JP2000100319A - 電界放射型電子源の製造方法 - Google Patents

電界放射型電子源の製造方法

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JP2000100319A
JP2000100319A JP27187698A JP27187698A JP2000100319A JP 2000100319 A JP2000100319 A JP 2000100319A JP 27187698 A JP27187698 A JP 27187698A JP 27187698 A JP27187698 A JP 27187698A JP 2000100319 A JP2000100319 A JP 2000100319A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】電子を安定して高効率で放出できる低コストの
電界放射型電子源の製造方法を提供する。 【解決手段】導電性基板たるn形シリコン基板1の表面
側に急速熱酸化された多孔質ポリシリコン層6を形成
し、急速熱酸化した多孔質ポリシリコン層6上に金属薄
膜たる金薄膜7を形成する。急速熱酸化は急速加熱法に
より行い、条件としては、ランプアニール装置を使用
し、乾燥酸素中で酸化温度を800℃ないし900℃、
酸化時間を30分ないし120分とすることが望まし
い。金薄膜7をn形シリコン基板1に対して正極として
金薄膜7とオーミック電極2との間に電圧を印加するこ
とにより、n形シリコン基板1から急速熱酸化された多
孔質ポリシリコン層6に注入された電子が金薄膜7を通
して放出される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体材料を用い
て電界放射により電子線を放射するようにした電界放射
型電子源の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、電界放射型電子源として、例
えば米国特許3665241号などに開示されているい
わゆるスピント(Spindt)型電極と呼ばれるものがあ
る。このスピント型電極は、微小な三角錐状のエミッタ
チップを多数配置した基板と、エミッタチップの先端部
を露出させる放射孔を有するとともにエミッタチップに
対して絶縁された形で配置されたゲート層とを備え、真
空中にてエミッタチップをゲート層に対して負極として
高電圧を印加することにより、エミッタチップの先端か
ら放射孔を通して電子線を放射するものである。
【0003】しかしながら、スピント型電極は、製造プ
ロセスが複雑であるとともに、多数の三角錐状のエミッ
タチップを精度良く構成することが難しく、例えば平面
発光装置やディスプレイなどへ応用する場合に大面積化
が難しいという問題があった。また、スピント型電極
は、電界がエミッタチップの先端に集中するので、エミ
ッタチップの先端の周りの真空度が低くて残留ガスが存
在するような場合、放射された電子によって残留ガスが
プラスイオンにイオン化され、プラスイオンがエミッタ
チップの先端に衝突するから、エミッタチップの先端が
ダメージ(例えば、イオン衝撃による損傷)を受け、放
射される電子の電流密度や効率などが不安定になった
り、エミッタチップの寿命が短くなってしまうという問
題が生じる。したがって、スピント型電極では、この種
の問題の発生を防ぐために、高真空(10-5Pa〜10
-6Pa)で使用する必要があり、コストが高くなるとと
もに、取扱いが面倒になるという不具合があった。
【0004】この種の不具合を改善するために、MIM
(Metal Insulator Metal)方式やMOS(Metal Oxid
e Semiconductor)型の電界放射型電子源が提案されて
いる。前者は金属−絶縁膜−金属、後者は金属−酸化膜
−半導体の積層構造を有する平面型の電界放射型電子源
である。しかしながら、このタイプの電界放射型電子源
において電子の放射効率を高めるためには(多くの電子
を放射させるためには)、上記絶縁膜や上記酸化膜の膜
厚を薄くする必要があるが、上記絶縁膜や上記酸化膜の
膜厚を薄くしすぎると、上記積層構造の上下の電極間に
電圧を印加した時に絶縁破壊を起こす恐れがあり、この
ような絶縁破壊を防止するためには上記絶縁膜や上記酸
化膜の膜厚の薄膜化に制約があるので、電子放出効率
(引き出し効率)をあまり高くできないという不具合が
あった。
