JP2018176160A - 基材層表層への機能層の形成方法及び形成装置 - Google Patents

基材層表層への機能層の形成方法及び形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】簡単な作業で基材層の表層に樹脂塗装層や鍍金層等の機能層を形成することができて、高い密着性で新しい機能層を形成することができ、作業時間の短縮や作業負担を軽減できる基材層表層への機能層の形成方法の提供。【解決手段】基材層の表層に過熱蒸気を接触させ、表層に付着している汚れ(酸化皮膜を含む)等の除去と同時に、表層を形成する分子M1間又は原子M1間の間隙を一時的に拡開する工程と、フェイスコート層形成分子M2を含有するフェイスコート層形成剤を表層に接触させ、間隙に前記フェイスコート層形成分子M2を侵入させ基材表層と結合させてフェイスコート層を形成する工程と、フェイスコート層の表層の少なくとも一部に機能層を形成する工程とを有する形成方法。また、基材層の表層に過熱蒸気を接触させることで表層を活性化させ、活性化させた表層とフェイスコート層形成分子とを結合させる形成方法。【選択図】図1

Description

本発明は、金属又は金属合金の基材層の表層に、これら基材層の防錆、防食、保護、透水抑制、装飾、軽量化など種々の機能を目的として機能層を形成するに際し、前記機能層を前記表層に高い密着性で一体的に形成することのできる方法及びそのための装置に関する。
基材層の表層に形成される前述の用途を目的とした機能層の代表例として、メッキや樹脂塗装などを挙げることができる。このうちメッキは、金属を溶解した溶液中などで処理を行なうウエット方式と、真空中などで行なうドライ方式があり、基材層の表層に金属の薄い膜を形成する技術である。
また、樹脂塗装は、基材層の表層に樹脂塗料を接触させて樹脂塗膜層を形成する技術である。そして、従来、基材層の表層と機能層との密着性を高めるために、先ず基材層の表層の汚れ(酸化皮膜を含む)の除去、粗面化または、機能層との馴染を高めるために下地層の形成などが行なわれている。
ここで、前述した基材層の表層に機能層を強固に密着させるため、予め行われる汚れの除去には、アルコール類、ケトン類などや、または界面活性剤やアルカリ系洗浄剤などに浸漬して用いられたり、ケレンやブラストなどで表面研磨を行い清浄化している。また、特許文献1には、金属表層に発生した酸化皮膜などの不純物の除去が開示され、このような酸洗い(エッチング)を用いることで基材層の表層を活性化することも行われている。
特開2011−20006号公報(例えば段落0011の記載参照)
しかしながら、このような作業は比較的小型なものには対応できるものの大型なものに対して対応することが困難で、また多大な手間と時間がかかり、更に自動化も難しいという問題がある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、簡単な作業で基材層の表層にフェイスコート層を形成することにより、従来の、樹脂塗装層や鍍金層等の機能層を作業負担も軽減すると共に、細部に渡り高い密着性で機能層を形成する方法と自動化を提供する。
本発明の発明者が鋭意研究を行った結果、基材の組成に応じて、ハロゲン系無機酸や果実酸並びに電解酸性水などの酸性水溶液(PH5.8以下から0.1程度)、または水、或いはアルカリ水溶液(PH8.6以上から12.5程度)を適時選択し、基材表層に、先ず過熱蒸気として接触させることで表層の汚れが除去されると同時に微細な無数の凹み(図7のA及びB参照)や亀裂(同C参照)或いは、表層を形成する結晶組織の分子間又は原子間の間隙を一時的に拡開させることで、付着または、内在している水分や汚れ(酸化皮膜を含む)等を除去できることがわかった。
これは、過熱蒸気の接触により既述の部分から水分等が蒸発し、体積が減少することで真空の潜熱を帯びた活性な表層状態となり、その後、フェイスコート層形成剤を形成する成分を含む水溶液(単に「フェイスコート層形成剤」と記載することもある)を接触(好ましくは過熱蒸気として接触)させることでフェイスコート層形成剤を基材層の表層に吸収させ、基材表層の潜熱と自己熱の関与によりフェイスコート層形成剤に含まれる水分が蒸発し、無数の凹みや亀裂などの空隙内に成分のみがドーピングされ基材表層と強固に一体化したフェイスコート層が形成されると推測できる。
本発明の発明者はこのような知見に基づき、前記表層に各種用途に応じた機能層を強固に形成する本発明の方法に想到した。前記本発明の方法の概念を図1に示す。また、本発明の概念に含まれる実施の形態を図6に示す。
請求項1に記載する発明は、基材層の表層に過熱蒸気を接触させ、前記表層を形成する分子間又は原子間の間隙を一時的に拡開する工程と、フェイスコート層形成分子を含有するフェイスコート層形成剤を前記表層に接触させ、一時的に拡開させた前記間隙に前記フェイスコート層形成分子を侵入させた後、前記間隙を閉じ、前記間隙の内部に前記フェイスコート層形成分子を閉じこめ、前記間隙の内部と外側の前記フェイスコート層形成分子を結合させてフェイスコート層を形成する工程と、前記フェイスコート層の表層の少なくとも一部に機能層を形成する工程とを有する方法としてある(図6(i))。
請求項2に記載するように、前記基材層の表層に過熱蒸気を接触させることで前記表層を活性化させ、活性化させた前記表層と前記フェイスコート層形成分子とを結合させるようにしてもよい。
このようにすることでより強固に基材層に結合したフェイスコート層を得ることができる。
本発明の方法によって基材層の表層に形成される前記機能層としては、請求項3に記載するように、合金層、化合物層、混合物層、セラミック層、樹脂層、鍍金層又は犠牲防食層のいずれかとすることができる。
請求項4に記載するように、前記フェイスコート層形成剤に粘性付与剤を添加してもよい。また、請求項5に記載するように前記フェイスコート層形成剤を前記表層に接触させた後に過熱蒸気を接触させてもよい(図6(vi))。この方法は、塗布や浸漬によりフェイスコート層を形成する場合に特に有効である。
請求項6に記載するように、前記過熱蒸気の水溶液にフェイスコート層形成剤を含有させることで、前記過熱蒸気を接触させる工程と前記フェイスコート層を形成する工程とを同時に行うことができるようになる(図6(ii)(v))。
請求項7に記載するように、前記フェイスコート層形成分子は、ドーピング金属分子であってもよく、このようなドーピング金属分子としては金属イオン分子や金属酸化物の分子を挙げることができる。
なお、前記基材層の表層に過熱蒸気を接触させる工程の前に、基材の組成に応じて酸性水溶液及びアルカリ水溶液を前記基材層に接触させる工程を設けてもよい(図6(iii) (iv))。この酸性水溶液及びアルカリ水溶液は、過熱蒸気としてもよいし、過熱蒸気としなくてもよい。
請求項8に記載するように、前記過熱蒸気は酸性水溶液、水又はアルカリ水溶液のいずれかであってもよく、請求項9に記載するように、前記酸性水溶液を前記表層に接触させた後に、中性水溶液又はこの過熱蒸気を前記表層に接触させてもよい(図6(iii)(iv)参照)。
基材層の表層への過熱蒸気の接触、フェイスコート層形成剤の接触及び機能層形成剤の接触処理方法としては、例えば図5(b)に示すように、各々の接触処理を行うチャンバー又は領域5を上流側から下流側に向けて順に配置し、上流側のチャンバー又は領域5から下流側のチャンバー又は領域5へ、コンベア6等で基材Wを矢印IIの方向に移動させながら各処理を順次行うバッチ処理方式を挙げることができる。
