JP2000100691A - 電子線露光装置 - Google Patents

電子線露光装置

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JP2000100691A
JP2000100691A JP10265886A JP26588698A JP2000100691A JP 2000100691 A JP2000100691 A JP 2000100691A JP 10265886 A JP10265886 A JP 10265886A JP 26588698 A JP26588698 A JP 26588698A JP 2000100691 A JP2000100691 A JP 2000100691A
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JP
Japan
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electron beam
deflection
mask
exposure apparatus
sensitive substrate
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JP10265886A
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English (en)
Inventor
Shinichi Kojima
真一 小島
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Nikon Corp
Original Assignee
Nikon Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子線の開き半角を大きめにとった場合で
も、偏向収差による像のぼけ、歪みを小さく押さえ、大
きな偏向量のとれる電子線露光装置を提供する。 【解決手段】 マスク1面を照射した電子線は、マスク
1に形成されたパーターンの像を、転写レンズ4、5の
作用により感応基板2上に転写する。散乱アパーチャ6
を挟んでマスク側に6個、感応基板側に3個の偏向器7
が設けられている。全部で9個の偏向器7を用いること
により、偏向による小領域像面の傾斜、偏向コマ収
差、偏向による小領域内非点隔差、偏向色収差、
偏向による小領域2次歪み(x、y方向各1)、電
子線が散乱アパーチャーの中心を通過すること、感応
基板上の目的の偏向位置への偏向、電子線の感応基板
表面への入射角の垂直性(テレセン性)が設計条件内に
入るようにしている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子線を用いてマ
スク上のパターンを感応基盤に転写する電子線露光装置
に関するものであり、さらに詳しくは、電子線の開き半
角を大きくした場合でも像のぼけ、歪を大きくすること
なく大きな量の偏向をかけることを可能にし、かつクー
ロン効果や空間電荷効果によるぼけを小さくして大電流
を流すことができ、全体としてスループットの高い電子
線露光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体の高集積化が進むにつれ、集積回
路の微細化が要求され、これに伴い、露光装置には、よ
り細いパターンを描くために、より高い解像度で描画で
きることが要求されてきている。その中で、電子線に代
表される荷電粒子線による露光装置は、このような要求
に応えることができるものとして注目されている。
【0003】このような、マスク上に予め用意されたパ
ターンを感応基板上に転写する電子線を利用した露光装
置では、単位時間当たりの処理能力(スループット)を
向上させるためにできるだけ大きな電流の電子線を用い
るのが望ましい。しかし、電子線露光装置では、使用可
能な電流量には制限がある。すなわち、大電流の電子線
を用いた場合、隣接又は近傍の電子同士のクーロン反発
力による散乱がランダムに生じ、電子の飛行中にこの散
乱によって軌道がランダムに乱される結果、感応基板に
達するまでには電子線による小領域の像がぼけてしま
う。
【0004】上記クーロン反発力によるぼけ(クーロン
効果)を緩和する従来技術としては電子線の開き半角を
大きくする方法が知られている。開き半角を大きくとる
ことよって絞り位置での電子線の径が大きくなり、これ
により、電子間の距離が大きくなるため、電子間の距離
の2乗に反比例するクーロン反発力が弱まる。従って、
クーロン反発力によるぼけが小さくなる。この様子を図
5に示す。図5において横軸は開き半角、縦軸はぼけの
大きさを示す。
