JP2000082831A - 光起電力素子 - Google Patents

光起電力素子

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JP2000082831A JP11182677A JP18267799A JP2000082831A JP 2000082831 A JP2000082831 A JP 2000082831A JP 11182677 A JP11182677 A JP 11182677A JP 18267799 A JP18267799 A JP 18267799A JP 2000082831 A JP2000082831 A JP 2000082831A
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    • H01L31/022466Electrodes made of transparent conductive layers, e.g. TCO, ITO layers
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光電変換効率が高く、長期間強い光のもとに
曝されても変換効率の低下が少ない光起電力素子を提供
する。 【解決手段】 p型半導体層と、酸化インジウム錫から
なる透明導電層とが面で接合している光起電力素子にお
いて、透明導電層内部の酸化錫の含有率と錫の含有率と
の和が層厚方向に変化し、p型半導体層と透明導電層の
接合面で最小となっていることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は太陽電池、光センサ
ーなどの光起電力素子の光入射側の透明導電層に関わる
ものである。特に光起電力素子の光電変換効率を高める
技術および光劣化の低減、熱劣化の低減など長期安定性
を高める技術に関するものである。また本発明は光起電
力素子の低コスト化に関わるものである。
【0002】
【従来の技術】近年より、家屋の屋根に太陽電池を設置
して一般系統電力と接続し、電力需要を賄おうとする動
きが展開されている。しかし、太陽電池による発電コス
トは依然として高く、大規模な普及には至っていない。
【0003】太陽電池の低コスト化には非晶質シリコン
系薄膜を光起電力層に用いたものが有利であるとされて
いるものの、結晶系の太陽電池に比べて光電変換効率
(変換効率)が低い、光照射によって変換効率が低下す
る(光劣化)という問題があった。そして、これまで非
晶質シリコン系薄膜を用いた太陽電池(非晶質太陽電
池)の研究発表のほとんどが「変換効率を如何に高くす
るか」、「光劣化を如何に少なくするか」という2点に
関するものであった。
【0004】これまでに、透明導電層を改良して高効率
な光起電力素子(太陽電池)を得たという報告がある。
例えば、特開平8−77845号公報ではITO(イン
ジウム錫酸化物)形成後に不活性ガスの粒子線を照射し
てITOの結晶化を促進し、低抵抗、高透過率のITO
薄膜を得ている。また特公平7−84651号公報では
ITOの結晶性を制御し、<111>軸を基板表面に垂
直に配向させることによってITO表面形状を三角錐状
にして反射損失を低減し、短絡電流、変換効率を向上さ
せている。また特開平9−78236号公報ではITO
成膜時にアルゴンガスの代わりにキセノンガスを用いる
ことでキャリア密度を高めることができ、比較的低い基
板温度で低抵抗なITO薄膜を得ている。
【0005】また透明膜を多層にして反射率を低減する
試みがなされている。例えば特公平7−111482号
公報では屈折率の異なる透明な薄膜を多層積層して、4
50〜650nmの可視光領域で良好な反射防止膜を得
ている。ただしこの膜は非導電性膜を含む積層構造をな
すものである。
【0006】さらに特開平8−43840号公報ではキ
ャリア高濃度薄膜(ITO:SnO 210重量%)とキ
ャリア高移動度薄膜(ITO:SnO20.3重量%)
を複数積層し、アニーリングして面積抵抗が5.4(Ω
/□)の液晶ディスプレイ用透明導電層を得ている。
【0007】一方、最近、μc−Si:H薄膜をi型層
として用いたシングルセルで、変換効率が高く、光劣化
のない太陽電池が報告された。この太陽電池はa−Si
Ge:H薄膜をi型層として用いた太陽電池に代わるも
のとして脚光を浴びている。μc−Si:H薄膜はa−
SiGe:H薄膜のような非晶質シリコン系薄膜特有の
光劣化を解消するものであるし、さらにゲルマンガス
(GeH4)のような高価な原料ガスを使用する必要が
ないのである。さらに、このμc−Si:H薄膜はa−
SiGe:H薄膜ほどの吸収係数は持たないものの、i
型層の膜厚を3μm以上とすることでa−SiGe:H
シングルセル並みの短絡電流(Jsc)を得ることがで
きる可能性がある。その報告の例として、MRS Sy
posium Proceeding Vol.420
Amorphous Silicon Techno
logy l996 p3−pl3,“On the
Way Towards High Efficien
cy Thin−FilmSilicon Solar
Cells by the Micromorph
Concept”,J.Meier at.al.にお
いてはi層が微結晶シリコンからなる太陽電池を報告し
ている。この太陽電池は110MHzの周波数を用いた
VHFプラズマCVD法により作製したもので、pin
接合を一つ持つシングルセルにおいて変換効率7.7%
を達成している。そしてこのシングルセルは光劣化がな
いという大きな長所がある。さらに非晶質シリコン系薄
膜をi層とする別のpin接合を積層させてスタックセ
ルを作製し、変換効率13.1%を達成している。しか
しその光劣化率は依然として大きく、従来の非晶質シリ
コン系のものと変わらないものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者はITO(酸
化インジウム錫)薄膜には大気中で温度が高くなると抵
抗率が高くなるという経時現象があることを確認した。
このようなITO薄膜を透明導電層として使用した光起
電力素子では、連続光照射によって素子の温度が上昇
し、透明導電層の抵抗が高くなり、曲線因子および短絡
光電流、そして変換効率が低下するという現象があるこ
とを発見した。例えば特開平8−56004号公報の実
施例では電子ビームによる真空蒸着法で基板上にITO
からなる透明導電層を形成している。また特開平7−2
97428号公報の実施例においては光起電力層上に蒸
着法でITOからなる透明導電層を形成している。これ
ら真空蒸着法で形成したITO薄膜を有する光起電力素
子では初期の変換効率は高いものの、強い光照射(10
0mW/cm2)に曝された場合、ITO薄膜の抵抗率
が時間経過とともに高くなり、変換効率が低下するとい
う問題点があった。さらに特開平8−43840号公報
のようにキャリア高濃度薄膜(ITO:SnO210重
量%)とキャリア高移動度薄膜(ITO:SnO20.
