS−EO)より選ばれた少なくとも
1種を主たるグリコール成分とするポリエステルであ
り、次のような成分を共重合してあってもよい。
【0049】好ましい共重合成分としては、アジピン
酸、セバシン酸、などの脂肪族ジカルボン酸類、フタル
酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸などの芳香
族ジカルボン酸類、オキシ安息香酸の如きオキシカルボ
ン酸類、および/またはジエチレングリコール、プロピ
レングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコー
ル類、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ビスフェノ
ールAのEO付加物(BPA−EO)などのうちから1
種または2種以上の共重合成分が挙げられる。
【0050】但し、ポリエチレングリコールの場合、数
平均分子量が10000を越えるとポリマ合成における
反応性が著しく低下し、未反応物がポリエステルとは非
相溶となり製糸性を著しく阻害することがあるので数平
均分子量が10000以下のものを用いることが好適で
ある。
【0051】次に、本発明でいう母材繊維の好ましい製
造方法について詳述する。
【0052】本発明の母材繊維は、極限粘度〔ηc〕が
0.68以上であるポリエステルからなるチップを口金
面深度70mm以下で、紡糸速度2000m/分で紡糸
ドラフト5000以上とした口金を用いて溶融紡糸し、
得られた未延伸糸を、乾熱140〜200℃で1〜7%
の緊張状態で熱処理し、しかる後短繊維化することによ
って得ることができる。
【0053】前記したように、本発明においては、極限
粘度〔ηc〕が0.68以上であるポリエステルからな
るチップを用いるものであり、極限粘度〔ηc〕が0.
7以上であることがより好ましい。極限粘度〔ηc〕が
0.68未満では、口金面深度70mm以下で紡糸ド
ラフト5000以上、紡糸速度2000m/分以下とし
て引き取り、前記緊張熱処理しても、強伸度曲線におけ
る定応力伸長域20%以下の母材繊維が得られない。極
限粘度〔ηc〕が0.68以上であるポリエステルから
なるチップを用いて、前記溶融紡糸・緊張熱処理した場
合に、強伸度曲線における定応力伸長域が20%以下の
繊維が得られる理由は次のように考えられる。極限粘度
〔ηc〕が0.68以上であるポリエステルは、溶融粘
度が高いため、5000以上の高いドラフト下において
高い伸長粘度を有し、紡糸速度2000m/分以下でP
OY(高配向未延伸糸)あるいはFOY(高配向高密度
糸)に近似した未延伸糸特性になるためと考えられる。
【0054】また、本発明においては、口金面深度を7
0mm以下にするものであり、50mm以下とすること
がより好ましい。本発明でいう口金面深度とは、図2に
示すように、紡糸口金表面から紡糸頭下端までの距離
(L)をいう。口金面深度が70mmを越えると、口金
直下で五月雨状態が発生し、製糸性が悪化するため好ま
しくない。
【0055】また、本発明では、紡糸ドラフトを500
0以上にするものであり、6000以上とすることがよ
り好ましい。本発明でいう紡糸ドラフトとは、紡糸速度
(m/分)を口金吐出孔から吐出するポリマーの吐出線
速度(m/分)で除した値である。紡糸ドラフトが50
00未満では、紡糸速度2000(m/分)以下でPO
Yに近似した伸度レベル(120〜170%)、複屈折
率レベル(0.025〜0.070)の繊維にすること
が難しくなる。
【0056】また、本発明においては、紡糸速度を20
00(m/分)以下にするものである。紡糸ドラフト5
000以上においては、紡糸速度が2000(m/分)
を越えると糸切れしやすくなる。従って、本発明におい
ては、低速度の溶融紡糸装置が有効に使用できる。
【0057】また、本発明における母材繊維を得るため
には、前記高配向未延伸糸を乾熱140〜200℃で1
〜7%の緊張状態で熱処理するものである。乾熱処理温
度が140℃未満では、沸水収縮率と180℃乾熱収縮
率とをともに5%未満とすることが難しくなる。また、
