JP2000129001A - ポリイミド樹脂成形体 - Google Patents

ポリイミド樹脂成形体

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JP2000129001A
JP2000129001A JP29945098A JP29945098A JP2000129001A JP 2000129001 A JP2000129001 A JP 2000129001A JP 29945098 A JP29945098 A JP 29945098A JP 29945098 A JP29945098 A JP 29945098A JP 2000129001 A JP2000129001 A JP 2000129001A
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龍男 積山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 強靭さ、高耐熱性、低線膨張係数、低吸水
性で加工特性の良好なポリイミド樹脂成形体を提供す
る。 【解決手段】曲げ弾性率が5GPa以上、熱変形温度が
400℃以上、線膨張係数が20−50ppm/℃、吸
水率が0.001−0.1%であるポリイミド樹脂成形
体を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、公知のポリイミ
ド樹脂成形体の有する特性を維持しつつ、強靭さ、高耐
熱性、低線膨張係数および低吸水性が優れたポリイミド
樹脂成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリイミド樹脂成形体としては、
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸系の
ポリイミド粉末成形体やピロメリット酸系のポリイミド
粉末成形体、あるいはこれらポリイミド前駆体シートの
積層物を加熱・加圧成形した成形体などが知られてい
る。特に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカル
ボン酸成分とp−フェニレンジアミン成分とからなるポ
リイミド粉末成形体は高耐熱性、高剛性、低線膨張係数
および低吸水率であることから、これらの特性が必要と
される分野に使用されている。また、ピロメリット酸成
分と4,4’−ジアミノジフェニレエーテルとからなる
ポリイミド粉末成形体は、高靭性および良好な切削加工
性を有しており、幅広く使用されている。
【0003】前記の3,3’,4,4’−ビフェニルテ
トラカルボン酸系のポリイミド粉末成形体について、例
えば、特特開昭57−200452号公報(特公平2−
48571号公報)、特開昭57−200453号公報
などに、N−メチル−2−ピロリドン中で3,3’,
4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分と芳香族ジ
アミン成分とを重合・イミド化させて得たイミド化率が
95%以上の芳香族ポリイミド粉末の加熱・圧縮成形体
を得た例が記載されている。さらに、微粒子状グラファ
イトなどの無機質粉末を含有するポリイミド粉末成形体
が、特開昭63−81160号公報に記載されている。
これらの文献によると、上記ポリイミド粉末成形体は機
械的強度に優れていることが示されている。
【0004】しかし、高強度で高耐熱性のポリイミド樹
脂成形体は、伸びが小さいためか、成形体を切削加工等
によって種々の形状に二次加工するさいなど成形時に欠
けたりして複雑な形状への成形が困難である、つまり強
靭さや切削加工性が低いという問題点が指摘されてい
る。また、ピロメリット酸系のポリイミド粉末成形体
は、線膨張係数および吸水率が大きく、曲げ弾性率や耐
プラズマ性が低いことが知られている。つまり、従来公
知のポリイミド樹脂成形体として、3,3’,4,4’
−ビフェニルテトラカルボン酸成分系ポリイミド樹脂成
形体の有する高剛性、高耐熱性、低線膨張係数、低吸水
率、耐プラズマ性および高強度特性を維持しつつ、ピロ
メリット酸系のポリイミド粉末成形体の有する耐熱性、
高靭性および良好な切削加工性を兼ね備えたものは無か
ったのである。
【0005】このため、成形体の伸びおよび機械強度を
大きくするために加熱圧縮成形時の粉体どうしの融着性
を改良するための試みがなされた。例えば、3,3’,
4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分と芳香族ジ
アミン成分とから得られるポリイミドに熱可塑性ポリイ