また、例えば請求項10及び図5(a)に示すように、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部と、基材層に近接して配置された複数の噴射ノズルとを準備し、前記噴射ノズルを上流側から順に、過熱蒸気を噴射する過熱蒸気噴射ノズル、フェイスコート層形成剤の過熱蒸気を噴射するフェイスコート層形成剤噴射ノズル、機能層形成剤を噴射する機能層形成剤噴射ノズルとして割り当て、これらノズルを一体的に前記表層に対して移動させるようにしてもよい。この場合、請求項11に記載するように、前記過熱蒸気が前記フェイスコート層形成剤を含む場合に、前記過熱蒸気を一定圧力及び一定温度で保持して密閉する密閉容器を用いて、前記過熱蒸気噴射ノズルから噴射して基材に接触させるようにしてもよい。
このようにすることで、前記複数の噴射ノズルを通過させるだけで、過熱蒸気の接触、フェイスコート層の形成、機能性の形成を行うことができる。
前記基材層としては、Be・Mg・Al・Ti・Fe・Co・Ni・Cu・Zn・Mo・Rh・Pd・Ag・Sn・Sb・W・Ir・Pt・Au・Pb・Biの金属又はBe・Mg・Al・Ti・Fe・Co・Ni・Cu・Zn・Mo・Rh・Pd・Ag・Sn・Sb・W・Ir・Pt・Au・Pb・Biの金属を含む合金並びにB・Siのメタロイド系半金属のいずれかとすることができる。
なお、犠牲防食層の形成に用いられる金属イオン及び/又は金属酸化物としては、特に、クロム、亜鉛、チタン、アルミニウム、錫、ビスマス、マグネシウム、セリウム又はモリブデンから選ばれた少なくとも1種類以上を挙げることができる。
また、フェイスコート層形成剤は、没食子酸、ピロガロール、タンニン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、グリセリン酸、オキシ吉草酸、サリチル酸、マンデル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸又はフタル酸或いはそれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、或いはEDTAのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の中から選ばれた少なくとも1種以上を含む水溶液とするとよい。
本発明において、「ドーピング金属」とは、前記各種水溶液や過熱蒸気が、基材層の表層に触れることを意味し、塗布や浸漬、過熱蒸気の噴射など、その接触方法について限定されるものではない。
本発明においてドーピング金属分子である金属イオンや金属酸化物としては、ベリリウム、マンガン、バリウム、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、チタン、クロム、タングステン、マグネシウム、セリウム、ビスマス、亜鉛、錫、銅、アンチモン、ビスマス、コバルト、インジウム、ニッケル、モリブデン、パラジウム、銀、金、白金、ジルコニウム又はタングステンから選ばれた少なくとも1種以上となされたものが挙げられる。フェイスコート層形成剤に加えられるこれらドーピング金属は、フェイスコート層形成剤中で活性な状態を保ち、基材の表層においても活性な状態を維持するものである。
本発明においてフェイスコート層とは、基材表層の微細な凹部や亀裂、更には、表層を形成する金属分子の間隙に入り込んだ金属イオンや金属酸化物などを含むフェイスコート層を形成することのできる成分と、基材層表層とで形成された状態の層である。また、過熱蒸気として使用された場合は、活性化した基材層表層の金属イオンとフェイスコート層形成分子とのイオン結合で形成された化合物層である。
同様に本発明では、フェイスコート層形成剤を含む水溶液の過熱蒸気を基材層表層に接触させた直後に機能層形成剤を接触させることで、機能層形成剤の分子がフェイスコート層形成剤の成分と強固に密着した機能層を形成することができる。
このように本発明の方法で基材層の表層にフェイスコート層を形成することにより、フェイスコート層を介して基材層と強固に密着した機能層を形成することができる。
上記方法を実施するための本発明の基材層表層への機能層の形成装置は、
請求項12に記載するように、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部と、移動方向の上流側から下流側に向けてフープバッチ処理方式(別図5−B参照)や基材層に近接して配置された複数の噴射ノズル別図5−A参照)とを有し、前記噴射ノズルを上流側から順に、過熱蒸気を噴射する過熱蒸気噴射ノズル、フェイスコート層形成剤の過熱蒸気を噴射するフェイスコート層形成剤噴射ノズル、機能層形成剤を噴射する機能層形成剤噴射ノズルとして割り当てた構成としてある。このようにすることで、基材層に強固に密着した機能層の形成を短時間で効率よく行うことができる。
上記方法を実施するための機能層の形成装置は、請求項12に記載するように、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部と、移動方向の上流側から下流側に向けて基材層に近接して配置された複数の噴射ノズルとを有し、前記噴射ノズルを上流側から順に、過熱蒸気を噴射する過熱蒸気噴射ノズル、フェイスコート層形成剤の過熱蒸気を噴射するフェイスコート層形成剤噴射ノズル、機能層形成剤を噴射する機能層形成剤噴射ノズルとして割り当てた構成とするとよい。
前記過熱蒸気が前記フェイスコート層形成剤を含む場合は、機能層形成の過程で揮発性のフェイスコート形成剤の成分が前記過熱蒸気から失われてしまわないように、請求項13に記載するように、前記過熱蒸気が前記フェイスコート層形成剤を含む場合に、前記過熱蒸気を一定圧力及び一定温度で保持して密閉する密閉容器を有する構成とするとよい。なおこの場合は、前記過熱蒸気噴射ノズルを前記フェイスコート層形成剤の噴射ノズルとして用いることができる。
本発明の機能層の形成装置によれば、例えば上流側の噴射ノズルを過熱蒸気の噴射用に割り当て、下流側の噴射ノズルをフェイスコート層形成剤の噴射用に割り当てることで、過熱蒸気を基材層の表層に接触させた直後に、フェイスコート層を基剤層の表層に形成することできる。
また、機能層形成噴射ノズルを、前記フェイスコート層形成剤噴射ノズル又は過熱蒸気噴射ノズルよりも下流側に配置することで、過熱蒸気接触及びフェイスコート層形成の直後に樹脂塗装層等の機能層を形成することができる。
本発明の方法では、基材層の表層と強固に結合したフェイスコート層を形成することができ、これによってフェイスコート層を介して馴染性に優れた基材層に均一に機能層を形成することができる。また、フェイスコート層が形成された基材層の隙間に機能層形成分子を閉じこめることで、基材層にさらに強固に密着した機能層を得ることができる。
本発明の方法は新しい基材層の表層に各種の機能層を形成する場合に効果があるが、基材層の表層に各種の機能層を再生する場合、例えば基材層に強固に形成された塗膜の一部や錆(酸化皮膜を含む)や鍍金層並びに、有害な金属物質を含む塗料などの劣化した機能層が残存していても、その上から各種の機能層を高い密着度で形成できるという効果もある。