3重量%)を複数積層した後、アニーリングすることで
低抵抗の液晶ディスプレイ用透明導電層を得ている。し
かし光起電力層上に上記薄膜を積層してアニーリング処
理を行うと、リンやホウ素などのドープ剤が相互拡散し
てしまい、開放電圧が低下してしまい問題であった。ま
た光起電力素子として要求される光の透過性(短絡電
流)も十分なものではなかった。
【0009】また特開平6−5893号公報の実施例に
おいては光起電力層(pin層)の上にスパッタリング
法でITOを形成している。しかしa−SiGe:H薄
膜をi型層に用いたシングルセルとしては短絡電流Js
cが低いことが問題であった。しかし本発明者の研究に
よればスパッタリング法で形成したある種のITO薄膜
は熱安定性が非常に高く、120℃で3000時間程度
経過してもその変化率は1.1倍程度であった。また本
発明者の研究によれば光起電力層の上にスパッタリング
法でITO薄膜を形成した光起電力素子の短絡電流は、
真空蒸着法でITO薄膜を形成した光起電力素子の短絡
電流よりも低いことが多く問題であった。さらにスパッ
タリングを行うためのプラズマが高エネルギー状態であ
るので光起電力素子に損傷を与えてしまい、リーク電流
が増加し、開放電圧が低下してしまうという問題点があ
った。さらにひどい場合には光起電力素子の短絡をもた
らすという問題点があった。しかしながら、スパッタリ
ング法でITO薄膜を形成した光起電力素子は曲線因子
が高く、さらに耐熱性が非常に優れているという長所も
兼ね備えている。
【0010】本発明は変換効率が高く、長期間強い光の
もとに曝されても変換効率の低下が少ない光起電力素子
を提供することを目的とする。また、本発明は強い光の
照射によって起こる光起電力素子の温度上昇による変換
効率の低下を解消することを目的とする。さらに、本発
明は光起電力層の上にITO薄膜を形成した光起電力素
子の変換効率の熱的安定性を向上させることを目的とす
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の問題点を解決する
ための手段として、本発明は、p型半導体層と、酸化イ
ンジウム錫(ITO)からなる透明導電層とが面で接合
している光起電力素子において、該透明導電層は複数の
層からなり、該複数の層のうち前記p型半導体層と透明
導電層の接合面に最も近い層の酸化錫の含有率と錫の含
有率との和が、他の層の酸化錫の含有率と錫の含有率と
の和よりも少ないことを特徴とする光起電力素子を提供
する。
【0012】酸化インジウム錫(ITO)中には、主と
してインジウム原子、錫原子、酸素原子が存在する。そ
して、インジウム原子、錫原子はそれぞれ酸化インジウ
ムの状態あるいはインジウム単体等の酸化インジウム以
外の状態、酸化錫の状態あるいは錫単体等の酸化錫以外
の状態で存在する。本発明でいう「酸化錫の含有率と錫
の含有率の和」とは、酸化錫のモル濃度と錫単体等の酸
化錫以外の状態で存在する錫のモル濃度を酸化物換算し
たものの和である。換言すれば、「酸化錫の含有率と錫
の含有率との和」とは、ITO中の「全ての錫が酸化錫
の状態で存在し、全てのインジウムが酸化インジウムの
状態で存在していると仮定した場合の、酸化錫の含有率
を錫原子の量から計算したもの」ということになる。
【0013】このような値は、例えば、誘導結合プラズ
マ発光(ICP)法等で錫原子の濃度を求め、それを酸
化物換算することによって得ることができる。なお、I
TO中の酸化錫以外の状態で存在する錫の量が無視でき
る程度小さい場合には「酸化錫の含有率と錫の含有率の
和」を「酸化錫の含有率」と解しても差し支えない。
【0014】ここで、前記接合面に最も近い層の酸化錫
の含有率と錫の含有率との和が10モル%以下であるこ
とが好ましい。
【0015】また、前記複数の層のうち酸化錫の含有率
と錫の含有率との和が最も大きい層の酸化錫の含有率と
錫の含有率との和が12モル%以上、30モル%以下で
あることが好ましい。
【0016】また、前記接合面に最も近い層の厚さは透
明導電層全体の厚さの半分以下であることが好ましい。
【0017】また、前記複数の層のうち酸化錫の含有率
と錫の含有率との和が最も大きい層の厚さは透明導電層
全体の膜厚の半分以上であることが好ましい。
【0018】上記の問題点を解決するための別の手段と
して、本発明は、p型半導体層と、酸化インジウム錫
(ITO)からなる透明導電層が面で接合している光起
電力素子において、該透明導電層内部の酸化錫の含有率
と錫の含有率との和は層厚方向に連続的に変化してお
り、前記p型半導体層と透明導電層の接合面で最小とな
っていることを特徴とする光起電力素子を提供する。
【0019】ここで、前記接合面での透明導電層中の酸
化錫の含有率と錫の含有率との和が10モル%以下であ
ることが好ましい。
【0020】また、前記透明導電層中で前記和が最大で
ある領域の酸化錫の含有率と錫の含有率との和が12モ
ル%以上、30モル%以下であることが好ましい。
【0021】また、前記透明導電層中の酸化錫の含有率
と錫の含有率との和が10モル%以下である領域が該透
明導電層全体の半分以下であることが好ましい。
【0022】また、前記透明導電層中の酸化錫の含有率
と錫の含有率との和が12モル%以上である領域が該透
明導電層全体の半分以上であることが好ましい。
【0023】上記の問題点を解決するためのさらに別の
手段として、本発明は、p型半導体層と、酸化インジウ
ム錫(ITO)からなる透明導電層が面で接合している
熱平衡状態の光起電力素子において、該透明導電層の伝
導帯下端が層厚方向に変化し、該p型半導体層と透明導
電層の接合面近傍における透明導電層の伝導帯下端とフ
ェルミ準位の差が、該透明導電層全域のそれらの差の平
均よりも大きいことを特徴とする光起電力素子を提供す
る。
【0024】
【発明の実施の形態】光起電力素子の変換効率を向上す
るには透明導電層の比抵抗を下げ、透過率を上げること
が非常に重要である。しかし、本発明者は、ITOを用
いた光起電力素子の研究の結果、「透明導電層や光起電
力層が比較的高い品質にまで達すると、比抵抗、透過率
といった透明導電層単体の性質を向上させることが、光
起電力素子の特性向上に直結するとは限らない」という
ことが分かってきた。結論的に言うと透明導電層と接す
る半導体層、特に該半導体層がp型半導体層である場合
には、その接合状態が非常に重要であるということが分
かってきた。さらに本発明者は、半導体層と接合してい
るITOからなる透明導電層が、高い温度(60℃程
度)に曝されると、比抵抗が時間経過とともに上昇する
場合があるということを発見した。そして、その程度は
ITOからなる透明導電層の酸化錫の含有率と錫の含有
率との和と相関があり、含有率が小さいもの(5モル%
程度)で比抵抗が時間経過とともに上昇し、含有率が大
きいもの(15モル%程度)では、比抵抗の熱的安定性
が非常に良いということが分かった。しかし、熱的安定
性が非常に良い酸化錫の含有率と錫の含有率との和(以
下、単に錫濃度と略す場合がある)が大きい透明導電層
をそのまま光起電力層と接合させると、変換効率はやや
劣っていることが分かった。さらに透明導電層の形成条
件の検討を行ってみたが、この場合、錫濃度が小さい透
明導電層と接合させた場合の変換効率以上になることは
極めて希であった。
【0025】本発明は以上のような実験事実をもとに考
案され、透明導電層と光起電力層の接合を改善した光起
電力素子であって、高い変換効率と高い熱的安定性を有
するものである。
【0026】図3は従来の光起電力素子の部分断面図で
ある。この光起電力素子は、内部にpn接合またはpi
n接合など(不図示)で構成された光起電力層を有し、
p型半導体層301に接してITOからなる透明導電層
302を有するものである。この透明導電層は錫濃度
(C31)が一定である。この際、接合の様子をバンド図
で示すと図8、図9のようになると考えられる。ITO
はフェルミ準位が伝導帯下端の上にあり、いわゆる縮退