ミドを混合して得られるポリイミド粉末を圧縮成形する
方法が試みられたが、性質の全く異なる両成分の均一混
合が困難であり、得られる成形体の機械的強度および伸
びは未だ満足できるレベルに達するものではなく、また
耐熱性が却って低下するという問題点が指摘されてい
る。さらに、ポリアミック酸粉末(凝集体)を一旦取り
出して、加熱・乾燥・粉砕してポリイミド粉末とし、こ
れを圧縮成形して成形体を得る試みもなされている。し
かし、ポリアミック酸粉末凝集体の加熱時の温度コント
ロ−ルが難しく、またポリアミック酸粉末に金属不純物
が混入しやすく、実用的でないという指摘がされてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、公
知のポリイミド樹脂成形体の有する特性を維持しつつ、
強靭さ、高耐熱性、低線膨張係数および低吸水性が優れ
たポリイミド樹脂成形体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、この発明は、
曲げ弾性率(23℃)が5GPa以上、熱変形温度が4
00℃以上、線膨張係数(50−200℃)20−50
ppm/℃、吸水率が0.001−0.1%であるポリ
イミド樹脂成形体に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】以下にこの発明の好ましい態様を
列記する。 1)エッチング速度で測定した酸素プラズマ耐性が8μ
g/cm2・h以下の耐プラズマ性を有する上記のポリ
イミド樹脂成形体。 2)ポリイミド樹脂が、芳香族テトラカルボン酸成分と
して3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン
酸、その酸エステルまたはその酸二無水物および2,
3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、その酸
エステルまたはその酸二無水物の混合物と、芳香族ジア
ミン成分としてp−フェニレンジアミンとを重合、イミ
ド化したものである上記のポリイミド樹脂成形体。
【0009】3)ポリイミド樹脂を構成する芳香族テト
ラカルボン酸成分の割合が、3,3’,4,4’−ビフ
ェニルテトラカルボン酸成分が85−97モル%で、
2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分
が15−3モル%である上記のポリイミド樹脂成形体。 4)成形体が、ポリイミド樹脂を金型内で400℃以上
の温度、1000kg/cm2以上の圧力で加熱圧縮し
て成形したものである上記のポリイミド樹脂成形体。 5)成形体が、0.5−2℃/分の冷却速度で冷却して
成形したものである上記のポリイミド樹脂成形体。 6)成形体が、ポリイミド樹脂を金型内で200℃以下
の温度で加圧成形し、その加圧成形体を400℃以上の
温度の加熱オーブン内で1時間以上フリーシンタリング
したものである上記のポリイミド樹脂成形体。 7)成形体が、0.5−2℃/分の冷却速度で冷却して
成形したものである上記のポリイミド樹脂成形体。 8)成形体が、ポリイミド樹脂金型内で室温で加圧成形
し、その加圧成形体を加熱オーブン内でフリーシンタリ
ングしたものである上記のポリイミド樹脂成形体。 9)成形体が、摺動性、加工性、耐熱性、および/また
は耐磨耗性を改良するための無機質あるいは有機質粉末
を含有する上記のポリイミド樹脂成形体。
【0010】10)成形体が、ダイヤモンド微粒子およ
び場合によりさらに他の無機質粉末を充填した砥石用で
ある上記のポリイミド樹脂成形体。 11)成形体が、切削加工性、耐熱性、真空特性および
靭性を要求されるコレットチャック用である上記のポリ
イミド樹脂成形体。 12)成形体が、耐プラズマ性、真空特性、剛性、切削
加工性および耐熱性を要求される半導体クランプリング
である上記のポリイミド樹脂成形体。 13)成形体が、耐熱性、耐オイル性、摺動特性、切削
加工性および剛性を要求されるベアリングリテーナー用
である上記のポリイミド樹脂成形体。
【0011】この発明のポリイミド樹脂成形体は、好適
にはガラス転移温度(Tg)が室温〜400℃の温度範
囲では観測されない高耐熱性の結晶性芳香族ポリイミド
から主としてなる固形分を非結晶性ポリイミドからなる
被覆層で覆ってなり、対数粘度(30℃、0.5g/1
00ml濃硫酸)が0.5−2.0程度で、広角X線回
折法により結晶化度が確認される芳香族ポリイミド粉末
を金型内で加熱圧縮成形することによって製造すること
ができる。
【0012】前記の芳香族ポリイミド粉末としては、ガ