乾熱処理温度が200℃を越えると、水分を含んだトウ
が軟化しやすくなるほか、母材繊維の強度が極めて低く
なるため好ましくない。また、緊張率が1%未満では、
繊維にタルミが生じ均一な熱処理がしにくくなる他、走
行安定性が低下するため好ましくない。また、緊張率が
7%を越えるとヤング率が高くなるほか、ネッキング延
伸が起こりやすくなり、目的の糸物性が得られなくな
り、所期の目的を達成できない。
【0058】本発明における母材繊維は前記緊張処理後
に乾燥し、捲縮を付与し、カットして得ることができ
る。
【0059】
【実施例】なお、本発明で定義する各特性値は、以下の
方法で求めた。
【0060】(1)極限粘度(η) オルソクロロフェノール中、25℃で測定した。
【0061】(2)強伸度曲線 東洋ボールドウィン社製テンシロン引張り試験機を用い
て試料長2cm、引っ張り速度10cm/分、チャート
速度20cm/分の条件で応力−歪み曲線を描き、定応
力伸長域伸度および破断伸度を求めた。なお、定応力伸
長域伸度は、定応力伸長域における最小応力部分にX軸
に平行な線を引き(図1の(ロ))、定応力伸長域から
応力が立ち上がる部分に接線を引き(図1の(ハ))、
その交点の伸度から求める。
【0062】(3)ヤング率 東洋ボールドウィン社製テンシロン引張り試験機を用い
て試料長2cm、引張り速度2cm/分、チャート速度
10cm/分の条件で二次降伏点までの応力−歪み曲線
を拡大して描き、直線部分の接線より求めた。
【0063】(4)沸水収縮率 母材繊維試料の両端をクリップでつかみ、合計が300
mg/dとなる初荷重を掛け、原長 L1(cm)を求
める。クリップ間を十分ゆるめ、無荷重状態で98℃の
沸水バス中で15分間処理し、処理後の試料に合計が3
00mg/dとなる初荷重を掛け、処理後の長さ L2
(cm)を測定する。沸水収縮率は次式によって求め
る。試験回数は15回とし、その平均値で求める。
【0064】 沸水収縮率={(L1−L2)/L1}×100(%) (5)乾熱収縮率 母材繊維試料の両端をクリップでつかみ、合計が300
mg/dとなる初荷重を掛け、原長 L3(cm)を求
める。クリップ間を十分ゆるめ、無荷重状態で180℃
のオーブン中で15分間処理し、処理後の試料に合計が
300mg/dとなる初荷重を掛け、処理後の長さ L
4(cm)を測定する。乾熱収縮率は次式によって求め
る。試験回数は15回とし、その平均値で求める。
【0065】 乾熱収縮率={(L3−L4)/L3}×100(%) (6)ガラス転移温度(Tg) パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC)
で、窒素気流下16℃/分の昇温温度で測定し、ガラス
転移温度(Tg)を求めた。
【0066】(7)融点(Tm) 融点顕微鏡を用い、10℃/分の昇温温度下で熱接着繊
維が融解し流動が開始する温度を求めた。
【0067】(8)70℃耐へたり性 クッション材を測定サンプルとして立方体(10×10
×10cm)に切り出し、平行平面板(タテ×ヨコ=1
5×15cm)を用いて測定した。
【0068】クッション材からの切り出し法は、クッシ
ョン材内部の繊維配列からみて、クッション成形時に繊
維が圧縮されてなる方向を判断し、その圧縮された方向
と立方体の1面が実質的に平行となるように切り出すも
のである。ただし、厚さ等が10cmに満たないものの
ときには、複数枚のものを重ねることなどにより、10
cmになるようにして上記立方体を作製する。
【0069】へたり試験での圧縮は、成形体を作製する
際にウエブを圧縮した方向と同じ方向を有する面方向下
において、厚さ50%になるまで圧縮し(側面は、フリ
ー状態)、その状態で70℃乾熱中に22時間保持後、
平行平面板よりはずして歪を開放し圧縮作用をやめ、さ
らに、そのまま常温中(約30℃)に移し、そのままの
状態で1日(24時間)放置(静置)した後の厚み l
i(cm)と処理前の元の厚み l0(cm)から、
{(li/l0)×100)}(%)で求めた。
【0070】厚みは、0.1cm単位で測定し、n数は
5とした。