した半導体である。図3の透明導電層では錫濃度が小さ
いと、仕事関数φが小さく、錫濃度が大きいと仕事関数
は大きい(Report of Research L
aboratory of Engineering
Shibaura Institute of Tec
hnology,Vol.3 1988 pp35−5
5参照)と考えられる。そして電子親和力xが同じであ
るとすると伝導帯下端(Ec)とフェルミ準位(Ef)
の差の絶対値は、錫濃度が大きい場合(図8 Eh2)
のほうが、錫濃度が小さい場合(図9 Eh1)よりも
小さいと考えられる(Eh1>Eh2)。
【0027】またトンネル電流に関わるバンドギャップ
(Et)が小さいほどトンネル電流は多く流れ、Etが
大きいほどトンネル電流は少なくなると考えられる。ま
た、上記の考察からEt1<Et2の関係があると推察
される。従って錫濃度が小さい図9のほうがトンネル電
流に関わるバンドギャップが小さく、トンネル電流は多
く流れる。トンネル電流が小さいと、透明導電層とp型
半導体層で発生する逆起電力が無視できなくなる。従っ
てトンネル電流が大きい図9のタイプ(錫濃度が小さい
かまたは0)の光起電力素子のほうが有利だと考えられ
る。実際、pin接合を有するアモルファスシリコン太
陽電池を作製して太陽電池特性を測定してみると開放電
圧(Voc)、短絡電流(Jsc)、光電変換効率
(η)は図9のタイプの方が良好であることが分かっ
た。
【0028】しかし、図9に示した透明導電層を有する
光起電力素子は高い温度(90℃程度)に長時間曝され
ると比抵抗、シート抵抗が上昇し、太陽電池特性、なか
でも曲線因子(FF)が悪化するという問題点があっ
た。しかし、図8に示した光起電力素子では図9のそれ
と比べてわずかに開放電圧(Voc)、短絡電流(Js
c)、光電変換効率(η)は劣るものの、その透明導電
層は熱的安定性が非常に良好で、高い温度(120℃程
度)に長時間曝されても比抵抗、シート抵抗は非常に安
定しているという利点があり、開放電圧(Voc)、短
絡電流(Jsc)、光電変換効率(η)も熱的には安定
していた。
【0029】本発明は図8、図9のタイプそれぞれに示
された長所を生かし、短所を解消することができるもの
である。図1は本発明の光起電力素子のひとつの形態例
を示す模式的な部分断面図であり、透明導電層102は
2つの層の積層によって構成されている例である。すな
わち図1の場合、p型半導体層101上に第1の透明導
電層103、第2の透明導電層104を順次積層し、第
1の透明導電層103の錫濃度が第2の透明導電層10
4のそれよりも小さくなっている例である。図6、図7
は図1に示された光起電力素子のバンド図である。第1
の透明導電層では錫濃度が小さいため、トンネル電流に
関するエネルギーギャップEt1は比較的小さいもので
ある。従ってトンネル電流は大きくなり、余計な逆起電
力が発生しないため、開放電圧(Voc)、短絡電流
(Jsc)、光電変換効率(η)は良好なものとなる。
【0030】なお、図2は本発明の光起電力素子のひと
つの形態例を示す模式的な部分断面図であり、ここで
は、p型半導体層201上に第1の透明導電層203、
第2の透明導電層204、第3の透明導電層205から
なる透明導電層202を形成している。
【0031】また、従来の光起電力素子では酸化錫また
は錫が界面近傍に多く存在するとその領域でキャリア濃
度が大きくなり、鏡像力によってエネルギーバンドが図
10のように曲がっていたと考えられる。すると実質的
にトンネル電流に関するエネルギーギャップEt3はさ
らに大きくなるのでトンネル電流は減少し、逆起電力分
だけ損することになる。本発明の光起電力素子では接合
面近傍で第1の透明導電層の錫濃度が比較的小さいた
め、キャリア濃度が小さく、p型半導体層の接合面近傍
でのバンドの不利な曲がり(図10に示す)がないと考
えられる。そのため、トンネル電流は大きくなり、本発
明の光起電力素子は開放電圧、短絡電流、光電変換効率
が優れたものとなる。
【0032】さらに第1の透明導電層上には錫濃度が大
きい第2の透明導電層が積層されているため、熱的安定
性が優れたものとなる。さらに第1の透明導電層の屈折
率n1よりも第2の透明導電層の屈折率n2の方が大き
いため、光起電力層を構成する材料の屈折率がn2より
も大きい場合は光閉込め効果が増加するので短絡電流は
さらに増加する。また第1の透明導電層が内部応力の緩
衝層として機能するため本発明の光起電力素子の透明導
電層は非常に剥がれにくいものである。特に接合面近傍
では錫濃度が小さく応力緩和が進んでいるので、界面準
位が極めて少なく、良好な光電特性を有するものであ
る。また、本発明では、接合面に近い透明導電層(図
1、図2においては第1の透明導電層103,203)
よりも接合面から離れた透明導電層(図1においては第
2の透明導電層104、図2においては第3の透明導電
層205)のほうが比抵抗が小さいので、光起電力層で
発生した光キャリアは、接合面に近い透明導電層内部で
は層厚方向に移動し、接合面から離れた透明導電層内部
では面内方向に移動する。従って接合面近傍あるいはp
型半導体層内部でのキャリアの移動に伴う相互作用が減
少し、トンネル電流が増大するものと考えられる。
【0033】以上のような効果は3層構成の透明導電層
を有し、錫濃度が接合面から大きくなるように構成され
ている図2の光起電力素子でも同様に発揮できるもので
ある。さらに錫濃度が接合面から連続的に大きくなって
いる図4、図5の光起電力素子においては、上記の効果
をさらに大きく発揮できるものである。すなわち錫濃度
を連続的に変化させることによって、第1の透明導電層
と第2の透明導電層の界面をなくすことができるので、
該界面に界面準位が存在する場合には有利である。界面
準位が無いので抵抗増加による電力損失がない。
【0034】なお、図4、図5はいずれも本発明の光起
電力素子の一形態を示す模式的な部分断面図であり、p
型半導体層401、501上に透明導電層402、50
2が設けられている。
【0035】さらに本発明においてはp型半導体層上に
透明導電層を積層してもよいし、透明導電層の上にp型
半導体層を積層してもよい。また光の入射方向は透明導
電層側から入射させてもよいし、光起電力層側から入射
させても本発明の効果は発揮される。
【0036】本発明において、好適な形態の一つは、接
合面に最も近い層の錫濃度が、10モル%以下であるこ
とを特徴とする。また連続的に錫濃度が変化する形態に
おいては、接合面にて最小となり、接合面での含有量は
10モル%以下であることを特徴とするものである。こ
れによりトンネル電流に関わるエネルギーギャップがよ
り小さくなるため、トンネル電流をさらに増加させるこ
とができ、上記の効果がさらに顕著に発揮される。
【0037】本発明において、好適な形態の一つは、錫
濃度の最大となる層の錫濃度が12モル%以上、30モ
ル%以下であることを特徴とする。また連続的に錫濃度
が変化する形態においては、錫濃度が最大となる領域で
の錫濃度が12モル%以上、30モル%以下であること
を特徴とするものである。これにより高い温度に曝され
た場合の光起電力素子の熱的安定性をさらに向上させる
ことができるものである。これにより上記の効果がさら
に顕著に発揮される。
【0038】本発明において、好適な形態の一つは、接
合面近傍における、錫濃度が10モル%以下である領域
の層厚がITOの全層厚の半分以下であることを特徴と
するものである。これにより高い温度に曝された場合の
光起電力素子の熱的安定性をさらに向上させることがで
きるものである。これにより上記の効果がさらに顕著に
発揮される。
【0039】本発明において、好適な形態の別の一つ
は、錫濃度が12モル%以上である領域の層厚がITO
の全層厚の半分以上であることを特徴とするものであ
る。これにより高い温度に曝された場合の光起電力素子
の熱的安定性をさらに向上させることができるものであ
