JP2000096218A - 真空成膜装置 - Google Patents

真空成膜装置

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JP2000096218A
JP2000096218A JP10272077A JP27207798A JP2000096218A JP 2000096218 A JP2000096218 A JP 2000096218A JP 10272077 A JP10272077 A JP 10272077A JP 27207798 A JP27207798 A JP 27207798A JP 2000096218 A JP2000096218 A JP 2000096218A
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Yoji Iwamoto
本 要 司 岩
Ryoichi Daito
東 良 一 大
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基板状に形成される薄膜の性状を予測監視す
ることができる真空成膜装置を提供する。 【解決手段】 プラズマガン11により真空チャンバ1
2内に向けてプラズマビーム22を生成する。このプラ
ズマガン11の出口部に向けて短管部12Aが突出し、
この短管部12Aを包囲するように収束コイル18が設
けられている。プラズマビーム22によりるつぼ19内
の成膜材料20が蒸発し、蒸発した成膜材料20により
基板13上に薄膜が形成される。真空チャンバ12内の
励起された物体から発光される発光光が発光モニタ70
により監視され、発光モニタ70からの信号により制御
装置76によりプラズマガン11の放電電源14が制御
される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、成膜材料からなる
薄膜を被成膜体上に形成する真空成膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より真空成膜装置として、基板が配
置された真空チャンバと、プラズマビームを生成し、こ
のプラズマビームを真空チャンバ内に送るプラズマガン
と、プラズマガンから生成されたプラズマビームを収束
させる収束コイルとを備えたものが知られている。
【0003】このような真空成膜装置において、プラズ
マガンから生成されたプラズマビームは真空チャンバ内
に送られ、真空チャンバ内に設置されたるつぼ内の成膜
材料に照射する。プラズマビームが照射した成膜材料は
蒸発した後、基板上に蒸着して薄膜を形成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで従来の真空成
膜装置により薄膜を形成する場合、例えば薄膜の厚み
等、薄膜の性状は真空チャンバ内の励起された物体の状
態に大きく影響を受けるが、真空チャンバ内の物体の状
態を監視する方法はまだ確立していないのが実情であ
る。
【0005】本発明はこのような点を考慮してなされた
ものであり、真空チャンバ内の励起された物体の状態を
監視して薄膜の性状を適切に制御することができる真空
成膜装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、被成膜体が配
置されるとともに接地された真空チャンバと、真空チャ
ンバ内に向けてプラズマビームを生成する圧力勾配型の
プラズマ生成装置と、プラズマ生成装置により生成した
プラズマビームを磁場により軌道および/あるいは形状
を制御させて成膜材料に照射させ、この成膜材料を被成
膜体に蒸着させて薄膜を形成する永久磁石及び収束コイ
ルを用いる制御手段とを備え、真空チャンバ内の励起さ
れた物体から生じる発光光を分析する発光モニタを設け
たことを特徴とする真空成膜装置である。
【0007】本発明によれば、被成膜体に形成される薄
膜の性状に大きく影響を与える真空チャンバ内の物体の
状態を発光モニタにより適切に監視することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態について
説明する。図1および図2は本発明の一実施の形態を示
す図である。
【0009】まず図2により、本発明による真空成膜装
置10が組込まれたシステム全体の概略について説明す
る。まずテーブル51上に設けられた基板(被成膜体)