【0005】しかし、開き半角を大きくすると、電子線
を集束、偏向するためのレンズ、偏向器による幾何収差
が増大するため、図5に示すように幾何収差によるぼけ
が増大する。従って、開き半角は、図5において前記ク
ーロン反発力によるぼけと前記幾何収差によるぼけから
なる総合ぼけが最小になるように決定されるのが一般的
である。すなわち、従来の技術においては、電子線露光
装置の大電流化と高解像度化を両立させることは困難で
あった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような従来技術の
問題点を解決する一手段として、本発明者は、球面収差
とクーロン効果によるぼけを、輪帯アパーチャを用いる
ことによって少なくし、大電流を流すことによりスルー
プットを上げることのできる荷電粒子線露光装置の発明
及びその改良発明である電子線露光装置の発明を行い、
平成10年特許願第111357号、及び平成10年特
許願193581号として特許出願した。平成10年特
許願193581号に係る発明(先願発明)によれば、
マスク像を感応基板に転写するタイプの電子線露光装置
において、電子線開き半角を従来技術より大きめにと
り、かつ比較的細い輪帯照明を用いた投影用電子光学系
を用いることにより、大電流の電子線を用いた場合でも
解像度を100nm以下とすることができる。
【0007】しかし、前述のように、電子光学系の幾何
収差は電子線の開き半角が大きいほど大きくなる性質を
持ち、先願発明では電子線開き半角を従来技術より大き
めにとったため、偏向量を大きくとった場合に発生する
偏向収差が大きくなり、従来技術の偏向手段をそのまま
用いた場合には、偏向収差による像のぼけ、歪みが大き
くなりすぎるという問題点が残っていた。従って、従来
技術の偏向手段をそのまま先願発明に用いると、偏向で
きる距離が小さく制限される。一般に偏向量を大きくす
ることによりスループットは向上するので、このように
偏向できる距離が制限されることは、スループットの面
からは好ましくない。
【0008】本発明はこのような先願発明の問題点を解
決することをきっかけとしてなされたもので、電子線の
開き半角を大きめにとった場合でも、偏向収差による像
のぼけ、歪みを小さく押さえ、大きな偏向量のとれる電
子線露光装置を提供すること、さらにこれに加え、クー
ロン効果や空間電荷効果によるぼけを小さくして大電流
を流すことができ、全体としてスループットの高い電子
線露光装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の第1の手段は、電子線を用いてマスク上に描かれたパ
ターンを感応基板上に転写する電子線露光装置であっ
て、マスクと散乱アパーチャーの間に6個またはそれ以
上の、主として収差補正に用いられる偏向器を有し、散
乱アパーチャーと感応基板との間に3個またはそれ以上
の、主として収差補正に用いられる偏向器を有すること
を特徴とする電子線投影装置(請求項1)である。
【0010】本手段においては、主に収差補正に用いら
れる偏向器が9個以上有ることにより、比較的大きな最
大開き半角(マスク面上で1.5[mrad]から3[mrad])を持
つ光学系で、大きな偏向量を必要とするものにおいて
も、十分な設計自由度を得ることができ、従って、偏向
時の発生収差を十分小さく抑制するような電子光学解が
得やすくなり、同時に実際の電子線露光装置において
も、設計に十分近い形の偏向軌道を設定しやすくなる。
発明者の実験によれば、これに対し、偏向器が8個以下
では十分な自由度がないため、収差の小さい偏向光学系
を設計できなかった。
【0011】さらに、9個以上のうち3個以上を散乱ア
パーチャーと感応基板との間に設置することは、散乱ア
パーチャーと感応基板との間の偏向軌道を設計通りに設
定するために必要である。しかしながら4個以上の偏向
器を散乱アパーチャーと感応基板との間に設置すると、
偏向軌道の設定のしやすさは向上するものの、実際に
は、機器配置上の制約のために、このような配置とする
ことは困難である。
【0012】すなわち、クーロン効果抑制のため、マス
クと感応基板の間の長さを約500mm程度以下に抑えるた
めには、散乱アパーチャーと感応基板間の長さを約100m
m程度以下にする必要がある。一方で、100keV付近の加
速電圧の電子線を偏向させるには、比較的強力な偏向磁
場が必要であり、偏向器の発生する磁場を強力にするた
めには、導線の巻き数の多い偏向器コイルが必要であ
る。従って偏向器の大きさは2〜3cmにもなるのは避け
られない。よって、他の部品を設定する空間も必要なこ
とを考慮すると、100mm程度の間隔には3個の偏向器が
限度である。よって、本手段においては、マスクと散乱
