JP2000050546A - 永久磁石形電動機の回転子 - Google Patents
永久磁石形電動機の回転子Info
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Abstract
孔の中央部で広く、両端部で狭くなるように構成される
永久磁石形電動機の回転子において、高トルクあるいは
高効率を追求して電動機の最大能力を引き出す。 【解決手段】 収容孔3の両端部に永久磁石2の断面輪
郭の延長線に対して屈曲した空隙部4を設け、この空隙
部4によって隣接極との極間部に放射状の鉄心部分8を
残すとともに、鉄心外周部との間にブリッジ状の鉄心部
分5を残すように形成し、各極において、空隙部4を永
久磁石2の開角より狭い範囲まで張り出すように形成す
る。
Description
圧縮機駆動用電動機等に代表される永久磁石(以下、磁
石と称す)の界磁を有する永久磁石形の同期電動機に関
し、特に回転子の鉄心の内部に磁石を埋め込んで構成す
るいわゆる埋め込み磁石構造の回転子に関するものであ
る。
のが知られており、例えば特開平9−182332号公
報等に開示されている。
平面断面図であって、図中1aは鉄心であり、軸孔10
及び磁石を挿着するための複数の収容孔3aを備えた薄
鉄板を軸方向に多数積層して形成されている。収容孔3
aには平板形の磁石2aが軸方向に挿着されており、1
個の磁石2aが1極を形成するように着磁されて、図示
例の場合4極の界磁を構成するようになっている。磁石
材料としては、主に希土類磁石が用いられる。
部4aが形成されており、磁石による磁束(以下、主磁
束と称す)が隣接極間で短絡漏洩するのを防止するよう
になっている。そしてこの空隙部4aと回転子外周部と
の間には、極力幅を狭くしたブリッジ部5aが形成され
ている。
子の外周部に多くの鉄心部分が存在するために、q軸イ
ンダクタンスを大きくとることができる。従って、電動
機固定子の通電巻線の電流とこれに鎖交する主磁束とに
よって得られる主磁束トルクに加えて、回転子位置によ
る磁気抵抗の相違によって得られるリラクタンストルク
を大いに利用できる特長を備えている。
をT1、リラクタンストルクをT2とすると、 T=T1+T2 …(1) で表され、磁石の磁極中心と回転軸心を結んだ方向をd
軸とし、このd軸に対する電気角90°位相をq軸と
し、主磁束量をΦ、d軸電流をId、q軸電流をIq、
d軸インダクタンスをLd、q軸インダクタンスをLq
とすれば、 T1=Φ・Iq …(2) T2=(Ld−Lq)Id・Iq …(3) で表される。(3)式において、Idがマイナスの値と
なるように制御すれば、Ldと比較してLqが大きくな
るほどリラクタンストルクT2を大きくすることができ
る。
に向けて凸状をなし、端部が回転子外周部に近接するよ
うに形成された略V字形の収容孔3b内に、平板形の磁
石2bを2個挿着して各極の界磁を構成したものであ
る。磁石材料としては、主にフェライト磁石が用いられ
るが、希土類磁石等であっても構わない。図5の例同
様、主磁束の短絡を防止するために、ブリッジ部5bの
幅は極力狭い方が好ましく、必要に応じて収容孔3bの
両端部における磁石2bとブリッジ部5bとの間に空隙
部を形成するように構成してもよい。このような回転子
は、例えば特開平9−308148号公報等に開示され
ている。
くの鉄心部分が存在するために、q軸インダクタンスL
qが大きくなり、リラクタンストルクを大きく構成する
ことができる。磁石の収容孔が軸心に向けて凸状をなす
ように形成するものとしては、この他に例えば特開平6
−339241号公報等に開示されるように、断面が略
C字形の収容孔及び磁石を用いた回転子があり、この場
合も図5や図6の例と同様の効果を有している。
は、電動機のトルクを極力大きくするために、残留磁束
密度の大きな希土類磁石等の高性能磁石を用いて主磁束
トルクT1を大きくし、一方、q軸インダクタンスを極
力大きくするようにして大きなリラクタンストルクT2
を引き出すように構成する。このq軸インダクタンスを
大きくするために、例えば図5に示すような回転子にお
いては、空隙部4aの円周方向の幅を極力狭く形成する
ようにし、図6に示すような回転子においても、極間に
空隙部を設ける場合は、磁石2bの外周側に僅かな空隙
を設けるのみの構成となっている。
くすると、主磁束の短絡漏洩が増加して主磁束トルクが
減少する恐れがあるため、上記リラクタンストルクとの
兼ね合いが設計を難しいものとしている。一般にリラク
タンストルクを利用する電動機においては、固定子と回
転子間のエアギャップが極力小さくなるように構成する
が、1〜2馬力クラスの圧縮機駆動用電動機等において
は、構造上の制約からエアギャップ寸法は0.5〜0.