13がロードロック室52内に搬送され、このロードロ
ック室52内で加熱装置52aにより加熱されるように
なっている。この場合、ロードロック室52は、真空ポ
ンプ53により吸引される。
【0010】ロードロック室52内の基板13は、次に
真空成膜装置10の上方部分54に搬送され、この真空
成膜装置10の上方部分54内において、搬送される基
板13の下面に薄膜が形成されるようになっている。な
お、基板13の搬送速度は搬送速度計54aによって測
定される。また真空成膜装置10は真空チャンバ12
と、プラズマガン11とを備えている。さらに真空チャ
ンバ12には真空ポンプ54によって吸引され、さらに
真空チャンバ12には質量分析計55が接続されてい
る。
【0011】次に図1により真空成膜装置10について
詳述する。真空成膜装置10は、上述のように真空ポン
プ54により吸引されるとともに接地された真空チャン
バ12と、真空チャンバ12に短管部12Aを介して取
付けられるとともに、プラズマビーム22を生成し、こ
のプラズマビーム22を真空チャンバ12内に供給する
プラズマガン11とを備えている。また真空チャンバ1
0の上方部分54には、ロードロック室52から搬送さ
れた基板13が配設されている。この場合、基板13
は、例えばソーダライムガラス(AS1400×100
0×2.8t 旭硝子(株))のようなガラス材からな
り、PDPパネルを作製するために用いられる。
【0012】図1に示すようにプラズマガン11は、放
電電源14のマイナス側に接続された環状の陰極15
と、放電電源14のプラス側に抵抗を介して接続された
環状の第1中間電極16および第2中間電極17とを有
し、陰極15側から放電ガス(Ar)が供給され、この
放電ガスをプラズマ状態にして第2中間電極17から真
空チャンバ12内に向けて流出させるようになってい
る。
【0013】また、真空チャンバ12と第2中間電極1
7との間の短管部12Aの外側には、この短管部12A
を包囲するように収束コイル18が設けられている。こ
の収束コイル18はプラズマビーム22を磁場により起
動および/あるいは形状を制御するものであり、このよ
うな制御としてはプラズマビーム22の収束、平らな形
状にすること、およびるつぼ内に引込む等の制御が考え
られる。また真空チャンバ12内の下部には、放電電源
14のプラス側に接続された導電性材料からなるるつぼ
19が配置されており、このるつぼ19上に薄膜の材料
となる成膜材料20が収納されている。さらに、るつぼ
19の内部にはるつぼ用磁石21が設けられている。こ
のような成膜材料20としては、酸化マグネシウム(M
gO)、酸化インジウムスズ(ITO)、および酸化ケ
イ素(SiO)が用いられる。又、るつぼ19は真空チ
ャンバ12およびアース60に対して電気的に浮遊状態
となっている。
【0014】また図1に示すように、短管部12A内に
プラズマガン11の出口部から絶縁管1が突設され、こ
の絶縁管1はプラズマビーム22の周囲を取囲み、プラ
ズマガン11から電気的に浮遊状態となっている。また
真空チャンバ12に連結された短管部12A内に、絶縁
管1の外周側を取巻くとともに、放電電源14のプラス
側に接続され、プラズマガン11の出口部よりも高い電
位状態となる電子帰還電極2が設けられている。なお、
前記絶縁管1としては、たとえば、セラミック製短管が
採用される。
【0015】さらにまた、真空チャンバ12の内面に
は、真空チャンバ12から電気的に浮遊状態となる防着
板40が設けられている。この防着板40はSUS板か
らなり、後述するプラズマビーム2が成膜材料20に照
射した場合に生じる反射電子流3が真空チャンバ12へ
帰還して接地されることを防止するものである。なお、
防着板40を設ける代わりに、真空チャンバ12内面に
反射電子流が真空チャンバ12へ帰還することを防止す
るための絶縁コーティング膜(図示せず)を設けてもよ
い。
【0016】また真空チャンバ12内には、基板13近
傍に基板13上に形成される薄膜の形成速度を測定する
成膜速度計41が設けられ、また成膜速度計41の下方
には真空チャンバ12内の真空度および成膜真空度を各
々測定する真空計42が設けられている。さらに、真空
チャンバ12内のるつぼ19近傍には、酸素供給管43
が設けられている。
【0017】さらに放電電源14には、プラズマガン1
1の電流値および電圧値を各々測定するプラズマガン電
流計45およびプラズマガン電圧計46が接続され、ま