る。これにより上記の効果がさらに顕著に発揮される。
【0040】本発明において、好適な形態の別の一つ
は、照射光強度が最大となる波長で反射光強度が最小に
なるように透明導電層の膜厚を調整したことを特徴とす
るものである。これにより光起電力素子の短絡電流が増
加するものである。
【0041】(透明導電層の構成)本発明に使用される
透明導電層は酸化インジウム錫(ITO)からなり、多
結晶、微結晶、アモルファスのいずれの状態であっても
よい。中でも結晶性の状態であることで、比抵抗が低
く、透過率が高いものが得られる。結晶性の透明導電層
を形成するためには形成温度を100℃以上にするとよ
い。さらに透過率を向上させるには形成温度を150℃
以上にすることが望ましい。透明導電層を形成する際、
下地層がp型半導体層でない場合には形成温度を300
℃以上にすることが望ましい。しかし、下地層がp型半
導体層である場合には、少しでも高い変換効率が得られ
るように該層の形成温度を適正化する必要がある。しか
し一般的には下地層となるp型半導体層の形成温度程度
または400℃以下が適正である。その理由はp型半導
体層中のドーパントなどが他の層へ相互拡散しないよう
にすることが開放電圧を高める上で重要であるからであ
る。またこの層をなるべく高い温度で形成して表面を凹
凸化して、光閉込め効果を最大限に活用することが望ま
しい。また照射光強度が最大となる波長で反射率が最小
となるように膜厚を調整し、照射光を最大限に光起電力
層に吸収させることが望ましい。本発明の透明導電層を
結晶性の状態で使用する場合、その配向性は(100)
面または(111)面であることが、大きな結晶粒を成
長させるには好適であり、比抵抗が低く、透過率も高い
ものである。また表面に凹凸構造を形成しやすいもので
ある。
【0042】(透明導電層の形成方法)本発明の光起電
力素子において、透明導電層の形成方法はスプレー法、
CVD法、塗布法、抵抗加熱真空蒸着法、スパッタリン
グ法などが挙げられるが、中でも抵抗加熱真空蒸着法、
電子ビーム真空蒸着法またはスパッタリング法は半導体
層と良好な接合面を形成することができるので最も好適
な方法である。抵抗加熱真空蒸着法および電子ビーム真
空蒸着法ではインジウムと錫の金属蒸着源を加熱し、酸
素ガスを流しながら、7×10-2Pa程度で蒸着する方
法がよい。ただし同じ温度で比較すると錫の蒸気圧はイ
ンジウムの蒸気圧よりもかなり低いので、透明導電層中
の錫濃度を1モル%程度にする場合は、重量比でIn:
Sn=1:1程度にし、錫濃度を10モル%程度にする
には重量比でIn:Sn=1:10程度にする必要があ
る。スパッタリング法では、中でもDCマグネトロンス
パッタリング法が堆積速度が高く、良好な接合面を形成
できるので最適である。形成温度は前記の理由から15
0℃以上、ターゲット電位は−200Vから−500V
程度が好ましい。またスパッタリング用のガスとしてア
ルゴンや酸素に加えて、ネオン、ヘリウムといった軽い
ガスを混合することで接合面でのプラズマ損傷を低減す
ることができる。さらに基板を電気的に浮かせたり、バ
イアスを調整して基板に流れ込む電子電流、イオン電流
を制御してもよい。特に−50V以上の電圧がよく、特
にフローティングバイアスから+200V程度が、イオ
ン電流、プラズマダメージが少なくできるので望まし
い。
【0043】錫濃度を層厚方向に変化させるための方法
はターゲットまたは蒸着源に印加する電力を独立に制御
すればよい。スパッタリング法の場合には酸化インジウ
ムのターゲットと酸化錫または錫のターゲットを用意
し、酸化錫を多く含有させたい場合には酸化錫ターゲッ
トの電力を上げればよい。また、錫の含有量を多くさせ
たい場合には錫ターゲットの電力を上げればよい。抵抗
加熱真空蒸着法の場合にはインジウム蒸着源と錫蒸着源
を用意し、錫濃度を大きくさせたい場合には錫蒸着源の
温度を上げればよい。
【0044】(光起電力層)該層は光照射によって起電
力が発生する構成となっていれば、どんな接合形態でも
よい。例えば、pn接合、pin接合、p+-+
合、p+-+接合などが好適な接合として挙げられ
る。光起電力層の材料としてはSi、Ge、SiGe、
SiC、CdS、CdTe、CdSe、CdXZn
1-XS、GaAs、GaxAl1-XAs、GaInP2、I
nP、CuInSe2、CuInxGa1-XSe2、Cu2
S、ZnO、Zn32、Seなどが挙げられる。接合形
成の際には同種の材料を用いたホモ接合でもよいし、異
種の材料を用いたヘテロ接合でもよい。また材料の状態
としては単結晶、多結晶、微結晶、アモルファスが使用
され、多結晶とアモルファスという異種状態の接合を用
いることもできる。また本発明の光起電力層は複数の接
合を含有していてもよい。またこれらの接合は直列化し
てもよいし、接合の間に絶縁層を挿入して絶縁してもよ
い。また、pn接合とpin接合といった異種の接合を
含有してもよい。
【0045】光起電力層の形成方法はプラズマCVD
法、光CVD法、熱CVD法、MOCVD法、MBE
法、ガス拡散法、固相拡散法、液相成長法、イオン注入
法、抵抗加熱真空蒸着法、スプレー法、スパッタリング
法、電析法などが用いられるが、材料、接合形態に応じ
て最も適切な方法を選択する必要がある。また光起電力
層の接合形成の際、複数の形成方法を用いてもよい。
【0046】Si、Ge、SiGe、SiCの薄膜を堆
積して接合を形成する場合にはプラズマCVD法、光C
VD法、熱CVD法が好ましい。基板内部に接合をする
場合はガス拡散法、固相拡散法、イオン注入法が好まし
い。特にi層を形成する際にはRFプラズマCVD法
(周波数1〜30MHz)、VHFプラズマCVD法
(周波数30MHz〜0.5GHz)、マイクロ波プラ
ズマCVD法(MWプラズマCVD法周波数0.5GH
z〜10GHz)が好ましいものである。CdS、Cd
Te、CdSe、CdXZn1-XSの薄膜を堆積して接合
を形成する場合は抵抗加熱真空蒸着法、MBE法、スパ
ッタリング法、電析法、プラズマCVD法、光CVD法
が好ましい。GaAs、GaXAl1-XAs、GaInP
2、InPの薄膜を堆積して接合を形成する場合はMB
E法、MOCVD法、液相成長法が好ましく、基板内部
に接合を形成する場合はガス拡散法、固相拡散法、イオ
ン注入法が好ましい。CuInSe2、CuInXGa
1-XSe2、Cu2S、ZnOなどの薄膜を堆積して接合
を形成する場合は抵抗加熱真空蒸着法、MBE法、スパ
ッタリング法などが好ましい。Zn32の薄膜を堆積し
て接合を形成する場合には、ICB法、MOCVD法な
どが好ましい。Seの薄膜を堆積して接合を形成する場
合には、抵抗加熱真空蒸着法、スパッタリング法などが
好ましい。
【0047】上記のような形成方法で接合を形成した
後、アニーリングを行い、再結晶化や接合の改質を行っ
てもよい。
【0048】(p型半導体層)該層は透明導電層と接合
し、光起電力層で用いる材料の中でもp型の導電性を有
する材料で構成される。その材料としてはSi、Ge、
SiGe、SiC、CdTe、GaAs、GaXAl1-X
As、GaInP2、InP、CuInSe2、CuIn
xGa1-XSe2、Cu2S、Zn32、Seなどが挙げら
れる。また材料の状態としては単結晶、多結晶、微結
晶、アモルファスが使用され、多結晶とアモルファスと
いう異種状態を複数積層したものであってもよい。
【0049】p型半導体層の形成方法はプラズマCVD
法、光CVD法、熱CVD法、MOCVD法、ガス拡散
法、固相拡散法、液相成長法、イオン注入法、抵抗加熱
真空蒸着法、スプレー法、スパッタリング法、電析法な
どが用いられるが、材料、接合形態に応じて最も適切な
方法を選択する必要がある。この層の形成方法は上記、
光起電力層の形成方法に準ずるものである。
【0050】(光起電力素子)本発明の光起電力素子の
一例の具体的構成の模式的断面図を図12に示す。図1
2は非単結晶シリコン系半導体を用いたpin型太陽電
池である。図12において1201は光起電力素子を支
