JP2010227883A - 撥水性物品の製造方法及びその製造方法により得られた撥水性物品 - Google Patents

撥水性物品の製造方法及びその製造方法により得られた撥水性物品 Download PDF

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豊幸 寺西
Kazutaka Kamiya
和孝 神谷
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Mitsuo Asai
光雄 浅井
Muneo Kudo
宗夫 工藤
Masaki Tanaka
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Abstract

【課題】長期間に渡り、耐アルカリ性に優れた撥水性物品の製造方法を提供すること。
【解決手段】基材表面に撥水層を含む膜を形成し、焼成炉の容積1m3当たり300g以上の水蒸気を用いて焼成炉内を水蒸気雰囲気とし、その水蒸気雰囲気中で当該基材表面に形成された撥水層を含む膜を焼成する撥水性物品の製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガラス、ガラスセラミックス、セラミックス、プラスチックスあるいは金属等の基材表面に撥水層を含む膜を形成した撥水性物品の製造方法に関し、特に、建築、自動車、車両、航空機あるいは船舶等に好ましく用いられる耐アルカリ性に優れた撥水性物品の製造方法に関する。
従来、ガラスその他の基材表面に撥水層を含む膜が形成された撥水性物品が知られており、例えば、基材表面に直接撥水層を形成した撥水性物品や、基材表面と撥水層との間に下地層を設けた撥水性物品がある。この撥水性物品の下地層は、基材と撥水層との接着性を向上させるという機能を有している。この撥水性物品の製造方法としては、基材表面に下地層を形成し、その上に撥水層を形成し、乾燥又は焼成して撥水性物品とする方法、又は基材表面に下地成分と撥水成分とを含有する溶液を塗布し、焼成して単層膜で下地層と撥水層が形成された撥水性物品とする方法が知られている。
特許文献1には、クロロシリル基を分子内に有する物質をアルコール系溶媒に溶解して反応させた下地処理液を基材表面に塗布し、これを乾燥させて下地層を形成し、この下地層の上に撥水層を形成する方法が開示されている。
この特許文献1に開示されている方法は、溶液中のシリコンアルコキシドの重合度と反応性を制御することで、高温焼成することなく緻密な撥水層を形成することができるというものである。
また、特許文献2、3には、撥水層の耐アルカリ性を向上させて撥水性を長期間維持させること等を目的として、シリコンアルコキシドと、アルコキシル基の一部がフルオロアルキル基で置換された置換シリコンアルコキシドとを含有する溶液をガラス基材表面に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を焼成して単層膜で下地層と撥水層を形成する方法が開示されている。
これら特許文献2、3に開示されている方法では、大気中で撥水層の焼成をおこなう場合は、焼成温度を350℃以下の温度でおこない、非酸化性雰囲気で撥水層の焼成をおこなう場合は、焼成温度を600℃より低い温度でおこなうものである。
特許第3588364号公報 特開平4−338137号公報 特開平6−1636号公報
特許文献1に開示されている方法では、焼成せずに撥水層を形成するものであり、得られた撥水性物品の耐アルカリ性が十分とはいいがたい状況であった。また、特許文献2、3に開示されている方法でも、焼成することにより基材と撥水層との密着性が向上し、硬度も高くなるが、未だ得られた撥水性物品の耐アルカリ性が十分とはいいがたい状況であった。
このような耐アルカリ性が十分ではない撥水性物品では、撥水性能の劣化が速く起こり、長期間に渡り良好な撥水性を維持することができないという問題がある。耐アルカリ性が十分でないと撥水性を維持することができない理由は明らかではないが、アルカリにより下地層や基材表面が損傷を受け、これにより、撥水層に亀裂が入ったり、撥水層の一部が脱離したりすることが原因であると考えられる。