【0005】また、近年では、特開平8−250766
号公報に開示されているように、シリコン基板などの単
結晶の半導体基板を用い、その半導体基板の一表面を陽
極酸化することにより多孔質半導体層(例えば、ポーラ
スシリコン層)を形成して、その多孔質半導体層上に金
属薄膜を形成し、半導体基板と金属薄膜との間に電圧を
印加して電子を放射させるように構成した電界放射型電
子源(半導体冷電子放出素子)が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
特開平8−250766号公報に記載の電界放射型電子
源では、基板が半導体基板に限られるので、大面積化や
コストダウン化が難しいという不具合がある。また、特
開平8−250766号公報に記載の電界放射型電子源
では電子放出時にいわゆるポッピング現象が生じやす
く、放出電子量にむらが起こりやすいので、平面発光装
置やディスプレイ装置などに応用すると、発光むらがで
きてしまうという不具合がある。
【0007】本発明は上記事由に鑑みて為されたもので
あり、その目的は、電子を安定して高効率で放出できる
低コストの電界放射型電子源の製造方法を提供すること
にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、上記
目的を達成するために、導電性基板と、導電性基板の一
表面側に形成された酸化した多孔質のポリシリコン層
と、該多孔質のポリシリコン層上に形成された金属薄膜
とを備え、金属薄膜を導電性基板に対して正極として電
圧を印加することにより金属薄膜を通して電子線を放射
する電界放射型電子源の製造方法であって、導電性基板
上にポリシリコン層を形成し、ポリシリコン層を多孔質
化し、多孔質化されたポリシリコン層を急速加熱法によ
り酸化し、酸化された多孔質のポリシリコン層上に金属
薄膜よりなる電極を形成することを特徴とし、従来のス
ピント型電極のような複雑な構造や製造プロセスを必要
とせず、比較的簡単な製造プロセスによって金属薄膜の
表面から金属薄膜にほぼ直交する方向に電子を安定して
高効率で放出できる低コストの電界放射型電子源を提供
することができ、また、大面積の電界放射型電子源を提
供することができる。したがって、請求項1の発明の製
造方法で製造された電界放射型電子源を利用したディス
プレイ装置では、電子収束レンズを設ける必要がなく、
ディプレイ装置の高精細化や多画素化を容易に実現する
ことができる。また、請求項1の発明の製造方法で製造
された電界放射型電子源を利用した平面発光装置では、
収束電極を設ける必要がなく、構造が簡単になるととも
に薄型化を容易に実現することができる。また、請求項
1の発明の製造方法で製造された電界放射型電子源を冷
陰極とした固体真空デバイスでは、従来の熱電子放射を
利用した熱陰極を有する固体真空デバイスのように加熱
手段を設ける必要がなく、小型化が可能になるとともに
陰極物質の蒸発や劣化を抑制することができ、長寿命化
を図ることができる。
【0009】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、上記急速加熱法による酸化にあたっては、ランプア
ニール装置を使用し、乾燥酸素中で酸化温度を800℃
ないし900℃、酸化時間を30分ないし120分とし
たことを特徴とし、望ましい実施態様である。
【0010】
【発明の実施の形態】図1に電界放射型電子源10の概
略構成図を、図2および図3に電界放射型電子源10の
製造方法における主要工程断面図を示す。なお、本実施
形態では、導電性基板としてn形シリコン基板1(抵抗
率が略0.1Ωcmの(100)基板)を用いている。
【0011】電界放射型電子源10は、図1に示すよう
に、n形シリコン基板1の主表面上に急速熱酸化された
ポリシリコン層5が形成され、該ポリシリコン層5上に
急速熱酸化された多孔質ポリシリコン層6が形成され、
該多孔質ポリシリコン層6上に金属薄膜たる金薄膜7が
形成されている。また、n形シリコン基板1の裏面には
オーミック電極2が形成されている。ここに、急速熱酸
化された多孔質ポリシリコン層6は、多孔度の高い急速
熱酸化された多孔質ポリシリコン層6bと多孔度の低い
急速熱酸化されたポリシリコン層6aとが交互に積層さ
れた層により構成されている。
【0012】ところで、本実施形態では、導電性基板と
してn形シリコン基板1を用いているが、導電性基板
は、電界放射型電子源10の負極を構成するとともに真