そのため、機能層の形成作業を簡単にすることができて作業者の作業負担を軽減することができるほか、作業時間の短縮と機能層形成のコストを大幅に削減することができ、かつ、機能層の形成の自動化も可能となる。尚、従来の手法により劣化した機能層を、物理的研磨方法等を用いて除去することなく新しい機能層を形成することができるので、環境や作業者の健康等の面でも有利である。
さらに、スチームエゼクターや複数の噴射ノズルを並列して配置し、移動方向の上流側から基材組成に応じて酸性水溶液及び水、並びにアルカリ水溶液から選ばれた水溶液を用いる過熱蒸気噴射ノズル、フェイスコート層形成剤噴射ノズル及び機能層形成ノズルとするか
若しくはフェイスコート層形成剤を含む過熱蒸気噴射ノズル及び機能層形成ノズルとすることで、組合わせた噴射ノズルの一回の移動操作で基材層表層に強固な機能層を形成することができる。
本発明に使用する過熱蒸気の作用及び条件を説明するための概略図である。 本発明の第一の実施形態にかかる機能層の形成方法の概略図である。 本発明の第二の実施形態にかかる機能層の形成方法の概略図である。 本発明の第三の実施形態にかかる機能層の形成方法の概略図である。 本発明の方法に使用する機能層の形成装置を説明する概略図である。 本発明の方法の概念を説明する工程図である。 基材層表層を形成する結晶組織の拡大写真である。 冷間圧延鋼板(SPCC)の基材層の処理前における状態を示すもので、(a)は表層の電子顕微鏡写真、(b)は(a)の表層における元素の定性分析結果、(c)は(a)の表層における定量分析結果を示している。 亜鉛イオンを含むフェイスコート層形成剤を用いた場合の基材層の処理後の状態を示すもので、(a)は表層の電子顕微鏡写真、(b)は(a)の表層における元素の定性分析結果、(c)は(a)の表層における定量分析結果を示している。 銀イオンを含むフェイスコート層形成剤を用いた場合の処理後の状態を示すもので、(a)は表層の電子顕微鏡写真、(b)は(a)の表層における元素の定性分析結果、(c)は(a)の表層における定量分析結果を示している。 各基材層の表層における過熱蒸気接触前と接触後の顕微鏡写真と、定量分析結果を示すもので、(a)はSUS304の場合を、(b)はCuの場合を示している。 各基材層の表層における過熱蒸気接触前と接触後の顕微鏡写真と、定量分析結果を示すもので、(a)はAlの場合を、(b)はSPCCの場合を示している。
1 基材層
1a 表層
2 錆
3 機能層
4 フェイスコート層
5 チャンバー又は領域
6 コンベア
S 機材層等表層
H 過熱蒸気
W 基材
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照にして説明する。
[第一の実施形態]
第一の実施形態にかかる本発明の機能層の形成方法は、図6(i)に示すように、基材層表層に過熱蒸気を接触させた後に、フェイスコート層形成剤を接触させ、しかる後に機能層を形成するものである。
[基材層]
本発明が適用可能な基材層としては、Be・Mg・Al・Ti・Fe・Co・Ni・Cu・Zn・Mo・Rh・Pd・Ag・Sn・Sb・W・Ir・Pt・Au・Pb・Biの金属又は前述の金属を含む合金、若しくはガラス、石英、セラミック、コンクリート及びコンクリート二次製品、や孔及び空隙のある木製品、更に、樹脂及び樹脂形成品を挙げることができる。前記樹脂としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミドヒダントイン変性ポリエステル、ホルマール、ポリウレタン、ポリエステル、ポリビニルホルマール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリヒダントイン、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリプロピレン、ウレタン、シリコンからなる群より選ばれた少なくとも一つを含む熱硬化性樹脂が挙げられる。
[機能層]
上記の基材層に形成される機能層としては、前記基材層の防錆、防食、保護、透水抑制、装飾、軽量化などの種々の機能を発揮するものであればよく、上記した基材層を形成する金属や樹脂などをそのまま機能層として用いることができる。
[過熱蒸気]
本発明に使用する過熱蒸気の条件を、図1を参照しつつ説明する。
本発明において基材層に接触させられる過熱蒸気は、図1に示すような作用を奏するものである。
図1において符号M1で示す白丸は、基材層の表層を形成する金属原子又は金属分子である。また、符号M2で示す黒丸は、新たなフェイスコート層を形成する分子である。
初期状態においては、図1(a)に示すように基材層表層を形成する金属原子又は金属分子(以下、説明の便宜上「分子M1」と記載する)は間隙が閉じている。過熱蒸気Hを分子M1,M1・・・に接触させることで、分子M1,M1・・・の間隙が図1(b)に示すように拡がり、フェイスコート層形成分子M2,M2・・・の受け入れが可能な状態になる。
すなわち、過熱蒸気Hの温度及び吐出圧力は、フェイスコート層形成分子M2,M2・・・が含浸可能な状態になるまで、の受け入れが可能になるまで、分子M1,M1・・・の間隙が拡張される拡がる温度であり、フェイスコート層形成分子M2及び分子M1の種類によって相違するが、実験などで求めることができる。
分子M2,M2・・・の受け入れが可能になるまで間隙が拡がった基材表層分子M1,M1・・・にドーピング元素を含むフェイスコート層形成剤を接触させることで、図1(c)に示すように、ドーピング元素を含むフェイスコート層形成分子M2,M2・・・が分子M1,M1・・・間に入り込む。この状態で冷却等により分子M1,M1・・・間の間隙が元に戻れば、図1(d)に示すように分子M1,M1・・・の表層及び内部にフェイスコート層形成分子M2,M2・・・が閉じこめられたり、挟まれた状態になるとともに、分子M1,M1・・・の表層及び内部に閉じこめられたり、挟まれたフェイスコート層形成分子M2,M2・・が、分子M1,M1・・・の外側のフェイスコート層形成分子M2,M2・・とイオン結合して、基材層表層に強固に密着したフェイスコート層が形成される。
図8は、冷間圧延鋼板(SPCC)の基材層の処理前における状態を示すもの、図9及び図10は、図8の基材層の処理後の状態を示すもので、図9は亜鉛イオンを含むフェイスコート層形成剤を用いたもの、図10は銀イオンを含むフェイスコート層形成剤を用いたものである。図8、図9及び図10において、(a)は表層の電子顕微鏡写真、(b)は(a)の表層における元素の定性分析結果、(c)は(a)の表層における定量分析結果を示している。
なお、表層の状態は、日立ハイテクノロジーズ社製TM3030卓上顕微鏡Miniscopeのエネルギー分散型X線分析装置AZtecOneで測定して分析を行った。
図9の処理では、ピロガロール4重量%を含む酸性電解水(PH4.0)に、亜鉛イオンを5重量%含有するフェイスコート層形成剤を用い、このフェイスコート層形成剤を吐出口温度125±5℃の過熱蒸気として表層に120秒間接触させ、その後、30秒間水洗を行った後に乾燥させた。
図10の処理では、ピロガロール4重量%を含む酸性電解水(PH4.0)に、銀イオンを5重量%含有するフェイスコート層形成剤を用い、このフェイスコート層形成剤を吐出口温度125±5℃の過熱蒸気として表層に120秒間接触させ、その後、30秒間水洗を行った後に乾燥させた。
図9及び図10に示すように、洗浄・乾燥後も表層には亜鉛及び銀を含むフェイスコート層が形成されていることがわかる。
[過熱蒸気用の水溶液]