アパーチャの間に6個、散乱アパーチャと感応基板の間
に3個の偏向器をそれぞれ設けることが好ましい。もち
ろん、何らかの工夫により偏向器を小さくできる場合に
は、4個以上入れても差し支えない。
【0013】前記課題を解決するための第2の手段は、
前記第1の手段であって、全部で9個以上の主として収
差補正に用いられる偏向器の、電磁偏向器の場合は励磁
電流値、静電偏向器の場合は電圧値が、偏向時に発生す
る収差のうち、偏向による小領域像面の傾斜、偏向コマ
収差、偏向による小領域内非点隔差、偏向色収差、偏向
による小領域2次歪みの各々の収差が十分小さくなるよ
うに偏向軌道を設定し、かつ電子線が散乱アパーチャー
の中心を通過し、かつ感応基板上の目的の偏向位置に偏
向でき、かつ偏向位置での電子線の感応基板表面への入
射角が十分垂直になるように設定されていることを特徴
とするもの(請求項2)である。
【0014】前記第1の手段においては、9個以上の主
として収差補正に用いられる偏向器を有するので、9個
以上の量が制御できる。本手段においては、この9個の
制御量を、偏向による小領域像面の傾斜、偏向コマ
収差、偏向による小領域内非点隔差、偏向色収差、
偏向による小領域2次歪み(2種類)、電子線が
散乱アパーチャーの中心を通過すること、感応基板上
の目的の偏向位置への偏向、電子線の感応基板表面へ
の入射角の垂直性(テレセン性)とし、これらが同時に
目的の範囲となるように9個以上の偏向器を制御する。
【0015】制御方法は、これらの条件を満足させるた
めの9個の軌道方程式を連立させて解くことにより、各
偏向器に流す励磁電流または印加電圧を決定する。これ
らの量が所定範囲に収まることにより、ぼけや収差が小
さくなり、且つ十分なテレセン性を確保することができ
る。また、大電流の電子線において、偏向量を大きくし
ても、ぼけや歪を所定範囲に収めることができ、スルー
プットを向上させることができる。
【0016】前記課題を解決するための第3の手段は、
前記第1の手段又は第2の手段であって、マスク面を照
明する電子線の開き半角を所定値以上、所定値以下に制
限する手段を有することを特徴とするものである。
【0017】本手段の作用を図を用いて説明する。な
お、以下の説明においては、荷電粒子線のことを光線、
その中心軸を光軸、その系を光学系等と、荷電粒子線を
光の一種として説明することがある。
【0018】図3は本発明による球面収差低減の原理を
説明する図、図4は従来の光学系における球面収差の発
生を示す図である。図3、図4において、20は電子
線、21はアパーチャ、22は投影レンズ、23はガウ
ス像面(近軸光線の結像面)位置、23’は球面収差が
最少になる最適像面位置、24はウェハ基板、25は光
軸である。
【0019】マスクを通過した電子線20は、投影用レ
ンズ22により、ウェハ基板24上に投影され、マスク
の像をウェハ基板24上に結像する。図4において、球
面収差が主な収差であるような従来の光学系における電
子光学レンズの場合、電子線の集束位置であるガウス像
面位置23より物面側に近い位置に、球面収差による電
子線の広がりが最小になる位置(最適像面位置)23’
が存在する。よって、マスク基板24の位置をガウス像
面位置23から最適像面位置23’に移動することによ
り、ある程度球面収差を小さくすることができる。しか
し像面位置をこの最適像面に合わせたときでも、球面収
差による荷電粒子線の広がりは零にはならない。
【0020】発明者は、図4の光学系において、近軸電
子線をカットすることにより、前記最適像面位置23’
における球面収差が著しく低減されることを見出した。
すなわち、図3のように、最適像面位置23’上におい
て所定値以上の開き半角で所定値以下の開き半角の電子
線のみが受光されるようにすれば、最適像面位置23’
における球面収差は著しく低減される。よって、このよ
うなアパーチャ(たとえばリング状のアパーチャ)を設
け、かつマスク等(被転写面)が最適像面位置23’に
一致するように調整する手段を設けるという簡単な構成
で、球面収差を大幅に低減することができる。
【0021】また、比較的細い輪帯照明を用いた投影用
電子光学系を用いることにより、照射される電子線の開
き角度分布の大きい部分の電子線のみを使用する結果、
絞り面付近における電子間の平均的相対距離が増大し、
任意の電子に加わる平均的なクーロン反発力が小さくな
るため、従来技術の電子線露光装置に比較して、クーロ
ン反発力によるぼけが減少する。
【0022】さらに、感応基板表面に入射する電子線に
は、開き半角が零付近の電子線は存在せず、開き半角が
大きい電子だけなので、空間電荷効果の抑制効果が著し
い。すなわち、まず、上記空間電荷効果の一種である焦
点位置のずれが従来技術に比較して、有意に小さくな
