JP2000144118A - 撥液膜の形成方法 - Google Patents
撥液膜の形成方法Info
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Abstract
る。 【解決手段】 金属アルコキシドと、アルコキシル基の
一部がフルオロアルキル基により置換されているフルオ
ロアルキル基置換アルコキシドとを含む被覆溶液を混合
放置し、これらのアルコキシドを加水分解・重合させ、
この溶液に基材をディッピングし、引き上げ、乾燥し、
次いで加熱することからなる撥液膜の形成方法におい
て、前記アルコキシドの加水分解・重合によって得られ
る金属酸化物の粒子間の細孔径を大きくする手段を付与
する。
Description
に関する。より詳細には、本発明は、高温における亀裂
の発生、破壊を抑制した撥液膜の形成方法に関する。
異物が存在しており、従って例えば内燃機関の燃焼室
は、長期間使用するとその壁面にこの異物が堆積し、い
わゆるデポジットと呼ばれる堆積物が付着する。このデ
ポジットにより、シリンダライナが磨耗し、その結果と
してオイル漏れが生じてオイル消費量が増加してしま
う。また、燃料噴射弁にデポジットが付着すると、燃料
噴射弁の機能、すなわち燃料の遮断もしくは燃料の流量
の制御ができなくなってしまう。
の内壁面や燃料噴射弁に撥液処理を施すことが従来より
提案されている。その一つとして、フルオロアルキルシ
ランとテトラエトキシシランを出発材料とし、いわゆる
ゾルゲル法により撥液膜を形成することが提案されてい
る。すなわち、フルオロアルキルシランとテトラエトキ
シシランに水、酸触媒水溶液、及びエタノール溶媒を加
え、フルオロアルキルシランとテトラエトキシシランの
加水分解と重縮合を行わせて湿潤ゲルを形成し、この湿
潤ゲルに基材をディッピングし、乾燥して乾燥ゲルを形
成し、最後に焼成することによって被覆膜を形成してい
る。このフルオロアルキルシランは撥水撥油性を有する
ことが知られており、フルオロアルキル基を被覆膜の表
面に存在させることにより撥液性を付与し、デポジット
の付着を防止している。
では湿潤ゲルを乾燥ゲルに変える際に亀裂や破壊が生
じ、膜の強度が低下することになる。その結果、高温下
において、熱振動によってシロキサン重合体のネットワ
ーク構造が崩壊し、フルオロアルキル基が脱落し、撥液
能が低下してしまうという問題がある。
抑制した撥液膜の形成方法を提供することを目的とす
る。
めに本発明によれば、金属アルコキシドと、アルコキシ
ル基の一部がフルオロアルキル基により置換されている
フルオロアルキル基置換アルコキシドとを含む被覆溶液
を混合放置し、これらのアルコキシドを加水分解・重合
させ、この溶液に基材をディッピングし、引き上げ、乾
燥し、次いで加熱することからなる撥液膜の形成方法に
おいて、前記アルコキシドの加水分解・重合によって得
られる金属酸化物の粒子間の細孔を大きくする手段を付
与している。
子間の細孔を大きくすることにより、湿潤ゲルを乾燥す
る際の金属酸化物の粒子間の引張応力を抑制し、亀裂、
破壊の発生を抑制することができる。
ルコキシドとは、下式 M(OR)n (1) で表されるものであり、上式中、Mは金属であり、Rは
アルキルであり、nは金属Mの酸化数である。金属Mと
しては種々のものを用いることができ、目的とする金属
酸化物に対応するものを用いる。この金属の例として
は、限定するものではないが、Li、Na、Cu、C
a、Sr、Ba、Zn、B、Al、Ga、Y、Si、G
e、Pb、P、Sb、V、Ta、W、La、Nd等を挙
げることができる。アルキルとしては、メチル、エチ
ル、プロピル、ブチル等を用いることができる。従っ
て、金属アルコキシドとしては、LiOCH3、NaOCH3、Cu(O
CH3)2 、Ca(OCH3)2 、Sr(OCH3)2 、Zn(OCH3)2 、B(OC
H3)3、Al(OC3H7)3、Ga(OC2H5)3、Y(OC4H 9)3 、Si(OC
2H5)4、Ge(OC2H5)4、Pb(OC4H9)3、P(OCH3)3、Sb(OC2H5)
3、V(OC2H5) 3 、Ta(OC3H7)5、W(OC2H5)6 、La(OC