ラス転移温度(Tg)が室温〜400℃の温度範囲では
観測れない高耐熱性の結晶性芳香族ポリイミドから主と
してなる固形分、好適には3,3’,4,4’−ビフェ
ニルテトラカルボン酸成分とパラフェニレンジアミンよ
り誘導されるポリイミド固形分(粒子)を非結晶性ポリ
イミドからなる被覆層で覆ってなり、対数粘度(30
℃、0.5g/100ml濃硫酸)が前記範囲内で、広
角X線回折法により結晶化度約20%以上である、高耐
熱性の結晶性芳香族ポリイミド粒子の表面を非結晶性の
ポリイミドポリマ−からなる被覆層で覆った2層構造を
有するポリイミド粉末、すなわち、粒子の内層部分は結
晶性を有する芳香族ポリイミドであるのに対し、その外
層は非結晶性ポリイミドの薄い層の2層構造となってい
るポリイミド粉末が挙げられる。
【0013】前記の非結晶性のポリイミドによる被覆
は、結晶性芳香族ポリイミド粒子のほぼ全面であること
が好ましい。前記のポリイミド粉末によれば、成形の際
に粉末粒子表面のポリマ−溶融が充分で、かつ相互に融
合し合って結合するため、耐熱性と機械的強度、伸びが
高度にバランスした成形品が得られると考えられる。
【0014】前記の芳香族ポリイミドの粉末は、好適に
は次の方法、すなわち、結晶性芳香族ポリイミドを与え
る芳香族テトラカルボン酸成分、例えば、3,3’,
4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸あるいはその酸
二無水物またはその酸と低級アルコ−ルとのエステル化
物、および非結晶性ポリイミドを与えるテトラカルボン
酸成分、例えば好適には2,3,3’,4’−ビフェニ
ルテトラカルボン酸あるいはその酸二無水物またはその
酸と低級アルコ−ルとのエステル化物(いずれも好適に
は酸二無水物)を主成分とし、非結晶性ポリイミドを与
えるテトラカルボン酸成分(好適には2,3,3’,
4’−ビフェニルテトラカルボン酸類)を全テトラカル
ボン酸成分に対して約3モル%以上15モル%以下の割
合で含む芳香族テトラカルボン酸成分と、p−フェニレ
ンジアミンとを、場合により悪影響を及ぼさない範囲で
さらに他の芳香族テトラカルボン酸二無水物と他の芳香
族ジアミンとを、略等モル量公知の方法で有機極性溶媒
中で、重合およびイミド化、ついで反応系からの粉末回
収によって製造される。芳香ポリイミド粉末は高分子量
で、平均粒子径(一次粒子)が1〜20μm程度である
ことが好ましい。
【0015】前記の方法によれば、結晶性芳香族ポリイ
ミドの微小粒子を生成させながら高分子量化、イミド化
後、非結晶性ポリイミドを不溶性にしてポリイミド粉末
を析出させた後、粉末回収してポリイミド粉末を得るこ
とができる。この方法によれば、2層構造を有するポリ
イミド粉末であって、残存反応溶媒が少なく、均一な粒
子形成を容易に行うことができる。この場合、非結晶性
ポリイミドの割合が多くなると、ポリイミド粒子どうし
が凝集した凝集体多量に生成し、得られた成形体の物性
を低下させる原因となる。
【0016】前記の他の芳香族テトラカルボン酸類とし
ては、ピロメリット酸またはその酸二無水物、3,
3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸また
はその酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボ
キシフェニル)プロパンまたはその酸二無水物、ビス
(3,4−ジカルボキシフェニル)メタンまたはその酸
二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エ−
テルまたはその酸二無水物などを挙げることができる。
【0017】前記の他の芳香族ジアミンとしては、メタ
フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ
−テル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,
4’−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(4−アミノ
フェニル)ジメチルシラン、1,4−ビス(4−アミノ
−フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−
フェノキシ)ベンゼンなどを挙げることができる。
【0018】前記の芳香族ポリイミド粉末は、例えば、
不活性ガス存在下に、15−100重量%がアミド系溶
媒および85−0重量%が沸点180℃以上の非アミド
系溶媒からなり、水を0.5−5重量%含有する反応溶
