JP2000178427A - 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品

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JP2000178427A
JP2000178427A JP10354182A JP35418298A JP2000178427A JP 2000178427 A JP2000178427 A JP 2000178427A JP 10354182 A JP10354182 A JP 10354182A JP 35418298 A JP35418298 A JP 35418298A JP 2000178427 A JP2000178427 A JP 2000178427A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】リン酸エステル化合物による難燃化において、
成形時・使用時の熱安定性にすぐれ、特にホットランナ
ー金型射出成形であっても、焼けやシルバーの発生がな
く安定成形できる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の
提供。 【解決手段】(A)ポリカーボネート樹脂60〜100
重量%、(B)スチレン系樹脂40〜0重量%からなる
樹脂100重量部に対して、(C)酸価が1mgKOH
/g以下のリン酸エステル化合物1〜30重量部を溶融
混練してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物であ
る。リン酸エステル化合物のモノマー含有量が3重量%
以下であることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は難燃性ポリカーボネ
ート樹脂組成物に関し、特に射出成形による薄肉成形品
や大型成形品の成形に適し、成形性、熱安定性にすぐれ
た難燃性ポリカーボネート樹脂組成物と、該組成物を射
出成形、特にホットランナー金型を用いて射出成形して
なる外観良好な難燃性ポリカーボネート樹脂成形品に関
する。
【0002】
【従来の技術】ポリカーボネート樹脂は、すぐれた耐衝
撃特性、耐熱性、電気的特性、寸法安定性などにより、
OA(オフィスオートメーション)機器、情報・通信機
器、家庭電化機器などの電気・電子機器、自動車分野、
建築分野等様々な分野において幅広く利用されている。
ポリカーボネート樹脂は、一般的に自己消火性樹脂では
あるが、OA機器、情報・通信機器などの電気・電子機
器分野を中心として、高度の難燃性を要求される分野が
あり、各種難燃剤の添加により、その改善が図られてい
る。
【0003】一方、近時、成形品が複写機、ファック
ス、パソコンなどのOA機器、電話機、通信機などの情
報・通信機器、家庭電化機器などの部品やハウジングな
どの場合には、形状が複雑になること、リブやボスなど
の凹凸が成形品に形成されること、軽量化、省資源の見
地から成形品の薄肉化、大型化、複雑化することなどの
理由から、ポリカーボネート樹脂の溶融流動性、すなわ
ち射出成形性を高めた組成物が求められている。この成
形性の改善としては、耐衝撃性などの物性も考慮して、
ゴム変性スチレン系樹脂との配合組成物が多く提案され
ている。
【0004】ポリカーボネート樹脂の溶融流動性の改良
のために、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹
脂(ABS樹脂)、ゴム変性ポリスチレン樹脂(HIP
S)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)な
どのスチレン系樹脂をポリカーボネート樹脂に配合した
組成物は、ポリマーアロイとして、その耐熱性、耐衝撃
性などの特性を生かし、多くの成形品分野に用いられて
きている。一方、これらの用途の中でも、OA機器、情
報・通信機器などの電気・電子機器などの場合には、そ
の製品の安全性を高めるために、あるレベル以上の難燃
性が求められている。
【0005】ポリカーボネート樹脂、あるいはポリカー
ボネート樹脂を主成分とする樹脂組成物の難燃性を向上
する方法として、ハロゲン化ビスフェノールA、ハロゲ
ン化ポリカーボネートオリゴマーなどのハロゲン系難燃
剤が難燃剤効率の点から酸化アンチモンなどの難燃助剤
とともに用いられてきた。しかし、近時、廃棄・焼却時
の安全性、環境への悪影響の観点から、ハロゲンを含ま
ない難燃剤による難燃化方法が市場より求められてい
る。ノンハロゲン系難燃剤として、有機リン系難燃剤、
特に有機リン酸エステル化合物を配合したポリカーボネ
ート樹脂組成物は優れた難燃性を示し、多くの方法が提
案されている。
【0006】たとえば特開昭61−55145号公報に
は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ABS
樹脂、(C)AS樹脂、(D)ハロゲン化合物、(E)
リン酸エステル、(F)ポリテトラフルオロエチレン成
分からなる熱可塑性樹脂組成物が記載されている。特開
平2−32154号公報には、(A)芳香族ポリカーボ
ネート樹脂、(B)ABS樹脂、(C)AS樹脂、
(D)リン酸エステル、(E)ポリテトラフルオロエチ
レン成分からなる難燃性高衝撃性ポリカーボネート成形
用組成物が記載されている。特開平8−239565号
公報には、(A)芳香族ポリカーボネート、(B)ゴム
状弾性体を含有する耐衝撃ポリスチレン樹脂、(C)ハ
ロゲン非含有リン酸エステル、(D)コアシエルタイプ
グラフトゴム状弾性体、(D)タルクを含むポリカーボ
ネート樹脂組成物が記載されている。
【0007】これらは、いずれも、ポリカーボネート樹
脂の溶融流動性の改良による成形性、耐衝撃性、難燃性
の改良を目的としたもので、すぐれた効果を生かし、各
種成形品として用いられてきている。しかしながら、ポ
リカーボネート樹脂あるいはポリカーボネート樹脂と
(ゴム変性)スチレン系樹脂からなる良溶融流動性組成
物を有機リン系難燃剤で難燃化する場合には、リン酸エ
ステル化合物を比較的多量に配合する必要がある。ま
た、リン酸エステル化合物は難燃性だけでなく、可塑剤
としても寄与するものであり、溶融成形性、すなわち射
出成形性も向上するものでありすぐれた成形原料である
といえる。
【0008】しかしながら、難燃剤としてリン酸エステ
ル化合物をポリカーボネート樹脂やスチレン系樹脂との
組成物に配合した樹脂組成物は溶融流動性の点での射出
成形性そのものは十分満足するものであるが、成形品の
形状、金型構造によっては熱安定性に劣り、特にホット
ランナー金型のように、溶融樹脂の滞留がある射出成形
にあっては、成形品の表面に焼けやシルバーが発生し易
い場合がある。したがって、外観にすぐれた成形品を安
定的に成形することが困難で、不良品発生の原因となる
など必ずしも満足できるものでない場合がある。さら
に、得られた成形品の加熱下での長期安定性も必ずしも
満足できない場合がある。
【0009】また、リン酸エステル化合物はその種類に