過熱蒸気Hのもととなる水溶液の種類は、基材の組成に因って塩酸水溶液や果実酸並びに強電解酸性水溶液や、水(PH5.8以上8.6未満)、或いは、水酸化ナトリウムやアルカリ電解のアルカリ水溶液などであってもよく、酸性水溶液の場合はpH3.0〜1.0未満程度、アルカリ水溶液の場合はpH8.6以上〜12.5未満程度とするとよい。
酸性水溶液を用いることで、基材層表層の酸化被膜を除去し、基材層表層を活性化させることができる。このように活性化させた基材層表層では、フェイスコート層形成分子M2,M2・・と分子M1,M1・・・とがイオン結合し、さらに強固に密着したフェイスコート層を形成することができる。
[フェイスコート層形成剤の材料]
フェイスコート層形成剤は、前記基材層等表層に接触させることで前記基材層表層を活性化するとともに活性化した基材表層を酸化することを遅らせ、機能層と基材層表層との密着性を均一にまた、強固にするためのものである。
フェイスコート層を形成することができるフェイスコート層形成剤としては、没食子酸、ピロガロール、タンニン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、グリセリン酸、オキシ吉草酸、サリチル酸、マンデル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸又はフタル酸或いはそれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、或いはEDTAのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の中から選ばれた少なくとも1種以上を含ませた水溶液を用いることができる。
なお、本願発明においては、本願出願人よる特許第5422696号に記載した表層改質処理剤をフェイスコート層形成剤として利用することができる。
[ドーピング金属]
この実施形態においてフェイスコート層形成剤を含む水溶液は、金属イオン及び/又は金属酸化物のドーピング金属を配合してもよい(第二の実施形態を含む他の実施形態についても同様である)。この場合、水溶液全体に対して、金属イオン及び/又は金属酸化物の配合割合はその効果や安全性、更に取扱性や作業環境等の観点から、0.001〜5重量%の範囲、好ましくは、0.05〜3重量%の範囲に調整するのが一層望ましい。
ドーピング金属イオン及び/又は金属酸化物の添加量が水溶液全体に対して、0.001重量%未満では金属イオン等の添加量が少な過ぎて所要の効果が得られないため好ましくなく、一方、5重量%を超えると、ドーピング効果に限界が生じるので意味が無いだけでなく、基材表層に不用なドーピング金属による膜層を形成したり、また、不経済となるので好ましくない。
なお、これらの金属イオン及び/又は金属酸化物は、一種類のみならず二種類以上の複数種を適宜混合して添加しても良いのである。
具体的に前記ドーピング金属イオン及び/又は金属酸化物を構成する金属としては、ベリリウム、錫、マンガン、バリウム、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、チタン、クロム、タングステン、亜鉛、錫、銅、アンチモン、ビスマス、コバルト、インジウム、ニッケル、モリブデン、パラジウム、銀、金、白金、マグネシウム、セリウム、ジルコニウム又はタングステンから選ばれた少なくとも1種又はそれらの混合物を挙げることができる。
[フェイスコート層形成剤の作用]
「フェイスコート層」とは、基材の組成に応じた処理水溶液を過熱蒸気として接触させることで汚れ(酸化被膜含む)等が除去され、清浄化された基材表層と、錯体を構成する金属イオンを含む錯体形成用物質を接触させることで、表層に混合層(フェイスコート層)を形成することである。
フェイスコート層は、清浄基材層が酸化安定皮膜を形成するのを遅らせることが可能で基材層表層を保護する機能を有し、基材層内部への水分やガス等の浸透を防ぐことで基材層の表層から深層への腐食の進行を防止する効果を果たすと共に、機能層としての合金層、化合物層、混合物層、セラミック層、樹脂層、鍍金層又は犠牲防食層との密着性を強固にし、基材層と機能層とを一体化するものである。
なお、機能層が犠牲防食層である場合、犠牲防食剤として加える金属イオン及び/又は金属酸化物としては、クロム、亜鉛、チタン、アルミニウム、錫、ビスマス、マグネシウム、セリウム又はモリブデンから選ばれた少なくとも1種類以上を挙げることができる。これら金属イオン及び/又は金属酸化物は、フェイスコート層形成剤中で活性な状態を保ちつつ基材層の活性表層にフェイスコート層を形成できるのであり、形成されたフェイスコート層は犠牲防蝕剤を含んで活性な状態を維持することができる。
[機能層形成の第一の実施形態]
上記の基材層、過熱蒸気、フェイスコート層形成剤を使った機能層形成の手順を、図2を参照しつつ説明する。
図2(a)に示す初期状態において、基材層1の表層1aを形成する金属分子は、図1(a)のような状態である。
この表層1aに、図2(b)に示すように過熱蒸気Hを接触させると、図1(b)に示すように表層1aの分子M1,M1・・・の間隙が開いて基材表層に含まれる水分等が蒸発し乾燥した真空状態となり、フェイスコート層形成分子M2,M2・・・が取込まれ易い状態になる。
次に、基材層1の表層1aにフェイスコート層形成剤を接触させる。これにより、図1(c)に示すように分子M1,M1・・・の開いた間隙からフェイスコート層形成分子M2,M2・・・が分子M1,M1・・・の内部に入り込む。この後、潜熱を帯びた表層が元の表層温度となることで分子M1,M1・・・の間隙が元の状態に戻ることで、図2(c)に示すように表層1aにフェイスコート層4が形成される。
最後に、図2(d)に示すように、このフェイスコート層4の表層に、機能層形成剤を接触させて機能層5を形成する。
過熱蒸気、フェイスコート層形成剤、機能層形成剤の表層1aへの接触は、例えば図5のAに示すような装置を用いて一回の工程で行うことができる。
すなわち、図示しない装置本体は、過熱蒸気を噴射するノズル7a、フェイスコート層形成剤を噴射するノズル7b及び機能層形成剤を噴射するノズル7cを有している。ノズル7a,7b,7cは、間隔を置いて移動方向Iの上流側からノズル7a,7b,7cの順で近接して配置される。ノズル7a,7b,7cのそれぞれには、過熱蒸気を発生させる容器8a,フェイスコート層形成剤を収容する容器8b,機能層形成剤を収容する容器8cに連結され、それぞれの容器8a,8b,8cから過熱蒸気、フェイスコート層形成剤、機能層形成剤がノズル7a,7b,7cに供給される。フェイスコート層形成剤を収容する容器8bは、フェイスコート層形成剤の主要成分が蒸発しないように、密閉できるものを選択する。
そして、ノズル7a,7b,7cのそれぞれから過熱蒸気、フェイスコート層形成剤、機能層形成剤を噴射しながら、予め設定された速度で矢印I方向にノズル7a,7b,7cを移動させる。このようにすることで、表層1aに対して過熱蒸気の接触、フェイスコート層の形成、次に機能層の形成とほぼ同時に行うことが可能になる。
また、このような装置を、基材層に沿って自動的に移動する移動体に搭載することで、これら作業の自動化を図ることが可能になる。
なお、容器8bでフェイスコート層形成剤の過熱蒸気を発生させ、ノズル7bからフェイスコート層形成剤の過熱蒸気を噴射させてもよいし、容器8cで機能層形成剤の過熱蒸気を発生させ、ノズル7cから機能層形成剤の過熱蒸気を噴射させてもよい。