る。このずれは、焦点補正レンズによって補正するが、
電子線の焦点ずれの補正範囲が小さくなるため、焦点補
正レンズ系の設計が簡単化され、また焦点補正光学系の
制御系の構築も簡単化されるメリットがある。
【0023】加えて、上記空間電荷効果による小領域像
面の湾曲効果が抑制されるメリットがある。この空間電
荷効果による小領域像面の湾曲効果は、通常の像補正方
法では補正できない効果である。この効果により大電流
時における最適解像の焦点位置が小領域内で異なり、解
像度の悪化を生じる。本手段においては、大電流の電子
線による露光時でも上記空間電荷効果による小領域像面
の湾曲効果が抑制されるため、小領域内でのパターン像
の解像度の均一性の良い、より解像度の高い電子線露光
装置の製造が可能になる。
【0024】本手段には、さらに、上記空間電荷効果に
よる小領域像の歪みが、抑制されるメリットがある。上
記空間電荷効果による小領域像の歪みは、通常の像補正
方法では補正が困難な形状に変形する場合がある。この
効果により大電流時における隣接小領域間にまたがるパ
ターンのつなぎ精度の悪化が生じる。また、多層に形成
される回路パターンの場合、各層間のパターンの重ね合
わせ精度も悪化する。しかし本手段により、大電流な電
子線による露光時でも、上記空間電荷効果による小領域
像の歪み効果が抑制されるため、よりパターンの重ね合
わせ精度、つなぎ精度の高い電子線露光装置の供給が可
能になる。
【0025】本手段においては、クーロン反発力による
ランダムな散乱を抑制し、かつ、空間電荷効果を抑制す
るために、リング状のアパーチャ−等により近軸光線を
カットし、開き角が大きな部分の電子線を使用してい
る。従来の偏向器では、このような場合には、偏向量を
大きくすると幾何収差によるぼけが増大したが、本手段
においては、前記第1の手段又は第2の手段を合わせ用
いているので、ぼけを増大させることなく、偏向量を大
きくすることができる。
【0026】前記課題を解決するための第4の手段は、
前記第3の手段であって、マスクを照明する電子線の開
き半角分布の最小角度αmask-min と最大角度α
mask-max が1.5[mrad]から3[mrad]の範囲内にあり、か
つ、|αmask-max - αmask-min| ≦ 0.75[mrad] の関係
を満たすように制限されていることを特徴とするもの
(請求項4)である。
【0027】電子線のレンズ中心軸に対する角度分布の
最小角度αmask-min の最小値を1.5[mrad]に限定するの
は、これ未満となると、電子線の角度分布のうち、中心
部分の電子線の使用率が高くなり、従って輪帯照明の効
果が低下し、空間電荷効果によるぼけが増大することに
より、目標解像度90nmの達成が困難になるからである。
又、電子線のレンズ中心軸に対する角度分布の最小角度
αmask-min の最大値を3[mrad]に限定するのは、この値
を超えると、投影レンズ系の幾何収差が大きくなって、
クーロン効果は抑制できても、幾何収差が大きいために
目標解像度90nmの達成が困難になるからである。
【0028】電子線のレンズ中心軸に対する角度分布の
最大角度αmask-max の最小値を1.5[mrad]に限定するの
は、これ未満となると、電子線の角度分布の最大値が小
さくなり過ぎ、絞り付近での電子線の径が小さくなっ
て、ランダムな散乱によるクーロン効果ぼけが増大する
ことにより、目標解像度90nmの達成が困難になるからで
ある。又、電子線のレンズ中心軸に対する角度分布の最
大角度αmask-max の最大値を3[mrad]に限定するのは、
この値を超えると、投影レンズ系の幾何収差が大きくな
って、クーロン効果は抑制できても、幾何収差が大きい
ために目標解像度90nmの達成が困難になるからである。
【0029】|αmask-max - αmask-min|を 0.75[mrad]
以下に限定するのは、この値を超えると、電子線のレ
ンズ中心軸に対する角度分布の最大角度と最小角度の差
が大きくなり過ぎ、輪帯照明領域が太くなり過ぎるた
め、輪帯照明の効果が低下し、それによって空間電荷効
果によるぼけが増大して、目標解像度90nmの達成が困難
になるからである。
【0030】前記課題を解決するための第5の手段は、
前記第4の手段であって、前記マスクを照明する電子線
の電流をIillumi[μA]とし、前記マスク面と前記感応
基板との距離をL[mm]とし、前記を照明する電子線の加
速電圧をV[keV]とし、前記感応基板面での電子線の開
き半角の最大値をαwafer-max[mrad]とするとき、次の