7mm程度と比較的大きなものとなってしまう。従っ
て、磁気抵抗が大きくなってリラクタンストルクを十分
に引き出せないために、全トルクTに占めるリラクタン
ストルクT2の割合は2割程度に過ぎず、全トルクTは
基本的には8割程度を占める主磁束トルクT1に負うと
ころが大きい。ところが従来設計品はリラクタンストル
ク偏重の傾向にあり、希土類磁石等の高性能磁石を用い
る場合においても、その構成上の傾向に変化は見られな
い。
は地球環境保全の見地から早急な課題であり、これらを
駆動する電動機に対しては、たとえ僅かでも高効率なも
のへ発展させていく使命が課せられている。図5や図6
に示す従来構成のものは、主磁束トルクとリラクタンス
トルクの双方を利用する永久磁石形電動機の回転子とし
ては無難な構成といえるが、高トルクあるいは高効率を
追求して電動機の最大能力を引き出す上で、必ずしも最
適且つ究極的な構成とはなっていないのが現状である。
けた複数の収容孔に永久磁石を挿着し、軸方向に垂直な
断面において、前記収容孔と前記鉄心外周部との間隔が
前記各収容孔の中央部で広く、両端部で狭くなるように
構成される永久磁石形電動機の回転子において、前記収
容孔の両端部に前記永久磁石の断面輪郭の延長線に対し
て屈曲した空隙部を設け、この空隙部によって隣接極と
の極間部に放射状の鉄心部分を残すとともに、前記鉄心
外周部との間にブリッジ状の鉄心部分を残すように形成
し、各極において、前記空隙部を前記永久磁石の開角よ
り狭い範囲まで張り出すように形成するものである。
に適するため、実施形態としては、前記収容孔は凸面側
を軸心に向けた略V字形をなし、この収容孔に平板状希
土類永久磁石を挿着したものが好ましい。
り狭い範囲まで張り出すため、空隙部の面積が大きく形
成でき、主磁束の短絡漏洩が削減されて電動機の主磁束
トルク分が大きく増加する。同時に主磁束の磁路が極中
心方向に誘導されて、固定子の励磁部分と有効に鎖交す
ることになる。一方、極間部に残された放射状の鉄心部
分及びブリッジ状の鉄心部分によって、q軸インダクタ
ンスは大きい状態のまま維持されるため大きなリラクタ
ンストルク分も得ることができる。これらの結果とし
て、主磁束トルクとリラクタンストルクの和である電動
機トルクが大きく向上するものであり、従来品と同一ト
ルクで比較すれば、電流値が減少して銅損が削減され、
電動機効率が大きくアップする。
平面断面図であり、回転子の軸方向に垂直な断面を示し
ている。鉄心1は、順送プレス型によって所定形状に打
ち抜いた0.35mm厚,0.50mm厚等の薄鉄板を
プレス型内で軸方向に多数積層したものであり、各薄鉄
板に設けた切り起こし突起による凹凸部を軸方向に隣接
するもの同士で嵌合させて固定する周知のクランプ手段
等によって複数箇所で固定されている。この略円柱状の
鉄心1の中心には軸孔10が設けられ、この軸孔10と
平行に磁石を挿着するための複数の収容孔3及びカシメ
ピンを挿通するための複数のピン孔6がそれぞれ設けら
れている。
成されており、軸心に向けて凸状をなして端部が回転子
外周部に近接するように形成されている。この収容孔3
と鉄心1の外周部との間隔は各収容孔の中央部で広く、
両端部で狭くなるように構成され、各極のV字の凹部側
には回転子の外周部にかけて厚肉の鉄心部分が存在する
ためにq軸インダクタンスLqが大きく、一方d軸イン
ダクタンスは小さく構成されている。
は、各V字当たり2個の平板形の磁石2が軸方向から挿
着され、各V字当たり1極を形成するように着磁され
て、4極の界磁を構成するようになっている。磁石材料
としては、一般的にフェライト磁石または希土類磁石の