媒中に、好適には溶液中の全モノマ−の割合が2−25
重量%、特に3−20重量%となるように、前記の芳香
族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とを略等
モル加え、生成する水を留出させながら昇温し、100
℃以上180℃未満の範囲内の温度で微細粒子を析出さ
せ、160−250℃の範囲内の温度で反応を0.5−
20時間継続して、対数粘度(30℃、0.5g/10
0ml濃硫酸)が0.2−1.5であり、イミド化率が
95%以上でるポリイミド粉末を取得することによって
製造される。前記の非アミド系溶媒、水はポリアミック
酸合成に先立って混合溶媒として使用してもよく、また
はポリアミック酸合成後、反応溶液に添加してもよい。
【0019】前記の微細粒子の析出段階に先立って、1
00℃以上180℃未満に反応溶液の温度を調節後イミ
ド化触媒、好適にはイミダゾ−ル系イミド化触媒を反応
系に添加し前記の加熱条件でイミド化することによっ
て、イミド化速度を調節することにより、生成ポリイミ
ド粉末の粒度および粒度分布を調節することもできる。
【0020】前記のアミド系溶媒としては、N−メチル
−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、
N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルカプロラク
タムが挙げられ、特にN−メチル−2−ピロリドンが好
適に使用される。
【0021】前記のイミド化反応終了後、ポリイミド粉
末を取得する方法としては特に制限はなく、例えば、反
応混合物をそのままあるいは室温まで冷却した後、芳香
族ポリイミド粉末を濾別し、その粉末を溶媒で洗浄し、
乾燥する方法が採用できる。前記の洗浄用の溶媒として
は、反応溶媒と置換しうる低沸点溶媒であれば何でもよ
く、水、あるいはメタノールやエタノールなどのアルコ
ール類が好適である。また、乾燥は250℃以下の常
圧、減圧のいずれでも、好ましくは200℃以下で、好
ましくは350℃で1時間加熱による重量減少率が1%
以下、特に0.5%以下となる乾燥状態とすることが好
ましい。前記の芳香族ポリイミド粉末は、特に粉砕しな
くてもよいが、ヘンシェルミキサ−、ウイリ−ミルなど
によって粉砕してもよい。また、重合時に生成するごく
少量の凝集体を分離除去する目的で振動ふるいにより凝
集体を分離することが成形体の物性向上のため好まし
い。
【0022】この発明のポリイミド樹脂成形体は、好適
には前記の芳香族ポリイミド粉末を金型内に充填し、圧
力および熱を同時あるいは別々に加え加熱圧縮成形して
製造することができる。前記の芳香族ポリイミドの粉末
を金型に充填し、100−150℃で5−60分程度予
備加熱してポリイミド樹脂に付着した水分を除去し、次
いで成形温度430−470℃、および成形圧力100
0−10000Kg/cm2で5−30分程度圧縮成形
することによって好適に製造することができる。これら
の温度や圧力は前記の範囲内であれば任意に選択すれば
よい。加熱圧縮成形された成形体を金型内で0.5−2
℃/分の冷却速度で冷却することが成形体の物性向上に
好ましい。さらに、圧縮成形した成形体を、非圧縮下、
400−460℃にて後焼結してもよい。焼結した成形
体は0.5−2℃/分の冷却速度で冷却することが成形
体の物性向上及び成形体の割れ発生をなくすため好まし
い。
【0023】さらに、前記の粉末成形体の製造のさい
に、人造ダイヤモンド、シリカ、マイカ、カオリン、窒
化ほう素、酸化アルミニウム、酸化鉄、グラファイト、
硫化モリブデン、硫化鉄などの無機充填剤、あるいは、
ふっ素樹脂などの有機充填剤などの各種の充填剤を前記
のポリイミド粉末と混合(内部添加、外部添加のいずれ
の方法で配合したものでもよい。)して使用することが
できる。
【0024】前記の加熱圧縮成形において、ポリイミド
粉末成形体を製造する装置としては、例えば、4柱式油
圧式プレス、高圧ホットプレス、WIP装置などを挙げ
ることができる。また、前記の予備成形体は、例えば、
Wet−CIP、Dry−CIP、高圧プレス、油圧プ
レス、ロ−タリ−プレス、タブレットマシ−ンを使用す
る方法によって形成することが好ましい。また、この発
明のポリイミド樹脂成形体は、前記の加熱圧縮成形法
を、シート状積層物に適用して製造することもできる。
【0025】前記の加熱圧縮成形によって得られるポリ
イミド樹脂成形体は、従来公知の3,3’,4,4’−
ビフェニルテトラカルボン酸類とパラフェニレンジアミ
ンとから得られるポリイミド粉末成形体の優れた耐熱