さらに、特許文献2、3には、少量の水蒸気を導入しながら焼成して撥水層を形成する方法が記載されており、この方法により、未反応のアルコキシドの加水分解反応が進行し、撥水層の緻密化が進み、密着性及び膜硬度が向上する旨が記載されている。このような水蒸気を導入する場合は、導入しない場合よりも耐アルカリ性に優れた撥水性物品が得られると期待されるが、この方法によって得られた撥水性物品も、長期間に渡り良好な撥水性を維持することができず、長期間に渡り、耐アルカリ性に優れた撥水性物品の開発が望まれていた。
本発明は、上記の問題点に鑑み、長期間に渡り、耐アルカリ性に優れた撥水性物品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、多量の水蒸気中で撥水層を含む膜を焼成することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1) 基材表面に撥水層を含む膜を形成し、焼成炉の容積1m3当たり300g以上の水蒸気を用いて焼成炉内を水蒸気雰囲気とし、その水蒸気雰囲気中で当該基材表面に形成された撥水層を含む膜を焼成する撥水性物品の製造方法、
(2) 前記水蒸気雰囲気が、水蒸気の噴射により形成されたものである上記(1)に記載の撥水性物品の製造方法、
(3) 前記水蒸気の噴射量が0.5〜1,000g/minである上記(2)に記載の撥水性物品の製造方法、
(4) 前記水蒸気が過熱水蒸気である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の撥水性物品の製造方法、
(5) 前記過熱水蒸気の温度が、150〜600℃である上記(4)に記載の撥水性物品の製造方法、
(6) 前記焼成炉内の酸素濃度が3体積%以下である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の撥水性物品の製造方法、
(7) 前記焼成の温度が、150〜500℃である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の撥水性物品の製造方法、
(8) 前記焼成の時間が、10秒〜60分である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の撥水性物品の製造方法、
(9) 上記(1)〜(8)のいずれかの製造方法により得られた撥水性物品、
を提供するものである。
本発明によれば、長期間に渡り、耐アルカリ性に優れた撥水性物品を製造することができ、特に、建築、自動車、車両、航空機あるいは船舶等に好ましく用いられる撥水性物品を製造することができる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
まず、基材表面に撥水層を含む膜を形成する。
この基材は、特に制限されず、ガラス、ガラスセラミックス、セラミックス、プラスチック、金属等を用いることができる。
基材表面に膜として形成される撥水層は、撥水機能を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、シラン化合物、シロキサン化合物、シリコーン化合物を含有する撥水剤により撥水層を形成することができ、これらの撥水剤は、一種又は二種以上を用いることができる。さらに、これらの撥水剤は必要に応じて、酸、塩基などの触媒を用いて加水分解して用いてもよい。またシラン化合物を加水分解、縮合反応させてシロキサン化合物として用いたものでもよい。
シラン化合物としては、特に、フルオロアルキル基含有シラン化合物が好ましく、CF3(CF27(CH22Si(OCH33、CF3(CF25(CH22Si(OCH33、CF3(CF27(CH22SiCl3、CF3(CF25(CH22SiCl3等を例示することができる。
また、シリコーン化合物としては、直鎖、又は鎖状のポリジメチルシロキサン、これらのシラノール変成、アルコキシド変成、ハイドロジェン変成、ハロゲン変成等を例示することができる。
基材表面に撥水層を形成する方法としては、例えば、特許第3588364号公報(前記特許文献1)、特開平10−194784号公報に記載されているフロオロアルキル基を分子内に有するオルガノシランを加水分解して撥水処理液を調整し、この撥水処理液を基材表面に直接又は基材表面に形成された下地層の上に塗布し、これを乾燥して、撥水層を形成する方法等を採用することができる。