適用が可能であるが、図示例の場合は希土類磁石に適し
た形状を示している。即ち、Nd−Fe−B(ネオジウ
ム−鉄−ホウ素)系磁石等の希土類磁石を用いることに
よって主磁束を極力大きなものとしている。また希土類
磁石の場合、断面が円弧形状のものは高コストとなるた
め一般には平板状に形成され、従って図示するようなV
字形の収容孔に装着するのに適している。
部には端板9が装着されて蓋がなされ、鉄心のピン孔6
及び端板のピン孔11にそれぞれカシメピン7を挿通し
て固着一体化するものである。
両端部は、磁石2が収容されない空隙部4となってお
り、この空隙部4は磁石2の断面輪郭の延長線に対して
屈曲するとともに、磁石2の軸心Oからの開角θ1より
狭い開角θ2まで先端が極中心方向へ張り出して形成さ
れている。そしてこの空隙部4によって、隣接極との極
間部に幅がdなる放射状の鉄心部分8が残されており、
また鉄心外周部との間にブリッジ部5が残されている。
って極中心方向へ張り出して形成されていることによ
り、隣接極間での主磁束の漏洩短絡は従来品以上に削減
され、電動機の主磁束トルク分が増加することになる。
これは、特に希士類磁石等の高性能磁石を用いた場合に
は、磁束密度が高いために主磁束トルク分の増加は顕著
となる。
により、主磁束の磁路を極中心方向へ誘導することがで
きる効果が生じる。即ち、このような電動機の固定子に
おける通電切り換えは、一般に三相120°通電が採用
されるため、電気角180°の範囲に形成される界磁各
極の主磁束は、なるべく狭い角度範囲に集中させた方が
トルクへの寄与が大きくなるからである。従ってこの点
からも、上記空隙部4の存在によって主磁束トルク分を
向上させることができる。
8によって、この部分を介して固定子磁束が回転子鉄心
1内へ多量に流出入することができるため、q軸インダ
クタンスは相変わらず大きな値のまま維持され、空隙部
4に起因する電動機のリラクタンストルク分の減少を低
く抑えることができる。この場合、ブリッジ部5が漏斗
のような作用をして、放射状の鉄心部分8あるいは収容
孔3の外側の鉄心部分への固定子磁束の流出入を誘導す
る効果を奏する。
特性上好ましいのであるが、鉄心1を構成する薄鉄板の
打ち抜き技術及びブリッジ部5の耐遠心力強度等を考慮
して適切な幅に決定される。そして放射状の鉄心部分8
及びブリッジ部5によって鉄心1が連結されているた
め、各薄鉄板は一体に打ち抜くことが可能となってい
る。但し、耐遠心力強度が不足する等の場合には、図示
例のように、収容孔3の外側の鉄心部分にカシメピン7
を挿通して補強し、品質的に安定したものとすることが
好ましい。
分8の円周方向の幅dを変化させた場合における主磁束
量Φの変化、及びq軸インダクタンスLqとd軸インダ
クタンスLdの比である突極比Lq/Ldの変化をそれ
ぞれ示したものである。主磁束量Φは、回転子を電動機
の固定子に対向させた状態で回転させたときの固定子巻
線の誘起電圧を測定することによって知ることができ
る。一方、q軸インダクタンスLq及びd軸インダクタ
ンスLdは、同様に回転子を電動機の固定子に対向させ
た状態で回転させたときの巻線のインダクタンスの最大
値と最小値を測定することによって知ることができる。
そして前述したように、主磁束量Φが大きいほど主磁束
トルクT1が大きく、突極比Lq/Ldが大きいほどリ
ラクタンストルクT2が大きく形成できるものである。
が固定子のスロット開口部の円周方向の幅と等しいポイ
ントを表しており、このポイントを境にしてΦの傾きは
さほど変わらないのに対し、Lq/Ldの傾きは屈曲点
を形成している。即ち、幅dをP1よりも狭くすると、