空中において上述の熱酸化された多孔質ポリシリコン層
6を支持し、なお且つ、多孔質ポリシリコン層6へ電子
を注入するものである。したがって、導電性基板は、電
界放射型電子源10の負極を構成し多孔質ポリシリコン
層6を支持することができればよいので、n形シリコン
基板1に限定されるものではなく、クロムなどの金属基
板であってもよいし、ガラスなどの基板の一表面に導電
性膜を形成したものであってもよい。ガラス基板の一表
面に導電性膜を形成した基板を用いる場合には、半導体
基板を用いる場合に比べて、電子源の大面積化および低
コスト化が可能になる。
【0013】また、上述の熱酸化された多孔質ポリシリ
コン層6は、導電性基板と金属薄膜との間に電圧を印加
したときに電子が注入される層である。
【0014】また、本実施形態においては、金属薄膜と
して金薄膜7を用いているが、金属薄膜は、電界放射型
電子源10の正極を構成するものであり、熱酸化された
多孔質ポリシリコン層6に電界を印加するものである。
この電界の印加により熱酸化された多孔質ポリシリコン
層6の表面に到達した電子はトンネル効果によって金属
薄膜の表面から放出される。したがって、導電性基板と
金属薄膜との間に印加する直流電圧によって得られる電
子のエネルギから金属薄膜の仕事関数を差し引いたエネ
ルギが放出される電子の理想的なエネルギとなるので、
金属薄膜の仕事関数は小さいほど望ましい。なお、本実
施形態では、金属薄膜の材料として金を用いているが、
金属薄膜の材料は金に限定されるものではなく、仕事関
数の小さな金属であればよく、例えば、アルミニウム、
クロム、タングステン、ニッケル、白金などを用いても
よい。ここに、金の仕事関数は5.10eV、アルミニ
ウムの仕事関数は4.28eV、クロムの仕事関数は
4.50eV、タングステンの仕事関数は4.55e
V、ニッケルの仕事関数は5.15eV、白金の仕事関
数は5.65eVである。
【0015】以下、製造方法を図2を参照しながら説明
する。
【0016】まず、n形シリコン基板1の裏面にオーミ
ック電極2を形成した後、n形シリコン基板1の表面に
膜厚が略1.5μmのノンドープのポリシリコン層3を
形成することにより図2(a)に示すような構造が得ら
れる。ポリシリコン層3の成膜は、LPCVD法により
行い、成膜条件は、真空度を20Pa、基板温度を64
0℃、モノシランガスの流量を600sccmとした。
なお、ポリシリコン層3の成膜は、導電性基板が半導体
基板の場合にはLPCVD法やスパッタ法により行って
もよいし、あるいは、プラズマCVD法によってアモル
ファスシリコンを成膜した後にアニール処理を行うこと
により結晶化させて成膜してもよい。また、導電性基板
がガラス基板に導電性薄膜を形成した基板の場合には、
CVD法により導電性薄膜上にアモルファスシリコンを
成膜した後にエキシマレーザでアニールすることによ
り、ポリシリコン層を形成してもよい。また、導電性薄
膜上にポリシリコン層を形成する方法はCVD法に限定
されるものではなく、例えばCGS(Continuous Grai
n Silicon)法や触媒CVD法などを用いてもよい。ま
た、本実施形態では、金属薄膜を蒸着により形成してい
るが、金属薄膜の形成方法は蒸着に限定されるものでは
なく、例えばスパッタ法を用いてもよい。
【0017】ノンドープのポリシリコン層3を形成した
後、55wt%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略
1:1で混合した混合液よりなる電解液を用い、白金電
極(図示せず)を負極、n形シリコン基板1(オーミッ
ク電極2)を正極として、ポリシリコン層3に光照射を
行いながら定電流で陽極酸化処理を行う。ここにおい
て、陽極酸化処理は次の手順で行った。陽極酸化処理の
条件として、電流密度を2.5mA/cm2一定、陽極
酸化時間を4秒とする第1の条件と、電流密度を20m
A/cm2一定、陽極酸化時間を5秒とする第2の条件
とを設定し、図4に示すように、第1の条件での陽極酸
化処理と第2の条件での陽極酸化処理とを交互に3回繰
り返して行った。但し、陽極酸化中には500Wのタン
グステンランプにより表面に光を照射することとした。
ここで、第1の条件での陽極酸化が終了した時点では、
ポリシリコン層3の表面側に多孔度の低い多孔質ポリシ
リコン層4a(以下、PPS層4aと称す)が形成され
図2(b)に示すような構造が得られる。その後、第2
の条件での陽極酸化が終了した時点では、上記多孔質ポ