この撥水層の厚さは、0.1〜100nm、好ましくは1〜20nm、より好ましくは1〜5nmである。
この撥水層を形成する方法としては、フローコート、ロールコート、スピンコート、カーテンコート、スプレーコート、手塗り法、刷毛塗り法、浸漬引き上げ法、流し塗り法、スクリーン印刷、グラビア印刷等の方法を採用することができる。
また、本願発明の基材表面に撥水層を含む膜として、基材表面に下地層を設けその上に撥水層を設けた膜とすることもでき、この場合、下地層は、基材と撥水層との結合を強化する機能を有する。このような下地層としては、シリカ系、チタニア系、アルミナ系等の酸化物膜を用いることができる。特に、基材としてアルカリ成分を含有する基材を用いた場合、上記下地層は、基材中のアルカリが撥水層に拡散することを防止するためのバリヤー層としての機能も有する。
この下地層を基材表面に形成する方法は、特に制限されず、例えば、熱CVD法、プラズマCVD法等による化学的気相成長法、真空蒸着法、スパッタリング等による物理的気相成長法、ゾルゲル法等の液相法により下地層を形成することができる。
特に、下地層を形成する方法としては、液相法によりシリカ系の下地層を形成する方法が好ましい。例えば、特許第3588364号公報(前記特許文献1)に記載されているクロロシリル基を分子内に有する物質をアルコール系溶媒に溶解して反応させて下地処理液を調整し、この下地処理剤をフローコート、ロールコート、スピンコート、カーテンコート、スプレーコート、手塗り法、刷毛塗り法、浸漬引き上げ法、流し塗り法、スクリーン印刷、グラビア印刷等の方法により、基材表面に塗布し、これを乾燥してシリカ系の下地層を形成する方法、特開平10−194784号公報に記載されているシリコンアルコキシド、高分子タイプのアルキルシリケート等を加水分解して下地処理液を調整し、この下地処理液を上記の塗布方法により、基材表面に塗布し、これを乾燥、焼成してシリカ系の下地層を形成する方法等を採用することができる。
この下地層の厚さは、5〜300nm、好ましくは5〜100nm、より好ましくは10〜50nmである。
さらに、下地層と撥水層とをそれぞれ別の工程により形成するものに限らず、いわゆるワンコート法により、下地層と撥水層とを形成することができ、例えば、特許第3334611号公報に記載されているクロルシリル基含有化合物と、フルオロアルキル基含有シラン化合物とを含有する溶液を基材表面に塗布した後乾燥して下地層を有する撥水層を形成する方法、あるいは特開平4−338137号公報(前記特許文献2)、特開平6−1636号公報(前記特許文献3)に記載されているシリコンアルコキシドと、アルコキシル基の一部がフルオロアルキル基で置換された置換シリコンアルコキシドとを含有する溶液を基材表面に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を焼成して下地層を有する撥水層を形成する方法を採用することもできる。
このようなワンコート法の場合は、基材表面付近に下地成分を多く含み、基材表面から遠ざかるにつれて下地成分が少なくなり、逆に撥水成分が多くなり、基材表面とは反対の表面には撥水成分を多く含むような膜が形成され、下地層と撥水層との境界を明確に区別することができないような膜となる場合がある。このような膜の場合は、下地成分を多く含む部分を下地層とし、撥水成分を多く含む部分を撥水層として、基材表面と撥水層との間に下地層が存在している撥水性物品に含まれる。
次に、焼成炉の容積1m3当たり300g以上の水蒸気を用いて焼成炉内を水蒸気雰囲気とし、その水蒸気雰囲気中で当該基材表面に形成された下地層及び撥水層を焼成する。
焼成炉としては、特に限定されず、通常焼成に用いられる焼成炉を用いることができるが、炉内を水蒸気雰囲気とするために、水蒸気発生装置を有していることが好ましい。
焼成炉内を水蒸気雰囲気にする方法としては、水蒸気発生装置から水蒸気を焼成炉内に噴射して、焼成炉内を水蒸気雰囲気にするのが好ましい。この水蒸気は、通常の水蒸気でもよいが、過熱水蒸気が特に好ましい。