連立不等式条件 A・La・(Iillumi/4)b/{Vc・(αwafer-max)d}≦40-2.5・(αwafer-max-10) [nm ] …(1) Iillumi≧ 70 [μA] …(2) V≦ 200 [keV] L≧ 300 [mm] …(3) を満足する電子線投影装置を有するもの(請求項5)で
ある。但し、ここでA,a,b,c,dは定数で、61≦A≦
81,1.2≦a≦1.4,0.6≦b≦0.85,1.3≦c≦1.6,0.6
≦d≦0.8であり、かつ、前記電子線投影装置の縮小倍
率を1/mとするとき、αwafer-max=m・αmask-max
ある。
【0031】このうち、マスク面へ入射する電子線の電
流Iillumiを70[μA]以上としているのは、本発明の対
象とする電子線露光装置は、これ以上の電流値を有する
ものに限っているためである。ただし、スループットを
落としてよい場合には、電流Iillumiを70[μA]未満と
しても使用可能である。この場合には、その分解像度が
向上し、歪が向上するという効果が期待できる。
【0032】また、加速電圧Vは、高いほどクーロン反
発力によるぼけが小さくなるため好ましいが、200[keV]
を超えると、感応基板上に塗布されている感光剤(レジ
ストと呼ばれる)の感度が極端に低下し、逆に感応基板
処理能力が低下するため、上限を200[keV]に限定する。
しかし、この問題を容認できる場合には、200[keV]を超
える加速電圧でも使用は可能である。
【0033】また、マスク−感応基板間の距離Lは短い
ほど上記ぼけが小さくなるが、L=300mm未満の場合、電
子線を集束させる磁気レンズに流す電流が大きくなりす
ぎ、発熱が大きすぎる問題があるため望ましくない。ま
た、偏向器電流(又は電圧)の駆動電気系の設計が困難
になる。よって、Lは300mm以上に限定する。しかし、
これらの問題点が容認できる場合は、L=300mm未満でも
使用は可能である。
【0034】さらに、本手段においては、 A・La・(Iillumi/4)b/{VC・(αwafer-max)d}≦40-2.5・(αwafer-max-10) [nm ] …(1) が成り立つようにしている。式(1)の左辺はクーロン反
発力によるランダムな散乱によるぼけの量を表し、それ
が右辺以下になるように制限している。右辺が開き半角
の最大値αwafer-maxの関数になっているのは、開き半
角の最大値が増大するとレンズ、偏向器による幾何収差
が増大するため、同等の性能を得るためにはクーロン効
果によるぼけをその増加分だけ減らす必要があるためで
ある。式(1)を満たすことにより、クーロン反発力によ
るランダムな散乱によるぼけの量は、αwafer-maxの値
に依存して、35〜50nm程度にまで減少する。
【0035】なお、以上の各手段の説明において、偏向
器は主として収差補正に用いられるものとして説明を行
ったが、これらの偏向器を偏向位置のずれの補正にも使
用してもよいことはもちろんである。その場合にも、偏
向位置補正量が微少であれば、収差打ち消しの条件はほ
とんど変化せず、従って良好な解像度を維持できる。も
ちろん、偏向位置補正用の偏向器を別途持つようにして
もよい。この場合にも、偏向位置補正量が微少であれ
ば、偏向器の励磁電流の収差打ち消しの条件はほとんど
変化せず、従って良好な解像度を維持できる。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態の
1例を示す図であり、1はマスク、2は感応基板、3は
電子線の光軸、4、5は転写レンズ、4a、5aは転写
レンズのコイル、4b、5bは転写レンズの磁極、6は
散乱アパーチャ、7は偏向器、8はレンズ駆動回路、9
は偏向器駆動回路である。
【0037】図示されない電子源から放出された電子ビ
ームは、図示されない照明光学系を介してマスク1面を
照射する。そして、マスク1に形成されたパーターンの
像を、転写レンズ4、5の作用により感応基板2上に転
写する。散乱アパーチャ6は、感応基板2面での電子ビ
ームの開き角を制限し、マスク1により散乱された電子
ビームが感応基板2に到達しないようにしている。散乱
アパーチャ6を挟んでマスク側に6個、感応基板側に3
個の偏向器7が設けられている。
【0038】電子レンズ4、5は、レンズ駆動装置8に
より駆動され、マスク1に形成されたパターンの像を、
正しく感応基板2上に転写するように制御される。偏向
器7の主たる役割は、電子ビームを偏向させることによ
り、マスク1の光軸3から離れた領域から放出される電
子ビームを、それに対応した感応基板面の光軸3から離
れた位置に導くことであるが、本実施の形態において
は、全部で9個の偏向器7を用いることにより、偏向
による小領域像面の傾斜、偏向コマ収差、偏向によ
る小領域内非点隔差、偏向色収差、偏向による小
領域2次歪み(2種類)、電子線が散乱アパーチャー