リシリコン層4aよりもn形シリコン基板1側に、PP
S層4aよりも多孔度の高い多孔質ポリシリコン層4b
(以下、PPS層4bと称す)が形成され図2(c)に
示すような構造が得られる。しかして、第1の条件、第
2の条件での陽極酸化が3回ずつ終了した時点では、P
PS層4aとPPS層4bとが交互に積層された図3
(a)に示す構造が得られる。なお、本実施形態では、
PPS層4aとPPS層4bとの積層構造よりなる多孔
質ポリシリコン層の膜厚は略1μmであった。また、本
実施形態では、ポリシリコン層3の一部を多孔質化して
いるが、ポリシリコン層3全部を多孔質化してもよい。
【0018】次に、急速熱酸化(RTO:Rapid Therm
al Oxidation)技術(急速加熱法)によって全てのP
PS層4a,4b及びポリシリコン層3の急速熱酸化を
行うことにより図3(b)に示す構造が得られる。ここ
に、図3(b)における5は急速熱酸化されたポリシリ
コン層を、6aは多孔度の低い急速熱酸化された多孔質
ポリシリコン層(以下、RTO−PPS層6aと称す)
を、6bは多孔度の高い急速熱酸化された多孔質ポリシ
リコン層(以下、RTO−PPS層6bと称す)を示
す。急速加熱法の条件としては、ランプアニール装置を
使用し、乾燥酸素中で酸化温度を800℃ないし900
℃、酸化時間を30分ないし120分とした。なお、本
実施形態では、PPS層4a,4b及びポリシリコン層
3の酸化を急速熱酸化により行っているので、数秒で酸
化温度まで昇温することが可能であり、通常の炉心管タ
イプの酸化装置で問題となる入炉時の巻き込み酸化を抑
制することができる。
【0019】その後、最上層のRTO−PPS層6a上
に金属薄膜たる金薄膜7を例えば蒸着により形成するこ
とによって、図3(c)に示す構造の電界放射型電子源
10が得られる。ここに、本実施形態では、金薄膜7の
膜厚を略10nmとしたが、この膜厚は特に限定するも
のではない。なお、電界放射型電子源10は金薄膜7を
電極の正極(アノード)とし、オーミック電極2を負極
(カソード)とするダイオードが構成される。また、本
実施形態では、金属薄膜を蒸着により形成しているが、
金属薄膜の形成方法は蒸着に限定されるものではなく、
例えばスパッタ法を用いてもよい。
【0020】以下、上述の急速加熱法による酸化時間を
60分として製造した電界放射型電子源10の特性につ
いて説明する。
【0021】上述の電界放射型電子源10を真空チャン
バ(図示せず)内に導入して、図5に示すように金薄膜
7と対向する位置にコレクタ電極21(放射電子収集電
極)を配置し、真空チャンバ内の真空度を約5×10-5
Paとして、金薄膜7とオーミック電極2との間に直流
電圧Vpsを印加するとともに、コレクタ電極21と金薄
膜7との間に直流電圧Vcを印加することによって、金
薄膜7とオーミック電極2との間に流れるダイオード電
流Ipsと、電界放射型電子源10から金薄膜7を通して
放射される電子e-(なお、図5中の一点鎖線は放射電
子流を示す)によりコレクタ電極21と金薄膜7との間
に流れる放出電子電流Ieとを測定した結果を図6に示
す。ここに、金薄膜7はオーミック電極2(つまり、n
形シリコン基板1)に対して正極として直流電圧Vpsを
印加し、コレクタ電極21は金薄膜7に対して正極とし
て直流電圧Vcを印加している。
【0022】図6の横軸は直流電圧Vpsの値を、縦軸は
電流密度を示し、同図中のイ(○)がダイオード電流I
psを、同図中のロ(●)が放出電子電流Ieを示す。な
お、直流電圧Vcは100V一定とした。
【0023】図6からも分かるように、放出電子電流I
eは直流電圧Vpsが正のときのみ観測され、直流電圧V
psの値を増加させるにつれてダイオード電流Ips及び放
出電子電流Ieとも増加した。例えば、直流電圧Vpsを
15Vとしたとき、ダイオード電流Ipsの電流密度は略
1mA/cm2、放出電子電流Ieの電流密度は略4μA
/cm2であり、この放出電子電流Ieの値は従来例で説
明した単結晶シリコン基板の表面を多孔質化することに
より実現される電界放射型電子源(特開平8−2507
66号公報参照)に比べて大きな値であり(例えば、電
子情報通信学会ED96−141,P41−46によれ
ば、直流電圧Vpsを15Vとしたとき、ダイオード電流
Ipsの電流密度は略40mA/cm2、放出電子電流Ie
の電流密度は略1μA/cm2である)、本実施形態の
電界放射型電子源の電子放出効率が高いことが分かる。
