JP2000046058A - 転がり軸受用保持器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 転がり軸受用保持器において、軸受への潤滑
剤の充填の作業性を改善する。 【解決手段】 転がり軸受の内輪と外輪との間に挿入さ
れる環状部材２の一端部に、内外輪間の軌道内に介装さ
れた複数のボールを回転可能に保持するポケット３を形
成する。環状部材２の他端部の外周縁部に丸みを形成す
る面取り部15を形成し、他端部に径方向溝16を形成し、
さらに、外周部に軸方向溝17を形成する。このように構
成した保持器13を軸受に組込んだ後、潤滑剤を径方向溝
16へ注入することにより、潤滑剤が軸方向溝17を通って
ポケット３側へ流入する。また、面取り部15によって、
環状部材２の外周部からもポケット３側へ潤滑剤が流入
しやすくなる。これにより、潤滑剤を容易に軸受各部に
効率よく均一に行き渡らせることができ、軸受の潤滑性
を向上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、転がり軸受の転動
体を保持するための転がり軸受用保持器の改良に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】転がり軸受には、転動体としてボール
（鋼球）を使用する玉軸受がある。玉軸受は、内輪の軌
道面と外輪の軌道面との間に形成される軌道内に、複数
のボールを介装して、内外輪と複数のボールとの転がり
接触によって摩擦抵抗を低減するようにしたものであ
る。玉軸受では、内外輪間の軌道内に挿入された複数の
ボールを保持器によって周方向に沿って所定間隔をもっ
て保持することにより、ボールが脱落したり、隣接する
ボールが接触し合って滑り摩擦を生じないようにしてい
る。玉軸受用の保持器としては、一般的に、例えば図６
に示すような冠型保持器と呼ばれる保持器１が用いられ
ている。

【０００３】冠型保持器について図６を参照して説明す
る。図６に示すように、保持器１は、玉軸受（図示せ
ず）の内輪と外輪との間に挿入される環状部材２の一端
部に、転動体であるボールを回転可能に収容する開口部
を有する複数のポケット３が周方向に沿って所定間隔を
もって形成されている。

【０００４】保持器１の軸受への組みつけは、内輪の軌
道面と外輪の軌道面との間に形成された軌道内に、複数
のボールを組み入れて周方向に沿って所定間隔をもって
配置した後、保持器１を内外輪間に挿入して、各ポケッ
ト３にボールを嵌合させるようにして行われる。これに
より、ボールを内外輪間の軌道内で所定間隔をもって回
転可能に保持することができ、ボールの転動によって内
外輪を円滑に相対回転させることができる。

【０００５】そして、保持器１を組付けた後、ポケット
３の一端側の開口部から潤滑剤を充填または継続的に供
給し、各部を潤滑して摩擦抵抗を低減することにより、
摩擦トルクを軽減するともに摩擦熱の発生を抑制して、
円滑な回転が行われるようにしている。

【０００６】近年、コンピュータの外部記憶装置である
ハードディスクドライブ装置等において、小型化および
精度向上を図るため、例えば図７に示すように、外輪と
スリーブとを一体構造として、スリーブに２つの軸受を
組み込んだ外輪一体型構造の軸受が用いられるようにな
ってきている。

【０００７】外輪一体型構造の軸受について図７を参照
して説明する。図７に示すように、軸受４は、大径部5a
および小径部5bを有する段付構造の軸５を円筒状のスリ
ーブ６内で、回転可能に支持するものである。軸５の大
径部5aの外周部には、軌道面７が形成されている。小径
部5bには、内輪８が圧入又は嵌合され、内輪８の外周部
に軌道面９が形成されている。スリーブ６の内周部の両
端部付近には、軸５の大径部5aおよび内輪８の軌道面
７，９に対向する部位に、それぞれ軌道面10，11が形成
されている。軸５側の軌道面７，９とスリーブ６の軌道
面10，11との間に形成された軌道内に、それぞれ転動体
である複数のボール12が挿入されている。