性、寸法安定性等を低下させることなく、高い伸び、低
吸水性、低線膨張性を実現することができる。
【0026】この発明のポリイミド樹脂成形体は、無機
質あるいは有機質粉末を含有させて、摺動性、加工性、
耐熱性、および/または耐磨耗性が要求される用途の成
形体にすることができる。また、この発明のポリイミド
樹脂成形体は、ダイヤモンド微粒子および場合によりさ
らに他の無機質粉末を充填した砥石用の成形体にするこ
とができる。さらに、この発明のポリイミド樹脂成形体
は、切削加工性、耐熱性、真空特性および靭性を要求さ
れるコレットチャック用の成形体にすることができる。
さらに、この発明のポリイミド樹脂成形体は、耐プラズ
マ性、真空特性、剛性、切削加工性および耐熱性を要求
される半導体クランプリング用の成形体にすることがで
きる。さらに、この発明のポリイミド樹脂成形体は、耐
熱性、耐オイル性、摺動特性、切削加工性および剛性を
要求されるベアリングリテーナー用の成形体にすること
ができる。
【0027】
【実施例】以下、この発明の実施例を示す。以下の各例
において、ポリイミド粉末成形体の種々の物性は、次の
試験方法によって測定したものである。 引張り特性:ASTM D−638に準拠して測定し
た。 曲げ特性:ASTM D−790 に準拠して測定し
た。 線膨張係数:ASTM D−696 に準拠して測定し
た。 熱変形温度:ASTM D−648 に準拠して測定し
た。 吸水率:ASTM D−570 に準拠し、成形体を水
中、23℃×24時間放置の値吸水率を測定した。 耐プラズマ特性:株式会社モリエンジニアリング製のプ
ラズマ発生装置を使用し、RIEモードで、酸素ガス
中、出力700W、圧力65Pa、温度145℃の条件
で成形体にプラズマ照射し、成形体のエッチング速度を
経時的に測定した。 真空特性:電子科学株式会社製の高精度昇温脱離ガス分
析装置EMD−WA1000を使用して100℃での到
達真空度を測定した。
【0028】実施例1 温度計、攪拌機、窒素導入管および水分定量器を備えた
四ツ口フラスコに、窒素ガスを通しながら、乾燥した
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無
水物408.03g、2,3,3’,4’−ビフェニル
テトラカルボン酸二無水物30.71gおよびN−メチ
ル−2−ピロリドン2930gを仕込み、攪拌しながら
50℃に昇温し、完全に溶解して均一な溶液とした。こ
れにp−フェニレンジアミン161.26gを加え、
0.5時間保った。次いで、1.5時間で190℃に昇
温し、この温度で3時間反応させた。途中161℃でポ
リイミド樹脂粒子の析出が観察された。また、反応中に
留出する水は速やかに系外に除去した。N−メチル−2
−ピロリドン溶液中に分散した黄色のポリイミド樹脂粒
子を濾過によって回収し、更に、これを水中で3回煮沸
(98N−メチル−2−ピロリドン、1時間)洗浄し、
常圧下、130℃で熱風乾燥した後、に減圧下、200
℃でポリイミド樹脂粒子中に少量存在するN−メチル−
2−ピロリドンを乾燥除去して、ポリイミド樹脂粒子を
得た。
【0029】得られたポリイミド樹脂粒子は、透過型電
子顕微鏡による観察(断面図を示す)から結晶性ポリイ
ミド粒子の表面の全部を非結晶性のポリイミドからなる
被覆層で覆ってなる2層構造を有しており、そのポリマ
−の対数粘度(30℃、0.5g/100ml濃硫酸)
が約0.6であり、平均粒径(一次粒子)は6μmであ
り、広角X線回折法(ル−ランド法)による解析で結晶
化度は38%であった。またガラス転移温度は400℃
まで観測されず、また、常温から350℃までの加熱減
量は0.7%であり、平均粒子径は7.5μmであっ
た。
【0030】得られたポリイミド樹脂粒子を金型に充填
し、130℃で5時間程度予備加熱して予備形成し、次
いで成形温度450℃、成形圧力約3000Kg/cm
2で5分程度圧縮成形して、加熱圧縮成形し、1℃/分
の冷却速度で加熱オーブン中でプログラム冷却して、成
形体を得た。得られた成形体を所定の形状に切削加工し
て、物性を評価した。この切削加工のさいに、成形品に
欠けが生じることはなかった。
【0031】引張り強度:110Mpa 引張り伸び:4.0% 曲げ弾性率:7.5Gpa 線膨張係数:35ppm/℃ 熱変形温度:470℃ 吸水率:0.03% 耐酸素プラズマ特性:6.6μm/cm2・hr 真空特性:1.5×10-7Torr・L/sec・cm
2 上記の結果は、実施例1で得られたポリイミド樹脂成形
体が、良好な高耐熱性、低線膨張係数、低吸水率、耐プ
ラズマ性および高真空特性を維持しつつ、高靭性および