た電子帰還電極2には電子帰還電極電流を測定する電子
帰還電極電流計47が接続されている。さらにまた真空
チャンバ12とアース60との間には、真空チャンバ1
2からの接地電流を測定する接地電流計48が設けられ
ている。
【0018】なお、上述したプラズマガン電流計45、
プラズマガン電圧計46、電子帰還電極電流計47、接
地電流計48、成膜速度計41、真空計42および搬送
速度計54aからの測定値は、測定値収集ユニット44
内に収集され、この測定値収集ユニット44において、
上述した測定値を一括して収納し、成膜工程を適切に管
理することができるようになっている。
【0019】また図1に示すように、真空チャンバ12
に集光装置71が取り付けられており、この集光装置7
1に光ファイバ72を介して発光モニタ70が接続され
ている。発光モニタ70は真空チャンバ12内において
励起された物体、例えば、原子、分子、イオン、ラジカ
ル等から発光される発光光を分析するものであり、その
内部にグレーティング74、反射鏡75およびCCDカ
メラ73を有している。また発光モニタ70のCCDカ
メラ73からの信号は制御装置76に送られ、この制御
装置76によって放電電源14を調節してプラズマガン
11のプラズマ生成強度を調整するようになっている。
【0020】例えばるつぼ19内に成膜材料20として
MgOを収納し、基板13上にMgOの薄膜を形成する
場合、Ar、O2 およびMgからの発光光の強度を発光
モニタ70が監視して、発光モニタ70からの信号によ
り制御装置76によって放電電源14を調節してプラズ
マガン11のプラズマ生成強度を調整することにより、
基板13上に所定性状のMgOの薄膜を形成することが
できる。
【0021】次にこのような構成からなる本実施の形態
の作用について説明する。
【0022】まず予め、るつぼ19内に例えばMgOの
ペレットからなる成膜材料20が収納される。次に放電
電源14によってプラズマガン11が作動して、プラズ
マガン11の第2中間電極17から成膜材料20に向け
てプラズマビーム22が形成され、プラズマビーム22
が成膜材料20に照射される。この場合、るつぼ19内
の成膜材料20が蒸発し、蒸発した成膜材料20はイオ
ン化して基板13の下面に蒸着し、基板13の下面にM
gOの薄膜が形成される。この間、プラズマビーム22
に対して、収束コイル18はプラズマビーム22の横断
面を収縮させる作用を行ない、またるつぼ用磁石21は
プラズマビーム22の焦点合わせおよびプラズマビーム
22を曲げさせる作用を行なう。また、プラズマビーム
22がるつぼ19内の成膜材料20に照射され、成膜材
料20が蒸発する際、同時に酸素供給管43から蒸発す
る成膜材料(MgO)20に対して酸素を供給し、蒸発
するMgOの酸素濃度を高める。
【0023】一般に基板13となるPDPパネル用のガ
ラス板には、予めAg層からなる導電層が形成され、こ
のAg層を囲んでITO層および誘電層(PBO2 層)
が形成されている。この場合、PDPパネル用のガラス
板に酸素リッチのMgO膜を形成することにより、ガラ
ス板に予め形成されたAg層がMgO膜側へ拡散するこ
とを防止することができ、Ag層の拡散により生じる黄
変を防止することができる。このようにして基板13上
にMgO膜を形成することにより、PDPパネルを作製
することができる。
【0024】ところでプラズマビーム22がるつぼ19
内の成膜材料20に照射されると、るつぼ19は真空チ
ャンバ12およびアース60に対して電気的に浮遊状態
となっているので、プラズマビーム22が成膜材料20
から反射して反射電子流3が生じる。この場合、真空チ
ャンバ12内面には真空チャンバ12から電気的に浮遊
する防着板40が設けられているので、防着板40によ
り反射電子流3の真空チャンバ12側への帰還が妨げら
れる。このため大部分の反射電子流3をプラズマビーム
22の外側を通して電子帰還電極2側へ確実に帰還させ
ることができる。
【0025】次に反射電子流3の流れについてさらに詳
述する。図11に示すように、電子帰還電極2はるつぼ
19から離れた位置に設けられているため、るつぼ19
上から蒸発した成膜材料20が電子帰還電極2に付着し
にくくなっている。また、プラズマガン11から出たプ
ラズマビーム22と電子帰還電極2との間に両者を遮る
絶縁管1が設けられているので、このプラズマビーム2
2が電子帰還電極2に入射して、陰極15と電子帰還電
極2との間で異常放電が発生するのを防止するようにな