よっては、ブルーミングの問題もあり、融点の高いリン
酸エステル化合物、モノマーや不純物含有率を規定する
などの方法が提案されている。しかしながら、ポリカー
ボネート樹脂系の成形材料は比較的成形温度が高いこと
から、単なるリン酸エステル化合物の選択だけでは熱安
定性の問題点を十分解決することは困難である。とく
に、射出成形品の薄肉化、複雑化、大型化により成形金
型としてホットランナーを用いる場合が多くなり、これ
らの成形品の射出成形においては、さらに厳しい熱安定
性が要求されている。
【0010】このため、高粘度、高融点のリン酸エステ
ル化合物を用いたり、各種リン酸エステル化合物を併用
する方法が提案されている。たとえば、特開平6−22
8426号公報、特開平8−151493号公報、特開
平8−225737号公報、特開平8−337712号
公報、特開平9−95610号公報、特開平9−249
768号公報記載の方法が知られている。これらの公報
から、単にリン酸エステル化合物の粘度を高めたり、高
融点、高分子量のものを使用するのみでなく、モノマー
との併用も好ましいことが記載されている。しかしなが
ら、これらの方法においても、難燃性を維持し成形性よ
く、耐熱性などを満足する成形品が必ずしも得られない
場合がある。
【0011】また、特開平9−249768号公報に
は、ビスフェノールAの残基により架橋されたリン酸エ
ステルオリゴマーであって、特定のリン酸エステルモノ
マーの含有量が1重量%以下で、金属分の含有量合計が
30重量ppm以下で、TGAによる、不活性ガス雰囲
気中100℃/分の昇温速度で300℃まで加熱し、2
0分間の重量減少率が15重量%以下である樹脂用の難
燃剤が提案されている。しかしながら、難燃剤としての
リン酸エステル化合物を特定してもポリカーボネート樹
脂系の成形材料の成形性、熱安定性を必ずしも満足させ
ることができない問題点がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状の
下、ポリカーボネート樹脂のリン酸エステル化合物によ
る難燃化において、成形性、成形時・使用時の熱安定性
にすぐれ、特にホットランナー金型を用いた射出成形で
あっても、焼けやシルバーの発生がなく安定成形できる
難燃性ポリカーボネート樹脂組成物、およびこの組成物
を用いた成形品の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の目的を達成する
ため、本発明者は、難燃性ポリカーボネート樹脂のリン
酸エステル化合物による難燃化において、耐熱性などの
改良について鋭意検討した。その結果、特定の性状を有
するリン酸エステル化合物を選択使用することにより、
難燃性を維持し、耐熱性を改善し、ホットランナー金型
においても外観、成形性よく成形でき、得られた成形品
もすぐれた耐熱性、耐湿性を有することを見いだし、本
発明を完成した。
【0014】すなわち、本発明は、 (1)(A)ポリカーボネート樹脂60〜100重量
%、(B)スチレン系樹脂40〜0重量%からなる樹脂
100重量部に対して、(C)酸価が1mgKOH/g
以下のリン酸エステル化合物1〜30重量部を溶融混練
してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。 (2)リン酸エステル化合物のモノマー含有量が3重量
%以下である上記(1)記載の難燃性ポリカーボネート
樹脂組成物。 (3)樹脂が、(A)ポリカーボネート樹脂60〜97
重量%と、(B)成分としての変性スチレン系樹脂40
〜3重量%からなる上記(1)または(2)記載の難燃
性ポリカーボネート樹脂組成物。 (4)さらに、(D)フルオロオレフィン樹脂を、
(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対し
て、0.05〜5重量部含有する上記(1)〜(3)の
いずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。 (5)さらに、(E)コアシェルタイプグラフトゴム状
弾性体を、(A)および(B)からなる樹脂100重量
部に対して、1〜30重量部含有する上記(1)〜
(4)のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂
組成物。 (6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の難燃性ポ
リカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
(7)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の難燃性ポ
リカーボネート樹脂組成物をホットランナー金型により
射出成形してなる射出成形品。 (8)成形品が電気・電子機器のハウジングまたは部品
である上記(6)または(7)記載の成形品を提供する
ものである。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の構
成成分(A)〜(C)について説明する。 (A)ポリカーボネート樹脂(PC) ポリカーボネート樹脂(PC)としては、特に制限はな
く種々のものが挙げられる。通常、2価フェノールとカ
ーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリ
カーボネートを用いることができる。すなわち、2価フ
ェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融
法、すなわち、2価フエノールとホスゲンの反応、2価
フエノールとジフェニルカーボネートなどとのエステル
交換法により反応させて製造されたものを使用すること
ができる。
【0016】2価フェノールとしては、様々なものが挙
げられるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ
フェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−
3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒ
ドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)
シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキ
シド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビ
ス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒ
ドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキ
シフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)ケトンなどが挙げられる。