の中心を通過すること、感応基板上の目的の偏向位置
への偏向、電子線の感応基板表面への入射角の垂直性
(テレセン性)が設計条件内に入るようにしている。
【0039】以下、各偏向器の励磁電流の設定方法を説
明する。偏向器は、マスクを出射した電子線が散乱アパ
ーチャ6を通過し、感応基板2の所定の位置に垂直に入
射するように設定する必要がある。さらに、偏向コマ収
差、偏向ハイブリッド像面湾曲収差、偏向ハイブリッド
非点収差、偏向色収差、偏向ハイブリッド歪収差のうち
の非線形成分を打ち消すように設定される。これらの条
件を数式で示した場合、連立方程式(1)〜(9)のよ
うになる。
【0040】
【数1】
【0041】ここでIj(j=1、2、…Nd:Ndは
偏向器の数)は各偏向器の励磁電流を表し(Ndは偏向
器の数)、X偏向器とY偏向器の励磁電流をそれぞれI
jx、Ijyとするとき、Ij=Ijx+i*Ijyという複素数
表示で記述されている(iは複素数単位を示す)。同
様、以下の収差項、偏向軌道等についても複素数表示で
記述されているものとする。また、MCO (j)(γ)、H
fc (j)(γ)、Has (j)(γ)、Mchro (j)(γ)、H
dis3 (j)(γ)、Hdis4 (j)(γ)、wm (j)(Zco)、w
m (j)(Zi)、(wm (j))’(Zi)は、それぞれ電流値
で規格化された各偏向器の偏向コマ収差、偏向ハイブリ
ッド像面湾曲収差、偏向ハイブリッド非点収差、偏向色
収差、偏向ハイブリッド歪収差のうち非線形成分(2種
類ある)の収差量、散乱アパーチャ位置(Zco)での偏
向軌道、感応基板表面(Zi)での偏向位置(偏向感
度)、偏向軌道の傾き(入射角)を表している。また、
γは、感応基板表面での目標偏向位置座標を(x,y)
としたとき、γ=x+iyで示される複素座標である。
【0042】また、完全に打ち消しをしない場合でも、
たとえば、次の(10)式の重み関数を最小にするよう
に電流値Ijに関する最小自乗法を用いて解いてもよ
い。さらに、(10)式の重み関数では最適では無い場
合(例えばある収差だけ大きく残存する場合等)には、
(10)式の各項に個別の重み係数を付けて最小自乗法
を行ってもよい。また、最小自乗法に限らず、各種の公
知の最適化手法を用いて各電流値を決定してもよい。
【0043】
【数2】
【0044】偏向器7が静電型偏向器の場合は、各偏向
器7の電極にかける電圧を同様な方法で決定してやれば
よい。
【0045】次に、偏向軌道の設定方法(ビームアライ
メント)について説明する。偏向軌道を設定する方法
は、(a)まず、設計電流値を各偏向器7に流し、散乱ア
パーチャ6に吸収される電流を測定して、これが最小に
なるように各偏向器に流す電流を微調整することによ
り、散乱アパーチャ−通過位置を調整していく方法、
(b)レンズ電流を変化させてビーム位置ずれを検出し、
位置ずれが無くなるように軸出しをを行うウォブリング
法(この方法は、軸上でのビームアライメントにしか適
用することができない。)等が知られているが、この他
に、(c)各偏向器の偏向感度を像面で直接検出するか、
露光レジストパターンから座標測定装置で測定して検出
し、測定された偏向感度をフィードバックして、電流値
を最適化し、設定し直す方法がある。この際、各偏向器
の偏向感度を像面で直接検出する方法としては、ファラ
デーカップを用いたナイフエッジ検出法、重金属や段差
等のマークによる反射電子検出法、光電子増倍管を用い
たナイフエッジ検出法等が使用できる。
【0046】最終的には、ダイナミック補正光学系もア
ライメントした後で、軸上と偏向位置での像の解像度を
比較し、解像度、像の歪みにおいて両者に差がないこと
を確認してビームアライメントを完了する。なお、以上
に示したビームアライメント方法は、本発明に係る電子
線露光装置のみならず、あらゆる偏向光学系に使用可能
である。
【0047】使用する偏向器7の数は、多ければ多いほ
ど設計の自由度が増すが、寸法上の制約があり、散乱ア
パーチャ6より感応基板2側に設けられるのは3個が上
限となる場合が多い。よって、偏向器7の個数を増やし
たい場合には、散乱アパーチャ6よりマスク1側に設け
ることが望ましい。
【0048】電子線を偏向し、レンズ軸外での像の転写
を行う場合に生じる偏向収差のうち、偏向像湾曲、偏向
非点、偏向小領域線形歪の各収差に関しては、偏向器を
収差補正器として用いることにより打ち消すことはせ
ず、補正コイル、非点補正コイルを利用して収差補正を
することが発明され、例えば平成10年特許願5965
9号等として特許出願がなされている。
【0049】図2に、このような手段により、偏向像湾
曲、偏向非点、偏向小領域線形歪を補正する機能を有す