また、焼成炉内に水蒸気を噴射する方法以外の方法としては、炉内に水を配置しておき、焼成炉による加熱により当該水を水蒸気化する方法がある。
そして、水蒸気の量を、焼成炉の容積1m3当たり300g以上とするのは、この量以上であれば、長期間に渡り、耐アルカリ性に優れた撥水性物品が得られるからである。好ましくは500g以上、特に好ましくは700g以上である。
水蒸気の量の上限は、特に限定されないが、焼成炉の容積1m3当たり1,000,000g以下が好ましい。これは、この量より多くても、撥水性物品の耐アルカリ性の改善に与える影響が少ないからであり、特に好ましくは100,000g以下、さらに好ましくは5,000g以下である。
この水蒸気の量は、水蒸気を噴射する方法の場合は、水蒸気噴射量と時間との積により求めることができ、焼成炉内に水を配置しておき、焼成炉による加熱により当該水を水蒸気化する方法の場合は、配置時の水の量と残存した水の量との差から求めることができる。
水蒸気を噴射する方法の場合、水蒸気の噴射時間は、特に限定されないが、焼成の間噴射してもよく、焼成の開始から一定時間噴射するものでもよい。一定時間の噴射により、噴射を止めた後も、焼成炉内は水蒸気雰囲気を維持することができるからである。そして、水蒸気の噴射量にもよるが、例えば、10分間基材表面に形成された撥水層を含む膜を焼成する場合は、水蒸気を30秒〜10分噴射するのがよく、60分間基材表面に形成された撥水層を含む膜を焼成する場合は、水蒸気を1〜60分噴射するのがよい。
水蒸気の噴射量としては、0.5〜1,000g/minが好ましく、1〜700g/minが特に好ましく、2〜500g/minがさらに好ましい。
また、焼成炉内は、水蒸気で満たされ水蒸気雰囲気となっていることから、炉内の酸素の含有量は少なくなっており、特に、窒素雰囲気、不活性ガス雰囲気等としなくても、低酸素濃度の状態が形成されていると考えられる。もちろん、撥水層を含む膜を焼成する前の焼成炉の雰囲気を窒素雰囲気、不活性ガス雰囲気等にしたり、焼成中に窒素、不活性ガス等を焼成炉に流したりしてもよい。酸素濃度が低ければ、撥水層の酸化を防止することができるので、酸素濃度としては、3体積%以下とするのが好ましい。より好ましくは1体積%以下、さらに好ましくは0.5体積%以下である。
この撥水層を含む膜を水蒸気雰囲気で焼成することで耐アルカリ性が向上する理由は明確ではないが、多量の水蒸気とこれによる低酸素状態により、撥水層、下地層の加水分解、重合反応が促進され、撥水層、下地層が緻密になり、基材と撥水層が強固に結合、あるいは基材と下地層と撥水層とが互いに強固に結合するものと考えられる。
また、低酸素雰囲気状態であることから、撥水層を含む膜の焼成温度を高くすることができ、これにより撥水層、下地層の緻密化がさらに促進される。
さらに、水蒸気として、加熱水蒸気を用いた場合は、急速加熱することが可能であり、この急速加熱により、上記したような撥水層、下地層の緻密化、基材と撥水層と結合の強化、基材と下地層と撥水層との結合の強化を短時間でおこなうことが可能となる。その結果、製造時間を短縮することができ、コストダウンを図ることができる。
そして、過熱水蒸気を用いる場合は、その温度は、150〜600℃が好ましい。この温度範囲内であれば、長期間に渡り、耐アルカリ性にすぐれた撥水性物品が得られるからである。特に好ましくは、200〜500℃であり、さらに好ましくは、230〜450℃である。
過熱水蒸気を発生させることができる焼成炉としては、例えば、過熱水蒸気オーブン、過熱水蒸気発生装置付き加熱炉等がある。
また、基材表面に形成された撥水層を含む膜の焼成温度は、150〜500℃が好ましく、焼成時間は、10秒〜60分が好ましい。この温度範囲及び時間であれば、撥水層を含む膜の焼成が十分に行え、基材の変形等が生じないからである。特に好ましい焼成温度は200〜450℃であり、さらに好ましくは230〜400℃である。また、特に好ましい焼成時間は10秒〜30分であり、さらに好ましくは10秒〜15分である。
以上、基材表面に撥水層を含む膜が形成された撥水性物品について説明したが、本願発明は、このような撥水性物品に限らず、基材表面に他の機能性膜が形成された物品についても適用することができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