持する機能を有する支持体であり、材料としてガラス、
ステンレス、耐熱樹脂シートなどが用いられる。120
2は反射層で裏面電極としての機能と裏面反射としての
機能を有し、材料としてはAg、Al、Au、Cu、C
uMgなどが用いられる。1203は下部透明導電層で
光起電力層の短絡防止の機能、光閉じ込めの機能などを
有し、材料としては酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウ
ム、ITOなどが使用される。1204、1205、1
206はそれぞれn型半導体層、i型半導体層、p型半
導体層であって、これらの層を接合することによりpi
n接合を形成し、光起電力を発生させることができる。
これらの3つの層の積層構造を光起電力層と呼ぶ。材料
は前述のものである。1207は透明導電層であって酸
化インジウム錫からなり、2層構造あるいはそれ以上の
積層構造、または錫濃度が層厚方向に変化しているもの
である。この透明導電層の機能は光起電力層により多く
の光を導く機能と集電電極に効率良く(電力損出をより
少なく)光キャリアを導く機能を有する。1208は集
電電極であって、光キャリアを外部に効率よく導く機能
と光起電力層に効率よく光を導く機能を有する。材料と
してはAg、Al、Au、Cuなどが使用される。
【0051】図13は光起電力素子の他の例を示す模式
的な断面図であり、pinpin型(タンデム型)非単
結晶シリコン系太陽電池である。各層の材料、機能は図
12のものと同様なものである。
【0052】図13中、1301は支持体、1302は
反射層、1303は下部透明導電層、1304は第1の
n型半導体層、1305は第1のi型半導体層、130
6は第1のp型半導体層、1307は透明導電層、13
08は集電電極、1309は第2のn型半導体層、13
10は第2のi型半導体層、1311は第2のp型半導
体層である。
【0053】図14は光起電力素子の他の例を示す模式
的な断面図であり、p+-+型単結晶シリコン太陽電
池である。1405は引き上げ法で作製され、P(リ
ン)をドープしたn-型単結晶シリコン基板からなるn-
型半導体層である。1404は該n-型単結晶シリコン
基板の裏面にリンをイオン打ち込みによって形成したn
+型半導体層である。1406は該n-型単結晶シリコン
基板の表面にホウ素をイオン打ち込みによって形成され
たp+型半導体層である。これら1404、1405、
1406の層によって光起電力を発生し、これらの層の
積層構造を光起電力層と呼ぶ。1402は裏面電極を兼
ねた反射層で電極としての機能と光の反射を行う層とし
ての機能を有し、材料としてはAlなどが使用される。
1407、1408はそれぞれ図12の透明電極層12
07、集電電極1208と同様である。
【0054】図15は光起電力素子の他の例を示す模式
的な断面図であり、支持体1501側から光入射させる
ものである。従って支持体1501は透光性である必要
がある。支持体1501上には透明導電層1507、p
型半導体層1506、i型半導体層1505、n型半導
体層1504、反射層1502が順に積層されている。
【0055】[実験例]本発明の効果を調べるために透
明導電層/p型半導体層/基板という積層構造のサンプ
ルを作製し、電圧電流特性を調べた。
【0056】(実験例1)まず基板として鏡面研磨した
ステンレス板(50mm×50mm×厚さ1mm)を用
意し、その上にp型半導体層としてp型の微結晶シリコ
ン(μc−Si:H:B)をRFプラズマCVD法で形
成した。その上に内部に4つのターゲットを有するDC
マグネトロンスパッタ装置を用いて図1に示すように2
層からなる透明導電層102を形成した。具体的にはp
型半導体層101上に6mmφの開口が25個形成して
あるマスクをのせて、DCマグネトロンスパッタ装置内
部に設置し、表1に示す条件で第1の透明導電層10
3、第2の透明導電層104を順次形成した。さらにヒ
ーターを切り、温度が室温程度になったところで十字の
開口が開いたマスクをのせ、第2の透明導電層104上
にアルミニウムからなる集電電極を形成し、上から見る
と図11のようなサンプルの作製を終了した。
【0057】このサンプルの暗状態での電圧電流特性を
調べたところ、オーミックであることが分かった。また
AM1.5、100mW/cm2の光を照射して電圧電
流特性を調べたところ、光起電力はなかった。
【0058】次にガラス基板上に同じくp型半導体層1
01、第1の透明導電層103、第2の透明導電層10
4を上記と同様な方法で積層した。4探針法を用いて透
明導電層102のシート抵抗を測定したところ48.0
(Ω/□)であった。その後120℃に保持された高温
環境試験機に投入し、1000時間経過したところで透
明導電層102のシート抵抗を測定したところ50.8
(Ω/□)であった。表1に層形成条件と結果をまとめ
て示す。
【0059】(比較実験例1−1)次に、第1の透明導
電層の単膜特性を調べた。実験例1と同様にステンレス
基板上にp型半導体層を形成し、その上に膜厚60nm
の第1の透明導電層を形成し、その上に十字の集電電極
を形成した。このサンプルの暗状態での電圧電流特性を
調べたところ、オーミックであることが分かった。また
AM1.5、100mW/cm2の光を照射して電圧電
流特性を調べたところ、光起電力はなかった。次に、ガ
ラス基板上にp型半導体層を形成し、その上に膜厚60
nmの第1の透明導電層を形成し、ICP法を用いて酸
化錫の含有率と錫の含有率との和(錫濃度)を測定した
ところ、5.1モル%であった。また実験例1と同様に
初期シート抵抗と、120℃、1000時間経過後のシ
ート抵抗を測定したところ、それぞれ70.4(Ω/
□)、85.1(Ω/□)であった。表2に層形成条件
と結果をまとめて示す。
【0060】(比較実験例1−2)次に、第2の透明導
電層の単膜特性を調べた。実験例1と同様にステンレス
基板上にp型半導体層を形成し、その上に膜厚60nm
の第2の透明導電層を形成し、その上に十字の集電電極
を形成した。このサンプルの暗状態での電圧電流特性を
調べたところ、わずかに整流性があった。またAM1.
5、100mW/cm2の光を照射して電圧電流特性を
調ベたところ、光起電力がわずかにあった。さらにガラ
ス基板上にp型半導体層を形成し、その上に膜厚60n
mの第2の透明導電層を形成し、ICP法を用いて錫濃
度を測定したところ、10.3モル%であった。また実
験例1と同様に初期シート抵抗と120℃、1000時
間経過後のシート抵抗を測定したところ、それぞれ4
2.1(Ω/□)、44.3(Ω/□)であった。表3
に層形成条件と結果をまとめて示す。
【0061】(実験例2)第1の透明導電層を抵抗加熱
真空蒸着法で、さらに第2の透明導電層形成用のターゲ
ットを酸化錫含有量15モル%のものにする以外は実験
例1と同様なサンプルを作製し、同様な評価を行った。
その条件と結果を表4にまとめて示す。
【0062】(比較実験例2−1)次に、実験例2で形
成した第1の透明導電層の単膜特性を調べた。比較実験
例1−1と同様にしてステンレス基板上にp型半導体
層、第1の透明導電層、集電電極を形成したものと、ガ
ラス基板上にp型半導体層、第1の透明導電層を形成し
たものを作製し、電流電圧特性、錫濃度、初期シート抵
抗を調べ、耐熱試験を行った。その層形成条件および結
果を表5に示す。(比較実験例2−2)次に、実験例2
で形成した第2の透明導電層の単膜特性を調べた。比較
実験例1−2と同様にしてステンレス基板上にp型半導
体層、第2の透明導電層、集電電極を形成したものと、
ガラス基板上にp型半導体層、第2の透明導電層を形成
したものを作製し、電流電圧特性、錫濃度、初期シート
抵抗を調べ、耐熱試験を行った。その層形成条件および
結果を表6に示す。
【0063】これらの実験例から見られるように本発明
の図1に示す構成の透明導電層はp型半導体層とオーミ
ック接合を形成し、光起電力がなく、さらに熱安定性が