[機能層形成の第二の実施形態]
本発明の方法は、基材層1の表層1aに劣化した金属の機能層(鍍金層やコーティング層など)が残存していたり錆があったりしても適用が可能である。
例えば、過熱蒸気との接触で鉄(Fe)系素材の場合は錆であるFe(OH)3 ⇒ Fe3O4の四酸化鉄に変化することで耐食性のある皮膜に変化する。
図3(a)に示す初期状態において、基材層1の表層1aには、鍍金層等の劣化した金属の機能層3が部分的に残存しており、機能層3が剥がれて基材層1の表層1aが露出している部分の一部には錆2が発生している。なお、以下の説明では、劣化した機能層3,錆2及び表層1aを「基材層等表層」と総称し、符号Sで示す。
この基材層等表層Sに、図3(b)に示すように過熱蒸気Hを接触させる。
この場合も先の実施形態と同様に、機能層3,錆2及び表層1aを形成するそれぞれの分子M1,M1・・・の間隙が開いて、フェイスコート層形成剤の分子M2,M2・・・の受け入れが可能な状態になる。
次に、図3(c)に示すように、基材層等表層Sにフェイスコート層形成剤を接触させて、基材層等表層Sにフェイスコート層4を形成する。
最後に、図3(d)に示すように、このフェイスコート層4の表層に、機能層形成剤を接触させて新しい機能層5を形成する。
この場合も、ノズル7bからフェイスコート層形成剤の過熱蒸気を噴射させてもよいし、ノズル7cから機能層形成剤の過熱蒸気を噴射させてもよい。
本発明では、基材層1の表層1aに強固に付着残留している錆2や鍍金層などの劣化した機能層3が残存していても、そのまま新しい機能層5を形成することができる。また、本発明の方法によって形成された新しい機能層5は、錆2や劣化した機能層3を研磨等で完全に除去したうえで形成した従来の再生機能層と比して、密着力においてほとんど差が無かった。
[機能層形成の第三の実施形態]
第一の実施形態において、図6(i)の過熱蒸気Hを接触させる工程でその水溶液としてフェイスコート層形成剤を含有するものを用いれば、図6(ii)に示すように過熱蒸気接触の工程とフェイスコート層形成の工程とを一つにすることができる。
すなわち、図4に示すように、フェイスコート層形成剤を含有する過熱蒸気Hを基材層等表層Sに接触させることで、過熱蒸気接触の工程で基材層等表層Sにフェイスコート層4を形成することができ、このフェイスコート層4の表層に、機能層形成剤を接触させることで新しい機能層5を形成することができる。
この第三の実施形態におけるフェイスコート層形成剤を含有する過熱蒸気用の水溶液においては、当該水溶液全体に対してフェイスコート層形成剤の配合割合を0.05〜10重量%の範囲に調整するが望ましい。このように、フェイスコート層形成剤が水溶液全体に対して0.05重量%未満では少なすぎて所要の効果を得ることができないのであり、一方、10重量%を超えると、多すぎて配合する意味が無く好ましくない。
前記水溶液において、ピロガロール、ビスマスを含む三成分系のものが望ましく、この場合、水溶液全体において、ピロガロールの配合割合を0.05〜8.0重量%の範囲、ビスマスの配合割合を0.005〜3重量%の範囲とするのが望ましい。
前記フェイスコート層形成剤の添加量としては、対象物である基材層1の素材の組成等によって適宜決定されるものであり、特に限定されるものではないが、一般的には、前記水溶液全体に対して、0.01〜10.0重量%の範囲とするのが好ましく、更に、0.1〜5.0重量%程度とするのが一層好ましい。
なお、これらの有機酸は、所望により、一種類のみならず二種類以上の複数種を適宜混合して添加しても良い。
[機能層形成の第四の実施形態]
この第四の実施形態では、図6 (iii)に示すように、基材層等表層Sに過熱蒸気Hを接触させる前に、塩酸水溶液や果実酸並びに電解水などの水溶液を接触させる。この水溶液を基材層等表層Sに塗布等することで直接接触させるようにしてもよいが、過熱蒸気として接触させてもよい。
酸性水溶液を接触させることにより、基材層1の表層1aに形成されている酸化皮膜を除去することができる。酸性水溶液を用いて基材層等表層Sにおける酸化皮膜を除去すると、基材層等表層Sが活性化し、その活性表層に生成した基材層等表層Sを構成する成分の元素イオンとフェイスコート層形成剤とが結合して、フェイスコート層3が基材層等表層Sに形成される。アルカリ水溶液を用いた場合も同様である。
この後、中性水溶液の過熱蒸気を基材層等表層Sに接触させて表層1aにフェイスコート層を形成し、このフェイスコート層4の表層に機能層形成剤を接触させて新しい機能層5を形成する。
[機能層形成の第五の実施形態]
この第五の実施形態は第四の実施形態の変形例であり、図6(iv)に示すように、フェイスコート層形成剤を混合した中性水溶液の過熱蒸気Hを基材層等表層Sに接触させてフェイスコート層3を形成するものである。
この実施形態によれば、第三の実施形態における中性水溶液の過熱蒸気を接触させる工程とフェイスコート層形成剤の接触工程とを一つにすることができ、第三の実施形態よりも工程数を減らすことができる。
[その他の実施形態]
第一及び第四の実施形態においては、図6(v)に示すように、フェイスコート層形成剤を混合した酸性水溶液の過熱蒸気を用いてフェイスコート層を形成してもよい。この場合は、フェイスコート層を形成した後に中性水溶液の過熱蒸気を接触させるとよい。
また、フェイスコート層は、過熱蒸気に限らず塗布や浸漬で形成することができる。この場合は、塗布又は浸漬の直後に中性水溶液の過熱蒸気を接触させるとよい(図6(vi)参照)。また、フェイスコート層形成剤が表層に留まりやすくするために、フェイスコート層形成剤には粘性付与剤を添加するのが好ましい。
[実施例 1]
先ず、本願発明に係る基材層の表層に接触させる過熱蒸気として、SUS及び銅基材並びに鉄基材には電解酸性水溶液(PH4.5)、また、アルミニウム基材には電解アルカリ水溶液(PH9.2)を用いた。
使用テスト基材層の材料として、SUS304板(角50mm×t3mm、平均Ra0.27、Rz1.90)、銅板(角50mm×t2.5mm、平均Ra0.37、Rz1.64)、アルミ板(角50mm×t2mm、平均Ra0.34、Rz2.07)、更に、鉄板(角50mm×t2.3mm、平均Ra0.21、Rz1.28)の4種類とし、それぞれの大きさ及び粗さ(ミツトヨ社製:サーフテストSJ−301で測定)のものを用意した。
次に、ノズル出口における吐出口温度をともに125±5℃とし、ノズル出口における吐出圧力は0.32MPaとして、それぞれの基材層の組成に適した水溶液を過熱蒸気として120秒間接触させた結果、SUS304平均Ra0.33、Rz1.96)及び、銅板(平均Ra0.82、Rz5.23)、アルミ板(平均Ra0.45、Rz2.98)、更に、鉄板(平均Ra0.66、Rz4.34)となり、いずれの場合も表層の不純物が除去されるなどして凹部などが拡開され、表層粗さ(Ra)が大きくなった。図11及び図12に、各基材層の表層における過熱蒸気接触前と接触後の顕微鏡写真と、定量分析結果を示す。図11(a)はSUS304の場合を、(b)はCuの場合を示し、図12(a)はAlの場合、(b)はSPCCの場合を示している。各顕微鏡写真と定量分析結果とからも、各基材層の表層の凹部などが拡開されたことがわかる。