【0017】特に好ましい2価フエノールとしては、ビ
ス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノ
ールAを主原料としたものである。また、カーボネート
前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエス
テル、またはハロホルメートなどであり、具体的にはホ
スゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニ
ルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカー
ボネートなどである。この他、2価フェノールとして
は、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げ
られる。これらの2価フェノールは、それぞれ単独で用
いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】なお、ポリカーボネート樹脂は、分岐構造
を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−ト
リス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,
α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5
−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメ
リット酸、イサチンビス(o−クレゾール)などがあ
る。また、分子量の調節のためには、フェノール、p−
t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、
p−クミルフェノールなどが用いられる。
【0019】また、本発明に用いるポリカーボネート樹
脂としては、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキ
サン部を有する共重合体、あるいはこの共重合体を含有
するポリカーボネート樹脂であってもよい。また、テレ
フタル酸などの2官能性カルボン酸、またはそのエステ
ル形成誘導体などのエステル前駆体の存在下でポリカー
ボネートの重合を行うことによって得られるポリエステ
ル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。また、種々
のポリカーボネート樹脂の混合物を用いることもでき
る。本発明において用いられる(A)成分のポリカーボ
ネート樹脂は、構造中に実質的にハロゲンを含まないも
のが好ましい。また、機械的強度および成形性の点か
ら、その粘度平均分子量は、10,000〜100,0
00、好ましくは、11,000〜40,000、特に
12,000〜25,000のものが好適である。
【0020】(B)スチレン系樹脂 スチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレ
ンなどのモノビニル系芳香族単量体20〜100重量
%、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシア
ン化ビニル系単量体0〜60重量%、およびこれらと共
重合可能なマレイミド、(メタ)アクリル酸メチルなど
の他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体ま
たは単量体混合物を重合して得られる重合体がある。こ
れらの重合体としては、ポリスチレン(GPPS)、ア
クリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)などが
ある。
【0021】また、スチレン系樹脂としてはゴム変性ス
チレン系樹脂が好ましく利用できる。このゴム変性スチ
レン系樹脂としては、好ましくは、少なくともスチレン
系単量体がゴムにグラフト重合した耐衝撃性スチレン系
樹脂である。ゴム変性スチレン系樹脂としては、たとえ
ば、ポリブタジエンなどのゴムにスチレンが重合した耐
衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリブタジエンにア
クリロニトリルとスチレンとが重合したABS樹脂、ポ
リブタジエンにメタクリル酸メチルとスチレンが重合し
たMBS樹脂などがあり、ゴム変性スチレン系樹脂は、
二種以上を併用することができるとともに、前記のゴム
未変性であるスチレン系樹脂との混合物としても使用で
きる。
【0022】ゴム変性スチレン系樹脂中のゴムの含有量
は、例えば2〜50重量%、好ましくは、5〜30重量
%、特に5〜15重量%である。ゴムの割合が2重量%
未満であると、耐衝撃性が不十分となり、また、50重
量%を超えると熱安定性が低下したり、溶融流動性の低
下、ゲルの発生、着色などの問題が生じる場合がある。
上記ゴムの具体例としては、ポリブタジエン、アクリレ
ートおよび/またはメタクリレートを含有するゴム質重
合体、スチレン・ブタジエン・スチレンゴム(SB
S)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエ
ン・アクリルゴム、イソプレン・ゴム、イソプレン・ス
チレンゴム、イソプレン・アクリルゴム、エチレン・プ
ロピレンゴム等が挙げられる。このうち、特に好ましい
ものはポリブタジエンである。ここで用いるポリブタジ
エンは、低シスポリブタジエン(例えば1,2−ビニル
結合を1〜30モル%、1,4−シス結合を30〜42
モル%含有するもの)、高シスポリブタジエン(例えば
1,2−ビニル結合を20モル%以下、1,4−シス結
合を78モル%以上含有するもの)のいずれを用いても
よく、また、これらの混合物であってもよい。
【0023】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物において、ポリカーボネート樹脂にスチレン系樹脂を
配合する場合は、ポリカーボネート樹脂組成物の溶融流
動性を向上するためである。ここで、両樹脂の配合比
は、(A)ポリカーボネート樹脂60〜97重量%、好
ましくは70〜95重量%、(B)スチレン系樹脂が4
0〜3重量%、好ましくは30〜5重量%である。ここ
で、(A)成分のポリカーボネート樹脂が60重量%未
満では、耐熱性、強度が十分でなく、(B)成分のスチ
レン系樹脂が3重量%未満では成形性の改良効果が不十
分である。なお、この場合の(B)スチレン系樹脂とし
ては、前記したゴム変性スチレン系樹脂が好ましく用い
られる。これらの配合比は、ポリカーボネート樹脂の分
子量、スチレン系樹脂の種類、分子量、メルトインデッ
クス、ゴムの含有量や成形品の用途、大きさ、厚みなど
を考慮して適宜決定される。
【0024】(C)リン酸エステル化合物 リン酸エステル化合物としては、特に制限はなく、ハロ
ゲンを含まないものが好ましく、たとえば次式(1)
【0025】
【化1】