優れていることが分かった。
【0064】(実験例3)透明導電層の錫濃度をいろい
ろ変えて、それぞれの単膜特性をまとめた。それを表7
に示す。評価方法は実験例1、2と同じ方法で行った。
この際、形成方法はDCマグネトロンスパッタリング法
を用い、ターゲット中の酸化錫含有量を変えることによ
って透明導電層中の錫濃度を変えた。この表に見られる
ように錫濃度が12モル%以上、30モル%以下の場
合、シート抵抗が低く、かつ熱的安定性が高いというこ
とが分かった。
【0065】(実験例4)スパッタリングターゲットに
金属錫を含有させたものを用いた実験を行った。ターゲ
ット中の金属錫の含有量を変えることによって透明導電
層中の錫濃度を変えた。その結果、錫濃度が12モル%
以上、30モル%以下の場合、シート抵抗が低く、かつ
熱的安定性が高いということが分かった。
【0066】(実験例5)透明導電層の錫濃度をいろい
ろ変えた実験を抵抗加熱真空蒸着法および電子ビーム真
空蒸着法で行った。透明導電層の形成方法を変えた以外
は実験例3と同様な方法で行った。その結果、形成方法
の違いによらず、錫濃度が12モル%以上、30モル%
以下の場合、シート抵抗が低く、かつ熱的安定性が高い
ということが分かった。
【0067】(実験例6)p型半導体層としてセレン化
法で形成した膜厚50nmの多結晶CuInSe 2を用
いた実験を行った。この際、真空蒸着法で形成したCu
/Inの積層膜をSe蒸気中の熱処理によってセレン化
を実施した。まず、基板にはMoをスパッタしたガラス
基板を使用し、基板温度を200℃/分の速度で450
℃に上げSe蒸着源からセレン蒸気を60分照射して形
成し、1℃/分で徐冷し、300℃になったところでセ
レン蒸気の照射を止めた。さらに1℃/分で徐冷し実験
例1と同様に6mmφの第1の透明導電層、第2の透明
導電層を各25個、十字のアルミニウムの集電電極を順
次形成した。
【0068】このサンプルの暗状態での電圧電流特性を
調べたところ、オーミックであることが分かった。また
AM1.5、100mW/cm2の光を照射して電圧電
流特性を調べたところ、光起電力はなかった。
【0069】次にガラス基板上に同じくp型半導体層、
第1の透明導電層、第2の透明導電層を上記と同様な方
法で積層した。4探針法を用いてシート抵抗を測定した
ところ45.2(Ω/□)であった。その後120℃に
保持された高温環境試験機に投入し、1000時間経過
したところでシート抵抗を測定したところ47.8(Ω
/□)であった。
【0070】(比較実験例6−1)次に、第1の透明導
電層の単膜特性を調べた。実験例6と同様にMo/ガラ
ス基板上に実験例6と同様なCuInSe2のp型半導
体層を形成し、その上に比較実験例1−1と同様に膜厚
60nmの第1の透明導電層を形成し、その上に十字の
集電電極を形成した。このサンプルの暗状態での電圧電
流特性を調べたところ、オーミックであることが分かっ
た。またAM1.5、100mW/cm2の光を照射し
て電圧電流特性を調べたところ、光起電力はなかった。
さらにガラス基板上に実験例6のp型半導体層を形成
し、その上に比較実験例1−1と同様に膜厚60nmの
第1の透明導電層を形成した。初期シート抵抗と、12
0℃、1000時間経過後のシート抵抗を測定したとこ
ろ、それぞれ69.5(Ω/□)、83.2(Ω/□)
であった。
【0071】(比較実験例6−2)次に、第2の透明導
電層の単膜特性を調べた。実験例6と同様にMo/ガラ
ス基板上に実験例6と同様なCuInSe2のp型半導
体層を形成し、その上に比較実験例1−2と同様に膜厚
60nmの第2の透明導電層を形成し、その上に十字の
集電電極を形成した。このサンプルの暗状態での電圧電
流特性を調べたところ、わずかに整流性があった。また
AM1.5、100mW/cm2の光を照射して電圧電
流特性を調べたところ、光起電力がわずかにあった。さ
らにガラス基板上に実験例6のp型半導体層を形成し、
その上に比較実験例1−2と同様に膜厚60nmの第2
の透明導電層を形成した。初期シート抵抗と120℃、
1000時間経過後のシート抵抗を測定したところ、そ
れぞれ41.8(Ω/□)、43.9(Ω/□)であっ
た。
【0072】以上、p型半導体層としてp型の微結晶シ
リコン(μc−Si:H:B)と多結晶CuInSe2
を用いたが、本発明の効果はp型の導電性を示す半導体
を用いれば得られるものであり、p型半導体層が特に限
定されることはない。
【0073】
【実施例】本発明の効果を実施例を用いて詳細に説明す
るが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
【0074】(実施例1)p型半導体層としてp型の微
結晶シリコン、光起電力層としてpin接合を一つ有す
る図12に示す構成の非単結晶シリコン太陽電池を作製
した。支持体には50×50×0.15(mm)のステ
ンレス(SUS430BA)を使用し、DCマグネトロ
ンスパッタリング法を用いてAgからなる反射層を形成
し、DCマグネトロンスパッタリング法を用いてZnO
からなる下部透明導電層を形成した。このZnOからな
る下部透明導電層の表面は凹凸形状をなし、中心線平均
粗さRaが0.12(μm)であった。さらに周波数1
3.56MHzのRFプラズマCVD法を用いてa−S
i:H:Pからなるn型半導体層を形成し、周波数11
0MHzのVHFプラズマCVD法を用いてμc−S
i:Hからなるi型半導体層を形成し、さらに周波数1
3.56MHzのRFプラズマCVD法を用いてμc−
Si:H:Bからなるp型半導体層を形成した。次に実
験例1と同様に6mmφの開口を25個有するマスクを
用いて第1の透明導電層、第2の透明導電層を形成し、
十字型のマスクを用いて集電電極を形成した。詳細な形
成条件は表8に記載する。このような太陽電池を4つ作
製した。これらの太陽電池を1A、1B、1C、1Dと
呼ぶことにする。
【0075】これらの4つの太陽電池の太陽電池特性を
AM1.5、100mW/cm2の照射光のもとで太陽
電池特性を測定した。4×25個のサブセルの平均変換
効率は7.01(%)だった。
【0076】次に太陽電池の熱試験を行った。実験例1
と同様に120℃に保持された高温環境試験機に1Bの
太陽電池を投入し、1000時間経過した後、太陽電池
特性を測定したところ変換効率は6.99(%)であっ
た。
【0077】次に太陽電池の光照射試験を行った。温度
50℃に保持された太陽電池1Cの上に上記の光を連続
照射し、1000時間経過した後、太陽電池特性を測定
したところ、変換効率は6.93(%)であった。
【0078】次にねじり試験を行った。太陽電池1Dの
3つの角を固定し、ひとつの角を太陽電池JIS C8
917にある変位量 h=0.021×(0.052+0.0520.5=0.0015(m) =1.5(mm) の6倍の変位量、9.0(mm)で上にねじ曲げ、そし
て下にも9.0(mm)ねじ曲げた。この操作を100
回繰り返し、さらに他の3つの角に関しても同じねじ曲
げを行った。外観の変化はなく、太陽電池特性を測定し
たところ変換効率は6.97(%)であった。他の太陽
電池特性も含めて表9に示す。この表に見られるように
本発明の光起電力素子は初期特性、熱試験後の特性、光
照射試験後の特性、ねじれ試験後の特性のすべてにおい
て優れていることが分かった。
【0079】(比較例1−1)比較実験例1−1と同様
に膜厚60(nm)の第1の透明導電層の単層を透明導
電層として使用する以外は実施例1と同様な太陽電池を
作製し、同様な試験を行った。その結果を表9に示す。
その結果、比較例1−1の太陽電池では初期太陽電池特
性は実施例1と同様優れたものであるものの、熱試験、
光照射試験、ねじれ試験において劣ることが分かった。
ねじれ試験による外観変化はなかったが、一部のサブセ
ルで短絡が発生していることが分かった。
【0080】(比較例1−2)比較実験例1−2と同様
に膜厚60(nm)の第2の透明導電層の単層を透明導