良好な切削加工性を兼ね備えていることを示す。
【0032】比較例1 ポリイミド樹脂粉末として、市販の3,3’,4,4’
−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物−4,4’−ジ
アミノジフェニルエーテル系のポリイミド樹脂粉末(市
販品1)を使用して、成形体を得た。評価結果を次に示
す。 引張り強度:116Mpa 引張り伸び:5.0% 曲げ弾性率:4.2Gpa 線膨張係数:55ppm/℃ 熱変形温度:336℃ 吸水率:0.40% 耐酸素プラズマ特性:14.6μm/cm2・hr 真空特性:4.6×10-5Torr・L/sec・cm
2
【0033】比較例1 ポリイミド樹脂粉末として、市販のピロメリット酸二無
水物−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル系のポリ
イミド樹脂粉末(市販品2)を使用して、成形体を得
た。評価結果を次に示す。 引張り強度:72Mpa 引張り伸び:7.5% 曲げ弾性率:2.5Gpa 線膨張係数:54ppm/℃ 熱変形温度:360℃ 吸水率:0.24% 耐酸素プラズマ特性:9.2μm/cm2・hr 真空特性:1.8×10-4Torr・L/sec・cm
2
【0034】実施例2 実施例1の重合時にダイヤモンド微粒子:番定800
(20−30μm)をポリイミドに対して25容量%添
加して重合した以外は同様にして、ダイヤモンド微粒子
入りのポリイミド樹脂粉末を得た。このダイヤモンド入
りポリイミド樹脂粉末を使用して、成形体を得た。評価
結果を次に示す。 引張り強度:152Mpa 引張り伸び:2.5% 曲げ弾性率:8.5Gpa 線膨張係数:22ppm/℃ 熱変形温度:472℃ 吸水率:0.02%
【0035】実施例3 実施例1で得たポリイミド樹脂粉末75容量%と実施例
2で使用したダイヤモンド微粒子25容量%とをヘンシ
ェルミキサーでブレンドし、この混合物を金型に充填
し、室温で5000Kg/cm2の圧力で加圧成形し、
成形されたポリイミド成形体を金型から取り出し、45
0℃の加熱オーブン中で5時間焼成した。この焼成体を
実施例1と同様に評価した。評価結果を次に示す。 引張り強度:143Mpa 引張り伸び:3.0% 曲げ弾性率:5.2Gpa 線膨張係数:36ppm/℃ 熱変形温度:471℃ 吸水率:0.02%
【0036】
【発明の効果】この発明は以上詳述したような構成を有
しているため、下記のような効果を奏する。この発明の
ポリイミド樹脂成形体は、良好な高耐熱性、低線膨張係
数、および低吸水率を維持しつつ、高靭性および良好な
切削加工性を兼ね備えていることを示す。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 5/00 C08K 5/00 C08L 79/08 C08L 79/08 B H01L 21/52 H01L 21/52 F // B29K 79:00 B29L 31:04 31:34 Fターム(参考) 4F071 AA60 AB03 AB18 AB26 AB27 AD02 AE13 AF10Y AF17Y AF43Y AF62Y AG22 AG28 AG29 AH12 AH17 AH19 BA01 BB01 BC07 DA13 EA06 4F204 AA40C AB16 AB18 AH14 AR03 AR06 AR08 FA01 FA18 FB01 FE06 FF01 FF06 FW06 FW15 4J002 BD122 CM041 DA016 DA017 DA026 DE116 DE146 DG026 DJ016 DJ036 DJ056 DK006 FD012 FD016 FD017 FD207 GM00 GM05 GQ05 GT00 4J043 PA04 QB15 QB24 QB26 QB31 RA35 SA06 SB01 TA14 TA22 TA33 TB03 UA121 UA122 UA131 UA132 UA141 UB011 UB012 UB021 UB022 UB121 UB122 UB152 UB311 UB402 VA011 VA021 VA031 VA041 VA051 VA061 XA16 XA19 YA06 ZA12 ZA32 ZB51 ZB52 5F047 BA33 BB11

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】曲げ弾性率(23℃)が5GPa以上、熱
    変形温度が400℃以上、線膨張係数(50−200
    ℃)20−50ppm/℃、吸水率が0.001−0.