3H7)3、Nd(OC2H5)3等が例示される。
下式 Rfm −M(OR)n-m (2) (上式中、Rfはフルオロアルキル基であり、Mは上記
金属であり、nはこの金属Mの原子価であり、そしてm
はフルオロアルキル基の数である)で表されるように、
上記金属アルコキシドのアルコキシル基ORの一部がフ
ルオロアルキル基で置換されているものである。
表面に整然と配列し、撥液性を示すために5〜10である
ことが好ましい。
られた被膜に撥液性が付与され、デポジットの付着が防
止される。フルオロアルキル基置換金属アルコキシドの
量は多いほどその効果は高いが、逆に多くなると被膜の
強度が低下する。従って、その量は金属アルコキシドの
量の0.3 〜30モル%であることが好ましい。
において、フルオロアルキル基の数、すなわち上記式
(2) におけるRfの数mは多いほど得られる被覆膜の撥
液性が高いが、逆にフルオロアルキル基の数が多すぎる
と、立体障害によってフルオロアルキル基が被覆膜の表
面に密に配列することができなくなるため、このフルオ
ロアルキル基の数mは1であることが好ましい。
用いて、ゾル−ゲル法により被覆膜を形成することに基
づく。ゾル−ゲル法とは、一般には、金属の有機もしく
は無機化合物を溶液とし、この溶液中で該化合物の加水
分解・重縮合反応を進行させてゾルをゲルにして固化
し、このゲルを加熱することによって酸化物固体を製造
する方法である。本発明は、ディップコーティング法に
より、このゲル溶液に基材をディッピングし、次いで焼
成することにより被覆膜を形成する。
フルオロアルキル基置換アルコキシドに水(加水分解
用)、アルコール(均質溶液調製用)、酸(触媒作用)
を加え、被覆溶液を調製する。アルコールとしては、例
えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノ
ール等が用いられる。触媒として用いられる酸として
は、塩酸、硫酸、酢酸、フッ酸が例示される。塩基とし
ては、処理後に揮発によって除去できるアンモニアが用
いられる。
置すると、金属アルコキシドが加水分解、重合し、湿潤
ゲルを形成する。例えば、金属アルコキシドとしてテト
ラエトキシシラン(Si(OC2H5)4、TEOS)を用いた場
合、加水分解は nSi(OC2H5)4 + 4nH2O → nSi(OH)4 + 4nCH3OH のように進行し、重合反応は Si(OH)4 + Si(OH)4 → (HO)3-Si-O-Si(OH)3 (HO)3-Si-O-Si(OH)3 + Si(OH)4 → (HO)3Si-O-Si-O
-Si(OH)3 のように進行し、シロキサン重合体が生成する。
ン骨格を形成し、ゲル化するのであるが、この骨格は多
くの隙間(以後細孔とよぶ)を有しており、この細孔内
に上記のアルコールや酸等からなる溶媒を含んでいる。
従って、この湿潤ゲルに基材をディッピングした後、乾
燥するが、この乾燥工程において、フルオロアルキル基
が被覆膜の表面上に濃縮し、その結果、得られる被覆膜
の表面上に多くのフルオロアルキル基が偏在し、撥液性
に大きく寄与することとなる。
するのであるが、乾燥の初期においては溶媒が蒸発する
につれてこの湿潤ゲルの表面層のみならず内部において
も細孔を満たしている溶媒が減少し、それによってシロ
キサン骨格と細孔が収縮し、全体として体積が減少す
る。すなわち、乾燥の初期においては十分に溶媒を含ん
でいるためシロキサン骨格がフレキシブルであり、骨格
全体の収縮が可能である。
段階においてシロキサン骨格はフレキシビリティーを失
い、それ以上収縮することができなくなるが、この段階
を越えて溶媒が蒸発すると、表面には溶媒がまったく存
在しなくなり、細孔の内部において溶媒が蒸発する。こ
の際、細孔中の溶媒の表面においてシロキサン骨格を細
孔側、すなわち内部に引っ張る毛管力が作用するように
なる。すると、シロキサン骨格はもはや収縮しないた
め、この引張応力によって表面層に亀裂が発生すること
になるのである。
される。
あり、θは濡れ角である。
ためには、すなわちシロキサン骨格の破壊を防止するた
めには、細孔の半径を大きくする、又は溶媒の表面張力