電層として使用する以外は実施例1と同様な太陽電池を
作製し、同様な試験を行った。その結果を表9に示す。
その結果、比較例1−2の太陽電池は初期太陽電池特
性、およびねじれ試験において劣ることが分かった。ね
じれ試験による外観変化はなかったが、一部のサブセル
で短絡が発生していることが分かった。
【0081】以上のように本発明の光起電力素子は初期
特性、熱試験後の特性、光照射試験後の特性、ねじれ試
験後の特性のすべてにわたって、従来の光起電力素子よ
りも優れていることが分かった。
【0082】(実施例2)p型半導体層としてp型の微
結晶シリコンカーバイド(μc−SiC:H:B)、光
起電力層としてpin接合を一つ有する図15に示す構
成の非単結晶シリコン太陽電池を作製した。支持体には
100×10×1.0(mm)のガラスを使用し、第2
の透明導電層の酸化錫含有量を15(モル%)とする以
外は実施例1と同様な第2の透明導電層、第1の透明導
電層を順次積層した。次に第1の透明導電層上にMWプ
ラズマCVD法で微結晶シリコンカーバイドからなるp
型半導体層を形成し、さらに実施例1と同じi型半導体
層、n型半導体層を形成した。次にDCマグネトロンス
パッタリング法を用いてZnOからなる下部透明導電
層、DCマグネトロンスパッタリング法を用いてAgか
らなる反射層を順次積層した。このZnOからなる下部
透明導電層の表面は凹凸形状をなし、中心線平均粗さR
aは0.10(μm)であった。このような太陽電池を
4つ作製した。これらの太陽電池を2A、2B、2C、
2Dと呼ぶことにする。詳細な形成条件は表10に示
す。
【0083】これらの4つの太陽電池をAM1.5、1
00mW/cm2の照射光のもとで太陽電池特性を測定
した。4個の平均変換効率は7.25(%)だつた。
【0084】次に実施例1と同様に太陽電池の熱試験を
行ったところ、熱試験後の太陽電池2Bの変換効率は
7.24(%)であった。
【0085】次に太陽電池の光照射試験を行った。光照
射試験後の太陽電池2Cの変換効率は7.17(%)で
あった。
【0086】次に降ひょう試験を行った。太陽電池JI
S C8917にある降ひょう試験のうち、氷球の直径
が25(mm)、終速度が23(m/sec)の条件で
合計100球を万遍なくガラス表面に衝突させた。その
後太陽電池特性を測定したところ、変換効率は7.19
(%)であった。他の太陽電池特性も含めて表11に示
す。この表に見られるように本発明の光起電力素子は初
期特性、熱試験後の特性、光照射試験後の特性、ねじれ
試験後の特性のすべてにおいて優れていることが分かっ
た。
【0087】(比較例2−1)比較例1−1と同様に膜
厚60(nm)の第1の透明導電層の単層を透明導電層
として使用する以外は実施例2と同様な太陽電池を作製
し、同様な試験を行った。その結果を表11に示す。そ
の結果、比較例2−1の太陽電池では初期太陽電池特性
は実施例2と同様優れたものであるものの、熱試験、光
照射試験、降ひょう試験において劣ることが分かった。
また降ひょう試験後に表面観察を行ったところ、5μm
φ程度の微少な剥がれが数箇所観察された。XMAの分
析により剥がれは透明導電層とp型半導体層の界面で起
こっていることが分かった。
【0088】(比較例2−2)比較例1−2と同様に膜
厚60(nm)の第2の透明導電層の単層を透明導電層
として使用する以外は実施例2と同様な太陽電池を作製
し、同様な試験を行った。その結果を表11に示す。そ
の結果、比較例2−2の太陽電池は初期太陽電池特性、
および降ひょう試験において劣ることが分かった。また
降ひょう試験後に表面観察を行ったところ、10μmφ
程度の微少な剥がれが数箇所観察された。XMAの分析
により剥がれは透明導電層とp型半導体層の界面で起こ
っていることが分かった。
【0089】以上のように本発明の光起電力素子は初期
特性、熱試験後の特性、光照射試験後の特性、ねじれ試
験後の特性のすべてにわたって、従来の光起電力素子よ
りも優れていることが分かった。
【0090】(実施例3)錫濃度が層厚方向に直線的に
変化している透明導電層を使用した太陽電池を作製し
た。実施例1において透明導電層が図4に示すような錫
濃度分布を有する透明導電層にする以外は実施例1と同
様な図12の太陽電池を4つ作製した。ここでターゲッ
トには酸化インジウムと酸化錫を使用し、酸化錫ターゲ
ット電力を時間的に変化させ、C41=5(モル%)、C
42=10(モル%)となるようにした。これらの太陽電
池に対して実施例1と同様な測定、評価を行ったところ
実施例3の太陽電池は初期太陽電池特性の4つの特性
(開放電圧、短絡電流、曲線因子、変換効率)のすべて
において実施例1の太陽電池よりもわずかに優れている
ことが分かった。また熱試験は実施例1と同等の変化率
であったが、光照射試験、ねじり試験においてその変化
率は実施例1の太陽電池よりもよいことが分かった。
【0091】(実施例4)錫濃度がp型半導体層近傍で
急激に変化している図5に示すような透明導電層を使用
した太陽電池を4つ作製した。図5においてC51=1
(モル%)、C52=15(モル%)となるようにした。
ここでターゲットには酸化インジウムと錫を用意し、ス
パッタリングガスにアルゴンと酸素を使用し、錫ターゲ
ット電力を時間的に変化させた。これらの太陽電池に対
して実施例1と同様な測定、評価を行ったところ実施例
4の太陽電池は初期太陽電池特性の4つの特性(開放電
圧、短絡電流、曲線因子、変換効率)のすべてにおいて
実施例1の太陽電池よりもわずかに優れていることが分
かった。また熱試験、光照射試験、ねじり試験において
その変化率は実施例1の太陽電池よりもよいことが分か
った。
【0092】(実施例5)図2に示すような3層構成の
透明導電層を使用した太陽電池を4つ作製した。ここで
21=3(モル%)、C22=10(モル%)、C23=1
5(モル%)とした。また第1、第2、第3の透明導電
層の膜厚はそれぞれ10(nm)、10(nm)、40
(nm)とした。これらの太陽電池に対して実施例1と
同様な測定、評価を行ったところ実施例5の太陽電池は
初期太陽電池特性の4つの特性(開放電圧、短絡電流、
曲線因子、変換効率)のすべてにおいて実施例1の太陽
電池よりもわずかに優れていることが分かった。また熱
試験、光照射試験、ねじり試験においてその変化率は実
施例1の太陽電池よりもよいことが分かった。
【0093】(実施例6)図13に示す構成のpinp
in接合を有する太陽電池を4つ作製した。第2のi型
半導体層にはRFプラズマCVD法(周波数13.56
MHz)で形成したa−Si:Hを用いた。各層の形成
条件を表12に示す。また実施例1と同様な試験を行い
太陽電池特性を測定した。その結果を表13に示す。こ
の表に見られるように本発明の光起電力素子は初期特
性、熱試験後の特性、光照射試験後の特性、ねじれ試験
後の特性のすべてにおいて優れていることが分かった。
【0094】(比較例6−1)比較例1−1と同様に膜
厚60(nm)の第1の透明導電層の単層を透明導電層
として使用する以外は実施例6と同様な太陽電池を作製
し、同様な試験を行った。その結果を表13に示す。そ
の結果、比較例6−1の太陽電池では初期太陽電池特性
は実施例6と同様優れたものであるものの、熱試験、光
照射試験、ねじれ試験において劣ることが分かった。ね
じれ試験による外観変化はなかったが、一部のサブセル
で短絡が発生していることが分かった。
【0095】(比較例6−2)比較例1−2と同様に膜
厚60(nm)の第2の透明導電層の単層を透明導電層
として使用する以外は実施例6と同様な太陽電池を作製
し、同様な試験を行った。その結果を表13に示す。そ
の結果、比較例6−2の太陽電池は初期太陽電池特性、
およびねじれ試験において劣ることが分かった。ねじれ
試験による外観変化はなかったが、一部のサブセルで短
絡が発生していることが分かった。
【0096】以上のように本発明の光起電力素子は初期