[耐アルカリ性評価]
撥水性物品について、接触角測定装置(協和界面科学社製:CA−DT)を用いて、2mgの水滴による静的接触角(以下「CA」と呼ぶことがある。)を以下のように経時的に測定することにより、撥水性物品の耐アルカリ性の評価をおこなった。
まず、製造された撥水性物品についてCAを測定し、このときのCAを初期CAとし、基準値とした。
次に、撥水性物品を室温の0.1N水酸化ナトリウム水溶液に所定時間浸漬した後、水洗し、常温常湿で1時間静置した。その後、初期CAの測定の場合と同様にしてCAを測定し、水酸化ナトリウム水溶液に所定時間浸漬した後のCAを測定した。耐アルカリ性に劣る撥水性物品では、このアルカリ水溶液により水の接触角が低下するので、このアルカリ浸漬後のCAの値が初期CAの値に近いものが耐アルカリ性に優れていると評価した。
実施例1
[撥水層を含む膜が形成されたガラス基材の作製]
基材として、300×300×3.4mmのソーダライムガラスのガラス板を用意した。
次に、エタノール(ナカライテクス社製)99.5gにテトラクロロシラン(信越化学工業社製:LS−10)0.5gを添加し、30分間撹拌して下地処理液を作製した。
また、トリデカフロロオクチルトリクロロシラン(信越化学工業社製:KA−7603)5.0gをオクタメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業社製:KF994)95gに溶解し、30分間撹拌して撥水処理液を作製した。
そして、洗浄したガラス基材の表面に下地処理液を、相対湿度20%、室温下でフローコート法にて塗布し、その状態で約30分間乾燥し、ガラス基材表面に下地層を形成した。その後、綿布に2mlの撥水処理液をつけ、この下地層の表面に塗り込んだ後、過剰に付着した撥水処理液をエタノールを含ませた新しい綿布で拭き取り、撥水層を形成し、下地層及び撥水層が形成されたガラス基材を作製した。
[過熱水蒸気焼成]
次に、この下地層及び撥水層が形成されたガラス基材を過熱水蒸気オーブン(シャープ社製ヘルシオ AX−2000)に入れ、ウォーターグリル、設定温度250℃、予備加熱あり、焼成時間10分の条件の下、下地層及び撥水層を過熱水蒸気雰囲気中で焼成し、撥水性ガラスを作製した。
この焼成のときのガラス基材の最高温度は、約235℃であり、過熱水蒸気の温度、噴射量、噴射時間は、それぞれ約260℃、約9g/min、10分であり、トータルの過熱水蒸気量は、焼成炉の容積1m3当たり3,000gであった。また、過熱水蒸気オーブン内の酸素濃度は3体積%以下であった。
得られた撥水性ガラスを0.1N水酸化ナトリウム水溶液に90分浸漬して、上記の耐アルカリ性評価をした。この結果をアルカリ浸漬後CA(90min)として初期CAと共に表1に示す。
実施例2
[撥水層を含む膜が形成されたガラス基材の作製]
実施例1と同様にして下地層及び撥水層が形成されたガラス基材を作製した。
[過熱水蒸気焼成]
この下地層及び撥水層が形成されたガラス基材を過熱水蒸気発生装置付き加熱炉(第一高周波工業社製:Super Hi−10)に入れ、炉内温度400℃、焼成時間1分の条件の下、下地層及び撥水層を過熱水蒸気雰囲気中で焼成し、撥水性ガラスを作製した。
この焼成のときのガラス基材の最高温度は、約300℃であり、過熱水蒸気の温度、噴射量、噴射時間は、それぞれ約500℃、約167g/min、1分であり、トータルの過熱水蒸気量は、焼成炉の容積1m3当たり22,000gであった。また、加熱炉内の酸素濃度は3体積%以下であった。
得られた撥水性ガラスについて、実施例1と同様に耐アルカリ性評価をした。その結果を表1に示す。
実施例3
[撥水層を含む膜が形成されたガラス基材の作製]
基材として、300×300×3.4mmのソーダライムガラスのガラス板を用意した。
次に、エタノール(ナカライテクス社製)97.37gにトリデカフロロオクチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM−7603)0.03gとテトラエトキシシラン(信越化学工業社製:KBE−04)0.6gを添加し、次いで濃塩酸2.0gを撹拌しながら添加して、撥水処理液を作製した。この撥水処理液は、下地成分を含むものであり、焼成により下地層を有する撥水層が形成される。