【0071】(9)クッション風合い 10人のパネラーが手で押したときの風合い(ソフト
性、弾力性)をランクづけで、非常に良好◎、良好○、
普通△、不良×として、5人以上が評価した値を示す。
【0072】実施例1〜18および比較例1〜10 ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリエチ
レンナフタレート(PEN)、または共重合ポリエチレ
ンテレフタレート(変性PET;比較例10は、酸成分
としてテレフタル酸ジメチル(DMT)95モル%とア
ジピン酸ジメチル(DMA)5モル%、グリコール成分
としてエチレングリコール(EG)100モル%の割
合、実施例15、26は酸成分としてテレフタル酸ジメ
チル(DMT)100モル%、グリコール成分としてビ
スフェノールSのEO付加物(BPS−EO)10モル
%とエチレングリコール(EG)90モル%の割合でそ
れぞれ重合して得た)からなるガラス転移温度を変更さ
せたポリエステルチップを用い、極限粘度〔ηc〕、紡
糸口金の吐出形状、吐出孔径、紡糸速度、紡糸ドラフ
ト、口金面深度を表1、2のように変更し、吐出孔径が
48Hである紡糸口金を用い、紡糸温度300℃の条件
で溶融紡糸巻き取りを実施した。該未延伸糸を引き揃
え、10万Dとし、表に示す条件で熱処理を行った後、
捲縮を付与し、乾燥した後、繊維長76mmにカットし
て、表1、2に示す物性の単糸デニール6d、繊維長7
6mmのポリエステル短繊維を得た。
【0073】熱接着繊維の鞘成分に用いる重合体とし
て、酸成分がテレフタル酸ジメチル(DMT)60モル
%と、イソフタル酸ジメチル(DMI)40モル%、と
エチレングリコール(EG)100モル%を少量の触媒
と安定剤と共に仕込み、従来から知られている方法でエ
ステル交換反応後、昇温減圧しつつ重縮合して鞘部に用
いる低融点の重合体を得、60℃にて48時間真空乾燥
して用いた。この重合体のガラス転移温度は67℃、融
点は115℃であった。
【0074】芯部にPETを用い、300℃で溶融し、
鞘部の重合体(熱接着成分)は260℃で溶融して、鞘
部/芯部=50/50の重量比率で通常の紡糸機より紡
糸温度292℃で紡糸口金より吐出し、1350m/m
inの速度で巻取った。続いて、該未延伸糸を合糸して
80℃温浴中で延伸倍率3.0倍で延伸後、クリンパー
にて機械捲縮を付与し、切断して単糸デニール4d、繊
維長51mmの熱接着繊維を得た。
【0075】実施例1〜18および比較例1〜10の母
材繊維に対して、上記により得られた熱接着繊維を混綿
率30%で混綿し、カードで開繊後、ウエブを積層し目
付4000g/m2 となし、厚み10cmまで圧縮して
200℃の熱風で30分間熱成形後、冷却してクッショ
ン材を得た。クッション材の評価結果を合わせて表1、
2に示した。
【0076】比較例1、2はポリエステルチップん0極
限粘度〔ηc〕が0.68未満であり、得られたポリエ
ステル短繊維の極限粘度〔ηs〕が0.66未満であ
り、定応力伸長域伸度が20%を越え、破断伸度も18
0%を越えており、カードを通した際に延伸が生じた。
比較例1は沸水収縮率、乾熱収縮率も5%を越えてい
た。実施例1、2ともに70℃耐ヘタリ性が低く、クッ
ション風合いも悪いものとなった。
【0077】比較例3は、口金面深度が70mmを越え
ており、口金直下で脈動が発生し、安定した紡糸ができ
なかった。比較例4は、紡糸ドラフトが低く、その結
果、得られた繊維の定応力伸長域伸度が20%を越え、
破断伸度も180%を越えており、カードを通した際に
延伸が生じ、70℃耐ヘタリ性は低く、クッション風合
いも悪いものとなった。
【0078】比較例5は、紡糸速度が2000(m/
分)を越えており、紡糸段階で糸切れが発生し、安定し
た紡糸性が得られなかった。
【0079】一方、本発明の要件を満足する実施例1〜
9からは、70℃耐ヘタリ性が良好で、クッション風合
いも柔らかで、弾力性に富んだものが得られた。
【0080】
【表1】 比較例6は、ポリエステル短繊維の熱処理におけるスト
レッチ率が5%を越えているため、破断伸度が80%未
満であり、沸水収縮率、乾熱収縮率も5%を越えてお