【０００８】そして、保持器１が、スリーブ６の両端部
側からスリーブ６と軸５の大径部5aおよび内輪８との間
に、軌道内で所定間隔をもって配置された複数のボール
12を各ポケット３内に嵌合させるようにして組み付けら
れる。保持器１を組み付けた後、グリース等の潤滑剤が
ポケット３および軌道内等の軸受の各部に充填される。
このようにして、各軌道内において、複数のボール12を
所定間隔をもって回転可能に保持し、これらを潤滑する
ことにより、スリーブ６内で軸５を円滑に回転させるこ
とができる。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の保持器１では、次のような問題があった。保持器１
が組み込まれた軸受への潤滑剤の充填は、一般的に、保
持器１のポケット３の開口部側から潤滑剤ポケット内ま
たはポケット間に注入することによって行われる。とこ
ろが、図７に示すような、外輪一体型構造の軸受４で
は、２つの保持器１がポケット３を内側にして組み込ま
れているため、ポケット３の開口部側から潤滑剤を注入
することができない。このため、従来、潤滑剤は、保持
器１のポケット３とは反対側の端部から、スリーブ６
（外輪）の内周部と保持器１の外周部とのわずかな隙間
を通して、ポケット３側へ注入することによって充填さ
れていた。

【００１０】この場合、外輪の内周部と保持器の外周部
との隙間は、非常に小さいため、潤滑剤の注入の作業性
が悪く、潤滑剤をポケット内、ポケット間、軌道内等の
軸受の各部に均一に行き渡らせるのが困難であった。そ
して、潤滑剤が軸受各部に均一に行き渡らず、油膜の形
成にばらつきがあると、軸受トルクの増大およびそのば
らつきの原因となるため、問題となっていた。

【００１１】本発明は、上記の点に鑑みてなされたもの
であり、軸受への潤滑剤の注入の作業性を改善し、潤滑
剤を容易に軸受の各部へ適正に充填できるようにした転
がり軸受用保持器を提供することを目的とする。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明は、転がり軸受の内輪と外輪との間に挿入
される環状部材の一端部に、複数の転動体を周方向に沿
って所定間隔をもって保持する開口部を有する複数のポ
ケットが形成された転がり軸受用保持器であって、前記
環状部材の他端部の周縁部に面取り部が形成され、前記
他端部に径方向に延びる径方向溝が形成され、かつ、前
記環状部材の周面部に軸方向に延びる軸方向溝が形成さ
れていることを特徴とする。

【００１３】このように構成したことにより、軸受に組
込まれた状態において、環状部材のポケットの反対側の
端部から、面取部、径方向溝および軸方向溝を通して、
環状部材のポケット側へ潤滑剤を注入することができ
る。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づいて詳細に説明する。なお、図６および図７に示す
従来例と同様の部分には、同一の番号を付して説明す
る。

【００１５】図１および図２に示すように、本実施形態
の転がり軸受用の保持器13は、ナイロン６６、ＰＰＳ
（ポリフェニレンサルファイド）等の熱可塑性樹脂を射
出成形して製造されるものであり、転がり軸受の内輪と
外輪との間に挿入される環状部材２の一端部に、周方向
に沿って複数のポケット３が形成されている。

【００１６】各ポケット３は、環状部材２の一端部に一
対の爪部14を突出させて、環状部材２の内周側、外周側
および一端側の三方に開口部を形成しており、その内面
が、転動体であるボールの球面に沿った凹面状に形成さ
れている。そして、一端側の開口部からボールを押し付
けることにより、一対の爪部14が撓んで拡開して、ボー
ルをポケット３内に収容することができ、収容したボー
ルを凹面状の内面に沿って自由に回転できるように保持
するようになっている。また、ポケット３は、環状部材
２の円周方向に沿って、所定間隔（図示のものでは等間
隔）もって複数（図示のものでは８つ）配置されてい
る。

【００１７】環状部材２の他端部、すなわち、ポケット
３の反対側の端部の外周縁部には、半径Ｒの丸みを形成
する面取り部15が形成されている。環状部材２のポケッ
ト３の反対側の端部の複数のポケット３の間の部位に、
環状部材２の内周部から外周部にわたって径方向に延び
る複数（図示のものでは８つ）の断面形状が矩形の径方
向溝16が形成されている。また、環状部材２の外周部
（周面部）の複数のポケット３の間の部位に、環状部材
の一端部から他端部にわたって軸方向に延びる複数（図
示のものでは８つ）の断面形状が矩形の軸方向溝17が形
成されている。径方向溝16と軸方向溝17とは、その端部
において互いに連通されている。

【００１８】以上のように構成した本実施形態の作用に
ついて次に説明する。

【００１９】保持器13の軸受への組付けは、図６に示す
従来例と同様に、軸受の内外輪間に形成された軌道内に
複数のボールを組み入れて周方向に沿って所定間隔をも
って配置した後、保持器13を内外輪間に挿入して、各ポ
ケット３にボールを嵌合させるようにして行うことがで
きる。