る本発明の実施の形態の第2の例を示す。図2におい
て、図1と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明
を省略する。図2において、10は補正コイル、11は
非点補正コイル、12は補正コイル駆動装置、13は非
点補正コイル駆動装置である。
【0050】図2においては、補正コイル10、非点補
正コイル11、補正コイル駆動装置12、非点補正コイ
ル駆動装置13が設けられている点のみが図1に示した
実施の形態と異なっており、その他の部分の作用は同じ
なのでその説明を省略する。図2における実施の形態に
おいては、補正コイル10が3個、非点補正コイルが2
個設けられ、補正コイル駆動装置12及び非点補正コイ
ル駆動装置13は、補正コイル10、非点補正コイル1
1が、偏向像面湾曲、偏向非点、及び、偏向による小領
域回転と倍率のずれ、偏向による小領域直交度と異方的
倍率のずれの各小領域線形歪を打ち消すように、電子線
の偏向位置に応じて、補正コイル10、非点補正コイル
11を駆動する。
【0051】また、電子線の電流値に応じて、空間電荷
効果によって像面位置の光軸方向ずれ、小領域の倍率と
回転ずれ、非点、小領域直交度と異方的倍率ずれが生じ
る。これらのずれ量は、前記偏向収差(偏向像面湾曲、
偏向非点、偏向による小領域回転と倍率のずれ、偏向に
よる小領域直交度と異方的倍率のずれ)と同様に、補正
コイル10、非点補正コイル11を利用して補正するこ
とができる。そこで、前記偏向収差補正に用いた補正コ
イル10及び非点補正コイル11を、空間電荷効果によ
る前記ずれに合わせて、補正コイル駆動装置12及び非
点補正コイル駆動装置13で駆動し、補正することが考
えられる。また、空間電荷補正用に、新たに補正コイ
ル、非点補正コイル及びそれらの駆動装置を別に設けて
もよい。
【0052】
【実施例】図1に示すような電子線光学系を有する電子
線露光装置を設計した。この電子線露光装置において
は、一回の電子線露光範囲(小領域)の感応基板上での
大きさが約0.25mm角程度の正方形かそれに近い長方形
で、転写倍率はほぼ4分の1縮小倍率とした。
【0053】最大偏向距離(レンズ中心軸から2.5mm偏
向)のとき、偏向収差によるぼけが74nm、小領域像の歪
みが6nmであるように設計を行った場合の、各偏向器の
条件を表1に示す。表1において、C1〜C6は、マス
ク側のトロイダル型偏向器でありマスク側から順に付番
されている。P1〜P3は、感応基板側のトロイダル型
偏向器であり、マスク側から順に付番されている。ま
た、偏向器の位置は中心位置を示し、マスク面を0mm、
感応基板面を500mmとした場合のものである。なお、散
乱アパーチャは、400mmの位置に設けられている。ま
た、開き半角は、感応基板上で7[mrad]から9[mrad]の
間(マスク面上では1.75[mrad]から2.25[mrad]の間)の
みに電子線の角度が制限された輪帯照明である。
【0054】本電子光学系の場合、クーロン効果、空間
電子効果によるぼけは、加速電圧100[KeV]、感応基板に
到達する電子線の電流値を20[μA]とした場合、60[nm]
であった。また、偏向収差によるぼけは74[nm]であっ
た。(ここで、感応基板に到達する電子線の電流値が20
[μA]というのは、マスクパターンの開口率を25%とし
たとき、照明電流量Irが80[μA]であることに相当す
る。)したがって、偏向収差によるぼけ74[nm]とクーロ
ン効果、空間電荷効果によるぼけ60[nm]から見積もられ
るトータルのぼけは、(742+6021/2=95[nm]であり、1
00[nm]の解像度を持つ露光装置の電子光学系として十分
な性能を有している。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】以上説明したように、本発明において
は、マスクと散乱アパーチャーの間に6個またはそれ以
上の、主として収差補正に用いられる偏向器を有し、散
乱アパーチャーと感応基板との間に3個またはそれ以上
の、主として収差補正に用いられる偏向器を有している
ので、比較的大きな最大開き半角を持つ光学系で、大き
な偏向量を必要とするものにおいても、十分な設計自由
度を得ることができ、従って、偏向時の発生収差を十分
小さく抑制するような電子光学解が得やすくなる。同時
に実際の電子線露光装置においても、設計に十分近い形
の偏向軌道を設定しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例である電子線露光装
置の転写光学系の概要図である。
【図2】本発明の実施の形態の他の例である電子線露光
装置の転写光学系の概要図である。
【図3】本発明による球面収差低減の原理を説明する図