を小さくすればよいことがわかる。すなわち、蒸発させ
る溶媒の表面張力が小さく、細孔径が大きければ、乾燥
時におけるシロキサン骨格の亀裂発生を防止することが
できる。
ず、金属酸化物の一次粒子の大きさを大きくする。すな
わち、金属アルコキシドは、上記反応式によって示され
るように加水分解と重合反応によって金属酸化物の一次
粒子を形成する。そしてこの一次粒子同士が不規則に集
合して内部に細孔を有する二次粒子を形成する。さら
に、この二次粒子が集まって互いにつながり、この二次
粒子間に細孔を有するゲル体を形成する。このようにし
て細孔を有する金属酸化物の骨格が形成されるのであ
り、一次粒子の大きさを大きくすれば、得られる細孔の
径も大きくなる。
を大きくするために、以下の手段が有効である。 (1) 金属アルコキシドを含む被覆溶液をpH1以下の強
酸性条件下で反応させる。従来、ゾルゲル法における金
属アルコキシドの加水分解・重合は、2〜2.5程度の
pHで行われていた。この金属アルコキシドを含む被覆
溶液に加えられる酸触媒、例えば塩酸、硫酸、硝酸、酢
酸、フッ酸等の添加量を従来よりも10倍以上にする
か、又は強酸を添加することによりpHを1以下とす
る。金属アルコキシドは加水分解されると、金属酸化物
のコロイド粒子となり、これに酸触媒を加えることによ
りゾルを形成するのであるが、酸濃度が過大な条件にお
いては、このコロイド粒子が負に荷電し、コロイド粒子
間の反発作用により一次粒子径が拡大するのである。
酸触媒に加え、塩基性触媒を添加する。被覆溶液に、上
記酸触媒に加え、塩基性触媒、例えばNaOH水溶液を
加えると、生成した金属酸化物のコロイド粒子からなる
ゾルは、部分加水分解の状態でも脱水縮合を開始するよ
うになり、また、この塩基性触媒は、ゾル中の表面を覆
っているシラノール基の間の脱水縮合を促進する働きも
有するため、一次粒子径が拡大するのである。この塩基
性触媒は、それと同時もしくは前後に添加する酸性触媒
と同モル以上添加する。
くするためには、以下の手段が有効である。 (3) 湿潤ゲルを超臨界条件下で乾燥する。超臨界条件下
では、液体と気体の区別はないため、溶媒は細孔内で表
面張力を示さなくなり、その結果、表面張力による引張
応力はなくなる。具体的には、基材を加水分解・重合反
応後の湿潤ゲルにディッピング後、オートクレーブに入
れる。オートクレーブ中の高圧下では、圧力に従って沸
点が上昇し、気化しないまま系の温度を上げていくこと
ができる。気化させないで圧力、温度を上げていくと、
細孔内の水/アルコール混合系と周囲のアルコールは、
気体−液体の界面が存在しないガス状の超臨界状態とな
る。このガスを高温に保ったままオートクレーブ外に排
出し、内部の圧力を下げる。常圧まで下がったら下温さ
せ、乾燥を終了する。このため、湿潤ゲル内の液体がガ
ス化し体積が膨張し、液体蒸発時における表面張力が発
生しないため、湿潤ゲル体は亀裂や破壊を起こすことな
く乾燥ゲル体に変化することができるのである。
ルを乾燥ゲルに乾燥する際、通常沸点の低いものから蒸
発する。従って、水−アルコール系の場合、先にアルコ
ールが蒸発し、最後に水が蒸発する。アルコールと水の
表面張力を比較すると、アルコール、例えばメタノール
の表面張力は22.6dyne/cm であり、これに対して水の表
面張力は72.8dyne/cm とはるかに高い。従って、湿潤ゲ
ルを乾燥する場合、先にアルコールが乾燥するため、相
対的に水の濃度が高くなり、その結果、表面張力も高く
なってしまう。そこで、水よりも表面張力が小さくかつ
水よりも沸点の高い乾燥制御剤を添加すれば、乾燥の際
に先に水が蒸発し、表面張力の低い乾燥制御剤が最後に
蒸発することとなり、表面張力を小さくすることができ
る。このような乾燥制御剤としては、ホルムアミド(沸
点210 ℃、表面張力58.2dyne/cm)、ジメチルホルムアミ
ド(沸点153℃、表面張力36.8dyne/cm)を用いることが
できる。
数十Å以下であったが、上記の表面張力を低下させる
(3) 及び(4) の方法により、細孔径は100 Å以上となっ
た。すなわち、結果として、アルコキシドの加水分解・