【００２０】また、図７に示すような外輪一体型構造の
軸受４に組込む場合は、図７に示す従来のものと同様
に、スリーブ６の両端部側から、スリーブ６と軸５の大
径部5aおよび内輪８との間に、保持器13を挿入して、軌
道内で所定間隔をもって配置された複数のボール12を各
ポケット３内に嵌合させるようにして組付けることがで
きる。

【００２１】そして、保持器13を軸受４に組込んだ後、
潤滑剤を環状部材２の端面に形成した径方向溝16へ注入
することにより、潤滑剤は、外周部に形成した軸方向溝
17を通ってボール12を収容したポケット３側へ流入す
る。また、環状部材２の外周縁部に形成された面取り部
15によって、環状部材２の外周部からもポケット３側へ
潤滑剤が流入しやすくなる。これにより、潤滑剤をポケ
ット内、ポケット間、軌道内等の軸受の各部に効率よく
均一に行き渡らせることができるので、均一の油膜を形
成することができ、潤滑性を向上させて、軸受トルクを
低減するともに、そのばらつきを小さくすることができ
る。

【００２２】このように、潤滑剤は、外輪の内周部と保
持器の外周部との僅かな隙間からではなく、環状部材２
の端部の径方向溝16から注入することができるので、潤
滑剤の充填作業性を大幅に改善するとともに、潤滑剤の
充填量の管理を容易に行うことができる。

【００２３】なお、上記実施形態では、環状部材２のポ
ケット３の反対側の端部の外周縁部に面取り部15を形成
しているが、本発明はこれに限らず、図１および図２中
に仮想線で示すように、その内周縁部に面取り部18を形
成することもでき、さらに、面取り部15，18を両方とも
形成するようにしてもよい。また、面取り部15，18は、
丸みを形成するものに限らず、図３に示すように、例え
ば寸法Ｃの平面状に形成することもできる。

【００２４】軸方向溝17は、図１に示すような断面形状
が矩形のものほか、例えば図４に示すように、断面形状
が半円形の軸方向溝19とすることもでき、潤滑剤が流通
可能な形状であればその他の形状であってもよい。同様
に、径方向溝16の断面形状も図１および図２に示す矩形
のほか、半円形等の潤滑剤が流通可能な様々な形状とす
ることができる。

【００２５】上記実施形態では、環状部材２の外周部に
軸方向溝17を形成しているが、本発明はこれに限らず、
図５に示すように、その内周部（周面部）に軸方向溝20
を形成することもでき、また、外周部および内周部の両
方に軸方向溝17，20を形成するようにしてもよい。

【００２６】また、上記実施形態では、径方向溝16およ
び軸方向溝17，19，20は、環状部材２の複数のポケット
３の間の部位に配置しているが、このほか、ポケット３
と重なるように配置することもできる。

【００２７】

【発明の効果】以上詳述したように、本発明の転がり軸
受用保持器によれば、環状部材に面取り部、径方向溝お
よび軸方向溝を形成したことにより、環状部材のポケッ
トの反対側の端部から、面取部、径方向溝および軸方向
溝を通して、ポケット側へ潤滑剤を注入することができ
るので、軸受への潤滑剤の注入の作業性を改善して、潤
滑剤を容易に軸受の各部へ適正に充填することができ、
軸受の潤滑性能を向上させて、軸受トルク特性および耐
久性を改善することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態に係る転がり軸受用保持器
の斜視図である。

【図２】図１のＡ−Ａ線による縦断面図である。

【図３】図１の転がり軸受用保持器の変形例を示すＡ−
Ａ線による縦断面図である。

【図４】図１の転がり軸受用保持器の他の変形例を示す
斜視図である。

【図５】図１の転がり軸受用保持器のさらに他の変形例
を示す斜視図である。

【図６】従来の転がり軸受用保持器の斜視図である。

【図７】外輪一体型構造の転がり軸受の保持器装着前の
状態を示す縦断面図である。

【符号の説明】

２ 環状部材 ３ ポケット 13 保持器 15,18 面取り部 16 径方向溝 17,19,20 軸方向溝

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 転がり軸受の内輪と外輪との間に挿入さ
   れる環状部材の一端部に、複数の転動体を周方向に沿っ
   て所定間隔をもって保持する開口部を有する複数のポケ
   ットが形成された転がり軸受用保持器であって、 前記環状部材の他端部の周縁部に面取り部が形成され、
   前記他端部に径方向に延びる径方向溝が形成され、か
   つ、前記環状部材の周面部に軸方向に延びる軸方向溝が
   形成されていることを特徴とする転がり軸受用保持器。