っている。このため、反射電子流3はプラズマビーム2
2の外側の、プラズマビーム22とは分離した経路に沿
って電子帰還電極2まで延びて形成され、プラズマビー
ム22が連続的かつ安定して持続される。この持続時間
は絶縁管1および電子帰還電極2を設けない場合に比し
て倍以上となり、飛躍的に向上することが確認されてい
る。また、絶縁管1を設けて、異常放電の発生を防止し
て、プラズマビーム22の電子帰還電極2への流れ込み
による電力ロスを減少させるようにした結果、プラズマ
ガン11から照射するプラズマビーム22が同一の場
合、約20%だけ成膜速度(材料蒸発量)が向上した。
さらに、電子帰還電極2を収束コイル18に近い位置に
設けることにより装置全体が、小型化される。
【0026】この間、真空チャンバ12内において励起
された物体の発光光が集光装置71から光ファイバ72
を経て発光モニタ70へ送られ、この発光モニタ70の
CCDカメラ73により撮像されて監視される。真空チ
ャンバ12内において励起される物体としては、例えば
放電ガスであるAr、酸素供給管43から供給されるO
2 、成膜材料20から蒸発するMg等が考えられる。
【0027】発光モニタ70は真空チャンバ12内のA
r、O2 、Mg等から発光される発光光の強度(発光強
度)を監視し、これらの情報を制御装置76へ送る。制
御装置76は発光モニタ70からの発光光の強度に基づ
いて放電電源14を調節してプラズマガン11のプラズ
マ生成強度を調整し、基板13上に所定性状のMgOの
薄膜を形成する。
【0028】制御装置76の作用を更に図16および図
17により説明する。ここで、図16は、ITO膜成膜
時の投入電力と薄膜の形成速度との関係、および投入電
力とIn(インジウム)発光強度(λ=410.3n
m;モニターにより観測)との関係を示す図である。
【0029】図16に示すように、投入電力と薄膜の形
成速度との関係、および投入電力と発光強度との関係は
比例関係となっている。
【0030】図17は、図16に示す関係を薄膜の形成
速度とIn(インジウム)発光強度(λ=410.3n
m;モニターにより観測)との関係に関連して整理した
ものである。
【0031】図17に示すように、発光強度と薄膜の形
成速度との関係は一次関数式として表すことができ、図
17に示す関係式を用いて発光強度から薄膜の形成速度
を求めることができる。
【0032】図1において、薄膜の膜厚は水晶振動子を
用いた成膜速度計41によりモニタリングをしている
が、水晶振動子はプラズマの影響を受け易く、振動子が
短時間で消耗してしまうことも考えられる。
【0033】これに対して、発光強度と薄膜の形成速度
との関係式、すなわち蒸発物質の主要元素の発光のひと
つ(ここではインジウムの波長λ=410.3nm)に
注目し、予め発光強度と薄膜の形成速度との関係式を求
め(図17)、この関係式を予め制御装置76に内蔵し
ておく。制御装置76は発光モニタ70からの発光光の
強度に基づいて、図17に示す関係式を用いて薄膜の形
成速度を求める。次に制御装置76はこのようにして求
めた薄膜の形成速度に基づいて放電電源14を調節す
る。
【0034】なお、このように発光強度により薄膜の膜
厚、薄膜の形成速度を制御することは、他のプラズマプ
ロセス、例えば、イオンプレーティング、プラズマCV
D,スパッタリング等に応用することが可能である。
【0035】るつぼ19が真空チャンバ12およびアー
ス60に対して電気的に浮遊状態となっているが、蒸発
材料が絶縁性のもの、例えばMgOなどを用いた場合
は、成膜過程においてるつぼ自体が絶縁性となるため、
真空チャンバ12およびアース60に対して電気的に浮
遊状態にしておかなくても、結果として電気的に浮遊状
態となり得る。
【0036】次に図3および図4により、本発明の他の
実施の形態について説明する。図3および図4におい
て、図1および図2に示す装置と同一の部分について
は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0037】図3および図4に示すように、真空チャン
バ12には一対のプラズマガン11が連結され、各プラ
ズマガン11から発生するプラズマビーム22の横断面
を収縮させるため、各プラズマビーム22に対して同極
性同志(N極同志、或いはS極同志)のシート状磁石
4,4が電子帰還電極2の前方に設けられている。
【0038】このようにシート状磁石4,4を設けるこ