重合によって得られる金属酸化物の粒子間の細孔径を大
きく、具体的には100 Å以上、好ましくは300 Å以上、
最も好ましくは1000Å以上とすることにより、亀裂の発
生を防止し、膜の強度の低下を防ぐことができる。
を製造した。110mL のガラス容器に、有機溶媒としてエ
タノール51.8g 、金属アルコキシドとしてテトラエトキ
シシラン(Si(OC2H5)4)5.1g、置換金属アルコキシドとし
てフルオロアルキルシラン(CF3(CH2)7CH2CH2Si(OCH3)3)
1.6g、触媒及び水として0.05N 塩酸水溶液6.3gを加え
た。これを攪拌子を用いて室温下で10日間攪拌した。次
いで一面を表面粗度0.8z以下に研磨したSUS 440C製の平
板上試験片をデッピングにより引き上げ速度30mm/minの
条件下で上記溶液を塗布し、200 ℃大気中に1時間放置
して焼成した。
能は、室温下における対水接触角により評価した。初
期、すなわち耐熱試験前の対水接触角は110 〜115 度程
度であった。また、撥液膜の細孔径は、AFM(原子間顕微
鏡)により測定した。
発明を実施した。すなわち、 (1) 上記の塩酸水溶液の量を63g にし、攪拌時間を2時
間として同様にして撥液膜を形成した。 (2) ガラス容器に0.1N水酸化ナトリウム1.0gをさらに添
加し、1分間攪拌して同様にして撥液膜を形成した。 (3) 上記のディッピング後、焼成条件を250 ℃、200 気
圧の条件下で1時間保持し、同様にして撥液膜を形成し
た。 (4) 上記のエタノールの量を36.6g とし、さらにN,N-ジ
メチルホルムアミドを14.5g 加え、2時間攪拌し、同様
にして撥液膜を形成した。
孔径と、380 ℃に25時間放置した後の対水接触角の関係
を図1に示す。図1より明らかなように、本発明の方法
により得られた撥液膜は、平均細孔径が従来の方法に比
較して大きく、耐熱試験後も試験前の対水接触角を維持
していた。
は、亀裂の発生が抑制されており、耐熱試験における熱
振動によっても構造破壊、特にフルオロアルキル基の脱
落が抑制され、撥液能を保持している。
膜の平均細孔径と、380 ℃に25時間放置した後の対水接
触角の関係を示すグラフである。
Claims (1)
- 【請求項1】 金属アルコキシドと、アルコキシル基の
一部がフルオロアルキル基により置換されているフルオ
ロアルキル基置換アルコキシドとを含む被覆溶液を混合
放置し、これらのアルコキシドを加水分解・重合させ、
この溶液に基材をディッピングし、引き上げ、乾燥し、
次いで加熱することからなる撥液膜の形成方法であっ
て、前記アルコキシドの加水分解・重合によって得られ
る金属酸化物の粒子間の細孔径を大きくする手段を付与
することを特徴とする方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP32500198A JP3608030B2 (ja) | 1998-11-16 | 1998-11-16 | 撥液膜の形成方法 |
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JP3608030B2 JP3608030B2 (ja) | 2005-01-05 |
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Family Applications (1)
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---|---|---|---|
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---|---|---|---|---|
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1998
- 1998-11-16 JP JP32500198A patent/JP3608030B2/ja not_active Expired - Fee Related
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