【0026】(ここで、R1 、R2 、R3 、R4 は、そ
れぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、Xは2
価以上の有機基を表し、pは0または1であり、qは1
以上の整数であり、rは0以上の整数を表す。)で示さ
れるリン酸エステル化合物である。式(1)において、
有機基とは、置換されていても、いなくてもよいアルキ
ル基、シクロアルキル基、アリール基などである。また
置換されている場合の置換基としては、アルキル基、ア
ルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリール
チオ基などがある。さらに、これらの置換基を組み合わ
せた基であるアリールアルコキシアルキル基など、また
はこれらの置換基を酸素原子、窒素原子、イオウ原子な
どにより結合して組み合わせたアリールスルホニルアリ
ール基などを置換基としたものなどがある。
【0027】また、式(1)において、2価以上の有機
基Xとしては、上記した有機基から、炭素原子に結合し
ている水素原子の1個以上を除いてできる2価以上の基
を意味する。たとえば、アルキレン基、(置換)フェニ
レン基、多核フェノール類であるビスフェノール類から
誘導されるものである。好ましいものとしては、ビスフ
ェノールA、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジフエニ
ルメタン、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフ
タレン等がある。
【0028】リン酸エステル化合物は、モノマー、オリ
ゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物であってもよ
い。具体的には、トリメチルホスフェート、トリエチル
ホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチル
ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリ
フェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ク
レジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホ
スフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェー
ト、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリキシレ
ニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホ
スフェート、トリナフチルホスフェート、ビスフェノー
ルAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェー
ト、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール−ジ
フェニルホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフ
ェート、クレジルジフェニルホスフェート、あるいはこ
れらの置換体、縮合物などを例示できる。
【0029】しかし、これらの中でも、前記式(1)で
示す、rが1以上のリン酸エステル化合物が主成分であ
るものや、フェニル基の一部がアルキル基などで置換さ
れたものが、成形時の金型付着性、成形品の耐熱性、耐
湿性などで好ましい場合がある。ここで、市販のハロゲ
ン非含有リン酸エステル化合物としては、たとえば、大
八化学工業株式会社製の、TPP〔トリフェニルホスフ
ェート〕、TXP〔トリキシレニルホスフェート〕、C
R−733S〔レゾルシノールビス(ジフェニルホスフ
ェート)〕、PX200〔1,3−フェニレン−テスラ
キス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステル、P
X201〔1,4−フェニレン−テトラキス(2,6−
ジメチルフェニル)リン酸エステル、PX202〔4,
4’−ビフェニレン−テスラキス)2,6−ジメチルフ
ェニル)リン酸エステルなどを挙げることができる。
【0030】(C)成分のリン酸エステル化合物の含有
量は、前記(A)ポリカーボネート樹脂および(B)ス
チレン系樹脂からなる樹脂100重量部に対して、1〜
30重量部、好ましくは3〜20重量部、より好ましく
は5〜15重量部である。ここで、含有量が1重量部未
満では、成形品の難燃性が十分でなく、30重量部を越
えると成形品の耐熱性、耐衝撃性などの強度が低下する
場合がある。
【0031】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物は、(A)、(C)および必要により(B)からなる
樹脂成分を溶融混練することにより得られるものであ
る。混練方法としては、特に限定されず、(1)2また
は3成分を同時に混合して各種溶融混練装置に供給して
製造する方法。(2)ポリカーボネート樹脂とスチレン
系樹脂を溶融混練し、次いでリン酸エステル化合物を加
え溶融混練する方法。(3)ポリカーボネート樹脂とス
チレン系樹脂を混練機に供給して溶融混練し、混練機の
途中よりリン酸エステル化合物を固体、液体あるいは溶
融して供給し混練する方法。(4)ポリカーボネート樹
脂にあらかじめリン酸エステル化合物を溶融混練してお
いて、次いでスチレン系樹脂を加えて混練する方法など
を例示できる。本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組
成物は、これらの溶融混練方法によって一般的には、任
意形状のペレットとして、最終成形品成形用の成形材料
とされる。
【0032】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物は、(C)成分のリン酸エステル化合物の酸価が1m
gKOH/g以下、好ましくは0.01〜0.8KOH
/gであることを特徴とするものである。ここで、リン
酸エステル化合物の酸価とは、JIS K6751の規
定で測定されたものである。ここで、リン酸エステル化
合物の酸価が1mgKOH/gを越えると、ポリカーボ
ネート樹脂の熱安定性が低下し、特にホットランナー金
型を用いた成形において、焼けやシルバーの発生が見ら
れるようになる。さらに、得られた成形品の加熱時(加
湿時)に劣化しやすくなる。
【0033】本発明に用いるリン酸エステル化合物は、
公知の製造方法により製造されたもの、あるいはこれら
をさらに水洗・アルコール洗浄などの精製手段により精
製したものの中から、酸価を測定することにより、特定
範囲内のものを選択することができる。従来リン酸エス
テル化合物としては、多くの製品が製造販売されている
が、ポリカーボネート系樹脂の難燃剤として、かかる酸
価が成形時熱安定性、長期耐熱性、耐湿性などに大きく
寄与することは知られていない。本発明に用いるリン酸