とにより、成膜材料20に入射するプラズマビーム22
をシート状にし、成膜材料20に対する広巾の蒸発源を
形成することができる。このため広巾基板13に対して
適切に薄膜を形成することができる。
【0039】図5〜図11は、本発明の更に他の実施形
態を示すプラズマガン11および真空チャンバ12の短
管部12Aの図である。図5〜図11において、図1お
よび図2に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符
号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】図5および図6に示す実施の形態は、電子
帰還電極2にその表面に付着する成膜材料20を払拭し
て、除去する旋回式ワイパ5を設け、電子帰還電極2の
表面を反射電子帰還のために良好な状態を長期間保てる
ようにしたものである。
【0041】図7に示す実施の形態は、電子帰還電極2
のプラズマガン11とは反対の側の面6を凹凸形状に形
成して、反射電子帰還のための表面積を増大させたもの
である。
【0042】図8に示す実施の形態は、真空チャンバ1
2の短管部12Aの真空チャンバ12内側開口部に、バ
ッフルプレート7を設けたものである。このバッフルプ
レート7は例えば格子状に、多数の貫通部7aを全面に
わたって万遍なく散在させ、かつ、中央部にプラズマビ
ーム22の通過口7bを設けたものであり、電子帰還電
極2の表面に達するガス状態の成膜材料20の量を減少
させるようにしたものである。なお、このバッフルプレ
ート7は、前述したワイパ5とともに、或いは凹凸の面
6を有する真空成膜装置にも適用できる。
【0043】これら図5〜図8に示す構成により、より
一層、プラズマビームを連続安定して形成することがで
きるようになる。
【0044】なお、本発明は、電子帰還電極2あるいは
絶縁管1の配設位置と断面形状について、前述した各実
施形態に示すものに限定するものではない。これら電子
帰還電極2あるいは絶縁管1の配置位置については、プ
ラズマビーム22を取り巻くとともに、短管部12A内
であればよく、例えば、図9に示すように、電子帰還電
極2および絶縁管1を短管部12A内の真空チャンバ1
2内側に片寄らせて配置してもよい。また断面形状につ
いても、この図9に示す例では、電子帰還電極2の断面
形状を矩形とし、絶縁管1をプラズマガン11側にフラ
ンジを有する筒体形状とするのが好ましい。
【0045】このような構成により、さらに一層反射電
子を効率よく捕捉できるようになる。
【0046】図10は、電子帰還電極2内に電子帰還電
極水冷用ジャケット23を形成し、この電子帰還電極水
冷用ジャケット23の入口部に冷却水流入管24を接続
するとともに、その出口部に冷却水流出管25を接続し
て、電子帰還電極2を水冷構造としたものである。
【0047】また、図11は、図8に示すバッフルプレ
ート7内に水冷用ジャケット26を形成し、この水冷用
ジャケット26の入口部に冷却水流入管27を接続する
とともに、その出口部に冷却水流出管28を接続して、
バッフルプレート7を水冷構造としたものである。
【0048】図10および図11において、電子帰還電
極2およびバッフルプレート7のそれぞれの温度上昇を
抑制することができ、投入可能放電電力を増大させ、成
膜速度を向上させ得るようになっている。
【0049】なお、前述した各実施形態において、絶縁
管1はプラズマガン11に対して電気的に浮遊状態に保
たれていれば、その材料は、導電性物質か否かは問わな
い。
【0050】次に図12により更に他の実施の形態につ
いて説明する。図12に示す実施の形態は、電子帰還電
極2の構成が異なるのみであり、他は図1および図2に
示す実施の形態と同一である。
【0051】図12に示すように、電子帰還電極2は内
部にコイル(又は永久磁石)2aを有し、プラズマガン
11から発生するプラズマビーム22を電子帰還電極に
接触させることなく通過させるようになっている。また
電子帰還電極2は、内部にヒータ2bを有し、電子帰還
電極2の表面に付着する成膜材料20を加熱除去するよ
うになっている。なお、電子帰還電極2が反射電子流3
の帰還によって加熱され、一定温度が保持される場合は
ヒータ2bを設ける必要はない。さらにまた図12に示
すように、電子帰還電極2のコイル(又は永久磁石)2
aの外側には、コイル(又は永久磁石)2aを保護する
ため、コイル(又は永久磁石)水冷用ジヤケット2cお