その後、亜鉛金属イオン及びピロガロール水溶液を混入させたフェイスコート層形成剤を過熱蒸気として1分間接触させてフェイスコート層を形成した後に、スプレー樹脂塗料(株式会社アサヒペン製:多用途スプレー速乾タイプ)を塗布し機能層を形成した。このテスト基材は、スプレー樹脂塗料を塗布後、室温で30分間自然乾燥させた後、50℃のオーブンで30分間乾燥させた。
図5(a)に示すような三つのノズル7a,7b,7cを備える形成装置を用いて、過熱蒸気接触、フェイスコート層形成及び機能層である樹脂塗装層の形成を同時に行った。
比較例として、各テスト基材を、従来の常温のエタノール脱脂液に1分間浸漬し、自然乾燥させた脱脂基材と、耐水紙ヤスリ♯1000(三共理化学株式会社製:商品名FUJISTAR)で研磨し表層を粗面化した後、水洗いを行ってその後自然乾燥させたペーパー品、並びに、35℃に保った改質処理剤(北陸濾化社製:商品名KR-S)に5分浸漬し、その後、水の超音波洗浄→水洗→エアブローを行った後の改質処理された基材を各々準備して、上記実施例1と同様にテスト基材の表面にスプレー樹脂塗料を塗布して密着評価を行った。結果を表1に示す。
[密着性評価 1]
密着性の評価は、乾燥後、乾燥した樹脂塗膜にカッターで縦横5mm間隔の切れ目を入れ、縦横10列の合計100マスのマス目を形成して行った。
テスト基材の樹脂塗膜面に、粘着テープ(ニチバン社製:商品名セロテープ(登録商標)CT1535)を貼付け、爪で何度か擦った後、テスト基材とテープとが60度の角度になるように剥離試験を碁盤目試験(クロスカット法)で比較した後の状態で評価した。このセロハンテープによる密着評価試験は、2回行い、その平均を結果として表1に示す。密着強度は点数で表し、◎を90〜100点、○を70〜89点、△を40〜69点、×を39点以下とした。機能層の品質としては、○(70〜89点)以上が合格である。
[密着性評価 2]
Arcotest社製の、ぬれ性チェック用ダインペン(表面エネルギー値評価用テストペン)を使用した。評価値における、32mN/mが標準規格のぬれ性を示し、以後、34・36・38・40 mN/mとぬれ性が低いものを用いた。評価方法は、既述の通りテスト基材表面を処理して、基材表面にインクを線状に付着させインクが2秒以上保持されれば、〇が均一塗布で、△は、部分的な弾きがある状態、×は、弾いた状態を表2から表5に示した。
上記の実験の結果、実施例のいずれにおいても基材層表層に対する機能層の高い密着性が認められ、本発明の方法による効果が確認できた。
このことから、本発明のように過熱蒸気の接触及びフェイスコート層を形成した後に機能層を形成する方法は、従来の機能層形成の工程を大幅に削減し、作業負担の軽減と作業コストの低減に大きく寄与できることが確かめられた。
[実施例 2]
この実施例2では、錫や亜鉛などの卑金属が鉄合金(ステンレス)に対して海水など導電性のある電解質溶液中で犠牲となって腐食することにより、鉄合金の腐食を防止する「犠牲防食」の実験を行った。
この実施例2の条件は以下のとおりである。
(1) 基材
鉄系合金素材であるSUS436Lの平板を用いた。前記平板は、亜鉛メッキのボルト(亜鉛ボルト)を取り付けたものと取り付けないものとを準備した。
(2) 前処理
前記平板の表面に、防錆や塗装下地を目的としたリン酸亜鉛でミクロンオーダーの薄い皮膜を生成したものと、表面活性化を目的とした前処理剤を使用したもの。表6において「CH−S」と表記した。当該皮膜を生成しないものとしたものを準備した。
(3) 卑金属
亜鉛を用いた。フェイスコート形成剤をベースとし、表6において亜鉛をドーピング金属として使用した処理剤を「KR−Z」と表記した。
(4) フェイスコート層形成剤
酸性溶液とピロガロール水溶液を混入させたフェイスコート層形成剤を準備した。表6において「KR−SH」と表記した。
(5) フェイスコート層の形成
ノズル出口における吐出口温度をともに125±5℃とし、ノズル出口における吐出圧力は0.32MPaとして、フェイスコート層形成剤を過熱蒸気として1分間接触させてフェイスコート層を形成した。図5(a)に示すようなノズル7a,7bを備える形成装置を用いて、過熱蒸気接触とフェイスコート層形成および金属膜層の形成とを同時に行い機能層である犠牲防食層を前記平板の表面に形成した。機能層を形成した基材をカチオン電着塗料に浸漬し表面に塗料を塗布することで完成となる。
以上のようにして得られたテストピースを、5%、50℃の塩温水に浸し、一定時間経過後に実施例1と同様にテープ剥離試験を行った。亜鉛ボルト付では、縦方向と横方向に剥離試験を行った。その結果を表6に示す。
平板と異種金属である亜鉛ボルトを取り付けることで、5%,50℃の塩温水中で腐食が進むことがわかる。亜鉛を鍍金したものは、本発明の手法によりフェイスコート層を形成することで、72時間から240時間の全ての領域で良好な密着強度が得られた。
[実施例 3]
この実施例3では、2枚の平板の間に機能層としての樹脂層を形成して前記2枚の平板を接着し、接着後に2枚の前記平板を接着面に対して平行に引っ張ることで、前記平板に対する前記樹脂層の密着強度を試験するものである。自動車や航空機、船舶などでは軽量化のために金属と樹脂の複合化が進んでいるが、樹脂と金属とをいかに強固に一体化するかが課題となっている。この実施例は、本発明の方法によりこのような複合材料において密着強度を如何に高めることができるかを検証するものである。この実施例3の主要な条件は以下のとおりである。
改質処理液80℃で3間浸漬処理した基材各2枚(50mm×50mm)を水洗し、エアーブローを行った後、白光株式会社製のホットメルト接着剤塗布器ハッコーメルターに、同社製ホットメルト接着剤ハッコーメルタースティックをセットし、2枚の基材が中央部分で25mm±0.5×50mm±0.5重なるように接着部分を作り、株式会社ナベヤ製リード型バイス 万力 ERON100で挟み、5分間固定し徐冷を行った。5分経過後、万力より取り出し、基材の下方15mmを同万力で挟み上方部分15mmをGISUKE社製オートマチックバイスプライヤーで固定した。固定したオートマチックバイスプライヤーを接着面に平行に引っ張り2枚の基材が破断した時の引張力を測定した。引張力を測定する為にオートマチックバイスプライヤーには株式会社エー・アンド・デイ社製デジタルフォースゲージを取り付けて測定した。前記フォースゲージの最大数値は50Nを上限とする。使用した基材は、高温装置を使用し30度以上に基材加温状態を保った。接着剤は範囲を最小限とし重量範囲0.06〜0.08gで合わせ基材と接触後は10秒間圧力をかけた。処理工程は液温20度±2の常温とし処理時間は3分間とした。処理後は水洗、超音波洗浄、乾燥を行った。
[前処理条件]
以下のA〜Gの溶液を温度80度の加熱蒸気として用いた。
A:純水
B:PH 0.3〜5の塩化ナトリウム溶液
C:PH 0.1〜4の塩酸水溶液
D:PH 9〜15の水酸化ナトリウム水溶液
E:PH 0.1〜4の硫酸水溶液
F:PH0.1〜5のリン酸水溶液
G:PH:0.1〜4の硝酸水溶液
[フェイスコート層形成剤の種類]
1:ピロガロール(0.4重量%)+硫酸(5重量%)+水(残部) (本願出願人の商品:商品名KR-S)
2:ピロガロール(0.02重量%)+硫酸(0.2重量%)+塩酸(2重量%)+水(残部)(本願出願人の商品:商品名KR-SH)
3:ピロガロール(4重量%)+硫酸(0.3重量%)+水(残部) (本願出願人の商品:商品名KRのベース液)
4:塩化ナトリウム(12重量%)+燐酸(1.5重量%)+水(残部) (本願出願人の商品:商品名FC-KM)