である。
【図4】従来の光学系置ける球面収差の発生を示す図で
ある。
【図5】開き半角とぼけの関係を示す図である。
【符号の説明】
1…マスク、2…感応基板、3…電子線の光軸、4、5
…転写レンズ、4a、5a…転写レンズのコイル、4
b、5b…転写レンズの磁極、6…偏向器、7…散乱ア
パーチャ、8…レンズ駆動回路、9…偏向器駆動回路、
10…電子線、21…アパーチャ、12…投影レンズ、
23…ガウス像面(近軸光線の結像面)位置、23’…
球面収差が最少になる最適像面位置、24…ウェハ基
板、25…光軸

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子線を用いてマスク上に描かれたパタ
    ーンを感応基板上に転写する電子線露光装置であって、
    マスクと散乱アパーチャーの間に6個またはそれ以上
    の、主として収差補正に用いられる偏向器を有し、散乱
    アパーチャーと感応基板との間に3個またはそれ以上
    の、主として収差補正に用いられる偏向器を有すること
    を特徴とする電子線投影装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の電子線露光装置であっ
    て、全部で9個以上の主として収差補正に用いられる偏
    向器の、電磁偏向器の場合は励磁電流値、静電偏向器の
    場合は電圧値が、偏向時に発生する収差のうち、偏向に
    よる小領域像面の傾斜、偏向コマ収差、偏向による小領
    域内非点隔差、偏向色収差、偏向による小領域2次歪み
    の各々の収差が十分小さくなるように偏向軌道を設定
    し、かつ電子線が散乱アパーチャーの中心を通過し、か
    つ感応基板上の目的の偏向位置に偏向でき、かつ偏向位
    置での電子線の感応基板表面への入射角が十分垂直にな
    るように設定されていることを特徴とする電子線投影装
    置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の電子線露
    光装置であって、マスク面を照明する電子線の開き半角
    を所定値以上、所定値以下に制限する手段を有すること
    を特徴とする電子線投影装置。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の電子線露光装置であっ
    て、マスクを照明する電子線の開き半角分布の最小角度
    αmask-min と最大角度αmask-max が1.5[mrad]から3[m
    rad]の範囲内にあり、かつ、|αmask-max - αmask-min
    | ≦ 0.75[mrad] の関係を満たすように制限されている
    ことを特徴とする電子線照明光学系を有する電子線露光
    装置。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の電子線露光装置であっ
    て、前記マスクを照明する電子線の電流をIillumi
    A]とし、前記マスク面と前記感応基板との距離をL[mm]
    とし、前記を照明する電子線の加速電圧をV[keV]と
    し、前記感応基板面での電子線の開き半角の最大値をα
    wafer-max[mrad]とするとき、次の連立不等式条件 A・La・(Iillumi/4)b/{Vc・(αwafer-max)d}≦40-2.5・(αwafer-max-10) [nm ] …(1) Iillumi≧ 70 [μA] …(2) V≦ 200 [keV] L≧ 300 [mm] …(3) を満足する電子線投影装置を有する電子線露光装置。但
    し、ここでA,a,b,c,dは定数で、61≦A≦81,1.2
    ≦a≦1.4,0.6≦b≦0.85,1.3≦c≦1.6,0.6≦d≦
    0.8であり、かつ、前記電子線投影装置の縮小倍率を1/
    mとするとき、αwafer-max=m・αmask-maxである。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6608313B2 (en) 2000-01-21 2003-08-19 Nikon Corporation Methods and devices for achieving alignment of a beam-propagation axis with a center of an aperture in a charged-particle-beam optical system

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