よび真空断熱層2dが設けられている。成膜材料20の
加熱除去中は、図10に示す電子帰還電極水冷用ジャケ
ット23の水は抜いておく。
【0052】次に図12において、電子帰還電極2の表
面に付着す成膜材料20を加熱除去する作用について説
明する。電子帰還電極2が加熱されると、表面に付着す
る成膜材料20が蒸発して除去される。但し、電子帰還
電極2は一般に無酸素銅からなっているが、成膜材料2
0がMgOの場合、融点が1300℃以上となるため、
無酸素銅を用いることはできず、この場合は電子帰還電
極2として高融点金属のMo又はWを用いることができ
る。
【0053】また、電子帰還電極2を付着した成膜材料
20が蒸発するまで加熱する場合、電子帰還電極2内の
コイル(又は永久磁石)2aが損傷または性能が低下す
ることも考えられるが、上述のようにコイル(又は永久
磁石)2aの外側にコイル(又は永久磁石)水冷用ジャ
ケット2cおよび真空断熱層2dを設けることにより、
コイル(又は永久磁石)2aの損傷及び性能低下を防止
することができる。
【0054】次に図13により更に他の実施の形態につ
いて説明する。図13に示す実施の形態は成膜材料20
が収納されたるつぼ19を設ける代わりに、放電電源1
4のプラス側に接続されたアノード31と、このアノー
ド31の背後に配置されたアノード用磁石32を設け、
さらに原料ガス供給管33を設けたものであり、他は図
1および図2に示す実施の形態と略同一である。
【0055】図13において、図1および図2に示す実
施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は
省略する。
【0056】図13において、原料ガス供給管33から
真空チャンバ12内に原料ガスと反射ガスが供給され、
これらをプラズマビーム22により分離結合させること
により、基板13に成膜材料を蒸着させて基板13上に
薄膜を形成することができる。
【0057】なお、上記実施の形態において、被成膜体
として基板13を用いた例を示したが、これに限らず被
成膜体として巻体から繰り出されるフィルム(図示せ
ず)を用いてもよい。
【0058】
【実施例】第1の実施例 次に本発明の実施例について説明する。第1の実施例は
図3および図4に示す実施の形態に対応するものであ
り、真空チャンバ12に一対のプラズマガン(Rガン、
Lガン)11が設けられている。
【0059】本実施例において運転条件を次のようにし
た。
【0060】
【表1】 プラズマガンのパワーアップ時間 550sec 基板搬送速度 125mm/min るつぼの移動速度 1mm/21sec 基板加熱温度 300℃ 酸素供給量 Lガン、Rガン共に12sccm。
【0061】この結果、基板13に蒸着速度23オング
ストローム/secで成膜が行なわれ、膜厚は5000
オングストロームとなった。第2の実施例 次に第2の実施例について述べる。第2の実施例も図3
及び図4に示す実施の形状に対応するものである。
【0062】第2の実施例は真空チャンバ12に一対の
プラズマガン(Rガン、Lガン)11を設け、るつぼ1
9を真空チャンバ12およびアース60に対して電気的
に浮遊状態としたものである。また、放電電源14から
の電力、電流、電子帰還電流、接地電流、基板搬送速度
および成膜真空度の時間変化を各々図14及び図15に
示す。
【0063】ここで図14はPDP用基板13(25イ
ンチ)にMgO膜を形成したときの実験結果を示し、図
15はガラス基板13(60インチ)にMgOを形成し
たときの実験結果を示す。
【0064】図14及び図15に示すように、るつぼ1
9は、真空チャンバ12およびアース60に対して電気
的に浮遊状態となっているので、接地電流はほとんどな
く、安定した電子帰還電流を得ることができる。
【0065】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、真空チャ
ンバ内の物体の状態を発光モニタにより適切に監視する
ことができる。このため、真空チャンバ内の物体の状態
を発光モニタにより監視することにより、被成膜体上に
形状される薄膜の性状を予測監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による真空成膜装置の一実施の形態を示
す図。
【図2】真空成膜装置が組込まれたシステム全体を示す
図。
【図3】本発明による真空成膜装置の他の実施の形態を