5:ピロガロール(0.91重量%)+フッ化ナトリウム(0.07重量%)+硝酸(0.4重量%)(本願出願人の商品:商品名KR-SG)
[ドーピング金属]
(フェイスコート層形成剤に加えた金属酸化物及びイオン)
I:亜鉛
II:アルミニウム
III:錫
IV:ビスマス
V:モリブデン
水洗し、乾燥として25度の室温に15分間放置し、樹脂塗布(白光(株)製ホットメルト)後、30分間放置し冷却して、密着性確認を行った。評価は以下のとおりである。密着しなかった場合は(×)、密着強度が1以上〜30N(ニュートン)以下は(△)、31以上〜50以下は(〇)、密着強度が強く計測不能の場合は(◎)と表示した。加工が不可能な条件は、―で表示した。
「使用テスト基材」
1 SUS板:厚さ1.2mm×横25mm×縦70mm :表面粗さ Ra0.36;Ry2.52(未処理)
2 SUS板:同上基材を♯1000番研磨紙で粗面化:表面粗さ Ra0.38;Ry2.72
3 SUS板:同上基材を塩酸エッチングし粗面化:表面粗さ Ra0.43;Ry3.13
4 アルミ板:厚さ0.5mm×横25mm×縦70mm :表面粗さ Ra0.39;Ry2.60(未処理)
5 アルミ板:同上基材を♯1000番研磨紙で粗面化:表面粗さ Ra0.53;Ry3.97
6 アルミ板:同上基材を苛性エッチングし粗面化:表面粗さ Ra0.43;Ry2.82
7 銅板:厚さ1.2mm×横25mm×縦70mm:Ra0.53;Ry3.97
8 銅板:同上基材を♯1000番研磨紙で粗面化:表面粗さ Ra0.53;Ry3.97
9 銅板:同上基材を塩酸エッチングし粗面化:表面粗さ Ra0.48;Ry4.13
10 木板:厚さ30mm×横100mm×縦1700mm:Ra5.11;Ry30.6
11 木板:同上基材を♯1000番研磨紙で粗面化:表面粗さ Ra5.62;Ry4.5
12 御影石板:厚さ30mm×横100mm×縦1700mm:Ra7.97;Ry42.93
13 御影石板:同上基材を♯1000番研磨紙で粗面化:表面粗さ Ra7.62;Ry43.5
14 ABS:厚さ1mm×横50mm×縦50mm:Ra0.36;Ry2.6
15 ABS:同上基材を♯1000番研磨紙で粗面化:表面粗さ Ra0.4;Ry2.67
16 PP:厚さ1mm×横50mm×縦50mm:Ra0.34;Ry2.28
17 PP:同上基材を♯1000番研磨紙で粗面化:表面粗さ Ra0.41;Ry2.91
18 コンクリート板(表面粗はオーバーレンジにより測定不能)
それぞれの基材は、ミツトヨ社製 サーフテストSJ−301を用いて2回測定した平均粗さである。
尚、用意した試験片の端部1箇所に1.2mmφ程度の穴を開けφ1.0mmのステンレス製ワイヤーで吊り下げられるようにした。
改質処理液で処理した基材各2枚(50mm×50mm)を水洗し、エアーブローを行った後、白光株式会社製のホットメルト接着剤塗布器ハッコーメルターに、同社製ホットメルト接着剤ハッコーメルタースティックをセットし、2枚の基材が中央部分で25mm±0.5×50mm±0.5重なるように接着部分を作り、株式会社ナベヤ製リード型バイス 万力 ERON100で挟み、5分間固定し徐冷を行った。5分経過後、万力より取り出し、基材の下方15mmを同万力で挟み上方部分15mmをGISUKE社製オートマチックバイスプライヤーで固定した。固定したオートマチックバイスプライヤーを接着面に平行に引っ張り2枚の基材が破断した時の引張力を測定した。引張力を測定する為にオートマチックバイスプライヤーには株式会社エー・アンド・デイ社製デジタルフォースゲージを取り付けて測定した。その結果を表7に記す。
[処理条件]
基材加温:高温装置を使用し30度以上に基材加温状態を保つ
接着剤:範囲を最小限とし重量範囲0.06〜0.08gで合わせ基材と接触後は10秒間圧力をかける
処理工程:処理時間3分間 処理後は水洗→超音波洗浄→乾燥
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。
そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
本発明は、新設の鋼構造物やコンクリート構造物はもとより、経年共用された鉄系の主要元素で構成された部材として用いられた構造物の表層に樹脂塗装やその他のコーティング層を形成又は再形成する際に好適に利用することができる他、自動車や鉄道車両また船舶その他の大型産業機械の表層に機能層を形成する際にも好適に利用することができる。
請求項1に記載する発明は、基材層の表層に過熱蒸気を接触させ、前記表層を形成する分子間又は原子間の間隙を一時的に拡開する工程と、フェイスコート層形成分子を含有するフェイスコート層形成剤を前記表層に接触させ、前記間隙に前記フェイスコート層形成分子を侵入させ基材表層と結合させてフェイスコート層を形成する工程と、
前記フェイスコート層の表層の少なくとも一部に機能層を形成する工程と、を有し、前記フェイスコート層形成剤には粘性付与剤を添加した方法としてある(図6(i))。
請求項2に記載するように、前記基材層の表層に過熱蒸気を接触させることで前記表層を活性化させ、活性化させた前記表層と前記フェイスコート層形成分子とを結合させるようにしてもよい。このようにすることでより強固に基材層に結合したフェイスコート層を得ることができる。
本発明の方法によって基材層の表層に形成される前記機能層としては、請求項3に記載するように、合金層、化合物層、混合物層、セラミック層、樹脂層、鍍金層又は犠牲防食層のいずれかとすることができる。また、請求項4に記載するように前記フェイスコート層形成剤を前記表層に接触させた後に過熱蒸気を接触させてもよい(図6(vi))。この方法は、塗布や浸漬によりフェイスコート層を形成する場合に特に有効である。
請求項に記載するように、前記過熱蒸気の水溶液にフェイスコート層形成剤を含有させることで、前記過熱蒸気を接触させる工程と前記フェイスコート層を形成する工程とを同時に行うことができるようになる(図6(ii)(v))。
請求項に記載するように、前記フェイスコート層形成分子は、ドーピング金属分子であってもよく、このようなドーピング金属分子としては金属イオン分子や金属酸化物の分子を挙げることができる。
なお、前記基材層の表層に過熱蒸気を接触させる工程の前に、基材の組成に応じて酸性水溶液及びアルカリ水溶液を前記基材層に接触させる工程を設けてもよい(図6(iii) (iv))。この酸性水溶液及びアルカリ水溶液は、過熱蒸気としてもよいし、過熱蒸気としなくてもよい。
請求項に記載するように、前記過熱蒸気は酸性水溶液、水又はアルカリ水溶液のいずれかであってもよく、請求項に記載するように、前記酸性水溶液を前記表層に接触させた後に、中性水溶液又はこの過熱蒸気を前記表層に接触させてもよい(図6(iii)(iv)参照)。
基材層の表層への過熱蒸気の接触、フェイスコート層形成剤の接触及び機能層形成剤の接触処理方法としては、例えば図5(b)に示すように、各々の接触処理を行うチャンバー又は領域5を上流側から下流側に向けて順に配置し、上流側のチャンバー又は領域5から下流側のチャンバー又は領域5へ、コンベア6等で基材Wを矢印IIの方向に移動させながら各処理を順次行うバッチ処理方式を挙げることができる。