    1%であるポリイミド樹脂成形体。
  2. 【請求項2】エッチング速度で測定した酸素プラズマ耐
    性が8μg/cm2・h以下の耐プラズマ性を有する請
    求項1に記載のポリイミド樹脂成形体。
  3. 【請求項3】ポリイミド樹脂が、芳香族テトラカルボン
    酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカ
    ルボン酸、その酸エステルまたはその酸二無水物および
    2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、そ
    の酸エステルまたはその酸二無水物の混合物と、芳香族
    ジアミン成分としてp−フェニレンジアミンとを重合、
    イミド化したものである請求項1に記載のポリイミド樹
    脂成形体。
  4. 【請求項4】ポリイミド樹脂を構成する芳香族テトラカ
    ルボン酸成分の割合が、3,3’,4,4’−ビフェニ
    ルテトラカルボン酸成分が85−97モル%で、2,
    3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分が1
    5−3モル%である請求項1に記載のポリイミド樹脂成
    形体。
  5. 【請求項5】成形体が、ポリイミド樹脂を金型内で40
    0℃以上の温度、1000kg/cm2以上の圧力で加
    熱圧縮して成形したものである請求項1に記載のポリイ
    ミド樹脂成形体。
  6. 【請求項6】成形体が、0.5−2℃/分の冷却速度で
    冷却して成形したものである請求項5に記載のポリイミ
    ド樹脂成形体。
  7. 【請求項7】成形体が、ポリイミド樹脂を金型内で20
    0℃以下の温度で加圧成形し、その加圧成形体を400
    ℃以上の温度の加熱オーブン内で1時間以上フリーシン
    タリングしたものである請求項1に記載のポリイミド樹
    脂成形体。
  8. 【請求項8】成形体が、0.5−2℃/分の冷却速度で
    冷却して成形したものである請求項7に記載のポリイミ
    ド樹脂成形体。
  9. 【請求項9】成形体が、摺動性、加工性、耐熱性、およ
    び/または耐磨耗性を改良するための無機質あるいは有
    機質微粉末を含有する請求項1に記載のポリイミド樹脂
    成形体。
  10. 【請求項10】成形体が、ダイヤモンド微粒子および場
    合によりさらに他の無機質粉末が充填された砥石用であ
    る請求項1に記載のポリイミド樹脂成形体。
  11. 【請求項11】成形体が、切削加工性、耐熱性、真空特
    性および靭性を要求されるコレットチャック用である請
    求項1に記載のポリイミド樹脂成形体。
  12. 【請求項12】成形体が、耐プラズマ性、真空特性、剛
    性、切削加工性および耐熱性を要求される半導体クラン
    プリングである請求項1に記載のポリイミド樹脂成形
    体。
  13. 【請求項13】成形体が、耐熱性、耐オイル性、摺動特
    性、切削加工性および剛性を要求されるベアリングリテ
    ーナー用である請求項1に記載のポリイミド樹脂成形
    体。
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