示す図である。
【図4】図3に示す真空成膜装置におけるシート状磁石
の前後のプラズマビームの状態を示す図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る真空成膜装置の
プラズマガン、および真空チャンバの短管部を示す図で
ある。
【図6】図5に示す電子帰還電極を前方側から見た図で
ある。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る別の真空成膜装
置のプラズマガン、および真空チャンバの短管部を示す
図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る真空成膜装置の
プラズマガン、および真空チャンバの短管部を示す図で
ある。
【図9】本発明の他の実施の形態に係る真空成膜装置の
プラズマガン、および真空チャンバの短管部を示す図で
ある。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る真空成膜装置
の電子帰還電極を示す図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る真空成膜装置
のバッフルプレートを示す図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係る真空成膜装置
を示す図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係る真空成膜装置
を示す図である。
【図14】本発明の具体的実施例を示す図。
【図15】本発明の具体的実施例を示す図。
【図16】ITO成膜時の投入電力と薄膜の形成速度と
の関係、投入電力と発光強度との関係を示す図。
【図17】薄膜の形成速度と発光強度との関係を示す
図。
【符号の説明】 1 絶縁管 2 電子帰還電極 2a コイル又は永久磁石 2b ヒータ 2c コイルまたは永久磁石水冷用ジャケット 2d 真空断熱層 3 反射電子流 4 シート状磁石 11 プラズマガン 12 真空チャンバ 12A 短管部 13 基板 14 放電電源 15 陰極 16 第1中間電極 17 第2中間電極 18 収束コイル 19 るつぼ 20 成膜材料 21 るつぼ用磁石 22 プラズマビーム 40 防着板 41 成膜速度計 42 真空計 43 酸素供給管 44 測定値収集ユニット 45 プラズマガン電流計 46 プラズマガン電圧計 47 電子帰還電極電流計 48 接地電流計 70 発光モニタ 76 制御装置

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】被成膜体が配置されるとともに接地された
    真空チャンバと、 真空チャンバ内に向けてプラズマビームを生成する圧力
    勾配型のプラズマ生成装置と、 プラズマ生成装置により生成したプラズマビームを磁場
    により軌道および/あるいは形状を制御させて成膜材料
    に照射させ、この成膜材料を被成膜体に蒸着させて薄膜
    を形成する永久磁石および収束コイルを用いる制御手段
    とを備え、 真空チャンバ内の励起された物体から生じる発光光の強
    度を監視する発光モニタを設けたことを特徴とする真空
    成膜装置。
  2. 【請求項2】発光モニタからの発光光の強度に基づい
    て、プラズマ生成装置のプラズマビーム生成強度を調整
    する制御装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の
    真空成膜装置。
  3. 【請求項3】プラズマ生成装置はプラズマガンからなる
    ことを特徴とする請求項1記載の真空成膜装置。
  4. 【請求項4】制御装置には発光光の強度と薄膜の形成速
    度との関係式が予め内蔵され、制御装置は発光モニタか
    らの発光光の強度に基づいて上記関係式を用いて薄膜の
    形成速度を求め、このようにして求めた薄膜の形成速度
    によりプラズマ生成装置のプラズビーム生成強度を調整
    することを特徴とする請求項1記載の真空成膜装置。
  5. 【請求項5】制御装置は発光光の強度と薄膜の形成速度
    との関係式として一次関数式を用いることを特徴とする
    請求項1記載の真空成膜装置。
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