そして、この撥水処理液を洗浄したガラス基材の表面に、相対湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布し、その状態で約30分間乾燥し、下地層を有する撥水層を形成し、下地層及び撥水層が形成されたガラス基材を作製した。
[過熱水蒸気焼成]
次に、この下地層及び撥水層が形成されたガラス基材を過熱水蒸気オーブン(シャープ社製ヘルシオ AX−2000)に入れ、ウォーターオーブンのロースト、設定温度200℃、予備加熱あり、焼成時間10分の条件の下、下地層及び撥水層を過熱水蒸気雰囲気中で焼成し、撥水性ガラスを作製した。
この焼成のときのガラス基材の最高温度は、約200℃であり、過熱水蒸気の温度、噴射量、噴射時間は、それぞれ約230℃、約9g/min、10分であり、トータルの過熱水蒸気量は、焼成炉の容積1m3当たり3,000gであった。また、過熱水蒸気オーブン内の酸素濃度は3体積%以下であった。
得られた撥水性ガラスについて、実施例1と同様に耐アルカリ性評価をした。その結果を表1に示す。
比較例1
実施例1と同様にして下地層及び撥水層が形成されたガラス基材を作製した。そして、実施例1とは異なり、このガラス基材について過熱水蒸気焼成はおこなわず、そのまま撥水性ガラスとし、実施例1と同様に耐アルカリ性評価をした。その結果を表1に示す。
比較例2
実施例3と同様にして下地層及び撥水層が形成されたガラス基材を作製した。そして、実施例3とは異なり、このガラス基材について過熱水蒸気焼成はおこなわず、そのまま撥水性ガラスとし、実施例1と同様に耐アルカリ性評価をした。その結果を表1に示す。
比較例3
実施例1と同様にして下地層及び撥水層が形成されたガラス基材を作製した。
次に、この下地層及び撥水層が形成されたガラス基材を過熱水蒸気オーブン(シャープ社製ヘルシオ AX−2000)に入れ、オーブン、設定温度250℃、焼成時間10分の条件、すなわち過熱水蒸気及び水蒸気を発生させない通常のオーブンの条件の下、撥水層を焼成し、撥水性ガラスを作製した。このときのガラス基材の最高温度は、約235℃であった。
得られた撥水性ガラスについて、実施例1と同様に耐アルカリ性評価をした。その結果を表1に示す。
Figure 2010227883
表1の結果から、過熱水蒸気焼成した実施例1〜3では、アルカリ浸漬後のCAが92〜99°と90分アルカリに浸漬した後も、耐アルカリ性に優れていた。これに対し、水蒸気焼成しなかった比較例1〜3では、アルカリ浸漬後のCAが37〜86°と耐アルカリ性に劣るものであった。この実施例1〜3の撥水性ガラスは、ガラスと下地層及び撥水層の密着性に優れ、耐擦傷性、耐候性にも優れていた。
したがって、撥水層を含む膜が形成されたガラス基材を焼成炉の容積1m3当たり300g以上の水蒸気雰囲気中で焼成することにより、耐アルカリ性に優れた撥水性ガラス(撥水性物品)を製造することができることが確認された。
次に、撥水性ガラスを0.1N水酸化ナトリウム水溶液に90分及び180分浸漬して、CAの経時的に測定することにより、撥水性物品の耐アルカリ性の変化の評価をおこなった。
実施例4、比較例4
実施例1と同様にして撥水性ガラスを作製したものを実施例4とし、比較例3と同様にして撥水性ガラスを作製したものを比較例4とした。
これらの撥水性ガラスについて、0.1N水酸化ナトリウム水溶液に90分及び180分浸漬した後のCAを測定した。この結果をアルカリ浸漬後CA(90min)及び(180min)として初期CAと共に表2に示す。また、参考のため、比較例1の結果も表2に示す。
実施例5
実施例1と同様にして下地層及び撥水層が形成されたガラス基材を作製した。
この下地層及び撥水層が形成されたガラス基材について、オーブン内に200mlの水を置き、過熱水蒸気は噴射しない条件としたほかは、実施例1と同様にして撥水性ガラスを作製した。トータルの水蒸気量は、それぞれ、焼成炉の容積1m3当たり730gであった。