エステル化合物としては、前記酸価に加えて、モノマー
含有量、すなわち、リン酸モノエステル化合物の含有量
が3重量%以下、好ましくは0.01〜2.5重量%の
範囲に制御されたものが前記効果のためにさらに好まし
く用いられる。
【0034】本発明のポリカーボネート樹脂組成物に
は、熱安定剤を併用することができる。熱安定剤として
は、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の熱酸化劣化を
さらに防止する添加剤であり、リン系酸化防止剤、フエ
ノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などを例示す
ることができる。なかでもリン系酸化防止剤、特に亜リ
ン酸エステル化合物が好ましく用いられる。亜リン酸エ
ステル化合物としては、亜リン酸の水素がアルキル基、
アリール基、アルキル置換アリール基などにより、それ
ぞれ独立に置換されたエステル化合物である。
【0035】これら亜リン酸エステル化合物としては、
トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、ト
リブチルホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホ
スファイト、トリブトキシエチルホスファイト、トリフ
ェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリ
キシレニルホスファイト、トリス(イソプロピルフェニ
ル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイ
ト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフ
ァイト、トリナフチルホスファイト、クレジルジフェニ
ルホスファイト、キシレニルジフェニルホスファイト、
ジブチルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリト
ールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフ
ェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス
(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペン
タエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス
(4,6−ジ−ブチルフェニル)オクチルホスファイ
ト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−
4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスファイトなどを例示
できる。これらのなかで、トリフェニルホスファイト、
トリクレジルホスファイト、トリスノニルフェニルホス
ファイト、トリス(2,4−ジーt−ブチルフェニル)
ホスファイトなどが好ましく用いられる。
【0036】これら亜リン酸エステル化合物の含有量
は、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量部
に対して、0.01〜2重量部、好ましくは0.1〜1
重量部である。ここで亜リン酸エステル化合物の含有量
が0.01重量部未満では耐熱酸化安定性改善効果が薄
く、2重量部を越えると耐熱性が低下、成形時のガス発
生などの不都合が発生する恐れがある場合がある。
【0037】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物を得るためには、前記リン酸エステル化合物の選択に
加えて、溶融混練条件として、ベント付き溶融混練成形
機、特にベント付き溶融混練押出成形機を用いて、溶融
混練時にベントより強制排気して可能な限り揮発成分を
あるレベルまで除去することが好ましい。本発明の難燃
性ポリカーボネート樹脂組成物には、燃焼時の溶融滴下
防止を目的にさらに、(D)フルオロオレフィン樹脂を
含有することができる。ここで(D)フルオロオレフィ
ン樹脂としては、通常フルオロエチレン構造を含む重合
体、共重合体であり、たとえば、ジフルオロエチレン重
合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロ
エチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラ
フルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマ
ーとの共重合体である。好ましくは、ポリテトラフルオ
ロエチレン(PTFE)であり、その平均分子量は、5
00,000以上であることが好ましく、特に好ましく
は500,000〜10,000,000である。
【0038】なお、ポリテトラフルオロエチレンのう
ち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに
高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリ
ル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTF
E)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格にお
いて、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具
体例としては、例えばテフロン6−J(三井・デュポン
フロロケミカル株式会社製)、ポリフロンD−1、ポリ
フロンF−103、ポリフロンF201L(ダイキン工
業株式会社製)、CD076(旭アイシーアイフロロポ
リマーズ株式会社製)等が挙げられる。
【0039】また、上記タイプ3に分類されるもの以外
では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス株式会
社製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100
(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。これらの
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用
いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。上記の
ようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエ
チレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレン
を水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウム
パーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psi
の圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100
℃で重合させることによって得られる。
【0040】ここで、フルオロオレフィン樹脂の含有量
は、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量部
に対して、0.05〜5重量部、好ましくは、0.1〜
2重量部である。ここで、0.05重量部未満である
と、目的とする難燃性における耐溶融滴下性が十分でな
い場合があり、5重量部を越えても、これに見合った効
果の向上はなく、耐衝撃性、成形品外観に悪影響を与え
る場合がある。したがって、それぞれの成形品に要求さ
れる難燃性の程度、たとえば、UL−94のV−0、V
−1、V−2などにより他の含有成分の使用量などを考
慮して適宜決定することができる。
【0041】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物には、さらに、(E)成分として、難燃性ポリカーボ
ネート樹脂組成物の耐衝撃性、均一性の一層の向上のた
めに、コアシエルタイプグラフトゴム状弾性体を含有す
ることができる。その含有量は、前記(A)および
(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜30重
量部、好ましくは2〜20重量部である。このコアシェ
ルタイプグラフトゴム状弾性体とは、コア(芯)とシェ
ル(殻)から構成される2層構造を有しており、コア部
分は軟質なゴム状態であって、その表面のシェル部分は
硬質な樹脂状態であり、弾性体自体は粉末状(粒子状
態)である。このグラフトゴム状弾性体は、ポリカーボ
ネート樹脂と溶融ブレンドした後も、その粒子状態は、
大部分がもとの形態を保っている。この配合されたゴム
状弾性体の大部分がもとの形態を保っていることによ
り、表層剥離を起こさない効果が得られる。
【0042】このコアシェルタイプグラフトゴム状弾性
体としては、種々なものを挙げることができる。市販の
ものとしては、例えばハイブレンB621(日本ゼオン
株式会社製)、KM−330(ローム&ハース株式会社
製)、メタブレンW529、メタブレンS2001、メ
タブレンC223、メタブレンB621(三菱レイヨン
株式会社製)等が挙げられる。
【0043】これらの中で、例えば、アルキルアクリレ
ートやアルキルメタクリレート、ジメチルシロキサンを
主体とする単量体から得られるゴム状重合体の存在下
に、ビニル系単量体の1種または2種以上を重合させて
得られるものが挙げられる。ここで、アルキルアクリレ
ートやアクリルメタクリレートとしては、炭素数2〜1
0アルキル基を有するものが好適である。具体的には、
例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−
エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルメタクリレ
ート等が挙げられる。これらのアルキルアクリレート類
を主体とする単量体から得られるゴム状弾性体として
は、アルキルアクリレート類70重量%以上と、これと
共重合可能な他のビニル系単量体、例えばメチルメタク
リレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン等
30重量%以下とを反応させて得られる重合体が挙げら
れる。なお、この場合、ジビニルベンゼン、エチレンジ
メタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリル
イソシアヌレート等の多官能性単量体を架橋剤として適
宜添加して反応させてもよい。
【0044】ゴム状重合体の存在下に反応させるビニル
系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチ
レン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸メチル、アク
リル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メ
チル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル等
が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上
を組み合わせて用いてもよいし、また、他のビニル系重
合体、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等
のシアン化ビニル化合物や、酢酸ビニル、プロピオン酸
ビニル等のビニルエステル化合物等と共重合させてもよ
い。この重合反応は、例えば塊状重合、懸濁重合、乳化
重合などの各種方法によって行うことができる。特に、
乳化重合法が好適である。
【0045】このようにして得られるコアシェルタイプ
グラフトゴム状弾性体は、前記ゴム状重合体を20重量
%以上含有していることが好ましい。このようなコアシ
ェルタイプグラフトゴム状弾性体としては、具体的には
60〜80重量%のn−ブチルアクリレートと、スチレ
ン、メタクリル酸メチルとのグラフト共重合体などのM
AS樹脂弾性体が挙げられる。中でも、ポリシロキサン
ゴム成分が5〜95重量%とポリアクリル(メタ)アク
リレートゴム成分95〜5重量%とが、分離できないよ
うに相互に絡み合った構造を有する、平均粒子径が0.
01〜1μm程度の複合ゴムに少なくとも一種のビニル
単量体がグラフト重合されてなる複合ゴム系グラフト共
重合体が好ましい。この共重合体は、それぞれのゴム単
独でのグラフト共重合体よりも耐衝撃改良効果が高い。
この複合ゴム系グラフト共重合体は、市販品としての、
三菱レーヨン株式会社製メタブレンS−2001などと
して、入手できる。
【0046】また、本発明の難燃性ポリカーボネート樹
脂組成物には、さらに、無機充填剤を、成形品の剛性、
さらには難燃性をさらに向上させるために含有させるこ
とができる。ここで、無機充填剤としては、タルク、マ
イカ、カオリン、珪藻土、炭酸カルシウム、硫酸カルシ
ウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸
カリウム繊維などをあげることができる。なかでも、板
状であるタルク、マイカなどや、繊維状の充填剤が好ま
しい。タルクとしては、、マグネシウムの含水ケイ酸塩
であり、一般に市販されているものを用いることができ
る。また、タルクなどの無機充填剤の平均粒径は0.1
〜50μm、好ましくは、0.2〜20μmである。こ
れら無機充填剤、特にタルクを含有させることにより、
剛性向上効果に加えて、難燃剤としてのリン酸エステル
化合物の配合量を減少させることができる。
【0047】ここで、無機充填剤の含有量は、、前記