り、ヤング率も50g/dを越えており、得られたクッ
ション材は硬い風合いのものであった。
【0081】比較例7は、ポリエステル短繊維の熱処理
におけるストレッチ率が1%未満であり、トウの走行が
不安定となり、安定した熱処理ができなかった。
【0082】比較例8は、ポリエステル短繊維の熱処理
温度が140℃未満であり、得られた繊維の定応力伸長
域伸度が20%を越えており、カードを通した際に延伸
が生じた。沸水収縮率、乾熱収縮率もともに5%を越え
ており、得られたクッション材は70℃耐ヘタリ性が低
く、クッション風合いも硬いものであった。
【0083】比較例9は、ポリエステル短繊維の熱処理
温度が200℃を越えているため、HD(加熱ロール)
上でトウの膠着が起こり、安定した熱処理ができなかっ
た。
【0084】比較例10は、ポリエステル短繊維のガラ
ス転移温度が75℃未満であるため、70℃耐ヘタリ性
が著しく低くなった。
【0085】一方、本発明の要件を満足する実施例10
〜18からは、70℃耐ヘタリ性が良好で、クッション
風合いも柔らかで、弾力性に富んだものが得られた。
【0086】
【表2】 以上の結果から明らかなように、本発明で規定する糸物
性を有し、製造方法で製造したクッション材用ポリエス
テル短繊維を用いたクッション材は、柔らかな風合いと
弾力性に富んだ風合いを有し、70℃における耐ヘタリ
性も70%以上であることが明らかであるが、本発明で
規定した糸物性、製造方法を外れるクッション材用ポリ
エステル短繊維を用いたクッション材は70℃耐ヘタリ
性、クッション材風合いに劣ることが明らかである。
【0087】実施例19〜29 熱接着繊維に用いる重合体としてテレフタル酸ジメチル
(DMT)、または、2,6−ナフタレンジカルボン酸
ジメチル(NDCM)より選ばれた少なくとも1種を主
たる酸成分とし、エチレングリコール、または、ビスフ
ェノールSのEO付加物(BPS−EO)より選ばれた
少なくとも1種を主たるグリコール成分とし、更に、イ
ソフタル酸ジメチル(DMI)、ビスフェノールAのE
O付加物(BPA−EO)より選ばれた少なくとも1種
の共重合成分を、ある割合(例えば、実施例19では酸
成分としてNDCM100とグリコール成分としてBP
S−EO30とEG70の割合)で少量の触媒と安定剤
と共に仕込み、公知の方法でエステル交換反応後、昇温
減圧しつつ重縮合して鞘部に用いる低融点の重合体を
得、60℃にて48時間真空乾燥して用いた。重合体の
ガラス転移温度(Tg )、融点(Tm )を表3,4に
示した。
【0088】芯部に用いる重合体を300℃で溶融し、
鞘部に用いる重合体(熱接着成分)は260℃で溶融し
て、一定の重量比率(実施例19では、芯/鞘=50/
50、実施例29では、熱接着成分のみ100)で通常
の紡糸機より紡糸温度292℃で紡糸口金より吐出し、
1350m/minの速度で巻取った。続いて、該未延
伸糸を合糸して80℃温浴中で延伸倍率3.0倍で延伸
後、クリンパーにてスチーム処理(80℃)しながら機
械捲縮を付与し、切断して4d×51mmの熱接着繊維
を得た。得られた熱接着繊維の特性を表3、4に示し
た。
【0089】実施例1の母材繊維と得られた熱接着繊維
を混綿率30%で混綿し、カードで開繊後、ウエブを積
層し目付4000g/m2 となし、厚み10cmまで圧
縮して200℃の熱風で30分間熱成形後、冷却してク
ッション材を得た。クッション材の評価結果を表3、4
に示した。
【0090】
【表3】
【表4】 以上の結果から明らかなように、本発明でいうクッショ
ン材用ポリエステル短繊維と特定範囲の熱特性を有する
熱接着繊維を用いたクッション材は、柔らかな風合いと
弾力性に富んだ風合いを有し、更に70℃における耐へ
たり性が著しく向上することが明らかである。
【0091】
【発明の効果】以上述べた本発明によれば、特に車両用
などの高温度下に晒される機会の多い用途に対し、柔ら
かな風合いと弾力性に富み、高熱耐へたり性を有するク
ッション材に適したクッション材用ポリエステル短繊