特性、熱試験後の特性、光照射試験後の特性、ねじれ試
験後の特性のすべてにわたって、従来の光起電力素子よ
りも優れていることが分かった。
【0097】(実施例7)CZ法−n型単結晶シリコン
基板を使用した太陽電池を4つ作製した。まずn型単結
晶シリコン基板の片面にリンを30(KeV)、1×1
15(個/cm2)の条件で打込み、n+型半導体層を形
成した。さらに反対の面にホウ素を100(KeV)、
8×1015(個/cm2)の条件で打込み、p+型半導体
層を形成した。次に窒素雰囲気中で950℃、30分の
アニール処理を行った。次に表14に示す形成条件で6
mmφの第1の透明導電層、第2の透明導電層各25個
を形成し、最後に実施例1と同様な十字のAlからなる
集電電極を形成した。これら4つの太陽電池に対して実
施例2と同様な試験を行った。太陽電池特性は表15に
示す。この表に見られるように本発明の光起電力素子は
初期特性、熱試験後の特性、光照射試験後の特性、降ひ
ょう試験後の特性のすべてにおいて優れていることが分
かった。降ひょう試験後の外観には変化はなかった。
【0098】(比較例7−1)比較例2−1と同様に膜
厚70(nm)の第1の透明導電層の単層を透明導電層
として使用する以外は実施例7と同様な太陽電池を作製
し、同様な試験を行った。その結果を表15に示す。そ
の結果、比較例7−1の太陽電池では初期太陽電池特性
は実施例7と同様優れたものであるものの、熱試験、光
照射試験、降ひょう試験において劣ることが分かった。
また降ひょう試験後に表面観察を行ったところ、1μm
φ程度の微少な剥がれが数箇所観察された。XMAの分
析により剥がれは透明導電層とp型半導体層の界面で起
こっていることが分かった。
【0099】(比較例7−2)比較例2−2と同様に膜
厚70(nm)の第2の透明導電層の単層を透明導電層
として使用する以外は実施例7と同様な太陽電池を作製
し、同様な試験を行った。その結果を表15に示す。そ
の結果、比較例7−2の太陽電池は初期太陽電池特性、
およびねじれ試験において劣ることが分かった。また降
ひょう試験後に表面観察を行ったところ、10μmφ程
度の微少な剥がれが数箇所観察された。XMAの分析に
より剥がれは透明導電層とp型半導体層の界面で起こっ
ていることが分かった。
【0100】以上のように本発明の光起電力素子は初期
特性、熱試験後の特性、光照射試験後の特性、ねじれ試
験後、降ひょう試験後の特性のすべてにわたって、従来
の光起電力素子よりも優れていることが分かった。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
【表7】
【0108】
【表8】
【0109】
【表9】
【0110】
【表10】
【0111】
【表11】
【0112】
【表12】
【0113】
【表13】
【0114】
【表14】
【0115】
【表15】
【0116】
【発明の効果】本発明によれば開放電圧、短絡電流、変
換効率の高い光起電力素子を提供することができる。さ
らにその熱安定性、光連続照射に対する安定性、機械的
強度を高めることができる。さらに透明導電層の抵抗を
下げることができるため、集電電極の間隔を広げること
ができるのでモジュール効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光起電力素子の構成の模式的な部分断
面図と酸化錫含有率と錫含有率との和の層厚方向分布を
示す図である。
【図2】本発明の光起電力素子の別の構成の模式的な部
分断面図と酸化錫含有率と錫含有率との和の層厚方向分
布を示す図である。
【図3】従来の光起電力素子のを示す図である。
【図4】本発明の光起電力素子の別の構成の模式的な部
分断面図と酸化錫含有率と錫含有率との和の層厚方向分
布を示す図である。
【図5】本発明の光起電力素子の別の構成の模式的な部
分断面図と酸化錫含有率と錫含有率との和の層厚方向分
布を示す図である。
【図6】本発明の光起電力素子の接合前のバンド図であ
る。
【図7】本発明の光起電力素子のバンド図である。
【図8】従来の光起電力素子のバンド図である。
【図9】従来の光起電力素子のバンド図である。
【図10】従来の光起電力素子のバンド図である。
【図11】実験例、実施例で使用したサンプル太陽電池
の概観を示す上面図である。
【図12】本発明の光起電力素子の具体例の模式的な断
面図である。
【図13】本発明の光起電力素子の別の具体例の模式的
な断面図である。
【図14】本発明の光起電力素子の別の具体例の模式的
な断面図である。
【図15】本発明の光起電力素子の別の具体例の模式的
な断面図である。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 p型半導体層と、酸化インジウム錫から
    なる透明導電層とが面で接合している光起電力素子にお
    いて、該透明導電層は複数の層からなり、該複数の層の
    うち前記p型半導体層と透明導電層の接合面に最も近い
    層の酸化錫の含有率と錫の含有率との和が、他の層の酸
    化錫の含有率と錫の含有率との和よりも小さいことを特
    徴とする光起電力素子。
  2. 【請求項2】 前記接合面に最も近い層の酸化錫の含有
    率と錫の含有率との和が10モル%以下であることを特
    徴とする請求項1に記載の光起電力素子。
  3. 【請求項3】 前記複数の層のうち酸化錫の含有率と錫
    の含有率の和が最も大きい層の酸化錫の含有率と錫の含
    有率との和が12モル%以上、30モル%以下であるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の光起電力素子。
  4. 【請求項4】 前記接合面に最も近い層の厚さは透明導
    電層全体の厚さの半分以下であることを特徴とする請求
    項1に記載の光起電力素子。
  5. 【請求項5】 前記複数の層のうち酸化錫の含有率と錫
    の含有率との和が最も大きい層の厚さは透明導電層全体
    の膜厚の半分以上であることを特徴とする請求項1に記
    載の光起電力素子。
  6. 【請求項6】 p型半導体層と、酸化インジウム錫から
    なる透明導電層が面で接合している光起電力素子におい
    て、該透明導電層内部の酸化錫の含有率と錫の含有率と
    の和は層厚方向に連続的に変化しており、前記p型半導
    体層と透明導電層の接合面で最小となっていることを特
    徴とする光起電力素子。
  7. 【請求項7】 前記接合面での透明導電層中の酸化錫の
    含有率と錫の含有率との和が10モル%以下であること
    を特徴とする請求項6に記載の光起電力素子。
  8. 【請求項8】 前記透明導電層中で前記和が最大である
    領域の酸化錫の含有率と錫の含有率との和が12モル%
    以上、30モル%以下であることを特徴とする請求項6
    に記載の光起電力素子。
  9. 【請求項9】 前記透明導電層中の酸化錫の含有率と錫
    の含有率との和が10モル%以下である領域が該透明導
    電層全体の半分以下であることを特徴とする請求項6に
    記載の光起電力素子。
  10. 【請求項10】 前記透明導電層中の酸化錫の含有率と
    錫の含有率との和が12モル%以上である領域が該透明
    導電層全体の半分以上であることを特徴とする請求項6
    に記載の光起電力素子。
  11. 【請求項11】 p型半導体層と、酸化インジウム錫か
    らなる透明導電層が面で接合している熱平衡状態の光起
    電力素子において、該透明導電層の伝導帯下端が層厚方
    向に変化し、該p型半導体層と透明導電層の接合面近傍
    における透明導電層の伝導帯下端とフェルミ準位の差
    が、該透明導電層全域のそれらの差の平均よりも大きい
    ことを特徴とする光起電力素子。
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