【0024】図7に、この放出電子電流Ieと直流電圧
Vpsとに関するデータをFowler−Nordhei
m(ファウラ−ノルドハイム)プロットした結果を示
す。図7より、各データが直線上にのることから、この
放出電子電流Ieは量子的なトンネル効果に基づく電子
の放出による電流であると推考される。
【0025】図8は本実施形態の電界放射型電子源10
のダイオード電流Ipsおよび放出電子電流Ieそれぞれ
の経時変化を示すグラフであって、横軸が時間、縦軸が
電流密度であり、同図中のイがダイオード電流Ipsを、
同図中のロが放出電子電流Ieを示す。なお、図8は、
直流電圧Vpsを21V一定、直流電圧Vcを100V一
定とした場合の結果である。図8から分かるように、ダ
イオード電流Ips、放出電子電流Ie両方ともポッピン
グ現象は観測されず、時間が経過しても略一定のダイオ
ード電流Ips及び放出電子電流Ieを維持することがで
きる。このような放出電子電流Ieの経時変化の少ない
安定した特性は、従来のMIM方式や単結晶シリコン基
板の表面を多孔質化することにより実現される電界放射
型電子源では得られない特性であり、本発明の構造を採
用することにより得られる特性である。
【0026】次に、急速加熱法による急速熱酸化(RT
O)の酸化時間を60分、直流電圧Vpsを16V一定と
して、電子放出効率の酸化温度(熱酸化温度)依存性を
調べた結果を図9を参照して説明する。図9の横軸は熱
酸化温度、縦軸は電子放出効率(Ie/Ips×100)
を示す。図9から明らかなように、熱酸化温度を600
℃〜1000℃の範囲で100℃ずつ変化させることに
より、電子放出効率が変化し、600℃〜900℃の範
囲では熱酸化温度の上昇とともに電子放出効率が高くな
るが1000℃では電子放出効率が低くなり、熱酸化温
度を800℃、900℃とした場合に、それぞれ約1%
という高い電子放出効率が得られていることが分かる。
この結果は、熱酸化温度を1000℃まで上昇させる
と、熱酸化された多孔質ポリシリコン層6を構成する結
晶粒(多結晶柱)の粒径が大きくなりすぎるからである
と考えられ、熱酸化温度を800℃よりも低くすると熱
酸化の速度が低下し熱酸化が不十分になるからであると
考えられる。したがって、熱酸化温度としては800℃
ないし900℃とすることが望ましい。
【0027】次に、図9において最も高い電子放出効率
が得られた熱酸化温度900℃に関して(つまり、熱酸
化温度を900℃一定として)、酸化時間に対する電子
放出効率の直流電圧Vps依存性を調べた結果を図10を
参照して説明する。図10の横軸は電圧Vps、縦軸は電
子放出効率(Ie/Ips×100)を示し、同図中の○
は酸化時間を10分とした場合、●は30分とした場
合、■は60分とした場合、△は90分とした場合、◆
は120分とした場合、▼は180分とした場合をそれ
ぞれ示す。図10から明らかなように、酸化時間により
電子放出効率が変化しているが、酸化時間を30分、6
0分、90分、120分にすることにより、電圧Vpsが
10Vないし25Vの範囲で1%という高い電子放出効
率が得られていることが分かる。特に、酸化時間を90
分としたものでは、電圧Vpsを18Vとしたときに約4
%という非常に高い電子放出効率が得られた。なお、酸
化時間を10分としたもの、180分としたものでも約
0.1%程度の電子放出効率が得られているが、熱酸化
温度が900℃の場合には、酸化時間を30分ないし1
20分とすることが望ましい。
【0028】以上説明した図9および図10の結果か
ら、急速加熱法による酸化にあたっては、約1%以上の
電子放出効率を得るためには、酸化温度を800℃ない
し900℃、酸化時間を30分ないし120分とするこ
とが望ましい。
【0029】本実施形態では、導電性基板としてn形シ
リコン基板1(抵抗率が略0.1Ωcmの(100)基
板)を用いているが、導電性基板はn形シリコン基板に
限定されるものではなく、例えば、金属基板や、ガラス
基板などに透明導電性薄膜(例えば、ITO:Indium
Tin Oxide)や白金やクロムなどの導電性膜を形成した
基板などを用いてもよく、n形シリコン基板などの半導
体基板を用いる場合に比べて大面積化及び低コスト化が
可能になる。
【0030】
【発明の効果】請求項1の発明は、導電性基板と、導電
性基板の一表面側に形成された酸化した多孔質のポリシ
リコン層と、該多孔質のポリシリコン層上に形成された
金属薄膜とを備え、金属薄膜を導電性基板に対して正極