また、例えば請求項及び図5(a)に示すように、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部と、基材層に近接して配置された複数の噴射ノズルとを準備し、前記噴射ノズルを上流側から順に、過熱蒸気を噴射する過熱蒸気噴射ノズル、フェイスコート層形成剤の過熱蒸気を噴射するフェイスコート層形成剤噴射ノズル、機能層形成剤を噴射する機能層形成剤噴射ノズルとして割り当て、これらノズルを一体的に前記表層に対して移動させるようにしてもよい。この場合、請求項10に記載するように、前記過熱蒸気が前記フェイスコート層形成剤を含む場合に、前記過熱蒸気を一定圧力及び一定温度で保持して密閉する密閉容器を用いて、前記過熱蒸気噴射ノズルから噴射して基材に接触させるようにしてもよい。
このようにすることで、前記複数の噴射ノズルを通過させるだけで、過熱蒸気の接触、フェイスコート層の形成、機能性の形成を行うことができる。
上記方法を実施するための本発明の基材層表層への機能層の形成装置は、
請求項11に記載するように、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部と、移動方向の上流側から下流側に向けてフープバッチ処理方式(別図5−B参照)や基材層に近接して配置された複数の噴射ノズル別図5−A参照)とを有し、前記噴射ノズルを上流側から順に、過熱蒸気を噴射する過熱蒸気噴射ノズル、フェイスコート層形成剤の過熱蒸気を噴射するフェイスコート層形成剤噴射ノズル、機能層形成剤を噴射する機能層形成剤噴射ノズルとして割り当てた構成としてある。このようにすることで、基材層に強固に密着した機能層の形成を短時間で効率よく行うことができる。
[前処理条件]
以下のA〜Gの溶液を、基材に吹き付けられるときの温度が80度となる過熱蒸気として用いた。
A:純水
B:PH 0.3〜5の塩化ナトリウム溶液
C:PH 0.1〜4の塩酸水溶液
D:PH 9〜15の水酸化ナトリウム水溶液
E:PH 0.1〜4の硫酸水溶液
F:PH0.1〜5のリン酸水溶液
G:PH:0.1〜4の硝酸水溶液
[フェイスコート層形成剤の種類]
1:ピロガロール(0.4重量%)+硫酸(5重量%)+水(残部) (本願出願人の商品:商品名KR-S)
2:ピロガロール(0.02重量%)+硫酸(0.2重量%)+塩酸(2重量%)+水(残部)(本願出願人の商品:商品名KR-SH)
3:ピロガロール(4重量%)+硫酸(0.3重量%)+水(残部) (本願出願人の商品:商品名KRのベース液)
4:塩化ナトリウム(12重量%)+燐酸(1.5重量%)+水(残部) (本願出願人の商品:商品名FC-KM)
5:ピロガロール(0.91重量%)+フッ化ナトリウム(0.07重量%)+硝酸(0.4重量%)(本願出願人の商品:商品名KR-SG)
[ドーピング金属]
(フェイスコート層形成剤に加えた金属酸化物及びイオン)
I:亜鉛
II:アルミニウム
III:錫
IV:ビスマス
V:モリブデン

Claims (13)

  1. 基材層の表層に過熱蒸気を接触させ、前記表層を形成する分子間又は原子間の間隙を一時的に拡開する工程と、
    フェイスコート層形成分子を含有するフェイスコート層形成剤を前記表層に接触させ、前記間隙に前記フェイスコート層形成分子を侵入させ基材表層と結合させてフェイスコート層を形成する工程と、
    前記フェイスコート層の表層の少なくとも一部に機能層を形成する工程と、
    を有することを特徴とする基材層表層への機能層の形成方法。
  2. 前記基材層の表層に過熱蒸気を接触させることで前記表層を活性化させ、活性化させた前記表層と前記フェイスコート層形成分子とを結合させることを特徴とする請求項1に記載の基材層表層への機能層の形成方法。
  3. 前記機能層が、合金層、化合物層、混合物層、セラミック層、樹脂層、鍍金層又は犠牲防食層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基材層表層への機能層の形成方法。
  4. 前記フェイスコート層形成剤に粘性付与剤を添加したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基材層表層への機能層の形成方法。
  5. 前記フェイスコート層形成剤を前記表層に接触させた後に過熱蒸気を接触させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基材層表層への機能層の形成方法。
  6. 前記過熱蒸気が前記フェイスコート層形成剤を含有し、前記過熱蒸気を接触させる工程と当該基材層の表層にフェイスコート層を形成する工程とを同時に行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基材層表層への機能層の形成方法。
  7. 前記フェイスコート層形成分子が、ドーピング金属分子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の基材の表層への機能層の形成方法。
  8. 前記過熱蒸気が、酸性水溶液、水又はアルカリ水溶液のいずれかであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の基材層表層への機能層の形成方法。
  9. 前記酸性水溶液を前記表層に接触させた後に、中性水溶液又は中性水溶液の過熱蒸気を前記表層に接触させる工程を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の基材層表層への機能層の形成方法。
  10. 過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部と、移動方向の上流側から下流側に向けて基材層に近接して配置された複数の噴射ノズルとを準備し、前記噴射ノズルを上流側から順に、過熱蒸気を噴射する過熱蒸気噴射ノズル、フェイスコート層形成剤の過熱蒸気を噴射するフェイスコート層形成剤噴射ノズル、機能層形成剤を噴射する機能層形成剤噴射ノズルとして割り当てたこと、
    を特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の基材層表層への機能層の形成方法。
  11. 前記過熱蒸気が前記フェイスコート層形成剤を含む場合に、前記過熱蒸気を一定圧力及び一定温度で保持して密閉する密閉容器を用いて、前記過熱蒸気噴射ノズルから噴射して基材に接触させることを特徴とする請求項10に記載の基材層表層への機能層の形成方法。
  12. 請求項10又は11に記載の基材層表層への機能層の形成方法のための形成装置であって、
    過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部と、移動方向の上流側から下流側に向けて基材層に近接して配置された複数の噴射ノズルとを有し、前記噴射ノズルを上流側から順に、過熱蒸気を噴射する過熱蒸気噴射ノズル、フェイスコート層形成剤の過熱蒸気を噴射するフェイスコート層形成剤噴射ノズル、機能層形成剤を噴射する機能層形成剤噴射ノズルとして割り当てたこと、を特徴とする基材層表層への機能層の形成装置。
  13. 前記過熱蒸気が前記フェイスコート層形成剤を含む場合に、前記過熱蒸気を一定圧力及び一定温度で保持して密閉する密閉容器を有するとともに、前記過熱蒸気噴射ノズルを前記フェイスコート層形成剤噴射ノズルとして用いたことを特徴とする請求項12に記載の基材層表層への機能層の形成装置。
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