固定子と回転子間の磁気抵抗が極端に大きくなってしま
うため、リラクタンストルクの落ち込み分が主磁束トル
クの増加分を上回るようになって好ましくない。従っ
て、極間部に残された放射状の鉄心部分8の円周方向の
幅dは、スロット開口部幅P1以上で且つP1近辺の値
とすることによって、高トルクの電動機を得ることがで
きる。
2を変化させた場合における主磁束量Φの変化、及び突
極比Lq/Ldの変化をそれぞれ示したものである。空
隙部4の開角θ2が磁石2の開角θ1と等しくなるポイ
ントを境にして、Lq/Ldの傾きはさほど変わらない
のに対し、Φの傾きは屈曲点を形成していることが判
る。即ち、θ2をθ1よりも狭くしていくと、隣接極間
での主磁束Φの短絡漏洩が大きく減少し、同時に主磁束
の磁路が極中心方向へ集中するようになり、これらの作
用がθ1を境にして顕著となっていくものである。そし
て主磁束トルクの増加分がリラクタンストルクの落ち込
み分を上回るため、θ2<θ1なる関係に形成すること
により高トルクの電動機を得ることができる。
の高性能磁石を用いた場合に一層顕著となるため、電動
機の特性向上に大きく寄与するものである。また、空隙
部4の開角θ2は小さい方が好ましいのであるが、鉄心
1の打ち抜きや機械的強度、特にブリッジ部5の強度の
関係からあまり小さくすることも好ましくなく、下限値
に関しては主に製造上の都合によって決定される。
空隙部に樹脂等の非磁性材料を充填した場合であっても
同様の作用を生じるものであるため、必ずしも空隙に限
定するものではない。さらに本発明は、断面V字形の磁
石に限らず、図5に示したような各極当たり平板形の磁
石1個によって構成するもの、あるいは断面C形の磁石
を用いたもの等、収容孔と鉄心外周部との間隔が各収容
孔の中央部で広く両端部で狭くなるように構成される永
久磁石形電動機の回転子であれば適用可能である。
た従来の構成から視点を変え、極間部の空隙部に着目し
て主磁束トルクの向上を達成したものであり、これによ
り主磁束トルクとリラクタンストルクの和である電動機
の全トルクを大幅に増加させ得るものであり、このこと
は、従来と同一トルクにて比較すれば、電動機の銅損が
減少して電動機の効率を大きく向上させることができ
る。そして特に希土類磁石等の高性能磁石を用いた高ト
ルクあるいは高効率を追求するタイプの電動機におい
て、電動機の最大能力を引き出す上で効果的な構成を提
供するものである。
量の関係、及び突極比の関係を示す特性図。
の関係、及び突極比の関係を示す特性図。
a,3b…収容孔、4,4a…空隙部、5,5a,5b
…ブリッジ状の鉄心部分、8…放射状の鉄心部分、10
…軸孔。
Claims (2)
- 【請求項1】 鉄心内部に設けた複数の収容孔に永久磁
石を挿着し、軸方向に垂直な断面において、前記収容孔
と前記鉄心外周部との間隔が前記各収容孔の中央部で広
く、両端部で狭くなるように構成される永久磁石形電動
機の回転子において、前記収容孔の両端部に前記永久磁
石の断面輪郭の延長線に対して屈曲した空隙部を設け、
この空隙部によって隣接極との極間部に放射状の鉄心部
分を残すとともに、前記鉄心外周部との間にブリッジ状
の鉄心部分を残すように形成し、各極において、前記空
隙部を前記永久磁石の開角より狭い範囲まで張り出すよ
うに形成したことを特徴とする永久磁石形電動機の回転
子。 - 【請求項2】 前記収容孔は凸面側を軸心に向けた略V
字形をなし、この収容孔に平板状希土類永久磁石を挿着
したことを特徴とする請求項1記載の永久磁石形電動機
の回転子。
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