(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対し
て、1〜100重量部、好ましくは、2〜50重量部で
ある。ここで、1重量部未満であると、目的とする剛
性、難燃性改良効果が十分でない場合があり、100重
量部を越えると、耐衝撃性、溶融流動性が低下する場合
があり、成形品の厚み、樹脂流動長など、成形品の要求
性状と成形性を考慮して適宜決定することができる。
【0048】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物は、成形性、耐衝撃性、外観改善、耐候性改善、剛性
改善等の目的で、上記(A)、(C)よりなる必須成分
に、(B)、(D)、(E)、さらには熱可塑性樹脂に
常用されている各種添加剤成分を必要により含有するこ
とができる。例えば、熱安定材、酸化防止剤、帯電防止
剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯
電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェ
ノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤
(耐候剤)、抗菌剤、相溶化剤、着色剤(染料、顔料)
等が挙げられる。任意成分の配合量は、本発明の,難燃
性ポリカーボネート樹脂組成物の特性が維持される範囲
であれば特に制限はない。
【0049】次に、本発明の難燃性ポリカーボネート樹
脂組成物の製造方法について説明する。本発明の難燃性
ポリカーボネート樹脂組成物は、前記の各成分(A)、
(C)を上記割合で、さらに必要に応じて用いられる、
(B)、(D)、(E)などの各種任意成分を適当な割
合で配合し、混練することにより得られる。このときの
配合および混練は、通常用いられている機器、例えばリ
ボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合し
て、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸ス
クリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュ
ー押出機、コニーダ等を用いる方法で行うことができ
る。しかしながら、前記したように、単軸押出成形機、
多軸押出成形機などの連続押出成形機であって、強制ベ
ント排気するタイプの押出成形機の採用が好ましい。ま
た、押出成形機としては、成形原料の流れ方向において
複数の原料供給部を備えたものも好適に用いることがで
きる。たとえば、リン酸エステル化合物以外の原料成分
を溶融混練し、この混練物にリン酸エステル化合物を、
好ましくは溶融状態で供給する方法、ポリカーボネート
樹脂とリン酸エステル化合物をまず溶融混練し、ついで
スチレン系樹脂と混練する方法などを例示できる。
【0050】溶融混練の際の加熱温度は、通常240〜
300℃の範囲で適宜選択される。なお、ポリカーボネ
ート樹脂とスチレン系樹脂以外の含有成分は、あらかじ
め、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂あるいはこ
れ以外の他の熱可塑性樹脂と溶融混練、すなわちマスタ
ーバッチとして添加することもできる。本発明の難燃性
ポリカーボネート樹脂組成物は、上記の溶融混練成形
機、あるいは、得られたペレットを原料として、射出成
形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プ
レス成形法、真空成形法、発泡成形法などにより各種成
形品を製造することができる。しかし、本発明難燃性ポ
リカーボネート樹脂組成物は、上記溶融混練方法によ
り、ペレット状の組成物成形原料とし、ついで、このペ
レットを用いる、射出成形、射出圧縮成形による射出成
形品の製造に好適に用いることができる。なお、射出成
形方法としては、外観のヒケ防止のため、あるいは軽量
化のためのガス注入成形を採用することもできる。
【0051】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物は、すぐれた熱安定性によりダイレクトゲートタイプ
のみでなく、特にホットランナー金型を用いた成形品の
成形に好適に用いることができる。すなわち、ホットラ
ンナー金型では、ホットランナーでの溶融樹脂の滞留の
ために、熱履歴を受けやすく樹脂や添加剤などの分解に
よる、ガスの発生や着色が生じやすく、外観良好な成形
品の成形が困難であり、本発明によってこれらの問題が
解決できる。したがって、本発明の難燃性ポリカーボネ
ート樹脂組成物は、ホットランナー金型による、薄肉成
形品、大型成形品の成形を可能にすることができる。
【0052】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物から得られる射出成形品(射出圧縮を含む)として
は、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコ
ーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話
機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジなどの電気・電子
機器のハウジウングまたは部品、さらには、自動車部品
など他の分野にも用いられる。
【0053】
【実施例】本発明について実施例および比較例を示して
より具体的に説明するが、これらに、何ら制限されるも
のではない。 実施例1〜6および比較例1〜2 表1に示す割合で各成分を配合〔(A)、(B)成分は
重量%、他の成分は、(A)および(B)からなる樹脂
100重量部に対する重量部で示す。〕し、ベント式二
軸押出成形機(機種名:TEM35、東芝機械株式会社
製)に供給し、260℃で溶融混練し、ペレット化し
た。なお、すべての実施例および比較例において、フエ
ノール系酸価防止剤としてイルガノックス1076(チ
バ・スペシヤルティ・ケミカルズ株式会社製)0.2重
量部およびリン系酸化防止剤としてトリス(2,4−ジ
−t−ブチルフェニル)フォスファイト:イルガフォス
168(チバ・スペシヤルティ・ケミカルズ株式会社
製)0.1重量部をそれぞれ配合した。得られたペレッ
トを、80℃で12時間乾燥した後、成形温度260℃
で射出成形して試験片を得た。得られた試験片を用いて
性能を各種試験によって評価し、その結果を表1に示し
た。
【0054】なお、用いた成形材料および性能評価方法
を次に示す。 (A)ポリカーボネート樹脂 PC:タフロン A1900(出光石油化学株式会社
製):ビスフェノールAポリカーボネート樹脂、MI=
20g/10分(300℃、1.2Kg荷重)、粘度平
均分子量:19000 (B)スチレン系樹脂 HIPS:耐衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS):ID
EMITSU PS HT44(出光石油化学社株式会