維、クッション材、およびその製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【図1】定応力伸長域を説明する強伸度曲線の例示図で
ある。
【図2】口金面深度を説明する紡糸装置の概略図であ
る。
【符号の説明】
1:定応力伸長域を有するPOYの強伸度曲線 2:本発明におけるクッション材用ポリエステル短繊維
の強伸度曲線 イ:定応力伸長域 ロ:定応力伸長域における最小応力部分のX軸に平行な
線 ハ:定応力伸長域から応力が立ち上がる部分の接戦 4:紡糸頭 5:紡糸口金
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3B096 AD04 BA01 4L035 AA09 BB33 BB76 DD19 EE08 EE20 FF01 HH10 4L041 AA07 BA49 BA59 BD04 BD10 CA06 CA12 DD01 DD05 DD15 4L047 AA21 AA27 AB02 AB09 BA05 BA09 BB09 CB01 CC06 CC07

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】極限粘度〔ηs〕が0.66以上、強伸度
    曲線における定応力伸長域伸度が20%以下、破断伸度
    が80〜180%、ヤング率が50g/d以下、沸水収
    縮率と180℃乾熱収縮率がともに−5〜5%、ガラス
    転移温度が75℃以上であることを特徴とするクッショ
    ン材用ポリエステル短繊維。
  2. 【請求項2】中空繊維であることを特徴とする請求項1
    記載のクッション材用ポリエステル短繊維。
  3. 【請求項3】主たる構成成分に請求項1または2記載の
    クッション材用ポリエステル短繊維を用い、熱成形によ
    り熱接着繊維で点接合して一体構造化した、70℃耐へ
    たり性が70%以上であることを特徴とするクッション
    材。
  4. 【請求項4】ガラス転移温度、融点が、下記式(1)〜
    (3)を同時に満足する重合体を少なくとも一部に使用
    した熱接着繊維を使用することを特徴とする請求項3記
    載のクッション材。 75≦Tg ≦150 ……(1) 0≦Tm −Tg ≦ 80 ……(2) Tm ≦200 ……(3) (Tg、Tm はそれぞれ、重合体のガラス転移温度、融
    点(℃)を示す)
  5. 【請求項5】極限粘度〔ηc〕が0.68以上であるポ
    リエステルからなるチップを口金面深度70mm以下
    で、紡糸速度2000m/分以下で紡糸ドラフト500
    0以上とした口金を用いて溶融紡糸し、得られた未延伸
    糸を、乾熱140〜200℃で1〜7%の緊張状態で熱
    処理し、しかる後短繊維化することを特徴とする請求項
    1または2記載のクッション材用ポリエステル短繊維の
    製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2002081794A1 (fr) * 2001-04-04 2002-10-17 Teijin Limited Fibre courte pour composite thermo-adhesif a base de polyester
WO2008032379A1 (en) * 2006-09-14 2008-03-20 Toray Industries, Inc. Polyester fiber, woven knit fabric, car sheet and process for producing polyester fiber
JP2009209499A (ja) * 2008-03-06 2009-09-17 Teijin Fibers Ltd 低熱収縮性捲縮ポリエチレンナフタレート繊維及びその製造方法
CN112981605A (zh) * 2019-12-02 2021-06-18 江苏鑫博高分子材料有限公司 全消光高弹聚酯双组份纤维的制备方法

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