得られた撥水性ガラスについて、実施例5等と同様にして耐アルカリ性評価をした。この結果をアルカリ浸漬後CA(90min)及び(180min)として初期CAと共に表2に示す。
比較例5
比較例3と同様にして下地層及び撥水層が形成されたガラス基材を作製した。
この下地層及び撥水層が形成されたガラス基材について、空気によるバブリングで、24℃における80%RHの水蒸気を作製し、この水蒸気を500ml/minで焼成炉内に導入しながら加熱し、焼成時間を10分、30分、60分としたほかは、比較例3と同様にして撥水性ガラスを作製した。トータルの水蒸気量は、それぞれ、焼成炉の容積1m3当たり3g、9g、17gであった。
得られた撥水性ガラスについて、実施例4等と同様にして耐アルカリ性評価をした。この結果をアルカリ浸漬後CA(90min)及び(180min)として初期CAと共に表2に示す。
比較例6
比較例3と同様にして下地層及び撥水層が形成されたガラス基材を作製した。
この下地層及び撥水層が形成されたガラス基材について、空気によるによるバブリングで、25℃における45%RHの水蒸気を作製し、この水蒸気を5,000ml/minで焼成炉内に導入しながら加熱し、焼成時間を10分、30分、60分としたほかは、比較例3と同様にして撥水性ガラスを作製した。トータルの水蒸気量は、それぞれ、焼成炉の容積1m3当たり17g、52g、104gであった。
得られた撥水性ガラスについて、実施例5等と同様にして耐アルカリ性評価をした。この結果をアルカリ浸漬後CA(90min)及び(180min)として初期CAと共に表2に示す。
Figure 2010227883
表2の結果から、トータルの水蒸気量が焼成炉の容積1m3当たり300g以上の実施例4及び5は、アルカリに180分間浸漬した後のCAが92〜95°であり、長期に渡り、耐アルカリ性に優れていることが確認できた。この実施例4及び5の撥水性ガラスは、ガラスと下地層及び撥水層の密着性に優れ、耐擦傷性、耐候性にも優れていた。
これに対し、トータルの水蒸気量が焼成炉の容積1m3当たり9〜104gの30分焼成及び60分焼成の比較例5及び6では、アルカリに90分間浸漬した後のCAは、実施例4及び5とあまり差がないが、アルカリに180分間浸漬した後のCAは、実施例4及び5より低く、長期間の耐アルカリ性に優れているものではなかった。
したがって、撥水層を含む膜が形成されたガラス基材を焼成炉の容積1m3当たり300g以上の水蒸気雰囲気中で焼成することにより、長期間に渡り、耐アルカリ性に優れた撥水性ガラス(撥水性物品)を製造することができることが確認された。
本発明によれば、長期間に渡り、優れた耐アルカリ性を有する撥水性物品を製造することができ、建築、自動車、車両、航空機あるいは船舶等の撥水性物品に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 基材表面に撥水層を含む膜を形成し、焼成炉の容積1m3当たり300g以上の水蒸気を用いて焼成炉内を水蒸気雰囲気とし、その水蒸気雰囲気中で当該基材表面に形成された撥水層を含む膜を焼成する撥水性物品の製造方法。
  2. 前記水蒸気雰囲気が、水蒸気の噴射により形成されたものである請求項1に記載の撥水性物品の製造方法。
  3. 前記水蒸気の噴射量が0.5〜1,000g/minである請求項2に記載の撥水性物品の製造方法。
  4. 前記水蒸気が過熱水蒸気である請求項1〜3のいずれかに記載の撥水性物品の製造方法。
  5. 前記過熱水蒸気の温度が、150〜600℃である請求項4に記載の撥水性物品の製造方法。
  6. 前記焼成炉内の酸素濃度が3体積%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の撥水性物品の製造方法。
  7. 前記焼成の温度が、150〜500℃である請求項1〜6のいずれかに記載の撥水性物品の製造方法。
  8. 前記焼成の時間が、10秒〜60分である請求項1〜7のいずれかに記載の撥水性物品の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかの製造方法により得られた撥水性物品。
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