社製):ポリブタジエンにポリスチレンがグラフト重合
したもの、ゴム含有量=7重量%、MI:8g/10分
(200℃、5Kg荷重) ABS:アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体
(ABS):DP−611(テクノポリマー株式会社
製)、MI=2g/10分(200℃、5Kg荷重)
【0055】(C)リン酸エステル化合物 P−1;ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェー
ト):BDP(アクゾ・カシマ株式会社製)、酸価:
0.3mgKOH/g、TPP(トリフェニルホスフェ
ート)含有量:1重量% P−2;レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェー
ト):CR−733S(大八化学株式会社製)、酸価:
0.1mgKOH/g、TPP(トリフェニルホスフェ
ート)含有量:2重量% P−3;レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェー
ト):PFR(旭電化工業株式会社製)、酸価:0.1
mgKOH/g、TPP(トリフェニルホスフェート)
含有量:4重量% P−4;ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェー
ト):CR−741(大八化学株式会社製)、酸価:
1.6mgKOH/g、TPP(トリフェニルホスフェ
ート)含有量:1重量% (D)フルオロオレフィン樹脂 PTFE:F201L(ダイキン化学工業株式会社
製):分子量400万〜500万 (E)コアシェルタイプグラフトゴム状弾性体 複合ゴム系グラフト共重合体:メタブレンS2001
(三菱レーヨン株式会社製):ポリジメチルシロキサン
含有量:50重量%以上
【0056】〔性能評価方法] (1)溶融流動性 MI(メルトインデックス):JIS K7210に準
拠。260℃、2.16Kg荷重 (2)ホットランナー成形性 ノートパソコンハウジング(A4タイプ)成形金型〔ホ
ットランナー〕を装着した射出成形機(東芝機械株式会
社製:IS650t)用い、成形温度240℃、ホット
ランナー温度260℃、金型温度40℃で成形し、ホッ
トランナー成形性を調べた。 (3)金型付着性 試験片成形金型を用い、成形温度を260℃、金型温度
40℃として成形を100ショット行った時点の金型を
目視観察した。
【0057】(4)難燃性 UL94燃焼試験に準拠(試験片厚み:1.5mm) (5)IZOD(アイゾット衝撃強度) ASTM D256に準拠、23℃(肉厚1/8イン
チ)、単位:kJ/m2 (6)耐久性 1.耐熱老化性〔衝撃強度変化〕:成形品を80℃で3
00時間熱処理を行ない、熱処理後のIZOD衝撃強度
を測定した。 2.耐熱老化性〔色調変化〕:JIS H7103(黄
変度試験方法)に準拠して、色差計で熱処理前後の試験
片の色相(L,a,b)を測定し、色相変化をΔEとし
て算出した。 3.耐湿性:〔衝撃強度変化〕:成形品を温度70℃、
湿度90%の条件下で、300時間の処理を行ない、処
理後のIZOD衝撃強度を測定した。 4.耐湿性:〔色調変化〕:前記に同じ
【0058】
【表1】
【0059】表1の結果から明らかなように、本発明の
難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、すぐれた成形性
を示すとともに、その成形品は、耐熱老化性、耐湿性に
すぐれていることが、衝撃強度、色調の測定結果より明
らかである。また、コアシェルタイプグラフトゴム状弾
性体を配合することにより、衝撃特性を大幅に改善でき
る。
【0060】
【発明の効果】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組
成物は、ノンハロゲンで、かつ優れた難燃性、衝撃強
度、耐熱成形安定性を有するとともに、成形品の耐熱老
化性、耐湿性にすぐれたものである。このことはリサイ
クルによる再生使用が可能となり、環境問題、省資源に
貢献できるものである。また、スチレン系樹脂やコアシ
ェルタイプグラフトゴム状弾性体を併用することによ
り、成形性、衝撃強度などを前記耐久性を維持しつつさ
らに改良できる。したがって、OA機器、情報・通信機
器、電気・電子機器、家庭電化機器、自動車部品などの
大型化、薄肉化にも十分対応できるものであり、その応
用分野の拡大が期待される。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)ポリカーボネート樹脂60〜10
    0重量%、(B)スチレン系樹脂40〜0重量%からな
    る樹脂100重量部に対して、(C)酸価が1mgKO
    H/g以下のリン酸エステル化合物1〜30重量部を溶
    融混練してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 リン酸エステル化合物のモノマー含有量
    が3重量%以下である請求項1記載の難燃性ポリカーボ
    ネート樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 樹脂が、(A)ポリカーボネート樹脂6
    0〜97重量%と(B)成分としてのゴム変性スチレン
    系樹脂40〜3重量%からなる請求項1または2記載の
    難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 さらに、(D)フルオロオレフィン樹脂
    を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対
    して、0.05〜5重量部含有する請求項1〜3のいず
    れかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 さらに、(E)コアシェルタイプグラフ
    トゴム状弾性体を、(A)および(B)からなる樹脂1
    00重量部に対して、1〜30重量部含有する請求項1
    〜4のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組
    成物。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ポ
    リカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
  7. 【請求項7】請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ポ
    リカーボネート樹脂組成物をホットランナー金型により
    射出成形してなる射出成形品。
  8. 【請求項8】成形品が電気・電子機器のハウジングまた
    は部品である請求項6または7に記載の成形品。
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