として電圧を印加することにより金属薄膜を通して電子
線を放射する電界放射型電子源の製造方法であって、導
電性基板上にポリシリコン層を形成し、ポリシリコン層
を多孔質化し、多孔質化されたポリシリコン層を急速加
熱法により酸化し、酸化された多孔質のポリシリコン層
上に金属薄膜よりなる電極を形成するので、従来のスピ
ント型電極のような複雑な構造や製造プロセスを必要と
せず、比較的簡単な製造プロセスによって金属薄膜の表
面から金属薄膜にほぼ直交する方向に電子を安定して高
効率で放出できる低コストの電界放射型電子源を提供す
ることができ、また、大面積の電界放射型電子源を提供
することができるという効果がある。したがって、請求
項1の発明の製造方法で製造された電界放射型電子源を
利用したディスプレイ装置では、電子収束レンズを設け
る必要がなく、ディプレイ装置の高精細化や多画素化を
容易に実現することができる。また、請求項1の発明の
製造方法で製造された電界放射型電子源を利用した平面
発光装置では、収束電極を設ける必要がなく、構造が簡
単になるとともに薄型化を容易に実現することができ
る。また、請求項1の発明の製造方法で製造された電界
放射型電子源を冷陰極とした固体真空デバイスでは、従
来の熱電子放射を利用した熱陰極を有する固体真空デバ
イスのように加熱手段を設ける必要がなく、小型化が可
能になるとともに陰極物質の蒸発や劣化を抑制すること
ができ、長寿命化を図ることができる。
【0031】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、上記急速加熱法による酸化にあたっては、ランプア
ニール装置を使用し、乾燥酸素中で酸化温度を800℃
ないし900℃、酸化時間を30分ないし120分とし
たので、より高効率の電子放出効率を得ることができる
という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態を示す断面図である。
【図2】同上の製造プロセスを説明するための主要工程
断面図である。
【図3】同上の製造プロセスを説明するための主要工程
断面図である。
【図4】同上の陽極酸化処理の条件説明図である。
【図5】同上の放射電子の測定原理の説明図である。
【図6】同上の電圧電流特性図である。
【図7】図5のデータをFowler−Nordhei
mプロットしたグラフである。
【図8】同上の電流の経時変化を示すグラフである。
【図9】同上の電子放出効率の酸化温度依存性を示すグ
ラフである。
【図10】同上の酸化時間をパラメータとした電子放出
効率の電圧依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 n形シリコン基板 2 オーミック電極 5 急速熱酸化されたポリシリコン層 6 急速熱酸化された多孔質ポリシリコン層 7 金薄膜 10 電界放射型電子源

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基板と、導電性基板の一表面側に
    形成された酸化した多孔質のポリシリコン層と、該多孔
    質のポリシリコン層上に形成された金属薄膜とを備え、
    金属薄膜を導電性基板に対して正極として電圧を印加す
    ることにより金属薄膜を通して電子線を放射する電界放
    射型電子源の製造方法であって、導電性基板上にポリシ
    リコン層を形成し、ポリシリコン層を多孔質化し、多孔
    質化されたポリシリコン層を急速加熱法により酸化し、
    酸化された多孔質のポリシリコン層上に金属薄膜よりな
    る電極を形成することを特徴とする電界放射型電子源の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 上記急速加熱法による酸化にあたって
    は、ランプアニール装置を使用し、乾燥酸素中で酸化温
    度を800℃ないし900℃、酸化時間を30分ないし
    120分としたことを特徴とする請求項1記載の電界放
    射型電子源の製造方法。
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JP2006120410A (ja) * 2004-10-20 2006-05-11 Canon Anelva Corp 電子ビーム発生装置

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